JP2010150766A - 建材 - Google Patents

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Abstract

【課題】建材基体(特に有機基材)に対する浸食を防止しながら、耐候性、有害ガス分解性、カビや藻の繁殖抑制および所望の各種被膜特性(紫外線吸収性、透明性、膜強度等)に優れた建材を提供すること。
【解決手段】建材基体と、該建材基体上に設けられた光触媒層とを備えた建材であって、光触媒層が、光触媒粒子と、無機酸化物粒子と、イオン状態の銅と、イオン状態の銀とを、具備してなる、建材。
【選択図】なし

Description

本発明は、外装材の用途に特に適した、耐候性、有害ガス分解性、カビや藻の繁殖抑制および各種被膜特性に優れた建材に関する。
酸化チタンなどの光触媒が、建築物の外装材など多くの用途において近年利用されている。光触媒の利用により、光エネルギーを利用して種々の有害物質を分解したり、あるいは、光触媒が塗布された基材表面を親水化して表面に付着した汚れを容易に水で洗い流すことが可能となる。このような光触媒を塗布した光触媒を塗装した建材等を得る技術としては、以下のものが知られている。
光触媒性金属酸化物粒子と、コロイダルシリカと、界面活性剤とを含有する水性分散液を用いて、合成樹脂等の表面に親水性を付与する技術が知られている(特許文献1(特開平11−140432号公報)参照)。この技術にあっては、界面活性剤を10〜25重量%と多量に含有させることにより親水性を強化している。また、膜厚を0.4μm以下とすることで光の乱反射による白濁を防止している。
バインダー成分としてのシリカゾルと光触媒性二酸化チタンとを含有する塗膜を基体に形成して光触媒体を得る技術も知られている(特許文献2(特開平11−169727号公報)参照)。この技術にあっては、シリカゾルの添加量がSiO基準で二酸化チタンに対して20〜200重量部であるとされており、二酸化チタンの含有比率が高い。また、シリカゾルの粒径も0.1〜10nmと小さい。
光触媒塗料を用いて波長500nmの光を50%以上透過させ、かつ、320nmの光を80%以上遮断すること光触媒塗膜を形成する技術も知られている(特許文献3(特開2004−359902号公報)参照)。この技術にあっては、光触媒塗料のバインダーとしてオルガノシロキサン部分加水分解物が用いられており、その配合量は塗料組成物全体の5〜40重量%が好ましいとされている。
光触媒層に金属銀および金属銅またはそれらのイオンを添加し消臭、抗菌、防カビ機能を付与する技術が知られている(特許文献4(特許第3559892号公報)参照)。
光触媒層に銀、銅、亜鉛、白金などを添加し光触媒活性を高める技術が知られている(特許文献5(特開平11−169726号公報)参照)、(特許文献6(国際公開第00/06300号パンフレット)参照)。
ところで、光触媒層の基材を有機材料で構成すると、光触媒の光触媒活性により有機材料が分解あるいは劣化されるという問題が従来から知られている。この問題に対処するため、光触媒層と担体との間にシリコン変性樹脂等の接着層を設けることで、下地の担体を光触媒作用による劣化から保護する技術が知られている(特許文献7(国際公開第97/00134号パンフレット)参照)。
特開平11−140432号公報 特開平11−169727号公報 特開2004−359902号公報 特許第3559892号公報 特開平11−169726号公報 国際公開第00/06300号パンフレット 国際公開第97/00134号パンフレット
本発明者らは、今般、光触媒粒子と無機酸化物粒子とイオン状態の銅とイオン状態の銀とから光触媒層を構成することにより、建材基体(特に有機基材)への浸食を抑制しながら、耐候性、有害ガス分解性、カビや藻の繁殖抑制および所望の各種被膜特性(紫外線吸収性、透明性、膜強度等)に優れた建材が得られるとの知見を得た。
したがって、本発明の目的は、建材基体(特に有機基材)に対する浸食を防止しながら、耐候性、有害ガス分解性、カビや藻の繁殖抑制および所望の各種被膜特性(紫外線吸収性、透明性、膜強度等)に優れた建材を提供することにある。
すなわち、本発明による建材は、建材基体と、該建材基体上に設けられた光触媒層とを備えた建材であって、前記光触媒層が、光触媒粒子と、無機酸化物粒子と、イオン状態の銅と、イオン状態の銀とを、具備してなる。
建材
本発明による建材は、建材基体と、該建材基体上に設けられた光触媒層とを備えた建材であって、前記光触媒層が、光触媒粒子と、無機酸化物粒子と、イオン状態の銅と、イオン状態の銀とを、具備してなる。この構成により、建材基体(特に有機基材)に対する浸食を防止しながら、耐候性、有害ガス分解性、カビや藻の繁殖抑制および所望の各種被膜特性(紫外線吸収性、透明性、膜強度等)に優れた建材を得ることが可能となる。
これらの幾つもの優れた効果が同時に実現される理由は定かではないが、以下のようなものではないかと考えられる。ただし、以下の説明はあくまで仮説にすぎず、本発明は何ら以下の仮説によって限定されるものではない。
光触媒と銅化合物と銀化合物が共存した状況で適当量の紫外線が照射された場合、抗カビ性に直接作用するのは光触媒とイオン状態の銅であると考えられる。すなわち、光触媒にイオン状態の銅が加わることで、光触媒の光励起反応で生成する正孔と電子の再結合確率を減少させて光触媒に基づく防カビ効果が高まるとともにイオン状態の銅固有の防カビ効果が重なって優れた防カビ効果を発揮する。これにイオン状態の銀が加わると、銀が光触媒によって発生した電子によって還元されるために電荷分離効率がより向上し、さらに防カビ効果が高まるものと考えられる。
上記光触媒とイオン状態の銅とイオン状態の銀との3者共存により、光触媒量を低めても有効な防カビ効果が発揮される。従って、上記組成系の光触媒層では、防カビ効果を発揮しつつ、建材基体(特に有機基材)に対する浸食防止や耐候性向上を同時に発揮可能となる。
さらに、光触媒粒子は、光触媒粒子および無機酸化物粒子の二種類の粒子から基本的に構成されるため、粒子間の隙間が豊富に存在する。光触媒層のバインダーとして広く用いられる加水分解性シリコーンやチタンアルコキシドを多量に使用した場合や、界面活性剤を多量に使用した場合には、そのような粒子間の隙間を緻密に埋めてしまうため、ガスの拡散を妨げるものと考えられる。
光触媒層は、しかし、本発明の光触媒層は、(1)加水分解性シリコーンの重合物を含まないか、含むとしても光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンの重合物の合計量100質量部に対してシリカ換算量で10質量部未満とする、(2)チタンアルコキシドの重合物を含まないか、含むとしても光触媒粒子、無機酸化物粒子、およびチタンアルコキシドの重合物の合計量100質量部に対して二酸化チタン換算量で10質量部未満とする、(3)界面活性剤の重合物を含まないか、含むとしても光触媒粒子、無機酸化物粒子、および界面活性剤の重合物の合計量100質量部に対して10質量部未満とする、(4)より好適には、加水分解性シリコーンの重合物、チタンアルコキシドの重合物、界面活性剤を含まないか、含むとしても光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンの重合物の合計量100質量部に対して10質量部未満とする(但し、加水分解性シリコーンの重合物はシリカ換算量、チタンアルコキシドの重合物は二酸化チタン換算量とする)、ようにしているため、粒子間の隙間を十分に確保することができると考えられる。そして、そのような隙間によってNOxやSOx等の有害ガスが光触媒層中に拡散しやすい構造が実現され、その結果、有害ガスが光触媒粒子と効率良く接触して光触媒活性により分解されるのでないかと考えられる。
上記のように、光触媒層中の粒子間の隙間を十分に確保し、通気性を有するようにさせることで、光触媒量を低めても有効な光触媒による気体(例えば、NOxやSOx等の有害ガス)分解効果が発揮される。従って、上記組成系の光触媒層では、防カビ効果および光触媒による気体(例えば、NOxやSOx等の有害ガス)分解効果を発揮しつつ、建材基体(特に有機基材)に対する浸食防止や耐候性向上を同時に発揮可能となる。
ここで、光触媒層中の光触媒量は、好ましくは1質量%以上20質量%未満であり、より好ましくは1質量%以上15質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以上5質量%以下である。このように光触媒粒子の配合割合を少なくすることで、光触媒粒子の建材基体との直接的な接触をできるだけ少なくして、建材基体(特に有機材料)に対する浸食を防止することができ、耐候性も向上すると考えられる。それにもかかわらず、有害ガス分解性や紫外線吸収性といった光触媒活性に起因する機能も十分に発揮させることができる。
本発明の好ましい態様によれば、光触媒粒子が10nm以上100nm以下の平均粒径を有するのが好ましく、より好ましくは10nm以上60nm以下である。この範囲にある光触媒粒子は結晶性が良くかつ比表面積も高いので光触媒の分解活性が高く、光触媒層中のイオン状態の銀やイオン状態の銅イオンとの相互作用も高まるため、有害ガス分解性も高まるが防カビ性が本発明の組成系では特に高まる。なお、この平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては真球が最も好ましいが、略円形や楕円形でも好ましく、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。この範囲内であると、耐候性、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(紫外線吸収性、透明性、膜強度等)が効率良く発揮される。
また、光触媒層中に存在するイオン状態の銀およびイオン状態の銅は、(1)光触媒層中に金属化合物として存在させるか、(2)光触媒粒子に担持させる。好ましくは、光触媒層中に金属化合物として存在させるほうが長期に亘りイオンが金属化されにくく好ましい。なお、銅イオンの価数は+1価でも+2価でもよい。
光触媒層中に存在するイオン状態の銀およびイオン状態の銅の配合量は、各々AgO、およびCuOに換算して、AgO/CuOとして質量比で0/100<[AgO/CuO]<50/50が好ましく、より好ましくは10/90<[AgO/CuO]<50/50である。このように銅イオンが多い状態で銀イオンが添加されることで、より優れた防カビ効果が発揮される。
また、光触媒層中の光触媒粒子に対するイオン状態の銀およびイオン状態の銅の配合量は、AgOおよびCuOに換算した合計量が光触媒粒子に対して0.5質量%を超え5質量%以下添加されたものが好ましい。0.5質量%を超えることで紫外線などの光触媒を励起可能な光の照射下で、抗カビ性や防藻性が極めて良好な光触媒層を得ることができる。
また、5質量%以下であることで光触媒層の着色等の他の問題が生じにくくなる。
本発明の好ましい態様によれば、光触媒層中における無機酸化物粒子の含有量は、70質量%を超え99質量%以下であり、好ましくは80質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは85質量%以上95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上95質量%以下である。
このように多量に無機酸化物粒子を光触媒層中に存在させることで、光触媒層中の光触媒粒子量を相対的に減少させて建材基体(特に有機基材)に対する浸食防止や耐候性向上を図ることができる。それと同時に、光触媒層中にの粒子間の隙間を十分に確保し通気性を有するようにさせることができ、光触媒量を低めても有効な光触媒による気体(例えば、NOxやSOx等の有害ガス)分解効果が発揮可能となる。従って、上記組成系の光触媒層では、防カビ効果および光触媒による気体(例えば、NOxやSOx等の有害ガス)分解効果を発揮しつつ、建材基体(特に有機基材)に対する浸食防止や耐候性向上を同時に発揮可能となる。
本発明の好ましい態様によれば、前記無機酸化物粒子が5nmを超え40nm未満、より好ましくは5nmを超え40nm未満の平均粒径を有し、さらに好ましくは10nm以上40nm未満である。なお、この平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては真球が最も好ましいが、略円形や楕円形でも好ましく、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。この範囲内であると、耐候性、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(紫外線吸収性、透明性、膜強度等)が効率良く発揮されるとともに、透明で密着性が良好な光触媒層を得ることができる。
本発明に用いる光触媒粒子は、光触媒活性を有する粒子であれば特に限定されず、あらゆる種類の光触媒の粒子が使用可能である。光触媒粒子の例としては、酸化チタン(TiO)、ZnO、SnO、SrTiO、WO、Bi、Feのような金属酸化物の粒子が挙げられ、好ましくは酸化チタン粒子、より好ましくはアナターゼ型酸化チタン粒子である。酸化チタンは、無害で、化学的にも安定で、かつ、安価に入手可能である。また、酸化チタンはバンドギャップエネルギーが高く、従って、光励起には紫外線を必要とし、光励起の過程で可視光を吸収しないので、補色成分による発色が起こらない。酸化チタンは、粉末状、ゾル状、溶液状など様々な形態で入手可能であるが、光触媒活性を示すものであれば、いずれの形態でも使用可能である。
本発明の好ましい態様によれば、光触媒層は0.5μm以上3μm以下の膜厚を有するのが好ましく、より好ましくは1.0μm以上2.0μm以下である。このような範囲内であると、光触媒層と建材基体の界面に到達する紫外線が充分に減衰されるので耐候性が向上する。また、無機酸化物粒子よりも含有比率が低い光触媒粒子を膜厚方向に増加させることができるので、有害ガス分解性も向上する。さらには、紫外線吸収性、透明性、膜強度においても優れた特性が得られる。
本発明に用いる無機酸化物粒子は、光触媒粒子と共に層を形成可能な無機酸化物の粒子であれば特に限定されず、あらゆる種類の無機酸化物の粒子が使用可能である。そのような無機酸化物粒子の例としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、イットリア、マグネシア、カルシア、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化ニオブ、酸化錫、ハフニア等の単一酸化物の粒子;およびチタン酸バリウム、ケイ酸カルシウム等の複合酸化物の粒子が挙げられ、より好ましくはシリカ粒子である。
本発明の光触媒層は加水分解性シリコーンの重合物を実質的に含まないのが好ましく、より好ましくは全く含まない。加水分解性シリコーンとは、アルコキシ基を有するオルガノシロキサンおよび/またはその部分加水分解縮合物の総称である。しかしながら、本発明の有害ガス分解性を確保できる程度であれば加水分解性シリコーンの重合物を任意成分として含有することは許容される。すなわち、光触媒層中における加水分解性シリコーンの重合物の含有量は、0質量部%以上10質量部%未満であり、好ましくは0質量部%以上5質量部%以下であり、最も好ましくは約0質量%である。
加水分解性シリコーンは、アルコキシ基、ハロゲン基、水素基の群から選ばれる少なくとも1種の反応基を有するオルガノシロキサンであるのが好ましい。
これらの加水分解性シリコーンは常温乾燥又は10℃以上500℃以下の熱処理により脱水縮重合反応を生じて硬化し、硬質な加水分解性シリコーンの乾燥物となるので、の耐摩耗性を向上できる。
加水分解性シリコーンには、そのモノマー単位として2官能性シラン、3官能性シラン、4官能性シランを単独又は組合わせて重合させ、その末端に反応基を有するシリコーン(オリゴマー、ポリマー)が好適に利用可能であるが、とりわけ、4官能性シラン単位(SiX、Xはアルコキシ基、ハロゲン基、水素基の群から選ばれる少なくとも1種の反応基)のみを重合させたシリケート(以下、4官能性シリコーンという)が最も好ましい。4官能性シリコーンを利用すると光触媒層の親水性が良好となり、セルフクリーニング性が同時に発揮されるので好ましい。4官能性シリコーンとしては、メチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート等のアルキルシリケートが好適に利用できる。
本発明の光触媒層はチタンアルコキシドの重合物を実質的に含まないのが好ましく、より好ましくは全く含まない。しかしながら、本発明の有害ガス分解性を確保できる程度であればチタンアルコキシドの重合物を任意成分として含有することは許容される。すなわち、光触媒層中におけるチタンアルコキシドの重合物の含有量は、0質量部%以上10質量部%未満であり、好ましくは0質量部%以上5質量部%以下であり、最も好ましくは約0質量%である。
光触媒層中には任意成分として界面活性剤を含んでもよい。光触媒層中における界面活性剤は、0質量%以上10質量%未満光触媒層に含有されていてもよく、好ましくは0質量%以上8質量%以下であり、より好ましくは0質量%以上6質量%以下である。界面活性剤の効果の1つとして建材基体へのレベリング性があり、大面積の塗装などこのレべリング効果が必要な用途の場合には、コーティング液と建材基体との組合せによって界面活性剤の量を先述の範囲内で適宜決めれば良いが、その際の光触媒中における下限値は0.1質量%とされるのが好ましい。この界面活性剤は光触媒コーティング液の濡れ性を改善するために有効な成分であるが、塗布、乾燥後に形成される光触媒層にあってはもはや本発明の建材の効果には寄与しない不可避不純物に相当するので、光触媒中における上限値は10質量%未満、好ましくは8質量%未満、より好ましくは6質量%以下とするのがよい。すなわち、界面活性剤は光触媒コーティング液に要求される濡れ性に応じて、上記含有量範囲内において使用されてよく、濡れ性を問題にしない用途であれば界面活性剤は実質的にあるいは一切含まない(0質量%)のが最も好ましい。使用すべき界面活性剤は、光触媒や無機酸化物粒子の分散安定性、中間層上に塗布した際の濡れ性を勘案し非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤の中から適宜選択されることができるが、非イオン性界面活性剤がその中で特に好ましく、より好ましくは、その中でエーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤、ポリアルキレングリコール非イオン性界面活性剤、フッ素系非イオン性界面活性剤、シリコン系非イオン性界面活性剤である。
本発明に用いる建材基体は、その上に光触媒層を形成可能な材料であれば無機材料、有機材料を問わず種々の材料であってよく、その形状も限定されない。建材基体の好ましい例としては、アルミニウム、ステンレス、鉄鋼等の金属、セラミック、ガラス、プラスチック、ゴム、石、セメント、コンクリ−ト、繊維、布帛、木、紙、レンガ、施釉タイル、無釉タイル、結晶化ガラス、ガラスブロック、軽量気泡コンクリート板、石綿セメント、ケイ酸カルシウム板、鉄筋コンクリート板、スレート板、石膏ボード板;化粧板、塗装板等のそれらの組合せ、積層鋼板等のそれらの積層体、それらの表面に少なくとも一層の被膜を有するものが挙げられる。建材としては、内装用途でも外装用途でも利用可能であるが、太陽光を有効に利用できることから外装用途に特に好適である。
本発明の好ましい態様によれば、建材基体として、少なくともその表面が有機材料で形成された建材基体を用いることができ、建材基体全体が有機材料で構成されているもの、無機材料で構成された建材基体の表面が有機材料で被覆されたもの(例えば化粧板)のいずれをも包含する。本発明の光触媒層によれば、光触媒活性により損傷を受けやすい有機材料に対しても浸食しにくいことから、中間層を介在させることなく、光触媒層という一つの層で優れた機能を有する建材を製造することができる。その結果、中間層の形成が不要となる分、建材の製造に要する時間やコストを削減できる。
建材基体と光触媒層との間に中間層を備えてなるようにするのも好ましい。特に中間層として耐候性に優れる物質を用いれば、建材基体が樹脂の場合の耐候性を増加させることができる。耐候性に優れる物質としては、シリコーン含有樹脂、フッ素含有樹脂が特に好ましい。また、中間層に可撓性に優れる物質を用いれば、建材基体に凹凸がある場合でも使用時のクラック等による外観不良が生じにくく好ましい。中間層に可撓性に優れる物質としては、二重鎖構造を含む樹脂、環状構造を含む樹脂、2官能性のモノマー単位を含むシリコーン、有機架橋と無機架橋の双方を含むシリコーンが特に好ましい。
中間層はシリコーン変性樹脂を含んでなるのが好ましく、より好ましくは中間層はアクリルシリコーンを含んでなるのが好ましい。
そうすることで、中間層の耐候性、光触媒反応に対する耐久性、可撓性等を充分に発揮することができる。
中間層は紫外線吸収剤を含んでなるのが好ましい。そうすることで、建材基体の耐候性、光触媒反応に対する耐久性を一層増すことができる。
中間層は有機防カビ剤を含んでなるのが好ましい。光触媒層とは別の中間層に有機防カビ剤を含み、かつ、光触媒層の粒子間に隙間が設けられていることで、光触媒による防藻、防カビ機能と、有機防カビ剤による防藻、防カビ機能とを互いに損なうことなく有効に発揮できる。
コーティング液
本発明による光触媒コーティング液は、上記建材を作製するためのコーティング液であって、溶媒と、光触媒粒子と、無機酸化物粒子と、銅化合物と、銀化合物とを、具備してなる。その作用効果は上述してきた通りであり、各構成成分の好ましい態様も基本的には上述してきた通りである。
ここで、溶媒としては、上記構成成分を適切に分散可能なあらゆる溶媒が使用可能であり、水および/または有機溶媒であってよいが、環境に与える影響から水が特に好ましい。また、本発明の光触媒コーティング液の固形分濃度は特に限定されないが、1〜20質量%とするのが塗布し易い点で好ましい。なお、光触媒コーティング組成物中の構成成分の分析は、コーティング液を限外ろ過によって粒子成分と濾液に分離し、それぞれを赤外分光分析、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、蛍光X線分光分析などで分析し、スペクトルを解析することによって評価することができる。
また、光触媒粒子としては、上記「建材」の項で述べてきた粒子が利用可能である。すなわち、光触媒粒子の例としては、酸化チタン(TiO)、ZnO、SnO、SrTiO、WO、Bi、Feのような金属酸化物の粒子が挙げられ、好ましくは酸化チタン粒子、より好ましくはアナターゼ型酸化チタン粒子である。その好ましい配合量は、コーティング液中の固形分に対して1質量%以上20質量%未満であり、より好ましくは1質量%以上15質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以上5質量%以下である。また、光触媒粒子の好ましい平均粒径は、10nm以上100nm以下であり、より好ましくは10nm以上60nm以下である。
また、無機酸化物粒子としては、上記「建材」の項で述べてきた粒子が利用可能である。すなわち、無機酸化物粒子の例としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、イットリア、マグネシア、カルシア、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化ニオブ、酸化錫、ハフニア等の単一酸化物の粒子;およびチタン酸バリウム、ケイ酸カルシウム等の複合酸化物の粒子が挙げられ、より好ましくはシリカ粒子である。コーティング液中の固形分に対して無機酸化物粒子の含有量は、70質量%を超え99質量%以下であり、好ましくは80質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは85質量%以上95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上95質量%以下である。また、前記無機酸化物粒子の平均粒径は5nmを超え40nm未満が好ましく、より好ましくは5nmを超え40nm未満の平均粒径を有し、さらに好ましくは10nm以上40nm未満である。これら無機酸化物粒子は、水を分散媒とした水性コロイド;またはエチルアルコール、イソプロピルアルコール、もしくはエチレングリコールなどの親水性溶媒にコロイド状に分散させたオルガノゾルの形態であるのが好ましく、特に好ましくはコロイダルシリカである。
銅化合物および銀化合物としては、上記「建材」の項で述べてきた配合等が利用可能である。銅化合物および銀化合物には、銅含有錯体、銀含有錯体、銅のアミン化合物、銀のアミン化合物、銅のヒドロキシ化合物、銀のヒドロキシ化合物、銅のカルボキシ化合物、銀のカルボキシ化合物、銅の有機酸化合物、銀の有機酸化合物、銀および銅の錯体、銀および銅のアミン化合物、銀および銅のヒドロキシ化合物、銀および銅のカルボキシ化合物、銀および銅の有機酸化合物等が好適に利用できる。銅イオンの価数は+1価でも+2価でもよい。光触媒層中に存在するイオン状態の銀およびイオン状態の銅の配合量は、各々AgO、およびCuOに換算して、AgO/CuOとして質量比で0/100<[AgO/CuO]<50/50が好ましく、より好ましくは10/90<[AgO/CuO]<50/50である。光触媒粒子に対するイオン状態の銀およびイオン状態の銅の配合量は、AgOおよびCuOに換算した合計量が光触媒粒子に対して0.5質量%を超え5質量%以下添加されたものが好ましい。
その他の任意成分としては、加水分解性シリコーン、チタンアルコキシド、界面活性剤を光触媒コーティング液に添加できる。
加水分解性シリコーンは光触媒コーティング液中の固形分におけるシリカ換算量として0質量%以上10質量%未満含有させることが好ましい。より好ましくは0質量部%以上5質量部%以下であり、最も好ましくは約0質量%である。
チタンアルコキシドは光触媒コーティング液中の固形分における二酸化チタン換算量として0質量%以上10質量%未満含有させることが好ましい。より好ましくは0質量部%以上5質量部%以下であり、最も好ましくは約0質量%である。
界面活性剤を、前記光触媒コーティング液中の固形分に対して0質量%以上10質量%未満含有させることが好ましい。より好ましくは0質量部%以上8質量部%以下であり、さらに好ましくは0質量部%以上6質量部%以下であり、最も好ましくは約0質量%である。
さらに、光触媒コーティング液中には、任意成分として加水分解性シリコーン、チタンアルコキシド、界面活性剤の群から選ばれる1種以上を含み、かつその合計含有率が前記光触媒コーティング液中の固形分に対して0質量%以上10質量%未満、より好ましくは0質量部%以上5質量部%以下、最も好ましくは約0質量%(但し、前記加水分解性シリコーンはシリカ換算量、前記チタンアルコキシドは二酸化チタン換算量とする)であるようにするとさらに好ましい。
建材の製造方法
本発明の建材は、本発明の光触媒コーティング液を建材基体上に塗布することにより簡単に製造することができる。光触媒層の塗装方法は、前記液剤を刷毛塗り、ローラー、スプレー、ロールコーター、フローコーター、ディップコート、流し塗り、スクリーン印刷、電着、蒸着等、一般に広く行われている方法を利用できる。コーティング液の建材基体への塗布後は、常温乾燥させればよく、あるいは必要に応じて加熱乾燥してもよいが、焼結が進むまで加熱すると粒子間の空隙が減少し十分な光触媒活性を得ることができなくなる。本発明において、乾燥温度は10℃以上500℃以下であり、建材基体の種類に応じて上限値は適宜設定されて良い。建材基体の少なくとも一部に樹脂が含まれる場合、樹脂の耐熱温度等を考慮して好ましい乾燥温度は10℃以上200℃以下である。このように本発明の建材は、本発明の光触媒層によれば、光触媒活性により損傷を受けやすい有機材料に対しても浸食しにくいことから、中間層を介在させることなく、光触媒層という一つの層で優れた機能を有する建材を製造することができる。その結果、中間層の形成が不要となる分、建材の製造に要する時間やコストを削減できる。
<実施例A>
本発明を以下の例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
なお、以下の例において光触媒コーティング液の作製に使用した原料は以下の通りである。
光触媒粒子
・チタニア水分散体(平均粒径:42nm、塩基性)(例1〜11、例14〜28、例34で使用)
・Ag・Cu含有チタニア水分散体:銀化合物および銅化合物を、AgOおよびCuOに換算した合計量がチタニアに対して下記質量%で添加された光触媒性チタニア水分散体(平均粒径:48nm、塩基性、)
・0.5質量%(例29〜33、例35で使用)
・3質量%(例12〜13、例36、例38、39で使用)
・5質量%(例37で使用)
無機酸化物粒子
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:26nm、塩基性)(例1〜21、例23、例25〜39で使用)
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:14nm、塩基性)(例22で使用)
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:5nm、塩基性)(例24で使用)
加水分解性シリコーン
・テトラメトキシシランの重縮合物(SiO換算濃度:51質量%。溶媒:メタノール、水)
界面活性剤
・ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤
例1〜7:耐候性の評価(参考)
光触媒層を備えた建材を以下の通り製造した。まず、建材基体として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、フロート板ガラス上にカーボンブラック粉末を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤とを表1に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ50℃に加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で5分乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、建材を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例1〜7のいずれの例においても約0.5μmであった。
こうして得られた50×100mmの大きさの建材について、以下の通り耐候性試験を行った。建材をJIS B7753に規定されるサンシャインウエザオメーター(スガ試験機製、S−300C)に投入した。300hr経過後に試験片を取り出し、日本電色製の測色差計ZE2000にて、促進試験前後で色差を測定し、そのΔb値を比較することで変色の度合いを評価した。
得られた結果は表1に示される通りであった。ここで、表中のGはほとんど変色しなかったことを、NGはΔb値がプラス側(黄変側)に推移したことを表す。表1に示されるように、光触媒層中の光触媒の含有量を20質量部未満にすることによって、有機基材上に光触媒層を塗装しても充分な耐候性を有することが分かった。
Figure 2010150766
例8〜11:有害ガス分解性の評価(参考)
光触媒層を備えた建材を以下の通り製造した。まず、建材基体として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、フロート板ガラス上にカーボンブラック粉末を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤と、加水分解性シリコーンとしてのテトラメトキシシランの重縮合物とを表2に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、例8および例10の光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ50℃に加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で5分乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、建材を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚(μm)を測定したところ、いずれの例においても約1μmであった。
こうして得られた50×100mmの大きさの建材について、以下の通りガス分解性試験を行った。建材に前処理として1mW/cmのBLB光で12hr以上照射した。JIS R1701に記載の反応容器内に塗装体サンプルを1枚セットした。25℃、50%RHに調整した空気に約1000ppbになるようにNOガスを混合し、遮光した反応容器内に20分導入した。その後ガスを導入したままで3mW/cmに調整したBLB光を20分間照射した。その後ガスを導入した状態で再度反応容器を遮光した。NOx除去量は、BLB光照射前後でのNO、NO濃度から下記の式に従って計算した。
NOx除去量=[NO(照射後)−NO(照射時)]−[NO(照射時)−NO(照射後)]
得られた結果は表2に示される通りであった。ここで、表中のGはNOx除去量が400ppb以上、NGはNOx除去量が10ppb以下を表す。表2に示されるように、光触媒層を光触媒粒子と無機酸化物から構成し、実質的に加水分解性シリコーンを含まないことにより、良好なNOx分解性を示した。一方、加水分解性シリコーンが10質量部入ったものはNOx分解性が喪失していることが分かった。
Figure 2010150766
例12〜21:直線透過率および紫外線遮蔽率の測定
光触媒層を備えた建材を以下の通り製造した。まず、建材基体として550nmの波長の透過率が94%のフロート板ガラスを用意した。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、光触媒粒子および無機酸化物粒子の合計量100質量部に対して6質量部のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤とを表3に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。なお、光触媒は例12、13においてはAg・Cu含有チタニア水分散体を、例14〜21においては銀化合物および銅化合物を含まないチタニア水分散体を使用した。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ50℃に加熱した上記フロート板ガラス上にスプレー塗布し、120℃で5分乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、建材を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚(μm)を測定したところ、表3に示される値であった。
こうして得られた50×100mmの大きさの建材について、以下の通り直線(550nm)透過率および紫外線(300nm)遮蔽率の測定を紫外・可視・近赤外分光光度計(島津製作所製 UV−3150)を用いて行った。
得られた結果は表3に示される通りであった。ここで、直線透過率および紫外線遮蔽率の評価基準は以下の通りとした。
<直線透過率>
A:直線(550nm)透過率が97%以上
B:直線(550nm)透過率が95%以上97%未満
<紫外線遮蔽率>
a:紫外線(300nm)遮蔽率が80%以上
b:紫外線(300nm)遮蔽率が30%以上80%未満
c:紫外線(300nm)遮蔽率が30%未満
表3に示されるように、光触媒層中の光触媒の含有量が5質量部〜15質量部では膜厚を3μm以下にすることで光触媒にAg・Cu含有チタニア水分散体を使用しても、有機物の劣化に起因する紫外線を十分に遮蔽し、かつ透明性も確保できることが分かった。
Figure 2010150766
例22〜24:ヘイズの測定(参考)
光触媒層を備えた建材を以下の通り製造した。まず、建材基体として550nmの波長の透過率が94%のフロート板ガラスを用いた。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、表4に示される各種平均粒径の無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤とを表4に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。したがって、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液を先述の建材基体上に1000rpmで10秒間スピンコートし、120℃で5分乾燥し光触媒層を得た。こうして得られた50×100mmの大きさの建材のヘイズをヘイズ計(Gardner製 haze−gard plus)を用いて測定した。
得られた結果は表4に示される通りであった。表4に示されるように、例22、23の建材は、ヘイズ値を1%未満に抑えることができ透明性が確保できることが分かった。
Figure 2010150766
例25〜28:界面活性剤の添加による影響の評価(参考)
光触媒層を備えた建材を以下の通り製造した。まず、建材基体として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、フロート板ガラス上にカーボンブラック粉末を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤とを表5に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ50〜60℃に加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で5分乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、建材を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚(μm)を測定したところ、例25〜28のいずれの例においても約1μmであった。
こうして得られた50×100mmの大きさの建材について、以下の通りガス分解性試験を行った。光触媒体に前処理として1mW/cmのBLB光で12hr以上照射した。JIS R1701に記載の反応容器内に塗装体サンプルを1枚セットした。25℃、50%RHに調整した空気に約1000ppbになるようにNOガスを混合し、遮光した反応容器内に20分導入した。その後ガスを導入したままで3mW/cmに調整したBLB光を20分間照射した。その後ガスを導入した状態で再度反応容器を遮光した。NOx除去量は、BLB光照射前後でのNO、NO濃度から下記の式に従って計算した。
NOx除去量=[NO(照射後)−NO(照射時)]−[NO(照射時)−NO(照射後)]
得られた結果は表5に示される通りであった。ここで、表中のNOx除去率とは例26の除去量を100として相対的に示している。表5に示されるように、界面活性剤の添加量を多くすることで除去率が低下することが分かった。
Figure 2010150766
例29〜34:銀化合物および銅化合物による抗カビ性の評価−1
光触媒層を備えた建材を以下の通り製造した。まず、建材基体として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、フロート板ガラス上に白色顔料を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのAg・Cu含有チタニア水分散体と、平均粒径26nmの無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、光触媒粒子および無機酸化物粒子の合計量100質量部に対して6質量部のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤とを表6に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。なお、例29〜33においては、銀化合物と銅化合物の配合比を調整(例32は全て銅化合物、例33は全て銀化合物)したAg・Cu含有チタニア水分散体を使用した。また、例34においては銀化合物および銅化合物を含まないチタニア水分散体を使用した。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ50℃に加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で5分乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、建材を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚(μm)を測定したところ、例29〜34のいずれの例においても約1μmであった。これら建材の前処理として1mW/cmのBLB光を24時間照射したのち、下記した抗カビ性試験を行った。
こうして得られた50×50mmの大きさの建材について、以下の通り抗カビ性の評価を行った。試験菌としてポテトデキストロース寒天培地で、25℃で7〜14日前培養したAspergillus niger(NBRC6341)を用い、これを0.005重量%のスルホコハク酸ジオクチルナトリウムを含む生理食塩水中に分散させ胞子懸濁液を作成した。
上記方法にて得られた建材に、前記胞子懸濁液を、試験片1枚あたり4〜6×10個/mLになるよう滴下し、抗カビ試験片とした。この試験片に、JIS R1702(2006)に記載のフィルム密着法に準じ、密着フィルムをかぶせ、保湿可能なシャーレ内に設置し、保湿ガラスを載せて試験に用いた。
前記試験片をシャーレごとBLB光照射下に設置し、建材面で0.4mW/cmになるようBLB光を24時間照射した。
24時間照射後、胞子懸濁液を回収し、ポテトデキストロース寒天培地で培養し、生残菌数を計測した。抗カビ性は、例29〜34によって得られた生残菌数の対数値と光触媒未加工の試験体の生残菌数の対数値の差を求めることによって得た。
試験結果を表6に示した。ここで、表中の抗カビ活性値とは例29〜34によって得られた生残菌数の対数値と光触媒未加工の試験体の生残菌数の対数値との差の値であり、数値が大きいほど抗カビ性が高いことを示している。抗カビ活性値が、Ag・Cu含有チタニア水分散体を用いて作製した例において、銀化合物のみや銅化合物のみを添加した例に比べて高い値となっており、銀化合物と銅化合物とを混合することで高い抗カビ性能を得ることが確認できた。特に、例29、例30では抗カビ活性値が2を超えてきている。
Figure 2010150766
例35〜37:銀化合物および銅化合物による抗カビ性の評価−2
光触媒層を備えた建材を以下の通り製造した。まず、建材基体として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、フロート板ガラス上に白色顔料を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのAg・Cu含有チタニア水分散体と、平均粒径26nmの無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、光触媒粒子および無機酸化物粒子の合計量100質量部に対して6質量部のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤とを表7に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ50℃に加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で5分乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、建材を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚(μm)を測定したところ、例35〜37のいずれの例においても約1μmであった。これら建材の前処理として1mW/cmのBLB光を24時間照射したのち、下記した抗カビ性試験を行った。
こうして得られた50×50mmの大きさの建材について、例29〜34と同様の方法にて抗カビ性の評価を行った。
24時間照射後、胞子懸濁液を回収し、ポテトデキストロース寒天培地で培養し、生残菌数を計測した。抗カビ性は、例35〜37によって得られた生残菌数の対数値と光触媒未加工の試験体の生残菌数の対数値の差を求めることによって得た。
試験結果を表7に示した。ここで、表中の抗カビ活性値とは例35〜37によって得られた生残菌数の対数値と光触媒未加工の試験体の生残菌数の対数値との差の値であり、数値が大きいほど抗カビ性が高いことを示している。酸化チタン粒子に対して[AgO+CuO]量が0.5質量%に対して、3質量%および5質量%のいずれにおいても、高い抗カビ性能を得ることが確認できた。
Figure 2010150766
例38:有害ガス分解性の評価
光触媒層を備えた建材を以下の通り製造した。まず、建材基体として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、フロート板ガラス上にカーボンブラック粉末を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのAg・Cu含有チタニア水分散体と、平均粒径26nmの無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、光触媒粒子および無機酸化物粒子の合計量100質量部に対して6質量部のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤とを表8に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ50℃に加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で5分乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、建材を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚(μm)を測定したところ、約1μmであった。
こうして得られた50×100mmの大きさの建材について、例8〜11と同様の方法にてガス分解性試験を行った。なお、例8の試料も比較として同様の測定を行った。
得られた結果は表8に示される通りであった。ここで、表中のNOx除去率とは例8の除去量を100として相対的に示している。表8に示されるように、光触媒としてのAg・Cu含有チタニア水分散体を用いても十分な除去率が得られることが分かった。
Figure 2010150766
例39:耐候性の評価
光触媒層を備えた建材を以下の通り製造した。まず、建材基体として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、フロート板ガラス上にカーボンブラック粉末を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのAg・Cu含有チタニア水分散体と、平均粒径26nmの無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、光触媒粒子および無機酸化物粒子の合計量100質量部に対して6質量部のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤とを表9に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ50℃に加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で5分乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、建材を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、約0.5μmであった。
こうして得られた50×100mmの大きさの建材について、例1〜7と同様の方法にて耐候性試験を行った。
得られた結果は表9に示される通りであった。ここで、表中のGはほとんど変色しなかったことを表す。表9に示されるように、光触媒としてのAg・Cu含有チタニア水分散体を用いても、有機基材上に光触媒層を塗装しても充分な耐候性を有することが分かった。
Figure 2010150766
例40:塗膜密着性の評価
光触媒層を備えた建材を例38と同様にして製造した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、約0.5μmであった。
こうして得られた50×100mmの大きさの建材について、以下の通り塗膜密着性の評価を行った。建材を20±5℃の水酸化カルシウム飽和溶液中に浸漬した。7日間経過後に取り出し、室内で表面を乾燥させた後、表面にセロハンテープを貼付け、上から擦りつける様に押さえて完全に密着させた。テープの一方の端を持って、表面に対して垂直方向に瞬間的に引き剥がした後、塗膜の表面をデジタルマイクロスコープで観察した結果、剥離が見られず充分な密着性を有することが分かった。
<実施例B>
本発明を以下の例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
なお、以下の例において中間層コーティング液は、以下に示したいずれかのシリコーン変性アクリル樹脂材と水と造膜助剤を適宜混合して作成し、詳細を表10に示した。造膜助剤濃度は、中間層コーティング液に対し3質量%とした。
・ケイ素原子含有量が、シリコーン変性樹脂の固形分に対して10質量%のシリコーン変性アクリル樹脂ディスパージョン
・ケイ素原子含有量が、シリコーン変性樹脂の固形分に対して0.2質量%のシリコーン変性アクリル樹脂ディスパージョン
・ケイ素原子含有量が、シリコーン変性樹脂の固形分に対して16.5質量%のシリコーン変性アクリル樹脂ディスパージョン
有機防カビ剤は、市販の窒素硫黄系化合物とトリアジン系化合物からなるものを用い、防カビ剤の濃度は中間層コーティング液に対し0.5質量%とした。
Figure 2010150766
以下の例において光触媒層コーティング液は、以下に示した光触媒粒子と、いずれかの無機酸化物と水と界面活性剤を適宜混合して作成した。詳細を表11に示した。使用した原料は以下の通りである。
光触媒粒子
・チタニア水分散体(平均粒径:42nm、塩基性)
・Ag・Cu含有チタニア水分散体:銀化合物および銅化合物を、AgOおよびCuOに換算した合計量がチタニアに対して0〜5質量%添加された光触媒性チタニア水分散体(平均粒径:48nm、塩基性)
無機酸化物粒子
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:14nm、塩基性)
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:26nm、塩基性)
水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:5nm、塩基性)
水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:51nm、塩基性)
加水分解性シリコーン
・テトラメトキシシランの重縮合物(SiO換算濃度:51質量%。溶媒:メタノール、水)
界面活性剤
・ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤
Figure 2010150766
例41〜48:ガス分解性の評価(参考)
有機防カビ剤を含む中間層および光触媒層を備えた建材を以下の通り製造した。まず、建材基体としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ50℃に加熱したガラス基材上に、表10のM−1に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で5分乾燥し中間層を得た。このM−1液中の樹脂の固形分濃度は約20質量%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例41〜48のいずれの例においても約10μmであった。
一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表11のT−1〜T−8に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の、光触媒、無機酸化物および加水分解性シリコーンの合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ50℃に加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で5分乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例41〜48のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、建材を得た。
こうして得られた50×100mmの大きさの建材について、以下の通りガス分解性試験を行った。建材に前処理として1mW/cmのBLB光で12hr以上照射した。JIS R1701に記載の反応容器内に塗装体サンプルを1枚セットした。25℃、50%RHに調整した空気に約1000ppbになるようにNOガスを混合し、遮光した反応容器内に20分導入した。その後ガスを導入したままで3mW/cmに調整したBLB光を20分間照射した。その後ガスを導入した状態で再度反応容器を遮光した。NOx除去量は、BLB光照射前後でのNO、NO濃度から下記の式に従って計算した。
NOx除去量=[NO(照射後)−NO(照射時)]−[NO(照射時)−NO(照射後)]
得られた結果は表12に示される通りであった。表12に示されるように、光触媒層を光触媒粒子と無機酸化物から構成し、加水分解性シリコーンを含まない構造にすると、良好なNOx分解性を示した。一方、加水分解性シリコーンが10質量部入ったものは、NOx分解性が喪失していることが分かった。また光触媒層中の光触媒比率を2.5倍に増やしてもその傾向は変わらなかった。
Figure 2010150766


例49、50:防藻性の評価(参考)
中間層および光触媒層を備えた建材を以下の通り製造した。まず、建材基体としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ50℃に加熱したガラス基材上に、表10のM−1およびM−2に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で5分乾燥し中間層を得た。M−1およびM−2液中の樹脂の固形分濃度は約20質量%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例49、50のいずれの例においても約10μmであった。
一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表11のT−4に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ50℃に加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で5分乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例49、50のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、建材を得た。
こうして得られた50×50mmの大きさの建材について、以下の通り防藻性試験を行った。藻の代用としてクロレラ(NIES−642)を用いた。試験中のクロレラの栄養源として無機塩培地を使用した。シャーレ内に、建材をおき一定量のクロレラと無機塩培地を含む水を投入し、蓋をして温度25℃±2℃の条件下で、照度4000lxの蛍光灯下で培養した。なおシャーレと蛍光灯の間に透明なアクリル板を挟み、紫外線を完全に遮断した。クロレラの繁殖は目視にて比較、判定した。
得られた結果は表13に示される通りであった。ここで、表中の○は目視で藻の発生が認められなかったもの、×は目視で藻の発生が認められたものを表す。
Figure 2010150766
例51〜53:塗膜の透明性評価(参考)
光触媒層を備えた建材を以下の通り製造した。まず、建材基体としてフロート板ガラスを用意した。光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表11のT−4、T−9、T−10に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液を50×50mmの板ガラス上に1g滴下した後、1000rpmで10秒間スピンコートして塗膜の透明性試験体を得た。
こうして得られた50×50mmの大きさの建材について、BYK−Gardner社製haze−gard plusにてヘイズ値を測定した。
得られた結果は表14に示される通りであった。表14より、例51、52の建材はヘイズ値を1%未満に抑えることができ、透明性が確保できることが分かった。
Figure 2010150766
例54〜56:塗膜の密着性評価(参考)
有機防カビ剤を含む中間層および光触媒層を備えた建材を以下の通り製造した。まず、建材基体としてフロート板ガラスに汎用のエポキシ樹脂系の下塗り剤を塗装し、乾燥したものを用意した。あらかじめ50℃に加熱したガラス基材上に、表10のM−1に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で5分乾燥し中間層を得た。M−1液中の樹脂の固形分濃度は約20質量%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例54〜56のいずれの例においても約10μmであった。
一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表11のT−4、T−9、T−11に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ50℃に加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で5分乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例54〜56のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、建材を得た。
こうして得られた50×50mmの大きさの建材について、常温の飽和水酸化カルシウム水溶液中に18時間浸漬した。水洗い後、50℃で1時間乾燥させた後、塗膜表面にJIS Z1522に規定されるセロハンテープを貼り、垂直に瞬間的に剥がしたあと、剥離面を観察して、前後での膜の残存を確認した。
得られた結果は表15に示される通りであった。ここで表中の○は光触媒層の剥離が全く認められなかったもの、△は光触媒層の剥離が一部認められたものを表す。例54、55の建材は、光触媒層が中間層に対し充分な密着性を有することが分かった。
Figure 2010150766
例57〜63:塗膜の耐候性評価−1(参考)
有機防カビ剤を含む中間層および光触媒層を備えた建材を以下の通り製造した。まず、建材基体としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ50℃に加熱したガラス基材上に、表10のM−3に記載の中間層コーティング液に着色顔料を混合したものをスプレーコートし、120℃で5分乾燥し中間層を得た。
液中の樹脂の固形分濃度は約20質量%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例57〜63のいずれの例においても約10μmであった。
一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表11のT−1〜T−4、T−6、T−12、T−13に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ50℃に加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で5分乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例57〜63のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、建材を得た。
こうして得られた50×100mmの大きさの建材について、以下の通り耐候性試験を行った。建材をJIS B7753に規定されるサンシャインウェザオメーター(スガ試験機製、S−300C)に投入した。300hr経過後に試験片を取り出し、日本電色製の測色差計ZE2000にて、促進試験前後で色差を測定し、そのΔb値を比較することで変色の度合いを評価した。
得られた結果は表16に示される通りであった。ここで、表中のGはほとんど変色しなかったことを、NGはΔb値がプラス側(黄変側)に推移したことを表す。表16に示されるように、光触媒層中の光触媒の含有量を20質量部未満にすることによって、ケイ素原子含有量が小さい中間層に光触媒層を塗装しても充分な耐候性を有することが分かった。
Figure 2010150766
例64、65:塗膜の耐候性評価−2(参考)
有機防カビ剤を含む中間層および光触媒層を備えた建材を以下の通り製造した。まず、建材基体として亜鉛メッキ鋼板に汎用のエポキシ樹脂系の下塗り剤を塗装し、乾燥したものを用意した。表10のM−1およびM−4に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で5分乾燥し中間層を得た。M−1およびM−4液中の樹脂の固形分濃度は約20質量%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例64、65のいずれの例においても約10μmであった。
一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表11のT−4に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ50℃に加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で5分乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例64、65のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、建材を得た。
こうして得られた50×100mmの大きさの建材について、以下の通り耐候性試験を行った。建材をメタリングウェザオメーター(スガ試験機製M6T)に投入した。150hr経過後に試験片を外観を確認した。
中間層に、シリコーン変性樹脂の固形分に対してケイ素原子含有量が10質量%のアクリル変性シリコーン樹脂を用いた例64は、クラックの発生が認められず、外観が良好で、十分な耐候性を有することがわかった。一方、ケイ素原子含有量が16.5質量%のアクリル変性シリコーン樹脂を用いた例65では、わずかではあるが、部分的にクラックの発生が認められた。
例66:塗膜の耐候性評価−3(参考)
建材基体のサイズを150×65mmとした以外は例64と同じ条件で、建材を作成した。この建材について、以下の通り耐候性試験を行った。建材をJIS B7753に規定されるサンシャインウェザオメーター(スガ試験機製、S−300C)に投入した。4500hr経過後に試験片を取り出し、日本電色製の測色差計ZE2000にて色差を測定し、ΔE値を算出した。また接触角計(協和界面科学製CA−X150)にて水接触角を測定した。なおΔE値は、JIS Z8730に記載の方法に基づいて算出した。
本発明において得られた建材は、サンシャインウェザオメーター4500hr経過後のΔE値が0.5、水接触角は5°以下と驚異的な耐候性と、超親水性を有することが分かった。またNOxガス分解および塗膜の密着性も、初期とほとんど同等のレベルであった。
例67:塗膜の耐候性評価−4(参考)
例66と同一条件にて作成した建材について、以下の通り耐候性試験を行った。建材を神奈川県茅ケ崎市にて、水平から上方に向け45°の傾斜をつけた状態で南の方角に向け、屋外曝露を実施した。約500日経過後に試験片を取り出し、日本電色製の測色差計ZE2000にて色差を測定した。
本発明において得られた建材は、屋外曝露を実施した約500日経過後のΔE値が0.5以下と、驚異的な防汚性を有することが分かった。
例68〜73:銀化合物および銅化合物による抗カビ性の評価−1
中間層および光触媒層を備えた建材を以下の通り製造した。まず、建材基体としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ50℃に加熱したガラス基材上に、表10のM−2に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で5分乾燥し中間層を得た。M−2液中の樹脂の固形分濃度は約20質量%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例68〜73のいずれの例においても約10μmであった。
一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表11のT−4、T−14〜T−18に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。なお、例68〜72においては、銀化合物と銅化合物の配合比を調整したAg・Cu含有チタニア水分散体を使用し(ただし、例71は全て銅化合物、例72は全て銀化合物)、例73においては銀化合物および銅化合物を含まないチタニア水分散体を使用した。
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ50℃に加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で5分乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例68〜73のいずれの例においても約1μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、建材を得た。これら建材の前処理として1mW/cmのBLB光を24時間照射したのち、下記した抗カビ性試験を行った。
こうして得られた50×50mmの大きさの建材について、以下の通り抗カビ性の評価を行った。試験菌としてポテトデキストロース寒天培地で、25℃で7〜14日前培養したAspergillus niger(NBRC6341)を用い、これを0.005重量%のスルホコハク酸ジオクチルナトリウムを含む生理食塩水中に分散させ胞子懸濁液を作成した。
上記方法にて得られた建材に、前記胞子懸濁液を、試験片1枚あたり4〜6×10個/mLになるよう滴下し、抗カビ試験片とした。この試験片に、JIS R1702(2006)に記載のフィルム密着法に準じ、密着フィルムをかぶせ、保湿可能なシャーレ内に設置し、保湿ガラスを載せて試験に用いた。
前記試験片をシャーレごとBLB光照射下に設置し、建材面で0.4mW/cmになるようBLB光を24時間照射した。
24時間照射後、胞子懸濁液を回収し、ポテトデキストロース寒天培地で培養し、生残菌数を計測した。抗カビ性は、例68〜73によって得られた生残菌数の対数値と、同様の試験を実施した光触媒未加工の試験体の生残菌数の対数値の差を求めることによって得た。
試験結果を表17に示した。ここで、表中の抗カビ活性値とは例68〜73によって得られた生残菌数の対数値と光触媒未加工の試験体の生残菌数の対数値との差の値であり、数値が大きいほど抗カビ性が高いことを示している。抗カビ活性値が、Ag・Cu含有チタニア水分散体を用いて作製した例において、銀化合物のみや銅化合物のみを添加した例に比べて高い値となっており、銀化合物と銅化合物とを混合することで高い抗カビ性能を得ることが確認できた。
Figure 2010150766
例74、75:銀化合物および銅化合物による抗カビ性の評価−2
中間層および光触媒層を備えた建材を以下の通り製造した。まず、建材基体としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ50℃に加熱したガラス基材上に、表10のM−2に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で5分乾燥し中間層を得た。M−2液中の樹脂の固形分濃度は約20質量%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例74および例75のいずれにおいても約10μmであった。
一方、光触媒としてのAg・Cu含有チタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表11のT−19およびT−21に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液を、例68〜73と同様の方法で製膜し、例74および例75の光触媒体を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例74および例75のいずれの例においても約1μmであった。この光触媒体について、例68〜73と同様の方法にて抗カビ性の評価を行った。
試験結果を表18に示した。また例69の抗カビ活性値も表18にしめした。酸化チタン粒子に対して[AgO+CuO]量が0.5質量%、3質量%および5質量%のいずれにおいても、高い抗カビ性能を得ることが確認できた。
Figure 2010150766
例76、77:銀化合物および銅化合物による抗カビ性の評価−3
中間層および光触媒層を備えた建材を以下の通り製造した。まず、建材基体としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ50℃に加熱したガラス基材上に、表10のM−1およびM−2に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で5分乾燥し中間層を得た。M−1またはM−2液中の樹脂の固形分濃度は約20質量%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例76および例77のいずれにおいても約10μmであった。
一方、光触媒としてのAg・Cu含有チタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表11のT−20に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液を、例68〜73と同様の方法で製膜し、例76の光触媒体を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例76および例77のいずれにおいても約1μmであった。この光触媒体について、例68〜73と同様の方法にて抗カビ性の評価を行った。
試験結果を表19に示した。中間層に有機防カビ剤が含まれている例77においては、防カビ剤による効果が相乗され、抗カビ活性値がさらに大きくなった。
Figure 2010150766

Claims (8)

  1. 建材基体と、該建材基体上に設けられた光触媒層とを備えた建材であって、
    前記光触媒層が、
    光触媒粒子と、
    無機酸化物粒子と、
    イオン状態の銅と、
    イオン状態の銀とを、
    具備してなる、建材。
  2. 前記光触媒層中における前記光触媒粒子の含有率を、1質量%以上20質量%未満でとしたことを特徴とする請求項1に記載の建材。
  3. 前記光触媒層中には、さらに任意成分として加水分解性シリコーンの重合物を、シリカ換算量として0質量%以上10質量%未満含有することを特徴とする請求項1または2に記載の建材。
  4. 前記光触媒層中には、さらに任意成分としてチタンアルコキシドの重合物を、二酸化チタン換算量として0質量%以上10質量%未満含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の建材。
  5. 前記光触媒層中には、さらに任意成分として界面活性剤を、0質量%以上10質量%未満含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の建材。
  6. 前記光触媒層中には、任意成分として加水分解性シリコーンの重合物、チタンアルコキシドの重合物、界面活性剤の群から選ばれる1種以上を含み、かつその合計含有率が0質量%以上10質量%未満(但し、前記加水分解性シリコーンの重合物はシリカ換算量、前記チタンアルコキシドの重合物は二酸化チタン換算量とする)であることを特徴とする1〜5のいずれか1項に記載の建材。
  7. 前記光触媒粒子の平均粒径は、10nm以上100nm以下であることを特徴とする1〜6のいずれか1項に記載の建材。
  8. 前記光触媒層は通気性を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の建材。
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