JP2010164483A - 非破壊検査装置および非破壊検査方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】被検査物の外層側の強磁性層の影響を選択的に除去し、被検査物の外層側から内層側の損傷状態を迅速かつ正確に検査する装置および方法の提供。
【解決手段】被検査物150に磁束を作用させるとともにインダクタンスおよび抵抗に関する情報を出力するセンサ部110と、被検査物150を表面磁化させる磁化器120と、交流電流の供給および被検査物150の損傷状態の判断をする信号処理装置と、直流電源装置とを備えた非破壊検査装置を用い、外層151側が強磁性を帯びた被検査物150の内層153側の損傷状態を検出する非破壊検査装置であって、センサ部110を跨いで磁化器120を配設し、外層151側を表面磁化するとともにセンサ部110が磁束を内層153側まで浸透させて内層153側の損傷状態に対応したインダクタンスおよび抵抗に関する情報を出力する。
【選択図】図2
Description
このような方法にあっては、被検査物が強磁性体などの透磁率が高い材料で構成されている場合、検出コイルの磁束が肉厚深くまで浸透しないため、検出精度が低下する。これを防止するため、被検査物を予め磁気飽和して渦流探傷する方法も提案されている(例えば特許文献1または特許文献2)。
特許文献1に記載されている方法、すなわち被検査物を予め磁気飽和してから渦流探傷する方法では、被検査物の全体が強磁性を有するものを検査対象とし、被検査物の全体に対して磁気飽和させることによって、検出コイルの検出精度低下の防止を図るものである。
また、特許文献2に記載されている方法では、磁性体でできた管の内部に渦流探傷用プローブを内挿させて、管内部から磁気飽和させることによって、管内部の正確な探傷を行うものである。
また、被検査物が、例えばエチレン分解炉プラントで使用を継続したHP材のように、外層側には表面酸化窒化現象によって酸化層および窒化層からなる強磁性層が形成され、内層側には浸炭現象によって強磁性層が形成され、外層側と内層側の間にはいわゆる健全層としての非磁性層が残存した状態となっている場合には、検出部を2つ用いた渦流探傷法が提案されている(例えば、非特許文献1または非特許文献2)。
例えば、非特許文献1に記載されている方法は、第1検出部で被検査物の表面層と内面の磁気変化量を測定し、磁界をごく浅く表面層のみにかかるようにした第2検出部で表面層の磁気変化量を測定するものである。これらの磁気変化量を相殺して内面のみの磁束密度の変化量を出力する。
非特許文献2に記載されている方法も、2つの検出コイルの信号の差引きによって測定するものである。
特許文献1に記載の方法は、全体が強磁性体の測定対象物を対象としており、非磁性体の外層側と内層側とに強磁性層が生じた場合は想定していないため、内層側の強磁性層(浸炭層)までも磁気飽和してしまい、内層側だけの損傷状態(浸炭現象)を正確に検査することができないという問題があった。
また、特許文献2の方法では、渦流探傷用プローブを管内に挿入しなければならず、そのためにはプラント運転を停止し、管の両端を開放するといった煩雑な検査作業が必要で、迅速な検査は難しく、プラントの稼働率に影響を及ぼすといった問題があった。
さらに、非特許文献1や非特許文献2に記載の方式では、必然的に被検査物の外表面の2箇所から磁気変化量等の信号を読み取ることになり、誤差が大きくなる問題があった。すなわち、非特許文献1の渦流探傷法で説明すれば、被検査物の外表面の強磁性層の厚みや強度の表面分布がある場合には、測定したい箇所の損傷状態を検出する第1検出部における表面層の磁気変化量と、第2検出部における表面層の磁気変化量とが異なることになり、測定したい箇所の内面の磁気変化量は正確に検出されない。
さらに本発明では、前記センサ部は略コ字状に形成されたことが好ましい。
そしてさらに本発明では、前記センサ部は略コ字状に形成されたことが好ましい。
図1において、100は非破壊検査装置であり、主にセンサ部110、磁化器120、信号処理装置130、直流電源装置140から構成される。また、150は被検査物である。より具体的な非破壊検査装置100の構成としては、センサ部110と磁化器120とから構成される被検査物150に対して当接させるプローブと、このプローブ対して信号処理装置130、直流電源装置140を接続した構成などが挙げられる。
センサ部110としては、コ字状型、パンケーキ型等のコイルを用いることができる。特に、コ字状型のものが、検査精度の観点から好ましい。
このコ字状型のセンサ部110は、二つの自己誘導型コイルを互いに反対方向に巻き、コ字状の珪素鋼板を導入して構成されている。このようにセンサ部110を構成することによって、空芯コイルとは異なり、励磁される磁束が強くなり、強い信号を得ることができるようになる。また、被検査物150中に流れる磁路が明確になり、磁束が深く浸透するようになる。
センサ部110には信号処理装置130が接続されており、信号処理装置130から、このコイルへ交流電流を印加して磁束を発生させ、その磁束を被検査物150内部へと浸透させ、被検査物150内部に渦電流を発生させる。被検査物150に損傷が存在すると、この損傷に起因してコイルのインダクタンスおよび抵抗が変化する。センサ部110はインダクタンスおよび抵抗に関する情報を信号処理装置130へと出力する。信号処理装置130は、後述するように、変化したインダクタンスおよび抵抗に関する情報の変化から被検査物150の損傷状態を判断する。
ここで、被検査物150の外表面が強磁性を帯びて強磁性層を形成している場合、その外表面側から交流磁束を印加すると、表皮効果により被検査物150の肉厚方向に浸透する磁束は深くなればなるほど弱くなっていく。そのため肉厚方向の深いところにある損傷状態に基づくインダクタンスや抵抗の変化を検出することができない。この現象は強磁性体の透磁率が大きいほど顕著に現れる。
そのため、後述する磁化器120によって外表面の強磁性層を選択的に磁化(以下、表面磁化と称する)させながら、強磁性の影響をキャンセルさせた状態でセンサ部110から磁束を内部へと効率的に浸透させて作用させる。すなわち、表面磁化とは、磁化器が被検査物の外表面側から磁化することであって、センサ部によって検出される被検査物内部の損傷部分(領域)でのインダクタンスや抵抗の値へ影響が及ばないように選択的に磁化することをいう。
信号処理装置130としては、LCRメータ等を用いることができる。信号処理装置130は励磁電圧を設定し、励磁周波数を変化させながら、センサ部110に交流電流を供給し、センサ部110から出力される周波数毎のインダクタンスおよび抵抗に関する情報を受信する。そして、信号処理装置130は、制御部、演算部、記憶部、入力部、表示部を備えている。
制御部は、演算部、記憶部、入力部、表示部と制御可能に接続される。また、センサ部110、磁化器120、直流電源装置140とも制御可能に接続される。なお、制御部は本実施形態では信号処理装置130に組み込まれたものとして説明するが、非破壊検査装置100に別途制御部を設けて制御させても良いし、非破壊検査装置100にパーソナルコンピューター等を外部接続して制御させても良いし、信号処理装置130に制御情報や演算結果などを送受信可能な通信部を設けて、ネットワークを通じて制御させても良い。
センサ部110への交流電流の供給は、前記したように被検査物150の外表面の強磁性を表面磁化させながら行うことで、被検査物150の内部に効率的に磁束を浸透させることができる。
演算部は、受信したインダクタンスおよび抵抗に関する情報に基づいて正規化インダクタンスおよび正規化抵抗を演算し、後述する正規化インピーダンス図としてのインピーダンス曲線を作成する。そして、作成したインピーダンス曲線や後述する検量線等に基づいて損傷状態を判断することができる。
記憶部は、インピーダンス曲線に基づいて、後述する損傷状態の判断に必要な被検査物150の物性データ、測定パラメータ、検量線データ等の情報を記憶することができる。なお、演算部は記憶部に記憶された情報を適宜読み出して演算処理を行うことができる。
入力部は、上述した物性データや測定パラメータ等を入力するためのものである。なお、記憶部に記憶されるデータは、入力部から入力されるデータ、演算部で演算した結果に関するデータついても記憶することができる。
表示部は、インピーダンス曲線や損傷状態の判断結果等を表示することができる。なお、表示部に表示させずに、信号処理装置130に接続された表示装置に表示させても良い。
制御部は、上述した信号処理装置130の動作を制御する他、センサ部110の動作も制御する。
前述のように、表皮効果によって被検査物150の肉厚方向の深い位置にある損傷状態を検査するのが困難であるため、本発明では、磁化器120を用いて表面磁化することによって、センサ部110からの磁束を被検査物150の肉厚方向へ深く浸透させようとするものである。
また、磁化器120は極間式磁化器であって、被検査物150の表面を直流磁化するために直流電源装置140に接続されている。
また、磁化器120はセンサ部110を跨ぐように配設させてある。跨がない場合と比べ、跨ぐように配設させることで、磁化器120の極間の中央付近の相対的に強く、かつ均一な磁化状態の領域で計測することができるようになる。
ここで、被検査物150が平板状である場合は、磁化器120がセンサ部110跨げば、磁化器120の極間の中央付近の強く、かつ均一な磁化状態が使用できるため、コ字状のセンサ部110を磁化器120に対して平行に配設しても、直交させて配設してもよい。
一方で、被検査物150が配管のような曲率を有する場合だと、配管の曲率の影響を受けるため、磁化器120とコ字状のセンサ部110をともに軸方向に配設する必要がある。
磁化器120を被検査物150の外表面に接触させて直流電流を印加し、強磁性層を表面磁化させ、透磁率を減少させつつ、前記したセンサ部110で発生する磁束を内部へと浸透させる。磁化器120を被検査物150の外表面に接触させた方が、磁気回路が閉じ、被検査物150の内部の損傷状態に影響が及ばず、損傷状態に基づくインダクタンスや抵抗の値を正確に検出できるようになる。
このように強磁性層による影響を選択的に除去することで、センサ部110からの磁束は強磁性層の影響を受けることなく、被検査物150の内部へと浸透することができ、内部の損傷状態だけをインピーダンスや抵抗に関する情報として選択的に得ることができる。
なお、直流電流の供給や表面磁化については信号処理装置130が備える制御部によって制御される。
直流電源装置140は磁化器120に接続される。直流電源装置140から磁化器120に対して直流電流を印加することによって、被検査物150の表面部分が表面磁化される。センサ部110が被検査物150の損傷状態に応じたインダクタンスや抵抗に関する情報を信号処理装置130へと送信し、信号処理装置130が当該情報の受信を完了するまでの間、表面磁化が行われる。なお、直流電流の供給は信号処理装置130が備える制御部によって制御される。
次に、上記非破壊検査装置を用いて行う非破壊検査方法について、実験1〜実験4を例に挙げて説明する。
実験1では、被検査物150を模擬した試験片を用いて行う模擬試験にしたがって説明する。
模擬試験の対象となる試験片は、使用済みのエチレン分解炉管(Fe-35Ni-25Cr)を模擬したものである。実際のエチレン分解炉管は、未使用時は非磁性であるが、分解炉の中で高温にて使用を継続すると、管の外層の表面が酸化されて強磁性を帯び、さらに使用を継続すると酸化層の下に窒化層が形成される。この窒化層もCr窒化物の形成により酸化層と同様にマトリックス中のCrが減少するので、強磁性を帯びている。また、内層側は、いわゆる浸炭によって強磁性を帯び、外層と内層との間に中層として非磁性層(エチレン分解炉管の例では健全層ともいう場合がある)が存在している状態となる。
なお、外層に形成される強磁性の酸化層の厚さは最大で0.3mm程度である。この酸化層の下に窒化層が形成されると強磁性領域の厚さは最大で2〜3mm程度となることがわかっている。
中層152には非磁性のSUS304(JIS G4305)を用いた。
浸炭層としての強磁性の内層153には炭素鋼のSK3(JIS G4401)を用いた。内層153の厚みは、全肉厚に対して0%(浸炭層が形成されていない場合に相当)、30%、50%、70%の4種類とした。
酸化窒化層としての強磁性の外層151には、炭素鋼のSK5(JIS G4401)を用いた。外層151の強磁性層の厚みは、0mm(酸化窒化層が形成されていない場合に相当)、0.3mm、1mm、2mmの4種類とした。
ここでは、外層151側と内層153側の磁性がそれぞれ異なる状態を想定して、異なる炭素鋼を選択した。
これらの試験片は圧延方向を長手方向に揃え、前記SUS304、SK3、SK5をクランプで固定して密着させた。このようにして、各厚みの条件を組合せて、計16種類の試験片(A〜P)で模擬試験を行った。その組合せを表1に示す。
図1に示すように、コ字状型のセンサ部110および磁化器120を試験片上にそれぞれ配設し、センサ部110を信号処理装置130(LCRメータ)に接続し、磁化器120を直流電源装置140に接続した。このとき、前記したように磁化器120はセンサ部110を跨ぐようにして配設されている。
センサ部110を試験片の圧延方向に対して垂直になるように配置した。次に磁化器120(磁化器としての起磁力は5200AT)に9Aの直流電流を印加し、試験片の外層151を表面磁化させた。なお、実験1では、電流値を9Aとしたが、これに限られない。内層153の損傷状態を検査する場合には、表面磁化することが可能であって、かつ、内層153側を磁化し過ぎない程度の電流値であればよい。表面磁化することができなければ、内層153側の浸炭に関する情報を正確に得ることができず、一方で内層153側を磁化し過ぎてしまうと、センサ部110が内層153側のインピーダンスや抵抗に関する情報を信号として明確に得ることができなくなるからである。センサ部110が信号を明確に検出するには、電流値が0.1A以上9A以下であることが好ましい。
この表面磁化の状態を維持しながら信号処理装置130(LCRメータ)の励磁電圧を1Vに設定し、励磁周波数を40Hz〜8000Hzと変化させ、センサ部110から被検査物150に対して磁束を作用させ、各励磁周波数におけるセンサ部110から出力されるインダクタンスLおよび抵抗Rを信号処理装置130に受信させた。
その後、センサ部110のコイル部分を試験片から離した状態で、前記と同様に周波数を変化させ、その時のインダクタンスL0および巻線抵抗R0を測定した。
一方で、本実施形態に係る非破壊検査方法との比較のために、上述した試験方法において、磁化器120を用いず、センサ部110のみを用いた場合についても検査を行った。
(センサ部のみ用いた場合)
図3から図6は、磁化器120を用いず、センサ部110のみを用いた場合の、センサ部110のインダクタンスLおよび抵抗Rの測定結果から作成した正規化インピーダンス図である。
ここで、インピーダンス図とは、試験コイルのインピーダンス変化の状況を表すために、横軸に抵抗R、縦軸にリアクタンスLを取った図をいう。そして、正規化インピーダンス図とは、試験コイルの特性の変化を統一的に把握するために、インピーダンス図の横軸、縦軸成分を無次元化した図のことをいう。
試験片A〜Dのインピーダンス曲線は、外層151に強磁性層が形成されていない状態なので、内層153(浸炭層)の変化に応じて低周波側の正規化インダクタンス(L/L0)の値が上昇した。
一方で、試験片E〜Pのインピーダンス曲線では、正規化インダクタンスの値の差が少なくなっており、内層153(浸炭層)の状態に応じた正規化インダクタンスの値の差を明確に検出することが出来なかった。
図7〜図10は、センサ部110と磁化器120を併用した場合の、センサ部110のインダクタンスLおよび抵抗Rの測定結果から作成した正規化インピーダンス図である。
磁化器120を使用しない場合とは異なり、外層151が強磁性を有していても、内層153(浸炭層)の状態に応じた正規化インダクタンスの値の差を明確に検出することが出来た。
実験2では、実際の使用済みエチレン分解炉管を試験片として検査を行った場合について説明する。
なお、エチレン分解炉管材料の代表的なものとして、HK40(Fe−20Ni−25Cr)、HP35(Fe−35Ni−25Cr)、KHR45A(Fe−43Ni−32Cr)などが挙げられるが、実験2ではHP35を用いたエチレン分解炉管の場合を例に挙げて説明する。
実験2で用いたエチレン分解炉管は、未使用時は非磁性であるが、分解炉の中で高温にて使用を継続すると、図2に示すように管の外層151の表面が酸化されて強磁性を帯び、さらに使用を継続すると酸化層の下に窒化層が形成される。この窒化層もCr窒化物の形成により酸化層と同様にマトリックス中のCrが減少するので、強磁性を帯びている。また、内層153側は、いわゆる浸炭によって強磁性を帯び、外層151と内層153との間に中層152として非磁性層(エチレン分解炉管の例では健全層ともいう場合がある)が存在している状態となる。
また、試験片の各寸法は表2に示す。
その後、センサ部110のコイル部分を試験片から離した状態で、前記と同様に周波数を変化させ、その時のインダクタンスL0および巻線抵抗R0を測定した。
図11は、実験2における、センサ部110のインダクタンスLおよび抵抗Rの測定結果から作成した正規化インピーダンス図である。
これに対して図12を見ると各試験片の外表面からの各距離における炭素量は、試験片Qが最も多く、試験片Tが最も小さく、試験片Rと試験片Sは試験片Qと試験片Tとの間であって、ほぼ同等の炭素量であることが分かった。
そして、これらの結果を比較すると、図11の正規化インピーダンス図の浸炭の傾向と図12の外表面からの炭素量変化の傾向とが一致していることも分かった。
実験3では、実験2と同じ使用済みエチレン分解炉管を試験片として、実験1で用いたものと同様の非破壊検査装置100を用い、磁化器120による表面磁化を行う際の電流値について実験した。磁化電流値の条件は、0A(磁化なし)、0.1A、0.3A、0.5A、1A、3A、9Aとした。
実験2と同様にして、非破壊検査装置100を試験片Q〜Tにセットした。なお、センサ部110と試験片Q〜Tとの距離を実験2よりも小さく設定した。センサ部110が作りだす磁束を試験片Q〜Tの肉厚深くに浸透させるためである。
上記した磁化電流値毎に、励磁周波数を40Hz〜8000Hzと変化させ、センサ部110から試験片Q〜Tに対して磁束を作用させ、各励磁周波数におけるセンサ部110から出力されるインダクタンスLおよび抵抗Rを測定した。
その後、センサ部110のコイル部分を試験片から離した状態で、前記と同様に周波数を変化させ、その時のインダクタンスL0および巻線抵抗R0を測定した。
そして、センサ部110のインダクタンスLおよび抵抗Rの測定結果から正規化インピーダンス図を作成した。これを図13〜図19に示す。
この正規化インピーダンス図から、各電流値の条件における正規化インダクタンスの最大値を読み取り、さらに正規化インダクタンスの最大値差を算出した。
一方、図14〜図19を見てみると、0.1A以上では、試験片RとSの正規化インピーダンス曲線における低周波側から高周波側までの挙動が一致している。これは試験片RとSとでは浸炭状態が似通っていることを示唆しており、図12が示す試験片RとSの浸炭状態の相対的な関係と同じであるとともに、試験片Q〜Tの相互においても、相対的な関係が、図12の傾向と一致している。
したがって、0A(磁化なし)では試験片Q〜Tの内層153側の浸炭層の正確な情報を得ることができず、表面磁化(実験3では0.1A、0.3A、0.5A、1A、3A、9Aの電流値条件)によって浸炭層の正確な情報を得られることが分かった。
図20を見てみると、(i)および(ii)においては、正規化インダクタンス最大値の差が、実験2で示した試験片Q〜Tの炭素濃度の順序と一致していないが、(iii)において、当該順序と一致している。したがって、この(iii)の範囲で、印加された直流電流による内層153側への影響が少なく、かつ外層151の強磁性層が適切に磁化され、浸炭層の正確な情報が得られることが分かった。
また、(iv)、(v)において、当該最大値の差が増加し始めていることから、印加された直流電流によって内層153側の浸炭層の強磁性層も磁化され始めていることが分かった。
さらに(vi)において、正規化インダクタンス最大値差が減少し始めていることから、印加された直流電流が大きくなっていくと、この直流電流による内層153側強磁性層の磁化の影響が大きくなる傾向であることが分かった。
実験4では、表非破壊検査装置100のセンサ部110の形状についての比較実験を実施した。
非破壊検査装置100のセンサ部110としてパンケーキ型形状のコイルを用いた。
試験片は実験2と同じ試験片Q〜Tを用いた。信号処理装置130の試験周波数を40〜10000Hz、磁化器120の磁化電流値を0A(磁化なし)、0.5Aとした時のインダクタンスLおよび抵抗Rを読み取った。
その後、センサ部110のコイル部分を試験片から離した状態で、前記と同様に周波数を変化させ、その時のインダクタンスL0および巻線抵抗R0を測定した。
図21は、実験4における、パンケーキ型のセンサ部110を用いた場合の正規化インピーダンス図である。
図21より、表面磁化よって使用済みエチレン分解炉管の外表面の強磁性層の影響を抑え、各試験片Q〜Tの内層153側の浸炭層の状態の違いが、正規化インダクタンスの値の差として現れている。しかし、コ字状型のセンサ部110を用いた場合の正規化インピーダンス図(図11)と比較すると、コ字状型のセンサ部110を用いた場合には、正規化インピーダンス図の浸炭の傾向と図12の外表面からの炭素量変化の傾向とが一致しているのに対し、パンケーキ型のセンサ部110を用いた場合には、正規化インピーダンス図の浸炭の傾向が図12の外表面からの炭素量変化の傾向とが一致してしないことが分かった。このことから、パンケーキ型よりも、コ字状型の方が、非破壊検査精度に優れているといえる。
上述したように、上記実施形態では、交流電流の供給を受けて励磁して磁束を発生させ、被検査物150に対して磁束を作用させたときのインダクタンスおよび抵抗に関する情報を出力する略コ字状に形成されたセンサ部110と、このセンサ部110を跨いで配設されるとともに直流電流の供給を受けて被検査物150を表面磁化させる磁化器120と、周波数を変化させながらセンサ部110に交流電流を供給するとともに、センサ部110から出力されるインダクタンスおよび抵抗に関する情報を受信して被検査物150における損傷状態を判断する信号処理装置130と、磁化器120に直流電流を供給する直流電源装置140とを具備した非破壊検査装置100を用いた。そして、外層151側が強磁性を帯びた状態の被検査物150に対する検査であって、特に被検査物150の内層153側の損傷状態について検査する場合には、外層側151に磁化器120を当接させて外層側151の強磁性を表面磁化させながら、信号処理装置130から交流電流の供給を受けてセンサ部110で発生した磁束を内層153側まで浸透させて作用させ、この磁束を作用させた際の内層153側の損傷状態に対応したインダクタンスおよび抵抗に関する情報をセンサ部110に出力させて信号処理装置130に受信させ、損傷状態を判断させた。
また、センサ部110がコ字型の形状を有するので、磁路が明確になり、内層153の損傷状態を精度良く検出することができた。
上述した実施形態では被検査物の損傷状態として、非磁性材料の内層側の浸炭を例に挙げて説明したが、これに限られない。例えば、内層側の亀裂なども損傷状態として検査することができる。すなわち、外表面側の強磁性層による影響をキャンセルし、内層側まで浸透する磁束を増やすことができるため、亀裂などの状態も検出することができる。
110…センサ部
120…磁化器
130…信号処理装置
140…直流電源装置
150…被検査物
151…外層
152…中層
153…内層
Claims (7)
- 交流電流の供給を受けて励磁して磁束を発生させ、被検査物に対して前記磁束を作用させたときのインダクタンスおよび抵抗に関する情報を出力するセンサ部と、
このセンサ部を跨いで配設されるとともに直流電流の供給を受けて前記被検査物の表面部分を磁化させる磁化器と、
周波数を変化させながら前記センサ部に前記交流電流を供給するとともに、前記センサ部から出力される前記インダクタンスおよび抵抗に関する情報を受信して前記被検査物における損傷状態を判断する信号処理装置と、
前記磁化器に直流電流を供給する直流電源装置とを具備した非破壊検査装置であって、
少なくとも外層側が強磁性を帯びている前記被検査物の前記外層側に対して当接される前記磁化器に前記外層側の強磁性を磁化させるとともに、
前記センサ部に前記信号処理装置から交流電流の供給を受けて発生する磁束を前記被検査物の内層側まで浸透させて作用させた際の前記内層側の損傷状態に対応したインダクタンスおよび抵抗に関する情報を出力させ、
前記信号処理装置にこの出力された損傷状態に対応したインダクタンスおよび抵抗に関する情報を受信させて損傷状態を判断させる制御部を備えた
ことを特徴とする非破壊検査装置。 - 請求項1に記載の非破壊検査装置において、
前記信号処理装置は演算部を備え、
前記制御部は前記演算部に前記センサ部から出力される周波数毎のインダクタンスおよび抵抗に関する情報を受信して正規化インダクタンスおよび正規化抵抗を演算させ、
この演算した正規化インダクタンスおよび正規化抵抗に基づいて正規化インピーダンス曲線を作成させ、
この正規化インピーダンス曲線に基づいて前記内層側の損傷状態を判断させる
ことを特徴とする非破壊検査装置。 - 請求項1または請求項2に記載の非破壊検査装置において、
前記センサ部は略コ字状に形成された
ことを特徴とする非破壊検査装置。 - 交流電流の供給を受けて励磁して磁束を発生させ、被検査物に対して前記磁束を作用させたときのインダクタンスおよび抵抗に関する情報を出力するセンサ部と、
このセンサ部を跨いで配設されるとともに直流電流の供給を受けて前記被検査物の表面部分を磁化させる磁化器と、
周波数を変化させながら前記センサ部に前記交流電流を供給するとともに、前記センサ部から出力される前記インダクタンスおよび抵抗に関する情報を受信して前記被検査物における損傷状態を判断する信号処理装置と、
この信号処理装置に損傷状態を判断させる制御部と、
前記磁化器に直流電流を供給する直流電源装置とを具備した非破壊検査装置を用いた非破壊検査方法であって、
少なくとも外層側が強磁性を帯びている前記被検査物の前記外層側に対して当接される前記磁化器に前記外層側の強磁性を磁化させるとともに、
前記センサ部に前記信号処理装置から交流電流の供給を受けて発生する磁束を前記被検査物の内層側まで浸透させて作用させた際の前記内層側の損傷状態に対応したインダクタンスおよび抵抗に関する情報を出力させ、
前記信号処理装置にこの出力された損傷状態に対応したインダクタンスおよび抵抗に関する情報を受信させて損傷状態を判断させる制御を前記制御部が行う
ことを特徴とする非破壊検査方法。 - 請求項4に記載の非破壊検査方法において、
前記信号処理装置は演算部を備え、
前記制御部は前記演算部に前記センサ部から出力される周波数毎のインダクタンスおよび抵抗に関する情報を受信して正規化インダクタンスおよび正規化抵抗を演算させ、
この演算した正規化インダクタンスおよび正規化抵抗に基づいて正規化インピーダンス曲線を作成させ、
この正規化インピーダンス曲線に基づいて前記内層側の損傷状態を判断させる
ことを特徴とする非破壊検査方法。 - 請求項4または請求項5に記載の非破壊検査方法において、
前記被検査物は非磁性体であるとともに、経時的に前記外層側および前記内層側が強磁性を帯びたことを特徴とする非破壊検査方法。 - 請求項4から請求項6までのいずれか一項に記載の非破壊検査方法において、
前記センサ部は略コ字状に形成された
ことを特徴とする非破壊検査方法。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2016011893A (ja) * | 2014-06-30 | 2016-01-21 | 新日鐵住金株式会社 | 検査装置及び検査方法 |
CN105890826A (zh) * | 2016-04-01 | 2016-08-24 | 北京工业大学 | 基于增量磁导率的钢制叶片残余应力微磁无损检测方法及装置 |
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2009
- 2009-01-16 JP JP2009008031A patent/JP2010164483A/ja active Pending
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