JP2010154851A - タンパク質抽出薬剤 - Google Patents

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俊一郎 山口
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Abstract

【課題】 従来のタンパク質抽出薬剤よりも、さらに高いレベルの溶菌力を持ち、かつタンパク質を変性させずに抽出し、そのうえ、精製工程を簡略化できるタンパク質抽出薬剤を提供することを課題とする。
【解決手段】 微生物からタンパク質を抽出するための溶菌剤であって、対イオンがカルボキシレートアニオン(a)であるカチオン性界面活性剤(A)と、HLBが9〜13.5である非イオン性界面活性剤(B)とを含有することを特徴とするタンパク質抽出薬剤、及び対イオンがカルボキシレートアニオン(a)であるカチオン性界面活性剤(A)と、HLBが9〜13.5である非イオン性界面活性剤(B)との存在下で、微生物からタンパク質を抽出することを特徴とするタンパク質の生産方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、微生物(タンパク質生産菌等)からタンパク質を抽出する際に使用されるタンパク質抽出薬剤及びこのタンパク質抽出薬剤を使用して製造するタンパク質の製造方法に関する。
微生物は、アミノ酸、タンパク質等の有用物質を生産するための宿主として広く利用されている。特に近年は、遺伝子工学技術を活用して、産業上有用なタンパク質の遺伝子を導入した形質転換された微生物を使用し、有用物質を効率的に製造する技術が知られるようになっている。
有用物質を生産する好ましい微生物の例として、大腸菌やシュードモナス属菌等のグラム陰性菌、バチルス属菌や乳酸菌等のグラム陽性菌、サッカロマイセス属やキャンディダ属等の酵母、アスペルギウス属やペニシリウム属等の糸状菌、ストレプトマイセス属やロドコッカス属等の放線菌を挙げることができる。
微生物を使用して有用物質を生産する場合に、タンパク質等の有用物質を精製する必要があるが、この精製における第1の段階は、有用物質を生産する微生物の細胞を溶解して、細胞成分を遊離させる段階である。
細胞の溶解方法には、物理的方法と化学的方法がある。このうち化学的細胞溶解法としては、界面活性剤を用いて細胞膜又は細胞壁の完全性を破壊する方法がある。
提案されている界面活性剤は、非イオン性界面活性剤としては、糖鎖を有する非イオン性界面活性剤、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物及びソルビタン脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物等がある。
イオン性界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムブロミド及び塩化ベンザルコニウム等のカチオン性界面活性剤(例えば特許文献1)、ラウロイルザルコシネート等のアニオン性界面活性剤、コールアミドプロピルジメチルアンモニオプロパンスルホン酸(CHAPS)等の両性界面活性剤(例えば特許文献2、3)が提案されている。
しかしながら、従来の非イオン性界面活性剤を用いる方法では溶菌力が不十分であるため大量合成には適さず、また、従来のイオン性界面活性剤を用いた方法では抽出されたタンパク質等の有用物質が変性してしまい、3次元コンホメーションを崩してしまうという問題点がある。
このような問題を解決するために本発明者らは既に、特定のアニオンを対イオンに有するカチオン性界面活性剤を使用することで、タンパク質を変性させずにタンパク質を抽出する技術を見いだしている(例えば特許文献4)。
特開2002−335969号公報 特開2002−199885号公報 特開平5−64584号公報 特開2006−320313号公報
タンパク質の変性の低減に加えて、一方ではタンパク質の製造コストを低減する検討が活発に行われてきている。タンパク質製造工程にはさまざまな工程があり、これら一連の製造工程に長時間を要することが課題であり、製造現場では製造工程の短縮が望まれている。発明者らの製造工程の短縮検討の中で、上記のカチオン性界面活性剤では溶菌時間の大幅な短縮が実現できないことが判明している。
すなわち、高いレベルの溶菌力を持ち、かつタンパク質を変性させずに抽出でき、さらに溶菌時間を短縮できるタンパク質抽出薬剤を提供することが課題である。
本発明者らは上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、対イオンがカルボキシレートアニオンであるカチオン性界面活性剤とHLB値が9〜13.5である非イオン性界面活性剤とを含むタンパク質抽出薬剤をタンパク質抽出工程において使用することにより、溶菌力が高く、タンパク質を変性させずに抽出でき、さらに、はるかに溶菌時間を短縮できることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明のタンパク質抽出薬剤は、微生物からタンパク質を抽出する薬剤であって、対イオンがカルボキシレートアニオン(a)であるカチオン性界面活性剤(A)とHLB値が9〜13.5である非イオン性界面活性剤(B)とを含むことを要旨とする。
また本発明のタンパク質の製造方法は、上記のタンパク質抽出薬剤を使用することを要旨とする。
本発明のタンパク質抽出薬剤は、微生物(特に大腸菌等のタンパク質生産菌)からタンパク質を抽出するためのタンパク質抽出薬剤として、従来の薬剤よりも溶菌力が高く、タンパク質を変性させない。
さらに本発明のタンパク質抽出薬剤を使用すると、従来よりもはるかに溶菌時間が短縮できる。
また、本発明のタンパク質の製造方法は、高品質のタンパク質(例えば、変性の程度が少なくて活性の高い酵素)を短時間で得ることができる。
本発明のタンパク質抽出薬剤は、対イオンがカルボキシレートアニオンであるカチオン性界面活性剤(A)と、HLB値が9〜13.5である非イオン性界面活性剤(B)の2つを必須成分として含有する。
カチオン性界面活性剤(A)中の対イオンは、カルボキシレートアニオンであり、1価カルボン酸から構成されるカルボキシレートアニオン及び多価カルボン酸から構成されるカルボキシレートアニオンが含まれる。このカルボキシレートアニオンは、カルボン酸からプロトンを除いた−COO-基を有するイオンである。
カルボキシレートアニオンを構成するカルボン酸としては、以下の1価カルボン酸及び多価カルボン酸が挙げられる。
1価カルボン酸
脂肪族飽和モノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ベラルゴン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸及び2−エチルヘキサン酸等);脂肪族不飽和モノカルボン酸(オレイン酸等);脂肪族オキシモノカルボン酸(グリコール酸、乳酸及びグルコン酸等);アミノ酸(グリシン、アラニン及びロイシン等);芳香族モノカルボン酸(安息香酸、サリチル酸等)等が挙げられる。
多価カルボン酸
脂肪族飽和ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸等);脂肪族オキシジカルボン酸(d−酒石酸等);アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸等);脂肪族不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸及びイタコン酸等);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸等);トリカルボン酸(トリメリット酸及びクエン酸等);テトラカルボン酸(ピロメリット酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸及びエチレンジアミン四酢酸等);ペンタカルボン酸(ジエチレントリアミン五酢酸等)等が挙げられる。
これらのうち、タンパク質の変性されにくさの観点から、多価カルボン酸が好ましく、さらに好ましくは2〜8価の多価カルボン酸、次にさらに好ましくは2〜5価の多価カルボン酸、特に好ましくはトリカルボン酸及びテトラカルボン酸、最も好ましくはテトラカルボン酸である。
カチオン性界面活性剤(A)のカチオン部分としては以下の第4級アンモニウムカチオン(q1)及びアミン塩型カチオン(q2)が挙げられる。
(A)としては、溶菌力の観点から、このカチオン部分に疎水性基を有することが好ましい。
第4級アンモニウムカチオン(q1)としては、例えば、一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2010154851
一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、炭素数が1〜22の直鎖又は分岐の1価の炭化水素基であって、R1〜R4のうちの少なくとも1個は炭素数6〜22の1価の炭化水素基であり、R1〜R2はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
式中のR1〜R4で示される1価の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、直鎖又は分岐のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基、n−ヘキシル基、ヘプチル基、n−オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、i−、sec−及びt−ブチル基、2−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、3−メチルブチル基並びに2−エチルヘキシル基等)及び直鎖又は分岐のアルケニル基(ビニル基、アリル基及びメタリル基等)が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、アリールアルキル基(ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基及びフェニルブチル基等)及びアルキルアリール基(メチルフェニル基、エチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基及びドデシルフェニル基等)が挙げられる。
1〜R4の炭化水素基の好ましい組み合わせとしては、以下の(q11)〜(q14)が挙げられる。
(q11)R1〜R4の1個のみが炭素数6〜22の脂肪族炭化水素基であって、他は炭素数1〜4のアルキル基である組み合わせ;
ドデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルジメチルエチルアンモニウム、テトラデシルジメチルエチルアンモニウム、ヘキサデシルジメチルエチルアンモニウム、オクタデシルジメチルエチルアンモニウム、ドデシルメチルジエチルアンモニウム、テトラデシルメチルジエチルアンモニウム、ヘキサデシルメチルジエチルアンモニウム及びオクタデシルメチルジエチルアンモニウム等。
(q12)R1〜R4の2個のみが炭素数6〜22の脂肪族炭化水素基であって、他は炭素数1〜4のアルキル基である組み合わせ;
オクチルデシルジメチルアンモニウム、ジオクチルジメチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、デシルドデシルジメチルアンモニウム、ジドデシルジメチルアンモニウム、オクチルデシルメチルエチルアンモニウム、ジオクチルメチルエチルアンモニウム、ジデシルメチルエチルアンモニウム、ジドデシルメチルエチルアンモニウム、ジデシルメチルプロピルアンモニウム、ジドデシルエチルプロピルアンモニウム及びジステアリルジメチルアンモニウム等。
(q13)R1〜R4の1個のみが炭素数6〜22の芳香族炭化水素基であって、他は炭素数1〜4のアルキル基である組み合わせ;
ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリプロピルアンモニウム及びベンジルエチルジメチルアンモニウム等。
(q14)R1〜R4の1個のみが炭素数6〜22の脂肪族炭化水素基、1個のみが炭素数6〜22の芳香族炭化水素基かつ、他は炭素数1〜4のアルキル基である組み合わせ;
デシルジメチルベンジルアンモニウム、ドデシルジメチルベンジルアンモニウム、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウム及びヤシ油アルキルジメチルベンジルアンモニウム等。
これらの(q11)〜(q14)のうち、溶菌力の観点から、(q12)が好ましく、さらに好ましくはR1〜R4のうちの2個のみが炭素数8〜14のアルキル基であって、他は炭素数1〜4のアルキル基であるものであり、次にさらに好ましくはR1〜R4のうちの2個のみが炭素数8〜10のアルキル基であって、他は炭素数1〜2のアルキル基であるものであり、特に好ましくはジデシルジメチルアンモニウム、ジオクチルジメチルアンモニウム及びジデシルメチルエチルアンモニウムである。
一方、アミン塩型カチオン(q2)としては、1〜3級アミン塩型カチオンが挙げられる。なお、アミン塩型カチオンとは、アミンとプロトンから構成される1価のカチオンの意味であり、1級アミン塩型カチオンは1級アミンとプロトンから構成される1価のカチオン、2級アミン塩型カチオンは2級アミンとプロトンから構成される1価のカチオン、3級アミン塩型カチオンは3級アミンとプロトンから構成される1価のカチオンである。
1級アミン塩型カチオンを構成する1級アミンとしては、炭素数6〜18のモノアルキル及び炭素数6〜18のシクロアルキルアミン(モノヘキシルアミン、モノシクロヘキシルアミン、モノオクチルアミン及びモノドデシルアミン等)が挙げられる。
2級アミン塩型カチオンを構成する2級アミンとしては、少なくとも1個のアルキル基の炭素数が6〜18のジアルキルアミン(ヘキシルメチルアミン、オクチルエチルアミン及びメチルドデシルアミン等)が挙げられる。
3級アミン塩型カチオンを構成する3級アミンとしては、少なくとも1個のアルキル基の炭素数が8〜18のトリアルキルアミン(ジメチルドデシルアミン等)が挙げられる。
カチオン性界面活性剤(A)のカチオン部分としては、溶菌力の観点から、第4級アンモニウムカチオン(q1)が好ましい。
カチオン性界面活性剤(A)としては、タンパク質の変性されにくさの観点及び溶菌力の観点から、多価カルボン酸から構成されるカルボキシレートアニオンと第4級アンモニウムカチオン(q1)とからなるものが好ましく、さらに好ましくは2〜8価の多価カルボン酸から構成されるカルボキシレートアニオンと(q1)とからなるもの、次にさらに好ましくはトリカルボン酸又はテトラカルボン酸から構成されるカルボキシレートアニオンと(q12)からなるもの、特に好ましくはテトラカルボン酸から構成されるカルボキシレートアニオンと(q12)とからなるもの、最も好ましくはブタンテトラカルボン酸から構成されるカルボキシレートアニオンとジデシルジメチルアンモニウムからなるもの及びシクロペンタンテトラカルボン酸から構成されるカルボキシレートアニオンとジデシルジメチルアンモニウムからなるものである。
また、2種以上の(A)を併用してもよい。
カチオン性界面活性剤(A)の製造方法は、例えば、以下の4つの方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(1)第4級アンモニウムカチオンのアルキル炭酸塩とカルボキシル基がアンモニウムと当量になるようにカルボン酸を加えて、60〜100℃で3〜20時間撹拌して反応させて塩交換し、その後、必要により減圧条件下でメタノールと二酸化炭素を除去して精製する方法。アルキル炭酸塩のアルキル基は炭素数1〜4のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基が挙げられる。
(2)4級アンモニウムハロゲン化物をカルボン酸の強塩基性塩で塩交換し、その後、必要によりエタノール抽出等で精製する方法。カルボン酸の強塩基性塩としてはカルボン酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アンモニウム塩及びアミン塩等が挙げられる。
(3)4級アンモニウム水酸化物をカルボン酸の強塩基性塩で塩交換し、その後、必要により精製する方法。カルボン酸の強塩基性塩としてはカルボン酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アンモニウム塩及びアミン塩等が挙げられる。
(4)4級アンモニウム水酸化物をカルボン酸で中和し、その後、必要により精製する方法。
本発明のカチオン性界面活性剤(A)の添加量は、対象となる微生物、生産される有用物質の種類及び抽出方法の種類によって適宜選択されるが、溶菌性及びタンパク質の変性のさせにくさの観点から、作用させる微生物懸濁液の重量に対して100ppm〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1重量%〜2重量%である。
本発明のもう1つの必須成分であるHLB値が9〜13.5である非イオン性界面活性剤(B)としては、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物(B1)、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物(B2)、脂肪酸アルキレンオキサイド付加物(B3)及び多価アルコール型非イオン性界面活性剤(B4)が挙げられる。
ここでHLBとは界面活性剤の親水性及び疎水性を示す尺度として用いられており、HLBの値が高いほど親水性が高いことを意味する。本発明におけるHLBとは一般式(1)で計算される数値である。(界面活性剤入門、142頁、藤本武彦著、三洋化成工業株式会社発行)

HLB=20×{親水基の分子量/界面活性剤の分子量} (1)
(B1)高級アルコールアルキレンオキサイド(以下、AOと略記する。)付加物としては、炭素数8〜24の高級アルコール(デシルアルコール、ドデシルアルコール、ヤシ油アルキルアルコール、オクタデシルアルコール及びオレイルアルコール等)のエチレンオキサイド(以下、EOと略記)1〜20モル及び/又はプロピレンオキサイド(以下、POと略記)1〜20モル付加物(ブロック付加物及び/又はランダム付加物を含む。以下同様)[例えば、デシルアルコールのEO8モル/PO7モルブロック付加物]のうち、HLBが9〜13.5のものが挙げられ、具体的にはラウリルアルコールEO7モル付加物(HLB=12.4)、オレイルアルコールEO5モル付加物(HLB=9.0)、オレイルアルコールEO6モル付加物(HLB=10.2)、オレイルアルコールEO7モル付加物(HLB=11.0)及びオレイルアルコールEO10モル付加物(HLB=12.4)等が挙げられる。
(B2)アルキルフェノールのAO付加物としては、炭素数6〜24のアルキルを有するアルキルフェノールのAO付加物のHLBが9〜13.5のものが挙げられ、具体的にはオクチルフェノールのEO1〜20モル及び/又はPO1〜20モル付加物並びにノニルフェノールのEO1〜20モル及び/又はPO1〜20モル付加物が挙げられる。入手しやすさの観点からTRITON(登録商標)X−100(HLB=13.5)、TRITON(登録商標)X−114(HLB=12.4)、igepal(登録商標)CA−520(HLB=10.0)及びigepal(登録商標)CA−630(HLB=13.0)等が挙げられる。
(B3)脂肪酸AO付加物としては、炭素数8〜24の脂肪酸(デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びヤシ油脂肪酸等)のEO1〜20モル及び/又はPO1〜20モル付加物のうち、HLBが9〜13.5のものが挙げられ、具体的にはオレイン酸EO9モル付加物(HLB=11.8)、ジオレイン酸EO12モル付加物(HLB=10.4)、ジオレイン酸EO20モル付加物(HLB=12.9)及びステアリン酸EO9モル付加物(HLB=11.9)等が挙げられる。
(B4)多価アルコール型非イオン性界面活性剤としては、炭素数3〜36の2〜8価の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビット及びソルビタン等)のEO及び/又はPO付加物;前記多価アルコールの脂肪酸エステル及びそのEO付加物;並びに、砂糖の脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド及びこれらのAO付加物;が挙げられ、具体的には、ソルビタンテトラオレイン酸エステルEO付加物(HLB=11.4)及びソルビタンヘキサオレイン酸エステルEO付加物(HLB=10.2)が挙げられる。
これらのうち、タンパク質の抽出効率の観点から(B1)、(B2)及び(B3)が好ましく、さらに好ましくは、ラウリルアルコールEO7モル付加物、オレイルアルコールEO5モル付加物、オレイルアルコールEO6モル付加物、オレイルアルコールEO7モル付加物、オレイルアルコールEO10モル付加物、TRITON(登録商標)X−100、TRITON(登録商標)X−114、igepal(登録商標)CA−520及びigepal(登録商標)CA−630、オレイン酸EO9モル付加物、ジオレイン酸EO12モル付加物、ジオレイン酸EO20モル付加物及びステアリン酸EO9モル付加物であり、次に好ましくはオレイルアルコールEO7モル付加物、TRITON(登録商標)X−100及びオレイン酸EO9モル付加物である。
また、2種以上の(B)を併用してもよい。
(B)の添加量は対象となる微生物、目的タンパク質の種類及び抽出方法の種類によって適宜選択されるが、タンパク質の抽出効率の観点から作用させる微生物懸濁液の重量に対し100ppm〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1重量%〜2重量%である。
本発明のタンパク質抽出薬剤における(A)と(B)の重量比{(A)の重量/(B)の重量}は、タンパク質の変性させにくさの観点から、0.01〜100が好ましく、さらに好ましくは0.1〜20である。
本発明のタンパク質抽出薬剤は、使用に当たっては、必須成分である上記のカチオン性界面活性剤(A)及び非イオン性界面活性剤(B)をそのまま使用してもよいし、必要により水と混合して、水性希釈液(水溶液状又は水分散液状)として用いることができる。
水性希釈液における、(A)及び(B)の合計濃度は、対象となる微生物、有用物質の種類及び抽出方法の種類によって適宜選択されるが、溶菌性及びハンドリング性の観点から、水性希釈液の重量を基準として、0.01〜99重量%が好ましく、好ましくは0.1〜50重量%である。
本発明のタンパク質抽出薬剤は、カチオン性界面活性剤(A)と非イオン性界面活性剤(B)とを混合することで容易に製造できる。
本発明のタンパク質の製造方法は、微生物からタンパク質を抽出する工程において、対イオンがカルボキシレートアニオン(a)であるカチオン性界面活性剤(A)と、HLBが9〜13.5である非イオン性界面活性剤(B)とを含むタンパク質抽出薬剤を使用するタンパク質の製造方法である。
微生物は、アミノ酸及びタンパク質等の有用物質を生産するための宿主として利用されるものであれば、特に制限は無い。
タンパク質を生産する好ましい微生物の例として、大腸菌、シュードモナス属菌等のグラム陰性菌、バチルス属菌、乳酸菌等のグラム陽性菌、サッカロマイセス属、キャンディダ属等の酵母、アスペルギウス属、ペニシリウム属等の糸状菌、ストレプトマイセス属、ロドコッカス属等の放線菌、後述するタンパク質生産体等を挙げることができる。
本発明の製造方法においては、カチオン性界面活性剤(A)と非イオン性界面活性剤(B)との存在下で微生物からタンパク質を抽出すればよく、(A)と(B)とを含有する本発明のタンパク質抽出薬剤を微生物に添加しても、(A)と(B)を別々に微生物に添加{(A)若しくは(A)を含む水性希釈液を微生物に添加し、その後(B)若しくは(B)を含む水性希釈液を添加する、又は(B)若しくは(B)を含む水性希釈液を微生物に添加し、その後(A)若しくは(A)を含む水性希釈液を添加する}してもどちらでも良く、作業性の観点から(A)と(B)とを含有する本発明のタンパク質抽出薬剤を添加する方法が好ましい。
本発明のタンパク質の生産方法において、カチオン性界面活性剤(A)と非イオン性界面活性剤(B)との存在下で行う微生物の処理に当たっては、必須成分である上記のカチオン性界面活性剤(A)と非イオン性界面活性剤(B)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲において、必要によりさらに、有機溶剤(C)、他の界面活性剤(D)及び/又は溶解性安定化剤(E)の存在下で行ってもよい。これら(C)、(D)及び(E)は、これらの一部又は全部を(A)及び/又は(B)に予め含有させていてもよいし、微生物の処理時に別途これらを適宜配合して添加して使用してもよい。
有機溶剤(C)は、カチオン性界面活性剤(A)の水への溶解性を上げるため、必要により加える、水と相溶性のある有機溶剤である。
ここで、水と相溶性のある有機溶剤とは、分配係数logPowが2以下である有機溶剤であり、具体的には、脂肪族アルコール(メタノール及びエタノール等)、ケトン(アセトン及びメチルエチルケトン等)及びカルボン酸エステル(酢酸エチル、酢酸プロピル及びギ酸メチル等)等が挙げられる。
有機溶剤(C)の使用量(重量%)は、(A)と(B)との合計重量に基づいて、好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは3以下である。
他の界面活性剤(D)は、本発明の生産方法において、溶菌性をさらに上げるために、必須成分のカチオン性界面活性剤(A)とHLBが9〜13.5の非イオン性界面活性剤(B)以外に使用する、他の界面活性剤である。
この目的で使用する他の界面活性剤(D)としては、(B)以外の非イオン性界面活性剤(D1)、(A)以外のカチオン性界面活性剤(D2)、アニオン性界面活性剤(D3)、及び両性界面活性剤(D4)からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
非イオン性界面活性剤(D1)としては、以下の(D11)〜(D15)が挙げられる。
(D11)高級アルコールアルキレンオキサイド(以下、AOと略記する。)付加物:
炭素数8〜24の高級アルコール(デシルアルコール、ドデシルアルコール、ヤシ油アルキルアルコール、オクタデシルアルコール及びオレイルアルコール等)のエチレンオキサイド(以下、EOと略記)1〜20モル及び/又はプロピレンオキサイド(以下、POと略記)1〜20モル付加物(ブロック付加物及び/又はランダム付加物を含む。以下同様)のうち(B)に含まれないものが挙げられる。
(D12)炭素数6〜24のアルキルを有するアルキルフェノールのAO付加物:
オクチル又はノニルフェノールのEO1〜20モル及び/又はPO1〜20モル付加物のうち(B)に含まれないものが挙げられる。
(D13)ポリプロピレングリコールEO付加物及びポリエチレングリコールPO付加物:プルロニック型界面活性剤等が挙げられる。
(D14)脂肪酸AO付加物:
炭素数8〜24の脂肪酸(デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びヤシ油脂肪酸等)のEO1〜20モル及び/又はPO1〜20モル付加物等のうち(B)に含まれないものが挙げられる。
(D15)多価アルコール型非イオン性界面活性剤:
炭素数3〜36の2〜8価の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビット及びソルビタン等)のEO及び/又はPO付加物;前記多価アルコールの脂肪酸エステル及びそのEO付加物(TWEEN(登録商標)20及びTWEEN(登録商標)80等);アルキルグルコシド(N−オクチル−β−D−マルトシド、n−ドデカノイルスクロース及びn−オクチル−β−D−グルコピラノシド等);並びに、砂糖の脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド及びこれらのAO付加物(ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド等);のうち(B)に含まれないものが挙げられる。
(A)以外のカチオン性界面活性剤(D2)としては、対イオンとしてハロゲンアニオン、ヒドロキシアニオン、アルキル硫酸アニオン及び超強酸アニオンからなる群より選ばれる少なくとも1種の対イオンを有するカチオン性界面活性剤が挙げられる。
ハロゲンアニオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等、アルキル硫酸アニオンとしてはメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン等、超強酸アニオンとしてはテトラフルオロホウ素酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等が挙げられる。
なお、(D2)を構成するカチオン部分は、(A)で挙げたものと同様のカチオン部分が挙げられる。
(D2)の具体例として、塩化ベンザルコニウム及び臭化セチルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤(D3)としては、炭素数8〜24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸及びその塩、硫酸エステル及びエーテル硫酸エステル及びそれらの塩、スルホン酸塩、スルホコハク酸塩、リン酸エステル及びエーテルリン酸エステル及びそれらの塩、脂肪酸塩、アシル化アミノ酸塩並びに天然由来のカルボン酸及びその塩(ケノデオキシコール酸、コール酸及びデオキシコール酸等)が挙げられる。
両性界面活性剤(D4)としては、ベタイン型両性界面活性剤及びアミノ酸型両性界面活性剤が挙げられる。
具体的には、アミドスルホベタイン、コールアミドプロピルジメチルアンモニオプロパンスルホン酸(CHAPS)、コールアミドプロピルジメチルアンモニオ2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(CHAPSO)、カルボキシベタイン、ラウロイルサルコシン及びメチルベタインが挙げられる。
これらの他の界面活性剤(D)のうち、必須成分のカチオン性界面活性剤(A)と併用して溶菌性が向上する点で好ましいのは、非イオン性界面活性剤(D1)である。さらに多価アルコール型非イオン性界面活性剤(D15)が好ましく、多価アルコールの脂肪酸エステル及びそのEO付加物が特に好ましく、TWEEN(登録商標)20、TWEEN(登録商標)80が最も好ましい。
他の界面活性剤(D)の使用量(重量%)は、タンパク質の変性されにくさの観点から、(A)と(B)の合計重量に基づいて、60以下が好ましく、さらに好ましくは50以下、特に好ましくは40以下である。
溶解性安定化剤(E)としてはキレート剤、有機酸及びその塩、多価アルコールが挙げられる。
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸及びその塩、ポリリン酸及びその塩、メタリン酸及びその塩があげられる。
有機酸及びその塩としては、乳酸及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩等が挙げられる。
塩としてはアルカリ金属塩が挙げられ、入手のしやすさの観点でナトリウム塩が好ましい。
多価アルコールとしては、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ペンタエリスリトール、キシリトール、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコール等があげられる。
これらの中で、(A)の水への溶解性の向上の観点から、多価アルコールが好ましく、さらに好ましくはグリセリンである。
本発明のタンパク質の生産方法における各成分の重量比{(A)/(B)/(C)/(D)/(E)}は、タンパク質の変性のしにくさの観点から、20〜99/1〜10/0〜10/0〜60/0〜60が好ましく、さらに好ましくは25〜99/1〜10/0〜5/0〜50/0〜50である。
下記にタンパク質の生産方法の一例を示す。この例において、本発明のタンパク質の生産方法におけるタンパク質抽出薬剤を使用する工程は、下記の工程中(ii)である。
(i)微生物の培養
微生物の培養は一般的な方法と同様で、例えば大腸菌を培地中(LB培地等)で37℃で振とう培養し、OD600が2〜3程度になるまでおこなう。
(ii)タンパク質抽出剤を作用させる
(i)の大腸菌懸濁液を遠心分離(5000rpm、15分、4℃)し、集菌する。集菌後の大腸菌にタンパク質抽出剤を所定量加え、常温で振とう又は撹拌して溶菌する。
(iii)分離精製
分離精製は一般的な方法と同様で、(ii)の溶液を例えば遠心分離(5000rpm、15分、4℃)した後に、適宜イオン交換カラム、ゲルろ過カラム、アフィニティカラム等を使用して目的タンパク質を精製する。
本発明のタンパク質の製造方法において、微生物からタンパク質を抽出する際、前記のタンパク質抽出薬剤を使用した後に、さらに加水分解酵素を使用することが溶菌性の観点から好ましい。
加水分解酵素としては、ペプチドグリカンを分解する酵素及びリン脂質を分解する酵素が挙げられる。
ペプチドグリカンを分解する酵素としては、細胞壁を分解する酵素であれば特に限定するものではないが、タンパク質の抽出率の観点でリゾチームが好ましい。
リゾチームとして具体的には、ニワトリ卵白リゾチーム及びヒトリゾチーム等が挙げられ、入手のしやすさの観点で、ニワトリ卵白リゾチームが好ましい。
リン脂質を分解する酵素としては、リン脂質を分解する酵素であれば特に限定するものではないが、タンパク質の抽出の観点でホスホリパーゼが好ましい。
ホスホリパーゼとして具体的には、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼC及びホスホリパーゼD等が挙げられ、入手のしやすさの観点で、ホスホリパーゼA2が好ましい。
加水分解酵素の添加量は、溶菌性の観点から微生物懸濁液に対して0.01〜5.0mg/mLが好ましく、次に好ましくは0.1〜1.0mg/mLである。加水分解酵素は粉末で添加しても水等の適当な希釈溶媒で希釈した溶液で添加しても良いが、ハンドリング性の観点から水で希釈した水溶液で添加するのが好ましい。
加水分解酵素を使用する場合は、タンパク質抽出剤を作用させる工程(上記では(ii)の工程)が終了した後に使用することが溶菌性の観点から好ましい。具体的には、タンパク質抽出剤を作用させる工程(上記では(ii)の工程)が終了した液に対し、加水分解酵素を所定量加え、25℃〜37℃で30分〜3時間、振とう又は軽く撹拌をおこなうことが好ましい。加水分解酵素で処理した液は通常通り上記(iii)の様に分離精製をおこなう。
本発明の製造方法は、例えば、目的タンパク質が組み換えタンパク質の場合は、以下のような順序の工程による生産方法が挙げられる。
(1)タンパク質の培養工程:
大腸菌等の微生物を培養し、組み換えタンパク質を発現させる。
(2)タンパク質の取り出し工程:
カチオン性界面活性剤(A)と、HLBが9〜13.5の非イオン性界面活性剤(B)との存在下で、タンパク質生産体内のインクルージョンボディを取り出す。必要に応じ、加水分解酵素を添加して効率よくタンパク質の抽出をおこなう。
(3)アンフォールディング工程:
インクルージョンボディ懸濁液(例えば10mgタンパク質/mL)に0.5モル/L以上のアンフォールディング剤及び20ミリモル/L以下の還元剤を加え軽くかきまぜ室温で数時間放置する。
(4)リフォールディング工程:
アンフォールディングされたタンパク質懸濁液に、0.2〜6モル/Lの濃度になるようにリフォールディング剤を加えて軽くかき混ぜ、室温で1晩放置する。又はまたはリフォールディングバッファーで大希釈することによりリフォールディングを行う。
(5)分離・取り出し工程:
懸濁液から目的とする正常なタンパク質をカラムクロマトグラフィー等によって分離して取り出す。
本発明で使用できる微生物としては、以下の細菌細胞等が挙げられる。
細菌細胞としては、連鎖球菌属(streptococci)、ブドウ球菌属(staphylococci)、エシェリヒア属菌(Escherichia)、ストレプトミセス属菌(streptomyces)及びバチルス属菌(Bacillus)細胞等が挙げられる。真菌細胞としては、酵母細胞及びアスペルギルス属(Aspergillus)細胞等が挙げられる。昆虫細胞としては、ドロソフィラS2(DrosophilaS2)及びスポドプテラSf9(SpodopteraSf9)細胞等が挙げられる。
エシェリヒア属菌(Escherichia)の具体例としては、大腸菌(E.coli)K12DH1〔プロシージング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.)60巻、160頁(1968年)を参照〕、JM103〔ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research)9巻、309頁(1981年)を参照〕、JA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology)120巻、517頁(1978年)を参照〕、HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology)41巻、459頁(1969年)を参照〕、C600〔ジェネティックス(Genetics)39巻、440頁(1954年)を参照〕、MM294〔ネイチャー(Nature)217巻、1110頁(1968年)を参照〕等が挙げられる。
バチルス属菌(Bacillus)の具体例としては、枯草菌(Bacillussubtilis)MI114〔ジーン、24巻、255頁(1983年)を参照〕、207−21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry)95巻、87頁(1984年)を参照〕等が挙げられる。
組み換えタンパク質の生産方法としては、具体的に次の方法がある。
(i)目的タンパク産生細胞からメッセンジャーRNA(mRNA)を分離し、該mRNAから単鎖のcDNAを、次に二重鎖DNAを合成し、該相補DNAをファージ又はプラスミドに組み込む。
(ii)得られた組み換えファージ又はプラスミドで宿主を形質転換し、培養後、目的タンパクの一部をコードするDNAプローブとのハイブリダイゼーション、あるいは抗体を用いたイムノアッセイ法により目的とするDNAを含有するファージあるいはプラスミドを単離する。
(iii)その組み換えDNAから目的とするクローン化DNAを切りだし、該クローン化DNA又はその一部を発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することによって製造することができる。
その後、適当な方法により、宿主を発現ベクターで形質転換し培養する。培養は通常15〜43℃で3〜24時間行い、必要により通気、攪拌を加えることもできる。
上記の(2)のタンパク質の取り出し工程では、例えば大腸菌の場合、本発明の製造方法を用いて、外膜のリン脂質層や内膜のペプチドグリカン層を溶解する又は一部破壊することによって菌体内に生産されたインクルージョンボディを取り出す。
この工程の処理条件としては、公知の溶菌剤の処理条件(特開2006−320313号公報等)が適用でき、タンパク質の変性防止の観点から、温度は40℃以下で行うことが好ましい。
上記の(3)のアンフォールディング工程では、本発明のタンパク質抽出薬剤を用いたあとに、アンフォールディング剤でタンパクの3次元構造を崩してアンフォールディング)を行うアンフォールディング工程において使用されるアンフォールディング剤としては、塩酸グアニジン、尿素及びこれらの併用等が挙げられる。
なお、タンパク質が、分子内にS−S結合を含むタンパク質である場合には、還元剤として塩酸グアニジン及び/又は尿素以外に、さらに2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、シスチン又はチオフェノール等を加えてもよい。
上記の(4)のリフォールディング工程におけるタンパク質のリフォールディング方法は、希釈法、透析法、界面活性剤利用法、人工シャペロン利用法及び特開2007−145801号公報記載の方法いずれの方法でもリフォールディングすることができる。特に特開2007−145801号公報記載の方法は生産性・汎用性の観点から好ましい。
上記の(5)のタンパク質の分離・取り出し工程におけるカラムクロマトグラフィーに使用される充填剤としては、シリカ、デキストラン、アガロース、セルロース、アクリルアミド及びビニルポリマー等が挙げられ、市販品ではSephadexシリーズ、Sephacrylシリーズ、Sepharoseシリーズ(以上、Pharmacia社)、Bio−Gelシリーズ(Bio−Rad社)等があり入手可能である。
本発明の製造方法で製造されるタンパク質としては、酵素(P1)、組み換えタンパク質(P2)及びペプチド(P3)が挙げられる。
酵素(P1)としては、加水分解酵素、異性化酵素、酸化還元酵素、転移酵素、合成酵素及び脱離酵素等が挙げられる。
加水分解酵素としては、セルラーゼ、プロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ及びグルコアミラーゼ等が挙げられる。
異性化酵素としては、グルコースイソメラーゼが挙げられる。
酸化還元酵素としては、コレステロールオキシダーゼ及びペルオキシダーゼ等が挙げられる。
転移酵素としては、アシルトランスフェラーゼ及びスルホトランスフェラーゼ等が挙げられる。
合成酵素としては、脂肪酸シンターゼ、リン酸シンターゼ及びクエン酸シンターゼ等が挙げられる。
脱離酵素としては、ペクチンリアーゼ等が挙げられる。
組み換えタンパク質(P2)としては、タンパク製剤、ワクチン等が挙げられる。
タンパク製剤としては、骨形成因子(BMP)、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターロイキン1〜12、成長ホルモン、エリスロポエチン、インスリン、顆粒状コロニー刺激因子(G−CSF)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ナトリウム利尿ペプチド、血液凝固第VIII因子、ソマトメジン、グルカゴン、成長ホルモン放出因子、血清アルブミン及びカルシトニン等が挙げられる。
ワクチンとしては、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン及びC型肝炎ワクチン等が挙げられる。
ペプチド(P3)としては、特にアミノ酸組成を限定するものではなく、ジペプチド及びトリペプチド等が挙げられる。
これらのうち本発明のタンパク質の製造方法は、(P1)及び(P2)、特に(P1)の生産に適している。
本発明の微生物によるタンパク質の製造方法で得られるタンパク質は、上記の方法で得られるため、従来よりも純度が高く、また溶菌力に優れているので高い収量を得ることができる。
以下の製造例、実施例、比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特記しない限り、部は重量部を意味する。
実施例1
50ml三角フラスコに、ジデシルジメチルアンモニウムのメチル炭酸塩16.04g(カチオン基として0.04当量)を入れ、撹拌しながら、ブタンテトラカルボン酸2.34g(カルボキシル基として0.04当量)を少量ずつ加えた。撹拌機付き恒温槽で80℃に加温しながら8時間撹拌し続けると、二酸化炭素及びメタノールが系外に放出され、ジデシルジメチルアンモニウムのシクロペンタンテトラカルボン酸塩15.49g(収率99.9%)を得た。
さらに、得られたカチオン活性剤(ジデシルジメチルアンモニウムのシクロペンタンテトラカルボン酸塩)25部に、オレイン酸EO9モル付加物(三洋化成工業製「イオネットMO−400」、HLB=11.8)10部、TWEEN80を30部、グリセリン20部及び水15部を加えて混合し、本発明のタンパク質抽出薬剤を作製した。
実施例2
実施例1において、ブタンテトラカルボン酸をクエン酸2.91gに変更する以外は同様にして、ジデシルジメチルアンモニウムのクエン酸塩を得た後、表1の通りに混合して、本発明のタンパク質抽出薬剤を作製した。
実施例3
実施例1において、ブタンテトラカルボン酸をアジピン酸2.32gに変更する以外は同様にして、ジデシルジメチルアンモニウムのアジピン酸塩を得た後、表1の通りに混合して、本発明のタンパク質抽出薬剤を作製した。
実施例4
実施例1において、ブタンテトラカルボン酸を酢酸2.40gに変更する以外は同様にして、ジデシルジメチルアンモニウムの酢酸塩を得た後、表1の通りに混合して、本発明のタンパク質抽出薬剤を作製した。
実施例5
実施例1において、ジデシルジメチルアンモニウムのメチル炭酸塩をジステアリルジメチルアンモニウムのメチル炭酸塩24.68gに変更する以外は同様にして、ジステアリルジメチルアンモニウムのブタンテトラカルボン酸塩を得た後、表1の通りに混合して、本発明のタンパク質抽出薬剤を作製した。
実施例6
実施例1において、オレイン酸EO9モル付加物(三洋化成工業製「イオネットMO−400」、HLB=11.8)10部をオレイルアルコールEO11モル付加物(三洋化成工業製「エマルミン110」、HLB=13.2)10部に変更する以外は実施例1と同様に行い、本発明のタンパク質抽出薬剤を作製した。
実施例7
実施例1において、オレイン酸EO9モル付加物(三洋化成工業製「イオネットMO−400」、HLB=11.8)10部をオレイルアルコールEO5モル付加物(三洋化成工業製「エマルミンCO−50」、HLB=9.0)10部に変更する以外は実施例1と同様に行い、本発明のタンパク質抽出薬剤を作製した。
実施例8
実施例1において、オレイン酸EO9モル付加物(三洋化成工業製「イオネットMO−400」、HLB=11.8)10部をオクチルフェノールEO10モル付加物(和光純薬工業製、HLB=13.5)10部に変更する以外は実施例1と同様に行い、本発明のタンパク質抽出薬剤を作製した。
実施例9
実施例1において、オレイン酸EO9モル付加物(三洋化成工業製「イオネットMO−400」、HLB=11.8)10部をジオレイン酸EO12モル付加物(三洋化成工業製「イオネットDO−600」、HLB=10.4)10部に変更する以外は実施例1と同様に行い、本発明のタンパク質抽出薬剤を作製した。
実施例10
実施例1において、ジデシルジメチルアンモニウムのブタンテトラカルボン酸塩を得た後、表1の通り配合量を変更する以外は実施例1と同様に行い、本発明のタンパク質抽出薬剤を作製した。
実施例11
実施例1において、ジデシルジメチルアンモニウムのブタンテトラカルボン酸塩を得た後、表1の通り配合量を変更する以外は実施例1と同様に行い、本発明のタンパク質抽出薬剤を作製した。
実施例12
実施例1において、ジデシルジメチルアンモニウムのブタンテトラカルボン酸塩を得た後、表1の通り配合量を変更する以外は実施例1と同様に行い、本発明のタンパク質抽出薬剤を作製した。
実施例13
実施例1において、ジデシルジメチルアンモニウムのブタンテトラカルボン酸塩を得た後、表1の通り配合量を変更する以外は実施例1と同様に行い、本発明のタンパク質抽出薬剤を作製した。
比較例1〜7
表1に記載の通りに混合して、比較例1〜5のタンパク質抽出薬剤を作製した。
なお、比較例1の塩化ベンザルコニウムは市販品(和光純薬工業製)を使用した。比較例2のラウリルアミンEO2モル付加物は市販品(ライオンアクゾ社製、エソミンC/12)を使用した。
Figure 2010154851
実施例14〜29
実施例1〜13で作製したタンパク質抽出薬剤を使用して、(1)大腸菌に対する溶菌力、(2)タンパク質(セルラーゼ酵素、リパーゼ、コレステロールオキシダーゼ、グルコースイソメラーゼ、骨形成因子、エリスロポエチン、トリペプチド)の変性のされにくさを評価した結果を表2に示した。
比較例8〜14
比較例1〜7で作製したタンパク質抽出薬剤を使用して、比較の性能評価をおこなった結果を表2に示した。
(1)大腸菌に対する溶菌力、(2)タンパク質(セルラーゼ酵素、リパーゼ、コレステロールオキシダーゼ、グルコースイソメラーゼ、骨形成因子、エリスロポエチン、トリペプチド)の変性のされにくさの評価方法は以下の通りである。
<大腸菌に対する溶菌力の評価方法>
大腸菌(E−coli/K株)をLB培地中で37℃振とう培養し、OD600が2.5になるまでおこなった。この大腸菌懸濁液3mLを15mL容のプラスチック製遠心チューブに入れ、遠心分離器(トミー精工製「GRX−220」)で遠心分離(5000rpm、15分、4℃)し、上清を除去した。実施例1〜13及び比較例1〜7で製造したタンパク質抽出薬剤40μlを50mMPBSバッファー(pH=7.3、5mMのEDTAを含む)2mLで希釈し、遠心後のチューブ内に加えよく混合した。その後、20℃で30分振とうしたものを試料として、顕微鏡(オリンパス社製、TH4−100)で生菌数を測定した。あわせて、溶菌剤を加えないブランクの生菌数も、30分放置した大腸菌懸濁溶液を試料として測定した。
なお、実施例27〜29については、それぞれ実施例1、6、8のタンパク質抽出薬剤を加えて20℃で30分振とう後、リゾチーム水溶液(和光純薬製リゾチームを1.0mg/mLとなるように予めイオン交換水で溶解した水溶液)を2mL加えて常温でさらに1時間振とうをおこなった後に生菌数を測定した。
また、実施例30〜32については、それぞれ実施例1、6、8のタンパク質抽出薬剤を加えて20℃で30分振とう後、ホスホリパーゼA2水溶液(和光純薬製ホスホリパーゼA2を1.0mg/mLとなるように予めイオン交換水で溶解した水溶液)を2mL加えて常温でさらに1時間振とうをおこなった後に生菌数を測定した。
測定した結果から、溶菌力を以下の式で算出し、下記の判定基準で点数化した。
その結果を表2に示す。
なお、通常の溶菌時間としては、上記の評価方法において「20℃で30分振とう」の条件が、「20℃で1時間振とう」であり、本評価は短時間での溶菌力の評価である。
溶菌力(%)=[1−(30分後の試料中の生菌数/ブランクの生菌数)]×100
判定基準:
溶菌力:90%以上・・・・・・・・・5点
:80%以上、90%未満・・・4点
:60%以上、80%未満・・・3点
:40%以上、60%未満・・・2点
:40%未満・・・・・・・・・1点
<タンパク質の変性されにくさの評価方法>
(a)セルラーゼの場合
タンパク質の変性されにくさをセルラーゼ酵素の変性度として評価した。
2mlの遠心分離用チューブに、1重量%セチルメチルセルロース水分散液0.6mlと、50mMPBSバッファー(pH=7.3)で75倍(重量基準)に希釈した実施例1〜13又は比較例1〜7のタンパク質抽出薬剤の水性希釈液0.6mlと、セルラーゼ(ナガセ社製、セルライザーHT)の100ppm水溶液10μlとを加え、手振り混合した。
37℃で5分間静置後、遠心分離機(ベックマン社製Microfuge.11)で遠心分離(10,000rpm×3分)し、上層を分離して回収した。20ml試験管に、上層0.25ml、イオン交換水0.25ml及び5重量%フェノール水溶液0.5mlを入れて、混合した。
さらに95重量%濃硫酸を2.5ml加え、室温で10分間静置後、混合し、その後20分間20℃で静置して試料溶液を得た。この試料溶液の490nmにおける吸光度(セチルメチルセルロースが酵素で分解された生成物の吸収)を紫外可視分光光度計で測定した。ブランクには溶菌剤の代わりにイオン交換水0.6mlを用いた。
セルラーゼ(酵素)が変性されずに、活性が保たれて、セチルメチルセルロースが効率よく分解されている場合は、吸光度が大きくなる(ブランクに近い吸光度になる)。
タンパク質の変性されにくさは、以下の式で算出し、下記の判定基準で点数化した。
その結果を表2に示す。
なお、実施例27〜32については、それぞれ実施例1、6、8、1、6、8のタンパク質抽出薬剤を用いてタンパク質の変性されにくさを評価した結果を表2に記載した。
タンパク質の変性されにくさ(%)=(試料溶液の吸光度/ブランクの吸光度)×100
判定基準
タンパク質の変性されにくさ(%)が
90%以上・・・・・・・・・5点
70%以上、90%未満・・・4点
50%以上、70%未満・・・3点
30%以上、50%未満・・・2点
30%未満・・・・・・・・・1点
(b)リパーゼの場合
タンパク質の変性されにくさをリパーゼの変性度として評価した。
20mL容のスクリュー管に、リパーゼ(ナガセ社製、「リリパーゼ」)10mgを、イオン交換水で20倍に希釈した実施例1〜13又は比較例1〜7のタンパク質抽出薬剤10mLに添加し、溶解させ、1時間放置した。このリパーゼ溶液100μLを5mL容の試験管にはかりとり、50mMトリス緩衝液(pH=7.0)2mLを加え、さらに5μMのp−ニトロフェニルアセテート(和光純薬製)1mLを加えた。
この試料溶液の400nmにおける吸光度(トリニトロフェニルアセテートが酵素で分解された生成物の吸収)を紫外可視分光光度計で測定した。ブランクにはタンパク質抽出薬剤の代わりにイオン交換水を用いた。
リパーゼ(酵素)が変性されずに、活性が保たれて、p−ニトリフェニルアセテートが効率よく分解されている場合は、吸光度が大きくなる(ブランクに近い吸光度になる)。
タンパク質の変性されにくさは、以下の式で算出し、下記の判定基準で点数化した。
その結果を表2に示す。
なお、実施例27〜32については、それぞれ実施例1、6、8、1、6、8のタンパク質抽出薬剤を用いてタンパク質の変性されにくさを評価した結果を表2に記載した。
タンパク質の変性されにくさ(%)=(試料溶液の吸光度/ブランクの吸光度)×100
判定基準
タンパク質の変性されにくさ(%)が
90%以上・・・・・・・・・5点
70%以上、90%未満・・・4点
50%以上、70%未満・・・3点
30%以上、50%未満・・・2点
30%未満・・・・・・・・・1点
(c)コレステロールオキシダーゼの場合
タンパク質の変性されにくさをコレステロールオキシダーゼの変性度として評価した。
20mL容のスクリュー管に、コレステロールオキシダーゼ(和光純薬工業製)10mgを、イオン交換水で20倍に希釈した実施例1〜13又は比較例1〜7のタンパク質抽出薬剤10mLに添加し、溶解させ、1時間放置した。
一方、コール酸ナトリウム78mg、ノニルフェノールエチレンオキシド付加物{ユニオンカーバイドアンドプラスチック社製、商品名:トライトンX−100}9mg、アミノアンチピリン0.85mg、フェノール5.9mg、ペルオキシダーゼ{東洋紡社製}15units、コレステロール1.0mg及び50ミリモル/Lのリン酸緩衝液(pH=7.0)3mLを均一混合して、基質溶液を調製した。
ついで、酵素水溶液10μLを基質溶液3mLに加えて、測定液を得た。直ちに、この測定液について、30℃で、分光光度計(島津製作所製、UV−2550)で500nmにおける吸光度(B0)を測定し、さらに30℃で5分間放置後にもう一度、30℃で吸光度(B5)を測定し、これらの差(B5−B0)(ΔB)を算出した。
一方、タンパク質抽出薬剤をイオン交換水に変更したこと以外、上記と同様にして、吸光度の差(B5−B0)(ΔBb)を算出し、次式から酵素活性保持率を算出し、タンパク質の変性されにくさとして、下記判断基準で点数化した。
その結果を表2に示す。
なお、実施例27〜32については、それぞれ実施例1、6、8のタンパク質抽出薬剤を用いてタンパク質の変性されにくさを評価した結果を表2に記載した。
酵素活性保持率(%)=(ΔB/ΔBb) ×100
判定基準
酵素活性保持率(%)が
90%以上・・・・・・・・・5点
70%以上、90%未満・・・4点
50%以上、70%未満・・・3点
30%以上、50%未満・・・2点
30%未満・・・・・・・・・1点
(d)グルコースイソメラーゼの場合
タンパク質の変性されにくさをグルコースイソメラーゼの変性度として評価した。
20mL容のスクリュー管に、グルコースイソメラーゼ(和光純薬工業製)10mgを、イオン交換水で20倍に希釈した実施例1〜13又は比較例1〜7のタンパク質抽出薬剤10mLに添加し、溶解させ、1時間放置した。
グルコースイソメラーゼ溶液1mLを50mMトリエタノールアミンバッファー(10mM硫酸マグネシウム及び0.1Mキシロースを含有。pH=7.5)9mLに加え、35℃で3時間反応させた。反応開始直後の278nmにおける吸光度(B0)を測定し、さらに35℃で3時間放置後にもう一度、35℃で吸光度(B3)を測定し、これらの差(B3−B0)(ΔB)を算出した。異性化によりキシルロースが生成すると、278nmの吸収が増大する。
一方、タンパク質抽出薬剤をイオン交換水に変更したこと以外、上記と同様にして、吸光度の差(B3−B0)(ΔBb)を算出し、次式から酵素活性保持率を算出し、タンパク質の変性されにくさとして、下記判断基準で点数化した。
その結果を表2に示す。
なお、実施例27〜32については、それぞれ実施例1、6、8、1,6、8のタンパク質抽出薬剤を用いてタンパク質の変性されにくさを評価した結果を表2に記載した。
酵素活性保持率(%)=(ΔB/ΔBb) ×100
判定基準
酵素活性保持率(%)が
90%以上・・・・・・・・・5点
70%以上、90%未満・・・4点
50%以上、70%未満・・・3点
30%以上、50%未満・・・2点
30%未満・・・・・・・・・1点
(e)骨形成因子(BMP)の場合
タンパク質の変性されにくさを骨形成因子の活性として評価した。
骨形成因子(R&D社製「BMP−2」)10μgを、イオン交換水で20倍に希釈した実施例1〜13又は比較例1〜7のタンパク質抽出薬剤1mLに溶解させ、1時間放置した。その後、透析チューブ(分画分子量4000)で1晩放置し、タンパク質抽出薬剤を除去した。
骨形成因子(BMP)の活性測定は公知の方法(Biochem.Biophys.Res.Commun.172(1990)295−299)と同様に下記の通り行った。
C2C12細胞(ATCC品)を2mMのグルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、10重量%ウシ胎児血清を含むMEM培地(インビトロジェン社製)中で37℃、10重量%二酸化炭素条件下培養した。24穴プレートに1×105個のC2C12細胞を含む培地を注ぎ培養し、37℃、24時間後に骨形成因子溶液を含む新しい前述の培地(骨形成因子の濃度:0.001重量%)で培地交換した。4日後、細胞処理溶液(0.1Mのグリセロール、pH9.6、1重量%のNP−40、1mMの塩化マグネシウム、1mMの塩化亜鉛を含む)0.2mLをプレートに加え1時間静置した。静置後プレート上の抽出液50μLを0.3mMのp−ニトロフェニルフォスフェート(シグマ社製)を細胞処理溶液に溶解させた溶液150μLに加え、96穴プレートで37℃、放置した。マイクロリーダー(和光純薬工業製、サンライズサーモ)で加えた直後の405nmにおける吸光度(C0)を測定し、さらに37℃で30分間放置後にもう一度、37℃で吸光度(C30)を測定し、これらの差(C30−C0)(ΔC)を算出した。
一方、ブランクとして、タンパク質抽出薬剤をイオン交換水に変更したこと以外、上記と同様にして、吸光度の差(C30−C0)(ΔCb)を算出し、次式から活性保持率を算出し、タンパク質の変性されにくさとして、下記判断基準で点数化した。
その結果を表2に示す。
なお、実施例27〜32については、それぞれ実施例1、6、8、1、6、8のタンパク質抽出薬剤を用いてタンパク質の変性されにくさを評価した結果を表2に記載した。
活性保持率(%)=(ΔC/ΔCb) ×100
判定基準
活性保持率(%)が
90%以上・・・・・・・・・5点
70%以上、90%未満・・・4点
50%以上、70%未満・・・3点
30%以上、50%未満・・・2点
30%未満・・・・・・・・・1点
(f)エリスロポエチンの場合、
タンパク質の変性されにくさをエリスロポエチンの残存率として評価した。
エリスロポエチン 1500国際単位を、10mMリン酸バッファー(pH=6.0)で20倍希釈した実施例1〜13又は比較例1〜7のタンパク質抽出薬剤1mLに添加し、溶解させ、1日放置した。ブランクにはタンパク質抽出薬剤の代わりにイオン交換水を用いた。残存率の評価は、RP−HPLC分析法(WATERS社製)により算出した。
エリスロポエチンが変性されない場合は、ピーク面積が大きくなる(ブランクに近い面積になる)。
タンパク質の変性されにくさは、以下の式で算出し、下記の判定基準で点数化した。
その結果を表2に示す。
なお、実施例27〜32については、それぞれ実施例1、6、8、1、6、8のタンパク質抽出薬剤を用いてタンパク質の変性されにくさを評価した結果を表2に記載した。
タンパク質の変性されにくさ(%)=(試料溶液のピーク面積/ブランクのピーク面積)×100
判定基準
タンパク質の変性されにくさ(%)が
90%以上・・・・・・・・・5点
80%以上、90%未満・・・4点
70%以上、80%未満・・・3点
60%以上、70%未満・・・2点
60%未満・・・・・・・・・1点
(g)トリペプチドの場合、
タンパク質の変性されにくさをトリペプチドの変性度として評価した。
20mL容のスクリュー管に、メチオニン−リシン−メチオニン(和光純薬工業製)10mgを、イオン交換水で20倍に希釈した実施例1〜13又は比較例1〜7のタンパク質抽出薬剤10mLに添加し、溶解させ、1時間放置した。
ウミホタル−ルシフェリン誘導体(CLA)は一重項酸素(12・)、スーパーオキシドアニオン(-2・)を特異的に検出する有効な化学発光試薬であり、公知[Agric.Biol.Chem.,55,157−160(1991)]の方法によりスーパーオキシドジムスターゼ(SOD)を消光剤に用いた消光実験によりCLAと-2・との反応速度が求められ、この速度定数からタンパク質の変性されにくさを算出した。
CLA(C1311ON3、東京化成社製、最終濃度1.39×10-7〜4.64×10-8)溶液10μL、上記のトリペプチド溶液10μL、アルブミン(50mg/ml、シグマ化学社製)500μL、キサンチンオキシダーゼ(1.45unit/ml、シグマ化学社製)50μLを順に円筒方石英セル(内径14mm、高さ60mm)に入れ、ルミノメーター(Aloka BLR−102B型、浜松ホトニクス社製)の試料室内に移し、3mMヒポキサンチン溶液200μLを注入して、セル底面から化学発光を単一光量子計数により測定した。消光剤が存在する場合並びに存在しない場合の-2・の発光強度の比率(I0/I)はI0/I=1+[k3/(k1+k2〔CLA〕)]×[Q]で表される。ここでQは活性化酸素阻害剤を、k1-2・の消光速度定数、k2-2・とCLAとの反応速度定数、k3-2・とQとの反応速度定数を示す。なお[CLA]及び[Q]はそれぞれの濃度を表す。
活性化酸素フリーラジカル消去作用を示す活性化酸素阻害活性(消光速度)k3を、タンパク質抽出薬剤の代わりにイオン交換水を加える以外は上記と同様にしたブランクの活性化酸素阻害活性k3 0と比較した。タンパク質の変性されにくさは以下の式で算出し、下記の判定基準で点数化した。
その結果を表2に示す。
なお、実施例27〜32については、それぞれ実施例1、6、8、1、6、8のタンパク質抽出薬剤を用いてタンパク質の変性されにくさを評価した結果を表2に記載した。
タンパク質の変性されにくさ(%)=(k3/k3 0)×100
判定基準
タンパク質の変性されにくさ(%)が
90%以上・・・・・・・・・5点
80%以上、90%未満・・・4点
70%以上、80%未満・・・3点
60%以上、70%未満・・・2点
60%未満・・・・・・・・・1点
Figure 2010154851
表2の大腸菌に対する溶菌力の評価結果及びタンパク質の変性されにくさの評価結果より、従来のタンパク質抽出薬剤は比較例1のように溶菌力が高いタンパク質抽出薬剤はタンパク質を変性させやすく、比較例2及び比較例3のようにタンパク質の変性が少ない溶菌剤は十分に溶菌できない。比較例と比較して、本発明の実施例は、溶菌力に優れ、かつタンパク質を変性させにくいことがわかる。さらに実施例27〜32のように加水分解酵素を併用するとさらに溶菌力が向上することがわかる。
なお、比較例11、12(比較例4、5のタンパク質抽出薬剤)の結果から、溶菌性とタンパク質の変性されにくさは、界面活性剤(A)単独の使用では十分な効果が得られず、本発明の(A)と特定の非イオン性界面活性剤(B)を併用して初めて得ることができることがわかる。
本発明のタンパク質抽出薬剤及びタンパク質の生産方法は、タンパク質等の有用物質を生産菌から抽出する工程において使用できる。タンパク質としては酵素、組換えタンパク質及びペプチド挙げられる。

Claims (7)

  1. 微生物からタンパク質を抽出する薬剤であって、対イオンがカルボキシレートアニオン(a)であるカチオン性界面活性剤(A)とHLB値が9〜13.5である非イオン性界面活性剤(B)とを含むタンパク質抽出薬剤。
  2. カチオン性界面活性剤(A)と非イオン性界面活性剤(B)の重量比{(A)の重量/(B)の重量}が、0.01〜100である請求項1に記載のタンパク質抽出薬剤。
  3. 非イオン性界面活性剤(B)が高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物及び脂肪酸アルキレンオキサイド付加物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載のタンパク質抽出薬剤。
  4. タンパク質が酵素である請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質抽出薬剤。
  5. 微生物からタンパク質を抽出する工程において、請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質抽出薬剤を使用するタンパク質の製造方法。
  6. 微生物からタンパク質を抽出する工程において、タンパク質抽出薬剤を使用した後にさらに加水分解酵素を使用する請求項5に記載のタンパク質の製造方法。
  7. 加水分解酵素がリゾチームである請求項6に記載のタンパク質の製造方法。
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