JP2010138144A - フッ化カルボニルと含フッ素オレフィンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、フッ化カルボニルと含フッ素オレフィンを同時に製造する方法に関する。
含フッ素オレフィン化合物は、高分子材料のモノマー成分として有用であり、更に、冷媒、洗浄剤、発泡剤等に利用されているHFC(ハイドロフルオロカーボン)等の製造原料としても工業的に幅広く用いられている。特に、フッ化ビニリデン(1,1−ジフルオロエチレン)はポリフッ化ビニリデンのモノマーであり、有用性が高い化合物である。また、化学式:CF3CF=CH2で表される含フッ素オレフィンは、毒性が少なく、地球温暖化係数が小さい化合物であり、代替溶媒として有望視されている。
このような含フッ素オレフィン化合物は、脱塩化水素反応、脱フッ化水素反応、還元反応等の方法によって製造するのが一般的である。例えばフッ化ビニリデンの製造方法としては、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタンの脱塩化水素反応(特許文献1,2,3等参照)、1,1,1−トリフルオロエタンの脱フッ化水素反応(特許文献4参照)、1,2−ジクロロ−1,1,−ジフルオロエタンの脱塩素反応(特許文献5参照)等の方法が知られている。
しかしながら、特許文献1〜5の製造方法では、原料となるハロゲン化炭化水素の調製を予め行う必要であり、その調製法も安易ではないことからフッ化ビニリデンの製造にかかるコストが高価になるという問題点がある。また、塩化水素などの廃棄物を多量に処理することも必要となる。
一方、フッ化カルボニル(COF2)は、有機フッ素化合物の原料、半導体製造時のクリーニングガスなどの用途があり、有用な物質である。
従来、フッ化カルボニルの製造方法としては、炭酸ガスとフッ素ガスとを気相で反応させる方法(特許文献6参照)、一酸化炭素の電解フッ素化による方法(特許文献7参照)、溶媒存在下或いは溶媒およびトリエチルアミン存在下において、フッ化水素によりホスゲンをフッ素化する方法(特許文献8参照)、溶媒中でフッ化ナトリウムによりフッ素化する方法(特許文献9参照)、活性炭触媒の存在下において、気相でホスゲンをフッ化水素によりフッ素化する方法(特許文献10参照)、一酸化炭素をフッ素ガスにより直接フッ素化する方法(非特許文献1参照)、ホスゲンを気相で無機フッ化物と接触させ、その後気相で活性炭と接触させてホスゲンと塩化フッ化カルボニルを得た後、これを気相で活性炭と接触させてフッ化カルボニルを得る方法(特許文献11参照)、テトラフルオロエチレンと酸素とを反応させてフッ化カルボニルを得る方法(特許文献12参照)などが報告されている。
しかしながら、これらの方法は、有毒な一酸化炭素、ホスゲン等や、爆発的に燃焼するフッ素ガスを大量に取り扱うことになり、工業的規模で実施するには、安全性において問題がある。
米国特許第2628989号
米国特許第2774799号
米国特許第2551573号
米国特許第2480560号
米国特許第2734090号
特開平11−116216号
特公昭45−26611号
特開昭54−158396号
米国特許3088975号
米国特許2836622号
EP0253527号
米国特許3639429号
J.Am.Chem.Soc.1969,91,4432
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、有用な化合物である含フッ素オレフィンとフッ化カルボニルを、比較的簡単な製造工程によって、安全性を阻害することなく、安価に、しかも高い選択率で製造できる新規な方法を提供することである。
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、特定の一般式で表されるフルオロオキセタン化合物を原料として用い、これを熱分解するという簡単な方法によって、一段階の反応操作で高い選択率で含フッ素オレフィンとフッ化カルボニルを同時に製造することが可能となることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記のフッ化カルボニルと含フッ素オレフィンを同時に製造する方法を提供するものである。
1. 一般式(1):
1. 一般式(1):
(式中、Ra及びRbは同一または異なって、F、H、Cl、又は基:F(CF2)n−(nは1〜3の整数)である。但し、Ra及びRbの少なくとも一方は、F又は基:F(CF2)n−である)で表されるフルオロオキセタン化合物を熱分解させることを特徴とする、化学式:COF2で表されるフッ化カルボニルと一般式(2):
(式中、Ra及びRbは上記に同じである)で表される含フッ素オレフィンを同時に製造する方法。
2. 一般式(3):
2. 一般式(3):
(式中、Rは、F、H、Cl、又は基:F(CF2)n−(nは1〜3の整数)である。)で表されるフルオロオキセタン化合物を熱分解させることを特徴とする、化学式:COF2で表されるフッ化カルボニルと一般式:RCF=CH2(式中、Rは上記に同じである)で表される含フッ素オレフィンを同時に製造する方法。
3. 原料として用いるフルオロオキセタン化合物が、一般式(3):
3. 原料として用いるフルオロオキセタン化合物が、一般式(3):
において、RがF又はCF3の化合物である上記項2に記載の方法。
4. 常圧又は加圧下の気相中において、300℃〜800℃の温度範囲で熱分解反応を行う上記項1〜3のいずれかに記載の方法。
4. 常圧又は加圧下の気相中において、300℃〜800℃の温度範囲で熱分解反応を行う上記項1〜3のいずれかに記載の方法。
以下、本発明の製造方法について具体的に説明する。
原料化合物
本発明方法では、原料としては、一般式(1):
本発明方法では、原料としては、一般式(1):
で表されるフルオロオキセタン化合物を用いる。上記一般式(1)において、Ra及びRbは同一または異なって、F、H、Cl、又は基:F(CF2)n−(nは1〜3の整数)であり、Ra及びRbの少なくとも一方は、F又は基:F(CF2)n−である。
上記一般式(1)で表される化合物の例としては、一般式(3):
で表されるフルオロオキセタン化合物を挙げることができる。上記一般式(3)において、RはF、H、Cl、又は基:F(CF2)n−(nは1〜3の整数)である。)である。
更に、上記した一般式(3)で表されるフルオロオキセタン化合物の具体例としては、RがFである化合物として、化学式
で表される化合物、RがCF3である化合物として、化学式
で表される化合物等を例示できる。
これらの原料化合物は公知の方法に従って製造できる。例えば、特公平2−37904号公報、特開2005−239573号公報等に記載されている方法に従って、RCF=CF2(式中、Rは上記に同じである)で表される含フッ素オレフィン化合物とパラホルムアルデヒドやトリオキサンなどのホルムアルデヒド発生源化合物とを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、RがFであるフルオロオキセタン化合物については、下記反応式に従って得ることができる。
その他の化合物についても同様の方法によって得ることができる。
本発明方法
本発明の方法は、上記した一般式(1):
本発明の方法は、上記した一般式(1):
(式中、Ra及びRbは上記に同じ)で表されるフルオロオキセタン化合物を原料として用い、これを熱分解させる方法である。これにより、化学式:COF2で表されるフッ化カルボニルと一般式(2):
(式中、Ra及びRbは上記に同じである)で表される含フッ素オレフィンを同時に製造することができる。
一般式(1)で表されるフルオロオキセタンを熱分解させる方法については特に限定的ではなく、気相状態において、原料として用いるフルオロオキセタン化合物の熱分解が生じる温度以上に加熱すればよい。
この反応は、バッチ式又は連続式の反応方法で実施することができる。具体的な実施様態については特に限定的でないが、気相反応の方式としては、固定床型気相反応、流動床型気相反応などの方式を採用することができる。連続式の反応については、例えば、円筒型反応管、多管型反応器等の気相反応に利用できる反応器を用いて、該反応器の内部を所定の温度に加熱して、気体状の原料を該反応器に供給して流通させることによって実施することができる。反応管の材質は、反応温度において安定なものであれば特に限定されない。ニッケル合金、クロム鋼、銅合金、炭素鋼、チタニウム鋼、アルミニウム鋼、ガラス等を含む様々な材料を適宜用いることができる。ニッケル合金やクロム鋼としては、ステンレス、ハステロイ、インコネル、モネルなどなどが挙げられる。
反応温度は、原料として用いるフルオロオキセタン化合物の種類に応じて、その熱分解が生じる温度以上とすれば良い。通常は、反応器の中の温度として、300〜800℃程度とすることが好ましく、450〜700℃程度とすることがより好ましい。この温度範囲において、高い選択率で目的とする化学式:COF2で表されるフッ化カルボニルと一般式(2):RaRbC=H2で表される含フッ素オレフィンを同時に得ることができる。これに対して、加熱温度が低すぎる場合には、原料として用いるフルオロオキセタン化合物の転化率が低くなる傾向があり、一方、加熱温度が高すぎると、副反応が進行して上記各目的物の選択率が低下する傾向があるので、いずれも好ましくない。
反応時の圧力については、特に限定されるものではなく、常圧又は加圧下に反応を行うことができる。即ち、大気圧(0.1MPa)下において、原料とする一般式(1)で表されるフルオロオキセタン化合物を中空の反応管に供給することによって実施することができる。この場合、反応系内の圧力については特に限定的ではないが、例えば、1.0MPa程度までの加圧された状態としてもよい。
反応条件を加圧下、気相の温度均一性を向上させるなど目的で充填剤を使用することも可能である。充填剤としては、活性炭、アルミナ、酸化チタン、シリカゲルなどが挙げられる。これらは粉末でも球状、ペレット状などの成形品で使用することができる。
原料として用いるフルオロオキセタン化合物は、反応器にそのまま供給してもよく、あるいは、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスで希釈して供給しても良い。不活性ガスで希釈することによって、例えば、原料の流速の制御が容易となる。不活性ガスの混合量については特に限定的ではないが、例えば、原料として用いるフルオロオキセタン化合物1モルに対して、0〜20モル程度の範囲とすることができる。
反応時間については特に限定的ではないが、反応時間が短すぎると原料の転化率が不十分となり、一方、反応時間が長すぎると副生成物量が増加して、選択率が低下する傾向がある。通常、所定の温度範囲に加熱された反応管内における滞留時間を0.1秒〜10分程度、好ましくは1秒〜60秒とすればよい。
上記した方法によれば、反応器出口では、化学式:COF2で表されるフッ化カルボニルと一般式(2):RaRbC=H2で表される含フッ素オレフィンを含む反応生成物を得ることができる。例えば、化学式
で表されるフルオロオキセタン化合物を原料とする場合には、フッ化カルボニルとCF2=CH2で表される含フッ素オレフィンを同時に製造することができ、化学式
で表されるフルオロオキセタン化合物を原料とする場合には、フッ化カルボニルとCF3CF2=CH2で表される含フッ素オレフィンを同時に製造することができる。
上記した反応条件の範囲内においては、通常、一般式(1)で表されるフルオロオキセタン化合物の転化率は、5〜70%程度となる。この時、化学式:COF2で表されるフッ化カルボニルの選択率と一般式(2):RaRbC=H2で表される含フッ素オレフィンの選択率との和は、60〜100%程度となる。これらの転化率、及び選択率については、反応温度、反応時間などを適宜設定することによって調整することが可能である。
反応生成物は、通常、蒸留などの慣用の手順により分離・精製してフッ化カルボニルと含フッ素オレフィンを回収することができる。この際、未反応の出発材料は、製造のために反応器へと再循環されることができる。
本発明方法によれば、原料化合物を熱分解するという非常に簡単な方法によって、目的とするフッ化カルボニルと含フッ素オレフィンを同時に選択性良く製造することができる。このため、本発明方法は工業的スケールにおいて実施可能なフッ化カルボニルと含フッ素オレフィンの製造方法として有用性の高い方法である。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
電気炉を備えた円筒形反応管からなる気相反応装置(SUS316製、直径1.0cm・長さ30cm)を用い、この反応装置に、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタン(TFO)(10mL/min)とN2(5mL/min)(いずれも標準状態での流量)を供給しながら、反応管の温度を580℃に設定した。反応器内における原料の滞留時間は94秒であった。
電気炉を備えた円筒形反応管からなる気相反応装置(SUS316製、直径1.0cm・長さ30cm)を用い、この反応装置に、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタン(TFO)(10mL/min)とN2(5mL/min)(いずれも標準状態での流量)を供給しながら、反応管の温度を580℃に設定した。反応器内における原料の滞留時間は94秒であった。
反応器出口ガスについて、GC−MSにより生成物を分析した後、アルカリ水溶液でCOF2をCO2に完全に変換し、その後、組成をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応器入口から供給したN2を内部標準として生成ガスの流量を算出した。
その結果、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンの転化率は67%となり、生成物の組成は、CF2=CH2(VdF)が 58モル%、COF2が32モル%(CO2換算として)であった。CF2=CF2は検出されなかった。
実施例2
反応管の温度を530℃に変更すること以外は、実施例1と同様にして、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンの熱分解反応を行った。
反応管の温度を530℃に変更すること以外は、実施例1と同様にして、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンの熱分解反応を行った。
その結果、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンの転化率は35%であり、生成物の組成は、CF2=CH2が47モル%、COF2が38モル%(CO2換算として)であった。
実施例3
実施例1で用いたものと同じ反応器に活性炭(16mL)を充填した後、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタン(TFO)(100mL/min)とN2(5mL/min)(いずれも標準状態での流量)を供給しながら、反応管の温度を650℃に設定した。反応器内における原料の滞留時間は13秒であり、反応管内部の活性炭層への滞留時間は9秒であった。
実施例1で用いたものと同じ反応器に活性炭(16mL)を充填した後、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタン(TFO)(100mL/min)とN2(5mL/min)(いずれも標準状態での流量)を供給しながら、反応管の温度を650℃に設定した。反応器内における原料の滞留時間は13秒であり、反応管内部の活性炭層への滞留時間は9秒であった。
その結果、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンの転化率は58%であり、生成物の組成は、CF2=CH2が41モル%、COF2が43モル%(CO2換算として)であった。
以上の実施例1から3の結果を下記表1に示す。
Claims (4)
- 常圧又は加圧下の気相中において、300℃〜800℃の温度範囲で熱分解反応を行う請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008318203A JP2010138144A (ja) | 2008-12-15 | 2008-12-15 | フッ化カルボニルと含フッ素オレフィンの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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---|---|---|---|
JP2008318203A JP2010138144A (ja) | 2008-12-15 | 2008-12-15 | フッ化カルボニルと含フッ素オレフィンの製造方法 |
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JP2010138144A true JP2010138144A (ja) | 2010-06-24 |
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ID=42348595
Family Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2008318203A Pending JP2010138144A (ja) | 2008-12-15 | 2008-12-15 | フッ化カルボニルと含フッ素オレフィンの製造方法 |
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Country | Link |
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2008
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