JP2010144262A - 製紙内填用変性炭酸カルシウム及びそれを用いた製紙方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】炭酸カルシウムを製紙用内填剤として用いる際、マイナス電荷を与えることによる地合いの不均一化やプラスチックワイヤーの磨耗等のデメリットを伴わず、炭酸カルシウムの表面電荷を中性付近に改質し、アニオン系分散剤を用いた場合に比べ歩留り率を顕著に向上させることができる変性炭酸カルシウムを提供する。
【解決手段】軽質炭酸カルシウム100質量部及び下記一般式を有する重合体0.01〜10質量部を含む固形分濃度20〜70質量%の水性スラリーからなる製紙内填用変性炭酸カルシウムスラリー。
(R1〜R4は各々独立に水素原子又はメチル基、Yはメチレン基又はカルボニル基、Xはメチレン基又はフェノキシメチレン基、Mはアルカリ金属原子、aとbは各々0又は1以上の整数で両者が同時に0となることはなく、cは0又は1以上の整数、dは1以上の整数、mは質量平均分子量が3,000〜1,000,000になるのに必要な重合度)
【選択図】なし
【解決手段】軽質炭酸カルシウム100質量部及び下記一般式を有する重合体0.01〜10質量部を含む固形分濃度20〜70質量%の水性スラリーからなる製紙内填用変性炭酸カルシウムスラリー。
(R1〜R4は各々独立に水素原子又はメチル基、Yはメチレン基又はカルボニル基、Xはメチレン基又はフェノキシメチレン基、Mはアルカリ金属原子、aとbは各々0又は1以上の整数で両者が同時に0となることはなく、cは0又は1以上の整数、dは1以上の整数、mは質量平均分子量が3,000〜1,000,000になるのに必要な重合度)
【選択図】なし
Description
本発明は、製紙内填用変性炭酸カルシウム及びそれを内填用として製紙工程中において紙料に加え、歩留りを向上させるための製紙方法に関するものである。
紙料は、通常アニオン性のロジンサイズ剤と定着剤としての硫酸バンドを添加して、pH4.5付近の酸性域で抄紙されるが、填料として炭酸カルシウムを用いる場合に、酸性域ではこれが分解するので、通常の方法では抄紙することができない。このため、中性サイズ剤を用い、炭酸カルシウムをカチオン性にしてアニオン性のセルロースに電気的に定着させたり、疎水性物質のアニオン性又はノニオン性水性分散液をカチオン性高分子化合物を介して定着させる方法が行われている(特許文献1参照)。
そして、このような目的を達成するために、炭酸カルシウム粒子の表面を、ハロゲン化低級アルキルアミンとポリアミドエピクロロヒドリン樹脂又はポリビニルピロリドンからなる組成物で処理して、表面に正のゼータ電位を与える方法(特許文献2参照)、ポリアルキレングリコールアクリレートとアクリル酸塩との共重合体を用いて炭酸カルシウムを分散する方法(特許文献3参照)、炭酸カルシウムを高分子ラテックス粒子とともに水性媒体中に分散させ、炭酸カルシウム表面のゼータ電位を0ないし−50mVに調整することにより安定化する方法(特許文献4参照)、アクリル酸塩とポリアルキレングリコールアクリレートとマレイン酸との共重合体を用いて炭酸カルシウムを分散させる方法(特許文献5参照)などが知られている。
ところで、上記のように、アニオン性のアクリル酸ナトリウムを構成単位として含む分散剤は、填料にマイナスイオン荷電を与えるため、パルプとの静電反発が起こり、歩留り率の低下、地合いの不均一化を起こすという欠点を有している一方、炭酸カルシウムを填料として用いる場合については、抄紙工程で使用されているプラスチックワイヤーの磨耗を生じ、これを頻繁に取り替えなければならないため、経済的な不利を伴うことから、填料の歩留り率向上は、製紙工業における重要な課題の1つとなっている。
本発明は、このような事情のもとで、炭酸カルシウムを製紙用内填剤として用いる場合に、マイナス電荷を与えることによる地合いの不均一化やプラスチックワイヤーの磨耗などのデメリットを伴うことなく、炭酸カルシウムの表面電荷を中性付近に改質し、これまでのアニオン系分散剤を用いた場合に比べ、歩留り率を顕著に向上させることができる変性炭酸カルシウムを提供することを目的としてなされたものである。
本発明者らは、抄紙工程における炭酸カルシウム填料の紙料中への歩留り率を向上させることについて鋭意研究を重ねた結果、炭酸カルシウムに分散剤として特定の共重合体を混合することにより、上記の歩留り率が著しく向上することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、軽質炭酸カルシウム100質量部及び下記一般式(1)を有する重合体0.01〜10質量部を含む固形分濃度20〜70質量%の水性スラリーからなる製紙内填用変性炭酸カルシウムスラリー。
(式中のR1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基、Yはメチレン基又はカルボニル基、Xはメチレン基又はフェノキシメチレン基、Mはアルカリ金属原子であり、aとbとはそれぞれ0又は1以上の整数で両者が同時に0となることはなく、cは0又は1以上の整数、dは1以上の整数であり、mは質量平均分子量が3,000〜1,000,000になるのに必要な重合度である)
及び、抄紙用パルプ懸濁液に対し、上記の製紙内填用変性炭酸カルシウムスラリーを固形分濃度に基づき、0.5〜50質量%の割合で加えて抄紙することを特徴とする製紙方法を提供するものである。
上記の一般式中の各構成単位は、それぞれがランダムに結合していてもよい。
及び、抄紙用パルプ懸濁液に対し、上記の製紙内填用変性炭酸カルシウムスラリーを固形分濃度に基づき、0.5〜50質量%の割合で加えて抄紙することを特徴とする製紙方法を提供するものである。
上記の一般式中の各構成単位は、それぞれがランダムに結合していてもよい。
本発明において用いられる軽質炭酸カルシウムは、通常の製紙において、内填用として慣用されている沈降炭酸カルシウム、すなわち生石灰を水に懸濁し、二酸化炭素を吹き込んで消化反応させ、沈殿物を回収することにより得られる炭酸カルシウムである。
この軽質炭酸カルシウムの粒径としては、0.01〜5μmの範囲のものが好ましい。
この軽質炭酸カルシウムの粒径としては、0.01〜5μmの範囲のものが好ましい。
このように、本発明において用いる共重合体は、一般式
(式中のR1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基、Yはメチレン基又はカルボニル基、Xはメチレン基又はフェノキシメチレン基、Mはアルカリ金属原子であり、aとbとはそれぞれ0又は1以上の整数で両者が同時に0となることはなく、cは0又は1以上の整数、dは1以上の整数であり、mは質量平均分子量が3,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜100,000になるのに必要な重合度である)
で表わされる分子構造を有するものであることが必要である。
このような分子構造をもつ共重合体は、高性能コンクリート用減水剤[商品名「マイティ3000S」(花王社製)]として市販されており、容易に入手できる。
で表わされる分子構造を有するものであることが必要である。
このような分子構造をもつ共重合体は、高性能コンクリート用減水剤[商品名「マイティ3000S」(花王社製)]として市販されており、容易に入手できる。
本発明の製紙内填用変性炭酸カルシウムスラリーにおいては、軽質炭酸カルシウム100質量部当り、上記一般式(1)の共重合体を0.01〜10質量部、好ましくは0.3〜2質量部の割合で含むことが必要である。これよりも共重合体の量が少ないと、十分な歩留り向上効果が得られないし、またこれよりも量が多くなると、過度に減水して生成するスラリーの粘度が大きくなり、取り扱いにくくなる。
本発明の製紙内填用変性炭酸カルシウムスラリーは、水により固形分濃度20〜70質量%、好ましくは30〜60質量%のスラリーに調製される。これよりも濃度が低くなると十分な歩留り向上効果を得るために必要な使用量を多くしなければならないし、これよりも濃度が高くなると粘度が増大し、取り扱いにくくなる。
このようにして得られたスラリー中の炭酸カルシウム粒子は、0ないし−5.0mVのゼータ電位を有している。このゼータ電位は0に近くなるほど歩留り向上効果が高くなる。
本発明の製紙内填用変性炭酸カルシウムスラリーを用いて抄紙するには、このスラリーを適当に希釈して、この中へパルプ原料を加え、紙力増強剤例えばカチオン化デンプン、中性サイズ剤、例えばアルキルケテンダイマーなどの添加剤を加えたのち、填料添加率がパルプの質量に基づき0.5〜50%になるように調製し、炭酸カルシウム内填紙を製造する。
このようにして、通常の抄紙の場合よりも1.8〜2.5倍の填料歩留り率を示す紙料が得られる。
このようにして、通常の抄紙の場合よりも1.8〜2.5倍の填料歩留り率を示す紙料が得られる。
本発明によると、従来のアニオン系分散剤を用いた製紙の場合に比べ、パルプへの歩留り率が顕著に向上し、かつカチオン系分散剤を用いたときに生じるような機器の汚れを防止することができる上に、分散剤添加率を上げても歩留りに対する影響が小さいため、より高濃度化による効果促進ができるという利点がある。
次に、実施例により本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明は、これによってなんら限定されるものではない。
なお、各例における填料粒子の平均粒子径及びゼータ電位は次の方法により測定した。
なお、各例における填料粒子の平均粒子径及びゼータ電位は次の方法により測定した。
(1)平均粒子径(メジアン径)
堀場製作所社製、LA920型レーザー粒度分布計により測定した。
(2)ゼータ電位
メイテック・アプライド・サイエンシズ(Matec Applied Sciences)社製、製品名「ESA9800」を用いて測定した。
堀場製作所社製、LA920型レーザー粒度分布計により測定した。
(2)ゼータ電位
メイテック・アプライド・サイエンシズ(Matec Applied Sciences)社製、製品名「ESA9800」を用いて測定した。
参考例
生石灰(奥多摩工業社製JIS特号生石灰)20kgを60℃の水200リットルと混合し、1時間かきまぜることによって消化したのち、このようにして得られた石灰乳を325メッシュのふるい目を通して、ろ過し、ろ液として水酸化カルシウムスラリー(水酸化カルシウム換算濃度100g/リットル)を得た。
次いで、この水酸化カルシウムスラリーに水を加えて74g/リットルまで希釈し、原料として反応槽に仕込み、反応開始温度60℃で二酸化炭素ガス含有窒素ガス(二酸化炭素濃度30質量%)を吹き込み、炭酸化率100%になるまで反応させることにより、9.4質量%濃度の炭酸カルシウムスラリーを調製した。
生石灰(奥多摩工業社製JIS特号生石灰)20kgを60℃の水200リットルと混合し、1時間かきまぜることによって消化したのち、このようにして得られた石灰乳を325メッシュのふるい目を通して、ろ過し、ろ液として水酸化カルシウムスラリー(水酸化カルシウム換算濃度100g/リットル)を得た。
次いで、この水酸化カルシウムスラリーに水を加えて74g/リットルまで希釈し、原料として反応槽に仕込み、反応開始温度60℃で二酸化炭素ガス含有窒素ガス(二酸化炭素濃度30質量%)を吹き込み、炭酸化率100%になるまで反応させることにより、9.4質量%濃度の炭酸カルシウムスラリーを調製した。
参考例で得た炭酸カルシウムスラリーを脱水して固形分濃度60質量%の炭酸カルシウムケーキを調製した。
次に、このケーキに水とメタクリル酸系高性能コンクリート用減水剤(花王社製、商品名「マイティ3000S」;a=0、b=70、c=20、d=10、m=145、n=120、R2=CH3、R3=H、R4=CH3、Y=カルボニル基、M=Na、質量平均分子量=90,000)を、炭酸カルシウム固形分に対し、0.3質量%の割合で添加し、羽根分散機を用いて分散処理し、固形分濃度60質量%の変性軽質炭酸カルシウムスラリーを製造した。このものの平均粒子径及びゼータ電位を表1に示す。
次に、このケーキに水とメタクリル酸系高性能コンクリート用減水剤(花王社製、商品名「マイティ3000S」;a=0、b=70、c=20、d=10、m=145、n=120、R2=CH3、R3=H、R4=CH3、Y=カルボニル基、M=Na、質量平均分子量=90,000)を、炭酸カルシウム固形分に対し、0.3質量%の割合で添加し、羽根分散機を用いて分散処理し、固形分濃度60質量%の変性軽質炭酸カルシウムスラリーを製造した。このものの平均粒子径及びゼータ電位を表1に示す。
参考例で得た炭酸カルシウムスラリーを脱水して30質量%濃度の炭酸カルシウムケーキを調製した。
このケーキを用いること以外は、実施例1と同様にして固形分濃度30質量%の変性軽質炭酸カルシウムスラリーを製造した。このものの平均粒子径及びゼータ電位を表1に示す。
このケーキを用いること以外は、実施例1と同様にして固形分濃度30質量%の変性軽質炭酸カルシウムスラリーを製造した。このものの平均粒子径及びゼータ電位を表1に示す。
比較例
参考例で得た炭酸カルシウムスラリーを脱水して得た炭酸カルシウムケーキに、水及び炭酸カルシウム固形分に基づき0.3質量%のポリアクリル酸ナトリウム系分散剤(サンノプコ社製、商品名「OT−504」)を加え、実施例1と同様にして分散処理することにより、固形分濃度60質量%の変性軽質炭酸カルシウムスラリーを製造した。このものの平均粒子径及びゼータ電位を表1に示す。
参考例で得た炭酸カルシウムスラリーを脱水して得た炭酸カルシウムケーキに、水及び炭酸カルシウム固形分に基づき0.3質量%のポリアクリル酸ナトリウム系分散剤(サンノプコ社製、商品名「OT−504」)を加え、実施例1と同様にして分散処理することにより、固形分濃度60質量%の変性軽質炭酸カルシウムスラリーを製造した。このものの平均粒子径及びゼータ電位を表1に示す。
この表から分かるように、本発明の変性炭酸カルシウムスラリー中の粒子表面のゼータ電位は、従来の分散剤を用いて製造したものに比べ著しく小さい。
広葉樹クラフトパルプ100%のパルプ原料420mlcsfに、実施例1、2又は比較例で製造した変性炭酸カルシウムスラリーを固形分質量に基づき、30%の割合で添加し、さらにカチオン化デンプン(日本エヌエスシー社製、商品名「CATO302」)0.5質量%及び中性サイズ剤(星光ピーエムシー社製、商品名「AD1602」)0.1質量%を添加し、スリーワンモーターを用いて300rpmで5分間かきまぜ混合した。
次いで、この紙料スラリーを、水で0.5質量%濃度まで希釈したのち、歩留り向上剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名「パーコール(Percol)47」)を、パルプの固形分質量に基づき、0.02質量%を添加して抄紙用原料とした。
この抄紙用原料を角型シートマシンで手抄きし、坪量65g/m2の抄紙シートを作製した。この際のシートにおける填料歩留り率(OPR)を表2に示す。なお、この填料歩留り率(OPR)は、JIS 8003に準拠して灰分(A)を求め、次の式に従って算出した。
OPR(%)=(A/填料添加率)×100
次いで、この紙料スラリーを、水で0.5質量%濃度まで希釈したのち、歩留り向上剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名「パーコール(Percol)47」)を、パルプの固形分質量に基づき、0.02質量%を添加して抄紙用原料とした。
この抄紙用原料を角型シートマシンで手抄きし、坪量65g/m2の抄紙シートを作製した。この際のシートにおける填料歩留り率(OPR)を表2に示す。なお、この填料歩留り率(OPR)は、JIS 8003に準拠して灰分(A)を求め、次の式に従って算出した。
OPR(%)=(A/填料添加率)×100
この表から分るように、本発明の方法によると、従来の方法に比べ填料歩留り率(OPR)が著しく向上する。
本発明は、各種の製紙に際し、填料の歩留り率を高めることができるので、製紙コストを低減するために有用である。
Claims (2)
- 抄紙用パルプ懸濁液に対し、請求項1記載の製紙内填用変性炭酸カルシウムスラリーを固形分濃度に基づき、0.5〜50質量%の割合で加えて抄紙することを特徴とする製紙方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008320212A JP2010144262A (ja) | 2008-12-16 | 2008-12-16 | 製紙内填用変性炭酸カルシウム及びそれを用いた製紙方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008320212A JP2010144262A (ja) | 2008-12-16 | 2008-12-16 | 製紙内填用変性炭酸カルシウム及びそれを用いた製紙方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2010144262A true JP2010144262A (ja) | 2010-07-01 |
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Family Applications (1)
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JP2008320212A Pending JP2010144262A (ja) | 2008-12-16 | 2008-12-16 | 製紙内填用変性炭酸カルシウム及びそれを用いた製紙方法 |
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2008
- 2008-12-16 JP JP2008320212A patent/JP2010144262A/ja active Pending
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