JP2010158240A - 制限酵素の認識配列に依存したdna部位の検出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明目的は、制限酵素の認識配列に依存したDNA部位を、試料中のDNAを抽出処理することなく、定量的に検出する方法、および前記方法に使用するためのキットを提供することにある。
【解決手段】本発明者らは、上記の課題を解決するために、まず、メチル化感受性を含む制限酵素による配列特異的な消化、ならびに、メチル化部位の有無による切断特性の変改を利用して、単一細胞、DNA露出処理した細胞あるいは組織のDNAを消化し、切断後に露出された配列特異的DNA鎖3’末端に蛍光標識またはビオチン標識dUTPをTdTによって結合させて検出する方法を開発した。本発明の方法は、組織化学的かつ特異的にメチル化感受性配列を認識して切断鎖を作製することから、メチル化配列の存在を簡易に検出できる。さらに、本発明者らは、本発明の方法を制限酵素消化配列にも応用できることを見出した。
【選択図】なし
【解決手段】本発明者らは、上記の課題を解決するために、まず、メチル化感受性を含む制限酵素による配列特異的な消化、ならびに、メチル化部位の有無による切断特性の変改を利用して、単一細胞、DNA露出処理した細胞あるいは組織のDNAを消化し、切断後に露出された配列特異的DNA鎖3’末端に蛍光標識またはビオチン標識dUTPをTdTによって結合させて検出する方法を開発した。本発明の方法は、組織化学的かつ特異的にメチル化感受性配列を認識して切断鎖を作製することから、メチル化配列の存在を簡易に検出できる。さらに、本発明者らは、本発明の方法を制限酵素消化配列にも応用できることを見出した。
【選択図】なし
Description
本発明は、制限酵素の認識配列に依存したDNA部位を、試料中のDNAを抽出処理することなく、定量的に検出する方法、および前記方法に使用するためのキットに関する。
動植物の体細胞、あるいは初期胚の発生・分化、細胞の癌化にはDNAのメチル化修飾が深く関わっており、その変化の検出は畜産におけるクローン家畜の安定的生産、医療における疾患治療の効率化につながる。
従来DNAのメチル化解析には、特定遺伝子のメチル化解析を行う方法、網羅的メチル化解析手法などが使用されてきた。
特定遺伝子のメチル化解析を行う方法の一つとして、特定配列のメチル化の有無によって制限酵素での切断性が変化することを利用して、制限酵素の認識・切断配列を挟む目的領域のメチル化状態の解析をPCRによる核酸増幅にて行う方法が実施されている(非特許文献1)。本方法は制限酵素認識・切断配列を含む目的遺伝子配列が分からないと、その領域を増幅するためのプライマーが設計できないため、解析不可能である。また制限酵素処理後の絶対量検出にDNAが大量に必要になることから、単一や少数細胞における検出は困難である。したがって、本方法によって検出を行う場合には、PCRによる核酸増幅が必要となり正確な定量性が失われる。
特定遺伝子のメチル化解析を行う方法の別の方法として、DNAの重亜硫酸塩処理が実施されている(非特許文献2、3)。DNAの重亜硫酸塩処理により、メチル化されていないシトシンがウラシルに変換されるが、メチル化されたシトシンではシトシンのままで塩基置換が起こらない特性を利用して、メチル化状態を塩基配列決定あるいはPCRによる増幅により解析する手法も近年幅広く利用されている(非特許文献4)。重亜硫酸塩処理による解析法は精度の高い解析が可能となるが、解析対象遺伝子の配列情報が必要不可欠である。さらに塩基配列決定には、DNA抽出から重亜硫酸塩処理反応、PCR増幅および、得られたPCR産物のクローニングまでの時間や、高額機器、設備を必要とする。
網羅的メチル化解析手法としては、DNAのメチル化シトシン基を特異的に認識する抗体による免疫組織化学的検出が実施されている(非特許文献5)。この方法は、免疫組織化学的に細胞や組織のDNAメチル化状態を検出できるが、一次、二次抗体の組み合わせによっては結果がばらつくという問題がある。また、細胞質容量が大きな胚では、処理に用いるメチル基認識一次抗体ならびに一次抗体を認識する二次抗体の浸透、除去処理が十分にできず、非特異的な反応を生じることにより検出が困難となる。またすべてのメチル化シトシンを認識することから、分化に関わる機能的な遺伝子領域上のメチル化の特異的な検出は困難である。さらに、抗メチル化シトシン抗体が高価なため、多数の検体を処理する場合、コストが高くなる。
一方、近年の細胞分化制御研究、再生医療研究、癌の発症メカニズムの解析と検出あるいは体細胞クローン動物の作出に伴う遺伝子異常の解明等のDNAの機能研究に対する社会的なニーズが高まっており、そのための研究手法の開発が求められている。したがって、簡易かつ効率的なメチル化状態の検出方法の開発が望まれている。
なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
Gonzalgo ML, et al., Cancer Res. 1997,57(4):594-9.
Hayatsu H, et al., Biochemistry. 1970,9(14):2858-2865.
Herman JG, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1996, 93(18):9821-9826.
Sadri R, and Hornsby PJ. Nucleic Acids Res. 1996, 4(24):5058-5059.
Sano H, et al., 1988, 951(1):157-165.
Gavrieli Y, et al., J Cell Biol. 1992, 119:493-501.
Ostling O, and Johanson KJ. Biophys. Res. Commun. 1984,123: 291-298
Singh NP, et al., Exp. Cell Res. 1988, 175: 184-191
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、制限酵素の認識配列に依存したDNA部位について、試料中のDNAを抽出処理することなく、網羅的あるいは定量的な検出を簡易に行なう方法、および前記方法に使用するためのキットを提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意研究を行った。
本発明者らは、メチル化感受性を含む制限酵素による配列特異的な消化、ならびに、メチル化部位の有無による切断特性の変改を利用して、初期胚、精子細胞、単一体細胞、DNA露出処理した単一細胞、あるいは組織における核内のDNAを消化し、切断後に露出された配列特異的DNA鎖3’末端にterminal deoxynucleotidyl transferase-mediated deoxyuridine triphosphate-biotin nick end labering (TUNEL)法(非特許文献6)の原理を利用して、蛍光標識またはビオチン標識dUTPをterminal deoxynucleotidyl transferase(TdT)によって結合させて検出する方法を開発した(図1、2)。本発明の方法は、組織化学的かつ特異的に制限酵素認識配列あるいは、メチル化感受性配列を認識して切断鎖を作製することから、認識配列あるいはメチル化配列の存在を簡易に検出できる。このことから、本発明の方法は、従来法であるメチル基をすべて認識するメチル化シトシン抗体と比べて、より配列に依存したメチル化状態を検出できる方法である。また、組織等に混在する細胞群から目的組織を選んでDNAを抽出し、特定塩基配列のメチル化解析をする必要がなく、凍結切片等の組織サンプルからの検出も可能である。また、対象とする分散された単一細胞中DNA部位のより定量的な検出を行うために、試料におけるDNA鎖の露出・展開を行なう方法(非特許文献7、8)が応用できることを見出した。
本発明者らは、メチル化感受性を含む制限酵素による配列特異的な消化、ならびに、メチル化部位の有無による切断特性の変改を利用して、初期胚、精子細胞、単一体細胞、DNA露出処理した単一細胞、あるいは組織における核内のDNAを消化し、切断後に露出された配列特異的DNA鎖3’末端にterminal deoxynucleotidyl transferase-mediated deoxyuridine triphosphate-biotin nick end labering (TUNEL)法(非特許文献6)の原理を利用して、蛍光標識またはビオチン標識dUTPをterminal deoxynucleotidyl transferase(TdT)によって結合させて検出する方法を開発した(図1、2)。本発明の方法は、組織化学的かつ特異的に制限酵素認識配列あるいは、メチル化感受性配列を認識して切断鎖を作製することから、認識配列あるいはメチル化配列の存在を簡易に検出できる。このことから、本発明の方法は、従来法であるメチル基をすべて認識するメチル化シトシン抗体と比べて、より配列に依存したメチル化状態を検出できる方法である。また、組織等に混在する細胞群から目的組織を選んでDNAを抽出し、特定塩基配列のメチル化解析をする必要がなく、凍結切片等の組織サンプルからの検出も可能である。また、対象とする分散された単一細胞中DNA部位のより定量的な検出を行うために、試料におけるDNA鎖の露出・展開を行なう方法(非特許文献7、8)が応用できることを見出した。
さらに、本発明者らは、本発明の方法をメチル化依存的配列以外の特異的なDNA認識・消化配列を有する制限酵素消化配列にも応用できることを見出して本発明を完成するに至った。
本発明は、より具体的には以下の〔1〕〜〔18〕を提供するものである。
〔1〕 以下の(a)から(c)の工程を含む、試料中のDNAを抽出処理することなく、対象となるDNA部位の有無を定量的に検出する方法。
(a)対象となるDNA部位において制限酵素処理により、目的とする配列を特異的に切断する工程、
(b)切断されたDNA断片の3’末端OH基にターミナルトランスフェラーゼ(TdT)を用いて標識物質を付加する工程、および
(c)前記標識物質を検出することにより、対象となるDNA部位の有無を定量的に検出する工程
〔2〕 前記対象となるDNA部位がメチル化されうるDNA部位である、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕 DNA部位のメチル化がCpGアイランドにおけるDNAメチル化である、前記〔2〕に記載の方法。
〔4〕 前記対象となるDNA部位がメチル化されていないDNA部位である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕 前記対象となるDNA部位がメチル化されているDNA部位である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕 前記制限酵素がDNAメチル化感受性制限酵素である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕 DNAメチル化状態を検出するための、前記〔6〕に記載の方法。
〔8〕 前記制限酵素が、AatII/Zra I、Aci I、Acl I、Afe I、Age I、Asc、I、AsiS I、Ava I、Bce AI、Bcg I、Bmg BI/pmlI、Bsa AI、Bsa HI、Bsi EI、Bsi WI、Bsm BI、Bsr BI、Bsr FI、Bss HII、Bst BI、Bst UI、Btg ZI、Cla I/Bsp DI、Eag I、Eci I、Fau I、Fse I、Fsp I、Hae II、Hga I、Hha I/HhiP1 I、HpaII、Hpy99 I、HpyCH4IV、Kas I、Mlu I、Nae I、Not I、Nru I、PaeR7I、Pvu I、Rsr II、Sac II、Sal I、SgrAI、Sma I、Sna BIから成る群より選択されるDNAメチル化感受性制限酵素である、前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕 前記制限酵素が、Aci IもしくはHpaIIである、前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の方法。
〔10〕 前記制限酵素がDNAメチル化非感受性制限酵素である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕 前記試料が生体から採取された組織もしくは細胞、または細菌である、前記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の方法。
〔12〕 前記細胞が受精卵である、前記〔11〕に記載の方法。
〔13〕 前記組織または細胞が初期胚や精子を含む生殖細胞あるいはクローン胚由来である、前記〔11〕に記載の方法。
〔14〕 前記組織または細胞が癌組織由来である、前記〔11〕に記載の方法。
〔15〕 前記組織または細胞の分化状態、または未分化状態を検出するための、前記〔11〕〜〔14〕のいずれかに記載の方法。
〔16〕 前記制限酵素処理の前に、以下の(i)から(iii)に記載の工程をさらに含む、前記〔11〕〜〔15〕のいずれかに記載の方法。
(i)前記組織または細胞から、分散単一細胞試料を調製する工程、
(ii)(i)の工程で得られた分散単一細胞をアガロースゲル中に固定し、タンパク質溶解処理によってDNAを露出する工程、および
(iii)(ii)の工程によってDNA鎖を露出した細胞試料を1次元または2次元電気泳動により展開する工程
〔17〕 前記DNA断片の3’-OHに付加される標識が、蛍光標識、ビオチン、ジゴキシゲニン、ブロモデオキシ4ウリジン(BrdU)、ラジオアイソトープである前記〔1〕〜〔16〕のいずれかに記載の方法。
〔18〕 前記〔1〕〜〔17〕のいずれかに記載の方法に用いるためのキットであって、使用説明書と、制限酵素溶液、標識溶液とを含むキット。
〔1〕 以下の(a)から(c)の工程を含む、試料中のDNAを抽出処理することなく、対象となるDNA部位の有無を定量的に検出する方法。
(a)対象となるDNA部位において制限酵素処理により、目的とする配列を特異的に切断する工程、
(b)切断されたDNA断片の3’末端OH基にターミナルトランスフェラーゼ(TdT)を用いて標識物質を付加する工程、および
(c)前記標識物質を検出することにより、対象となるDNA部位の有無を定量的に検出する工程
〔2〕 前記対象となるDNA部位がメチル化されうるDNA部位である、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕 DNA部位のメチル化がCpGアイランドにおけるDNAメチル化である、前記〔2〕に記載の方法。
〔4〕 前記対象となるDNA部位がメチル化されていないDNA部位である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕 前記対象となるDNA部位がメチル化されているDNA部位である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕 前記制限酵素がDNAメチル化感受性制限酵素である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕 DNAメチル化状態を検出するための、前記〔6〕に記載の方法。
〔8〕 前記制限酵素が、AatII/Zra I、Aci I、Acl I、Afe I、Age I、Asc、I、AsiS I、Ava I、Bce AI、Bcg I、Bmg BI/pmlI、Bsa AI、Bsa HI、Bsi EI、Bsi WI、Bsm BI、Bsr BI、Bsr FI、Bss HII、Bst BI、Bst UI、Btg ZI、Cla I/Bsp DI、Eag I、Eci I、Fau I、Fse I、Fsp I、Hae II、Hga I、Hha I/HhiP1 I、HpaII、Hpy99 I、HpyCH4IV、Kas I、Mlu I、Nae I、Not I、Nru I、PaeR7I、Pvu I、Rsr II、Sac II、Sal I、SgrAI、Sma I、Sna BIから成る群より選択されるDNAメチル化感受性制限酵素である、前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕 前記制限酵素が、Aci IもしくはHpaIIである、前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の方法。
〔10〕 前記制限酵素がDNAメチル化非感受性制限酵素である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕 前記試料が生体から採取された組織もしくは細胞、または細菌である、前記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の方法。
〔12〕 前記細胞が受精卵である、前記〔11〕に記載の方法。
〔13〕 前記組織または細胞が初期胚や精子を含む生殖細胞あるいはクローン胚由来である、前記〔11〕に記載の方法。
〔14〕 前記組織または細胞が癌組織由来である、前記〔11〕に記載の方法。
〔15〕 前記組織または細胞の分化状態、または未分化状態を検出するための、前記〔11〕〜〔14〕のいずれかに記載の方法。
〔16〕 前記制限酵素処理の前に、以下の(i)から(iii)に記載の工程をさらに含む、前記〔11〕〜〔15〕のいずれかに記載の方法。
(i)前記組織または細胞から、分散単一細胞試料を調製する工程、
(ii)(i)の工程で得られた分散単一細胞をアガロースゲル中に固定し、タンパク質溶解処理によってDNAを露出する工程、および
(iii)(ii)の工程によってDNA鎖を露出した細胞試料を1次元または2次元電気泳動により展開する工程
〔17〕 前記DNA断片の3’-OHに付加される標識が、蛍光標識、ビオチン、ジゴキシゲニン、ブロモデオキシ4ウリジン(BrdU)、ラジオアイソトープである前記〔1〕〜〔16〕のいずれかに記載の方法。
〔18〕 前記〔1〕〜〔17〕のいずれかに記載の方法に用いるためのキットであって、使用説明書と、制限酵素溶液、標識溶液とを含むキット。
本発明によって、制限酵素の認識配列に依存したDNA部位について、試料中のDNAを抽出処理することなく、単一細胞あるいは少数細胞におけるDNA特定配列の有無を定量的に検出する方法が提供された。
本発明の方法によれば、家畜胚の発生、クローン作製に伴う遺伝子のメチル化状態を少数の細胞にて検出することが可能となり、微量高感度評価手法に活用できると共に、動植物細胞の分化・増殖を司るメチル化状態の検出を広範囲にわたり可能とする。さらに、癌細胞等におけるメチル化状態の評価が比較的短時間で検出可能であることから、医療への利活用も期待できる。
本発明の方法によれば、家畜胚の発生、クローン作製に伴う遺伝子のメチル化状態を少数の細胞にて検出することが可能となり、微量高感度評価手法に活用できると共に、動植物細胞の分化・増殖を司るメチル化状態の検出を広範囲にわたり可能とする。さらに、癌細胞等におけるメチル化状態の評価が比較的短時間で検出可能であることから、医療への利活用も期待できる。
本発明は、(a)対象となるDNA部位において制限酵素処理により、目的とする配列を特異的に切断する工程、(b)切断されたDNA断片の3’末端OH基にターミナルトランスフェラーゼ(TdT)を用いて標識物質を付加する工程、および(c)前記標識物質を検出することにより、対象となるDNA部位の有無を定量的に検出する工程を含む、試料中のDNAを抽出処理することなく、対象となるDNA部位の有無を定量的に検出する方法を提供する。
本発明においては試料中の検出の対象となるDNA部位において、特定の制限酵素が認識できる配列の存在を指標に、対象DNA部位の存在を確認することで対象DNA部位の検出が可能となる。
したがって、本発明の方法は、まず(a)対象となるDNA部位において制限酵素処理により、目的とする配列を特異的に切断する工程を行う。
本発明の方法に使用される制限酵素としては、検出の対象となるDNA部位における特定配列を認識して消化することができる制限酵素であれば、特に限定されない。したがって、遺伝子工学に一般的に用いることが可能な制限酵素であれば、全て使用可能である。本発明に使用可能な制限酵素の好ましい例としては、II型制限酵素が挙げられる。II型制限酵素はそれぞれの制限酵素特異的に認識できる特定配列をその付近、あるいはその配列の内部で切断する制限酵素である。制限酵素による切断断片は突出末端であっても平滑末端であってもよいが、切断されたDNA断片の3’末端が特別な修飾等を受けていないことが望ましい。II型制限酵素を使用した場合には、切断部位のメチル化などを起こさないため、この後に続く工程を行うために有利である。当業者であれば、公知の制限酵素が認識できる特定配列が対象となるDNA部位に含まれるか否かを判断し、適宜制限酵素を選択することが可能である。
本発明において、使用される制限酵素のより好ましい例としては、メチル化感受性制限酵素が挙げられる。メチル化感受性制限酵素は、制限酵素認識配列のメチル化に依存して、DNAの切断が調節される。一般的にはメチル化を受けた制限酵素部位は、メチル化感受性制限酵素によって制限酵素部位として認識されず切断されない。したがって検出の対象となるDNAの特定部位がメチル化されうるDNA部位である場合には、メチル化感受性制限酵素を使用することにより本発明の検出を行うことが可能である(図1、2)。先に述べたとおり、一般的にはメチル化感受性制限酵素は、メチル化されていないDNA部位は切断するが、メチル化されているDNA部位は切断しない。DNA部位のメチル化がCpGアイランドにおけるDNAメチル化である場合には、CpGメチル化状態に依存して制限酵素配列を認識するメチル化感受性制限酵素を使用することが好ましい。このような制限酵素としてはAatII/Zra I, Aci I, Acl I, Afe I, Age I, Asc, I, AsiS I, Ava I, Bce AI, Bcg I, Bmg BI/pmlI, Bsa AI, Bsa HI, Bsi EI, Bsi WI, Bsm BI, Bsr BI, Bsr FI, Bss HII, Bst BI, Bst UI, Btg ZI, Cla I/Bsp DI,Eag I, Eci I, Fau I, Fse I, Fsp I, Hae II, Hga I, Hha I/HhiP1 I, HpaII, Hpy99 I, HpyCH4IV, Kas I, Mlu I, Nae I, Not I, Nru I, PaeR7I, Pvu I, Rsr II, Sac II, Sal I, SgrAI, Sma I, Sna BIなどが挙げられるがこれに制限されない。また、本解析に用いる制限酵素の濃度は用いる酵素の活性によって異なるが、望ましくは、0.1-10U/μlが望ましい。
本発明の検査方法に供する被検試料は、通常、予め被検体から取得された生体試料であることが好ましい。生体試料としては、生体から採取された組織または細胞が挙げられる。これらの生体試料は、例えば検出の対象となるDNA部位の発現や、メチル化等の状態を調査したい組織や細胞から適宜選択することができる。その際の留意点として、試料のDNAが酸等の化学物質や紫外線等のDNAを破壊する因子によって顕著に損傷していないことが望ましい。
例えばDNAメチル化状態の検出を目的とする場合には、クローン胚を含む初期胚や精子細胞等の生殖組織から採取した組織および/または細胞や、分化・増殖している動植物細胞・組織、癌組織由来の組織および/または細胞、受精卵、細菌等、DNAメチル化状態の評価が必要とされる組織や細胞において定量的にメチル化状態を評価できる点で有用である。クローン胚を含む初期胚や精子細胞等、生殖組織の由来としては、特に哺乳動物(マウス、ラット、ウサギ、フェレット、イヌ、ネコ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、水牛、ウマ、ヒトなど)を挙げることができる。また、癌組織としては特に限定されないが、大腸、肺、肝臓、乳房、前立腺、脳、腎臓、子宮、小腸、結腸、膵臓、筋肉、皮膚、卵巣、精巣、膀胱などにおける癌組織が挙げられる。
DNAメチル化は細胞の分化に関与していることが明らかになっていることから、本願の方法によりメチル化状態を検出することによって、対象組織または細胞の分化状態、または未分化状態を検査することができる。
本発明の方法は、これらの組織および/または細胞からDNAを抽出処理することなく、対象となるDNA部位の有無を定量的に検出することができる。これにより、DNAを抽出する方法よりも少ないDNA量での検出が可能となり、またPCRによる増幅等の必要もないことから定量性を維持することが可能となる。また、培養細胞等を用いる場合、DNAの抽出が必要ないため、小スケール(例えば培養液10μl〜100μlまたは細胞数10〜200程度)での対象DNA部位の検出も可能である。
生体試料が組織または初期胚/培養細胞である場合には、検出の対象となるDNA部位をin situで検出することが可能である。本発明で検出に供される組織試料は、当業者に任意の方法で組織標本を作製することができるが、好ましくは、細胞凍結切片、中性ホルマリン、中性パラホルムアルデヒド溶液固定−パラフィン切片を作成する。
凍結切片の作製方法の具体的な例としては、以下の工程を含む方法が挙げられる;(1)摘出した組織を一辺が5mm以下の直方体となるように整形する工程、(2)組織片をそのまま、またはOCTコンパウンド等の接着剤を用いて小容器やアルミホイル容器内に包埋する工程、(3)ドライアイス・イソペンタン、液体窒素を用いて急速凍結する工程、(4)クリオスタットを用いて−20℃条件下で3−10μm厚の切片を作成しスライドグラス上に貼り付け、冷アセトン、冷アルコール、カルノア液、あるいはホルマリン液により組織を固定する工程。
また、ホルマリン固定−パラフィン切片の作製方法の具体的な例としては、以下の工程を含む方法が挙げられる;(1)摘出した組織を一辺が5mm以下の直方体となるように整形する工程、(2)10%の中性ホルマリン、4%中性パラホルムアルデヒド、カルノア液あるいは冷アセトンの溶液中に組織をいれ、3〜24時間の固定を行う工程、(3)固定後サンプルから固定液を除去後、低濃度(70%)のから高濃度(100%)のエタノールに移すことで脱水を行う工程、(4)キシレン中に組織を移すことで透徹を行った後、溶解したパラフィン液で組織を浸し、パラフィンによる組織の固定を行う工程、(5)ミクロトームにより暑さ3−10μm厚の切片を作成しスライドグラス上に貼り付ける工程、(6)スライドグラスをキシレン、エタノールから水に浸漬することで、パラフィンを除去する工程。
一方、生体試料が培養細胞や初期胚である場合には、各種細胞を培養、分化誘導やメチル化制御薬剤の処理をした後、(1)培養容器内に接着した単層細胞を直接冷アセトン、冷アルコール、カルノア液、あるいはホルマリン液により固定する方法、または、(2)トリプシン等のタンパク質分解酵素処理によって細胞を剥離、分散し、上に記載した固定液にて固定後、浮遊状態、またはスライドグラス上に塗沫する方法、により解析標本を作成し、制限酵素処理および検出工程を行うこともできる。また、初期胚では、直接胚を冷アセトン、冷アルコール、カルノア液、あるいはホルマリン液により固定したホールマウント標本にし、制限酵素処理および検出工程を行うこともできる。
さらに本発明の試料は、対象とする分散された単一細胞中DNA部位の、より定量的な検出を行うためにDNA鎖の露出・展開を行う工程を加えてもよい。本発明の方法は、例えば(i)前記組織または細胞から、分散単一細胞試料を調製する工程、(ii)分離・分散された単一細胞または初期胚を、スライドグラス上においてアガロースゲル中に固定・包埋し、酵素ならびに界面活性剤によるタンパク質溶解処理によってDNAを露出する工程、および(iii)(ii)によってDNA鎖を露出した細胞試料を1次元または2次元電気泳動により展開する工程を含む試料の調製工程を含む。本発明において組織または細胞を固定するためのアガロースゲルの濃度は特に限定されないが、0.8%〜4%であることが好ましい。本調製工程では次いで、タンパク質溶解処理によって染色体構造を分解しDNAを膨化、露出する処理を行う。タンパク質溶解処理には、公知のタンパク質消化酵素ならびに界面活性剤を使用することができる。好ましい例としてはタンパク質消化酵素では、プロテイネースK、界面活性剤ではSodium N-Lauroyl Sarcosine、が挙げられる。また、精子等の核と染色体が固く凝縮した状態の細胞においては、ジチオスレイトール(Dithiothreitol:DTT)や2メルカプトエタノール等の還元作用を有する化合物を添加することが望ましい。
本調製工程は次いで、アガロースゲル中にてDNAを露出した細胞試料を1次元、または2次元電気泳動によって展開する。電気泳動で展開することにより、細胞を直接解析に用いる場合よりも染色体構造を除去し、DNA鎖を露出・展開することで、制限酵素やターミナルトランスフェラーゼ(Terminal deoxynucleotidyl transferase、以下TdTとも称する)DNA鎖切断部位の認識程度が高まり、その検出においてより定量性を高めることができる。本方法においては、上記調製工程を行った後、制限酵素によりDNAを処理し検出を行う。
本発明の方法は次いで、(b)切断されたDNA断片の3’末端OH基にTdTを用いて標識物質を付加する工程を行う。本工程においてはまず、DNA配列特異的な制限酵素切断断片の3’末端-OH基にTdTによってdUTPを付加する。前記dUTPには検出可能な標識物質を結合しておくことが好ましい。本発明において「標識」とは標識されていないDNAと比較して区別可能な程度にDNAが標識されていることをいう。本発明に用いられる標識物質の例としては、蛍光標識、ビオチン、ジゴキシゲニン、ブロモデオキシ4ウリジン(BrdU)、ラジオアイソトープなどを挙げることができる。
本発明の方法は次いで、(c)前記標識物質を検出することにより、対象となるDNA部位の有無を定量的に検出する工程を行う。標識物質の検出は、それぞれの標識毎に定法に従って行うことができる。
例えば、標識が蛍光色素である場合には、共焦点レーザー顕微鏡や落射型蛍光顕微鏡などにより蛍光像を解析することができる。蛍光標識を検出することで、核内あるいは染色体上での局在、染色された検出部位数ならびに、蛍光強度の定量を行うことができ、対象とするDNA部位の定量を行うことが可能となる。
本発明は、上記検出方法に用いるためのキットであって、使用説明書と、制限酵素溶液、標識溶液とを含むキットを提供する。
本発明のキットは、上記使用説明書と、制限酵素溶液、標識溶液の他に、他の構成要素を含むことができる。他の構成要素として、培養細胞播種、検出用ウエルディッシュ、核DNA展開のためのスライドグラス検出試薬、その他、蒸留水、塩、緩衝液、タンパク質安定剤、保存剤等が含まれていてもよいが、これらに限定されない。
本発明のキットは、上記使用説明書と、制限酵素溶液、標識溶液の他に、他の構成要素を含むことができる。他の構成要素として、培養細胞播種、検出用ウエルディッシュ、核DNA展開のためのスライドグラス検出試薬、その他、蒸留水、塩、緩衝液、タンパク質安定剤、保存剤等が含まれていてもよいが、これらに限定されない。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕 培養牛耳由来繊維芽細胞を用いた核内DNAの制限酵素認識配列依存的な検出
分離した細胞を培養皿の各ウエル中に撒き、接着増殖した後に接着細胞をPBSで洗浄し、pH7.4に調整した4%パラホルムアルデヒドにて固定、PBSにて洗浄後、0.1%のTriton-Xにて細胞の膜可溶化を行った。0.1-1IU/μlに調整した制限酵素(Aci I, Hpa II, Taq I, Msp I, Pst I,Hae III)にて30分−1時間の消化処理を行った。洗浄後、切断されたDNA断片の3’末端OH基にターミナルトランスフェラーゼ(Terminal deoxynucleotidyl trasnferase、以下TdT)を用いて蛍光標識物質を付加する工程を行った。蛍光標識後、蛍光顕微鏡にて検出を行った。その結果、まず、図3に示すように、制限酵素によって認識、切断されたDNAの末端にTdTによって付加された標識蛍光が検出された。これに対して、制限酵素処理を行わない場合、TdTによってDNA末端に認識、付加される蛍光は検出できなかった。また、全てのDNAに結合する蛍光試薬を用いて核領域を検出したところ、核DNAの蛍光は全ての細胞で検出された。このことから、核内DNAのうち、制限酵素により配列特異的に認識された部位が消化され、その末端の3’末端OH基にTdTによる蛍光標識物質が標識された事が証明された(図3、4)。また、本検出手法を用いることにより、細胞分裂によって変化する核内のDNAあるいは、染色体内の局在におけるDNA配列依存的制限酵素消化部位も検出できることが示された(図5)。
〔実施例1〕 培養牛耳由来繊維芽細胞を用いた核内DNAの制限酵素認識配列依存的な検出
分離した細胞を培養皿の各ウエル中に撒き、接着増殖した後に接着細胞をPBSで洗浄し、pH7.4に調整した4%パラホルムアルデヒドにて固定、PBSにて洗浄後、0.1%のTriton-Xにて細胞の膜可溶化を行った。0.1-1IU/μlに調整した制限酵素(Aci I, Hpa II, Taq I, Msp I, Pst I,Hae III)にて30分−1時間の消化処理を行った。洗浄後、切断されたDNA断片の3’末端OH基にターミナルトランスフェラーゼ(Terminal deoxynucleotidyl trasnferase、以下TdT)を用いて蛍光標識物質を付加する工程を行った。蛍光標識後、蛍光顕微鏡にて検出を行った。その結果、まず、図3に示すように、制限酵素によって認識、切断されたDNAの末端にTdTによって付加された標識蛍光が検出された。これに対して、制限酵素処理を行わない場合、TdTによってDNA末端に認識、付加される蛍光は検出できなかった。また、全てのDNAに結合する蛍光試薬を用いて核領域を検出したところ、核DNAの蛍光は全ての細胞で検出された。このことから、核内DNAのうち、制限酵素により配列特異的に認識された部位が消化され、その末端の3’末端OH基にTdTによる蛍光標識物質が標識された事が証明された(図3、4)。また、本検出手法を用いることにより、細胞分裂によって変化する核内のDNAあるいは、染色体内の局在におけるDNA配列依存的制限酵素消化部位も検出できることが示された(図5)。
〔実施例2〕 初期胚および細胞における制限酵素認識配列の検出
実施例2と同様に分離した牛耳由来線維芽細胞を培養皿の各ウエル中に撒き、接着増殖した後に接着細胞をPBSで洗浄し、pH7.4に調整した4%パラホルムアルデヒドにて固定、PBSにて洗浄後、0.1%のTriton-Xにて細胞の膜可溶化を行った。精子細胞の処理には1−5mMのDTTを添加して膜可溶化処理を行った。また、体外受精後、8日間培養して得られた牛胚盤胞を上記方法で処理した。0.1-1IU/μlに調整した制限酵素(Aci I, Hpa II, HpyCH4 IV, Pst I)にて30分−1時間の消化処理を行った。洗浄後、切断されたDNA断片の3’末端OH基にターミナルトランスフェラーゼ(Terminal deoxynucleotidyl trasnferase)を用いて蛍光標識物質を付加する工程を行った。蛍光標識後、蛍光顕微鏡にて検出を行った。その結果、図6aに示すように、細胞分化した繊維芽細胞と比較して、未分化状態を有すると思われる胚盤胞細胞ではメチル化感受性を有するAciI, HpaII処理により得られた核内スポットの数が明らかに多く検出された。これに対して、非特異的なDNA認識切断部位を有するPst Iでは変化は見られなかった。このことから、同じゲノムDNA配列を有する牛細胞であるが、AciI, HpaIIのメチル化感受性制限酵素により分化状態の違いを検出できることが明らかとなった。また、AciI処理によって牛精子細胞においても核内の蛍光スポットの検出が観察された(図6b)。
実施例2と同様に分離した牛耳由来線維芽細胞を培養皿の各ウエル中に撒き、接着増殖した後に接着細胞をPBSで洗浄し、pH7.4に調整した4%パラホルムアルデヒドにて固定、PBSにて洗浄後、0.1%のTriton-Xにて細胞の膜可溶化を行った。精子細胞の処理には1−5mMのDTTを添加して膜可溶化処理を行った。また、体外受精後、8日間培養して得られた牛胚盤胞を上記方法で処理した。0.1-1IU/μlに調整した制限酵素(Aci I, Hpa II, HpyCH4 IV, Pst I)にて30分−1時間の消化処理を行った。洗浄後、切断されたDNA断片の3’末端OH基にターミナルトランスフェラーゼ(Terminal deoxynucleotidyl trasnferase)を用いて蛍光標識物質を付加する工程を行った。蛍光標識後、蛍光顕微鏡にて検出を行った。その結果、図6aに示すように、細胞分化した繊維芽細胞と比較して、未分化状態を有すると思われる胚盤胞細胞ではメチル化感受性を有するAciI, HpaII処理により得られた核内スポットの数が明らかに多く検出された。これに対して、非特異的なDNA認識切断部位を有するPst Iでは変化は見られなかった。このことから、同じゲノムDNA配列を有する牛細胞であるが、AciI, HpaIIのメチル化感受性制限酵素により分化状態の違いを検出できることが明らかとなった。また、AciI処理によって牛精子細胞においても核内の蛍光スポットの検出が観察された(図6b)。
〔実施例3〕 培養牛耳由来繊維芽細胞を用いた核内DNAの脱メチル化剤処理によるメチル化状態依存的な制限酵素認識配列の検出
分離した細胞を培養皿の各ウエル中に撒き、接着後1−2日目にメチル基転移酵素の阻害剤で、細胞内DNAのメチル化レベルを下げることが知られているAzacitidineを1μM添加し、3−7日間培養した。その後、実施例1と同様に、接着、増殖した細胞をPBSで洗浄し、pH7.4に調整した4%パラホルムアルデヒドにて固定、PBSにてパラホルムアルデヒド除去後、0.1%のTriton-Xにて細胞の膜可溶化を行った。0.1-1IU/μlに調整したメチル化配列依存的な制限酵素(Hpa II、図2に示す)にて30分−1時間の消化処理を行った。メチル化配列非依存的な制限酵素であるHae IIIを対照とした。標本を洗浄後、切断されたDNA断片の3’末端OH基にTdTを用いて蛍光標識物質を付加する工程を行った。その結果、メチル化阻害剤の処理によってDNA複製中にメチル基が除去された細胞では、メチル化の減少によってHpaII制限酵素によるメチル化DNA配列の認識、切断部位が増加した事による蛍光の増加が見られた。これに対して、メチル化による配列認識、消化の影響を受けないHae III処理によって、蛍光の変化は見られなかった(図7)。さらに、核の拡大像により、対照区細胞核で見られたAciIおよびHpa II処理によって検出された蛍光スポット数が脱メチル化剤の処理によって増加することが観察された(図8)。この結果より、メチル化を受けていた同制限酵素認識配列のメチル基が除去されたことによる認識・消化部位の増加に寄ることが推察された。
分離した細胞を培養皿の各ウエル中に撒き、接着後1−2日目にメチル基転移酵素の阻害剤で、細胞内DNAのメチル化レベルを下げることが知られているAzacitidineを1μM添加し、3−7日間培養した。その後、実施例1と同様に、接着、増殖した細胞をPBSで洗浄し、pH7.4に調整した4%パラホルムアルデヒドにて固定、PBSにてパラホルムアルデヒド除去後、0.1%のTriton-Xにて細胞の膜可溶化を行った。0.1-1IU/μlに調整したメチル化配列依存的な制限酵素(Hpa II、図2に示す)にて30分−1時間の消化処理を行った。メチル化配列非依存的な制限酵素であるHae IIIを対照とした。標本を洗浄後、切断されたDNA断片の3’末端OH基にTdTを用いて蛍光標識物質を付加する工程を行った。その結果、メチル化阻害剤の処理によってDNA複製中にメチル基が除去された細胞では、メチル化の減少によってHpaII制限酵素によるメチル化DNA配列の認識、切断部位が増加した事による蛍光の増加が見られた。これに対して、メチル化による配列認識、消化の影響を受けないHae III処理によって、蛍光の変化は見られなかった(図7)。さらに、核の拡大像により、対照区細胞核で見られたAciIおよびHpa II処理によって検出された蛍光スポット数が脱メチル化剤の処理によって増加することが観察された(図8)。この結果より、メチル化を受けていた同制限酵素認識配列のメチル基が除去されたことによる認識・消化部位の増加に寄ることが推察された。
〔実施例4〕 培養牛耳由来繊維芽細胞を用いた核内DNAへのメチル基付加によるメチル化状態依存的な制限酵素認識配列の検出2
分離した牛耳由来繊維芽細胞を培養皿の各ウエル中に撒き、接着後、増殖後に固定処理を行った。固定標本に対して、配列依存的にメチル基を付加させるメチル基転移酵素(Hpa II methyltransferase)にて核内のメチル基付加処理を行った。この際に、メチル化供与体としてのS-adenosyl methionine(SAM)を添加した区をメチル基転移区、SAMを添加せずに、Hpa II methyltransferase処理のみを実施した区を対照区として、各処理区に対して37℃60分のメチル基付加酵素反応処理を行った。処理終了後に標本を洗浄後、HpaII制限酵素によってメチル化の有無によるHpaII認識部位の消化処理を行い、切断されたDNA断片の3’末端OH基にTdTを用いて蛍光標識物質を付加する工程を行った。メチル化状態非依存的な制限酵素として、PstI処理を行った区を対照区とした。その結果、Hpa II methyltransferaseによってHpaII部位に人為的にメチル化処理を行った細胞核内では、HpaII部位のメチル化状態の増加によってHpaII制限酵素の認識、切断部位が減少したことによる蛍光の減少が見られた。これに対して、メチル基付加配列に非依存的なDNA消化制限酵素であるPstI処理では、メチル基付加による蛍光の変化には顕著な差が観察されなかった(図9)。
分離した牛耳由来繊維芽細胞を培養皿の各ウエル中に撒き、接着後、増殖後に固定処理を行った。固定標本に対して、配列依存的にメチル基を付加させるメチル基転移酵素(Hpa II methyltransferase)にて核内のメチル基付加処理を行った。この際に、メチル化供与体としてのS-adenosyl methionine(SAM)を添加した区をメチル基転移区、SAMを添加せずに、Hpa II methyltransferase処理のみを実施した区を対照区として、各処理区に対して37℃60分のメチル基付加酵素反応処理を行った。処理終了後に標本を洗浄後、HpaII制限酵素によってメチル化の有無によるHpaII認識部位の消化処理を行い、切断されたDNA断片の3’末端OH基にTdTを用いて蛍光標識物質を付加する工程を行った。メチル化状態非依存的な制限酵素として、PstI処理を行った区を対照区とした。その結果、Hpa II methyltransferaseによってHpaII部位に人為的にメチル化処理を行った細胞核内では、HpaII部位のメチル化状態の増加によってHpaII制限酵素の認識、切断部位が減少したことによる蛍光の減少が見られた。これに対して、メチル基付加配列に非依存的なDNA消化制限酵素であるPstI処理では、メチル基付加による蛍光の変化には顕著な差が観察されなかった(図9)。
〔実施例5〕 細胞内DNA鎖の展開によるメチル化状態の検出
実施例1−4では、細胞の形態を残したまま核内のDNAにおけるメチル化状態の検出を行った。しかし、分裂等、細胞周期による染色体形成による凝縮や、DNA合成期に見られる核内での展開によって、DNA鎖の状態が異なることもあるため、制限酵素認識部位による配列特異的な検出に影響が出る可能性も考えられる。そこで、細胞周期によるDNA状態の影響を受けない検出法として単一細胞核DNAを微小高感度に検出できるミクロ電気泳動(Comet assay:非特許文献7,8)と本提案手法であるRestriction TUNELとを組み合わせたCOMET-Restiction TUNELの有効性の検証も行った。図10に示すように、解析対象細胞を分離、分散し、PBSに溶解した低融点アガロース液中に37℃の条件下にて1x103-105cells/mlの濃度で希釈、浮遊させた。細胞浮遊アガロース液をスライドグラス上に配置、伸展、固化した。アガロース内に細胞を含んだスライドグラスを細胞溶解液(1% Sodium sarcosinate 1%、2.5M NaCl, 100mM Na2-EDTA, 10mM Tris, 1% Triton X, pH10、必要に応じて10 μg/ml proteinase K あるいは5-10mM DTTを加えても良い)にて細胞膜、蛋白、脂質成分を溶解除去し、DNAの露出と、DNA鎖のほぐし処理を行った。以下、非泳動、一次元泳動展開および二次元泳動展開の3通りの処理方法を実施した後(図10)に、各標本を100% エタノールに浸漬し、脱水後に乾燥し、冷暗所にて保存し、制限酵素配列依存的な検出に使用した。一次元泳動展開および二次元泳動展開については、以下に示すようにDNAの露出(図8−1)と、DNA鎖のほぐし処理を行った細胞標本をスライドグラスごとサブマリン型電気泳動槽に配置し、0.4M Trisバッファー,TAEバッファー(0.4M Tris, 0.4M 氷酢酸, 10mM EDTA, pH8.0)、あるいはTBEバッファー(0.086M Tris, 0.089M ホウ酸, 2mM EDTA, pH8.0)中にて15分間の平衡化の後、20-50V, 1-3分間の電気泳動を行い、DNA鎖の展開を行った(図8−2)。図8−2にて展開したDNA鎖サンプルを90度回転配置し、図8−2と同様の条件にて電気泳動を行い、二次元的なDNA鎖の展開を行った(図8−3)。その結果、DNA鎖の展開、非泳動の標本においては、図3−9において観察された核領域内の染色体依存的な検出像とは異なった、DNAの膨潤、拡大によって検出範囲の広い像が得られた(図11)。DNA鎖を電気泳動によってさらに展開させることによって、よりDNA量依存的な制限酵素認識部位特異的な検出像が得られた(図12)。これらの検出像は、図3−9において観察された制限酵素配列依存的な蛍光と同様に、蛍光強度の違いを反映していた(図11、12)。また、実施例3と同様に細胞を脱メチル化剤で処理した後にDNAを泳動、展開後に制限酵素処理を行ったところ、脱メチル化により、メチル化感受性制限酵素による消化DNAの蛍光が増加した(図13)。全DNA染色蛍光に対する制限酵素消化後-TUNEL染色蛍光の輝度値を算出、定量化し、比較したところ、脱メチル化剤の処理によって消化されたDNAの増加が見られた(図14)。これに対して、メチル化非感受性の制限酵素処理によっては顕著な変化は観察されなかった。
実施例1−4では、細胞の形態を残したまま核内のDNAにおけるメチル化状態の検出を行った。しかし、分裂等、細胞周期による染色体形成による凝縮や、DNA合成期に見られる核内での展開によって、DNA鎖の状態が異なることもあるため、制限酵素認識部位による配列特異的な検出に影響が出る可能性も考えられる。そこで、細胞周期によるDNA状態の影響を受けない検出法として単一細胞核DNAを微小高感度に検出できるミクロ電気泳動(Comet assay:非特許文献7,8)と本提案手法であるRestriction TUNELとを組み合わせたCOMET-Restiction TUNELの有効性の検証も行った。図10に示すように、解析対象細胞を分離、分散し、PBSに溶解した低融点アガロース液中に37℃の条件下にて1x103-105cells/mlの濃度で希釈、浮遊させた。細胞浮遊アガロース液をスライドグラス上に配置、伸展、固化した。アガロース内に細胞を含んだスライドグラスを細胞溶解液(1% Sodium sarcosinate 1%、2.5M NaCl, 100mM Na2-EDTA, 10mM Tris, 1% Triton X, pH10、必要に応じて10 μg/ml proteinase K あるいは5-10mM DTTを加えても良い)にて細胞膜、蛋白、脂質成分を溶解除去し、DNAの露出と、DNA鎖のほぐし処理を行った。以下、非泳動、一次元泳動展開および二次元泳動展開の3通りの処理方法を実施した後(図10)に、各標本を100% エタノールに浸漬し、脱水後に乾燥し、冷暗所にて保存し、制限酵素配列依存的な検出に使用した。一次元泳動展開および二次元泳動展開については、以下に示すようにDNAの露出(図8−1)と、DNA鎖のほぐし処理を行った細胞標本をスライドグラスごとサブマリン型電気泳動槽に配置し、0.4M Trisバッファー,TAEバッファー(0.4M Tris, 0.4M 氷酢酸, 10mM EDTA, pH8.0)、あるいはTBEバッファー(0.086M Tris, 0.089M ホウ酸, 2mM EDTA, pH8.0)中にて15分間の平衡化の後、20-50V, 1-3分間の電気泳動を行い、DNA鎖の展開を行った(図8−2)。図8−2にて展開したDNA鎖サンプルを90度回転配置し、図8−2と同様の条件にて電気泳動を行い、二次元的なDNA鎖の展開を行った(図8−3)。その結果、DNA鎖の展開、非泳動の標本においては、図3−9において観察された核領域内の染色体依存的な検出像とは異なった、DNAの膨潤、拡大によって検出範囲の広い像が得られた(図11)。DNA鎖を電気泳動によってさらに展開させることによって、よりDNA量依存的な制限酵素認識部位特異的な検出像が得られた(図12)。これらの検出像は、図3−9において観察された制限酵素配列依存的な蛍光と同様に、蛍光強度の違いを反映していた(図11、12)。また、実施例3と同様に細胞を脱メチル化剤で処理した後にDNAを泳動、展開後に制限酵素処理を行ったところ、脱メチル化により、メチル化感受性制限酵素による消化DNAの蛍光が増加した(図13)。全DNA染色蛍光に対する制限酵素消化後-TUNEL染色蛍光の輝度値を算出、定量化し、比較したところ、脱メチル化剤の処理によって消化されたDNAの増加が見られた(図14)。これに対して、メチル化非感受性の制限酵素処理によっては顕著な変化は観察されなかった。
〔実施例6〕 展開されたDNAへのメチル基付加によるメチル化状態依存的な制限酵素認識配列の検出
実施例5により展開されたDNA鎖に対して、実施例4で行ったメチル基の付加処理を行ったところ、DNAへのメチル基付加によって、メチル化感受性制限酵素による消化性の減少が見られ、それに伴うTUNEL蛍光の減少が観察された。これに対して、メチル化非感受性の制限酵素処理によっては顕著な変化は観察されなかった(図15)。
実施例5により展開されたDNA鎖に対して、実施例4で行ったメチル基の付加処理を行ったところ、DNAへのメチル基付加によって、メチル化感受性制限酵素による消化性の減少が見られ、それに伴うTUNEL蛍光の減少が観察された。これに対して、メチル化非感受性の制限酵素処理によっては顕著な変化は観察されなかった(図15)。
〔実施例7〕 組織標本における制限酵素配列依存的なTUNEL蛍光の検出
組織内における制限酵素配列依存的なTUNEL蛍光の検出を実施するに当たり、ブタの肝臓、小腸および肺組織を用いた。摘出した組織を一辺が5mm以下の直方体となるように整形、組織片をそのまま、またはOCTコンパウンド等の接着剤を用いて小容器やアルミホイル容器内に包埋、ドライアイスを用いて急速凍結を行った。凍結切片をクリオスタットを用いて−20℃条件下で3−10μm厚の切片を作成しスライドグラス上に貼り付け、中性4%パラホルムアルデヒド液により組織を固定した。0.3% Triton Xを添加したPBSにて洗浄し、パラホルムアルデヒド液の除去および膜脂質の除去を行った。実施例1−5と同様に、組織標本に各種制限酵素処理による配列特異的な消化を行い、0.3% Triton X添加PBSにより制限酵素を洗浄除去した。引き続き、制限酵素消化DNA断片へのTUNELによる蛍光色素の付加処理を行った。その結果、実施例1−6と同様に組織切片標本においても制限酵素配列依存的なTUNEL蛍光が検出された(図16、17)。制限酵素の配列特異性によって消化されたDNAは、特にメチル化感受性を有する制限酵素により、組織内での局在が観察された。これに対してメチル化非感受性制限酵素による消化DNAの蛍光は組織全体で観察された。
組織内における制限酵素配列依存的なTUNEL蛍光の検出を実施するに当たり、ブタの肝臓、小腸および肺組織を用いた。摘出した組織を一辺が5mm以下の直方体となるように整形、組織片をそのまま、またはOCTコンパウンド等の接着剤を用いて小容器やアルミホイル容器内に包埋、ドライアイスを用いて急速凍結を行った。凍結切片をクリオスタットを用いて−20℃条件下で3−10μm厚の切片を作成しスライドグラス上に貼り付け、中性4%パラホルムアルデヒド液により組織を固定した。0.3% Triton Xを添加したPBSにて洗浄し、パラホルムアルデヒド液の除去および膜脂質の除去を行った。実施例1−5と同様に、組織標本に各種制限酵素処理による配列特異的な消化を行い、0.3% Triton X添加PBSにより制限酵素を洗浄除去した。引き続き、制限酵素消化DNA断片へのTUNELによる蛍光色素の付加処理を行った。その結果、実施例1−6と同様に組織切片標本においても制限酵素配列依存的なTUNEL蛍光が検出された(図16、17)。制限酵素の配列特異性によって消化されたDNAは、特にメチル化感受性を有する制限酵素により、組織内での局在が観察された。これに対してメチル化非感受性制限酵素による消化DNAの蛍光は組織全体で観察された。
〔実施例8〕 ヒト組織標本における制限酵素配列依存的なTUNEL蛍光の検出
組織由来の明らかであり、かつインフォームドコンセント済みの正常並びに癌組織の凍結切片標本を購入後、解析に使用した。組織標本は、実施例6で述べた手順で固定、洗浄を行い、筋肉、小腸組織については、HpaIIおよびTaq I、腎臓、胃組織についてはHpa II, NpyCH4 IV、肝臓組織については、Hpa II, Pst I制限酵素を用いて検出を行ったところ、肝臓組織においては、広範囲の切断認識部位を有するPst I処理によって核全体の蛍光が検出されたのに対して、Hpa II処理では、核内の複数スポット蛍光が検出された(図18)。また。同じHpa II処理によっても肝臓で検出された蛍光スポットと比べて筋肉、小腸腎臓および胃組織では、少数の蛍光スポットが観察された。同様にTaq I, HpyCH4 IV処理した臓器からも核内の少数スポットが観察された。対照として設定した制限酵素未処理組織での蛍光と比較して、制限酵素処理を行った核内DNA像では、明らかに特徴的な蛍光スポットが検出されたことから、ヒトの臓器についても本手法が活用可能であることが明らかとなった(図19)。加えて、メチル化配列感受特性を有するHpa IIを用いて、膵臓、筋肉、胃、乳房、肝臓、腎臓、脳、子宮、結腸、肺、前立腺、小腸および皮膚組織について正常および癌組織における検出を行った。正常組織と比較して、癌組織では、肥大化した細胞が見られる例が多く、その核内DNAでは、HpaII消化によって切断された配列が増加したことによるものと推察される高い蛍光が見られる組織が観察された(図20a、b)。この蛍光は、制限酵素未処理区は蛍光像が高くないことから、癌組織核内DNAの状態を反映する可能性が示唆された。
組織由来の明らかであり、かつインフォームドコンセント済みの正常並びに癌組織の凍結切片標本を購入後、解析に使用した。組織標本は、実施例6で述べた手順で固定、洗浄を行い、筋肉、小腸組織については、HpaIIおよびTaq I、腎臓、胃組織についてはHpa II, NpyCH4 IV、肝臓組織については、Hpa II, Pst I制限酵素を用いて検出を行ったところ、肝臓組織においては、広範囲の切断認識部位を有するPst I処理によって核全体の蛍光が検出されたのに対して、Hpa II処理では、核内の複数スポット蛍光が検出された(図18)。また。同じHpa II処理によっても肝臓で検出された蛍光スポットと比べて筋肉、小腸腎臓および胃組織では、少数の蛍光スポットが観察された。同様にTaq I, HpyCH4 IV処理した臓器からも核内の少数スポットが観察された。対照として設定した制限酵素未処理組織での蛍光と比較して、制限酵素処理を行った核内DNA像では、明らかに特徴的な蛍光スポットが検出されたことから、ヒトの臓器についても本手法が活用可能であることが明らかとなった(図19)。加えて、メチル化配列感受特性を有するHpa IIを用いて、膵臓、筋肉、胃、乳房、肝臓、腎臓、脳、子宮、結腸、肺、前立腺、小腸および皮膚組織について正常および癌組織における検出を行った。正常組織と比較して、癌組織では、肥大化した細胞が見られる例が多く、その核内DNAでは、HpaII消化によって切断された配列が増加したことによるものと推察される高い蛍光が見られる組織が観察された(図20a、b)。この蛍光は、制限酵素未処理区は蛍光像が高くないことから、癌組織核内DNAの状態を反映する可能性が示唆された。
Claims (18)
- 以下の(a)から(c)の工程を含む、試料中のDNAを抽出処理することなく、対象となるDNA部位の有無を定量的に検出する方法。
(a)対象となるDNA部位において制限酵素処理により、目的とする配列を特異的に切断する工程、
(b)切断されたDNA断片の3’末端OH基にターミナルトランスフェラーゼ(TdT)を用いて標識物質を付加する工程、および
(c)前記標識物質を検出することにより、対象となるDNA部位の有無を定量的に検出する工程 - 前記対象となるDNA部位がメチル化されうるDNA部位である、請求項1に記載の方法。
- DNA部位のメチル化がCpGアイランドにおけるDNAメチル化である、請求項2に記載の方法。
- 前記対象となるDNA部位がメチル化されていないDNA部位である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記対象となるDNA部位がメチル化されているDNA部位である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記制限酵素がDNAメチル化感受性制限酵素である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- DNAメチル化状態を検出するための、請求項6に記載の方法。
- 前記制限酵素が、AatII/Zra I、Aci I、Acl I、Afe I、Age I、Asc、I、AsiS I、Ava I、Bce AI、Bcg I、Bmg BI/pmlI、Bsa AI、Bsa HI、Bsi EI、Bsi WI、Bsm BI、Bsr BI、Bsr FI、Bss HII、Bst BI、Bst UI、Btg ZI、Cla I/Bsp DI、Eag I、Eci I、Fau I、Fse I、Fsp I、Hae II、Hga I、Hha I/HhiP1 I、HpaII、Hpy99 I、HpyCH4IV、Kas I、Mlu I、Nae I、Not I、Nru I、PaeR7I、Pvu I、Rsr II、Sac II、Sal I、SgrAI、Sma I、Sna BIから成る群より選択されるDNAメチル化感受性制限酵素である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
- 前記制限酵素が、Aci IもしくはHpaIIである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
- 前記制限酵素がDNAメチル化非感受性制限酵素である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記試料が生体から採取された組織もしくは細胞、または細菌である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
- 前記細胞が受精卵である、請求項11に記載の方法。
- 前記組織または細胞が初期胚や精子を含む生殖細胞あるいはクローン胚由来である、請求項11に記載の方法。
- 前記組織または細胞が癌組織由来である、請求項11に記載の方法。
- 前記組織または細胞の分化状態、または未分化状態を検出するための、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
- 前記制限酵素処理の前に、以下の(i)から(iii)に記載の工程をさらに含む、請求項11〜15のいずれか一項に記載の方法。
(i)前記組織または細胞から、分散単一細胞試料を調製する工程、
(ii)(i)の工程で得られた分散単一細胞をアガロースゲル中に固定し、タンパク質溶解処理によってDNAを露出する工程、および
(iii)(ii)の工程によってDNA鎖を露出した細胞試料を1次元または2次元電気泳動により展開する工程 - 前記DNA断片の3’-OHに付加される標識が、蛍光標識、ビオチン、ジゴキシゲニン、ブロモデオキシ4ウリジン(BrdU)、ラジオアイソトープである請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
- 請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法に用いるためのキットであって、使用説明書と、制限酵素溶液、標識溶液とを含むキット。
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