JP2010171860A - レドームおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高フロントバック性能を有するレドームを提供すること。
【解決手段】 コニカルレドーム(10)は、コア部(12)とこのコア部を挟むスキン層(13)とを有する円錐形部分と、この円錐形部分の外周部に設けられたフランジ(11)とを備えたコニカルレドームであって、少なくともフランジを覆うカーボンクロス(14)と、このカーボンクロスを覆う樹脂(16)と、を備える。
【選択図】 図5

Description

本発明は、円形の開口面を持つパラボラアンテナの前面を覆うレドームおよびその製造方法に関するものである。
近年の電波資源の有効活用のため、アンテナには放射指向特性の改善が求められ、より厳しい指向特性規格が適用されている。
特に地上マイクロ波回線においては、回線の輻輳化やデジタル化の進捗に伴う電波資源の有効活用を目的として、回線単位の信号容量の拡大と回線同志の干渉の軽減を目標とした議論が行われてきた。
デジタル化の技術によって、割り当てられた周波数をより多分割にすることにより、信号容量の拡大を実現している。一方、回線干渉には様々なものがある。例えば、アンテナの後方への不要放射による干渉や複偏波で使用する場合の、垂直と水平偏波信号の相互の干渉等があげられる。回線の干渉はアンテナから放射された電波により発生するものである。このため、回線上の空間で処理することはできない。その結果、回線の干渉を軽減するためには、電波がアンテナから放射される以前に対策を施す必要がある。
現在、地上マイクロ波回線に使用されているアンテナは、特殊な設置環境(ビルや煙突の内部へ収納など)を除けば、通常はレドームを装備している。
地上マイクロ回線にはパラボラアンテナが多く採用されている。このパラボラアンテナでは、反射鏡にレドームを取り付ける場合が多い。パラボラアンテナに装備されるレドームは、大半がコニカル形状をしている。そのようなレドームは、この技術分野において、コニカルレドームと呼ばれている。このコニカルレドームは円形の開口面を持つパラボラアンテナの前面を覆い、反射鏡外周部からレドームの斜辺が概ね30°程度の角度を有するものが多い。
このようなコニカルレドーム付きアンテナでは、後方への不要放射を抑制して良好な放射指向特性の前後比(以下、「フロントバック比(FB比)」と呼ぶ)を確保する必要がある。このために、アンテナ反射鏡の外周部(フランジ)に遮蔽板を巻くことにより、FB比の確保が容易に実現することが知られている。
例えば、特開2002−353723号公報(特許文献1)は、レドームのフランジ部分に円筒形の遮蔽板を設けたレドーム付パラボラアンテナを開示している。また、特開2003−218630号公報(特許文献2)は、反射鏡または主反射鏡とレドームとの間に、遮蔽板を設けたアンテナ装置を開示している。
また、特開2003−142918号公報(特許文献3)は、レドーム外周フランジ部表面から不要放射させる電波を簡単な構造により遮蔽して、主ビーム放射方向に対して広角度領域の放射指向特性を改善した開口面アンテナを開示している。この特許文献3に開示された開口面アンテナでは、レドームのフランジ部の全周にわたって導電性部材を形成している。レドームに導電性部材を必要としない場合、導電性部材が必要なレドームにのみ付ける。特許文献3には、導電性部材は、カーボン繊維が好ましいことが記載されている。
特開2002−353723号公報 (段落0016、図1) 特開2003−218630号公報 (段落0015、図4) 特開2003−142918号公報(段落0009〜0011、図2、図4)
特許文献1および特許文献2に開示されているような、アンテナ反射鏡外周部に遮蔽板を巻く技術では、アンテナ形状を大きくしてしまうことになる。その結果、耐風速性能の劣化、設置鉄塔へ与える風圧荷重の増加に繋がり、コニカルレドームを装備するアンテナに比較すると、優位性を欠くことは明確である。
アンテナの口径が小さい場合には質量、構造の容易さから遮蔽板を設けて樹脂製のレドームを装備する場合も多く、不要放射の抑制も容易である。数m以上のアンテナ用のレドームは、ガラス繊維を含んだFRP(Fiber Reinforced Plastic)を用いて整形されるものが一般的である。しかしながら、FRP材料の持つ誘電率は、テフロン(登録商標)(εr=2程度)等の樹脂に比較して大きく、εr=4程度を有しているため、電波の反射を抑えるための厚さの制御が必要になる。
また、アンテナの周波数帯域特性としては広帯域であることが要求されるが、誘電率が高く厚さを持つ構造に対してはV字の反射特性を有してしまう。そのため、アンテナ開口面から放射された電波は、レドームにより周波数帯域内で反射特性の差が生じてしまうことも影響して、レドーム内部を伝播してしまう電波も生じる。この伝播はレドームの外周へ進行するものもあり、外周から不要放射としてアンテナ後方へも放射されてしまう。このことにより、大容量アンテナに設けられる放射指向特性の規格(以下、高FB「フロントバック」と呼ぶ)を満足するための施策が必要となる。
また、反射特性等の電気的特性、機械的強度や軽量化の観点から、特に口径の大きいアンテナの場合には、レドームにはサンドイッチ構造を採用することが多い。この構造を採用した際に、不要放射の抑制を実現する上で電気的性能も含んだ機械的製作精度の確保も必須である。したがって、使用する材料の選択、加工方法の確立も重要な課題である。
一方、特許文献3に開示された開口面アンテナでは、レドームのフランジ部を導電性部材(カーボン繊維)で覆っており、導電性部材(カーボン繊維)が外部に露出している。その結果、導電性部材(カーボン繊維)が剥がれてしまう恐れがある。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、そのような剥がれを防止して、高フロントバック性能を有するレドームおよびその製造方法を提供することにある。
本発明のコニカルレドームは、コア部とこのコア部を挟むスキン層とを有する円錐形部分と、この円錐形部分の外周部に設けられたフランジとを備えたコニカルレドームであって、少なくともフランジを覆うカーボンクロスと、このカーボンクロスを覆う樹脂と、を備える。
本発明のフラットレドームは、コア部とこのコア部を挟むスキン層とを有するレドーム本体と、このレドーム本体の外周部に設けられたフランジとを備えたフラットレドームであって、レドーム本体は、フラットレドーム部分と、このフラットレドーム部分とフランジとの間に設けられたシュラウドとから構成される、フラットレドームにおいて、シュラウドに積層されたカーボンクロスと、このカーボンクロスを覆う樹脂と、を有する。
本発明によれば、フランジを覆ったり又はシュラウドにカーボンクロスを積層させ、そのカーボンクロスを樹脂で覆っているので、カーボンクロスの剥がれを防止しつつ、高フロントバック性能を有するレドームを提供することができる。
本発明が適用されるコニカルレドームを装備したアンテナ装置の外観を示す斜視図である。 図1に示したアンテナ装置に使用されるコニカルレドームの外観を示す斜視図である。 図2に示したコニカルレドームの部分断面図である。 カーボンクロスをフランジの面に貼り付けた、関連するコニカルレドームの部分断面図である。 本発明の第1の実施形態に係るコニカルレドームを示す部分断面面である。 本発明の第2の実施形態に係るコニカルレドームを示す部分断面図である。 図6に示したコニカルレドームの透視斜視図である。 本発明の第3の実施形態に係るコニカルレドームを示す部分断面図である。 遮蔽板を取り付けた従来のアンテナ装置を示す斜視図である。 フランジに本発明を適用していないコニカルレドームをパラボラアンテナの反射鏡の前面に取り付けた、アンテナ装置の放射指向特性を示す図である。 フランジに本発明を適用したコニカルレドームをパラボラアンテナの反射鏡の前面に取り付けた、アンテナ装置の放射指向特性を示す図である。 図9に示されるように、反射鏡外周部に遮蔽板を設けた、従来のアンテナ装置の放射指向特性を示す図である。 本発明が適用されるフラットレドームの外観を示す斜視図である。 本発明の第4の実施形態に係るフラットレドームを示す部分断面図である。 本発明の第5の実施形態に係るフラットレドームを示す部分断面図である。 本発明の第6の実施形態に係るフラットレドームを示す部分断面図である。
前述したように、地上マイクロ波回線等に使用するパラボラアンテナでは反射鏡にレドームを取り付ける場合が多い。本発明では、このレドームを利用して放射指向特性の改善を目指した。特性を改善するに当たり、アンテナの形状が設置条件に与える影響を最小限に抑えるための方針として、既存の形状を極力変えない方向で検討し、レドーム(主に使用されているものはコニカルレドーム)の形状を変更しないで対応することとした。反射鏡への取り付けに使用するフランジからは不要放射があり、これが放射指向特性に悪影響を及ぼしていることから、本発明者らは、不要放射の抑圧を目的として対策を検討した。
ここに、本発明では、炭素繊維を束ねたカーボンクロスやカーボンマットが使用方法によっては金属の反射板相当の効力を持つ特徴を利用して、フランジからの不要放射を抑える方法を選択した。しかしながら、これらのカーボン素材を特性の改善が得られるように取り付け、配置するためには、レドームとして使用するための技術的な課題もあり、本発明ではその方法を確立した。
換言すれば、本発明では、主に回線干渉に影響のあるアンテナ後方への不要放射を軽減するための方法をレドームに採用し、その生産効率を向上させる方法を発明した。また既存のアンテナ相当の構成とすることで、強度的に既設の鉄塔を補強せず設置できるアンテナを実現した。
本発明では、レドームの外周部に反射鏡との組み立てに用いるために設けたフランジに、炭素繊維を含有した織り布(以下、「カーボンクロス」と呼ぶ)でフランジ部を覆うことで、レドーム内を伝播する電波がレドームのフランジから放射されることを抑制している。
更に、反射鏡の前面方向で、レドームの一部にカーポンクロスの積層範囲を延長することで、アンテナの側面方向への放射も抑制することができ、よりフロントバック性能を向上させることが可能である。
レドームの製作において従来から用いられているハンドレイアップ成形の場合、カーボンクロスでフランジを覆うにはFRP樹脂で貼り付ける必要がある。これに対して、真空成形を用いる方法によりレドーム本体の成形及びフランジ部へのカーボンクロスの同時積層を実現したことで生産性を向上している。
また、レドームフランジ部の製作の過程において、レドームの直径の製造公差に収めるために削り等のトリミングを行うが、フランジの表面側にはカーボンクロスをFRP内に積層すると同時に、その間には炭素繊維をフェルト状に束ねた材料(以下、カーボンマットと呼ぶ)を用いることで、フランジの外周部近辺で直径方向にカーボン繊維の幅を持たせることが可能になり、トリミング後にカーボンが失われ難くすることで加工性・作業性の向上も図っている。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1ないし図8を参照して、本発明に係るコニカルレドームが適用されるアンテナ装置について説明する。
図1はコニカルレドームを装備したパラボラアンテナ装置の外観例を示す斜視図である。図示のパラボラアンテナ装置は、コニカルレドーム10と反射鏡20とで構成される。
図2に示すように、コニカルレドーム10はフランジ11を有しており、図1のように、反射鏡20に固定されている。
コニカルレドーム10の円錐形部分は、強度及び質量の観点から、サンドイッチ形状の図3に示すような断面を有している。コニカルレドーム10の円錐形部分は、コア部12と、このコア部12を挟むようにガラスクロスにFRP樹脂を浸透させたスキン層13とで構成される。また、図3のフランジ11は、FRP樹脂で成形されたものである。
図4は、本発明に関連するアンテナ装置において、カーボンクロス14をフランジ11の面へ貼り付けた場合の断面を示す。この範囲にカーボンクロス14を貼り付けることで、図4の下方、アンテナ背面側への不要放射を抑制することができ、良好な指向特性を確保することができる。
FRP16のみで成形していたフランジ11の場合、場合によってはレドーム10の外径を公差内に収めるためにフランジ部で直径が決まるためトリミングを行って外周を削る必要が出る場合がある。その場合、図4で示した構造では、外周部に巻いたカーボンクロス14まで削れてしまい、再度カーボンクロス14を不足した範囲に貼り付ける必要があるため、作業工数が増加してしまう。
図5にフランジ11の成形にカーボンマット15を使用した場合の断面図を示す。図5の構造では、直径方向に幅のあるカーボンマット15を用いて積層することにより、フランジ外周部を削ってもカーボンを含んだ層が残る。このため、トリミング処理を施しても、カーボンクロス14を貼り付ける作業は発生しないため、効率的である。
ここで、図6に示すとおり、レドーム10の一部の面積範囲にカーボンクロス14をスキン層13内に同時積層してもよい。この方法により、パラボラアンテナ装置としての形状が変わることによる耐風速性能の劣化を招かずに、放射指向特性における広角の指向特性を更に改善することができる。
その際のレドーム10への積層範囲の例を図7の斜線部で示す。図7において、例えば水平面方向の指向特性の改善を図る場合には、斜線部分の積層範囲をアンテナの左右の位置に配置することで改善の効果がある。この場合、不要放射の抑制効果を高めるためには、フランジ11に積層したカーボンクロス14とレドーム面に積層するカーボンクロス14とは連続または隙間を持たせずに接触していることが必要である。
図7の積層範囲については、電波吸収体をレドーム内面へ貼り付けることによっても実現できる。その場合、電波吸収体の固定方法、固定のためのレドームへの追加加工を要することになり、生産性を挙げることができない。しかしながら、カーボンクロス14を同時積層することにより、追加の作業が不要であるため、レドーム成形作業のみで実現できるものである。
次に、本発明の第1の実施例に係るパラボラアンテナ装置の動作について説明する。
図4に示すように、レドーム10のフランジ11にカーボンクロス14を貼り付けまたは巻きつけることにより、パラボラアンテナ装置の後方へ散乱する不要放射電波を抑制することができる。
図8に示すように、密閉型製法によりレドーム10の成形時にカーボンクロス14を同時に積層することにより、製作時間を短縮することができ、また機構寸法公差を所望の範囲に収めることが容易になる。
図5に示すように、レドーム10の外周部にカーボンマット15を使用して積層することで、FRPの充填をより効率的に行いつつカーボン繊維を積層できると同時に、所望の寸法公差の実現が可能である。
図6、図7に示すように、フランジ部分への積層に加えて、レドーム面内へもカーボンクロス14の積層を行うことで、図9に示したような、遮蔽板30を設置した従来のパラボラアンテナ装置の場合に近い特性を得ることが出来る。
既に製作済みのレドーム10がある場合、カーボンクロス14をフランジ部の上面から側面を経由し下面まで隙間が発生しないように覆う。カーボンクロス14は柔軟な素材であるため、曲線部分や凹凸のある部分に沿わせることは容易であり、不要な部分は簡易に刃物で成形も可能である。所望の貼り付け範囲にカーボンクロス14を形状に合わせて沿わせ、その上からFRP樹脂を塗る。乾燥により硬化させると同時に、FRPの接着性を利用してフランジ11上に貼り付けを行うことで、所望範囲を覆い不要放射の抑制を実現する。
ハンドレイアップの場合、成形済みのレドームを用いてフランジ部分にカーボンクロス14を貼り付ける範囲の部分のみカーボンクロス14とFRP樹脂を塗布する厚さの分を削り込んでおき、カーボンクロス14を巻きつけて接着を兼ねてFRP樹脂を塗る。但し、これらの方法の場合には、カーボンクロス14をフランジ11に接着した後に、外観について処理を施す必要がある。
密閉成形方式の場合、型にコア部の発泡ウレタンを並べる際にカーボンクロス14を積層する範囲にあらかじめ敷き詰めておく。この際に、フランジ11の両面を覆うように並べておくことで、FRPを充填するときにカーボンクロス14にも同時にFRP樹脂を染み込ませることができ、追加での貼り付け作業を行わずに一体で成形を行うことができる。
また、遮蔽板30(図9)の効果を想定し、コニカルレドーム10の反射鏡前面の一部範囲にカーボンクロス14を延長させて積層することにより、不要な放射を抑制することが可能である。この延長して積層する範囲に電波吸収体を貼り付けることでも同等の効果が得られるが、カーボンクロス14を同時積層させることで安価に実現できる。
実際の製作ではレドーム10の直径を更に精度を高く製作する場合は、フランジ11の外周部をトリミングする必要がある。型で成形した後に切削して直径を所望の公差内に収める。この加工を実施すると外周部に積層した薄いカーボンクロス14は削り落とされる部分が出るため不要放射を抑制する効果が失われる。これを防止するため、フランジ部分のうち外周寄りをカーボン繊維のみのサンドイッチ構造にし、直径方向に幅を持たせたカーボンマット15をフランジ外周部に設けカーボンクロス入りスキン層で挟むことにより、成形後に切削加工を行ってもカーボンを含んだ層が常に存在している状態を保つことができる。
図10ないし図12を参照して、本発明に係るコニカルレドームを備えたパラボラアンテナ装置の効果を説明するために、本発明と従来の放射指向特性について説明する。
図10は、フランジ部に本発明を適用していないコニカルレドームを具備した従来のパラボラアンテナ装置の場合の放射指向特性の一例を示す特性図である。図11は、本発明の第1の実施の形態に係るパラボラアンテナ装置の場合の放射指向特性の例を示す図である。図12は、コニカルレドームを使用せず、指向特性の改善のために反射鏡外周部に遮蔽板30を設けたパラボラアンテナ装置(図9)の場合の放射指向特性の例を示す特性図である。図10ないし図12において、横軸は角度(ANGLE)[DEG]を示し、縦軸はFB比である相対電力(RELATIVE POWER)[dB]を示している。また、図10ないし図12において、40の点線は、国内放射指向特性規格を示す。反射鏡20としては90°開口(アンテナの軸方向に対し、反射鏡20の焦点から見た反射鏡20の開口範囲が90°までの構造)を使用している。このため、アンテナの放射軸方向を0°としたとき90°までの範囲が主に反射鏡20から放射される範囲で、90°より先の範囲は反射鏡20の背面側にあたる。
図10から、従来のパラボラアンテナ装置の場合(本発明を適用しないレドームの場合)、90°以上の範囲において、アンテナ軸方向の放射レベルに対しFB比が60dB強までを確保できている。
図11から、本発明に係るパラボラアンテナ装置の場合、FB比が70dB程度まで確保できている。現在国内で適用されているFB比の規格としては、110〜170°の範囲において、65dB以上を確保することが必要条件となっており、本発明を適用することで、十分な効果が得られていることが確認できる。
図12から、図9に示したパラボラアンテナ装置の場合、遮蔽板30の効果により90°の手前の範囲においても指向特性のレベルを抑える効果が確認できる。しかしながら、90°以上の範囲におけるFB比の性能は、図11に示した本発明適用のコニカルレドームの場合と大きな差はなく、本発明の適用でアンテナの構造を大型化することなく特性を確保できている。
パラボラアンテナ等に使用しているコニカルレドーム10においては、反射鏡20へ取り付けるためのフランジ11を有するものが一般的である。本発明では、このフランジ11に着目し、フランジ端部から放射される電波が後方不要放射へ及ぼす影響を軽減するためのレドーム10の製造方法について検討した。レドーム10のフランジ11は、取り付け時の強度の確保等の必要性から、FRP単一の板状としていることが通常である。
本発明は、アンテナの放射指向特性のうち、後方へ放射される不要電波を抑制するためのものである。ここに使用するカーボンクロス14は、その特徴として柔軟性があり、既に成形されている部品(レドーム10のフランジ11)の形状に合わせることができる。そこで、成形済みのフランジ11に形状を合わせて貼り付けて覆うことで、電気特性を改善できる点がまず挙げられる。貼り付けにはFRP樹脂を用い、カーボンクロス14共に塗布することで貼り付けが可能である。この場合、既に成形されているものに追加で貼り付けることも可能であり、特性改善のための改造工事も可能である。
ハンドレイアップ(下型を用いて手作業でFRPを塗り重ねていく方法)を用いて成形する場合、上記同様の作業によりカーボンクロス14を貼り付けで行う。
また、密閉成形方法(上型と下型を用いて、その間にFRPを吸引しながら充填して成形する方法)を用いた場合には、カーボンクロス14を成形開始時にフランジ部分に敷いておくことにより、同時に積層することが可能である。
更に、密閉成形方式において成形を行う場合、フランジ11の外周部はレドーム10の直径を確保するためにトリミングを行い最終的な調整加工を行う。そのため、最外周のカーボンクロス14が不足する可能性が高くなるが、図6に示す構造を適用し、幅のあるカーボンマット15を用いて積層することにより、カーボン部分を欠損させずに加工を行うことが可能になる。
次に、本発明の他の実施の形態に係るパラボラアンテナ装置について説明する。
図13ないし図16を参照して、本発明が適用されるパラボラアンテナ装置に使用されるフラットレドーム10Aについて説明する。
図13ないし図16は、カーボンクロス14を使用した応用例として、反射鏡外周部からFRPの立ち上がり(以下、シュラウド17と呼ぶ)を有するフラットレドーム10Aを用いた場合を示す図である。その場合、そのシュラウド17内にフラットレドーム10Aの成形時に、カーボンクロス14を同時に積層し、遮蔽板と同様の効果を持たせることができ、放射指向特性への影響を軽減することが可能である。
図14は、フラットレドーム10Aのシュラウド17にカーボンクロス14を積層した場合の断面図である。この方法により、FRPのみで成形した場合においても、遮蔽板相当の効果を有することが可能になる。
また、図15に示すとおり、カーボンクロス14に放電策(リード線)18をその端部を溶接または接着19により設けておき、反射鏡20等の金属部分へ接続させ電気的に導通させることにより、カーボンクロス14部分に到来した電波により誘起された電流を金属部分へ逃がすことで、更に不要放射を軽減することが可能になる。
更に、図16に示すように、フラットレドーム10Aのフランジ11に、図6、図5、図4、図8に示す断面構造と同様に、カーボン繊維を含んだ、カーボンクロス14もしくはカーボンマット15を積層することにより、フロントバック性能の向上を得ることができる。
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細は、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
本発明は、サンドイッチ構造を持つレドームの放射指向特性の向上を主目的として行ったものであるが、カーボンクロス及びカーボンマットによる遮蔽効果はFRPが単層で成形される場合にも応用することが可能である。応用方法としては、ハンドレイアップ等の型を使用した成形のみに限定するものではなく、単板で成形済みの材料を使用した場合でも可能である。
10 コニカルレドーム
10A フラットレドーム
11 フランジ
12 コア部
13 スキン層
14 カーボンクロス
15 カーボンマット
16 FRP(繊維強化プラスチック)
17 シュラウド
18 放電索(リード線)
19 溶接または接着
20 反射鏡
30 遮蔽板
40 国内放射指向特性規格

Claims (13)

  1. コア部と該コア部を挟むスキン層とを有する円錐形部分と、該円錐形部分の外周部に設けられたフランジとを備えたコニカルレドームにおいて、
    少なくとも前記フランジを覆うカーボンクロスと、
    該カーボンクロスを覆う樹脂と、
    を備えたことを特徴とするコニカルレドーム。
  2. 前記カーボンクロスが前記円錐形部分の一部に延在して設けられている、請求項1に記載のコニカルレドーム。
  3. 前記樹脂が繊維強化プラスチックからなる、請求項1又は2に記載のコニカルレドーム。
  4. 前記フランジは直径方向に幅のあるカーボンマットを有する、請求項1乃至3のいずれか1つに記載のコニカルレドーム。
  5. 請求項1に記載のコニカルレドームを製造する方法であって、
    前記カーボンクロスを貼り付ける範囲の部分のみ削り、
    該削った部分に前記カーボンクロスを巻きつけ、
    前記カーボンクロスを前記樹脂で覆う、
    コニカルレドームの製造方法。
  6. 前記樹脂が繊維強化プラスチックからなる、請求項5に記載のコニカルレドームの製造方法。
  7. 請求項1に記載のコニカルレドームを製造する方法であって、
    前記コア部を並べる際に、前記カーボンクロスを敷き詰め、
    前記スキン層と前記フランジとを形成するために前記樹脂を充填するときに、前記樹脂をカーボンクロスに染み込ませる、
    コニカルレドームの製造方法。
  8. 前記樹脂が繊維強化プラスチックからなる、請求項7に記載のコニカルレドームの製造方法。
  9. コア部と該コア部を挟むスキン層とを有するレドーム本体と、該レドーム本体の外周部に設けられたフランジとを備えたフラットレドームであって、前記レドーム本体は、フラットレドーム部分と、該フラットレドーム部分と前記フランジとの間に設けられたシュラウドとから構成される、前記フラットレドームにおいて、
    前記シュラウドに積層されたカーボンクロスと、
    該カーボンクロスを覆う樹脂と、
    を有することを特徴とするフラットレドーム。
  10. 前記カーボンクロスに接続された放電策を更に有する、請求項9に記載のフラットレドーム。
  11. 前記カーボンクロスが、前記フランジにも積層されている、請求項9又は10に記載のフラットレドーム。
  12. 前記樹脂が繊維強化プラスチックからなる、請求項9乃至11のいずれか1つに記載のフラットレドーム。
  13. 請求項9に記載のフラットレドームを製造する方法であって、
    前記レドーム本体を成形する時に、前記カーボンクロスを同時に積層する、フラットレドームの製造方法。
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