JP2010175160A - 熱交換器用スケール防止装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】水熱交換器にキャビテーション壊食を与えることなく、物理力を利用した方法でスケール付着を防止することを目的とする。
【解決手段】耐圧に設けられ水を加熱する水熱交換器と、前記水熱交換器の内部の被加熱水を加圧する加圧手段3と、前記熱交換器内に付着するスケールを物理力で剥離する物理力発生手段5と、前記熱交換器と前記加圧手段と前記物理力発生手段とを制御する制御手段7とを備え、前記制御手段は前記加圧手段を作動させることにより前記熱交換器内部に水圧を負荷した状態で前記物理力発生手段を作動させるようにする。
【選択図】図1

Description

本発明は、水熱交換器に対するスケールの付着を防止するスケール防止装置に関するものである。
ヒートポンプ給湯器などの熱交換器は二重の管からなる構造を持ち、内側の冷媒管には高温の二酸化炭素冷媒を通液し、外側の水管には常温の水を冷媒と逆の方向から通水することによって冷媒から水に熱交換がおこなわれる。水管中のカルシウム、マグネシウム、シリカ、鉄水酸化物の濃度が高い場合、冷媒管の高温部分(概ね80℃以上)の表面にスケールが沈着する。スケールが沈着すると、無機成分であるスケールの熱伝導度は金属性冷媒管の熱伝導度よりも小さいために、熱交換効率が低下する。熱交換効率が低下すると、冷媒管の高温部は水が導入される側に分布が拡大し、その結果スケールの沈着しやすい部分は水が導入される側に拡大する。そのようにして、スケールの沈着部分が拡大したり沈着した厚みが拡大したりすると、熱交換性能が低下するばかりでなく、熱交換器の圧力損失が大きくなりやがて給湯流量が低下して機器の目的が果たせなくなる。
スケールの付着量は、炭酸カルシウムなどのスケール成分の結晶化速度と水流とのバランスで決定される。一般に高温で結晶化速度が速いほどより多くのスケールが付着する。一方で、流速が速いとスケール成分の付着は起こりにくい。
スケール付着の問題は特に硬水地帯で顕著に問題となるため、さまざまな解決方法が提案されたり実用化されたりしている。例えば、水に含まれる硬水成分(カルシウム、マグネシウム)を吸着除去する陽イオン交換樹脂を備えた軟水化装置を用いてスケールが生じにくい水を供給したり、定期的にスケールを溶解する薬剤を配管に投入してスケールを除去したりという方法がある。軟水化装置は定期的に陽イオン交換樹脂を再生するために食塩などを投入する必要があり、薬剤による方法も使用者に投入の手間を要する。いずれも煩雑であり一般家庭において長期にわたって適切なメンテナンスがなされるとは考えにくい。一方、使用者の手間を要さない方法としては、磁気を利用してスケール成分の沈着を防ぐ方法があるが常に効果が発揮されるとは限らない。
上記に述べたような手間や制約がなく十分なスケール除去性能を発揮する手法として、超音波振動を利用した超音波式スケール防止装置(例えば特許文献1参照)と水流による手法(例えば特許文献2参照)とがある。超音波式は、20kHz〜50kHzの周波数を用いてキャビテーションによって付着したスケールを剥離する方法とより高周波振動を用いて付着を抑制する方法とがある。キャビテーション現象とは振動により瞬間的に生じる低圧によって水が揮発して気泡を生じる現象で、生じた気泡が高圧時に特異な崩壊をする際に強い物理力が生じる。水流による方法も流速3m/secを超えると、キャビテーションが発生しその物理力を利用したものである。
特公平4−33512号公報 特開昭58−185787号公報
超音波振動や水流によるスケール防止技術を利用する場合、キャビテーションによって熱交の金属部材に壊食損傷が生じることがある。超音波の音圧を下げてキャビテーションの発生を防ごうとしても、音圧が集束する箇所では防ぐことが困難で壊食損傷が起こりうる。また、流速を3m以下に保ってキャビテーションの発生を防ごうとしても、屈曲部な
どの一部で流速が速くなったり、熱交換器の管内がスケールで閉塞してくると流路の断面積が小さくなって結果的に流速が速くなったりしてキャビテーションが発生して熱交換器に壊食損傷を与えることがある。
両方法によるスケール防止は、必ずしもキャビテーションが発生しなくても可能である。超音波振動の場合、スケール成分の付着を振動によって防ぐことができる。また、水流の場合も、スケール結晶の沈着方向と略直角な水流があたることによる振り払い効果によって付着を防ぐことができる。
本発明は、キャビテーションの発生を防止して熱交換器に壊食損傷を与えることなく、スケール付着を防止することを目的とする。
耐圧に設けられ水を加熱する水熱交換器と、前記水熱交換器の内部の被加熱水を加圧する加圧手段と、前記熱交換器内に付着するスケールを物理力で剥離する物理力発生手段と、前記熱交換器と前記加圧手段と前記物理力発生手段とを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は前記加圧手段を作動させることにより前記熱交換器内部に水圧を負荷した状態で前記物理力発生手段を作動させるようにする。
キャビテーション壊食は、キャビティ(気泡)が破裂する際に生じる応力の繰り返しによっておこる疲労破壊現象である。キャビテーション壊食を確実に防ぐためには、気泡の発生を防ぐことが必要である。気泡は、水中の常圧である101kPaから水の飽和蒸気圧である3.2kPaまで圧力が低下することによって発生する(水中の深さによる加圧は無視できる場合)。このような状況は、超音波振動によって瞬間的に負圧が発生することや、水流による高流速部での負圧発生が原因で発生する。
本発明によるスケール防止装置は、水中で発生する負圧を打ち消すように熱交換器内を加圧することによってキャビテーション壊食を防止する。
熱交換器内の静水時の水圧を高めることによって気泡の発生を防ぎ、熱交換器は壊食損傷しない。振動や水流によるスケール結晶粒子の振り払いの効果によってスケールの付着を防ぐことができる。
第1の発明は、耐圧に設けられ水を加熱する水熱交換器と、前記水熱交換器の内部の被加熱水を加圧する加圧手段と、前記熱交換器内に付着するスケールを物理力で剥離する物理力発生手段と、前記熱交換器と前記加圧手段と前記物理力発生手段とを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は前記加圧手段を作動させることにより前記熱交換器内部に水圧を負荷した状態で前記物理力発生手段を作動させるようにした熱交換器用スケール防止装置であり、キャビテーション壊食を引き起こすことがない。熱交換器内の静水時の水圧を高めることによって気泡の発生を防ぐため、熱交換器は壊食損傷することなく振動や水流によるスケール結晶粒子の振り払いの効果によってスケール付着を防ぐことができる。
第2の発明は、特に、第1の発明の熱交換器用スケール防止装置において、物理力発生手段は、水熱交換器内の水を超音波振動することによってスケールの付着を防止する超音波発生手段としたものである。キャビテーションの発生を防いだ上で超音波振動をおこなうと振り払い効果によってスケール結晶粒子の熱交表面への付着が防止できる。
第3の発明は、特に第1の発明の熱交換器用スケール防止装置において、物理力発生手
段は、水熱交換器内に水流を発生させることによって付着したスケールを剥離する水流式手段としたものである。キャビテーションの発生を防いだ上で熱交換器内の流速を高めると水流による剥離効果によってスケール結晶粒子の熱交表面への付着が防止できる。
第4の発明は、特に第1から第3のいずれか一つの発明の熱交換器用スケール防止装置において、加圧手段は、熱交換器から被加熱水が排出される出口部の流路断面積を入口部の流路断面積よりも小さくして水道水圧を熱交換器内に導入することによって被加熱水を加圧するようにしたものである。水道水圧を利用することによって、加圧装置を用いることなくキャビテーションを防いでスケール剥離をおこなえるため、装置を小型に構成することが可能である。
第5の発明は、特に第1から第4のいずれか一つの発明の熱交換器用スケール防止装置において、熱交換器内でのスケールの付着程度を検知するスケール検知手段を設け、加圧手段は加圧の程度を可変に設けた可変加圧手段であり、制御手段は前記スケール検知手段によってスケールの付着が検知された際に前記可変加圧手段の加圧程度を弱くして物理力発生手段を運転するようにしたものである。物理的な剥離力を用いた物理力発生手段は、スケール予防効果と熱交換器の損傷効果とをトレードオフの関係で発揮する。所定の運転によって結果的にスケールが幾分付着してきた場合には、加圧程度を弱めることによって弱いキャビテーション壊食を発生させてスケール剥離をおこなうようにする。スケールの付着が検知されなくなると、キャビテーション壊食を完全に防止して熱交換器の損傷を防ぐ。このような制御をおこなうことによって、スケール剥離効果と熱交換器の損傷防止とを両立することができる。
第6の発明は、特に第1から第5のいずれか一つの発明の熱交換器用スケール防止装置において、熱交換器内でのキャビテーション発生を検知するキャビテーション検知手段を設け、加圧手段は加圧の程度を可変に設けた可変加圧手段であり、制御手段は前記キャビテーション検知手段によってキャビテーションの発生が検知された際に前記可変加圧手段の加圧程度を強くして物理力発生手段を運転するようにしたものである。物理的な剥離力を用いた物理力発生手段は、スケール予防効果と熱交換器の損傷効果とをトレードオフの関係で発揮する。所定の運転によって結果的にキャビテーションが幾分発生した場合には、加圧程度を強めることによって、キャビテーション壊食を完全に防止して熱交換器の損傷を防ぐ。このような制御をおこなうことによって、スケール剥離効果と熱交換器の損傷防止とを両立することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1、本発明の第1の実施の形態における熱交換器用スケール防止装置の構成図を示す。熱交換器は二重管式熱交換器であり、被加熱水を矢印イ方向に通水する水管1と高温熱媒体を矢印ロ方向に通水する伝熱管2からなる。通水管1の出口部は流量を可変とすることで加圧状態を可変とする可変加圧手段3であり、入口部4よりも小さな流路断面積をもつ。また。水管1の外部に、被加熱水および伝熱管2を超音波振動させるための超音波発生手段5が設けられる。また、出口部内に水温センサー6が設けられ、制御部7に水温情報を送る。
本実施の形態の熱交換器用スケール防止装置の作動方法を記す。入口部4は水道管に直結され通常50〜350kPaの水道水圧が水管1内に付加される。可変加圧手段3は、出口部の流路断面積を入口部4よりも小さくしているため、可変加圧手段3よりも下流で流量が減少し、その結果水管内の入口部4と可変加圧手段3との間に水圧が付加される。
この状態で、伝熱管2内の熱媒体および水管1内部の被加熱水が流動させられて熱交換が開始させ、超音波発生手段5を作動させる。伝熱管2の近傍の被加熱水に含まれるスケール成分は炭酸カルシウムなどの結晶を生成する。しかし、超音波によって水管1内部の被加熱水および伝熱管2が振動されるため、スケールの結晶粒子は伝熱管2などには付着しない。
水圧の負荷なしに同様の超音波振動をおこなった場合は、図2(a)に示すように水中の圧力(絶対圧)が振動によって3.2kPa以下となる場合があり(矢印ハ)、その場合水中に気泡が生じて、気泡崩壊圧によって伝熱管2などの表面が壊食損傷を受ける可能性がある。しかし、常圧(101kPa)に加えてαkPaの水圧を負荷した場合、図2(a)に示すように振動を受けても3.2kPa以上に維持することが可能であり、壊食損傷を防ぐことができる。
上記のようにスケールの付着と壊食損傷の両方を防ぐ運転をしていても、長期間使用していると徐々にスケールが付着し伝熱管2の表面を被覆する場合がある(図3)。その結果、熱交換性能が低下して被加熱水の出口温度が低下する。スケール検知手段である温度センサー6によって出口温度の低下を検知すると、制御部7は可変加圧手段3によって加圧程度を弱めるように制御する。その結果、キャビテーション壊食が発生するようになりスケールの被覆が振動による場合よりも効果的に剥離されて加熱性能が回復し、出口温度は所定の温度に戻る。温度センサー6によってスケールの不在を検知して、加圧条件を初期条件に戻すように制御する。
本使用目的のためには、超音波発生手段5の振動周波数はキャビテーションを発生しうる20kPa〜100kPa程度であることが望ましい。
(実施の形態2)
本実施の形態は、実施の形態1と共通の部分があるため、異なる部分を中心に説明する(図4)。本実施の形態における物理力発生手段は水管内に発生する水流である。可変加圧手段3は、出口部の流路断面積を入口部4よりも小さくしているため、可変加圧手段3よりも下流で流量が減少し、その結果水管内の入口部4と可変加圧手段3との間に水圧が付加される。流速は常に、3m/secを超えるように可変加圧手段3の開閉条件が定められる。水圧の負荷なしに同様の流速で被加熱水を供給すると、流速の大きな箇所でベルヌーイの法則によって負圧が生じて、その結果キャビテーションが発生して水管1や伝熱管2が壊食損傷を受けることがある。しかし、水圧を負荷した条件で運転することにより、キャビテーションの発生を防ぐことができる。
上記のようにキャビテーションの発生を防ぐ運転をしていても、水道水圧の変化などによってキャビテーションが発生する場合がある。本実施の形態ではキャビテーション検知手段としてマイクロフォン8が水管1の外側に設けられている。マイクロフォン8でキャビテーション特有のノイズを検知すると制御部7に検知信号を送る(図5)。制御部7は、可変加圧手段3による加圧を強化するように制御し、キャビテーションの発生を停止させる。マイクロフォン8によってキャビテーションの発生が検知されなくなると、初期の加圧条件で運転するように制御する。このようにしてキャビテーションの発生をより確実に防ぐことができる。
家庭用給湯機などの熱交換器に限らず産業用の給湯器、ボイラー、加圧水型原子炉の蒸気発生器においても利用可能である。特に、硬水地域において水道水や地表水を産業用に利用する場合に利用範囲が広い。
第1の実施形態におけるスケール防止装置の構成図 (a)水中の圧力変化とキャビテーションの発生との関係図(b)本発明の第1の実施形態における加圧によるキャビテーション防止の原理図 第1の実施形態における圧力変化のシーケンス図 第2の実施形態におけるスケール防止装置の構成図 第2の実施形態における圧力変化のシーケンス図
1 水管
2 伝熱管
3 可変加圧手段
4 入口部
5 超音波発生手段
6 温度センサー(スケール検知手段)
7 制御部
8 マイクロフォン(キャビテーション検知手段)

Claims (6)

  1. 耐圧に設けられ水を加熱する水熱交換器と、前記水熱交換器の内部の被加熱水を加圧する加圧手段と、前記熱交換器内に付着するスケールを物理力で剥離する物理力発生手段と、前記熱交換器と前記加圧手段と前記物理力発生手段とを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は前記加圧手段を作動させることにより前記熱交換器内部に正の水圧を付加した状態で前記物理力発生手段を作動させるようにした熱交換器用スケール防止装置。
  2. 物理力発生手段は、水熱交換器内の水を超音波振動することによってスケールの付着を防止する超音波振動手段である請求項1記載の熱交換器用スケール防止装置。
  3. 物理力発生手段は、水熱交換器内に水流を発生させることによって付着したスケールを剥離する水流式手段である請求項1記載の熱交換器用スケール防止装置。
  4. 加圧手段は、熱交換器から被加熱水が排出される出口部の流路断面積を入口部の流路断面積よりも小さくして水道水圧を熱交換器内に導入することによって被加熱水を加圧するようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱交換器用スケール防止装置。
  5. 熱交換器内でのスケールの付着程度を検知するスケール検知手段を設け、加圧手段は加圧の程度を可変に設けた可変加圧手段であり、制御手段は前記スケール検知手段によってスケールの付着が検知された際に前記可変加圧手段による加圧を弱くして物理力発生手段を動作させるようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱交換器用スケール防止装置。
  6. 熱交換器内でのキャビテーション発生を検知するキャビテーション検知手段を設け、加圧手段は加圧の程度を可変に設けた可変加圧手段であり、制御手段は前記キャビテーション検知手段によってキャビテーションの発生が検知された際に前記可変加圧手段による加圧を強くして物理力発生手段を動作させるようにした請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱交換器用スケール防止装置。
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