JP2010155371A - 印刷版の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】レーザー彫刻によりパターン形成する工程を含む印刷版の製造技術において、優れたベタ品質を実現可能な印刷版を製造する。
【解決手段】レーザー彫刻(α)により印刷原版層に印刷パターンを形成する第1工程と、 レーザー彫刻(β)により前記印刷原版層の前記印刷パターン形成面を改質する第2工程とを順次行う印刷版の製造方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、レーザー彫刻によりパターン形成を行う印刷版の製造方法に関する。
近年、紙・フィルム等の軟質包装材料に対する印刷方法として、いわゆるフレキソ印刷が広く用いられており、例えば、段ボール、紙器、紙袋、軟包装用フィルム等の各種包装材、壁紙、化粧板等の各種建装材、ラベルに対する印刷法として、その比重が高まりつつある。
フレキソ印刷用の印刷版を製造するためには、通常、感光性樹脂(液状の樹脂又はシート状に成形された固体樹脂板等)が用いられる。
具体的には、所定のフォトマスクを感光性樹脂上に置き、マスクを介して光照射し、感光性樹脂を架橋反応させた後、架橋反応していない未露光部分を、現像液で洗い落として、パターンが形成された印刷版を作製するという方法が用いられている。
近年においては、所定の感光性樹脂版の表面に、ブラックレイヤーという薄い光吸収層を設け、これにレーザー光を照射し、感光性樹脂版上に直接マスク画像を形成し、そのマスク画像を通して光照射を行い架橋反応させ、その後、非架橋部分を現像液で洗い落とすという効率的な印刷版の製造方法であるフレキソCTP(Computer to Plate)技術が開発されている。
しかしながら、このフレキソCTP技術においても、印刷版作製工程で現像工程が必須であるため、さらなる製造工程の効率化が求められている。
現像工程を必要としない印刷版の製造方法として、印刷原版に対して直接レーザーで彫刻し、パターン形成を行う方法がある。
この技術においては、版材としてレーザー彫刻版が用いられ、製版時間の短縮、廃棄物の減少等の利点がある。
特許文献1においては、レーザー彫刻可能なフレキソ印刷用シームレス印刷原版の成形方法が開示されている。具体的には、印刷パターンの形成に先立ち形成した感光性樹脂硬化物層表面に、レーザー光を照射・走査し、切削することにより、表面の凹凸を除去する工程を含む、レーザー彫刻可能なシームレス印刷原版の成形方法及び当該シームレス印刷原版を用いた印刷版が開示されている。
特開2004−262076号公報
上記特許文献1に開示されている技術は、レーザー彫刻による印刷パターンの形成に先立ち、レーザー光により感光性樹脂硬化物表面の凹凸を切削し、その後、レーザー彫刻により所定の印刷パターンを形成するものであり、面精度や版厚精度の向上が図られるものの、印刷品質、特にベタ品質の向上を図ることについては何ら検討がなされていない。
また、従来知られている各種印刷版は、いずれも印刷品質、特にベタ品質の観点からは、未だ改良すべき余地が多くある。
そこで本発明においては、レーザー彫刻によりパターン形成を行う工程を含む印刷版の製造技術において、優れた印刷品質、特にベタ品質を実現可能な印刷版の製造方法を提供することを目的とする。
そこで、本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決するために、印刷版の製造方法に関して鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
請求項1の発明においては、レーザー彫刻(α)により印刷原版層に印刷パターンを形成する第1工程と、レーザー彫刻(β)により前記印刷原版層の前記印刷パターン形成面を改質する第2工程とを有する印刷版の製造方法を提供する。
請求項2の発明においては、レーザー彫刻(β)によって前記印刷原版層を彫刻する深さが100μm以下である請求項1に記載の印刷版の製造方法を提供する。
請求項3の発明においては、前記レーザー彫刻(β)によって前記印刷原版層の表面粗さRaを0.3μm以上減少させる請求項1又は2に記載の印刷版の製造方法を提供する。
本発明によれば、レーザー彫刻によりパターン形成する工程を含む印刷版の製造技術において、優れたベタ品質を実現可能な印刷版が作製できる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施の形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
〔印刷版の製造方法〕
本実施の形態における印刷版の製造方法は、レーザー彫刻(α)により印刷原版層に印刷パターンを形成する第1工程と、レーザー彫刻(β)により前記印刷原版層の前記印刷パターン形成面を改質する第2工程とを有する印刷版の製造方法である。
本実施の形態における印刷版の製造方法においては、前記第2工程のレーザー彫刻(β)により印刷原版層を彫刻する深さが、100μm以下とすることが好ましい。これにより、最終的に得られる印刷版において優れたベタ品質が実現できる。
また、前記第2工程のレーザー彫刻(β)により、前記印刷原版層の表面粗さRaを0.3μm以上、減少させることが好ましい。これにより、印刷版のベタ品質の向上効果が確実に発揮できる。これは、レーザー彫刻(β)の前後の表面粗さRaの変化が0.3μm以上であると印刷版はより平滑となり、印刷品質に好適な影響を及ぼす傾向があるからである。
(レーザー彫刻(α)により印刷パターンを形成する第1工程)
第1工程においては、印刷パターンを形成する。
具体的には、所望の形成画像をデジタル型のデータとし、所定のコンピューターを利用し、彫刻用のレーザー装置を用いてレーザー彫刻(α)を行い、印刷原版層上にレリーフ画像を形成する。
レーザー彫刻(α)に用いるレーザーは、適用する印刷原版層が吸収を有する波長を含むものであればよく、特に限定されるものではない。しかし、レーザー彫刻を高速で行うためには、高出力とすることが望ましい。
具体的には、密閉式炭酸ガスレーザーや流通式炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等の赤外線あるいは赤外線放出固体レーザーが、好適なレーザーとして挙げられる。
また、可視光線領域に発振波長を有するYAGレーザーの第2高調波、銅蒸気レーザー、紫外線領域に発振波長を有する紫外線レーザー、例えばエキシマレーザー、第3又は第4高調波へ波長変換したYAGレーザーは、有機分子の結合を切断するアブレージョン加工が可能なレーザーであり、微細加工を行うために好適なレーザーである。
上述したレーザーの照射は、連続照射でも、パルス照射でもよい。
印刷原版層に対するレーザー彫刻(α)は、酸素含有ガス下、一般的に空気存在下又は気流下で実施できる。その他レーザー彫刻(α)は、炭酸ガス、窒素ガス存在下で行ってもよい。
レーザー彫刻(α)により印刷パターンを形成する工程の終了後、印刷原版面に発生する粉末状又は液状の物質は、所定の方法、例えば、溶剤や界面活性剤を含有する水等で洗浄する方法、高圧スプレー等により水系洗浄剤を照射する方法、高圧スチームを照射する方法等により除去できる。
レーザー彫刻(α)は公知の技術、例えば特開2001−146064号公報に記載されている技術を利用して行うことができる。
具体的には、コンピューター等の版下作成装置で作製した版下データをフロッピー(登録商標) ディスク、MOディスク、CD 、DVD 、ポータブルハードディスク、LAN等を介してレーザー彫刻の制御装置に読み込む。
続いて、この制御装置が加工制御プログラムに従い版下データを解析し、実行ファイルを作成し、印刷原版層に彫刻開始を指令する。続いて凹部に相当する部分にレーザーを出力して彫刻を行う。
レーザー彫刻(α)により形成する印刷パターンとしては、網点、細線、白抜き線、細字等が挙げられる。
解像度は100dpi(インチあたりのドットの数)〜5000dpiの範囲が好ましい。この範囲とすることにより、シャドウ及びハイライトのバランスのとれた印刷版が得られる。
線数は30(lpi)(インチ当たりのピクセル数)〜300(lpi)の範囲が好ましい。この範囲であればシャドウ及びハイライトのバランスのとれた印刷版が得られる。
網点は1%〜99%を個々に作成し、別途グラデーションを作成することが好ましい。
細線は、30μm幅以上、白抜き線は30μm幅以上、細字は1point以上を明朝体、ゴシック体で作成するのが好ましい。
なお、彫刻深さ(レリーフ深度)を大きく設定すると、微細な網点部のパターンのレリーフ面の面積が確保できず、形状も崩れて不鮮明となるため、彫刻深さは0.2mm以上1.5mm以下が好ましい。さらに好ましくは0.4mm以上1.0mm以下、よりさらに好ましくは0.4mm以上0.6mm以下である。版再現性の確認としてドットの形状が円錐状となっているか観察することが有効である。「版再現性」とは印刷画像を印刷版に転写する正確さを意味する。
(レーザー彫刻(β)により、印刷原版層を改質する第2工程)
上述したようにレーザー彫刻(α)を行った後、レーザー彫刻(β)を行い、印刷パターンが彫刻された部位を含む印刷原版層の改質を行う。
なお、この第2工程においては、レーザー彫刻(β)を、印刷パターン形成面及び印刷パターン非形成面の両方、すなわち印刷原版の全体に亘り行ってもよく、印刷パターン形成面のみに対して行ってもよい。
なお、目的とする印刷版が凸版である場合は、印刷パターン形成面は凸部であり、印刷パターン非形成面が凹部となる。
目的とする印刷版が凹版である場合、印刷パターン形成面は凹部となり、印刷パターン非形成面が凸部となる。
レーザー彫刻(β)による表面改質の反応機構については、表面微細形状が溶融することによる物理的形状の変化、架橋の切断、分岐、酸化等に起因する表面張力の変化が影響しているものと考えられる。
レーザー彫刻(β)は、上記レーザー彫刻(α)で説明した方法を適用でき、レーザー彫刻(α)と同じ光源を使用してもよく、異なる光源を使用して行ってもよい。
また、上述したレーザー彫刻(α)の後にレーザー彫刻(β)を複数回繰り返して行ってもよい。
印刷原版層は、凸版、凹版のいずれに加工してもよい。
例えば、凸版とする場合には、レーザー彫刻(α)によって非画像部が彫刻されて、続いてレーザー彫刻(β)が画像部を含む箇所に行われる。
一方、凹版とする場合には、レーザー彫刻(α)によって画像部が彫刻されて、続いてレーザー彫刻(β)が画像部を含む箇所に行われる。
レーザー彫刻(β)により彫刻する深さは100μm以下であることが好ましく、60μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。
レーザー彫刻(β)により彫刻する深さが100μmを超えると、レーザーの走査線が印刷部分に残存し、印刷パターンへの影響が大きくなり、またレーザー彫刻(α)によって形成したパターン形状からの乖離が大きくなり過ぎるため好ましくない。
レーザー彫刻(β)の具体的な方法としては、レーザー彫刻機の制御装置を用いて、レーザーの走査速度を上げる方法、レーザーの送りピッチを大きくする方法、レーザーの出力を低下させる方法等が適用できる。
なお、レーザー彫刻機のレーザー出力については、例えば、レーザーヘッドから射出したレーザーの出力を、レーザパワーメータ ディスプレイであるフィールド・メイト(商品名、米国、コヒレント社製)をパワーセンサーPM5K(商品名、米国、コヒレント社製)と組み合わせる等して測定できる。
また、レーザー彫刻(β)を行う方法としては、フォーカスを適性値から所定量ずらす方法も適用できる。
通常の使用方法として、レーザー彫刻機は、フォーカスを調整し、レーザーのスポットを最小にした状態で使用されるが、レーザー彫刻(β)においては、あえてスポット径を大きくし、広範囲なスポット径での彫刻を行うことで、レーザーの走査線を発生しにくくして行うことができる。
フォーカスのずらし方は、印刷原版層に対する彫刻が確保されるレーザー出力の範囲であれば、プラス/マイナスのいずれの方向であってもよい。
レーザーの分布が狭いレーザー彫刻機等を用いる場合には、フォーカスを変動させる方法が好適である。
また、上記のほかにも、レーザー彫刻機の制御装置に組み込まれているソフトウェアの機能を利用して、レーザー彫刻(β)を行ってもよい。
(印刷原版層)
印刷原版層の構成材料に関しては、一般に、樹脂材料は、炭酸ガスレーザーの10μm近傍に吸収を持つため、特にレーザー光の吸収を助ける成分の添加は必須ではない。しかしYAGレーザーは、波長が1.06μm近傍であり、かかる波長のレーザーに対する吸収を有する樹脂はあまり存在しない。よってYAGレーザーを使用する場合には、吸収を助ける成分として染料や顔料を添加することが好ましい。
染料の具体例としては、ポリ(置換)フタロシアニン化合物、金属含有フタロシアニン化合物、シアニン化合物、スクアリリウム染料、カルコゲノピリロアリリデン染料、クロロニウム染料、金属チオレート染料、ビス(カルコゲノピリロ)ポリメチン染料、オキシインドリジン染料、ビス(アミノアリール)ポリメチン染料、メロシアニン染料及びキノイド染料等が挙げられる。
顔料の具体例としては、カーボンブラック、グラファイト、亜クロム酸銅、酸化クロム、コバルトクロームアルミネート、酸化銅、酸化鉄等の暗色の無機顔料;鉄、アルミニウム、銅、亜鉛等の金属粉;及びこれらの金属にSi、Mg、P、Co、Ni、Y等をドープしたもの等が挙げられる。
上記染料及び顔料は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよいし、印刷原版層が複数の感光性樹脂層からなる場合には、層ごとに含有する染料・含量が異なるものとしてもよい。
但し、印刷原版層の作製工程において光を用いて感光性樹脂組成物を硬化させる系がある場合、光硬化に使用する光の波長における光吸収が大きな有機/無機化合物の添加量は、光硬化性に支障のない範囲にすることが好ましい。具体的には、感光性樹脂組成物全体量に対する添加比率は5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
印刷原版層の厚みは、最終的に目的とする印刷版の使用目的に応じて任意に選択でき、0.1〜7mmが好ましい。
印刷原版層は、単層構造であってもよいが、組成の異なる材料を複数積層した構造であってもよい。
例えば、レーザー彫刻印刷原版の場合、最表面にYAGレーザー、ファイバーレーザー、半導体レーザー等の近赤外線領域に発振波長を有するレーザーを用いて彫刻することができる層を形成し、その層の下層に、炭酸ガスレーザー等の赤外線レーザー、可視・紫外線レーザーを用いてレーザー彫刻可能な層を形成した構成としてもよい。このような積層構造とすることにより、極めて高出力の炭酸ガスレーザーを用いて比較的粗いパターンを深く彫刻し、表面近傍には、極めて精細なパターンを、YAGレーザー、ファイバーレーザー等の近赤外線レーザーを用いて彫刻できる。表面近傍の精細なパターンは、比較的浅く彫刻できればよいので、この近赤外線レーザーに感度のある層の厚さは0.01mm以上0.5mm以下の範囲とすることが好ましい。
このように近赤外線レーザーに感度のある層と赤外線レーザーに感度のある層とを積層した構成とすることにより、近赤外線レーザーを用いて彫刻されたパターンの深さを正確に制御できる。これは、赤外線レーザーに感度のある層を、近赤外線レーザーでは彫刻することが困難である現象が利用できるからである。
なお、パターンの精細さの違いは、レーザー装置固有の発振波長の違い、すなわち絞れるレーザービーム径の違いに起因して制御できる。
このような方法でレーザー彫刻を行う場合、赤外線レーザーと近赤外線レーザーを、それぞれ搭載したレーザー彫刻装置を用いてもよく、また、赤外線レーザーと近赤外線レーザーとの両方を搭載したレーザー彫刻装置を用いてもよい。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて詳細に説明する。
なお、以下において、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を各々意味する。
〔印刷原版層〕
(樹脂(a1)、樹脂(a2)、ポリカーボネートジオール)
凸版印刷原版層形成用の樹脂(a1)、凹版印刷原版層形成用の樹脂(a2)、及びポリカーボネートジオールの特性について、下記(1)〜(5)に示す。
樹脂(a1)、樹脂(a2)は、ポリカーボネートジオールをTDI(トリレンジイソシアネート)で重合し、末端にMOI(2−イソシアナートエチルメタクリレート)を付加した液状樹脂である。
(1)ポリカーボネートジオールのOH価
無水酢酸12.5gをピリジン50mLでメスアップし、アセチル化試薬を調製した。
100mLのナスフラスコに、サンプル(ポリカーボネートジオール)を1.0g精秤した。
アセチル化試薬2mLとトルエン4mLを、ホールピペットで添加後、冷却管を取り付けて、100℃で1時間撹拌加熱した。
蒸留水1mLをホールピペットで添加し、さらに10分間加熱撹拌した。
2〜3分間冷却後、エタノールを5mL添加し、指示薬として1%フェノールフタレイン/エタノール溶液を2〜3滴入れた。その後、0.5mol/Lエタノール性水酸化カリウムで滴定した。
空試験としてアセチル化試薬2mL、トルエン4mL、蒸留水1mLを、100mLナスフラスコに入れ、10分間加熱撹拌し、その後、同様に滴定を行った。
この結果をもとに、下記数式(i)を用いてポリカーボネートジオールのOH価を計算した。
OH価(mg−KOH/g)={(b−a)×28.05×f}/e (i)
a:サンプルの滴定量(mL)
b:空試験の滴定量(mL)
e:サンプル質量(g)
f:滴定液のファクター
(2)ポリカーボネートジオールの分子量
後述する実施例及び比較例中のポリカーボネートジオールの末端は、13C−NMR(270MHz)の測定により、実質的に全てがヒドロキシル基であった。
また、ポリカーボネートジオール中の酸価をKOHによる滴定により測定したところ、0.01以下であった。
そこで、得られたポリカーボネートジオールの数平均分子量を下式(ii)により求めた。
数平均分子量Mn=2/(OH価×10―3/56.11)・・・(ii)
(3)粘度の測定
液状樹脂組成物の粘度は、B型粘度計(商標、B8H型;日本国、東京計器社製)を用いて20℃で測定した。
また、樹脂(a1)、樹脂(a2)の粘度は、同様の装置を用いて50℃で測定した。単位はPa・sである。
なお、上記液状樹脂組成物とは、印刷原版層を作製する硬化処理直前の状態の組成物であるものとする。
(4)樹脂(a1)、樹脂(a2)の数平均分子量の測定
樹脂(a1)、樹脂(a2)の平均分子量は、GPC法を用いて求めた多分散度(Mw/Mn)が1.1より大きいものであったため、GPC法で求めた数平均分子量Mnを採用した。
具体的には、樹脂(a1)、樹脂(a2)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)を用いて、分子量既知のポリスチレンで換算して求めた。
高速GPC装置(日本国、東ソー社製、商標、HLC−8020)とポリスチレン充填カラム(商標:TSKgel GMHXL;日本国、東ソー社製)とを用い、テトラヒドロフラン(THF)で展開して測定した。
カラムの温度は40℃に設定した。
GPC装置に注入する試料としては、樹脂濃度が1質量%のTHF溶液を調製して用い、注入量は10μLとした。
また、検出器としては、樹脂紫外吸収検出器を使用し、モニター光として254nmの光を用いた。
(5)重合性不飽和基の数の測定
樹脂(a1)、樹脂(a2)の分子内に存在する重合性不飽和基の平均数は、未反応の低分子成分を液体クロマトグラフ法を用いて除去した後、核磁気共鳴スペクトル法(NMR法、Bruker Biospin社製「Avance 600」(商標))を用いて分子構造解析して求めた。
例えば「1.7官能」とは、分子内に存在する重合性不飽和基の平均数が1.7個であることを意味する。
(顔料成分)
凹版印刷版形成用の樹脂組成物には、顔料成分を含有させた。
顔料成分としては、レーザー光の吸収を助ける成分であるカーボンブラックを用いた。
(6)カーボンブラックの平均1次粒径
カーボンブラックの平均1次粒径は、日立製作所社製透過型電子顕微鏡HF−2000を用いて1次粒径を観察し、その10点の平均値を平均1次粒径とした。
なお電子線の加速電圧は50kVで測定を行った。
(7)カーボンブラックのDBP吸油量の測定方法
JIS K 6217−4:2001に準じて測定した。
(8)カーボンブラックのpHの測定方法
JIS Z 8802−1984に準じて測定した。
(凸版印刷用の印刷原版の製造方法及び特性の測定方法)
(9)凸版印刷用の印刷原版の製造方法
(9−1)支持体への樹脂組成物の塗工
支持体として、繊維強化プラスチック製スリーブ、内径152.905mm、外径155.880mm、幅1000mmのFRP製スリーブ(独、POLYWEST社製、商標「Polyflex RUBIN」を用いた。
支持体上に、クッションテープ(独、Lohmann社製、商標「Duploflex5.3」)を貼り、その上に、印刷原版層形成用の樹脂組成物を、ドクターブレードで塗工した。
その後、これにメタルハライドランプ(アイ・グラフィックス社製、商標「M056−L21」)の紫外線を12000mJ/cm2(UVメーターとUV−35−APRフィルターを用いて積算したエネルギー量)照射し、硬化させ、印刷原版(支持体と印刷原版層の積層体)を得た。
硬化後の印刷周長が500mmとなるように、印刷原版の最外面を研削、研磨して調整し、印刷性評価用の印刷原版を得た。
(9−2)レーザー彫刻(α)、レーザー彫刻(β)
上述した印刷原版に対するレーザー彫刻(α)及び(β)を行い、凸版印刷用印刷版を得た。
レーザー彫刻(α)、レーザー彫刻(β)は、それぞれレーザー彫刻機(i)、(ii)を用いて行った。
レーザー彫刻機(i)(英国、ZED社製、商標「ZED−mini−1000」、米国、コヒーレント社製、最大出力250W炭酸ガスレーザーを搭載)を用いてレーザー彫刻(α)を行う場合には、以下の条件に従った。
Top Power:25%
Bottom Power:100%
Width:0.5mm
Speed:600cm/sec
Dot Shape Factor:20
線数:120(lpi)
1ピクセル当たりのレーザー本数:10本
ピッチ:15.0μm
スクリーン角度:45.0°
シームレスモード:OFF
上記条件に従い、1600dpiの彫刻パターンを彫刻した。
続いて、上記レーザー彫刻機(i)を用いてレーザー彫刻(β)を行う場合には、上記パラメーターの「Speed」と「Bottom Power」を適宜変更して行った。
レーザー彫刻機(ii)(Stork AGRIOS5212M(オーストリア、STORK社製、商品名、ガス流通式レーザー発信器を搭載))を用いてレーザー彫刻(α)を行う場合には、以下の条件に従った。
Speed:1250cm/sec
Angle:65°
First Step:0.4mm
線数:120(lpi)
Power limit:100%
スクリーン角度:45.0°
上記条件に従い、2032dpiの彫刻パターンを彫刻した。
上記レーザー彫刻機(ii)を用いてレーザー彫刻(β)を行う場合には、上記パラメーターの「Speed」と「Power Limit」を適宜変更して行った。
上述した印刷原版に対するレーザー彫刻(α)及び(β)を行うことにより、下記のような、印刷版を得た。
彫刻画像は、線数120Lpiで作成した。
網点は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%のパターンを作成した。
別途、1%から99%までのグラデーションのパターンを作成した。
細線は30μm幅、60μm幅、100μm幅、150μm幅、200μm幅、250μm幅、500μm幅のパターンを作成した。
白抜き線は30μm幅、60μm幅、100μm幅、150μm幅、200μm幅、250μm幅、500μm幅のパターンを作成した。
細字は2point、3point、4point、6point、8pointを明朝体、ゴシック体で作成した。
白抜き細字は2point、3point、4point、6point、8pointを明朝体、ゴシック体で作成した。
(9−3)彫刻品質の評価
印刷原版に対し、レーザー彫刻(α)、(β)を行うことにより作製した印刷版の、レリーフ深度の測定を行った。
「レリーフ深度」とは、印刷版の印刷部(レリーフ面)と非印刷部(バック面)の高低差を意味する。
なお、レリーフ深度を大きく設定すると、微細な網点部のパターンのレリーフ面の面積が確保できず、形状も崩れて不鮮明となるため、レリーフ深度を0.5mmとした。
また、版再現性の確認としてドットの形状が円錐状となっているか観察した。
「版再現性」とは、印刷画像を凸版印刷版に転写する正確さを意味する。
印刷原版に対し、レーザー彫刻(α)、(β)を行うことにより作製した印刷版の、ベタ面とレリーフ面の高低差を測定した。測定装置としては、「デジマチックゲージ」(小野測器社製、商標名)を用いた測定子の大きさは直径10mmの円形とし、圧力は100gとした。印刷版のベタ部を「高さゼロ」としレリーフ深度の測定を行った。
(9−4)レーザー彫刻(β)による彫刻深さ
レーザー彫刻(β)を行う前のレリーフ深度を、上記(9−3)と同様にして測定し、レーザー彫刻(β)による彫刻深さを測定した。
(9−5)表面粗さ(Ra)の測定
印刷原版に対し、レーザー彫刻(α)、(β)を行うことにより作製した印刷版の表面粗さ(Ra)を測定した。
表面粗さRaは、製表面粗さ測定機「SurfcorderSE500」(小坂研究所社、商品名)を用いて、JISB0601−2001に基づき測定した。
具体的には、平面に対して0°、45°、90°の方向で算術平均粗さを測定し、3方向で測定した算術平均粗さの平均値を、表面粗さ(Ra)とした。
測定手順としては、前記印刷版を50mm四方に断裁し、検出器である触針に垂直に当たるようにし、かつ空気のもぐり込みがないように両面テープ(3M社製、ST−416)でステージに貼り付けて固定し測定した。なお、触針を測定対象の表面に接触させた状態で測定した。
(9−6)凸版印刷の品質の評価
印刷原版に対するレーザー彫刻(α)、(β)を行うことにより作製した印刷版を用いて印刷を行い、印刷品質を評価した。
印刷機は、「FlexPress16S」(独国、Fischer&Krecke社製、商標)を用いた。
インキは、溶剤「XS−812」(大日本インキ化学工業社製、商標)を用いて、インキ粘度を、ザーンカップ4番を用いて、8.4秒に調製したものを用いた。
被印刷体として、厚み45μmの乳白ポリエチレンを用いた。
アニロックスロールの線数は750(lpi)、アニロックスロールのセル容積は5ccとした。
印刷速度は200m/分とした。
ベタの部分の隠蔽性の評価は、画像解析装置(株式会社NIRECO製、商標「LUZEX」)で測定して行った。
ベタ部分の濃度の評価は、反射濃度計(スイス国、Gretag−Macbeth AG社製、商標「GRETAG D19C」)で測定した。
濃度の差が0.03以上異なると測定誤差ではなく、実用上のベタ濃度が向上しているとみなせる。また、濃度の値が0.1以上異なると、目視でも有意差と感じることができる。
(凹版印刷用の印刷原版の製造方法及び特性の測定方法)
(10)凹版印刷用の印刷原版の製造方法
(10−1)支持体への樹脂組成物の塗工
支持体としてポリエステルフィルム(厚み100μmの透明で表面がシリコン処理された三菱化学ポリエステルフィルム(株)社製のポリエステルフィルム、「MRV100」、商標名)を用いた。
支持体上に、後述する製造例2により作製する樹脂組成物を塗工し、樹脂上面に離型処理されたPETを貼り付け、厚さ約3mmとして、温度は130℃として30分間加熱し、樹脂組成物を硬化し、レーザー彫刻用の印刷原版(支持体と樹脂組成物の積層体)を得た。
次に研磨ホイール3000番を用いて印刷原版の表面を研磨した。
(10−2)レーザー彫刻(α)、レーザー彫刻(β)
上述した印刷原版に対し、レーザー彫刻(α)及び(β)を行い、凹版印刷用印刷版を得た。
レーザー彫刻(α)、レーザー彫刻(β)は、レーザー彫刻機(iii)を用いて行った。
レーザー彫刻機(iii)(ESKO社製のファイバーレーザー彫刻機「Spark4260」(商標)(波長1μm))を用いて、レーザー彫刻(α)を行う場合には、以下の条件に従った。
シリンダーの回転数 200rpm
レーザー出力 62.952W
エネルギー 12J/cm2
上記条件に従い、彫刻画像が解像度2450dot per inch、線数175Lines per inchである凹版印刷用印刷版を作製した。
彫刻画像は、グラビア印刷におけるセルのグラデーションパターン、細字3pt、5pt、7ptを明朝体で作製した。
続いて、上記レーザー彫刻機(iii)を用いてレーザー彫刻(β)を行う場合には、全面へ均等な出力(1.2J/cm2)とするパターンとして行った。
(10−3)表面粗さ(Ra)の測定
印刷原版に対するレーザー彫刻(α)、(β)を行うことにより作製した印刷版の表面粗さ(Ra)を測定した。
表面粗さRaは、製表面粗さ測定機「SurfcorderSE500」(小坂研究所社、商品名)を用いて、JISB0601−2001に基づき測定を行った。
平面に対して0°、45°、90°の方向で算術平均粗さを測定し、3方向で測定した算術平均粗さの平均値を表面粗さ(Ra)とした。
測定手順としては、前記印刷版を50mm四方に断裁し、検出器である触針に垂直に当たるように、かつ空気のもぐり込みがないように両面テープ(3M社製、ST−416)でステージに貼り付けて固定し測定を行った。なお、触針を測定対象の表面に接触させた状態で測定を行った。
(10−4)彫刻パターンの彫刻深さ
上記のように、印刷原版に対するレーザー彫刻(α)、(β)を行うことにより作製した印刷版の、レーザー彫刻(β)の深さを測定した。
測定装置としては、オリンパス社製の顕微鏡「BX−61」(商標)を用いた。
測定方法は、レーザー彫刻(β)の前後で、彫刻部分の最深部との深さの差を測定し、レーザー彫刻(β)の深さとした。
彫刻されたグラデーションのシャドウ部セルの底と土手(未彫刻の部分)の差を測定した。
(10−5)彫刻形状
上記のように、印刷原版に対するレーザー彫刻(α)、(β)を行うことにより作製した印刷版の彫刻形状を評価した。
彫刻形状は彫刻部と未彫刻部との境界部分(エッジ)が滑らかに彫刻されているか、粗く彫刻されているかを目視で判断して評価した。
(10−6)凹版印刷の評価
上記のように、印刷原版に対するレーザー彫刻(α)、(β)を行うことにより作成した印刷版を用いて印刷を行い、印刷品質を評価した。
印刷機は、「GRAVO−PROOF CM」(日商グラビア社製、商品名)を用いた。
インキは、溶剤「XS−756」(大日本インキ化学工業社製、商標)、インキ粘度はザーンカップ4番で8.4秒に調製したものを用いた。
被印刷体として、厚み30μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた。
印刷速度は30m/分で行った。
ベタの部分の隠蔽性の評価は、画像解析装置(株式会社NIRECO製、商標「LUZEX」)で測定して行った。
ベタ部分の濃度の評価は、反射濃度計(スイス国、Gretag−Macbeth AG社製、商標「GRETAG D19C」)で測定した。
濃度の差が0.03以上異なると測定誤差ではなく、実用上のベタ濃度が向上しているとみなせる。また、濃度の値が0.1以上異なると、目視でも有意差と感じることができる。
〔製造例1〕凸型印刷用の印刷原版(印刷原版A)
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、旭化成ケミカルズ株式会社製ポリカーボネートジオール「PCDL T4672」(商標)(数平均分子量2025、OH価55.4)402.60gと、トリレンジイソシアネート24.01gとを加え、40℃加温下で約1時間、80rpmにて攪拌した後、触媒としてジブチルチンジラウレートを0.2g添加し、3時間反応させた。
次に、2−メタクリロイルオキシイソシアネート11.53gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2.0個)である数平均分子量約7500の、印刷原版層形成用の樹脂(a1)を調製した。
この樹脂(a1)は、20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
上記樹脂(a1)100質量部に対し、下記の有機化合物(b)、光重合開始剤(c)、及び安定剤等を混合し、印刷原版層形成用の樹脂組成物を調製した。
有機化合物(b)として、共栄社化学株式会社製のフェノキシエチルメタクリレート「ライトエステルPO」(商標)37.3質量部、及び共栄社化学株式会社製のジエチレングリコールモノブチルエーテルモノメタクリレート「ライトエステルBC」(商標)11.9質量部を用いた。
光重合開始剤(c)として、崩壊型光重合開始剤である2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを3.0質量部、水素引き抜き型光重合開始剤であるベンゾフェノン0.8質量部を用いた。
安定剤として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.9質量部、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートを1.5質量部使用した。
添加剤として、信越化学工業株式会社のシリコーンオイル「KF−410」(商標)1.5質量部、富士シリシア化学株式会社製の無機多孔質体「サイロスフェアC−1504」(商標)(数平均粒子径4.5μm、比表面積520m2/g、平均細孔径12nm、細孔容積1.5mL/g、灼熱減量2.5質量%、吸油量290mL/100g、添加した多孔質球状シリカであるサイロスフェアC−1504の真球度は、走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、ほぼ全ての粒子が0.9以上であった)を7.7質量部添加した。
これにより、20℃で液状の樹脂組成物を作製した。
上述のようにして得られた印刷原版層形成用の樹脂組成物を、上記(9−1)に示した方法により支持体に塗工し、露光・硬化することにより、凸型印刷用の印刷原版(印刷原版A)を得た。
この印刷原版Aを11本作製した。
〔製造例2〕凹型印刷用の印刷原版の作製(印刷原版B)
規則充填物ヘリパックパッキンNo.3(竹中金網株式会社製、商品名)を充填した、充填高さ300mm、内径30mmの蒸留塔、及び分留頭を備えた500mL四口フラスコに、ジエチレングリコール214g(2.01mol)、エチレンカーボネート186g(2.12mol)を仕込み、70℃で撹拌溶解し、系内を窒素置換し、その後、触媒としてテトラブトキシチタンを0.177g加えた。
このフラスコを、フラスコの内温が145〜150℃、圧力が2.5〜3.5kPaとなるように、分留頭から還流液の一部を抜き出しながら、オイルバスで加熱し、22時間反応を行った。
その後、充填式蒸留塔を外して、単蒸留装置に取り替え、フラスコの内温170℃に上昇させ、圧力を0.2kPaまで落とし、フラスコ内に残ったジエチレングリコール、エチレンカーボネートを1時間かけて留去した。
その後、フラスコの内温170℃、圧力0.1kPaとして、さらに5時間反応を行った。この反応により、室温で粘稠な液状のポリカーボネートジオールが174g得られた。
得られたポリカーボネートジオールのOH価は60.9(数平均分子量Mn=1843)であった。
撹拌機を備えた300mLのセパラブルフラスコに、当該ポリカーボネートジオール65.0g、リン酸モノブチル0.05gを入れ、80℃で3時間撹拌することにより、テトラブトキシチタンを失活させた。
その後、トリレンジイソシアネート4.63g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.07g、アジピン酸0.01g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で80℃で3時間撹拌した。
その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート2.77g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で80℃で2時間撹拌した。
この段階で、赤外分光分析によりポリカーボネートジオールの末端水酸基がウレタン結合により連結され、かつ二重結合を有することが確認され、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約1.8個)であり、数平均分子量約7000の樹脂(a2)が調製された。
上記樹脂(a2)100質量部に対し、下記の有機化合物(b)、レーザー吸収剤、熱重合開始剤(d)を混合攪拌し、下記の操作を行うことにより、印刷原版層形成用の樹脂組成物を調製した。
有機化合物(b)として、フェノキシエチルメタクリレート(数平均分子量206)18.75質量部、もう一つの有機化合物(b)としてトリメチロールプロパントリメタクリレート(数平均分子量338.4)6.25質量部を加えた。
レーザー吸収剤として、樹脂(a2)100質量部に対して、東海カーボン社製のカーボンブラック「TB#A700F」(商標)(平均1次粒径62nm、DBPの吸油量121mL/100g)12.5質量部を加えた。
熱重合開始剤(d)として、日本油脂株式会社製の1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)パーシクロヘキサン「パーヘキサC−75(EB)」(商標)1.25質量部を加えた。
その後、50℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で粘稠な液体状の樹脂組成物を得た。
さらに、この樹脂組成物を東洋精機社製のラボプラストミルで30分混練した後、上記(10−1)に示した方法により、支持体上に塗工し、硬化を行い、凹型印刷用の印刷原版(印刷原版B)を得た。
この印刷原版Bを2本作製した。
次に、上記のようにして作製した印刷原版A及び印刷原版Bを用いて、レーザー彫刻を行い印刷版として、印刷を行い、評価を行った。
〔実施例1〕
上記〔製造例1〕で作製した印刷原版Aに対し、レーザー彫刻機(i)を用いて、上記(9−2)に記載の方法でレーザー彫刻(α)を行った。(α)後の印刷版のドットの形状が全て円錐状で良好であった。
次に、レーザー彫刻(β)を行った。
レーザー彫刻(β)においては、レーザー彫刻の条件をBottom Power:5%、Speed:600cm/secとした。その他の条件は前記レーザー彫刻(α)のパラメーターと同様とした。これにより凸版印刷用印刷版を得た。
この凸版印刷用印刷版の彫刻深さ及び表面粗さ(Ra)の測定を、上記(9−4)、(9−5)に示した方法により行った。
レーザー彫刻(β)による彫刻深さは20μmであり、レーザー彫刻(β)の前後における表面粗さRaの変化は0.7μmであった。
更に、上記(9−6)に示した方法により印刷品質の評価を行った。印刷物のベタ濃度は1.41であり、実用上良好な印刷品質が得られた。
〔実施例2〕
レーザー彫刻(β)の条件をBottom Power:10%、Speed:600cm/secとした。その他の条件は実施例1と同様として、凸版印刷用印刷版を得た。
レーザー彫刻(β)による彫刻深さは50μmであり、レーザー彫刻(β)の前後における表面粗さRaの変化は0.5μmであった。また、印刷物のベタ濃度は1.37であり、実用上良好な印刷品質が得られた。
〔実施例3〕
レーザー彫刻(β)の条件をBottom Power:20%、Speed:600cm/secとした。その他の条件は実施例1と同様として、凸版印刷用印刷版を得た。
レーザー彫刻(β)による彫刻深さは80μmであり、レーザー彫刻(β)の前後における表面粗さRaの変化は0.4μmであった。また、印刷物のベタ濃度は1.33であり、実用上良好な印刷品質が得られた。
〔実施例4〕
上記〔製造例1〕で作製した印刷原版Aに対し、レーザー彫刻機(ii)を用いて、上記(9−2)に示した方法でレーザー彫刻(α)を行った。レーザー彫刻(α)により形成されたドットの形状は、全て円錐状であり良好であった。
次に、レーザー彫刻(β)を行った。
レーザー彫刻(β)においては、前記レーザー彫刻の条件を、Power Limit:3%、Speed:1250cm/secとした。その他の条件は、前記レーザー彫刻(α)のパラメーターと同様とした。これにより凸版印刷用印刷版を得た。
この凸版印刷用印刷版の彫刻深さ及び表面粗さ(Ra)の測定を、上記(9−4)、(9−5)に示した方法により行った。
レーザー彫刻(β)による彫刻深さは15μmであり、レーザー彫刻(β)の前後における表面粗さRaの変化は0.8μmであった。
更に、上記(9−6)に示した方法により印刷品質の評価を行った。印刷物のベタ濃度は1.43であり、実用上良好な印刷品質が得られた。
〔実施例5〕
レーザー彫刻(β)の条件をPower Limit:5%、Speed:1250cm/secとした。その他の条件は実施例4と同様として、凸版印刷用印刷版を得た。
レーザー彫刻(β)による彫刻深さは40μmであり、レーザー彫刻(β)の前後における表面粗さRaの変化は0.6μmであった。また、印刷物のベタ濃度は1.38であり、実用上良好な印刷品質が得られた。
〔実施例6〕
レーザー彫刻(β)の条件をPower Limit:10%、Speed:1250cm/secとした。その他の条件は実施例4と同様として、凸版印刷用印刷版を得た。
レーザー彫刻(β)による彫刻深さは75μmであり、レーザー彫刻(β)の前後における表面粗さRaの変化は0.7μmであった。また、印刷物のベタ濃度は1.32であり、実用上良好な印刷品質が得られた。
〔実施例7〕
上記〔製造例2〕で作製した印刷原版Bに対し、レーザー彫刻機(iii)を用いて、上記(10−2)に示した方法でレーザー彫刻(α)を行った。レーザー彫刻(α)を行った後の印刷版の彫刻部と未彫刻部との境は滑らかで良好な状態であった。
次に、上記(10−2)に示す方法によりレーザー彫刻(β)を行った。
レーザー彫刻(β)による彫刻深さは10μmであり、レーザー彫刻(β)の前後における表面粗さRaの変化は0.4μmであった。また、印刷物のベタ濃度は1.22であり、実用上良好な印刷品質が得られた。
〔比較例1〕
上記〔製造例1〕で作製した印刷原版Aに対し、レーザー彫刻機(i)を用いて、上記(9−2)に記載の方法でレーザー彫刻(α)を行った。(α)後の印刷版のドットの形状が全て円錐状で良好であった。
レーザー彫刻(β)は行わなかった。
その他の条件は、実施例1と同様にして、凸版印刷用印刷版を得た。
印刷物のベタ濃度は1.20であった。
〔実施例8〕
上記〔製造例1〕で作製した印刷原版Aに対し、レーザー彫刻機(i)を用いて、上記(9−2)に記載の方法でレーザー彫刻(α)を行った。(α)後の印刷版のドットの形状が全て円錐状で良好であった。
レーザー彫刻(β)の条件は、Bottom Power:25%、Speed:600cm/secとした。
その他の条件は、実施例1と同様にして、凸版印刷用印刷版を得た。
レーザー彫刻(β)による彫刻深さは110μmであり、レーザー彫刻(β)の前後における表面粗さRaの変化は0.2μmであった。また、印刷物のベタ濃度は、1.26であった。
〔実施例9〕
上記〔製造例1〕で作製した印刷原版Aに対し、レーザー彫刻機(i)を用いて、上記(9−2)に記載の方法でレーザー彫刻(α)を行った。(α)後の印刷版のドットの形状が全て円錐状で良好であった。
レーザー彫刻(β)の条件は、Bottom Power:30%、Speed:600cm/secとした。
その他の条件は、実施例1と同様にして、凸版印刷用印刷版を得た。
レーザー彫刻(β)による彫刻深さは130μmであり、レーザー彫刻(β)の前後における表面粗さRaの変化は0.1μmであった。また、印刷物のベタ濃度は1.24であった。
〔実施例10〕
上記〔製造例1〕で作製した印刷原版Aに対し、レーザー彫刻機(ii)を用いて、上記(9−2)に示した方法でレーザー彫刻(α)を行った。レーザー彫刻(α)により形成されたドットの形状は、全て円錐状であり良好であった。
レーザー彫刻(β)の条件は、Power Limit:15%、Speed:1250cm/secとした。
その他の条件は、実施例4と同様にして、凸版印刷用印刷版を得た。
レーザー彫刻(β)による彫刻深さは115μmであり、レーザー彫刻(β)の前後における表面粗さRaの変化は0.2μmであった。また、印刷物のベタ濃度は1.25であった。
〔実施例11〕
上記〔製造例1〕で作製した印刷原版Aに対し、レーザー彫刻機(ii)を用いて、上記(9−2)に示した方法でレーザー彫刻(α)を行った。レーザー彫刻(α)により形成されたドットの形状は、全て円錐状であり良好であった。
レーザー彫刻(β)の条件は、Power Limit:20%、Speed:1250cm/secとした。
その他の条件は、実施例4と同様にして、凸版印刷用印刷版を得た。
レーザー彫刻(β)による彫刻深さは125μmであり、レーザー彫刻(β)の前後における表面粗さRaの変化は0.1μmであった。また、印刷物のベタ濃度は1.24であった。
〔比較例2〕
上記〔製造例2〕で作製した印刷原版Bに対し、レーザー彫刻機(iii)を用いて、上記(10−2)に示した方法でレーザー彫刻(α)を行った。レーザー彫刻(α)を行った後の印刷版の彫刻部と未彫刻部との境は滑らかで良好な状態であった。
レーザー彫刻(β)は行わなかった。
その他の条件は、実施例7と同様にして、凹版印刷用印刷版を得た。
印刷物のベタ濃度は1.05であった。
Figure 2010155371
実施例1〜6、8〜11と、比較例1とを比較すると、レーザー彫刻(β)を行うことによりベタ濃度の向上効果が得られたことがわかった。
実施例1〜3と、実施例8、9とを比較すると、レーザー彫刻(β)による彫刻深さを100μm以下とし、レーザー彫刻(β)の前後における表面粗さRaの変化が0.3μm以上としたことにより、ベタ濃度の向上効果が得られたことがわかった。
実施例4〜6と、実施例10、11とを比較すると、レーザー彫刻(β)による彫刻深さを100μm以下とし、レーザー彫刻(β)の前後における表面粗さRaの変化が0.3μm以上としたことにより、ベタ濃度の向上効果が得られたことがわかった。
実施例7と比較例2とを比較すると、レーザー彫刻(β)を行うことにより、ベタ濃度の向上結果が得られたことがわかった。
上述した結果から、本発明のベタ濃度の向上効果は、レーザー彫刻(β)を行ったこと、さらにはレーザー彫刻(β)の彫刻深さ、レーザー彫刻(β)の前後における表面粗さRaの変化を制御したことにより、印刷版表面の物理的、化学的な改質がなされ、インキの転移性が向上したためと考えられる。
本発明は、フレキソ印刷、グラビア印刷、ドライオフセット印刷を行う印刷版の製造方法として好適であり、エンボス加工等の表面パターンの形成、タイル等の印刷用レリーフ画像形成、電子部品の導体、半導体、絶縁体、パターン形成、光学部品の反射防止膜、カラーフィルター、(近)赤外線カットフィルター等の機能性材料のパターン形成、更には液晶ディスプレイあるいは有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の表示素子の製造における配向膜、下地層、発光層、電子輸送層、封止材層の塗膜・パターン形成技術として産業上の利用可能性がある。

Claims (3)

  1. レーザー彫刻(α)により印刷原版層に印刷パターンを形成する第1工程と、
    レーザー彫刻(β)により前記印刷原版層の前記印刷パターン形成面を改質する第2工程と、
    を有する印刷版の製造方法。
  2. 前記レーザー彫刻(β)によって前記印刷原版層を彫刻する深さが、100μm以下である請求項1に記載の印刷版の製造方法。
  3. 前記レーザー彫刻(β)によって前記印刷原版層の表面粗さRaを、0.3μm以上減少させる請求項1又は2に記載の印刷版の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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