以下に、本発明に係る車両情報伝送システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る車両情報伝送システムの概略構成を示す図である。図1では、一例として、車両5−1〜5−m(mは1以上の整数)からなるm両編成の列車と、この列車と無線通信可能な地上通信システム4との間の関係を示している。地上通信システム4は例えば車両所に構築され、この車両所に列車が入庫した状況を示している。なお、後述するように、本実施の形態は、複数の列車が同時に地上通信システム4と通信する場合に好適に適用することができるが、その場合でも各列車と地上通信システム4との間の関係は図1の場合と同様である。
車両5−1は列車の進行方向における先頭車両であり、この車両5−1は、例えばスペクトル拡散(Spread Spectrum;以下、SSという。)通信方式を利用した車上無線伝送装置としての車上SS伝送装置6と、この車上SS伝送装置6に接続され車両5−1に搭載された各種機器の状態等を監視するモニタ装置7−1とを備えている。
車両5−2は車両5−1に接続された2両目の車両であり、この車両5−2は搭載された各種機器の状態等を監視するモニタ装置7−2を備えている。車両5−3〜5−mについても同様であり、それぞれ順にモニタ装置7−3〜7−mを備えている。モニタ装置7−1〜7−mはデータ伝送が可能な伝送線で接続されており、モニタ装置7−1〜7−mにてそれぞれ取得された検修データ等の車両情報は、車上SS伝送装置6へ送信され集積される。
次に、車上SS伝送装置6が通信に用いる周波数チャンネルについて説明する。本実施の形態では、車上SS伝送装置6のチャンネル方式として、可変チャンネル方式と固定チャンネル方式の両方を対象とする。すなわち、列車の車種に応じて搭載された車上SS伝送装置6のチャンネル方式が異なり、チャンネル可変対応の車上SS伝送装置6の場合は、複数の周波数チャンネルを切り替えて通信に使用可能であり、チャンネル可変非対応の車上SS伝送装置6の場合は固定された一チャンネルのみ通信に使用可能である。このように、可変チャンネル方式(チャンネル可変対応)及び固定チャンネル方式(チャンネル可変非対応)の双方の車上SS伝送装置6が混在した車両体系における車両情報の伝送を対象とする。
チャンネル可変対応の車上SS伝送装置6は、(n+1)個の周波数チャンネルを切り替えて通信に使用可能とする。ここで、nは1以上の整数である。具体的には、通信に使用可能な相互に異なる周波数をF1,F2,・・・Fpとし(p=(n+1)とした。)、各周波数に対応する周波数チャンネルをそれぞれCH1,CH2,・・・,CHpと表記する。周波数F1,F2,・・・Fpは、干渉を起こさないように相互に離隔して設定されているものとする。また、以下では、CH1を開局用の周波数チャンネルとし、CH1を除くCH2,・・・,CHpを開局後のデータ伝送用の周波数チャンネルとする。チャンネル可変対応の車上SS伝送装置6は、開局用の周波数チャンネルCH1を用いて開局を行った後に、周波数チャンネルを切り替え、CH2,・・・,CHpのいずれかであるデータ伝送用の周波数チャンネルを用いて車両情報の伝送を行う。チャンネル可変対応の車上SS伝送装置6の周波数チャンネルの切り替えは、地上通信システム4、具体的には、SS無線制御端末2からのチャンネル切替指令に基づいて行われる。
チャンネル可変非対応の車上SS伝送装置6は、固定された1個の周波数チャンネル、具体的には上記の開局用の周波数チャンネルCH1のみを有し、このCH1を用いて開局及びデータ送受信を行う。
一方、地上通信システム4は、それぞれSS通信方式を採用した複数台の地上無線伝送装置としての例えばL台の地上SS伝送装置1−1〜1−Lと、これらの伝送装置の制御を含む無線通信の制御を行う無線通信制御部としてのSS無線制御端末2と、SS無線制御端末2に接続されたデータ管理端末3とを備えている。データ管理端末3は、地上SS伝送装置1−1〜1−Lが受信した車両情報を、SS無線制御端末2を介して取得しデータ管理を行う。
次に、地上SS伝送装置1−1〜1−Lの各々が使用可能な周波数チャンネルについて説明する。本実施の形態では、地上SS伝送装置1−1〜1−Lは、それぞれ、少なくともCH2,・・・,CHpから選択又は割り当てられた一の周波数チャンネルとCH1とを切り替えて使用可能とする。ここで、L>nの場合には、地上SS伝送装置1−1〜1−Lのうちの少なくともn台には、データ伝送用の周波数チャンネルCH2,CH3,・・・,CHpから選択された一の周波数チャンネルを一つずつかつ相互に重複しないように割り当てるようにする。これは、チャンネル可変対応の列車が複数入庫したときに、異なるデータ伝送用の周波数チャンネルを用いて、できるだけ多く(最大でn)の車上−地上間同時データ送受信を実現するためである。また、L≦nの場合には、地上SS伝送装置1−1〜1−Lには、それぞれ相互に重複がないようにCH2,・・・,CHpから選択されたL個のデータ伝送用の周波数チャンネルが一つずつ割り当てられる。これも、L>nの場合と同様の理由による。SS無線制御端末2は、地上SS伝送装置1−1〜1−Lの各々に対して周波数チャンネルの切り替えを制御する。
なお、地上SS伝送装置1−1〜1−Lの各々に対するデータ伝送用のチャンネルの割り当ては、予め各地上SS伝送装置毎に固定して割り当ててもよいし、又は、SS無線制御端末2により通信状況に応じて周波数チャンネルを動的に割り当ててもよい。後者の場合、地上SS伝送装置1−1〜1−LはそれぞれCH1,CH2,・・・,CHpを切り替えて使用可能な構成であるとし、各地上SS伝送装置に対するデータ伝送用の周波数チャンネルの割り当ては通信状況に応じてSS無線制御端末2によって行われる。したがって、この場合も、実質的には、CH1と選択された一のデータ伝送用の周波数チャンネルとを切り替えて使用することとなる。
(n=1,L=2、チャンネル可変対応車−チャンネル可変対応車)
次に、本実施の形態の動作について図2〜図5を参照して説明する。図2〜図5は、n=1,L=2、及び2台のチャンネル可変対応車両の場合に、車上−地上間での車両情報の伝送を動作順に説明するための図であり、図2は地上通信システム4からの開局要求を説明するための概念図、図3は車両10−1に対するチャンネル切替指令を説明するための概念図、図4は車両10−1からのデータ送信及び車両11−1に対する開局処理を説明するための概念図、図5は車両10−1からのデータ送信及び車両11−1からのデータ送信を説明するための概念図である。
図2〜図5では、一例として、チャンネル可変対応の車上SS伝送装置が有するデータ伝送用の周波数チャンネルの個数を1(すなわちn=1)、地上SS伝送装置の設置台数をL=2としている。n=1の場合、車上SS伝送装置の周波数チャンネルはCH1,CH2である。
図2に示すように、地上SS伝送装置21と地上SS伝送装置22とがSS無線制御端末2に接続され設置されている。地上SS伝送装置21,22はそれぞれ図1の地上SS伝送装置1−1,1−2に相当するものである。また、図2では図示はしていないが、SS無線制御端末2はデータ管理端末3に接続されている。さらにまた、地上SS伝送装置21,22、SS無線制御端末2、及びデータ管理端末3を備えて地上通信システム4が構成されているのは図1と同様である。これは、図3〜図5でも同様とする。
図2において、地上SS伝送装置21,22の周波数チャンネルについて説明する。地上SS伝送装置21は、開局用の周波数チャンネルCH1と、データ伝送用の周波数チャンネルCH2とを、切り替えて使用可能とする。同様に、地上SS伝送装置22は、開局用の周波数チャンネルCH1と、データ伝送用の周波数チャンネルCH2とを、切り替えて使用可能とする。また、地上SS伝送装置21,22は、交互に開局処理を行うものとする。すなわち、地上SS伝送装置21が、一定時間CH1を使用して開局処理を行うと、次に地上SS伝送装置22が一定時間CH1を使用して開局処理を行い、このような交互の開局処理がSS無線制御端末2の制御により定期的に切り替えられているものとする。なお、このような交互の開局処理は、Lが2より大きい場合も同様であり、図1において、開局処理を行う地上SS伝送装置はL台の地上SS伝送装置間で定期的に切り替えられるものとする。また、既に地上SS伝送装置が車上−地上間通信を行っている場合には、開局がなされていない地上SS伝送装置の間で、開局処理を交互に切り替えて行うよう制御するものとする。
このような設定のもとで、図2では、地上SS伝送装置21の周波数チャンネルはCH1に、地上SS伝送装置22の周波数チャンネルはCH2に設定されており、地上SS伝送装置21が開局処理を行う状況にある。
また、図2では、車両所に車両10−1を先頭車両とする列車と車両11−1を先頭車両とする列車とが入庫した状態を示し、車両10−1のほうが車両11−1よりも早く入庫した状況を示している。車両10−1にはチャンネル可変対応(図中、CH可変対応と記載。以下、同様。)の車上SS伝送装置8が搭載され、車両11−1には同様にチャンネル可変対応の車上SS伝送装置9が搭載されている。車両SS伝送装置8の周波数チャンネルは、車両情報伝送前の状態では開局用の周波数チャンネルCH1に設定されている。同様に、車両SS伝送装置9の周波数チャンネルも、車両情報伝送前の状態では開局用の周波数チャンネルCH1に設定されている。一般に、チャネル可変対応の車上SS伝送装置の周波数チャンネルは、初期設定としてCH1に設定されているものとする。
図2では、SS無線制御端末2の制御に基づき地上SS伝送装置21から開局要求信号が送信され(S20)、車両10−1の車上SS伝送装置8、及び車両11−1の車上SS伝送装置9がこの開局要求信号を受信する。開局要求信号は、開局指令信号であるとともに車両所における列車(又は編成)の有無を確認する信号でもある。なお、図示例では、車上SS伝送装置8が車上SS伝送装置9よりも先に開局要求信号を受信したとする。これは、例えば、車両10−1が開局要求信号を受信中に車両11−1が続いて入庫した場合などに相当する。
次に、図3に示すように、車上SS伝送装置8は、地上SS伝送装置21からの開局要求信号(S20)を受信した後に、開局応答信号を送信する(S21)。開局応答信号は、開局指令に応答して車上側から地上側へ送信される信号であって、自車両情報等(例えば、編成番号など)を含んでいる。この情報には、この車上SS伝送装置8がチャンネル可変可能かどうかを判別できる情報を含んでいる。そして、地上SS伝送装置21は、この開局応答信号を受信した後に、チャンネル可変可能であることを判断し、車上SS伝送装置8に対するチャンネル切替指令信号を送信する(S22)。このチャンネル切替指令信号には、車上SS伝送装置8に対するチャンネル切替指令とともにチャンネル切替後のデータ送信要求情報も含まれている。地上SS伝送装置21は、SS無線制御端末2の制御に基づいてチャンネル切替指令信号を送信する。
車上SS伝送装置8は、このチャンネル切替指令信号を受信し、地上SS伝送装置21からの要求により自身の周波数チャンネルを開局用の周波数チャンネルからデータ伝送用の周波数チャンネルへと切り替える。なお、車上SS伝送装置9が開局要求信号を受信した後に、地上SS伝送装置21へ開局応答信号を送信したとしても、地上SS伝送装置21では、既に車上SS伝送装置8からの開局応答信号を受信しているため、車上SS伝送装置9からの応答を受け付けず、車上SS伝送装置8に対するチャンネル切替指令信号のみを送信し、車上SS伝送装置9に対するチャンネル切替指令信号を送信することはない。
次に、図4に示すように、車上SS伝送装置8の周波数チャンネルはチャンネル切替指令信号の内容に基づいてCH1からCH2へ切り替えられ、同時に、地上SS伝送装置21の周波数チャンネルもCH1からCH2へ切り替えられる。つまり、地上SS伝送装置21の周波数チャンネルを開局用の周波数チャンネルCH1からデータ伝送用の周波数チャンネルCH2へと切り替えることに応じて、車上SS伝送装置8の周波数チャンネルも地上SS伝送装置21と同一のデータ伝送用の周波数チャンネルCH2へと切り替える。そして、車上SS伝送装置8は、周波数チャンネルCH2を用いて、車両10−1を先頭車両とする列車の車両情報を地上SS伝送装置21へとデータ送信する(S23)。
また、SS無線制御端末2は、地上SS伝送装置21の周波数チャンネルをCH2へ切り替えるとともに、地上SS伝送装置22の周波数チャンネルをCH1へ切り替える。これにより、地上SS伝送装置22は開局処理を行う。すなわち、車上SS伝送装置9は、地上SS伝送装置22からの開局要求信号(S24)を受信した後に、開局応答信号を送信する(S25)。なお、車上SS伝送装置9はCH可変対応ではあるものの、切り替え可能な周波数チャンネルであるCH2は既に車上SS伝送装置8−地上SS伝送装置21間のデータ伝送で使用されているので、周波数チャンネルの切り替えを行わず、開局用の周波数チャンネルCH1をそのまま使用してデータ伝送を行う。地上SS伝送装置22による開局要求信号の送信等がSS無線制御端末2の制御によることは、地上SS伝送装置21の場合と同様である。
続いて、図5に示すように、車上SS伝送装置9は、CH1をデータ伝送用として用いて、車両11−1を先頭車両とする列車の車両情報を地上SS伝送装置22へとデータ送信する(S26)。これにより、車上SS伝送装置8と地上SS伝送装置21間、及び車上SS伝送装置9と地上SS伝送装置22間で同時データ伝送が実現される。
地上SS伝送装置21が受信した車両情報と、地上SS伝送装置22が受信した車両情報は、それぞれ、SS無線制御端末2を経てデータ管理端末3へ送信される。データ管理端末3は、受信した車両情報を各編成毎にデータベース管理する。
なお、図2では、車上SS伝送装置8は車上SS伝送装置9よりも先に応答信号を送信したとしたが、車両10−1及び車両11−1がともに車両所に入庫している状態で開局要求信号が送信された場合に、地上SS伝送装置21は大域的に開局要求を行うので、車上SS伝送装置8,9は同時に開局応答を送信し、応答が重なる状況が発生し得る。このようなケースを回避するために、本実施の形態では、車上SS伝送装置8,9は相互に異なる遅延時間経過後に開局応答信号を返信するように列車毎に異なる遅延時間を設けて返信する。つまり、開局応答が重ならないように、列車(又は編成)毎に固有の遅延時間を設定し、この遅延時間経過後に開局応答信号を返信する構成とする。遅延時間の設定方法としては、例えば、車上側で列車の編成番号をもとに固有の遅延時間を演算する方法などがある。このような特性は、以下で説明する他の車上SS伝送装置についても同様である。
図6は、図2〜図5に示す処理を含む動作をまとめて示した図である。なお、地上SS伝送装置21,22、車上SS伝送装置8,9の構成等は、図2〜図5と同様である。図6では、処理S50→処理S51→処理S52からなる一連の処理が、図2〜図5で説明した動作を示すものであり、この場合は特に、地上SS伝送装置21が先に開局し、続いて地上SS伝送装置22が開局する場合である。他方、処理S50→処理S53→処理S54からなる一連の処理では、地上SS伝送装置22が先に開局し、続いて地上SS伝送装置21が開局する場合である。
まず、処理S50→処理S51→処理S52と続く処理について説明する。処理S50では、地上SS伝送装置21と地上SS伝送装置22とが周波数チャンネルCH1を用いて交互に開局処理を行っている。具体的には、開局処理が地上SS伝送装置21と地上SS伝送装置22との間でSS無線制御端末2の制御により定期的に切り替えられている。
次に、処理S51では、地上SS伝送装置21はその開局後にCH2を用いてデータ受信を行い(地上SS伝送装置21通信(CH2))、また、地上SS伝送装置22はCH1を用いて開局処理を行う(地上SS伝送装置22開局処理(CH1))。詳細には、処理S51は、図4に示す処理を行っている。したがって、地上SS伝送装置21は、車上SS伝送装置8と開局を行った後にデータ授受を行い、また、地上SS伝送装置22は車上SS伝送装置9と開局処理を行う。
続いて、処理S52では、地上SS伝送装置22はその開局後に開局用の周波数チャンネルCH1をそのまま用いてデータ受信を行い(地上SS伝送装置22通信(CH1))、また、地上SS伝送装置21はCH2を用いてデータ受信を行う(地上SS伝送装置21通信(CH2))。詳細には、処理S52は、図5に示す処理を行っている。
次に、処理S50→処理S53→処理S54と続く処理について説明する。処理S50は、既に説明した通りである。処理S53では、地上SS伝送装置22はその開局後にCH2を用いてデータ受信を行い(地上SS伝送装置22通信(CH2))、また、地上SS伝送装置21はCH1を用いて開局処理を行う(地上SS伝送装置21開局処理(CH1))。具体的には、地上SS伝送装置22は車上SS伝送装置8と開局を行った後にデータ授受を行い、また、地上SS伝送装置21は車上SS伝送装置9と開局処理を行う。
続いて、処理S54では、地上SS伝送装置21はその開局後に開局用の周波数チャンネルCH1をそのまま用いてデータ受信を行い(地上SS伝送装置21通信(CH1))、また、地上SS伝送装置22はCH2を用いてデータ受信を行う(地上SS伝送装置22通信(CH2))。具体的には、地上SS伝送装置22は車上SS伝送装置8とデータ授受を行い、また、地上SS伝送装置21は車上SS伝送装置9とデータ授受を行う。
なお、図2〜図6では、開局用の周波数チャンネルも含め車上SS伝送装置8,9の使用可能な周波数チャンネルの個数が、地上SS伝送装置の設置台数と等しい場合について示している((n+1)=L=2)。このような関係を満たす一般のn,Lの場合に、地上SS伝送装置とチャンネル可変対応の車上SS伝送装置との間でL対Lの車上−地上間同時データ送受信を実現するためには、n個の異なるデータ伝送用の周波数チャンネルに加えて開局用の周波数チャンネルCH1もデータ伝送用として使用する必要がある。このように、チャンネル可変対応の車上SS伝送装置を搭載した車両が複数存在する場合には、開局用の周波数チャンネルCH1で開局した後に、使用可能な伝送用の周波数チャンネルがある場合にはそれに切り替えて通信を行い、使用可能な伝送用の周波数チャンネルがない場合にはCH1を用いて通信を行い、車両や車上−地上間の伝送状況に応じて周波数チャンネルを変更することで、複数車両に対してデータ送受信を同時に可能とし、開局待ちの車両を少なくできる。
また、図2〜図6において、周波数チャンネルの個数はそのままにして地上SS伝送装置の設置台数を2台より多くすることもできる。図2〜図6において地上SS伝送装置の設置台数を2台としたのは、車上SS伝送装置8,9に対して、2対2の車上−地上間同時データ送受信を実現するためには、少なくとも2台の地上SS伝送装置を設置する必要があるからである。
無線通信においては例えばある一台の地上SS伝送装置が、その設置位置によっては入庫した列車と通信できる位置関係にあるとは限らず、このような場合、列車と通信可能な範囲にある別の地上SS伝送装置を用いて通信を行う必要がある。図2〜図6では、地上SS伝送装置21,22はいずれも入庫した列車の位置とは無関係にすべての列車と通信可能とし、車上−地上間で2対2の同時データ送受信が可能であるとして説明した。あるいは、図2〜図6では、2台より多く設置された地上SS伝送装置の中から車両10−1,11−1と通信可能な地上SS伝送装置21,22がSS無線制御端末2によって選択され、残りの地上SS伝送装置の図示を省略した状況を示していると解してもよい。これは以下に説明する他の例の場合についても同様である。
(n=1,L=2、チャンネル可変対応車−チャンネル可変非対応車)
本実施の形態の動作について、さらに、図7〜図10を参照して説明する。図7〜図10は、n=1,L=2、並びに1台のチャンネル可変対応車両及び1台のチャンネル可変非対応車両の場合に、車上−地上間での車両情報の伝送を動作順に説明するための図であり、図7は地上通信システム4からの開局要求を説明するための概念図、図8は車両10−1に対するチャンネル切替指令を説明するための概念図、図9は車両10−1からのデータ送信及び車両12−1に対する開局処理を説明するための概念図、図10は車両10−1からのデータ送信及び車両12−1からのデータ送信を説明するための概念図である。
図7〜図10では、図2〜図5と同様に、チャンネル可変対応の車上SS伝送装置が有するデータ伝送用の周波数チャンネルの個数を1(すなわちn=1)、地上SS伝送装置の設置台数をL=2とする。したがって、車上SS伝送装置の周波数チャンネルはCH1,CH2である。
図7に示すように、地上SS伝送装置21と地上SS伝送装置22とがSS無線制御端末2に接続され設置されている。また、図7では図示はしていないが、SS無線制御端末2はデータ管理端末3に接続されている。さらにまた、地上SS伝送装置21,22、SS無線制御端末2、及びデータ管理端末3を備えて地上通信システム4が構成されているのは図1と同様である。これは、図8〜図10でも同様とする。
図7において、地上SS伝送装置21,22は、図2〜図5の場合と同様であり、したがって、その周波数チャンネルも既に説明したとおりである。
また、図7では、車両所に車両10−1を先頭車両とする列車と車両12−1を先頭車両とする列車とが入庫した状態を示し、車両10−1のほうが車両12−1よりも早く入庫した状況を示している。車両10−1にはチャンネル可変対応の車上SS伝送装置8が搭載され、車両12−1にはチャンネル可変非対応(図中、CH可変非対応と記載。以下、同様。)の車上SS伝送装置13が搭載されている。車両SS伝送装置8の周波数チャンネルは、車両情報伝送前の状態では開局用の周波数チャンネルCH1に設定されている。車両SS伝送装置13の周波数チャンネルはCH1に固定されている。
図7では、SS無線制御端末2の制御に基づき地上SS伝送装置21から開局要求信号が送信され(S20)、車両10−1の車上SS伝送装置8、及び車両12−1の車上SS伝送装置13がこの開局要求信号を受信する。なお、図示例では、車上SS伝送装置8が車上SS伝送装置13よりも先に開局要求信号を受信したとする。
次に、図8に示すように、車上SS伝送装置8は、地上SS伝送装置21からの開局要求信号(S20)を受信した後に、開局応答信号を返信する(S21)。開局応答信号は、開局指令に応答して車上側から地上側へ送信される信号であって、自車両情報等(例えば、編成番号など)を含んでいる。そして、地上SS伝送装置21は、この開局応答信号を受信した後に、車上SS伝送装置8に対するチャンネル切替指令信号を送信する(S22)。このチャンネル切替指令信号には、車上SS伝送装置8に対するチャンネル切替指令とともにチャンネル切替後のデータ送信要求情報も含まれている。地上SS伝送装置21は、SS無線制御端末2の制御に基づいてチャンネル切替指令信号を送信する。
車上SS伝送装置8は、このチャンネル切替指令信号を受信し、地上SS伝送装置21からの要求により自身の周波数チャンネルを開局用の周波数チャンネルからデータ伝送用の周波数チャンネルへと切り替える。なお、車上SS伝送装置13が開局要求信号を受信した後に、地上SS伝送装置21へ開局応答信号を送信したとしても、地上SS伝送装置21では、既に車上SS伝送装置8からの開局応答信号を受信しているため、車上SS伝送装置13からの応答を受け付けず、車上SS伝送装置8に対するチャンネル切替指令信号のみを送信し、車上SS伝送装置13に対するチャンネル切替指令信号を送信することはない。
次に、図9に示すように、車上SS伝送装置8の周波数チャンネルはチャンネル切替指令信号の内容に基づいてCH1からCH2へ切り替えられ、同時に、地上SS伝送装置21の周波数チャンネルもCH1からCH2へ切り替えられる。つまり、地上SS伝送装置21の周波数チャンネルを開局用の周波数チャンネルCH1からデータ伝送用の周波数チャンネルCH2へと切り替えることに応じて、車上SS伝送装置8の周波数チャンネルも地上SS伝送装置21と同一のデータ伝送用の周波数チャンネルCH2へと切り替える。そして、車上SS伝送装置8は、周波数チャンネルCH2を用いて、車両10−1を先頭車両とする列車の車両情報を地上SS伝送装置21へとデータ送信する(S23)。
また、SS無線制御端末2は、地上SS伝送装置21の周波数チャンネルをCH2へ切り替えるとともに、地上SS伝送装置22の周波数チャンネルをCH1へ切り替える。これにより、地上SS伝送装置22は開局処理を行う。すなわち、車上SS伝送装置13は、地上SS伝送装置22からの開局要求信号(S24)を受信した後に、開局応答信号を送信する(S25)。この情報には、この車上SS伝送装置13がチャンネル可変可能かどうかを判別できる情報を含んでいる。この情報により、車上SS伝送装置13はチャンネル可変非対応であることを判断し、車上SS伝送装置13は、開局と同一チャンネル(CH1)で地上SS伝送装置22とデータ伝送を行う。車上SS伝送装置13は、その周波数チャンネルがCH1に固定されているので、このCH1を用いて開局及びデータ伝送を行う。
続いて、図10に示すように、車上SS伝送装置13は、CH1を用いて、車両12−1を先頭車両とする列車の車両情報を地上SS伝送装置22へとデータ送信する(S26)。これにより、車上SS伝送装置8と地上SS伝送装置21間、及び車上SS伝送装置13と地上SS伝送装置22間で同時データ伝送が実現される。このように、チャンネル可変対応の車上SS伝送装置を搭載した車両が入庫し、続いてチャンネル可変非対応の車上SS伝送装置を搭載した車両が入庫した場合において、チャンネル可変対応の車上SS伝送装置に対しては、開局用の周波数チャンネルCH1とデータ伝送用の周波数チャンネルとを切り替えることにより、複数車両に対して車上−地上間のデータ送受信を同時にでき、開局待ちの車両を少なくできる。
地上SS伝送装置21が受信した車両情報と、地上SS伝送装置22が受信した車両情報とは、それぞれ、SS無線制御端末2を経てデータ管理端末3へ送信される。データ管理端末3は、受信した車両情報を各編成毎にデータベース管理する。
図11は、図7〜図10に示す処理を含む動作をまとめて示した図である。なお、地上SS伝送装置21,22、車上SS伝送装置8,13の構成等は、図7〜図10と同様である。図11では、処理S50→処理S51→処理S52からなる一連の処理が、図7〜図10で説明した動作を示すものであり、この場合は特に、地上SS伝送装置21が先に開局し、続いて地上SS伝送装置22が開局する場合である。他方、処理S50→処理S53→処理S54からなる一連の処理では、地上SS伝送装置22が先に開局し、続いて地上SS伝送装置21が開局する場合である。
まず、処理S50→処理S51→処理S52と続く処理について説明する。処理S50では、地上SS伝送装置21と地上SS伝送装置22とが周波数チャンネルCH1を用いて交互に開局処理を行っている。具体的には、開局処理が地上SS伝送装置21と地上SS伝送装置22との間でSS無線制御端末2の制御により定期的に切り替えられている。
次に、処理S51では、地上SS伝送装置21はその開局後にCH2を用いてデータ受信を行い(地上SS伝送装置21通信(CH2))、また、地上SS伝送装置22はCH1を用いて開局処理を行う(地上SS伝送装置22開局処理(CH1))。詳細には、処理S51は、図9に示す処理を行っている。したがって、地上SS伝送装置21は、車上SS伝送装置8と開局を行った後にデータ授受を行い、また、地上SS伝送装置22は車上SS伝送装置13と開局処理を行う。
続いて、処理S52では、地上SS伝送装置22はその開局後に開局用の周波数チャンネルCH1をそのまま用いてデータ受信を行い(地上SS伝送装置22通信(CH1))、また、地上SS伝送装置21はCH2を用いてデータ受信を行う(地上SS伝送装置21通信(CH2))。詳細には、処理S52は、図10に示す処理を行っている。
次に、処理S50→処理S53→処理S54と続く処理について説明する。処理S50は、既に説明した通りである。処理S53では、地上SS伝送装置22はその開局後にCH2を用いてデータ受信を行い(地上SS伝送装置22通信(CH2))、また、地上SS伝送装置21はCH1を用いて開局処理を行う(地上SS伝送装置21開局処理(CH1))。具体的には、地上SS伝送装置22は車上SS伝送装置8と開局を行った後にデータ授受を行い、また、地上SS伝送装置21は車上SS伝送装置13と開局処理を行う。
続いて、処理S54では、地上SS伝送装置21はその開局後に開局用の周波数チャンネルCH1をそのまま用いてデータ受信を行い(地上SS伝送装置21通信(CH1))、また、地上SS伝送装置22はCH2を用いてデータ受信を行う(地上SS伝送装置22通信(CH2))。具体的には、地上SS伝送装置22は車上SS伝送装置8とデータ授受を行い、また、地上SS伝送装置21は車上SS伝送装置13とデータ授受を行う。
なお、図10において、地上SS伝送装置22と車上SS伝送装置13との間のデータ送受信はCH1を用いて行われるため、このデータ送受信中に車両10−1,12−1以外に開局待ちの車両がある場合には、開局処理は、地上SS伝送装置22と車上SS伝送装置13間のデータ伝送が終了してから行うか、あるいは、地上SS伝送装置22と車上SS伝送装置13間のデータ伝送を一時中断して行うかとなるが、前者は開局待ちの車両がデータ伝送を始めるまでに時間がかかるという問題がある。そのため、地上SS伝送装置22のデータ伝送中にデータ伝送を一時中断し、その間に開局処理を行うことが望ましい。この開局処理については以下に説明する。
(n=1,L=2、チャンネル可変非対応車−チャンネル可変対応車)
本実施の形態の動作について、さらに、図12〜図15を参照して説明する。図12〜図15は、n=1,L=2、並びに1台のチャンネル可変対応車両及び1台のチャンネル可変非対応車両の場合に、車上−地上間での車両情報の伝送を動作順に説明するための別の図であり、図12は地上通信システム4からの開局要求を説明するための概念図、図13は車両14−1に対する開局処理を説明するための概念図、図14は車両14−1からのデータ送信及び車両11−1に対するチャンネル切替指令を説明するための概念図、図15は車両14−1からのデータ送信及び車両11−1からのデータ送信を説明するための概念図である。
図12〜図15では、図2〜図5と同様に、チャンネル可変対応の車上SS伝送装置が有するデータ伝送用の周波数チャンネルの個数を1(すなわちn=1)、地上SS伝送装置の設置台数をL=2とする。したがって、車上SS伝送装置の周波数チャンネルはCH1,CH2である。
図12に示すように、地上SS伝送装置21と地上SS伝送装置22とがSS無線制御端末2に接続され設置されている。また、図12では図示はしていないが、SS無線制御端末2はデータ管理端末3に接続されている。さらにまた、地上SS伝送装置21,22、SS無線制御端末2、及びデータ管理端末3を備えて地上通信システム4が構成されているのは図1と同様である。これは、図13〜図15でも同様とする。
図12において、地上SS伝送装置21,22は、図2〜図5の場合と同様であり、したがって、その周波数チャンネルも既に説明したとおりである。
また、図12では、車両所に車両14−1を先頭車両とする列車と車両11−1を先頭車両とする列車とが入庫した状態を示し、車両14−1のほうが車両11−1よりも早く入庫した状況を示している。車両14−1にはチャンネル可変非対応の車上SS伝送装置15が搭載され、車両11−1にはチャンネル可変対応の車上SS伝送装置9が搭載されている。車両SS伝送装置15の周波数チャンネルはCH1に固定されている。車両SS伝送装置9の周波数チャンネルは、車両情報伝送前の状態では開局用の周波数チャンネルCH1に設定されている。
図12では、SS無線制御端末2の制御に基づき地上SS伝送装置21から開局要求信号が送信され(S20)、車両14−1の車上SS伝送装置15、及び車両11−1の車上SS伝送装置9がこの開局要求信号を受信する。なお、図示例では、車上SS伝送装置15が車上SS伝送装置9よりも先に開局要求信号を受信したとする。
次に、図13に示すように、地上SS伝送装置21は車上SS伝送装置15との間で開局処理を行う。車上SS伝送装置15は、地上SS伝送装置21からの開局要求信号(S20)を受信した後に、開局応答信号を送信する(S21)。なお、車上SS伝送装置9が開局要求信号を受信した後に、地上SS伝送装置21へ開局応答信号を送信したとしても、地上SS伝送装置21では、既に車上SS伝送装置15からの開局応答信号を受信しているため、車上SS伝送装置9からの応答を受け付けず、車上SS伝送装置15に対するチャンネル切替指令信号のみを送信し、車上SS伝送装置9に対するチャンネル切替指令信号を送信することはない。
続いて、図14に示すように、車上SS伝送装置15は、開局用の周波数チャンネルCH1を用いて、車両14−1を先頭車両とする列車の車両情報を地上SS伝送装置21へとデータ送信する(S23)。
ところで、地上SS伝送装置21は、開局用の周波数チャンネルCH1を用いて車上SS伝送装置15との間でデータ授受を行っているので、開局待ちの車両が他にある場合には、そのままではこのデータ伝送が終了するまでは他の車両は開局を行うことができない。そこで、地上SS伝送装置21は、SS無線制御端末2の制御により、車上SS伝送装置15からの車両情報のデータ受信をその途中で一時中断し、その間に開局待ちの車両が存在するか否かを確認するための開局処理を行うことができるようにする。例えば、地上SS伝送装置21は、データ受信中に定期的にデータ受信を一時中断し、中断から所定の時間経過後に、再びデータ受信を開始するようにする。あるいは、地上SS伝送装置21は、所定サイズのデータを受信する毎に、前記のようにデータ受信を一時中断するようにしてもよい。
図14では、地上SS伝送装置21のデータ受信中に開局待ちの車両11−1が存在しており、地上SS伝送装置21が一時そのデータ受信を中断したときに、SS無線制御端末2の制御により、地上SS伝送装置22が開局処理を行う場合を示している。すなわち、地上SS伝送装置22は、CH1を用いて開局要求信号を送信する(S27)。車上SS伝送装置9は地上SS伝送装置22から送信された開局要求信号を受信し(S27)、地上SS伝送装置22へ開局応答信号を返信する(S28)。そして、地上SS伝送装置22は、この開局応答信号を受信した後に、車上SS伝送装置9へチャンネル切替指令信号を送信する(S29)。
そして、地上SS伝送装置21は、所定の時間経過後に、中断していた車上SS伝送装置15からのデータ受信を再開する。なお、開局待ちの車両が存在しない場合も同様であり、地上SS伝送装置21は、所定の時間経過後に、中断していた車上SS伝送装置15からのデータ受信を再開する。
次に、図15に示すように、車上SS伝送装置9は、地上SS伝送装置22から送信されたチャンネル切替指令信号に基づいて、自身の周波数チャンネルをCH1からデータ伝送用の周波数チャンネルであるCH2へ切り替える。同時に、地上SS伝送装置22も自身の周波数チャンネルをCH1からCH2へ切り替える。そして、車上SS伝送装置9は、CH2を用いて、車両11−1を先頭車両とする列車の車両情報を地上SS伝送装置22へとデータ送信する(S30)。これにより、車上SS伝送装置15と地上SS伝送装置21間、及び車上SS伝送装置9と地上SS伝送装置22間で同時データ伝送が実現される。このように、チャンネル可変非対応の車上SS伝送装置を搭載した車両が入庫し、続いてチャンネル可変対応の車上SS伝送装置を搭載した車両が入庫した場合において、チャンネル可変非対応の車上SS伝送装置に対してはCH1を用いたデータ伝送中に一時そのデータ伝送を中断し、その中断の間にチャンネル可変対応の車上SS伝送装置の開局処理を行うようにする。そして、チャンネル可変対応の車上SS伝送装置に対しては、開局用の周波数チャンネルCH1とデータ伝送用の周波数チャンネルとを切り替えて使用するようにする。これにより、複数車両に対して車上−地上間のデータ送受信を同時にでき、開局待ちの車両を少なくできる。
地上SS伝送装置21が受信した車両情報と、地上SS伝送装置22が受信した車両情報とは、それぞれ、SS無線制御端末2を経てデータ管理端末3へ送信される。データ管理端末3は、受信した車両情報を各編成毎にデータベース管理する。
また、図12〜図15では、地上SS伝送装置21が車上SS伝送装置15からのデータ受信を一時中断し、地上SS伝送装置22が開局処理を行うとしたが、地上SS伝送装置21が開局処理を行うようにしてもよい。すなわち、SS無線制御端末2は、地上SS伝送装置21が車上SS伝送装置9との間でS27〜S29の処理を行った後に、地上SS伝送装置22及び車上SS伝送装置9の周波数チャンネルをともにCH1からCH2に切り替えるように指示し、このCH2を用いて車上SS伝送装置9から地上SS伝送装置22へ車両情報を送信させるようにすることもできる(ただし、地上SS伝送装置21,22の両方が車上SS伝送装置9と通信できることを前提とする。)。
図16は、図12〜図15に示す処理を含む動作をまとめて示した図である。なお、地上SS伝送装置21,22、車上SS伝送装置9,15の構成等は、図12〜図15と同様である。図16では、処理S50→処理S51→処理S52からなる一連の処理が、図12〜図15で説明した動作を示すものであり、この場合は特に、地上SS伝送装置21が先に開局し、続いて地上SS伝送装置22が開局する場合である。他方、処理S50→処理S53→処理S54からなる一連の処理では、地上SS伝送装置22が先に開局し、続いて地上SS伝送装置21が開局する場合である。
まず、処理S50→処理S51→処理S52と続く処理について説明する。処理S50では、地上SS伝送装置21と地上SS伝送装置22とが周波数チャンネルCH1を用いて交互に開局処理を行っている。具体的には、開局処理が地上SS伝送装置21と地上SS伝送装置22との間でSS無線制御端末2の制御により定期的に切り替えられている。
次に、処理S51では、地上SS伝送装置21はその開局後にCH1を用いてデータ受信を行い(地上SS伝送装置21通信(CH1))、また、地上SS伝送装置22はCH1を用いて開局処理を行う(地上SS伝送装置22開局処理(CH1))。詳細には、処理S51は、図14に示す処理を行っている。したがって、地上SS伝送装置21は、車上SS伝送装置15と開局を行った後にデータ授受を行い、また、地上SS伝送装置22は、車上SS伝送装置15から地上SS伝送装置21へのデータ送信が中断されている間に、CH1を用いて車上SS伝送装置9と開局処理を行う。
続いて、処理S52では、地上SS伝送装置22はその開局後にデータ伝送用の周波数チャンネルCH2を用いてデータ受信を行い(地上SS伝送装置22通信(CH2))、また、地上SS伝送装置21はCH1を用いてデータ受信を行う(地上SS伝送装置21通信(CH2))。詳細には、処理S52は、図15に示す処理を行っている。
次に、処理S50→処理S53→処理S54と続く処理について説明する。処理S50は、既に説明した通りである。処理S53では、地上SS伝送装置22はその開局後にCH1を用いてデータ受信を行い(地上SS伝送装置22通信(CH1))、また、地上SS伝送装置21はCH1を用いて開局処理を行う(地上SS伝送装置21開局処理(CH1))。具体的には、地上SS伝送装置22は、車上SS伝送装置15と開局を行った後にデータ授受を行い、また、地上SS伝送装置21は、車上SS伝送装置15から地上SS伝送装置22へのデータ送信が中断されている間に、CH1を用いて車上SS伝送装置9と開局処理を行う。
続いて、処理S54では、地上SS伝送装置21はその開局後にデータ伝送用の周波数チャンネルCH2を用いてデータ受信を行い(地上SS伝送装置21通信(CH2))、また、地上SS伝送装置22はCH1を用いてデータ受信を行う(地上SS伝送装置22通信(CH1))。
(n=1,L=2、チャンネル可変非対応車−チャンネル可変非対応車)
本実施の形態の動作について、さらに、図17〜図21を参照して説明する。図17〜図21は、n=1,L=2、並びに2台のチャンネル可変非対応車両の場合に、車上−地上間での車両情報の伝送を動作順に説明するための図であり、図17は地上通信システム4からの開局要求を説明するための概念図、図18は車両14−1に対する開局処理を説明するための概念図、図19は車両14−1からのデータ送信を説明するための概念図、図20は車両12−1に対する開局処理を説明するための概念図、図21は車両12−1からのデータ送信を説明するための概念図である。
図17〜図21では、チャンネル可変非対応の車上SS伝送装置を搭載した車両が2車両連続して入庫した場合の車上−地上間のデータ伝送について説明する。
図17に示すように、地上SS伝送装置21と地上SS伝送装置22とがSS無線制御端末2に接続され設置されている。また、図17では図示はしていないが、SS無線制御端末2はデータ管理端末3に接続されている。さらにまた、地上SS伝送装置21,22、SS無線制御端末2、及びデータ管理端末3を備えて地上通信システム4が構成されているのは図1と同様である。これは、図18〜図21でも同様とする。
図17において、地上SS伝送装置21,22は、図2〜図5の場合と同様であり、したがって、その周波数チャンネルも既に説明したとおりである。
また、図17では、車両所に車両14−1を先頭車両とする列車と車両12−1を先頭車両とする列車とが入庫した状態を示し、車両14−1のほうが車両12−1よりも早く入庫した状況を示している。車両14−1にはチャンネル可変非対応の車上SS伝送装置15が搭載され、車両12−1にはチャンネル可変非対応の車上SS伝送装置13が搭載されている。車両SS伝送装置15及び車上SS伝送装置13の周波数チャンネルはそれぞれCH1に固定されている。
図17では、SS無線制御端末2の制御に基づき地上SS伝送装置21から開局要求信号が送信され(S20)、車両14−1の車上SS伝送装置15、及び車両12−1の車上SS伝送装置13がこの開局要求信号を受信する。なお、図示例では、車上SS伝送装置15が車上SS伝送装置13よりも先に開局要求信号を受信したとする。
次に、図18に示すように、地上SS伝送装置21は車上SS伝送装置15との間で開局処理を行う。つまり、車上SS伝送装置15は、地上SS伝送装置21から送信された開局要求信号(S20)を受信した後に、開局応答信号を返信する(S21)。なお、車上SS伝送装置13が開局要求信号を受信した後に、地上SS伝送装置21へ開局応答信号を送信したとしても、地上SS伝送装置21では、既に車上SS伝送装置15からの開局応答信号を受信しているため、車上SS伝送装置13からの応答を受け付けず、車上SS伝送装置15に対するチャンネル切替指令信号のみを送信し、車上SS伝送装置13に対するチャンネル切替指令信号を送信することはない。
続いて、図19に示すように、車上SS伝送装置15は、CH1を用いて、車両14−1を先頭車両とする列車の車両情報を地上SS伝送装置21へとデータ送信する(S23)。図19において、車上SS伝送装置15と地上SS伝送装置21間でデータ伝送中に、車両14−1以外の他の編成がいないかどうかの確認を行う開局シーケンスが実行され、地上SS伝送装置22からの開局要求に対し、車上SS伝送装置13は開局応答を地上SS伝送装置22に返す(図示せず)。SS無線制御端末2は、地上SS伝送装置22にて受信した開局応答の情報に含まれる編成情報等のデータにより、開局した車上SS伝送装置13はチャンネル可変非対応であると認識し、データ伝送ができる状況(車上SS伝送装置15がデータ送信完了した状況)まで車上SS伝送装置13からのデータ伝送を待機させる。
続いて、図20に示すように、車上SS伝送装置15と地上SS伝送装置21との間のデータ授受が完了した後に、SS無線制御端末2の制御により、地上SS伝送装置22は車上SS伝送装置13との間で開局を行う。すなわち、地上SS伝送装置22は、車上SS伝送装置15と地上SS伝送装置21との間のデータ授受が完了した後に、SS無線制御端末2の制御により、車上SS伝送装置13に対して、CH1を用いて開局要求信号を送信する(S24)。そして、車上SS伝送装置13は地上SS伝送装置22から送信された開局要求信号を受信した後に、開局応答信号を返信する(S25)。
次に、図21に示すように、車上SS伝送装置13は、CH1を用いて車両12−1を先頭車両とする列車の車両情報を地上SS伝送装置22へとデータ送信する(S31)。図17〜図21の例では、地上SS伝送装置21,22はいずれもチャンネル可変対応ではあるものの、入庫した車両に搭載された車上SS伝送装置13,15がいずれもチャンネル可変非対応であるため、一方のデータ伝送が終了した後に他方のデータ伝送を行う方式となる。これは、従来の固定チャンネル方式における処理に対応しており、本実施の形態が従来のシステムを包含するシステムとして実現されることを示している。
図22は、図17〜図21に示す処理を含む動作をまとめて示した図である。なお、地上SS伝送装置21,22、車上SS伝送装置13,15の構成等は、図17〜図21と同様である。図22では、処理S50→処理S51→処理S52からなる一連の処理が、図17〜図21で説明した動作を示すものであり、この場合は特に、地上SS伝送装置21が先に開局し、続いて地上SS伝送装置22が開局する場合である。他方、処理S50→処理S53→処理S54からなる一連の処理では、地上SS伝送装置22が先に開局し、続いて地上SS伝送装置21が開局する場合である。
まず、処理S50→処理S51→処理S52と続く処理について説明する。処理S50では、地上SS伝送装置21と地上SS伝送装置22とが周波数チャンネルCH1を用いて交互に開局処理を行っている。具体的には、開局処理が地上SS伝送装置21と地上SS伝送装置22との間でSS無線制御端末2の制御により定期的に切り替えられている。
次に、処理S51では、地上SS伝送装置21はその開局後にCH1を用いてデータ受信を行う(地上SS伝送装置21通信(CH1))。また、地上SS伝送装置22は、地上SS伝送装置21のデータ受信終了後にCH1を用いて開局処理を行う(地上SS伝送装置22開局処理(CH1))。
続いて、処理S52では、地上SS伝送装置22はその開局後にCH1を用いてデータ受信を行う(地上SS伝送装置22通信(CH1))。
次に、処理S50→処理S53→処理S54と続く処理について説明する。処理S50は、既に説明した通りである。処理S53では、地上SS伝送装置22はその開局後にCH1を用いてデータ受信を行う(地上SS伝送装置22通信(CH1))。また、地上SS伝送装置21は、地上SS伝送装置22のデータ受信終了後にCH1を用いて開局処理を行う(地上SS伝送装置21開局処理(CH1))。
続いて、処理S54では、地上SS伝送装置21はCH1を用いてデータ受信を行う(地上SS伝送装置21通信(CH1))。
(n=2,L=2、チャンネル可変対応車−チャンネル可変対応車)
本実施の形態の動作について、さらに、図23〜図26を参照して説明する。図23〜図26は、n=2,L=2、並びに2台のチャンネル可変対応車両の場合に、車上−地上間での車両情報の伝送を動作順に説明するための図であり、図23は地上通信システム4からの開局要求を説明するための概念図、図24は車両10−1に対するチャンネル切替指令を説明するための概念図、図25は車両10−1からのデータ送信及び車両11−1に対するチャンネル切替指令を説明するための概念図、図26は車両10−1からのデータ送信及び車両11−1からのデータ送信を説明するための概念図である。
図23〜図26では、一例として、チャンネル可変対応の地上SS伝送装置が有するデータ伝送用の周波数チャンネルの個数を2、すなわちn=2の場合を対象とし、地上SS伝送装置の設置台数を例えばL=2台とする。n=2の場合、車上SS伝送装置の周波数チャンネルはCH1,CH2,CH3である。
図23に示すように、地上SS伝送装置51と地上SS伝送装置52とがSS無線制御端末2に接続され設置されている。地上SS伝送装置51,52はそれぞれ図1の地上SS伝送装置1−1,1−2に相当するものである。また、図23では図示はしていないが、SS無線制御端末2はデータ管理端末3に接続されている。さらにまた、地上SS伝送装置51,52、SS無線制御端末2、及びデータ管理端末3を備えて地上通信システム4が構成されているのは図1と同様である。これは、図24〜図26でも同様とする。
まず、図23において、地上SS伝送装置51,52の周波数チャンネルについて説明する。地上SS伝送装置51は、開局用の周波数チャンネルCH1と、データ伝送用の周波数チャンネルCH2とを、切り替えて使用可能とし、地上SS伝送装置52は、開局用の周波数チャンネルCH1と、データ伝送用の周波数チャンネルCH3とを、切り替えて使用可能とする。また、地上SS伝送装置51,52は、交互に開局処理を行うものとする。すなわち、地上SS伝送装置51が、一定時間CH1を使用して開局処理を行うと、次に地上SS伝送装置52が一定時間CH1を使用して開局処理を行い、このような交互の開局処理がSS無線制御端末2の制御により定期的に切り替えられているものとする。なお、図28に、車上SS伝送装置8,9,13,15、及び地上SS伝送装置21,222,51,52のそれぞれ使用可能な周波数チャンネルをまとめて示す。なお、同図中の括弧は、車上SS伝送装置8,9の周波数チャンネルは、図12〜図16ではCH1,CH2であり、図23〜図27ではCH1,CH2,CH3であることを示す。
このような設定のもとで、図23では、地上SS伝送装置51の周波数チャンネルはCH1に、地上SS伝送装置52の周波数チャンネルはCH3に設定されている。すなわち、地上SS伝送装置51が開局処理を行う状況にある。
また、図23では、車両所に車両10−1を先頭車両とする列車と車両11−1を先頭車両とする列車とが入庫した状態を示し、車両10−1のほうが車両11−1よりも早く入庫した状況を示している。車両10−1にはチャンネル可変対応の車上SS伝送装置8が搭載され、車両11−1にも同様にチャンネル可変対応の車上SS伝送装置9が搭載されている。車両SS伝送装置8の周波数チャンネルは、車両情報伝送前の状態では開局用の周波数チャンネルCH1に設定されている。同様に、車両SS伝送装置9の周波数チャンネルも、車両情報伝送前の状態では開局用の周波数チャンネルCH1に設定されている。一般に、車上SS伝送装置の周波数チャンネルは、初期設定としてCH1に設定されているものとする。
図23では、SS無線制御端末2の制御に基づき地上SS伝送装置51から開局要求信号が送信され(S20)、車両10−1の車上SS伝送装置8、及び車両11−1の車上SS伝送装置9がこの開局要求信号を受信する。開局要求信号は、開局指令信号であるとともに車両所における列車(又は編成)の有無を確認する信号でもある。なお、図示例では、車上SS伝送装置8が車上SS伝送装置9よりも先に開局要求信号を受信したとする。これは、例えば、車両10−1が開局要求信号を受信中に車両11−1が続いて入庫した場合などに相当する。
次に、図24に示すように、車上SS伝送装置8は、地上SS伝送装置51からの開局要求信号(S20)を受信した後に、開局応答信号を送信する(S21)。開局応答信号は、開局指令に応答して車上側から地上側へ送信される信号であって、自車両情報等(例えば、編成番号など)を含んでいる。そして、地上SS伝送装置51は、この開局応答信号を受信した後に、車上SS伝送装置8に対するチャンネル切替指令信号を送信する(S22)。このチャンネル切替指令信号には、チャンネル切替指令とともにチャンネル切替後のデータ送信要求情報も含まれている。地上SS伝送装置51は、SS無線制御端末2の制御に基づいてチャンネル切替指令信号を送信する。
車上SS伝送装置8は、このチャンネル切替指令信号を受信し、地上SS伝送装置51からの要求により自身の周波数チャンネルを開局用の周波数チャンネルからデータ伝送用の周波数チャンネルへと切り替える。なお、車上SS伝送装置9が開局要求信号を受信した後に、地上SS伝送装置51へ開局応答信号を送信したとしても、地上SS伝送装置51では、既に車上SS伝送装置8からの開局応答信号を受信しているため、車上SS伝送装置8に対するチャンネル切替指令信号のみを送信し、車上SS伝送装置9に対するチャンネル切替指令信号を送信することはない。
次に、図25に示すように、車上SS伝送装置8の周波数チャンネルはチャンネル切替指令信号の内容に基づいてCH1からCH2へ切り替えられ、同時に、地上SS伝送装置51の周波数チャンネルもCH1からCH2へ切り替えられる。つまり、地上SS伝送装置51の周波数チャンネルを開局用の周波数チャンネルCH1からデータ伝送用の周波数チャンネルCH2へと切り替えることに応じて、車上SS伝送装置8の周波数チャンネルも地上SS伝送装置51と同一のデータ伝送用の周波数チャンネルCH2へと切り替える。そして、車上SS伝送装置8は、周波数チャンネルCH2を用いて、車両10−1を先頭車両とする列車の車両情報を地上SS伝送装置51へとデータ送信する(S23)。
また、SS無線制御端末2は、地上SS伝送装置51の周波数チャンネルをCH2へ切り替えるとともに、地上SS伝送装置52の周波数チャンネルをCH1へ切り替える。これにより、地上SS伝送装置52は開局処理を行う。すなわち、車上SS伝送装置9は、地上SS伝送装置52からの開局要求信号(S20)を受信した後に、開局応答信号を送信する(S24)。そして、地上SS伝送装置52は、この開局応答信号を受信した後に、車上SS伝送装置9に対するチャンネル切替指令信号を送信する(S25)。このチャンネル切替指令信号には、チャンネル切替指令とともにチャンネル切替後のデータ送信要求情報も含まれている。車上SS伝送装置9は、このチャンネル切替指令信号を受信し、地上SS伝送装置52からの要求により自身の周波数チャンネルを開局用の周波数チャンネルからデータ伝送用の周波数チャンネルへと切り替える。なお、地上SS伝送装置52による開局要求信号、CH切替指令信号の送信がSS無線制御端末2の制御によることは、地上SS伝送装置51の場合と同様である。
続いて、図26に示すように、車上SS伝送装置9の周波数チャンネルはチャンネル切替指令信号の内容に基づいてCH1からCH3へ切り替えられ、同時に、地上SS伝送装置52の周波数チャンネルもCH1からCH3へ切り替えられる。つまり、地上SS伝送装置52の周波数チャンネルを開局用の周波数チャンネルCH1からデータ伝送用の周波数チャンネルCH3へと切り替えることに応じて、車上SS伝送装置9の周波数チャンネルも地上SS伝送装置52と同一のデータ伝送用の周波数チャンネルCH3へと切り替える。そして、車上SS伝送装置9は、周波数チャンネルCH3を用いて、車両11−1を先頭車両とする列車の車両情報を地上SS伝送装置52へとデータ送信する(S26)。これにより、車上SS伝送装置8と地上SS伝送装置51間、及び車上SS伝送装置9と地上SS伝送装置52間で同時データ伝送が実現される。
地上SS伝送装置51が受信した車両情報と、地上SS伝送装置52が受信した車両情報とは、それぞれ、SS無線制御端末2を経てデータ管理端末3へ送信される。データ管理端末3は、受信した車両情報を各編成毎にデータベース管理する。
図27は、図23〜図26に示す処理を含む動作をまとめて示した図である。なお、地上SS伝送装置51,52、車上SS伝送装置8,9の構成等は、図23〜図26と同様である。図27では、処理S60→処理S61→処理S63からなる一連の処理が、図23〜図26で説明した動作を示すものであり、この場合は特に、地上SS伝送装置51が先に開局し、続いて地上SS伝送装置52が開局する場合である。他方、処理S60→処理S62→処理S63からなる一連の処理では、地上SS伝送装置52が先に開局し、続いて地上SS伝送装置51が開局する場合である。
まず、処理S60→処理S61→処理S63と続く処理について説明する。処理S60では、地上SS伝送装置51と地上SS伝送装置52とが周波数チャンネルCH1を用いて交互に開局処理を行っている。具体的には、開局処理が地上SS伝送装置51と地上SS伝送装置52との間で定期的に切り替えられている。
次に、処理S61では、地上SS伝送装置51はその開局後にCH2を用いてデータ受信を行い(地上SS伝送装置51通信(CH2))、また、地上SS伝送装置52はCH1を用いて開局処理を行う(地上SS伝送装置52開局処理(CH1))。詳細には、処理S61は、図25に示す処理を行っている。したがって、地上SS伝送装置51は、車上SS伝送装置8と開局を行った後にデータ授受を行い、また、地上SS伝送装置52は車上SS伝送装置9と開局処理を行う。
続いて、処理S63では、地上SS伝送装置52はその開局後にCH3を用いてデータ受信を行い(地上SS伝送装置52通信(CH3))、また、地上SS伝送装置51はCH2を用いてデータ受信を行う(地上SS伝送装置51通信(CH2))。詳細には、処理S63は、図26に示す処理を行っている。
次に、処理S60→処理S62→処理S63と続く処理について説明する。処理S60は、既に説明した通りである。処理S62では、地上SS伝送装置52はその開局後にCH3を用いてデータ受信を行い(地上SS伝送装置52通信(CH3))、また、地上SS伝送装置51はCH1を用いて開局処理を行う(地上SS伝送装置51開局処理(CH1))。具体的には、地上SS伝送装置52は車上SS伝送装置8と開局を行った後にデータ授受を行い、また、地上SS伝送装置51は車上SS伝送装置9と開局処理を行う。
続いて、処理S62では、地上SS伝送装置51はその開局後にCH2を用いてデータ受信を行い(地上SS伝送装置51通信(CH2))、また、地上SS伝送装置52はCH3を用いてデータ受信を行う(地上SS伝送装置52通信(CH3))。
なお、図23〜図27では、車上SS伝送装置8,9の使用可能なデータ伝送用の周波数チャンネルの個数が、地上SS伝送装置の設置台数と等しい場合について示している(n=L=2)。このような関係を満たす一般のn,Lの場合には、地上SS伝送装置とチャンネル可変対応の車上SS伝送装置との間でL対Lの車上−地上間同時データ送受信を実現するためには、n個の異なるデータ伝送用の周波数チャンネルを使用すればよい。
以上、本実施の形態の動作について、図2〜図28を参照して説明した。図2〜図28では、n,Lの具体例について説明したが、一般のn,Lの場合も、図2〜図28を組み合わせることで同様に説明することができる。例えば、複数台のチャンネル可変対応の車上SS伝送装置とこれと同数の地上SS伝送装置との間の同時データ送受信を実現するためには、それぞれCH1で開局後に相互に異なるデータ伝送用の周波数チャンネルに切り替えてデータ伝送を行うようにすればよい(図23〜図27参照)。このとき、使用可能なデータ伝送用の周波数チャンネルが一つ不足する場合には、最後にデータ伝送を始める車上SS伝送装置及び地上SS伝送装置に対しては、CH1をデータ伝送用として使用するようにする(図2〜図6参照)。また、例えば、複数台のチャンネル可変対応の車上SS伝送装置がそれぞれデータ伝送用の周波数チャンネルを用いて同時通信中に、チャンネル可変非対応の車上SS伝送装置を搭載した車両が入庫したときには、このチャンネル可変非対応の車上SS伝送装置はCH1を用いて開局及びデータ伝送を行うことができる(図7〜図11)。さらにまた、例えば、チャンネル可変対応の車上SS伝送装置、及びチャンネル可変非対応の車上SS伝送装置の同時通信中に、別のチャンネル可変対応の車上SS伝送装置を搭載した車両が入庫したときには、チャンネル可変非対応の車上SS伝送装置のデータ伝送中にその送信を一時中断し、その間に前記別のチャンネル可変対応の車上SS伝送装置と通信可能な地上SS伝送装置がCH1を用いて開局処理を行い、開局後に使用されていないデータ伝送用の周波数チャンネルを用いてデータ伝送を行うようにする(図12〜図16参照)。複数のチャンネル可変非対応の車上SS伝送装置を搭載した車両が入庫したときには従来と同様であり、順次CH1を用いてデータ伝送を行う(図17〜図22参照)。
以上説明したように、本実施の形態によれば、開局用の周波数チャンネルCH1にて開局後に、車両(具体的には、車上SS伝送装置のチャンネル特性)や車上−地上間の伝送状況に応じてデータ伝送に使用する周波数チャンネルを設定することで、可変チャンネル方式の車上無線伝送装置と固定チャンネル方式の車上無線伝送装置とが混在する場合にも、複数の周波数チャンネルを使用した車上−地上間の同時データ送受信を実現することができ、車両情報を含むデータの伝送効率を向上させることができる。
また、複数の列車が車両所に入庫した際、従来の方法では加圧時間等の関係ですべての列車からのデータ送信を実現できない状況が発生する場合でも、本実施の形態においてはデータ送信の待ち時間を短くすることができるので、そのような状況を回避することが可能となる。
また、本実施の形態は、従来の固定チャンネル方式を含む形で拡張したシステムとなっており、地上側の設備については地上SS伝送装置をチャンネル可変対応に改修することで、チャンネル可変対応の車上SS伝送装置を搭載した車両が入庫した場合にも対応可能である。そのため、現行の車上システム及び地上システムの改修量が少なく、現行車両や車両所に対して影響の少ないシステムの構築が可能となる。
なお、本実施の形態では、無線通信方式としてSS方式を使用する例について説明したが、その他の無線通信方式を使用する場合についても同様である。
実施の形態2.
図29は、本実施の形態における地上通信システム4の構成を示す図である。実施の形態1では、SS無線制御端末2の設置台数を1台としたが、これに限定されず、複数台設ける構成とすることもできる。図29に示すように、本実施の形態では、例えば2台のSS無線通信端末2−1,2−2を設置し、SS無線通信端末2−1に実施の形態1で説明した地上SS伝送装置21,22を接続し、SS無線通信端末2−2に実施の形態1で説明した地上SS伝送装置51,52を接続している。
このように複数台のSS無線制御端末を利用することで、(1)冗長性の確保(1台が故障した場合でも、他によりデータ送受信が可能。)、(2)データ管理の容易化(特に2台のときは管理が容易となる。)、(3)列車の車種に応じてSS無線制御端末を分けておけば、相互の影響を少なくできるため、ソフトウェアの改修や試験ボリュームを少なくすることができる、(4)1台で共用する場合、CPU負荷や伝送負荷が増大するが、複数台の場合にはこれが解消される、等の効果がある。
特に、本実施の形態のように、地上SS伝送装置21,22の利用可能な周波数チャンネルの個数と、地上SS伝送装置51,52の利用可能な周波数チャンネルの個数とが異なる場合には、2台のSS無線通信端末2−1,2−2で分けて管理することで、データ管理が容易となる。
なお、本実施の形態のその他の構成、動作、及び効果は実施の形態1と同様である。