JP2010147870A - Baw共振装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】圧電層の結晶性を向上させることができ且つ製造歩留まりを向上させることができるBAW共振装置の製造方法を提供する。
【解決手段】単結晶MgO基板からなる支持基板1の一表面側の全面にPZT層からなる犠牲層20、下部電極31、PZT薄膜からなる圧電層32を順次形成し、圧電層32、下部電極31、犠牲層20を順次パターニングしてから、支持基板1の上記一表面側に圧電層32の一部を露出させる開孔部4aおよび犠牲層20の一部を露出させる複数のエッチングホール5を有する絶縁層4を形成し、その後、上部電極33を形成する。次に、支持基板1の上記一表面側に上部電極33および絶縁層4を保護するレジスト層6を形成し、続いて、レジスト層6の開孔部7および絶縁層4の各エッチングホール5を通してエッチング液を導入し犠牲層20を選択的にエッチングすることにより空洞2を形成する。
【選択図】図1
【解決手段】単結晶MgO基板からなる支持基板1の一表面側の全面にPZT層からなる犠牲層20、下部電極31、PZT薄膜からなる圧電層32を順次形成し、圧電層32、下部電極31、犠牲層20を順次パターニングしてから、支持基板1の上記一表面側に圧電層32の一部を露出させる開孔部4aおよび犠牲層20の一部を露出させる複数のエッチングホール5を有する絶縁層4を形成し、その後、上部電極33を形成する。次に、支持基板1の上記一表面側に上部電極33および絶縁層4を保護するレジスト層6を形成し、続いて、レジスト層6の開孔部7および絶縁層4の各エッチングホール5を通してエッチング液を導入し犠牲層20を選択的にエッチングすることにより空洞2を形成する。
【選択図】図1
Description
本発明は、圧電層の厚み方向の縦振動モードを利用する共振子を備えたBAW(Bulk Acoustic Wave)共振装置の製造方法に関するものである。
従来から、携帯電話機などの移動体通信機器の分野において、2GHz以上の高周波帯で利用する高周波フィルタに適用可能なFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)型のBAW共振装置が各所で研究開発されている。
ここで、この種のBAW共振装置において、例えば、UWB(Ultra Wide Band)用フィルタに応用する場合に、圧電層の材料として、帯域幅が中心周波数に対して4〜5%しか広帯域化できないAlNに比べて中心周波数に対して10%程度の帯域幅を得ることが可能なPZT系材料(例えば、PZT、PMN−PZTなど)やKNNなどを採用し、圧電層の結晶性を向上させるために下部電極と圧電層と上部電極との積層構造を有する共振子を支持する支持基板として単結晶MgO基板や単結晶STO(:SrTiO3)基板を採用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
ここにおいて、上記特許文献1には、例えば、図3(d)に示すように、単結晶STO基板からなる支持基板1’と、支持基板1’の一表面側に形成されPt膜からなる下部電極31’、PZT薄膜からなる圧電層32’、Pt膜からなる上部電極33’の積層構造を有する共振子3’とを備え、支持基板1’の上記一表面と共振子3’との間に空洞2’が形成されたBAW共振装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、上記特許文献1には、支持基板1’の上記一表面側に共振子3’を複数個形成してフィルタ(BAWフィルタ)を構成することも記載されている。
以下、図3(d)に示した構成のBAW共振装置の製造方法について図3を参照しながら説明する。
まず、単結晶STO基板からなる支持基板1’の上記一表面側の全面にMgO層からなる犠牲層20’をRFマグネトロンスパッタ法により形成し、続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して犠牲層20’を所定形状にパターニングすることによって、図3(a)に示す構造を得る。
その後、支持基板1’の上記一表面側の全面にPt膜からなる下部電極31’をRFマグネトロンスパッタ法により形成し、続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して下部電極31’を所定形状にパターニングすることによって、図3(b)に示す構造を得る。ここで、下部電極31’は、支持基板1’の上記一表面と犠牲層20’の表面とに跨って残るようにパターニングする。
その後、支持基板1’の上記一表面側の全面にPZT薄膜からなる圧電層32’をRFマグネトロンスパッタ法により形成し、引き続いて、支持基板1’の上記一表面側の全面にPt膜からなる上部電極33’をRFマグネトロンスパッタ法により形成し、続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して上部電極33’を所定形状にパターニングすることによって、図3(c)に示す構造を得る。
その後、圧電層32’に、厚み方向に貫通し犠牲層20’を露出させるエッチングホール(図示せず)を形成してから、当該エッチングホールを通して燐酸溶液からなるエッチング液を導入し犠牲層20’を選択的にエッチングすることで空洞2’を形成することによって、図3(d)に示す構造のBAW共振装置を得る。
特開2003−163566号公報
しかしながら、上述のBAW共振装置の製造方法では、MgO層からなる犠牲層20’を燐酸溶液からなるエッチング液によりエッチングする際に、エッチングレートが1〜5μm/min程度と遅いので、PZT薄膜からなる圧電層32’が上記エッチング液により侵食されて歩留まりが低下してしまう。
また、上述のBAW共振装置の製造方法では、圧電層32’を、支持基板1’と所定形状にパターニングされた下部電極31’とに跨る形で形成するので、結晶性の良好な圧電層32’を得るのが難しく、圧電層32’の結晶性の改善による電気機械結合係数(keff)および機械的品質係数(Q値)の向上が望まれていた。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、圧電層の結晶性を向上させることができ且つ製造歩留まりを向上させることができるBAW共振装置の製造方法を提供することにある。
請求項1の発明は、単結晶MgO基板もしくは単結晶STO基板からなる支持基板、支持基板の一表面側に形成され下部電極と上部電極との間に圧電層を有する共振子と、支持基板の前記一表面側に形成されて支持基板に支持され平面視において共振子を全周に亘って取り囲んで共振子を保持した絶縁層とを備え、支持基板の前記一表面と共振子の下部電極および絶縁層における共振子の周部との間に空洞が形成されるとともに、絶縁層に、空洞に連通する空洞形成用のエッチングホールが形成されてなるBAW共振装置の製造方法であって、支持基板の前記一表面上に犠牲層を形成する犠牲層形成工程と、犠牲層形成工程の後で犠牲層上に下部電極を形成する下部電極形成工程と、下部電極形成工程の後で支持基板の前記一表面側に圧電層を形成する圧電層形成工程と、圧電層形成工程の後で圧電層および下部電極をそれぞれ第1の所定形状、第2の所定形状にパターニングする圧電層・下部電極パターニング工程と、当該圧電層・下部電極パターニング工程の後で犠牲層を第3の所定形状にパターニングする犠牲層パターニング工程と、犠牲層パターニング工程の後で支持基板の前記一表面側に圧電層の一部を露出させる開孔部および犠牲層の一部を露出させる前記エッチングホールを有する絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、絶縁層形成工程の後で上部電極を形成する上部電極形成工程と、上部電極形成工程の後で支持基板の前記一表面側に上部電極および絶縁層を覆い且つエッチングホールに対応する部位に開孔部を有するレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、レジスト層形成工程の後でレジスト層の開孔部および絶縁層のエッチングホールを通してエッチング液を導入し犠牲層を選択的にエッチングすることにより空洞を形成する空洞形成工程とを備え、犠牲層形成工程では、犠牲層として圧電層と同じ材料からなる犠牲層を形成することを特徴とする。
この発明によれば、圧電層、下部電極および犠牲層それぞれのパターニングは支持基板の一表面側に圧電層を形成する圧電層形成工程の後で行われるので、圧電層の形成時に下地に段差がなく、しかも、犠牲層の材料が圧電層と同じ材料であるので、圧電層の結晶性を向上できて電気機械結合係数および機械的品質係数を向上でき、また、犠牲層をエッチングするエッチング液を導入するためのエッチングホールを、共振子を全周に亘って取り囲んで共振子を保持した絶縁層に形成しているので、エッチングホールを形成することで圧電層が露出することもなく、その上、犠牲層として圧電層と同じ材料を採用しているので、犠牲層の材料がMgOである場合に比べて犠牲層のエッチングレートを速くできてエッチング時間を短縮することができ、犠牲層をエッチングする際に圧電層が侵食されるのを防止することができ、製造歩留まりを向上させることができる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記犠牲層の材料および前記圧電層の材料がPZT系材料であることを特徴とする。
この発明によれば、前記圧電層の材料がAlNやZnOである場合に比べて、電気機械結合係数を大きくすることができる。
請求項1の発明では、圧電層の結晶性を向上させることができ且つ製造歩留まりを向上させることができるという効果がある。
本実施形態におけるBAW共振装置は、図1(g)に示すように、支持基板1と、支持基板1の一表面側に形成され下部電極31と上部電極33との間に圧電層32を有する共振子3と、支持基板1の上記一表面側に形成されて支持基板1に支持され平面視において共振子3を取り囲んで共振子3を保持した絶縁層4とを備え、支持基板1の上記一表面と共振子3の下部電極31および絶縁層4における共振子3の周部との間に空洞2が形成されるとともに、絶縁層4に、空洞2に連通する空洞形成用の複数のエッチングホール5が形成されている。要するに、本実施形態のBAW共振装置は、下部電極31と下部電極31直下の媒質との音響インピーダンス比を大きくすることにより支持基板1側へのバルク弾性波のエネルギの伝搬を抑制するようにしたFBARを構成している。
上述の共振子3は、下部電極31が支持基板1側に形成され、下部電極31における支持基板1側とは反対側に圧電層32が形成され、圧電層32における下部電極31側とは反対側に上部電極33が形成されている。
また、本実施形態のBAW共振装置は、上述の絶縁層4に、上部電極33と圧電層32との接触面積を規定する開孔部4aが形成されており、圧電層32のうち下部電極31と上部電極33との両方と接する領域が共振領域を構成している。
本実施形態のBAW共振装置は、圧電層32の材料(圧電材料)として、PZTを採用しており、圧電層32は、(001)配向のPZT薄膜からなる圧電薄膜により構成されている。なお、PZT薄膜は、単結晶膜もしくは単一配向膜であればよく、配向は(001)配向に限らず、例えば、(111)配向でもよい。
また、本実施形態では、圧電層32の圧電材料として、PZTを採用しているが、PZT系材料であれば、PZTに限らず、不純物を添加したPZTやPMN−PZTなどでもよく、圧電材料がAlNやZnOである場合に比べて、電気機械結合係数を大きくすることができる。また、圧電層32の圧電材料としては、PZT系材料に限らず、例えば、鉛フリーのKNN(K0.5Na0.5NbO3)や、KN(KNbO3)、NN(NaNbO3)、KNNに不純物(例えば、Li,Nb,Ta,Sb,Cuなど)を添加したものなどのKNN系材料を用いてもよく、PZT系材料を用いる場合に比べて、環境負荷を軽減できるという利点がある。
また、支持基板1としては、上記一表面である主表面が(001)面の単結晶MgO基板を用いているが、支持基板1としては、上記一表面である主表面が(001)面の単結晶STO基板を用いてもよい。
ところで、圧電層32は、平面視における全領域が下部電極31上に形成されており、圧電層32の外周線は、下部電極31の外周線よりも内側に位置しているが、圧電層32の平面視のパターンを下部電極31の平面視のパターンと同じとしてもよい。
また、本実施形態のBAW共振装置では、下部電極31の金属材料としてPtを採用しているが、下部電極31の材料はPtに限定するものではなく、後述の製造方法で説明する犠牲層20(図1(f)参照)をエッチングする際のエッチング液に対して耐性を有し、圧電層32の圧電材料との格子整合性の良い材料であればよく、例えば、SRO(:SrRuO3)やIrなどを採用してもよい。また、上部電極33の金属材料としてAlを採用しているが、Alに限らず、例えば、Mo、W、Ir、Cr、Ru、Ptなどを採用すれば、上部電極33の金属材料が代表的な電極材料であるAuの場合に比べて、上部電極33の機械的品質係数を高めることができ、共振子3全体の機械的品質係数を高めることが可能となる。
また、絶縁層4の材料としては、SiO2を採用しているが、SiO2に限らず、例えば、Si3N4を採用してもよい。また、絶縁層4は、単層構造に限らず、多層構造でもよく、例えば、SiO2からなる第1の絶縁膜とSi3N4膜からなる第2の絶縁膜との積層膜でもよい。
なお、本実施形態のBAW共振装置では、共振子3の共振周波数を4GHzに設定してあり、下部電極31の厚みを100nm、圧電層32の厚みを300nm、上部電極33の厚みを100nmに設定してあるが、これらの数値は一例であって特に限定するものではない。また、共振周波数を3GHz〜5GHzの範囲で設計する場合には、圧電層32の厚みは200nm〜600nmの範囲で適宜設定すればよい。
また、本実施形態のBAW共振装置は、上述のように、絶縁層4に、厚み方向に貫通し空洞2に連通する複数(本実施形態では、2つ)のエッチングホール5,5が形成されているが、これらのエッチングホール5,5は、平面視における共振子3の中心までの距離が略等しくなるような位置に形成することが望ましい。また、各エッチングホール5の開口形状は矩形状(ここでは、正方形状)となっているが、開口形状は特に限定するものではない。
以下、本実施形態のBAW共振装置の製造方法について図1を参照しながら説明する。
まず、上記一表面が(001)面の単結晶MgO基板もしくは単結晶STO基板からなる支持基板1の上記一表面側の全面にPZT層からなる犠牲層20をスパッタ法、ゾルゲル法、CVD法などにより形成する犠牲層形成工程を行うことによって、図1(a)に示す構造を得る。
その後、支持基板1の上記一表面側の全面に例えばPt膜からなる下部電極31をスパッタ法やEB蒸着法やCVD法などにより形成する下部電極形成工程を行い、続いて、支持基板1の上記一表面側の全面にPZT薄膜からなる圧電層32をスパッタ法、ゾルゲル法、CVD法などにより形成する圧電層形成工程を行うことによって、図1(b)に示す構造を得る。なお、上述の犠牲層形成工程と下部電極形成工程と圧電層形成工程とで成膜方法としてスパッタ法を採用するようにすれば、犠牲層20と下部電極31と圧電層32とを連続的に形成することが可能となる。また、下部電極形成工程では、下部電極31としてPt膜の代わりに、SRO膜やIr膜を形成してもよい。
上述の圧電層形成工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して圧電層32を第1の所定形状にパターニングする第1のパターニング工程を行い、さらに、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して下部電極31を第2の所定形状にパターニングする第2のパターニング工程を行い、その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して犠牲層20を第3の所定形状にパターニングする第3のパターニング工程を行うことによって、図1(c)に示す構造を得る。なお、本実施形態では、第1のパターニング工程と第2のパターニング工程とで、圧電層32および下部電極31をそれぞれ第1の所定形状、第2の所定形状にパターニングする圧電層・下部電極パターニング工程を構成し、第3のパターニング工程が、犠牲層を第3の所定形状にパターニングする犠牲層パターニング工程を構成している。ここで、圧電層32の平面視のパターンを下部電極31の平面視のパターンと同じに設定してある場合には、圧電層32のパターニングと下部電極31のパターニングとを同一のマスクを利用し一括して行うことができる。
上述の第3のパターニング工程の後、支持基板1の上記一表面側に圧電層32の一部を露出させる開孔部4aおよび犠牲層20の一部を露出させる各エッチングホール5を有する絶縁層4を形成する絶縁層形成工程を行うことによって、図1(d)に示す構造を得る。ここにおいて、絶縁層形成工程では、支持基板1の上記一表面側の全面に例えばSiO2からなる絶縁層4をスパッタ法やCVD法などにより形成してからフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して絶縁層4に開孔部4aおよび各エッチングホール5を同時に形成している。なお、絶縁層形成工程では、開孔部4aおよび各エッチングホール5の形成予定領域にレジスト層を形成してから絶縁層4をスパッタ法などにより成膜してレジスト層および当該レジスト層上の絶縁層4を除去するリフトオフを行うことにより開孔部4aおよび各エッチングホール5を有する絶縁層4を形成するようにしてもよい。
上述の絶縁層形成工程の後、支持基板1の上記一表面側にAl膜からなる上部電極33を形成する上部電極形成工程を行うことによって、図1(e)に示す構造を得る。ここにおいて、上部電極形成工程では、支持基板1の上記一表面側の全面に上部電極33をスパッタ法やEB蒸着法やCVD法などにより形成し、続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して上部電極33を第4の所定形状にパターニングしている。なお、上部電極形成工程では、上部電極33としてAl膜に代えて、Mo膜、W膜、Ir膜、Cr膜、Ru膜、Pt膜などを形成してもよい。
上述の上部電極形成工程の後、支持基板1の上記一表面側に上部電極33および絶縁層4を覆い且つ各エッチングホール5に対応する部位に開孔部7を有するレジスト層6を形成するレジスト層形成工程を行うことによって、図1(f)に示す構造を得る。
その後、レジスト層6の開孔部7およびエッチングホール5を通してエッチング液を導入し犠牲層20を選択的にエッチングすることにより空洞2を形成する空洞形成工程を行うことによって、図1(g)に示す構造のBAW共振装置を得る。ここで、支持基板1として、上述のように単結晶MgO基板を用い、犠牲層20をPZT層により構成している場合には、例えば燐酸水溶液などを用いればよい。なお、燐酸水溶液によるPZTのエッチングレートは、燐酸水溶液の濃度や温度にもよるが、MgOのエッチングレートの3倍以上とすることができる。
上述のBAW共振装置の製造にあたっては、上述の支持基板1としてウェハを用いてウェハレベルで多数のBAW共振装置を形成した後、ダイシング工程で個々のBAW共振装置に分割すればよい。なお、上述のBAW共振装置の製造方法では、圧電層32をPZT薄膜により構成し、犠牲層20をPZT層により構成する例について説明したが、圧電層32をKNNにより構成する場合には、犠牲層20をKNN層により構成すればよい。
以上説明した本実施形態のBAW共振装置の製造方法によれば、圧電層32、下部電極31および犠牲層20それぞれのパターニングは支持基板1の上記一表面側の全面に圧電層32を形成する圧電層形成工程の後で行われるので、圧電層32の形成時に下地が下部電極31表面のみとなるから下地に段差がなく、しかも、犠牲層20の材料が圧電層32と同じ材料であるので、犠牲層20と圧電層32とが異種材料である場合に比べて、PZT薄膜もしくはKNN薄膜からなる圧電層32の結晶性を向上できて電気機械結合係数および機械的品質係数を向上できる。
また、本実施形態のBAW共振装置の製造方法によれば、犠牲層20をエッチングするエッチング液を導入するためのエッチングホール5を、共振子3を全周に亘って取り囲んで共振子3を保持した絶縁層4に形成しているので、エッチングホール5を形成することで圧電層32が露出することもなく、その上、犠牲層20として圧電層32と同じ材料を採用しているので、犠牲層20の材料がMgOである場合に比べて犠牲層20のエッチングレートを速くできてエッチング時間を短縮することができ、犠牲層20をエッチングする際にエッチング液が圧電層32に到達して圧電層32が侵食されるのを防止することができ、製造歩留まりを向上させることができる。また、空洞形成工程において、上部電極33および絶縁層4における各エッチングホール5以外の部位がレジスト層7により覆われており、上部電極33に犠牲層20をエッチングするためのエッチング液が到達するのを防止できるので、上部電極33の材料の選択肢が多くなるという利点もある。
また、本実施形態のBAW共振装置の製造方法では、犠牲層20の材料および圧電層32の材料がPZT系材料であるので、圧電層32の材料がAlNやZnOである場合に比べて、電気機械結合係数を大きくすることができる。
上述のBAW共振装置は、支持基板1の上記一表面側に共振子3が1個だけ形成されたものであるが、共振子3を支持基板1の上記一表面側に複数個形成して、図2に示すように、これら複数個の共振子3が例えばラダー型フィルタを構成するように接続すれば、2GHz以上の高周波帯においてカットオフ特性が急峻で且つ帯域幅の広いフィルタ、例えば、UWB用フィルタとして用いることができる。
図2に示した構成のBAW共振装置は、下部電極31同士が電気的に接続された2個1組の共振子3の組を複数組(図示例では、9組)備えており、各組の2個の共振子3では、下部電極31と圧電層32とが連続して形成される一方で上部電極33同士が絶縁分離されるようにパターニングされている。ここにおいて、隣り合う組間では、隣接する2個の共振子3の上部電極33同士が上部電極33と連続して形成された金属配線34を介して電気的に接続されている。また、各組の2個の共振子3に跨って形成された圧電層32のうち下部電極31と上部電極33との両方と接する領域が各共振領域を構成している。なお、エッチングホール5の数やレイアウトは、共振子3の配置に応じて適宜設定すればよい。
1 支持基板
2 空洞
3 共振子
4 絶縁層
4a 開孔部
5 エッチングホール
6 レジスト層
7 開孔部
20 犠牲層
31 下部電極
32 圧電層
33 上部電極
2 空洞
3 共振子
4 絶縁層
4a 開孔部
5 エッチングホール
6 レジスト層
7 開孔部
20 犠牲層
31 下部電極
32 圧電層
33 上部電極
Claims (2)
- 単結晶MgO基板もしくは単結晶STO基板からなる支持基板、支持基板の一表面側に形成され下部電極と上部電極との間に圧電層を有する共振子と、支持基板の前記一表面側に形成されて支持基板に支持され平面視において共振子を全周に亘って取り囲んで共振子を保持した絶縁層とを備え、支持基板の前記一表面と共振子の下部電極および絶縁層における共振子の周部との間に空洞が形成されるとともに、絶縁層に、空洞に連通する空洞形成用のエッチングホールが形成されてなるBAW共振装置の製造方法であって、支持基板の前記一表面上に犠牲層を形成する犠牲層形成工程と、犠牲層形成工程の後で犠牲層上に下部電極を形成する下部電極形成工程と、下部電極形成工程の後で支持基板の前記一表面側に圧電層を形成する圧電層形成工程と、圧電層形成工程の後で圧電層および下部電極をそれぞれ第1の所定形状、第2の所定形状にパターニングする圧電層・下部電極パターニング工程と、当該圧電層・下部電極パターニング工程の後で犠牲層を第3の所定形状にパターニングする犠牲層パターニング工程と、犠牲層パターニング工程の後で支持基板の前記一表面側に圧電層の一部を露出させる開孔部および犠牲層の一部を露出させる前記エッチングホールを有する絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、絶縁層形成工程の後で上部電極を形成する上部電極形成工程と、上部電極形成工程の後で支持基板の前記一表面側に上部電極および絶縁層を覆い且つエッチングホールに対応する部位に開孔部を有するレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、レジスト層形成工程の後でレジスト層の開孔部および絶縁層のエッチングホールを通してエッチング液を導入し犠牲層を選択的にエッチングすることにより空洞を形成する空洞形成工程とを備え、犠牲層形成工程では、犠牲層として圧電層と同じ材料からなる犠牲層を形成することを特徴とするBAW共振装置の製造方法。
- 前記犠牲層の材料および前記圧電層の材料がPZT系材料であることを特徴とする請求項1記載のBAW共振装置の製造方法。
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