JP2010133965A - 結核菌に特異的なt細胞(cd8+)を検出するための方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アミノ酸配列(TLAGKGISVV)のC末端から少なくとも8の連続するアミノ酸からなるペプチドが、T細胞(CD8)を特異的に刺激して、顕著に高いIFN-γ量を与えることを見出した。この発見を元に、MPB/MPT51分子に特異的なT細胞(CD8)を検出する。
【選択図】なし
Description
この結核菌の抗原として、Ag85A、Ag85BなどのAg85ファミリータンパク質はMycobacteriaに共通する主要なタンパク質であり、有効な感染防御抗原として働くことが知られている。
結核菌やBCGから分離されたタンパク質であるMPB/MPT51分子はこのファミリーに属し、その配列が解明されており(非特許文献1)、結核菌の防御抗原として機能する結果が得られている(非特許文献2)。
発明者らは、既にDNAワクチンを用いてこのMPB/MPT51のT細胞エピトープを同定することを試みているが(非特許文献3)、エピトープは同定されておらず、より正確な同定が望まれていた。
本発明者らは、DNAワクチンを用いてMPB/MPT51分子内のT細胞エピトープの固定を試みてきている(非特許文献3)。しかし、エピトープとして有効なアミノ酸数は8〜10といわれており、今まで同定したと考えられたエピトープはこれより遥かに大きく、より正確にエピトープを同定することが求められていた。
即ち、本発明は、(a)又は(b)のペプチドである。
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列のC末端から少なくとも8の連続するアミノ酸からなるペプチド
(b)(a)のペプチドのアミノ酸配列においてC末端を除く1又は2のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、T細胞(CD8+)に対して免疫活性を示すペプチド
このペプチドを、必要に応じて有効量のアジュバント及び調剤上許容し得る担体と共に含有してワクチン製剤とすることができる。
この製剤は、注射により皮下、皮内又は筋肉に注入する等適当な経路で患者に投与することができる。ワクチンの投与量は共に投与するアジュバントの有無等によって異なるが、一般的に1成人1投与あたり1μg〜100mgの量で投与する。本ワクチンと共にアジュバントを投与する場合、一般的には、1成人1投与あたり1ng〜1mgの量を投与する。アジュバントとしてはdimethyl dioctadecylammonium bromide (DDA, Eastman Kodak)、monophosphoryl lipid A(MPL, RIBI ImmunoChem Research Inc.)等を使用できる。
ベクターとしては、原核または真核生物宿主細胞において自律複製可能または染色体中への組込み可能であって、目的DNAの転写が可能な位置にプロモーターを含有しているものを選択できる。ベクターはプラスミド、ファージを含むウイルス、コスミドなどである。ベクターにはさらに、選択マーカー、リボソーム結合部位、複製開始点、ターミネーター、エンハンサー、ポリリンカーなどを適宜含むことができる。細菌等の原核生物用や、菌類、酵母類、昆虫細胞、植物細胞、動物細胞等の真核生物用の種々の発現ベクターを用いることができる。
プロモーターとしては、市販の発現ベクターに予め組込まれているもの等を適宜選択して用いることができる。例えば、原核生物用としてtrpプロモーター、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーターなど、酵母用としてGAPプロモーター、ADHプロモーター、GPDプロモーターなど、動物細胞用としてサイトメガロウイルスプロモーター、SV40初期プロモーター、レトロウイルスプロモーター、乳腺細胞特異的プロモーターなど、植物細胞用としてカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターなどが挙げられる。
形質転換法として、塩化カルシウム法、燐酸カルシウム法、酢酸リチウム法、エレクトロポレーション法、プロトプラスト法、スフェロプラスト法、リポフェクション法、アグロバクテリウム法などを用いることができる。
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
MPT51をコードするDNAをプラスミドpMB49(長崎大学医学部大原直也氏より入手)からプライマー(配列番号2及び3)を用いてPCR法により増幅した。pMB49はM.bovis BCG Tokyo strainのMPB51遺伝子(Gene Bank/EMBL/CCBJ accession number: D26486)を含む。Xba Iで消化されたPCR断片を発現プラスミドpCI(Promega, Madison, WI)のサイトメガルウイルスのエンハンサー/プロモーター領域の下流に位置するXba I位置に挿入した。
HLA-A*0201トランスジェニック/マウスHMCクラスI欠損(HHD)マウス(パスツール研究所、フランス、F.A. Lemonnier氏より入手)を遺伝子銃(Bio-Rad Laboratories)を用いて上記プラスミドDNAワクチン(pCI-MPT51)で免疫処置した。0.5mgの金粒子を1μgのプラスミドDNAワクチンでコートした。マウスを免疫するために、腹部の皮膚の毛を剃り70%エタノールで拭いた。このマウスに、1度に0.5mgの金粒子を2回打ち込んだ。マウスは一週間の間隔を空けて4回に分けて2μgのプラスミドDNAを4度打ち込んだ。
MPB51(配列番号4)について、図1に示すように、20アミノ酸から成るペプチドを10アミノ酸が重複するように選び、26種のペプチドを合成した。但し、最後のペプチド(255〜266)は12アミノ酸から成る。
免疫したマウスから採取した脾臓細胞の懸濁液を、96穴プレートのRPMI/10FCS中で5μMの上記各ペプチドの存在下、37℃、5%CO2条件で培養した。24時間後に上清液を回収してIFN-γ濃度評価まで−20℃で保存した。
IFN-γ濃度はELIZA法で測定した。96穴ELISAプレート(E.I.A./R.I.A.プレートA/2)をキャプチャ抗体(抗murine IFN-γモノクローナル抗体(mAb) R4-6A2; BD PharMingen)で4℃で一晩コートし、0.05% Tween-20を含むPBSで洗浄し、Block Ace(大日本製作所)により37℃で2時間ブロックした。洗浄後、培養上清液をプレートに添加し、4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、0.5μg/mlビオチンでラベルされた抗murine IFN-γモノクローナル抗体(mAb)(XMG1.2; BD PharMingen)をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、0.1μg/mlのホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ストレプタビジン(streptavidine)(Vector Laboratories, Inc.)を添加した。次にこのプレートを室温で30分間インキュベートした。洗浄後、3,3',5,5'-テトラメチルベンゼンジヒドロクロライド(TMB, Sigma-Aldrich Japan)を用いて、結合したHRP結合ストレプタビジンを測定した。5分後、色反応を2M H2SO4で終了させ、EZS-ABSマイクロプレートリーダー(IWAKI)を用いて450nmの吸収を測定した。
結果を図2に示す。MPB51(図1、配列番号4)の51〜70番目(P51)が最も高いIFN-γ量を与えることが分かった。
次に、MPB51(図1、配列番号4)の(1)51〜70番目、(2)21〜29番目、(3)53〜61番目(TLAGKGISV)、及び(4)53〜62番目(TLAGKGISVV)から成るペプチドを合成した。
抗原特異的T細胞サブセットについて、T細胞表現型及び細胞内IFN-γ合成を、同時フローサイトメトリー評価法により測定した。RBC(赤血球)を除去するために、実施例1で得た免疫脾臓細胞をACK溶解緩衝液で室温で5分間処理し、PRMI−1640培養液で2度洗浄し、PRMI/10FCS中に1×107細胞/mlの濃度で再懸濁した。この細胞(200μl)を、1000倍希釈のGolgiplugストック溶液(brefeldin A solution; BD PharMingen)中の5μMの上記合成ペプチドの存在又は不存在下で、37℃で4時間インキュベートした。次に細胞をFACS緩衝液(1%FCS及び0.1%NaN3を含むリン酸緩衝食塩水)で2度洗浄し、イソチオシアン酸フルオレッセイン(FITC)結合抗CD8抗体(53-6.7, BD PharMingen)及びCyChrome結合抗CD4抗体(RM4-5, BD PharMingen)で氷上で30分間染色し、2回洗浄し、続いてCytofix/Cytoperm キット(BD PharMingen)を用いて細胞内サイトカイン染色(ICS)を行った。IFN-γに対する細胞内サイトカイン染色はフィコエリトリン(PE)結合抗IFN-γ抗体(clone XMG1.2; BD PharMingen)を用いて行った。細胞を2回洗浄し、続いてFACS緩衝液に再懸濁した。これらをEPICSデジタルフローサイトメーター(EPICS XL; Beckman Coulter)で分析した。
即ち、T細胞(CD8)がMPB51(配列番号4)の53〜62番目から成るペプチドに反応して、IFN-γを生産したことを示している。
これは、この(4)の配列がMPT51、即ち結核菌のT細胞エピトープであることを示すものであり、(3)と比較するとそのC末端に特徴があるといえる。更に、通常有効なエピトープは8〜10アミノ酸であると考えられているため、MPT51のエピトープは(4)の配列のC末端を含む8〜10アミノ酸から成る部分であるということができる。
Claims (3)
- 細胞を配列番号1で表されるアミノ酸配列(TLAGKGISVV)のC末端から少なくとも8の連続するアミノ酸からなるペプチドと接触させ、これをフローサイトメトリーを用いて、このペプチドに反応する細胞を検出することから成る、該細胞中のMPB/MPT51分子に特異的なT細胞(CD8+)を検出するための方法。
- 細胞を配列番号1で表されるアミノ酸配列(TLAGKGISVV)のC末端から少なくとも8の連続するアミノ酸からなるペプチドの存在下で培養し、T細胞を分離し、このT細胞を抗IFN−γ抗体及び抗CD8抗体を用いたフローサイトメトリーを用いて、これら両抗体に反応するT細胞を検出することから成る、該細胞中のMPB/MPT51分子に特異的なCD8+T細胞を検出するための方法。
- 前記細胞がヒトから取り出した細胞である請求項1又は2に記載の方法。
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