JP2010162328A - 輸液バッグ - Google Patents

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Abstract

【課題】過酷な取り扱いや過酷なレトルト処理を行っても酸素バリア性および外観を維持できる輸液バッグを提供する。
【解決手段】本発明の輸液バッグは、ガスバリア層を含む積層体を用いて形成される。ガスバリア層は、化合物(L)の加水分解縮合物と、カルボキシル基を含有する重合体(X)の中和物とを含む組成物からなる。化合物(L)は、加水分解性を有する特性基が結合したM1(Al、Ti、またはZr)を含有する化合物(A)と、加水分解性を有する特性基が結合したSiを含有する化合物(B)とを含む。重合体(X)の−COO−基の一部は2価以上の金属イオンで中和されている。化合物(B)の80モル%以上は、所定の式で表される化合物である。[化合物(A)のM1のモル数]/[化合物(B)のSi原子のモル数]の比は、0.1/99.9〜35.0/65.0の範囲にある。
【選択図】なし

Description

本発明は、アミノ酸輸液剤、電解質輸液剤、糖質輸液剤、輸液用脂肪乳剤などの液状の医薬品が充填される輸液バッグに関する。
従来から、輸液容器としては、透明性、保存性、耐熱性に優れるガラス製の容器が使用されている。しかし、ガラス製の容器には、衝撃によって破損し易い、重い、ガラスフレークが発生しやすい、不溶性微粒子が発生する、等の問題点がある。これらの問題点がない輸液容器として、プラスチック製の容器が広く使われるようになってきた。プラスチック製輸液容器には、バッグ形態のものとボトル形態のものとがある。
バッグ形態の輸液バッグは、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂やポリ塩化ビニル樹脂などから作られている。ポリ塩化ビニル樹脂は可塑剤や安定剤などの添加剤を含むため、それらが輸液に溶出する恐れがある。
また、ポリオレフィン系樹脂はガスバリア性が充分ではなく、バッグ内の輸液(アミノ酸製剤、ブドウ糖製剤、脂肪乳剤、電解質輸液剤など)が酸素などのガスによって変質しやすいという問題点があった。そのため、ポリオレフィン製などの輸液バッグにアミノ酸等の薬液を封入する場合、輸液バッグの外側を、ガスバリア性を有する袋(外装材)で覆うという方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ガスバリア性を有する外装材は、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂やポリ塩化ビニリデンを構成材料とする多層フィルムで形成され、例えばポリエステル層/エチレン−ビニルアルコール共重合体層/無延伸ポリプロピレン層で構成される多層フィルムなどで形成される。しかし、このような二重包装のバッグでは、例えば薬液を混注するなどの理由で外装材を一旦開封すれば気密性が失われるため、短期間で薬液が変質する恐れがある。このため、輸液バッグ自体がガスバリア性を有すること望ましい。
ガスバリア性を有する輸液バッグについては、特許文献2や特許文献3などに提案されている。特許文献2には、ポリアミド樹脂を使用した輸液バッグが記載されている。しかし、ポリアミド樹脂は、依然としてガスバリア性が充分ではなく、また、高温蒸気滅菌を行うとガスバリア性が低下する傾向がある。特許文献3には、輸液バッグの外面にガスバリア性を有するコーティング層を形成し、それをさらに保護剤で覆った輸液バッグが記載されている。特許文献3には、コーティング層として、蒸着アルミナやシリカが記載されている。しかし、これらからなる層は柔軟性に乏しいため、バッグの輸送や取り扱い中にコーティング層が破損してガスバリア性が低下する懸念がある。
そこで本発明者等は、特定のガスバリア層を含むガスバリア性積層体を用いた輸液バッグを提案している(特許文献4)。特許文献4の輸液バッグによれば、加熱殺菌処理後のガスバリア性を向上させることが可能である。
特許文献5には、ガスバリア層を適度に薄くすることによって、折り曲げてもガスバリア層にクラックが発生しにくくなり、折り曲げに対するガスバリア層の耐久性が向上することが報告されている。
特開平9−262943号公報 特開2001−328681号公報 特開2005−40489号公報 特開2006−305340号公報 特開2002−46208号公報
近年、過酷な加熱殺菌処理を施したのちも高い酸素バリア性を示す輸液バッグが求められるようになってきた。また、折り曲げに対する酸素バリア性の低下をさらに抑制することが求められている。特許文献4に記載のガスバリア性積層体についてもガスバリア層を薄くすることによって屈曲に対する酸素バリア性の低下を抑制できることが期待される。しかし、特許文献4で用いられているガスバリア層を薄くすると、指数関数的に酸素バリア性が低下することがあった。また、輸液バッグでは加熱殺菌後に外観を維持できる輸液バッグが求められているが、特許文献4の輸液バッグは、過酷な条件で加熱殺菌処理を行うと透明性が低下することがあった。
このような状況において、本発明は、ガスバリア層が薄くても高い酸素バリア性を示し、加熱殺菌処理や屈曲による酸素バリア性や外観の劣化が少ない輸液バッグを提供することを目的の1つとする。
上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、特定の組成物を用いることによって、ガスバリア層を薄くしても加熱殺菌処理前後の酸素バリア性が高い輸液バッグが得られることを見出した。更に、本発明者らは、この輸液バッグは過酷な屈曲後でも酸素バリア性の低下が抑えられることを見出した。更に、本発明者らは、この輸液バッグは、過酷な条件で加熱殺菌処理を行っても高い透明性を維持することを見出した。
本発明の輸液バッグは、ガスバリア性積層体を用いて形成された輸液バッグである。前記ガスバリア性積層体は、基材と前記基材に積層された少なくとも1つのガスバリア性を有する層とを含む。前記層は、加水分解性を有する特性基を含有する少なくとも1種の化合物(L)の加水分解縮合物と、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する重合体(X)の中和物とを含む組成物からなる。前記化合物(L)は、化合物(A)と、加水分解性を有する特性基が結合したSiを含有する化合物(B)とを含む。前記化合物(A)は、以下の式(I)で表される少なくとも1種の化合物である。
11 m1 n-m・・・(I)
[式(I)中、M1はAl、Ti、およびZrから選ばれるいずれか1つを表す。X1は、F、Cl、Br、I、OR1、R2COO、R3COCHCOR4、およびNO3から選ばれるいずれか1つを表す。Y1は、F、Cl、Br、I、OR5、R6COO、R7COCHCOR8、NO3およびR9から選ばれるいずれか1つを表す。R1、R2、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。R3、R4、R7、R8およびR9は、それぞれ独立にアルキル基を表す。nはM1の原子価と等しい。mは1〜nの整数を表す。]
前記化合物(B)は、以下の式(II)で表される少なくとも1種の化合物を含む。
Si(OR10p11 4-p-q2 q・・・(II)
[式(II)中、R10はアルキル基を表す。R11はアルキル基、アラルキル基、アリール基またはアルケニル基を表す。X2はハロゲン原子を表す。pおよびqは、それぞれ独立に0〜4の整数を表す。1≦p+q≦4である。]
前記重合体(X)の前記官能基に含まれる−COO−基の少なくとも一部が2価以上の金属イオンで中和されている。前記化合物(B)に占める前記式(II)で表される化合物の割合が80モル%以上である。前記組成物において、[前記化合物(A)に由来する前記M1原子のモル数]/[前記化合物(B)に由来するSi原子のモル数]の比が0.1/99.9〜35.0/65.0の範囲にある。
本発明によれば、ガスバリア層が薄くても高い酸素バリア性を示し、加熱殺菌処理(レトルト処理)や屈曲による酸素バリア性や外観の劣化が少ない輸液バッグが得られる。この輸液バッグは、過酷な条件で加熱殺菌処理を行っても、良好な酸素バリア性および外観が維持される。
本発明の輸液バッグの一例を示す正面図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において特定の機能を発現する物質として具体的な化合物を例示する場合があるが、本発明はこれに限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
[輸液バッグ]
本発明の輸液バッグは、特定の積層体(以下、「ガスバリア性積層体」という場合がある)を用いて形成される。すなわち、本発明の輸液バッグはガスバリア性積層体を含む。なお、輸液バッグのすべてがガスバリア性積層体を用いて形成されてもよいし、一部がガスバリア性積層体以外の材料によって形成されていてもよい。輸液バッグの面積のたとえば50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または100%には、ガスバリア性積層体が用いられる。
本発明の輸液バッグは、一般的な製袋方法によって製造できる。本発明の輸液バッグは、使用目的に応じて任意の形状および大きさとすることができる。製袋方法の一例では、まず、重ね合わせた2枚のガスバリア性積層体の周囲をヒートシールして製袋する。次に、ポリエチレンやポリプロピレンを射出成形等によって成形して得られた口栓部材をヒートシールによって、袋に取り付ける。このようにして、輸液バッグが得られる。
以下、本発明で用いられるガスバリア性積層体について詳細に説明する。
[ガスバリア性積層体]
本発明で用いられるガスバリア性積層体は、基材と、基材に積層された少なくとも1つのガスバリア性を有する層とを含む。その層(以下、「ガスバリア層」という場合がある)は、特定の組成物からなる。その組成物は、加水分解性を有する特性基を含有する少なくとも1種の化合物(L)の加水分解縮合物と、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する重合体(X)の中和物とを含む。化合物(L)は、加水分解性を有する特性基を含有する少なくとも1種の化合物であり、典型的には、加水分解性を有する特性基が結合した金属原子を含む少なくとも1種の化合物である。化合物(L)は、化合物(A)と、加水分解性を有する特性基が結合したSiを含有する化合物(B)とを含む。以下、重合体(X)に含まれる、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を「官能基(F)」という場合がある。官能基(F)に含まれる−COO−基の少なくとも一部が2価以上の金属イオンで中和されている。別の観点では、官能基(F)に含まれる−COO−基が、2価以上の金属イオンと塩を構成している。
ガスバリア層は、基材の少なくとも一方の面に積層されている。ガスバリア層は、基材の片面のみに積層されてもよいし、基材の両面に積層されてもよい。本発明で用いられるガスバリア性積層体は、ガスバリア層以外の層を含んでもよい。
化合物(L)の加水分解縮合物および重合体(X)の中和物が組成物に占める割合は、たとえば50重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、または98重量%以上である。
[加水分解縮合物]
ガスバリア層を構成する組成物は、化合物(L)の加水分解縮合物を含む。化合物(L)が加水分解されることによって、化合物(L)の特性基の少なくとも一部が水酸基に置換される。さらに、その加水分解物が縮合することによって、金属原子が酸素を介して結合された化合物が形成される。この縮合が繰り返されると、実質的に金属酸化物とみなしうる化合物が形成される。ここで、この加水分解・縮合が起こるためには、化合物(L)が加水分解性を有する特性基(官能基)を含有していることが重要である。それらの基が結合していない場合、加水分解・縮合反応が起こらないか極めて緩慢になるため、本発明の効果を得ることは困難である。なお、Siは、半金属元素に分類される場合があるが、この明細書では、Siを金属として説明する。
該加水分解縮合物は、たとえば、公知のゾルゲル法で用いられる手法を用いて特定の原料から製造できる。該原料には、化合物(L)、化合物(L)が部分的に加水分解したもの、化合物(L)が完全に加水分解したもの、化合物(L)が部分的に加水分解・縮合したもの、化合物(L)が完全に加水分解しその一部が縮合したもの、あるいはこれらを組み合わせたものが用いられる。これらの原料は、公知の方法で製造してもよいし、市販されているものを用いてもよい。特に限定はないが、たとえば2〜10個程度の分子が加水分解・縮合することによって得られる縮合物を、原料として用いることができる。具体的には、たとえば、テトラメトキシシランを加水分解・縮合させて、2〜10量体の線状縮合物としたものを原料として用いることができる。
化合物(A)は、以下の式(I)で表される少なくとも1種の化合物である。
11 m1 n-m・・・(I)
[式(I)中、M1はAl、Ti、およびZrから選ばれるいずれか1つを表す。X1は、F、Cl、Br、I、OR1、R2COO、R3COCHCOR4、およびNO3から選ばれるいずれか1つを表す。Y1は、F、Cl、Br、I、OR5、R6COO、R7COCHCOR8、NO3およびR9から選ばれるいずれか1つを表す。R1、R2、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。R3、R4、R7、R8およびR9は、それぞれ独立にアルキル基を表す。nはM1の原子価と等しい。mは1〜nの整数を表す。]
1とY1とは、同じであってもよいし異なってもよい。M1は、得られるガスバリア性積層体の加熱殺菌処理を施す前後の酸素バリア性、透明性などの外観に変化が特に少なくなる観点から、Alであることが好ましい。X1は、加水分解性を有する基である。X1は、好ましくはCl、OR1、およびNO3から選ばれるいずれか1つであり、より好ましくはOR1である。Y1は、好ましくはCl、OR5、およびNO3から選ばれるいずれか1つであり、より好ましくはOR5である。
1、R2、R5およびR6に用いられるアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上20以下であり、より好ましくは1以上10以下であり、たとえば1以上4以下である。R1およびR5は、好ましくはメチル基、エチル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基であり、特に好ましくはiso−プロピル基またはn−ブチル基である。R3、R4、R7、R8およびR9に用いられるアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上4以下であり、より好ましくは1以上2以下である。R3、R4、R7およびR8は、好ましくはメチル基、エチル基である。R3COCHCOR4およびR7COCHCOR8は、そのカルボニル基の部分で原子M1に配位結合することができる。R9は、好ましくはメチル基、エチル基である。なお、R9は通常、官能基を有さない。式(I)において、[n−m]は、たとえば0または1であってもよい。
化合物(A)の具体例には、塩化アルミニウム、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリノルマルプロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリノルマルブトキシド、アルミニウムトリt−ブトキシド、アルミニウムトリアセテート、アルミニウムアセチルアセトネート、硝酸アルミニウム等のアルミニウム化合物;チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラ(2−エチルヘキソキシド)、チタンテトラメトキシド、チタンアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート等のチタン化合物;ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、等のジルコニウム化合物が含まれる。化合物(A)の好ましい例には、アルミニウムトリイソプロポキシドおよびアルミニウムトリノルマルブトキシドが含まれる。
化合物(B)は、加水分解性を有する特性基が結合したSiを含有する少なくとも1種のSi化合物である。化合物(B)は、以下の式(II)で表される少なくとも1種の化合物を含む。
Si(OR10p11 4-p-q2 q・・・(II)
[式(II)中、R10はアルキル基を表す。R11はアルキル基、アラルキル基、アリール基またはアルケニル基を表す。X2はハロゲン原子を表す。pおよびqは、それぞれ独立に0〜4の整数を表す。1≦p+q≦4である。]
10が表すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられ、好ましくは、メチル基またはエチル基である。X2が表すハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、塩素原子が好ましい。R11が表すアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−オクチル基などが挙げられ、アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、トリチル基などが挙げられる。また、R11が表すアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基などが挙げられ、アルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基などが挙げられる。
式(II)で表される化合物(B)の具体例には、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、クロロトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、ジクロロジエトキシシラン、トリクロロメトキシシラン、トリクロロエトキシシラン、およびビニルトリクロロシランが含まれる。式(II)で表される化合物(B)の好ましい例には、テトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランが含まれる。
化合物(B)は、式(II)で表される化合物に加えて、以下の式(III)で表される少なくとも1種の化合物を更に含んでもよい。式(III)で表される化合物を含有させることによって、ボイル処理前後や加熱殺菌処理前後における、酸素バリア性の変化、および透明性などの外観の変化が、更に少なくなる。
Si(OR12r3 s3 4-r-s・・・(III)
[式(III)中、R12はアルキル基を表す。X3はハロゲン原子を表す。Z3は、カルボキシル基との反応性を有する官能基で置換されたアルキル基を表す。rおよびsは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。1≦r+s≦3である。]
12が表すアルキル基としては例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられ、好ましくは、メチル基またはエチル基である。X3が表すハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、塩素原子が好ましい。Z3が有する、カルボキシル基との反応性を有する官能基としては、エポキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基、オキサゾリン基またはカルボジイミド基などが挙げられる。これらの中でも、得られるガスバリア性積層体の加熱殺菌処理を施す前後の酸素バリア性、透明性などの外観の変化が特に少なくなる観点から、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、ウレイド基またはハロゲン原子が好ましく、例えばエポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基から選ばれる少なくとも1種を用いてもよい。このような官能基で置換されるアルキル基としては、R12について例示したものが挙げられる。
式(III)で表される化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリクロロシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリクロロシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリクロロシラン、γ−ブロモプロピルトリメトキシシラン、γ−ブロモプロピルトリエトキシシラン、γ−ブロモプロピルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリクロロシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリクロロシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリクロロシランが含まれる。式(III)で表される化合物の好ましい例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランが含まれる。
本発明者らは、化合物(A)と化合物(B)とを含む化合物(L)の加水分解縮合物を用いることによって、得られるガスバリア性積層体が、優れたガスバリア性、および耐ボイル性や耐レトルト性などの耐熱水性を示すことを見出した。すなわち、ガスバリア性積層体はガスバリア性に優れるのみならず、ボイル処理や加熱殺菌処理を施した後でも優れたガスバリア性を維持し、外観の変化もないことが見出された。更に驚くべきことに、ガスバリア性積層体において、前記したように、従来はガスバリア層を薄くするとガスバリア性が指数関数的に低下して優れたガスバリア性を維持することができなかったが、化合物(L)の加水分解縮合物を用いることによって、ガスバリア層を薄くしても高いガスバリア性を維持することが新たに見出された。
化合物(B)が式(II)の化合物のみからなる場合、および化合物(B)が式(III)の化合物を含む場合のいずれの場合においても、[化合物(A)に由来するM1原子のモル数]/[化合物(B)に由来するSi原子のモル数]の比は、0.1/99.9〜35.0/65.0(たとえば0.1/99.9〜30.0/70.0、さらには0.1/99.9〜29.9/70.1)の範囲にある必要がある。上記モル比がこの範囲にある場合に前記したような優れたガスバリア性および耐ボイル性、耐レトルト性などの耐熱水性を示すガスバリア性積層体が得られる。M1とSiとの合計に占めるM1の比が0.1モル%より低いと耐熱水性が低下し、加熱殺菌処理後のガスバリア性が低下し、また、外観不良が発生することがある。また、その比が35モル%より高いと、加熱殺菌処理前後のガスバリア性が低下するという問題がある。更にガスバリア性および耐レトルト性がより良好となる観点から、[化合物(A)に由来するM1原子のモル数]/[化合物(B)に由来するSi原子のモル数]の比は、好ましくは1.2/98.8〜30.0/70.0の範囲にあり、より好ましくは1.9/98.1〜30.0/70.0の範囲にあり、さらに好ましくは2.8/97.2〜30.0/70.0の範囲にある。上記比は、0.5/99.5〜30.0/70.0の範囲、1.5/98.5〜20.0/80.0の範囲、または2.5/97.5〜10.0/90.0の範囲にあってもよい。
本発明者らは、化合物(A)および式(II)で表される化合物に加えて、式(III)で表される化合物を更に含む化合物(L)の加水分解縮合物を用いることによって、ガスバリア性積層体が更に優れたガスバリア性、および耐ボイル性や耐レトルト性などの耐熱水性を示すことを見出した。
化合物(B)が式(III)で表される化合物を含む場合は更に以下の条件を満たすことが好ましい。すなわち[式(II)で表される化合物に由来するSiのモル数]/[式(III)で表される化合物に由来するSiのモル数]の比が、99.5/0.5〜80.0/20.0の範囲にあることが好ましい。この比が、99.5/0.5よりも大きいと、得られるガスバリア性積層体の、ボイル処理、加熱殺菌処理前後でガスバリア性、および透明性などの外観が変化しない特性、すなわち耐熱水性が低下する場合がある。また、この比が80/20よりも小さいと、得られるガスバリア性積層体のガスバリア性が低下する場合がある。また、この比は、ガスバリア性積層体の耐熱水性およびガスバリア性がより良好となる観点から、98.0/2.0〜89.9/10.1の範囲にあることがより好ましい。
化合物(L)に占める、化合物(A)および化合物(B)の割合の合計は、たとえば80モル%以上100モル%以下であり、90モル%以上、95モル%以上、98モル%以上、99モル%以上、または100モル%であってもよい。
化合物(B)(化合物(L)であるSi化合物)に占める式(II)で表される化合物の割合は、80モル%以上100モル%以下であり、たとえば90モル%以上、95モル%以上、98モル%以上、または100モル%であってもよい。一例では、化合物(B)は、式(II)で表される化合物のみからなり、他の一例では、化合物(B)は、式(II)で表される化合物および式(III)で表される化合物のみからなる。
化合物(L)の加水分解縮合物において縮合される分子の数は、加水分解・縮合を行う際の条件によって制御できる。たとえば、縮合される分子の数は、水の量、触媒の種類や濃度、加水分解縮合を行う温度などによって制御できる。
ガスバリア層を構成する組成物は、ガスバリア性積層体のガスバリア性がより良好となるため、[化合物(L)に由来する無機成分の重量]/[化合物(L)に由来する有機成分の重量と重合体(X)に由来する有機成分の重量との合計]の比が20.0/80.0〜80.0/20.0の範囲にあることが好ましく、30.5/69.5〜70/30の範囲にあることがより好ましい。
化合物(L)に由来する無機成分の重量は、該組成物を調製する際に使用する原料の重量から算出することができる。すなわち、化合物(L)、化合物(L)が部分的に加水分解したもの、化合物(L)が完全に加水分解したもの、化合物(L)が部分的に加水分解縮合したもの、化合物(L)が完全に加水分解しその一部が縮合したもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどが完全に加水分解・縮合して金属酸化物になったと仮定し、その金属酸化物の重量を化合物(L)に由来する無機成分の重量とみなす。
金属酸化物の重量の算出をより具体的に説明すると、式(I)で表される化合物(A)がR9を含まない場合、それが完全に加水分解・縮合したときには、組成式が、M1n/2で表される化合物となる。また、式(I)で表される化合物(A)がR9を含む場合、それが完全に加水分解・縮合したときには、組成式が、M1m/29 n-mで表される化合物となる。この化合物のうちM1m/2の部分が金属酸化物である。R9については、化合物(L)に由来する有機成分とする。また、化合物(B)についても同様に算出する。このとき、R11、Z3については、化合物(L)に由来する有機成分とする。上記金属酸化物の重量を、後述する工程(i)の終了までに加えた有効成分の重量で割り、その値を100倍した値が、この明細書における加水分解縮合物の含有率(%)である。ここで、有効成分の重量とは、後述する工程(i)の終了までに加えた全ての成分の重量から、上述した化合物(L)が金属酸化物に変化する過程で発生する化合物や溶剤といった揮発成分の重量を除いた重量である。
なお、金属イオンを含まないイオン(たとえばアンモニウムイオン)によって重合体(X)が中和されている場合、そのイオン(たとえばアンモニウムイオン)の重量も、重合体(X)に由来する有機成分の重量に加えられる。
[カルボン酸含有重合体(重合体(X))]
ガスバリア層を構成する組成物は、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する重合体の中和物を含む。その重合体を、以下、「カルボン酸含有重合体」という場合がある。カルボン酸含有重合体の中和物は、カルボン酸含有重合体の官能基に含まれる−COO−基の少なくとも一部を2価以上の金属イオンで中和することによって得られる。カルボン酸含有重合体は、重合体1分子中に、2個以上のカルボキシル基または1個以上のカルボン酸無水物基を有する。具体的には、アクリル酸単位、メタクリル酸単位、マレイン酸単位、イタコン酸単位などの、カルボキシル基を1個以上有する構成単位を重合体1分子中に2個以上含有する重合体を用いることができる。また、無水マレイン酸単位や無水フタル酸単位などのカルボン酸無水物の構造を有する構成単位を含有する重合体を用いることもできる。カルボキシル基を1個以上有する構成単位および/またはカルボン酸無水物の構造を有する構成単位(以下、両者をまとめて「カルボン酸含有単位(G)」という場合がある)は、1種類または2種類以上がカルボン酸含有重合体に含まれていてもよい。
また、カルボン酸含有重合体の全構成単位に占めるカルボン酸含有単位(G)の含有率を10モル%以上とすることによって、ガスバリア性が良好なガスバリア性積層体が得られる。この含有率は、20モル%以上であることがより好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましく、70モル%以上であることが特に好ましい。なお、カルボン酸含有重合体が、カルボキシル基を1個以上含有する構成単位と、カルボン酸無水物の構造を有する構成単位の両方を含む場合、両者の合計が上記の範囲であればよい。
カルボン酸含有重合体が含有していてもよい、カルボン酸含有単位(G)以外の他の構成単位は、特に限定されないが、アクリル酸メチル単位、メタクリル酸メチル単位、アクリル酸エチル単位、メタクリル酸エチル単位、アクリル酸ブチル単位、メタクリル酸ブチル単位等の(メタ)アクリル酸エステル類から誘導される構成単位;ギ酸ビニル単位、酢酸ビニル単位などのビニルエステル類から誘導される構成単位;スチレン単位、p−スチレンスルホン酸単位;エチレン単位、プロピレン単位、イソブチレン単位などのオレフィン類から誘導される構成単位などから選ばれる1種類以上の構成単位を挙げることができる。カルボン酸含有重合体が、2種以上の構成単位を含有する場合、該カルボン酸含有重合体は、交互共重合体の形態、ランダム共重合体の形態、ブロック共重合体の形態、さらにはテーパー型の共重合体の形態のいずれであってもよい。
カルボン酸含有重合体の具体例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(アクリル酸/メタクリル酸)を挙げることができる。カルボン酸含有重合体は、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種の重合体であってもよい。また、上記したカルボン酸含有単位(G)以外の他の構成単位を含有する場合の具体例としては、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体のケン化物などが挙げられる。
カルボン酸含有重合体の分子量は特に制限されないが、得られるガスバリア性積層体のガスバリア性が優れる点、および落下衝撃強さなどの力学的物性が優れる点から、数平均分子量が5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、20,000以上であることがさらに好ましい。カルボン酸含有重合体の数平均分子量の上限は特に制限がないが、一般的には1,500,000以下である。
また、カルボン酸含有重合体の分子量分布も特に制限されるものではないが、ガスバリア性積層体のヘイズなどの表面外観、および後述する溶液(U)の貯蔵安定性などが良好となる観点から、カルボン酸含有重合体の重量平均分子量/数平均分子量の比で表される分子量分布は1〜6の範囲であることが好ましく、1〜5の範囲であることがより好ましく、1〜4の範囲であることがさらに好ましい。
[中和(イオン化)]
カルボン酸含有重合体の中和物は、カルボン酸含有重合体のカルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基(官能基(F))の少なくとも一部を2価以上の金属イオンで中和することによって得られる。換言すれば、この重合体は、2価以上の金属イオンで中和されたカルボキシル基を含む。
官能基(F)を中和する金属イオンは2価以上であることが重要である。官能基(F)が未中和または1価のイオンのみによって中和されている場合には、良好なガスバリア性を有する積層体が得られない。2価以上の金属イオンの具体例としてはカルシウムイオン、マグネシウムイオン、2価の鉄イオン、3価の鉄イオン、亜鉛イオン、2価の銅イオン、鉛イオン、2価の水銀イオン、バリウムイオン、ニッケルイオン、ジルコニウムイオン、アルミニウムイオン、チタンイオンなどを挙げることができる。たとえば、2価以上の金属イオンとして、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオンおよびアルミニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1つのイオンであってもよい。
カルボン酸含有重合体の官能基(F)に含まれる−COO−基は、たとえば10モル%以上(たとえば15モル%以上)が2価以上の金属イオンで中和されている。カルボン酸含有重合体中のカルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基が2価以上の金属イオンで中和されることによって、ガスバリア性積層体が良好なガスバリア性を示す。
なお、カルボン酸無水物基は、−COO−基を2つ含んでいるとみなす。すなわち、aモルのカルボキシル基とbモルのカルボン酸無水物基とが存在する場合、それに含まれる−COO−基は、全体で(a+2b)モルである。官能基(F)に含まれる−COO−基のうち、2価以上の金属イオンで中和されている割合は、好ましくは60モル%以上100モル%以下であり、より好ましくは70モル%以上であり、さらに好ましくは80モル%以上である。中和されている割合を高めることによって、より高いガスバリア性を実現できる。
官能基(F)の中和度(イオン化度)は、ガスバリア性積層体の赤外吸収スペクトルをATR法(全反射測定法)で測定するか、または、ガスバリア性積層体からガスバリア層をかきとり、その赤外吸収スペクトルをKBr法で測定することによって求めることができる。また、蛍光X線測定によるイオン化に用いた金属元素の蛍光X線強度の値によっても求めることが出来る。
赤外吸収スペクトルでは中和前(イオン化前)のカルボキシル基またはカルボン酸無水物基のC=O伸縮振動に帰属されるピークは1600cm-1〜1850cm-1の範囲に観察され、中和(イオン化)された後のカルボキシル基のC=O伸縮振動は1500cm-1〜1600cm-1の範囲に観察されるため、赤外吸収スペクトルにおいて両者を分離して評価することができる。具体的には、それぞれの範囲における最大の吸光度からその比を求め、予め作成した検量線を用いてガスバリア性積層体におけるガスバリア層を構成する重合体のイオン化度を算出することができる。なお、検量線は、中和度が異なる複数の標準サンプルについて赤外吸収スペクトルを測定することによって作成できる。
ガスバリア層の膜厚が1μm以下であり、かつ基材がエステル結合を含む場合、ATR法による赤外吸収スペクトルでは基材のエステル結合のピークが検出され、ガスバリア層を構成するカルボン酸含有重合体(=重合体(X))の−COO−のピークと重なるため、イオン化度を正確に求めることができない。そこで、膜厚1μm以下のガスバリア層を構成する重合体(X)のイオン化度は、蛍光X線測定の結果に基づいて算出する。
具体的には、エステル結合を含まない基材上に積層したガスバリア層を構成する重合体(X)のイオン化度を、赤外吸収スペクトルによって測定する。次に、イオン化度が測定された積層体について、蛍光X線測定によって、イオン化に用いた金属元素の蛍光X線強度を求める。続いて、イオン化度のみが異なる積層体について同様の測定を実施する。イオン化度と、イオン化に用いた金属元素の蛍光X線強度との相関を求め、検量線を作成する。そして、エステル結合を含む基材を用いたガスバリア性積層体について蛍光X線測定を行い、イオン化に用いた金属元素の蛍光X線強度から、上記検量線に基づいてイオン化度を求める。
[化合物(P)]
ガスバリア層を構成する組成物は、2つ以上のアミノ基を含有する化合物(P)を含んでもよい。化合物(P)は、化合物(L)および重合体(X)とは異なる化合物である。化合物(P)をさらに含む場合、前記重合体(X)の官能基(F)に含まれる−COO−基の少なくとも一部が、化合物(P)によって中和および/または反応されている状態となる。化合物(P)として、アルキレンジアミン類、ポリアルキレンポリアミン類、脂環族ポリアミン類、芳香族ポリアミン類、ポリビニルアミン類等を用いることができるが、ガスバリア性積層体のガスバリア性がより良好となる観点から、アルキレンジアミンが好ましい。
化合物(P)の具体例としては、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、キシリレンジアミン、キトサン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン等が挙げられる。ガスバリア性積層体のガスバリア性がより良好となる観点から、好ましくはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、キトサンである。
[化合物(P)に含まれるアミノ基]/[カルボン酸含有重合体の官能基に含まれる−COO−基]のモル比は、ガスバリア性積層体の耐熱水性がより良好となる観点から、0.2/100〜20/100の範囲にあることが好ましく、0.5/100〜15/100の範囲にあることがより好ましく、1/100〜10/100の範囲にあることが特に好ましい。
化合物(P)をカルボン酸含有重合体に添加する際に、化合物(P)を予め酸で中和しておいてもよい。中和に用いられる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、炭酸などが挙げられる。得られるガスバリア性積層体のガスバリア性がより良好となる観点から、塩酸、酢酸、炭酸を用いるのが好ましい。
[化合物Q]
ガスバリア層を構成する組成物は、2つ以上の水酸基を含有する化合物(Q)を含んでもよい。化合物(Q)をさらに含む場合、前記重合体(X)の官能基(F)に含まれる−COO−基の少なくとも一部が、化合物(Q)によって反応してエステル結合を形成している状態となる。この構成によれば、ガスバリア性積層体の、伸長後のガスバリア性が向上する。より具体的には、化合物(Q)を添加することによって、ガスバリア性積層体が伸長されてもガスバリア層がダメージを受けにくくなる。その結果、伸長された後でも高いガスバリア性が保持される。たとえば、印刷やラミネートなどの加工時のテンションによる伸長や、輸液バッグが落下した時の伸長などが起きた後の状態においても、ガスバリア性積層体のガスバリア性が低下しにくくなる。
化合物(Q)は、化合物(L)および重合体(X)とは異なる化合物である。化合物(Q)には、低分子量の化合物および高分子量の化合物が含まれる。化合物(Q)の好ましい例には、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分けん化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、でんぷんなどの多糖類、でんぷんなどの多糖類から誘導される多糖類誘導体、といった高分子化合物が含まれる。
また、ガスバリア層を構成する組成物は、所望により、本発明の効果を損なわない範囲内において、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩のような無機酸金属塩;シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩のような有機酸金属塩;アルミニウムアセチルアセトナートのようなアセチルアセトナート金属錯体、チタノセンなどのシクロペンタジエニル金属錯体、シアノ金属錯体等の金属錯体;層状粘土化合物、架橋剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤等を含有していてもよい。また、ガスバリア層を構成する組成物は、金属酸化物の微粉末やシリカ微粉末などを含有していてもよい。
[基材]
ガスバリア性積層体で用いられる基材としては、熱可塑性樹脂フィルムや熱硬化性樹脂フィルム等の様々な材料からなる基材を用いることができる。たとえば、熱可塑性樹脂フィルムや熱硬化性樹脂フィルムといったフィルム;紙類等の繊維集合体;木材;金属酸化物などからなる所定形状のフィルムを用いることができる。中でも、熱可塑性樹脂フィルムは、ガスバリア性積層体の基材として特に有用である。なお、基材は複数の材料からなる多層構成のものであってもよい。
熱可塑性樹脂フィルムとしては、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートやこれらの共重合体などのポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド系樹脂;ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリアリレート、再生セルロース、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、アイオノマー樹脂等を成形加工したフィルムを挙げることができる。積層体の基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、またはナイロン66からなるフィルムが好ましい。
前記熱可塑性樹脂フィルムは、延伸フィルムであっても無延伸フィルムであってもよいが、ガスバリア性積層体の印刷、ラミネートなどの加工適性が優れることから、延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムであることが好ましい。二軸延伸フィルムとしては、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チューブラ延伸法のいずれの方法で製造された二軸延伸フィルムであってもよい。
また、ガスバリア性積層体は、基材とガスバリア層との間に配置された接着層(H)をさらに含んでもよい。この構成によれば、基材とガスバリア層との接着性を高めることができる。接着性樹脂からなる接着層(H)は、基材の表面を公知のアンカーコーティング剤で処理するか、基材の表面に公知の接着剤を塗工することで形成できる。様々な接着性樹脂について検討した結果、ウレタン結合を含有し、窒素原子(ウレタン結合の窒素原子)が樹脂全体に占める割合が0.5〜12重量%の範囲である接着性樹脂が好ましいことが見出された。そのような接着性樹脂を用いることによって、基材とガスバリア層との接着性を特に高めることができる。基材とガスバリア層とを接着層(H)を介して強く接着することによって、ガスバリア性積層体に対して印刷やラミネートなどの加工を施す際に、ガスバリア性や外観が悪化することを抑制できる。接着性樹脂に含まれる窒素原子(ウレタン結合の窒素原子)の含有率は、2〜11重量%の範囲にあることがより好ましく、3〜8重量%の範囲にあることがさらに好ましい。
ウレタン結合を含有する接着性樹脂としては、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを混合し反応させる二液反応型ポリウレタン系接着剤が好ましい。
接着層(H)を厚くすることによってガスバリア性積層体の強度を高めることができる。しかし、接着層(H)を厚くしすぎると、外観が悪化する。接着層(H)の厚さは、0.03μm〜0.18μmの範囲にあることが好ましい。この構成によれば、ガスバリア性積層体に対して印刷やラミネートなどの加工を施す際に、ガスバリア性や外観が悪化することを抑制でき、さらに、ガスバリア性積層体を用いた包装材の落下強度を高めることができる。接着層(H)の厚さは、0.04μm〜0.14μmの範囲にあることがより好ましく、0.05μm〜0.10μmの範囲にあることがさらに好ましい。
本発明で用いられるガスバリア性積層体では、積層体に含まれるガスバリア層の厚さの合計が、1.0μm以下であることが好ましく、たとえば0.9μm以下である。ガスバリア層を薄くすることによって、印刷、ラミネートなどの加工時におけるガスバリア性積層体の寸法変化を低く抑えることができ、さらにガスバリア性積層体の柔軟性が増し、その力学的特性を、基材に用いているフィルム自体の力学的特性に近づけることができる。本発明で用いられるガスバリア性積層体では、積層体に含まれるガスバリア層の厚さの合計が、1.0μm以下(たとえば0.9μm以下)の場合でも、20℃で85%RH雰囲気における酸素透過度を、1.1cm3/(m2・day・atm)以下(たとえば1.0cm3/(m2・day・atm)以下)とすることが可能である。ガスバリア層の1層の厚さは、ガスバリア性積層体のガスバリア性が良好となる観点から、0.05μm以上(たとえば0.15μm以上)であることが好ましい。また、ガスバリア層の合計の厚さは0.1μm以上(たとえば0.2μm以上)であることがさらに好ましい。ガスバリア層の厚さは、ガスバリア層の形成に用いられる溶液の濃度や、塗工方法によって制御できる。
また、本発明の積層体は、基材とガスバリア層との間に、無機物からなる層(以下、「無機層」という場合がある)を含んでもよい。無機層は、無機酸化物などの無機物で形成できる。無機層は、蒸着法などの気相成膜法で形成できる。
無機層を構成する無機物は、酸素や水蒸気などに対するガスバリア性を有するものであればよく、好ましくは透明性を有するものである。たとえば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸窒化珪素、酸化マグネシウム、酸化錫、またはそれらの混合物といった無機酸化物で無機層を形成できる。これらの中でも、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムは、酸素や水蒸気などのガスに対するバリア性が優れる観点から好ましく用いることができる。
無機層の好ましい厚さは、無機層を構成する無機酸化物の種類によって異なるが、通常、2nm〜500nmの範囲である。この範囲で、ガスバリア性積層体のガスバリア性や機械的物性が良好となる厚さを選択すればよい。無機層の厚さが2nm未満である場合、酸素や水蒸気などのガスに対する無機層のバリア性の発現に再現性がなく、無機層が充分なガスバリア性を発現しない場合がある。無機層の厚さが500nmを超える場合は、ガスバリア性積層体を引っ張ったり屈曲させたりした場合にガスバリア性が低下し易くなる。無機層の厚さは、好ましくは5〜200nmの範囲であり、さらに好ましくは10〜100nmの範囲である。
無機層は、基材上に無機酸化物を堆積させることによって形成できる。形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD)などを挙げることができる。これらの中でも、真空蒸着法が、生産性の観点から好ましく用いられる。真空蒸着を行う際の加熱方法としては、電子線加熱方式、抵抗加熱方式および誘導加熱方式のいずれかが好ましい。また、無機層と基材との密着性および無機層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着してもよい。また、無機層の透明性を上げるために、蒸着の際、酸素ガスなどを吹き込んで反応を生じさせる反応蒸着法を採用してもよい。
ガスバリア層の微細構造は特に限定されるものではないが、ガスバリア層が以下に記載する微細構造を有する場合には、ガスバリア性積層体を伸長した際におけるガスバリア性の低下などが抑えられるため好ましい。好ましい微細構造としては、海相(α)および島相(β)からなる海島構造である。島相(β)は、海相(α)に比べて、化合物(L)の加水分解縮合物の割合が高い領域である。
海相(α)と島相(β)とは、それぞれ、さらに微細構造を有することが好ましい。たとえば、海相(α)は、主にカルボン酸含有重合体の中和物からなる海相(α1)と、主に化合物(L)の加水分解縮合物からなる島相(α2)とによって構成される海島構造をさらに形成していてもよい。また、島相(β)は、主にカルボン酸含有重合体の中和物からなる海相(β1)と、主に化合物(L)の加水分解縮合物からなる島相(β2)とによって構成される海島構造をさらに形成していてもよい。島相(β)中における[島相(β2)/海相(β1)]の比率(体積比)は、海相(α)中における[島相(α2)/海相(α1)]の比率よりも大きいことが好ましい。島相(β)の径は、好ましくは30nm〜1200nmの範囲であり、より好ましくは50〜500nmの範囲であり、さらに好ましくは50nm〜400nmの範囲である。島相(α2)および島相(β2)の径は、好ましくは50nm以下であり、より好ましくは30nm以下であり、さらに好ましくは20nm以下である。
上記のような構造を得るためには、化合物(L)とカルボン酸含有重合体との架橋反応に優先して、化合物(L)の適切な加水分解縮合が起こる必要がある。そのために、特定の化合物(L)をカルボン酸含有重合体と適切な比率で使用する、化合物(L)をカルボン酸含有重合体と混合する前に予め加水分解縮合させておく、適切な加水分解縮合触媒を使用する、などの方法を取るなどの方法が採用できる。
また、特定の製造条件を選択すると、化合物(L)の加水分解縮合物の割合が高い領域がガスバリア層の表面に層状に形成されることが見出された。以下、ガスバリア層表面に形成された化合物(L)の加水分解縮合物の層を「スキン層」ということがある。スキン層が形成されることによって、ガスバリア層表面の耐水性が向上する。化合物(L)の加水分解縮合物からなるスキン層は、疎水的な特性をガスバリア層表面に付与し、水に濡れた状態のガスバリア層同士を重ねてもそれらが膠着しない特性をガスバリア性積層体に付与する。さらに驚くことに、疎水的な特性を有するスキン層がガスバリア層の表面に形成されても、その表面に対する印刷用インクなどの濡れ性は良好である。製造条件によって、ガスバリア層のスキン層の有無、あるいは形成されるスキン層の状態が異なる。鋭意検討した結果、本発明者らは、ガスバリア層と水との接触角と、好ましいスキン層との間に相関があり、その接触角が以下の条件を満たすときに、好ましいスキン層が形成されることを見出した。ガスバリア層と水との接触角が20°未満のときはスキン層の形成が不十分なことがある。この場合、ガスバリア層の表面が水によって膨潤しやすくなり、水に濡れた状態で積層体同士を重ねておくと、まれにそれらが膠着する場合がある。また、接触角が20°以上のときはスキン層形成が十分であり、ガスバリア層の表面は水によって膨潤しないため、膠着は起きない。ガスバリア層と水との接触角は好ましくは、24°以上であり、さらに好ましくは26°以上である。また、接触角が65゜より大きいとスキン層が厚くなりすぎ、ガスバリア性積層体の透明性が低下する。したがって、接触角は65゜以下であることが好ましく、60゜以下であることがより好ましく、58゜以下であることがさらに好ましい。
本発明の輸液バッグに用いられるガスバリア性積層体は、基材と、基材に積層されたガスバリア層とを含んでいる限り、特に限定はない。以下では、基材と基材上に積層されたガスバリア層とを含む多層膜を、「ガスバリア性多層膜」という場合がある。このガスバリア性多層膜も、ガスバリア性積層体の一例である。ガスバリア性多層膜を含むガスバリア性積層体の構成としては、たとえば、以下の構成が挙げられる。
(1)ガスバリア性多層膜/ポリオレフィン層(以下「PO層」という場合がある)、
(2)無機蒸着フィルム層/ガスバリア性多層膜/PO層、
(3)ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/PO層、
(4)無機蒸着フィルム層/PO層/ガスバリア性多層膜/PO層、
(5)PO層/無機蒸着フィルム層/ガスバリア性多層膜/PO層、
(6)PO層/ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/PO層、
(7)ガスバリア性多層膜/ポリアミド層/PO層、
(8)無機蒸着フィルム層/ガスバリア性多層膜/ポリアミド層/PO層、
(9)ガスバリア性多層膜//無機蒸着フィルム層/ポリアミド層/PO層、
(10)ガスバリア性多層膜/ポリアミド層/無機蒸着フィルム層/PO層、
(11)ポリアミド層/ガスバリア性多層膜/PO層、
(12)無機蒸着フィルム層/ポリアミド層/ガスバリア性多層膜/PO層、
(13)ポリアミド層/無機蒸着フィルム層/ガスバリア性多層膜/PO層、
(14)ポリアミド層/ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/PO層、
(15)PO層/ガスバリア性多層膜/ポリアミド層/PO層、
(16)無機蒸着フィルム層/PO層/ガスバリア性多層膜/ポリアミド層/PO層、
(17)PO層/無機蒸着フィルム層/ガスバリア性多層膜/ポリアミド層/PO層、
(18)PO層/ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/ポリアミド層/PO層、
(19)PO層/ガスバリア性多層膜/ポリアミド層/無機蒸着フィルム層/PO層、
(20)PO層/ポリアミド層/ガスバリア性多層膜/PO層、
(21)無機蒸着フィルム層/PO層/ポリアミド層/ガスバリア性多層膜/PO層、
(22)PO層/無機蒸着フィルム層/ポリアミド層/ガスバリア性多層膜/PO層、
(23)PO層/ポリアミド層/無機蒸着フィルム層/ガスバリア性多層膜/PO層、
(24)PO層/ポリアミド層/ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/PO層、
(25)ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層、
(26)無機蒸着フィルム層/ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層、
(27)ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/熱可塑性エラストマー層、
(28)熱可塑性エラストマー層/ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層、
(29)無機蒸着フィルム層/熱可塑性エラストマー層/ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層、
(30)熱可塑性エラストマー層/無機蒸着フィルム層/ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層、
(31)熱可塑性エラストマー層/ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/熱可塑性エラストマー層、
(32)ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層/PO層、
(33)ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/熱可塑性エラストマー層/PO層、
(34)ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層/無機蒸着フィルム層/PO層、
(35)熱可塑性エラストマー/ガスバリア性多層膜/PO層、
(36)無機蒸着フィルム層/熱可塑性エラストマー/ガスバリア性多層膜/PO層、
(37)熱可塑性エラストマー/無機蒸着フィルム層/ガスバリア性多層膜/PO層、
(38)熱可塑性エラストマー/ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/PO層、
(39)熱可塑性エラストマー層/ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層/PO層、
(40)無機蒸着フィルム層/熱可塑性エラストマー層/ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層/PO層、
(41)熱可塑性エラストマー層/無機蒸着フィルム層/ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層/PO層、
(42)熱可塑性エラストマー層/ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/熱可塑性エラストマー層/PO層、
(43)熱可塑性エラストマー層/ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層/無機蒸着フィルム層/PO層、
(44)PO層/ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層/PO層、
(45)無機蒸着フィルム層/PO層/ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層/PO層、
(46)PO層/ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/熱可塑性エラストマー層/PO層、
(47)PO層/ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層/無機蒸着フィルム層/PO層、
(48)PO層/熱可塑性エラストマー/ガスバリア性多層膜/PO層、
(49)無機蒸着フィルム層/PO層/熱可塑性エラストマー/ガスバリア性多層膜/PO層、
(50)PO層/熱可塑性エラストマー/無機蒸着フィルム層/ガスバリア性多層膜/PO層、
(51)PO層/熱可塑性エラストマー/ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/PO層、
(52)PO層/熱可塑性エラストマー層/ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層/PO層、
(53)無機蒸着フィルム層/PO層/熱可塑性エラストマー層/ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層/PO層、
(54)PO層/無機蒸着フィルム層/熱可塑性エラストマー層/ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層/PO層、
(55)PO層/熱可塑性エラストマー層/無機蒸着フィルム層/ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層/PO層、
(56)PO層/熱可塑性エラストマー層/ガスバリア性多層膜/無機蒸着フィルム層/熱可塑性エラストマー層/PO層、
(57)PO層/熱可塑性エラストマー層/ガスバリア性多層膜/熱可塑性エラストマー層/無機蒸着フィルム層/PO層。
層と層の間には接着層を配置してもよい。また、ガスバリア層が基材の一方の表面のみに積層されている場合、ガスバリア層は、基材よりも内側にあってもよいし、基材よりも外側にあってもよい。ポリオレフィン層、熱可塑性エラストマー層、無機蒸着層について、以下に説明する。
[ポリオレフィン層]
ポリオレフィン(PO)層としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体、エチレンーαオレフィン共重合体、アイオノマー、エチレンーアクリル酸共重合体、エチレンーアクリル酸メチル共重合体、エチレンーメタクリル酸共重合体、エチレンープロピレン共重合体等の樹脂の一種ないしそれ以上からなる樹脂ないしはこれらをフィルム化したシートを用いることができる。これらのポリオレフィン層は延伸または無延伸のいずれでもよい。好ましいポリオレフィン層としては低密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレンからなる樹脂ないしはこれらをフィルム化したシートである。より好ましくは、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。成型加工の容易さ、耐熱性などの観点から、上記積層体を構成するいずれのPO層も無延伸低密度ポリエチレン、無延伸直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレンであるのは好ましく、無延伸直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレンであるのがさらに好ましい。
特に、ガスバリア性積層体の最外層よりも内側に配置されたPO層は、無延伸低密度ポリエチレン、無延伸直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレンからなることが好ましい。
[熱可塑エラストマー層]
熱可塑エラストマー層は、たとえば、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性スチレン系エラストマー、熱可塑性アミドエラストマー、および熱可塑性エステルエラストマーの樹脂の1種または複数種で形成でき、これらの樹脂で形成されたフィルムを用いてもよい。
ポリオレフィン(PO)層および熱可塑性エラストマー層は、周知のドライラミネーション法、ウエットラミネーション法、ホットメルトラミネーション法等によって他の層と貼り合わせてもよい。たとえば、無延伸ポリオレフィンフィルム、延伸ポリオレフィンフィルム、無延伸熱可塑性エラストマーフィルム、または延伸熱可塑性エラストマーフィルムと他の層(フィルム)とを貼り合わせてもよい。また、周知のTダイ押出し法等によって、他の層(フィルム)上に、ポリオレフィン層や熱可塑性エラストマーを形成してもよい。ポリオレフィン層と他の層との間に、接着層を配置してもよい。接着層は、アンカーコート剤、接着剤、接着性樹脂などを用いて形成される。
ガスバリア性積層体は、最外層よりも内側に配置された無延伸ポリプロピレン層を含んでもよい。また、ガスバリア性積層体は、蒸着法で形成された無機層を含んでもよい。その無機層は、基材とガスバリア層との間に配置されていてもよい。
本発明の輸液バッグは、スパウト(口栓部材)を備えてもよい。スパウトは、たとえば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン等を射出成型することによって形成できる。通常、スパウトは、輸液バッグを構成するガスバリア性積層体の周縁部において、2つのガスバリア性積層体の間に配置され、それらに融着された状態で輸液バッグに装着される。そのため、スパウトは、通常、輸液バッグを構成するガスバリア性積層体の内側の層と融着可能な材料で形成される。スパウト付きの輸液バッグは、一般的な方法によって製造できる。たとえば、2枚のガスバリア性積層体を重ね合わせ、周囲をヒートシールして製袋した後、ヒートシールによってスパウト(口栓部材)を取り付けることによって、スパウト付きの輸液バッグが得られる。
[ガスバリア性積層体の製造方法]
以下、本発明で用いられるガスバリア性積層体を製造するための方法について説明する。この方法によれば、ガスバリア性積層体を容易に製造できる。本発明の製造方法に用いられる材料、および積層体の構成は、上述したものと同様であるので、重複する部分については説明を省略する場合がある。
本発明の製造方法は、工程(i)および(ii)を含む。
工程(i)は、加水分解性を有する特性基を含有する化合物(L)の加水分解縮合物と、重合体(X)とを含む組成物からなる層を基材上に形成する工程である。その層は、基材上に直接形成されるか、または他の層を介して基材上に形成される。化合物(L)は、化合物(A)と化合物(B)とを含む。なお、化合物(L)に、カルボキシル基を含有する分子量が100以下の化合物(D)を添加することによって、化合物(L)の加水分解、縮合の反応性を制御でき、これから得られるガスバリア性積層体のガスバリア性、耐熱水性は良好となる。化合物(D)の詳細は後述する。
化合物(A)および化合物(B)、およびそれらの化合物の割合については、ガスバリア層を構成する組成物について説明したものと同様である。
次の工程(ii)は、2価以上の金属イオンを含む溶液に、工程(i)で形成された層を接触させる工程である(以下、この工程をイオン化工程という場合がある)。たとえば、形成した層に2価以上の金属イオンを含む溶液を吹きつけたり、基材と基材上の層とをともに2価以上の金属イオンを含む溶液に浸漬したりすることによって行うことができる。工程(ii)によって、重合体(X)の官能基(F)に含まれる−COO−基の少なくとも一部が中和される。
以下、工程(i)について詳細に説明する。なお、加水分解縮合していない化合物(L)とカルボン酸含有重合体とを混合すると、両者が反応してしまって溶液(U)の塗布が困難になることがある。そのため、工程(i)は、
(i−a)化合物(A)および化合物(A)の部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、カルボキシル基を含有し分子量が100以下である化合物(D)と、を含む溶液(S)を調製する工程と、
(i−b)化合物(B)および化合物(B)の部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と溶液(S)とを混合することによって溶液(T)を調製する工程と、
(i−c)溶液(T)中において、化合物(A)と化合物(B)とを含む複数の化合物(L)の加水分解縮合物(オリゴマー(V))を形成する工程と、
(i−d)上記(i−c)の工程を経た溶液(T)と重合体(X)とを混合することによって溶液(U)を調製する工程と、
(i−e)溶液(U)を基材に塗工して乾燥させることによって層を形成する工程と、を含むことが極めて好ましい。
化合物(L)を加水分解縮合させたオリゴマー(V)は、より具体的には、化合物(L)が部分的に加水分解したもの、化合物(L)が完全に加水分解したもの、化合物(L)が部分的に加水分解縮合したもの、および化合物(L)が完全に加水分解しその一部が縮合したものから選ばれる少なくとも1つの金属元素含有化合物である。以下、そのような金属元素含有化合物を、「化合物(L)系成分」という場合がある。以下、工程(i−a)、工程(i−b)、工程(i−c)、工程(i−d)および工程(i−e)について、より具体的に説明する。
工程(i−a)は、化合物(L)を構成する化合物(A)を特定の条件下で加水分解、縮合させる工程である。化合物(A)、酸触媒、水および必要に応じて有機溶媒を含む反応系中において、化合物(A)を加水分解、縮合させることが好ましい。具体的には、公知のゾルゲル法で用いられている手法を適用できる。加水分解、縮合をさせる際には反応を制御するためにカルボキシル基を含有し分子量が100以下である化合物(D)(以下、単に化合物(D)と称する場合がある)を添加することが極めて好ましく、かかる化合物(D)を添加することによって、化合物(A)を加水分解、縮合させる工程でゲル化を抑制することができる。
化合物(D)は、化合物(A)、化合物(A)が部分的に加水分解したもの、化合物(A)が完全に加水分解したもの、化合物(A)が部分的に加水分解縮合したもの、および化合物(A)が完全に加水分解しその一部が縮合したものから選ばれる少なくとも1つが含まれる金属元素含有化合物(以下、この金属元素含有化合物を、「化合物(A)系成分」という場合がある。)に添加し、化合物(D)が化合物(A)系成分に作用することで、前記効果が発現する。化合物(D)の添加方法としては、化合物(A)系成分が加水分解縮合反応によってゲル化する前に添加する方法であれば特に制限されるものではないが、好ましい方法として以下の方法を挙げることができる。まず、化合物(D)と水、必要に応じて有機溶媒を混合し化合物(D)の水溶液を調製し、続いて前記化合物(D)の水溶液を化合物(A)系成分に添加することによって、化合物(A)系成分に化合物(D)が作用した溶液(S)を得ることができる。化合物(D)と混合する水の使用量には制限はないが、高濃度で均一な溶液(S)を得る観点から、[水のモル数]/[化合物(D)のモル数]の比は、25/1〜300/1の範囲にあることが好ましく、50/1〜200/1の範囲にあることがより好ましく、75/1〜150/1の範囲にあることがさらに好ましい。
化合物(D)の使用量に関して、化合物(A)の反応制御およびガスバリア性積層体のガスバリア性がより良好となる観点から、[化合物(D)のモル数]/[化合物(A)のモル数]の比は、0.25/1〜30/1の範囲にあることが好ましく、0.5/1〜20/1の範囲にあることがより好ましく、0.75/1〜10/1の範囲にあることがさらに好ましい。
化合物(D)は、カルボキシル基を含有し分子量が100以下である化合物であれば特に制限されない。化合物(A)と重合体(X)の官能基(F)との反応率が高まり、ガスバリア性積層体の耐熱水性およびガスバリア性が良好となる観点から、化合物(D)として、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸などを挙げることができ、酢酸が最も好ましい。
工程(i−b)では、溶液(T)を調製する。具体的には、例えば、化合物(L)の構成成分である化合物(B)に、溶液(S)および必要に応じて有機溶媒を加え、その後、酸触媒、水および必要に応じて有機溶媒を添加する方法により溶液(T)を調製することができる。
工程(i−c)では、たとえば、化合物(A)系成分、化合物(B)、酸触媒、水、および必要に応じて有機溶媒を含む反応系中において、加水分解、縮合反応を行なわせる。この手法には、公知のゾルゲル法で用いられている手法を適用できる。これにより、化合物(A)系成分、化合物(B)、化合物(B)が部分的に加水分解したもの、化合物(B)が完全に加水分解したもの、化合物(B)が部分的に加水分解縮合したもの、および化合物(B)が完全に加水分解しその一部が縮合したものから選ばれる少なくとも1つが含まれる金属元素含有化合物の溶液を得ることができる。
このような工程で反応を行うことによって、オリゴマー(V)調製時のゲルの発生を防止でき、更に、オリゴマー(V)の反応性を制御できる。そのため、オリゴマー(V)と重合体(X)とを混合した際のゲル化を防ぐことができる。
工程(i−a)および工程(i−b)で用いる酸触媒としては、公知の酸を用いることができ、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、酢酸、乳酸、酪酸、炭酸、シュウ酸、マレイン酸等を用いることができる。その中でも塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、乳酸、酪酸が特に好ましい。酸触媒の好ましい使用量は、使用する酸の種類によって異なるが、化合物(L)の金属原子1モルに対して、1×10-5〜10モルの範囲にあることが好ましく、1×10-4〜5モルの範囲にあることがより好ましく、5×10-4〜1モルの範囲にあることがさらに好ましい。酸触媒の使用量がこの範囲にある場合、ガスバリア性が高いガスバリア性積層体が得られる。
また、工程(i−a)および工程(i−b)で用いる水の使用量は、化合物(L)の種類によって異なるが、化合物(L)の加水分解性を有する特性基1当量に対して、0.05〜10当量の範囲であることが好ましく、0.1〜5当量の範囲であることがより好ましく、0.2〜3当量の範囲であることがさらに好ましい。水の使用量がこの範囲にある場合、得られるガスバリア性積層体のガスバリア性が特に優れる。なお、工程(i−a)および工程(i−b)において、塩酸のように水を含有する成分を使用する場合には、その成分によって導入される水の量も考慮して水の使用量を決定することが好ましい。
さらに、工程(i−a)および工程(i−b)においては、必要に応じて有機溶媒を使用してもよい。使用される有機溶媒は化合物(L)が溶解する溶媒であれば特に限定されない。たとえば、有機溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール等のアルコール類が好適に用いられ、化合物(L)が含有するアルコキシ基と同種の分子構造(アルコキシ成分)を有するアルコールがより好適に用いられる。具体的には、テトラメトキシシランに対してはメタノールが好ましく、テトラエトキシシランに対してはエタノールが好ましい。有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、化合物(L)の濃度が1〜90重量%、より好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは10〜60重量%となる量であることが好ましい。
工程(i−a)、工程(i−b)および工程(i−c)において、反応系中において化合物(L)の加水分解、縮合を行う際に、反応系の温度は必ずしも限定されるものではないが、通常2〜100℃の範囲であり、好ましくは4〜60℃の範囲であり、さらに好ましくは6〜50℃の範囲である。反応時間は酸触媒の量、種類等の反応条件に応じて相違するが、通常0.01〜60時間の範囲であり、好ましくは0.1〜12時間の範囲であり、より好ましくは0.1〜6時間の範囲である。また、反応は、空気、二酸化炭素、窒素、アルゴンなどの各種気体の雰囲気下で行なうことができる。
工程(i−d)は、工程(i−c)で得られたオリゴマー(V)を含む溶液(T)と、カルボン酸含有重合体(=重合体(X))と混合して溶液(U)を調製する工程である。溶液(U)は、溶液(T)、カルボン酸含有重合体、ならびに必要に応じて水および有機溶剤を用いて調製することができる。たとえば、カルボン酸含有重合体を溶解させた溶液に、溶液(T)を添加して混合する方法を採用できる。また、溶液(T)に、カルボン酸含有重合体を水または有機溶媒に溶解させた溶液を添加して混合する方法も採用できる。いずれの方法においても、添加する溶液(T)またはカルボン酸含有重合体を溶解させた溶液は、一度に添加しても良いし、分割して添加しても良い。
工程(i−d)におけるカルボン酸含有重合体を溶解させた溶液は以下の方法により調整できる。使用する溶媒は、カルボン酸含有重合体の種類に応じて選択すればよい。たとえば、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などの水溶性の重合体の場合には、水が好適である。イソブチレン−無水マレイン酸共重合体やスチレン−無水マレイン酸共重合体などの重合体の場合には、アンモニア、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ性物質を含有する水が好適である。また、カルボン酸含有重合体の溶解の妨げにならない限り、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ等のグリコール誘導体;グリセリン;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメトキシエタンなどを併用することも可能である。
溶液(U)に含まれるカルボン酸含有重合体においては、官能基(F)に含まれる−COO−基の一部(たとえば0.1〜10モル%)が1価のイオンによって中和されていてもよい。1価イオンによる官能基(F)の中和度は、得られるガスバリア性積層体の透明性が良好となる観点から、0.5〜5モル%の範囲にあることがより好ましく、0.7〜3モル%の範囲にあることがさらに好ましい。1価のイオンとしては、たとえば、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンなどが挙げられ、アンモニウムイオンが好ましい。
溶液(U)の固形分濃度は、溶液(U)の保存安定性、および溶液(U)の基材に対する塗工性の観点から、3重量%〜20重量%の範囲にあることが好ましく、4重量%〜15重量%の範囲にあることがより好ましく、5重量%〜12重量%の範囲にあることがさらに好ましい。
溶液(U)の保存安定性、および得られるガスバリア性積層体のガスバリア性の観点から、溶液(U)のpHは1.0〜7.0の範囲にあることが好ましく、1.0〜6.0の範囲にあることがより好ましく、1.5〜4.0の範囲にあることがさらに好ましい。
溶液(U)のpHは、公知の方法で調整でき、たとえば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、酪酸、硫酸アンモニウム等の酸性化合物や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリメチルアミン、ピリジン、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の塩基性化合物を添加することによって調整できる。このとき、溶液中に1価の陽イオンをもたらす塩基性化合物を用いると、カルボン酸含有重合体のカルボキシル基および/またはカルボン酸無水物基の一部を1価のイオンで中和することができるという効果が得られる。
工程(i−e)について説明する。工程(i−d)で調製される溶液(U)は、時間の経過とともに状態が変化し、最終的にはゲル状の組成物となる。溶液(U)がゲル状になるまでの時間は、溶液(U)の組成に依存する。基材に溶液(U)を安定的に塗工するためには、溶液(U)は、長時間にわたってその粘度が安定し、その後、徐々に粘度上昇するようなものであることが好ましい。溶液(U)は、化合物(L)系成分の全量を添加した時を基準として、25℃で2日間静置した後においても、ブルックフィールド粘度計(B型粘度計:60rpm)で測定した粘度が1N・s/m2以下(より好ましくは0.5N・s/m2以下で、特に好ましくは0.2N・s/m2以下)となるように組成を調整することが好ましい。また、溶液(U)は、25℃で10日間静置した後においても、その粘度が1N・s/m2以下(より好ましくは0.1N・s/m2以下で、特に好ましくは0.05N・s/m2以下)となるように組成を調整することがより好ましい。また、溶液(U)は、50℃で10日間静置した後においても、その粘度が1N・s/m2以下(より好ましくは0.1N・s/m2以下で、特に好ましくは0.05N・s/m2以下)となるように組成を調整することがさらに好ましい。溶液(U)の粘度が上記の範囲にある場合、貯蔵安定性に優れるとともに、得られるガスバリア性積層体のガスバリア性がより良好になることが多い。
溶液(U)の粘度が上記範囲内になるように調整するには、例えば、固形分の濃度を調整する、pHを調整する、カルボキシメチルセルロース、でんぷん、ベントナイト、トラガカントゴム、ステアリン酸塩、アルギン酸塩、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどの粘度調節剤を添加するといった方法を用いることができる。
また、基材への溶液(U)の塗工を容易にするために、溶液(U)の安定性が阻害されない範囲で、溶液(U)に均一に混合することができる有機溶剤を添加してもよい。添加可能な有機溶剤としては、たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルビニルケトン、メチルイソプロピルケトン等のケトン;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ等のグリコール誘導体;グリセリン;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメトキシエタンなどが挙げられる。
また、溶液(U)は、所望により、本発明の効果を損なわない範囲内において、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、ホウ酸塩、アルミン酸塩のような無機酸金属塩;シュウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、ステアリン酸塩のような有機酸金属塩;アルミニウムアセチルアセトナートのようなアセチルアセトナート金属錯体、チタノセンなどのシクロペンタジエニル金属錯体、シアノ金属錯体等の金属錯体;層状粘土化合物、架橋剤、上述したアミノ基を二つ以上含む化合物(P)、上述した水酸基を二つ以上含む化合物(Q)、及びそれ以外の高分子化合物、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤等を含んでいてもよい。また、溶液(U)は、金属酸化物の微粉末やシリカ微粉末などを含んでいてもよい。
工程(i−d)で調製された溶液(U)は、工程(i−e)において基材の少なくとも一方の面に塗工される。溶液(U)を塗工する前に、基材の表面を公知のアンカーコーティング剤で処理するか、基材の表面に公知の接着剤を塗布してもよい。溶液(U)を基材に塗工する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。好ましい方法としては、たとえば、キャスト法、ディッピング法、ロールコーティング法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キスコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法などが挙げられる。
工程(i−e)で溶液(U)を基材上に塗工した後、溶液(U)に含まれる溶媒を除去することによって、イオン化工程前の積層体(積層体(I))が得られる。溶媒の除去の方法は特に制限がなく、公知の方法を適用できる。具体的には、熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法などの方法を単独で、または組み合わせて適用できる。乾燥温度は、基材の流動開始温度よりも15〜20℃以上低く、かつカルボン酸含有重合体の熱分解開始温度よりも15〜20℃以上低い温度であれば特に制限されない。乾燥温度は、70℃〜200℃の範囲にあることが好ましく、80〜180℃の範囲にあることがより好ましく、90〜160℃の範囲にあることがさらに好ましい。溶媒の除去は、常圧下または減圧下のいずれで実施してもよい。
本発明で用いられるガスバリア性積層体では、ガスバリア層の表面に、化合物(L)の加水分解性縮合物からなるスキン層が形成されていることが好ましい。また、前記したように、スキン層が厚くなりすぎることは、ガスバリア性積層体の透明性が低下するために好ましくない。適度の厚さを有するスキン層を形成する方法について、以下に記載する。本発明者らが鋭意検討した結果によれば、スキン層の形成の有無、およびスキン層の形成の状態は、化合物(L)の加水分解性縮合物の反応度、化合物(L)の組成、溶液(U)に使用されている溶媒、溶液(U)を基材に塗工した後の溶液(U)の乾燥される速度などに依存する。例えば、ガスバリア層表面に対する水の接触角を測定し、接触角が前記した所定の範囲より小さい場合には、工程(i−a)、工程(i−c)の反応時間を長くすることで、接触角を大きくすること(すなわち適切なスキン層を形成すること)が可能である。逆に接触角が前記した所定の範囲より大きい場合には、工程(i−a)、工程(i−c)の反応時間を短くすることによって、接触角を小さくすることが可能である。
工程(ii)によって、上記の工程によって得られる積層体(I)を2価以上の金属イオンを含む溶液(以下、「溶液(IW)」という場合がある)に接触させること(イオン化工程)によって、ガスバリア性積層体(積層体(II))が得られる。なお、イオン化工程は、本発明の効果を損なわない限り、どのような段階で行ってもよい。たとえば、イオン化工程は、包装材料の形態に加工する前あるいは加工した後に行ってもよいし、さらに包装材料中に内容物を充填して密封した後に行ってもよい。
溶液(IW)は、溶解によって2価以上の金属イオンを放出する化合物(多価金属化合物)を、溶媒に溶解させることによって調製できる。溶液(IW)を調製する際に使用する溶媒としては、水を使用することが望ましいが、水と混和しうる有機溶媒と水との混合物であってもよい。そのような有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルビニルケトン、メチルイソプロピルケトン等のケトン;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ等のグリコール誘導体;グリセリン;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメトキシエタン等の有機溶媒を挙げることができる。
多価金属化合物としては、本発明で用いられるガスバリア性積層体に関して例示した金属イオン(すなわち2価以上の金属イオン)を放出する化合物を用いることができる。たとえば、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシム、酢酸鉄(II)、塩化鉄(II)、酢酸鉄(III)、塩化鉄(III)、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸銅(II)、酢酸銅(III)、酢酸鉛、酢酸水銀(II)、酢酸バリウム、酢酸ジルコニウム、塩化バリウム、硫酸バリウム、硫酸ニッケル、硫酸鉛、塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン(KAl(SO42)、硫酸チタン(IV)などを用いることができる。多価金属化合物は、1種類のみを用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。好ましい多価金属化合物としては、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛が挙げられる。なお、これらの多価金属化合物は、水和物の形態で用いてもよい。
溶液(IW)における多価金属化合物の濃度は、特に制限されないが、好ましくは5×10-4重量%〜50重量%の範囲にあり、より好ましくは1×10-2重量%〜30重量%の範囲にあり、さらに好ましくは1重量%〜20重量%の範囲にある。
溶液(IW)に積層体(I)を接触させる際において、溶液(IW)の温度は、特に制限されないが、温度が高いほどカルボキシル基含有重合体のイオン化速度が速い。その温度は、たとえば30〜140℃の範囲にあり、好ましくは40℃〜120℃の範囲にあり、さらに好ましくは50℃〜100℃の範囲にある。
溶液(IW)に積層体(I)を接触させた後、その積層体に残留した溶媒を除去することが望ましい。溶媒の除去の方法は、特に制限がなく、公知の方法を適用できる。具体的には、熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法といった乾燥法を単独で、または2種以上を組み合わせて適用できる。溶媒の除去を行う温度は、基材の流動開始温度よりも15〜20℃以上低く、かつカルボン酸含有重合体の熱分解開始温度よりも15〜20℃以上低い温度であれば特に制限されない。乾燥温度は、好ましくは40〜200℃の範囲にあり、より好ましくは60〜150℃の範囲にあり、さらに好ましくは80〜130℃の範囲にある。溶媒の除去は、常圧下または減圧下のいずれで実施してもよい。
また、ガスバリア性積層体の表面の外観を損なわないためには、溶媒の除去を行う前または後に、積層体の表面に付着した過剰の多価金属化合物を除去することが好ましい。多価金属化合物を除去する方法としては、多価金属化合物が溶解していく溶剤を用いた洗浄が好ましい。多価金属化合物が溶解していく溶剤としては、溶液(IW)に用いることができる溶媒を用いることができ、溶液(IW)の溶媒と同一のものを用いることが好ましい。
本発明の製造方法では、工程(i)ののちであって工程(ii)の前および/または後に、工程(i)で形成された層を120〜240℃の温度で熱処理する工程をさらに含んでもよい。すなわち、積層体(I)または(II)に対して熱処理を施してもよい。熱処理は、塗工された溶液(U)の溶媒の除去がほぼ終了した後であれば、どの段階で行ってもよいが、イオン化工程を行う前の積層体(すなわち積層体(I))を熱処理することによって、表面の外観が良好なガスバリア性積層体が得られる。熱処理の温度は、好ましくは120℃〜240℃の範囲にあり、より好ましくは140〜240℃の範囲にあり、さらに好ましくは160℃〜220℃の範囲にある。熱処理は、空気中、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下などで実施することができる。
また、本発明の製造方法では、積層体(I)または(II)に、紫外線を照射してもよい。紫外線照射は、塗工された溶液(U)の溶媒の除去がほぼ終了した後であれば、いつ行ってもよい。その方法は、特に限定されず、公知の方法を適用できる。照射する紫外線の波長は、170〜250nmの範囲にあることが好ましく、170〜190nmの範囲及び/又は230〜250nmの範囲にあることがより好ましい。また、紫外線照射に代えて、電子線やγ線などの放射線の照射を行ってもよい。
熱処理と紫外線照射は、どちらか一方のみを行ってもよいし、両者を併用してもよい。熱処理及び/又は紫外線照射を行うことによって、積層体のガスバリア性能がより高度に発現する場合がある。
基材とガスバリア層との間に接着層(H)を配置するために、溶液(U)の塗工前に、基材の表面に処理(アンカーコーティング剤による処理、または接着剤の塗布)を施してもよい。その場合、工程(i)(溶液(U)の塗工)の後であって上記熱処理および工程(ii)(イオン化工程)の前に、溶液(U)が塗工された基材を、比較的低温下に長時間放置する熟成処理を行うことが好ましい。熟成処理の温度は、30〜200℃の範囲にあることが好ましく、30〜150℃の範囲にあることがより好ましく、30〜120℃の範囲にあることがさらに好ましい。熟成処理の時間は、0.5〜10日の範囲にあることが好ましく、1〜7日の範囲にあることがより好ましく、1〜5日の範囲にあることがさらに好ましい。このような熟成処理を行うことによって、基材とガスバリア層との間の接着力がより強固となる。この熟成処理ののちに、さらに上記熱処理(120℃〜240℃の熱処理)を行うことが好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。なお、以下の実施例において積層体の層構成を表記する際に、物質名のみを表記し、「層」の表記を省略することがある。
[ガスバリア性積層体およびラミネート体の作製および評価]
以下で述べるガスバリア性積層体およびラミネート体を作製して評価した。評価は、以下の(1)〜(9)の方法で行った。
(1)レトルト処理前の酸素バリア性
酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN2/20」)を用いて酸素透過度を測定した。温度20℃、酸素圧1気圧、キャリアガス圧力1気圧の条件下で、酸素透過度(単位:cc/m2/day/atm)を測定した(cc=cm3)。キャリアガスとしては2体積%の水素ガスを含む窒素ガスを使用した。このとき、湿度を85%RHとし、酸素供給側とキャリアガス側とを同一の湿度とした。基材の片面のみにガスバリア層を形成した積層体については、酸素供給側にガスバリア層が向きキャリアガス側に基材が向くように積層体をセットした。
(2)10%伸長後でレトルト処理前の酸素バリア性
まず、積層体を30cm×21cmに切り出した。次に、切り出した積層体を、23℃、50%RHの条件で手動伸長装置を用いて10%伸長し、伸長状態で5分間保持した。その後、上記と同様の手法で酸素透過度を測定した。
(3)接触角
積層体を温度20℃、湿度65%RHの条件下で24時間調湿を行った。その後、自動接触角計(協和界面科学製、DM500)を用いて、温度20℃、湿度65%RHの条件で2μLの水をガスバリア層上に滴下した。そして、日本工業規格(JIS)−R3257に準拠した方法で、ガスバリア層と水との接触角を測定した。
(4)引っ張り強伸度、ヤング率
積層体を温度23℃、湿度50%RHの条件下で24時間調湿を行った。その後、積層体を、MD方向およびTD方向に対して15cm×15mmに切り出した。切り出した積層体について、温度23℃、湿度50%RHの条件で、JIS−K7127に準拠した方法によって、引っ張り強伸度およびヤング率を測定した。
(5)乾熱収縮率
積層体を10cm×10cmに切り出し、MDおよびTDにおける長さをノギスで測定した。この積層体を、乾燥機中において80℃で5分間加熱し、加熱後のMDおよびTDにおける長さを測定した。そして、以下の式から乾熱収縮率を測定した。
乾熱収縮率(%)=(lb−la)×100/lb
[式中、lbは加熱前の長さを表す。laは加熱後の長さを表す。]
(6)金属イオンによるカルボキシル基の中和度(イオン化度)
[FT−IRによるイオン化度の算出]
数平均分子量150,000のポリアクリル酸を蒸留水に溶解し、所定量の水酸化ナトリウムでカルボキシル基を中和した。得られたポリアクリル酸の中和物の水溶液を、基材上に、イオン化度の測定の対象となる積層体のガスバリア層と同じ厚さになるようにコートし、乾燥させた。基材には、2液型のアンカーコート剤(三井武田ケミカル株式会社製、タケラック626(商品名)およびタケネートA50(商品名)、以下「AC」と略記することがある)を表面にコートした延伸ポリアミドフィルム(ユニチカ株式会社製、エンブレム ON−BC(商品名)、厚さ15μm、以下「OPA」と略記することがある)を用いた。このようにして、カルボキシル基の中和度が、0、25、50、75、80、90モル%の標準サンプル[積層体(ポリアクリル酸の中和物からなる層/AC/OPA)]を作製した。これらのサンプルについて、フーリエ変換赤外分光光度計(Perkin Elmer製、Spectrum One)を用いて、ATR(全反射測定)のモードで、赤外吸収スペクトルを測定した。そして、ポリアクリル酸の中和物からなる層に含まれるC=O伸縮振動に対応する2つのピーク、すなわち、1600cm-1〜1850cm-1の範囲に観察されるピークと1500cm-1〜1600cm-1の範囲に観察されるピークとについて、吸光度の最大値の比を算出した。そして、算出した比と、各標準サンプルのイオン化度とを用いて検量線1を作成した。
基材として延伸ポリアミドフィルム(OPA)を用いた積層体について、フーリエ変換赤外分光光度計(Perkin Elmer製、Spectrum One)を用いて、ATR(全反射測定)のモードで、ガスバリア層に含まれるC=O伸縮振動のピークを観察した。イオン化前のカルボン酸含有重合体のカルボキシル基のC=O伸縮振動に帰属されるピークは、1600cm-1〜1850cm-1の範囲に観察された。また、イオン化された後のカルボキシル基のC=O伸縮振動は1500cm-1〜1600cm-1の範囲に観察された。そして、それぞれの範囲における最大の吸光度からその比を算出し、その比と上記検量線1とを用いてイオン化度を求めた。
[蛍光X線によるイオン化度の算出]
基材として前述したOPAを用いた積層体について、FT−IRの測定よりイオン化度の異なる標準サンプルを作製した。具体的には、イオン化度(イオン:カルシウムイオン)が0〜100モル%間で約10モル%ずつ異なる11種類の標準サンプルを作製した。各々のサンプルについて、波長分散型蛍光X線装置(株式会社リガク製、ZSXminiII)を用いて、カルシウム元素の蛍光X線強度を測定し、予めFT−IRで測定したイオン化度から検量線2を作成した。得られた検量線2を用いて、各種条件で作製した積層体のカルシウムイオン化度を算出した。
他の金属イオン(マグネシウムイオンや亜鉛イオン等)でイオン化する場合に関しても、上記と同様の方法で検量線2を作成し、イオン化度を算出した。
OPA以外の基材を用いた積層体(PETなど)についても、蛍光X線強度測定により得られた検量線2を用いて、イオン化度を算出した。
(7)加水分解縮合物および重合体(X)の重量
上述した方法によって、化合物(L)に由来する無機成分の重量、および、化合物(L)に由来する有機成分の重量と重合体(X)に由来する有機成分の重量との合計を算出した。
(8)レトルト処理後の酸素バリア性
ラミネート体(サイズ:12cm×12cm)を2枚作製した。そして、その2枚を、無延伸ポリプロピレンフィルム(トーセロ株式会社製、RXC−18(商品名)、厚さ50μm、以下「CPP」と略記することがある)が内側になるように重ねあわせたのち、ラミネート体の3辺をその端から5mmまでヒートシールした。ヒートシールされた2枚のラミネート体の間に蒸留水80gを注入したのち、残された第4辺を同様にヒートシールした。このようにして、蒸留水が中に入ったパウチを作製した。
次に、そのパウチをレトルト処理装置(日阪製作所製、フレーバーエース RCS−60)に入れ、120℃、30分、0.15MPaの条件でレトルト処理を施した。レトルト処理後、加熱を停止し、レトルト処理装置の内部温度が60℃になった時点で、レトルト処理装置からパウチを取り出した。そして、20℃、65%RHの室内でパウチを1時間放置した。その後、ヒートシールされた部分をはさみで切り取り、ラミネート体の表面に付着した水を、紙タオルを軽く押し付けることによって拭き取った。その後、20℃、85%RHに調整したデシケータ内にパウチを1日以上放置した。このようなレトルト処理がされたラミネート体の酸素透過度を測定することによって、レトルト処理後の酸素バリア性を評価した。
酸素透過度は、酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN2/20」)を用いて測定した。具体的には、酸素供給側にガスバリア層が向きキャリアガス側にCPPが向くように積層体をセットし、温度20℃、酸素供給側の湿度85%RH、キャリアガス側の湿度85%RH、酸素圧1気圧、キャリアガス圧力1気圧の条件下で酸素透過度(単位:cc/m2/day/atm)を測定した。
(9)レトルト処理後外観
まず、レトルト処理後の酸素バリア性の測定で用いたパウチと同様のパウチを作製した。このパウチを、135℃、60分、0.25MPaの条件でレトルト処理を行った。レトルト処理後、加熱を停止し、内部温度が60℃になった時点で、レトルト処理装置からパウチを取り出し、20℃、65%RHの室内でパウチを1時間放置した。その後外観観察を行い、レトルト前と同様に曇りがない場合を「非常に良好(◎)」、やや曇りがあるが実用上問題がない場合は「良好(○)」、レトルト前と比べ明らかに曇りがある場合については「不良(×)」と判定した。
<積層体(1)>
数平均分子量150,000のポリアクリル酸(PAA)を蒸留水で溶解し、水溶液中の固形分濃度が13重量%であるPAA水溶液を得た。続いて、このPAA水溶液に、13%アンモニア水溶液を加え、PAAのカルボキシル基の1モル%を中和して、PAAの部分中和水溶液を得た。
また酢酸60重量部と蒸留水1800重量部を混合し、この酢酸水溶液にアルミニウムイソプロポキシド(AIP)204重量部(AIP/酢酸/蒸留水=1/1/100(モル比))を撹拌しながら加え、その後80℃で1時間加熱することで濃度が9.88重量%のAIP水溶液(S1)を得た。
続いて、Al/Siのモル比が1.2/98.8、[テトラメトキシシラン(TMOS)およびAIPに由来する無機成分]/[PAAの部分中和物]の重量比が40.2/59.8となるように混合液(U1)を調製した。具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに上記9.88重量%のAIP水溶液(S1)を8.5重量部加えた。さらに、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部を加え、10℃で1時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T1)を得た。続いて、混合液(T1)を、蒸留水425重量部およびメタノール222重量部で希釈した後、攪拌しながら上記PAAの部分中和物の水溶液(濃度13重量%)228重量部を速やかに添加し、固形分濃度5重量%の混合液(U1)を得た。
一方、酢酸エチル67重量部に溶解させた2液型のアンカーコート剤(三井武田ケミカル株式会社製:タケラックA−626(商品名)1重量部およびタケネートA−50(商品名)2重量部)を、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラーP60(商品名)、厚さ12μm、以下「PET」と略記することがある)上に塗工し、乾燥させることによってアンカーコート層を有する基材(AC(0.1μm)/PET(12μm))を作製した。この基材のアンカーコート層上に、乾燥後の厚さが0.4μmとなるようにバーコータによって混合液(U1)をコートし120℃で5分間乾燥した。続いて、同様の手順で基材の反対側の面にも塗工を行った。得られた積層体を、40℃で3日間エージングを行なった。次に、乾燥機を用い180℃で5分間、積層体に熱処理を施した。次に、積層体を、2重量%の酢酸カルシウム水溶液(85℃)に12秒浸漬し、その後、110℃で1分乾燥を行った。このようにして、ガスバリア層(0.4μm)/AC(0.1μm)/PET(12μm)/AC(0.1μm)/ガスバリア層(0.4μm)という構造を有する積層体(1)を得た。
<積層体(2)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そして、Al/Siのモル比が30.1/69.9、[TMOSおよびAIPに由来する無機成分]/[PAAの部分中和物]の重量比が25.5/74.5となるように混合液(U2)を調製した。具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%のAIP水溶液(S2)を293重量部加えた。さらに、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で1時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T2)を得た。続いて、得られた混合液(T2)を蒸留水850重量部、メタノール405重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)607重量部を速やかに添加し、固形分濃度5重量%の混合液(U2)を得た。
混合液(U2)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(2)を得た。
<積層体(3)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そして、反応時間のみを変えて、混合液(U3)を調製した。
具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%のAIP水溶液(S3)を8.5重量部加えた。続いて、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部を加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T3)を得た。続いて、混合液(T3)を、蒸留水425重量部およびメタノール222重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)228重量部を速やかに添加し、固形分濃度5重量%の混合液(U3)を得た。混合液(U3)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い積層体(3)を得た。
<積層体(4)>
AIPをチタンテトライソプロポキシド(TIP)に変更し、混合液(U4)を調製した。具体的には、酢酸1200重量部と蒸留水1800重量部を混合し、この酢酸水溶液にTIP284重量部(TIP/酢酸/蒸留水=1/20/100(モル比))を撹拌しながら加え、その後80℃で1時間加熱することで濃度が8.6重量%のTIP水溶液(S4)を得た。続いて、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これにTIP水溶液(S4)を13.5重量部加えた。さらに、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T4)を得た。続いて、積層体(1)と同様の組成および方法で、固形分濃度5重量%の混合液(U4)を得た。
混合液(U4)を用いて、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、および乾燥を行い、積層体(4)を得た。
<積層体(5)>
AIPをジルコニウムテトライソプロポキシド(ZIP)に変更し、混合液(U5)を調製した。具体的には、酢酸1200重量部と蒸留水1800重量部を混合し、この酢酸水溶液にZIP327重量部(ZIP/酢酸/蒸留水=1/20/100(モル比))を撹拌しながら加え、その後80℃で1時間加熱することで濃度が9.8重量%のZIP水溶液(S5)を得た。次に、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに上記9.8重量%ZIP水溶液(S5)を13.6重量部加えた。さらに、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T5)を得た。続いて、積層体(1)と同様の組成および方法で固形分濃度5重量%の混合液(U5)を得た。
混合液(U5)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(5)を得た。
<積層体(6)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そして[TMOSおよびAIPに由来する無機成分]/[PAAの部分中和物]の重量比が30.2/69.8となるようにした以外は積層体(3)と同様の仕込み比で、混合液(U6)を調製した。具体的には、まず、積層体(3)で得られた混合液(T3)と同様の組成および方法で混合液(T6)を調製した。この混合液(T6)を、蒸留水567重量部およびメタノール283重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)354重量部を速やかに添加し、固形分濃度が5重量%の混合液(U6)を得た。
混合液(U6)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(6)を得た。
<積層体(7)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そしてAl/Siのモル比が1.9/98.1となるようにした以外は積層体(6)と同様の仕込み比で混合液(U7)を調製した。具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液(S7)を13.2重量部加えた。さらに、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T7)を得た。続いて、積層体(6)と同様の組成および方法で固形分濃度が5重量%の混合液(U7)を得た。
混合液(U7)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(7)を得た。
<積層体(8)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そしてAl/Siのモル比が2.8/97.2となるようにした以外は積層体(6)と同様の仕込み比で混合液(U8)を調製した。具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液(S8)を19.8重量部加えた。さらに、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T8)を得た。続いて、積層体(6)と同様の組成、方法で固形分濃度が5重量%の混合液(U8)を得た。
混合液(U8)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(8)を得た。
<積層体(9)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そして積層体(2)と同様の仕込み比、すなわちAl/Siのモル比が30/70、[TMOSおよびAIPに由来する無機成分]/[PAAの部分中和物]の重量比が25.5/74.5となるように混合液(U9)を調製した。具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液(S9)を293重量部加えた。さらに、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T9)を得た。続いて、得られた混合液(T9)を蒸留水850重量部、メタノール405重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)607重量部を速やかに添加し、固形分濃度が5重量%の混合液(U9)を得た。
混合液(U9)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(9)を得た。
<積層体(10)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そしてAl/Siのモル比が0.1/99.9、[TMOSおよびAIPに由来する無機成分]/[PAAの部分中和物]の重量比が80.0/20.0となるように混合液(U10)を調製した。具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液(S10)を0.7重量部加えた。さらに、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T10)を得た。続いて、混合液(T10)を、蒸留水212重量部およびメタノール131重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物の水溶液(濃度13重量%)38重量部を速やかに添加し、固形分濃度が5重量%の混合液(U10)を得た。
混合液(U10)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(10)を得た。
<積層体(11)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そしてAl/Siのモル比が29.9/70.1、[TMOSおよびAIPに由来する無機成分]/[PAAの部分中和物]の重量比が36.9/63.1となるように混合液(U11)を調製した。具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液(S11)を290重量部加えた。さらに、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T11)を得た。続いて、混合液(T11)を、蒸留水567重量部およびメタノール283重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)354重量部を速やかに添加し、固形分濃度が5重量%の混合液(U11)を得た。
混合液(U11)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(11)を得た。
<積層体(12)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そしてAl/Siのモル比が0.1/99.9、[TMOSおよびAIPに由来する無機成分]/[PAAの部分中和物]の重量比が70.0/30.0となるように混合液(U12)を調製した。具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液(S12)を0.7重量部加えた。さらに、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T12)を得た。続いて、混合液(T12)を、蒸留水243重量部およびメタノール144重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物の水溶液(濃度13重量%)65重量部を速やかに添加し、固形分濃度が5重量%の混合液(U12)を得た。
混合液(U12)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(12)を得た。
<積層体(13)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そしてAl/Siのモル比が3.0/97.0、[TMOSおよびAIPに由来する無機成分]/[PAAの部分中和物]の重量比が20.0/80.0となるように混合液(U13)を調製した。具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液(S13)20.8重量部加えた。さらに、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T13)を得た。続いて、混合液(T13)を、蒸留水868重量部およびメタノール412重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)623重量部を速やかに添加し、固形分濃度が5重量%の混合液(U13)を得た。
混合液(U13)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(13)を得た。
<積層体(14)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そしてAl/Siのモル比が3.0/97.0、[TMOSおよびAIPに由来する無機成分]/[PAAの部分中和物]の重量比が80.0/20.0となるように混合液(U14)を調製した。具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液(S14)21.0重量部加えた。さらに、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T14)を得た。続いて、混合液(T14)を、蒸留水214重量部およびメタノール132重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)39重量部を速やかに添加し、固形分濃度が5重量%の混合液(U14)を得た。
混合液(U14)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(14)を得た。
<積層体(15)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そしてAl/Siのモル比が3.0/97.0、[TMOSおよびAIPに由来する無機成分]/[PAAの部分中和物]の重量比が70.0/30.0となるように混合液(U15)を調製した。具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液(S15)21.1重量部加えた。さらに、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T15)を得た。続いて、混合液(T15)を、蒸留水245重量部およびメタノール145重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)67重量部を速やかに添加し、固形分濃度が5重量%の混合液(U15)を得た。
混合液(U15)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(15)を得た。
<積層体(16)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そしてAl/Siのモル比が2.9/97.1、[TMOSおよびAIPに由来する無機成分]/[PAAの部分中和物]の重量比が10.2/89.8となるように混合液(U16)を調製した。具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液(S16)20.3重量部加えた。さらに、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T16)を得た。続いて、混合液(T16)を、蒸留水1700重量部およびメタノール769重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)1366重量部を速やかに添加し、固形分濃度が5重量%の混合液(U13)を得た。
混合液(U16)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(16)を得た。
<積層体(17)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。そしてAl/Siのモル比が3.0/97.0、[TMOSおよびAIPに由来する無機成分]/[PAAの部分中和物]の重量比が90.2/9.8となるように混合液(U17)を調製した。具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液(S17)21.3重量部加えた。さらに、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T17)を得た。続いて、混合液(T17)を、蒸留水189重量部およびメタノール121重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)17重量部を速やかに添加し、固形分濃度が5重量%の混合液(U17)を得た。
混合液(U17)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(17)を得た。
<積層体(18)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。続いて、TMOS/γ−グリシドキシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMOS)のモル比が99.5/0.5、Al/Siのモル比が2.8/97.2、[TMOS、AIPおよびGPTMOSに由来する無機成分]/[GPTMOSの有機成分とPAAの部分中和物]の重量比が30.5/69.5となるように混合液(U18)を調製した。具体的には、まず、TMOS49.6重量部、GPTMOS0.4重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに積層体(1)と同様の方法で調製した9.88重量%AIP水溶液(S18)を19.6重量部加えた。さらに、TMOSおよびGPTMOSの合計に対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T18)を得た。続いて、混合液(T18)を、蒸留水566重量部およびメタノール283重量部で希釈した後、攪拌しながら、PAAの部分中和物の水溶液(濃度13重量%)352重量部を速やかに添加し、固形分濃度が5重量%の混合液(U18)を得た。
混合液(U18)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(18)を得た。
<積層体(19)>
TMOS/GPTMOSのモル比が80.0/20.0となるようにした以外は積層体(18)と同様の仕込み比で混合液(U19)を得た。具体的には、まず、TMOS36.0重量部、GPTMOS14.0重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液(S19)を19.8重量部加えた。さらに、TMOSおよびGPTMOSの合計に対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.0重量部と0.1Nの塩酸7.4重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T19)を得た。続いて、混合液(T19)を、蒸留水520重量部およびメタノール302重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)267重量部を速やかに添加し、固形分濃度が5重量%の混合液(U19)を得た。
混合液(U19)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(19)を得た。
<積層体(20)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。続いて、TMOS/GPTMOSのモル比が89.9/10.1、Al/Siのモル比が3.1/96.9、[TMOS、AIPおよびGPTMOSに由来する無機成分]/[GPTMOSの有機成分とPAAの部分中和物]の重量比が31.5/68.5となるように混合液(U20)を調製した。具体的には、まず、TMOS42.6重量部、GPTMOS7.4重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液(S20)を20.6重量部加えた。さらに、TMOSおよびGPTMOSの合計に対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.2重量部と0.1Nの塩酸7.8重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T20)を得た。続いて、混合液(T20)を、蒸留水542重量部およびメタノール302重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物の水溶液(濃度13重量%)293重量部を速やかに添加し、固形分濃度が5重量%の混合液(U20)を得た。
混合液(U20)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(20)を得た。
<積層体(21)>
TMOSとGPTMOSのモル比が98.0/2.0となるようにした以外は積層体(18)と同様の仕込み比で混合液(U21)を得た。具体的には、まず、TMOS48.5重量部、GPTMOS1.5重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液(S21)を19.2重量部加えた。さらに、TMOSおよびGPTMOSの合計に対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.1重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T21)を得た。続いて、混合液(T21)を、蒸留水562重量部およびメタノール285重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)345重量部を速やかに添加し、固形分濃度が5重量%の混合液(U21)を得た。
混合液(U21)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(21)を得た。
<積層体(22)>
TMOS/GPTMOSのモル比が99.9/0.1となるようにした以外は積層体(18)と同様の仕込み比で混合液(U22)を得た。具体的には、まず、TMOS49.9重量部、GPTMOS0.1重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液(S22)を21.0重量部加えた。さらに、TMOSおよびGPTMOSの合計に対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.1重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T22)を得た。続いて、混合液(T22)を、蒸留水567重量部およびメタノール283重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物の水溶液(濃度13重量%)354重量部を速やかに添加し、固形分濃度が5重量%の混合液(U22)を得た。
混合液(U22)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(22)を得た。
<積層体(23)>
TMOS/GPTMOSのモル比が70.0/30.0となるようにした以外は積層体(18)と同様の仕込み比で混合液(U23)を得た。具体的には、まず、TMOS30.0重量部、GPTMOS20.0重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液(S23)を17.9重量部加えた。さらにTMOSおよびGPTMOSの合計に対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を2.9重量部と0.1Nの塩酸7.0重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T23)を得た。続いて、混合液(T23)を、蒸留水500重量部およびメタノール310重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)229重量部を速やかに添加し、固形分濃度5重量%の混合液(U23)を得た。
混合液(U23)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(23)を得た。
<積層体(24)>
積層体(24)の作製には、積層体(21)で得られた混合液(U21)と同様の組成および方法で得た混合液(U24)を使用した。また、積層体(1)と同様にコートおよび熱処理を行って積層体を作製した。この積層体を、0.1重量%の酢酸カルシウム水溶液(85℃)に12秒間浸漬してイオン化した後、積層体(1)と同様に乾燥を行い、積層体(24)を得た。
<積層体(25)>
積層体(25)の作製には、積層体(21)で得られた混合液(U21)と同様の組成および方法で得た混合液(U25)を使用した。また、積層体(1)と同様にコートおよび熱処理を行って積層体を作製した。この積層体を、0.2重量%の酢酸カルシウム水溶液(85℃)に6秒間浸漬してイオン化した後、積層体(1)と同様に乾燥を行い、積層体(25)を得た。
<積層体(26)>
積層体(26)の作製には、積層体(21)で得られた混合液(U21)と同様の組成および方法で得た混合液(U26)を使用した。また、積層体(1)と同様にコートおよび熱処理を行って積層体を作製した。この積層体を、0.2重量%の酢酸カルシウム水溶液(85℃)に12秒間浸漬してイオン化した後、積層体(1)と同様に乾燥を行い、積層体(26)を得た。
<積層体(27)>
積層体(27)の作製には、積層体(21)で得られた混合液(U21)と同様の組成および方法で得た混合液(U27)を使用した。また、積層体(1)と同様にコートおよび熱処理を行って積層体を作製した。この積層体を、2重量%の酢酸マグネシウム水溶液(85℃)に12秒間浸漬してイオン化した後、積層体(1)と同様に乾燥を行い、積層体(27)を得た。
<積層体(28)>
積層体(28)の作製には、積層体(21)で得られた混合液(U21)と同様の組成および方法で得た混合液(U28)を使用した。また、積層体(1)と同様にコートおよび熱処理を行って積層体を得た。この積層体を、2重量%の酢酸亜鉛水溶液(85℃)に12秒間浸漬してイオン化した後、積層体(1)と同様に乾燥を行い、積層体(28)を得た。
<積層体(29)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。一方、エチレンジアミン(EDA)/HClのモル比が1/2となるようにEDAを1N塩酸に溶解させ、EDA塩酸塩水溶液を得た。[EDAのアミノ基]/[PAAのカルボキシル基]の当量比が1.9/100となるようにEDA塩酸塩水溶液を加えた以外は、積層体(7)と同様の仕込み比で、混合液(U29)を調製した。具体的には、まず、積層体(7)の混合液(T7)と同様の組成および方法で調製した混合液(T29)を、蒸留水567重量部およびメタノール283重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)354重量部を速やかに添加し、更にEDA塩酸塩水溶液12.7重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U29)を得た。
混合液(U29)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(29)を得た。
<積層体(30)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。一方、濃度が10重量%となるようにポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、PVA117、以下「PVA」と略記する場合がある)を蒸留水に加え、85℃で3時間加熱することによってPVA水溶液を得た。
そのPVA水溶液を、[PVAの水酸基]/[PAAのカルボキシル基]の当量比が18.2/100となるように加えた以外は積層体(7)と同様の仕込み比で、混合液(U27)を得た。具体的には、まず、積層体(7)の混合液(T7)と同様の組成および方法で調製した混合液(T30)を、蒸留水567重量部およびメタノール283重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)354重量部を速やかに添加し、更に上記10重量%PVA水溶液51重量部を加え、固形分濃度5重量%の混合液(U30)を得た。
混合液(U30)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(30)を得た。
<積層体(31)>
AIP水溶液調製時の酸をプロピオン酸にした以外は、積層体(21)と同様の仕込み比で混合液(U31)を調製した。具体的には、プロピオン酸74重量部と蒸留水1800重量部を混合した後、このプロピオン酸水溶液にAIP204重量部(AIP/プロピオン酸/蒸留水=1/1/100(モル比))を撹拌しながら加え、その後80℃で1時間加熱することで濃度が9.82重量%のAIP水溶液(S31)を得た。このAIP水溶液(S31)を用いた以外は積層体(18)の混合液(U21)と同様の組成および方法で、混合液(U31)を得た。
混合液(U31)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(31)を得た。
<積層体(32)>
AIP水溶液調製時の酸をヘキサン酸にした以外は、積層体(21)と同様の仕込み比で混合液(U32)を調製した。具体的には、ヘキサン酸116重量部と蒸留水1800重量部を混合した後、このヘキサン酸水溶液にAIP204重量部(AIP/ヘキサン酸/蒸留水=1/1/100(モル比))を撹拌しながら加え、その後80℃で1時間加熱することで濃度が9.62重量%のAIP水溶液(S32)を得た。このAIP水溶液(S32)を用いた以外は積層体(21)の混合液(U21)と同様の組成および方法で、混合液(U32)を得た。
混合液(U32)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(32)を得た。
<積層体(33)>
積層体(33)の作製には、積層体(21)で得られた混合液(U21)と同様の組成および方法で得た混合液(U33)を使用した。基材の片面のみにガスバリア層を形成したこと以外は積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(33)を得た。
<積層体(34)>
積層体(34)の作製には、積層体(8)で得られた混合液(U8)と同様の組成および方法で得た混合液(U34)を使用した。また、基材を延伸ポリアミドフィルム(OPA)にした以外は積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(34)を得た。
<積層体(35)>
積層体(35)では、積層体(21)で得られた混合液(U21)と同様の組成および方法で得た混合液(U35)を使用した。また、積層体(34)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(35)を得た。
<積層体(36)>
積層体(36)では、積層体(8)で得られた混合液(U8)と同様の組成および方法で得た混合液(U36)を使用した。また、積層体(34)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(36)を得た。
<積層体(37)>
積層体(37)は、基材を変えたことを除いて積層体(35)と同様の条件で作製した。積層体(37)の作製では、基材として、延伸ポリアミドフィルム(ユニチカ株式会社製、エンブレムON(商品名)、厚さ25μm、以下「OPA25」と略記することがある)を用いた。
<積層体(38)>
積層体(38)では、積層体(21)で得られた混合液(U21)と同様の組成、方法で得た混合液(U38)を使用した。また、基材の片面のみにガスバリア層を形成したこと以外は積層体(34)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(38)を得た。
<積層体(39)>
積層体(39)の作製では、TMOS/GPTMOSのモル比が89.9/10.1、[TMOSとGPTMOSに由来する無機成分]/[GPTMOSの有機成分とPAAの部分中和物]の重量比が31.5/68.5となるように、混合液(T39)を調製した。具体的には、まず、TMOS46重量部およびGPTMOS8重量部を、メタノール50重量部に溶解した。これにTMOSとGPTMOSの合計に対する水の割合が1.95モル当量でpHが2以下となるよう、蒸留水3.2重量部と0.1Nの塩酸7.8重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T39)を得た。
続いて、PAAの部分中和物水溶液を、積層体(1)と同様に調製した。次に、混合液(T36)を蒸留水61重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)308重量部を速やかに添加し、固形分濃度13重量%の混合液(U39)を得た。
一方、酢酸エチル67重量部に溶解させた2液型のアンカーコート剤(三井武田ケミカル株式会社製:タケラックA−626(商品名)1重量部およびタケネートA−50(商品名)2重量部)を、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(上述した「PET」)上にコートし、乾燥させることによってアンカーコート層を有する基材(AC(0.1μm)/PET(12μm))を作製した。この基材のアンカーコート層上に、乾燥後の厚さが1.0μmとなるようにバーコータによって混合液(U39)をコートし120℃で5分間乾燥した。同様の手順で、基材の両面にコートを行い、積層体を得た。この積層体を、40℃で3日間エージングを行なった。続いて、積層体に対して、乾燥機を用い180℃で5分間熱処理を施した。次に、積層体を、2重量%の酢酸カルシウム水溶液(85℃)に12秒間浸漬した後、50℃で5分乾燥を行った。このようにして、ガスバリア層(1.0μm)/AC(0.1μm)/PET(12μm)/AC(0.1μm)/ガスバリア層(1.0μm)という構造を有する積層体(39)を得た。
<積層体(40)>
積層体(40)の作製には、積層体(39)で得られた混合液(U39)と同様の組成および方法で得た混合液(U40)を使用した。また、基材をOPAにした以外は、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化乾燥を行い、積層体(40)を得た。
<積層体(41)>
固形分濃度を5重量%にした以外は、積層体(39)と同様に混合液(U41)を得た。まず、積層体(39)の混合液(T39)と同様の組成および方法で調製した混合液(T41)を蒸留水542重量部、メタノール293重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物の水溶液(濃度13重量%)308重量部を速やかに添加し、固形分濃度5重量%の混合液(U41)を得た。
混合液(U41)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い積層体(41)を得た。
<積層体(42)>
積層体(42)の作製には、積層体(41)で得られた混合液(U41)と同様の組成および方法で得た混合液(U42)を使用した。また、積層体(34)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(42)を得た。
<積層体(43)>
PAAの部分中和物水溶液およびAIP水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。TMOS、GPTMOSは加えずに[AIPに由来する無機成分]/[PAAの部分中和物]の重量比が1.0/99.0となるように、混合液(U43)を調製した。具体的には、9.88重量%AIP水溶液(S43)2.1重量部に、PAAの部分中和物水溶液(濃度5重量%)100重量部を速やかに添加し、混合液(U43)を得た。
混合液(U43)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(43)を得た。
<積層体(44)>
PAAの部分中和物水溶液は、積層体(1)と同様に調製した。[チタンラクテートに由来する無機成分]/[PAAの部分中和物]の重量比が0.9/99.1となるように混合液(U44)を調製した。具体的には、チタンラクテートのイソプロピルアルコール溶液(濃度10重量%)1.6重量部を、PAAの部分中和物の水溶液(濃度5重量%)100重量部に添加し、混合液(U44)を得た。
混合液(U44)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い、積層体(44)を得た。
<積層体(45)>
Al/Siのモル比が40.4/59.6、[TMOSおよびAIPに由来する無機成分]/[PAAの部分中和物]の重量比が40.3/59.7となるようにした以外は積層体(3)と同様の仕込み比で、混合液(U45)を調製した。具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液(S45)461重量部を加えた。さらに、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T45)を得た。続いて、混合液(T45)を、蒸留水567重量部およびメタノール283重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)354重量部を速やかに添加し、固形分濃度5重量%の混合液(U45)を得た。
混合液(U45)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い積層体(45)を得た。
<積層体(46)>
Al/Siのモル比が0.06/99.94、[TMOSおよびAIPに由来する無機成分]/[PAAの部分中和物]の重量比が70.0/30.0となるようにした以外は積層体(3)と同様の仕込み比で、混合液(U46)を調製した。具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液(S46)0.4重量部を加えた。さらに、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で5時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T46)を得た。続いて、混合液(T46)を蒸留水243重量部、メタノール144重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物水溶液(濃度13重量%)65重量部を速やかに添加し、固形分濃度5重量%の混合液(U46)を得た。
混合液(U46)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い積層体(46)を得た。
<積層体(47)>
積層体(46)と同様の仕込み比で、反応時間のみを変えて、混合液(U47)を調製した。
具体的には、まず、TMOS50重量部をメタノール50重量部に溶解し、これに9.88重量%AIP水溶液0.4重量部(S47)を加えた。さらに、TMOSに対する水の割合が1.95モル当量となるよう蒸留水を3.3重量部と0.1Nの塩酸8.2重量部とを加え、10℃で1時間、加水分解および縮合反応を行い、混合液(T47)を得た。続いて、混合液(T47)を蒸留水243重量部、メタノール144重量部で希釈した後、攪拌しながらPAAの部分中和物の水溶液(濃度13重量%)65重量部を速やかに添加し、固形分濃度が5重量%の混合液(U47)を得た。
混合液(U47)を用い、積層体(1)と同様にコート、熱処理、イオン化、乾燥を行い積層体(47)を得た。
<積層体(48)>
積層体(48)の作製には、積層体(21)で得られた混合液(U21)と同様の組成および方法で得た混合液(U48)を使用した。また、積層体(1)と同様にコートおよび熱処理を行って積層体(48)を作製した。
[積層体の評価結果]
作製した積層体を、上述した方法によって評価した。なお、積層体(37)についての評価は行わなかった。また、積層体の基材として用いた、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)および延伸ポリアミドフィルム(OPA)について、積層体と同様の評価を行った。積層体の作製条件を表1に示す。
Figure 2010162328
積層体および基材の評価結果を表2に示す。
Figure 2010162328
積層体(39)のガスバリア層の合計の厚さは2.0μmである。このようにガスバリア層の合計の厚さが厚い(たとえば1.0μmより大きい)と、積層体の物理的特性が、基材(PET)の物理的特性とは大きく異なり、加工性が低下してしまう。そのため、ガスバリア層を厚くすると、生産性が低下してしまうという問題が生じる。一方、積層体(1)〜(33)のように、ガスバリア層の合計の厚さが薄い積層体は、基材(PET)に近い物理的特性を示し、加工性が良好である。また、後述するように、曲げに対するガスバリア層の耐久性を高めるには、ガスバリア層を薄くすることが必要である。
[ラミネート体の作製]
積層体(1)を用いてラミネート体を作製した。まず、延伸ポリアミドフィルム(OPA)、及び無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)のそれぞれの上に、2液型の接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、A−385(商品名)およびA−50(商品名))をコートして乾燥させた。そして、これらと積層体(1)とをラミネートした。このようにして、積層体(1)/接着剤/OPA/接着剤/CPPという構造を有するラミネート体(1)を得た。また、他の積層体についても、ラミネート体(1)と同様にラミネート体を作製して評価した。ラミネート体の作製に用いた積層体と、ラミネート体の評価結果について、表3に示す。
Figure 2010162328
[輸液バッグの作製および評価]
上述した積層体を10cm×12cmの大きさで2枚切り取って重ね合わせ、周囲をヒートシールして製袋した後、ヒートシールによってスパウト(口栓部材)を取り付けて輸液バッグを作製した。そして、作製した輸液バッグを評価した。輸液バッグの評価は、以下の方法(1)〜(4)によって実施した。
(1)レトルト処理前の酸素透過度
実施例および比較例で得られた、スパウト付きの平パウチ型の輸液バッグについて、レトルト処理前の酸素透過度を測定した。具体的には、まず、キャリアガス用の金属パイプ2本が接続された金属治具をスパウト口部にセットし、金属治具とスパウトとの隙間からガスが漏れないように、エポキシ接着剤によって、金属治具をスパウト口部に固定した。次に、金属パイプの反対の末端を酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN2/20」)に接続した。つまり、キャリアガスが、金属パイプの一方から輸液バッグ内に流入し、輸液バッグ内を流れ、もう一方の金属パイプから酸素透過量測定装置の酸素ガスセンサーに流れ込むようにした。
続いて、金属パイプが取り付けられた輸液バッグの周囲を袋で覆い、その袋を2本の金属パイプに紐で固定した。袋は、ポリエステル/接着層/EVOH層/接着層/PO層からなるラミネートフィルムをヒートシールすることによって作製した。袋と金属パイプとの隙間をエポキシ樹脂で埋めることによって、気密性を高めた。次に、袋の1ヶ所に穴を開け、ガスを供給するためのパイプをその穴に入れた。そして、袋とパイプとの間から外気が流入しないように、粘着テープによって袋とパイプとを固定した。
続いて、2体積%の水素ガスを含む窒素ガスを、キャリアガスとして、上記の袋および輸液バッグ内にパイプおよび金属パイプを通じて流した。袋の中に流したガスは、その一部が輸液バッグを透過して輸液バッグの中に流入し、他の一部は袋を透過して外部へ流出し、他の一部は2ヶ所の接続部分から外部へ流出した。キャリアガス中に含まれる酸素ガスはキャリアガスによってセンサー部に運ばれ、その酸素濃度が測定された。そして、酸素濃度が一定値になるまでキャリアガスを上記の袋内および輸液バッグ内に流しつづけた。酸素濃度が一定になった時点の酸素濃度を、酸素透過度のゼロ点として設定した。
その後、上記袋内に流していたキャリアガスを調湿した酸素ガスに切り替えた。つまり、輸液バッグの内側には窒素ガスが流れ、外側には酸素ガスが流れている状態にした。輸液バッグの外側から内側へ透過した酸素ガスは、輸液バッグ内を流れているキャリアガスによって酸素ガスセンサーに運ばれ、酸素濃度が測定された。測定された酸素濃度から、輸液バッグのレトルト処理前の酸素透過度(単位:cm3/(m2・day・atm))を算出した。測定条件は、温度20℃、湿度85%RH、酸素圧1気圧、キャリアガス圧1気圧とした。キャリアガスには、2体積%の水素ガスを含む窒素ガスを使用した。
続いて、スパウト自体の酸素透過度を以下の方法で測定した。まず、輸液バッグからパウチの外部に出ているスパウト部分を切り出した。続いて、アルミ箔を用いてスパウト口部をシールした。その後、キャリアガス用の金属パイプ2本が接続された金属治具を、スパウトのシールされていない側からセットし、エポキシ接着剤を使用して、金属治具とスパウトとの隙間からガスが漏れないように金属治具をスパウトに固定した。次に、金属パイプの反対の末端を酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN2/20」)に接続した。つまり、キャリアガスは、金属パイプの一方からスパウト内に流入し、スパウト内を流れた後、もう一方の金属パイプから酸素ガスセンサーに流れ込む。
続いて、金属パイプが取り付けられたスパウトの周囲を袋で覆った。その袋は、ポリエステル/接着層/EVOH層/接着層/PO層という積層構造を有するラミネートフィルムをヒートシールすることによって作製した。次に、その袋を2本の金属パイプに紐で固定した。上記の袋と金属パイプとの隙間をエポキシ樹脂で埋めることによって、気密性を高めた。上記の袋の1ヶ所に穴を開け、ガスを供給するためのパイプをその穴に入れ、袋とパイプの間から外気が流入しないように粘着テープを使用して袋とパイプとを固定した。
続いて、2体積%の水素ガスを含む窒素ガスを、キャリアガスとして、上記の袋およびスパウト内にパイプおよび金属パイプを通じて流した。袋の中に流したガスのうち、一部はスパウトを透過してスパウトの内部に流入し、他の一部は袋を透過して外部へ流出し、一部は2ヶ所の接続部分から外部へ流出した。キャリアガス中に含まれる酸素ガスは、キャリアガスによってセンサー部に運ばれ、その酸素濃度が測定された。そして、酸素濃度が一定値になるまで、上記の袋内およびスパウト内にキャリアガスを流しつづけた。そして、酸素濃度が一定となった時点の酸素濃度を、酸素透過度のゼロ点として設定した。
その後、上記の袋内に流していたキャリアガスを、調湿した酸素ガスに切り替えた。つまり、スパウトの内側には窒素ガスが流れ、スパウトの外側には酸素ガスが流れている状態とした。スパウトの外側から内側へ透過した酸素ガスは、スパウトの内部を流れているキャリアガスによって酸素ガスセンサーに運ばれ、酸素濃度が測定された。この時に測定された酸素濃度から、レトルト処理前のスパウトの酸素透過度(単位:cm3/(m2・day・atm))を算出した。測定、温度20℃、湿度85%RH、酸素圧1気圧、キャリアガス圧力1気圧の条件で行った。キャリアガスとしては、2体積%の水素ガスを含む窒素ガスを使用した。パウチの外部に出ているスパウト部分の表面積は9cm2であり、酸素透過度は28cm3/(m2・day・atm)であった。
続いて、ガスバリア性積層体の酸素透過度を算出した。実施例および比較例で作製した輸液バッグのガスバリア性積層体は、10cm×12cmの大きさであり、その外周の幅0.5cmをヒートシールした。つまり、ガスバリア性積層体の表面積は9cm×11cm=99cm2であった。
上記の方法で測定された輸液バッグおよびスパウトのそれぞれの酸素透過度から、下式を用いて、レトルト処理前のガスバリア性積層体の酸素透過度を算出した。
[スパウト付きパウチの酸素透過度]=([ガスバリア性積層体の酸素透過度]×[ガスバリア性積層体の表面積]+[スパウトの酸素透過度]×[スパウトの表面積])/([ガスバリア性積層体の表面積]+[スパウトの表面積])
具体的には、輸液バッグの酸素透過度が3.00cm3/(m2・day・atm)だとすると、ガスバリア性積層体の酸素透過度は、以下のように算出できる。
3.00=([ガスバリア性積層体の酸素透過度]×99+28×9)/(99+9)
[ガスバリア性積層体の酸素透過度]=(3×108−28×9)/99=0.73cm3/(m2・day・atm)
(2)レトルト処理後の酸素透過度
実施例および比較例で得られた平パウチ型の輸液バッグに蒸留水100mLを充填し、それらをレトルト処理装置(日阪製作所製、フレーバーエース RCS−60)に入れ、120℃、30分、0.15MPaの条件でレトルト処理を施した。レトルト処理後、加熱を停止し、レトルト処理装置の内部温度が60℃になった時点で、レトルト処理装置から輸液バッグを取り出した。そして、20℃、65%RHの室内で1時間放置した。その後、輸液バッグのスパウト部から水を抜き出した。このようにして得られたレトルト処理後の輸液バッグについて、酸素透過度を測定した。酸素透過度は、酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN2/20」)を用いて、レトルト処理前の酸素透過度と同様の方法および条件によって測定した。
また、スパウトの酸素透過度もレトルト処理前の酸素透過度と同様の方法・条件によって測定した。スパウトの酸素透過度はレトルト処理前後で変わらず、28cm3/(m2・day・atm)であった。続いて、レトルト処理後のガスバリア性積層体の酸素透過度を、上述の式に基づいて算出した。
(3)レトルト処理後で且つ屈曲(落下)試験後の酸素透過度
実施例および比較例で得られた平パウチ型の輸液バッグに蒸留水を充填し、それらをレトルト処理装置(日阪製作所製、フレーバーエース RCS−60)に入れ、120℃、30分、0.15MPaの条件でレトルト処理を施した。レトルト処理後、加熱を停止し、レトルト処理装置の内部温度が60℃になった時点で、レトルト処理装置から取り出した。そして、20℃、65%RHの室内で輸液バッグを1時間放置した。その後、輸液バッグを、その側面(ヒートシール側)から、1.5mの高さより10回落下させる屈曲試験を行った。
続いて、屈曲後の輸液バッグの片面に穴を開け、その穴から水を抜き出した。このようにして、レトルト処理後で且つ屈曲試験後の輸液バッグを得た。その輸液バッグの酸素透過度を、酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製「MOCON OX−TRAN2/20」)を用いて、レトルト処理前の酸素透過度と同様の方法および条件によって測定した。
(4)レトルト処理後の外観
実施例および比較例で得られた輸液バッグに水を充填し、それらをレトルト処理装置(日阪製作所製、フレーバーエース RCS−60)に入れ、135℃、60分、0.25MPaの条件でレトルト処理を行った。レトルト処理後、加熱を停止し、レトルト処理装置の内部温度が60℃になった時点で、レトルト処理装置から輸液バッグを取り出し、20℃、65%RHの室内で1時間放置した。
その後、輸液バッグの外観を観察した。そして、レトルト処理前と同様に輸液バッグに曇りがない場合を「非常に良好(◎)」、やや曇りがあるが実用上問題がない場合を「良好(○)」、レトルト処理前と比べ明らかに曇りがある場合を「不良(×)」と判定した。
<実施例1>
延伸ポリアミドフィルム(ユニチカ株式会社製、エンブレム ON−BC(商品名)、厚さ15μm、上記OPA)、及び無延伸ポリプロピレンフィルムのそれぞれの上に、2液型の接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、A−385(商品名)およびA−50(商品名))をコートして乾燥させた。無延伸ポリプロピレンフィルムには、東セロ株式会社製のRXC−21(厚さ50μm)を用いた。以下、その無延伸ポリプロピレンフィルムを「CPP21」と略記することがある。
そして、OPAおよびCPP21と積層体(6)とをラミネートした。このようにして、積層体(6)/接着剤/OPA/接着剤/CPP21という構造を有するラミネート体(A1)を得た。
次に、2枚のラミネート体(A1)を所定の形状に裁断した。次に、裁断した2枚のラミネート体(A1)を、CPP21が内側になるように重ね合わせて周縁をヒートシールした。また、ポリプロピレン製の口栓部(スパウト)をヒートシールによってラミネート体(A1)に取り付けた。このようにして、実施例1の輸液バッグを得た。作製した輸液バッグ10を、図1に示す。輸液バッグ10の周縁にはヒートシール部11が存在する。また、輸液バッグ10は、口栓部(スパウト)12を備える。
<実施例2〜15>
積層体(6)の代わりに他の積層体を用いたことを除いて実施例1と同様に、積層体/接着剤/OPA/接着剤/CPP21という構造を有するラミネート体を作製した。作製したラミネート体をラミネート体(A1)の代わりに用いることを除いて実施例1と同様に、実施例2〜15の輸液バッグを作製した。輸液バッグの作製に用いた積層体の番号を、表4に示す。
<実施例16>
無延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ株式会社、RXC−21(商品名)、厚さ50μm、上記CPP21)の上に、2液型の接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、A−385(商品名)およびA−50(商品名))をコートして乾燥させた。次に、そのCPP21と積層体(35)とラミネートした。このようにして、積層体(35)/接着剤/CPP21という構造を有するラミネート体(A16)を得た。ラミネート体(A1)の代わりにラミネート体(A16)を用いることを除いて実施例1と同様の方法で、実施例16の輸液バッグを作製した。
<実施例17>
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラーP60、厚さ12μm、上記PET)および無延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ株式会社、RXC−21、厚さ50μm、上記CPP21)のそれぞれの上に、2液型の接着剤(三井武田ケミカル株式会社製、A−385(商品名)およびA−50(商品名))をコートして乾燥させた。そして、それらPETおよびCPP21と積層体(35)とをラミネートした。このようにして、PET/接着剤/積層体(35)/接着剤/CPP21という構造を有するラミネート体(A17)を得た。ラミネート体(A1)の代わりにラミネート体(A17)を用いることを除いて実施例1と同様の方法で、実施例17の輸液バッグを作製した。
<比較例1、3、5〜8>
積層体(6)の代わりに他の積層体を用いたことを除いて実施例1と同様に、積層体/接着剤/OPA/接着剤/CPP21という構造を有するラミネート体を作製した。作製したラミネート体をラミネート体(A1)の代わりに用いることを除いて実施例1と同様に、比較例1、3、5〜8の輸液バッグを作製した。輸液バッグの作製に用いた積層体の番号を、表4に示す。
<比較例2および4>
積層体(32)の代わりに他の積層体を用いたことを除いて実施例15と同様に、積層体/接着剤/CPP21という構造を有するラミネート体を得た。作製したラミネート体をラミネート体(A1)の代わりに用いることを除いて実施例1と同様に、比較例2および4の輸液バッグを作製した。輸液バッグの作製に用いた積層体の番号を、表4に示す。
実施例および比較例の輸液バッグの作製に用いたラミネート体の構成、およびそれに用いた積層体の作製条件について、表4に示す。
Figure 2010162328
実施例および比較例の輸液バッグの評価結果を表5に示す。
Figure 2010162328
表5に示されるように、実施例の輸液バッグは、レトルト処理前、レトルト処理後、屈曲試験後のいずれにおいても良好な酸素バリア性を示した。また、135℃で60分という通常はあまり行われないような過酷なレトルト処理後も、実施例の輸液バッグの外観は良好であった。
実施例は、[化合物(A)に由来するM1原子のモル数]/[化合物(B)に由来するSi原子のモル数]の比が0.1/99.9〜35.0/65.0の範囲にあることが好ましいことを示した。また、この比は、1.2/98.8〜30.0/70.0の範囲にあることが好ましく、1.9/98.1〜30.0/70.0の範囲にあることがより好ましく、2.8/97.2〜30.0/70.0の範囲にあることが更に好ましいことが示された。
実施例は、[TMOSおよびAIPに由来する無機成分]/[PAAの部分中和物]の重量比は、20.0/80.0〜80.0/20.0の範囲にあることが好ましく、30.5/69.5〜70/30の範囲にあることがより好ましいことを示した。
実施例は、[式(II)で表される化合物に由来するSi原子のモル数]/[式(III)で表される化合物に由来するSi原子のモル数]の比が、99.5/0.5〜80.0/20.0の範囲にあることが好ましく、98.0/2.0〜89.9/10.1の範囲にあることがより好ましいことを示した。
また、実施例16および17は、ガスバリア層以外の層(たとえば基材)は、性能に大きな影響を与えないことを示した。
比較例1および2の輸液バッグは、レトルト処理前後の酸素バリア性が比較的良好であった。しかし、これは、比較例1および2のガスバリア層の合計が2μmと厚いためである。ガスバリア層が厚い比較例1および2では、屈曲に対するガスバリア層の耐久性が低く、屈曲試験によって酸素バリア性が大きく低下した。
ガスバリア層の厚さが実施例と同じである比較例3〜8では、レトルト処理前、レトルト処理後、屈曲試験後のいずれの段階でも、酸素バリア性が低かった。また、比較例の輸液バッグは、135℃で60分という過酷な条件でのレトルト処理後には外観が低下した。また、比較例8の輸液バッグは、レトルト処理によってデラミネ−ションが起きた。
以上のように、ガスバリア性積層体単独の評価と同様に、所定のガスバリア層を用いた本発明の輸液バッグは、優れた特性を示した。
本発明は、輸液バッグに利用でき、たとえば、アミノ酸輸液剤、電解質輸液剤、糖質輸液剤、輸液用脂肪乳剤などの液状の医薬品が充填される輸液バッグに利用できる。本発明の輸液バッグは、高温での加熱殺菌処理が可能であり、酸素バリア性が極めて良好である。本発明の輸液バッグによれば、加熱殺菌処理前、加熱殺菌処理中、加熱殺菌処理後、輸送後、保存後においても、充填されている液状医薬品が酸素によって変質することを防止できる。
10 輸液バッグ
11 ヒートシール部
12 口栓部

Claims (8)

  1. ガスバリア性積層体を用いて形成された輸液バッグであって、
    前記ガスバリア性積層体は、基材と前記基材に積層された少なくとも1つのガスバリア性を有する層とを含み、
    前記層は、加水分解性を有する特性基を含有する少なくとも1種の化合物(L)の加水分解縮合物と、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する重合体(X)の中和物とを含む組成物からなり、
    前記化合物(L)は、化合物(A)と、加水分解性を有する特性基が結合したSiを含有する化合物(B)とを含み、
    前記化合物(A)は、以下の式(I)で表される少なくとも1種の化合物であり、
    11 m1 n-m・・・(I)
    [式(I)中、M1はAl、Ti、およびZrから選ばれるいずれか1つを表す。X1は、F、Cl、Br、I、OR1、R2COO、R3COCHCOR4、およびNO3から選ばれるいずれか1つを表す。Y1は、F、Cl、Br、I、OR5、R6COO、R7COCHCOR8、NO3およびR9から選ばれるいずれか1つを表す。R1、R2、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。R3、R4、R7、R8およびR9は、それぞれ独立にアルキル基を表す。nはM1の原子価と等しい。mは1〜nの整数を表す。]
    前記化合物(B)は、以下の式(II)で表される少なくとも1種の化合物を含み、
    Si(OR10p11 4-p-q2 q・・・(II)
    [式(II)中、R10はアルキル基を表す。R11はアルキル基、アラルキル基、アリール基またはアルケニル基を表す。X2はハロゲン原子を表す。pおよびqは、それぞれ独立に0〜4の整数を表す。1≦p+q≦4である。]
    前記重合体(X)の前記官能基に含まれる−COO−基の少なくとも一部が2価以上の金属イオンで中和されており、
    前記化合物(B)に占める前記式(II)で表される化合物の割合が80モル%以上であり、
    前記組成物において、[前記化合物(A)に由来する前記M1原子のモル数]/[前記化合物(B)に由来するSi原子のモル数]の比が0.1/99.9〜35.0/65.0の範囲にある、輸液バッグ。
  2. 前記化合物(B)は、以下の式(III)で表される少なくとも1種の化合物をさらに含み、
    Si(OR12r3 s3 4-r-s・・・(III)
    [式(III)中、R12はアルキル基を表す。X3はハロゲン原子を表す。Z3は、カルボキシル基との反応性を有する官能基で置換されたアルキル基を表す。rおよびsは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。1≦r+s≦3である。]
    [前記式(II)で表される化合物に由来するSi原子のモル数]/[前記式(III)で表される化合物に由来するSi原子のモル数]の比が、99.5/0.5〜80.0/20.0の範囲にある、請求項1に記載の輸液バッグ。
  3. 前記M1がAlである請求項1または2に記載の輸液バッグ。
  4. [前記化合物(L)に由来する無機成分の重量]/[前記化合物(L)に由来する有機成分の重量と前記重合体(X)に由来する有機成分の重量との合計]の比が、30.5/69.5〜70.0/30.0の範囲にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の輸液バッグ。
  5. 前記重合体(X)の前記官能基に含まれる−COO−基の60モル%以上が前記金属イオンによって中和されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の輸液バッグ。
  6. 前記ガスバリア性積層体が、最外層よりも内側に配置された無延伸ポリプロピレン層を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の輸液バッグ。
  7. 前記ガスバリア性積層体は、蒸着法で形成された無機層を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の輸液バッグ。
  8. 前記無機層が、前記基材と前記ガスバリア性を有する層との間に配置されている、請求項7に記載の輸液バッグ。
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JP2006305340A (ja) * 2005-03-30 2006-11-09 Kuraray Co Ltd 輸液バッグ

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