JP2010132584A - 多管式熱交換器型反応器を用いた気相酸化反応の運転方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】多管式熱交換器型反応器にて気相酸化反応を行う場合に、反応器の特性を考慮した、簡便で安定な運転方法を提供する。
【解決手段】少なくとも触媒が充填された触媒層を有する複数本の反応管と、少なくとも1枚の邪魔板とを備える多管式熱交換器型反応器を用いて、前記反応管の内部に原料ガスを供給しつつ、前記多管式熱交換器型反応器の胴側に熱媒体を供給することにより、反応生成ガスを得る気相酸化反応において、反応器内の熱媒体熱収支を考慮した所定の条件を満たすように運転する。
【選択図】図1
【解決手段】少なくとも触媒が充填された触媒層を有する複数本の反応管と、少なくとも1枚の邪魔板とを備える多管式熱交換器型反応器を用いて、前記反応管の内部に原料ガスを供給しつつ、前記多管式熱交換器型反応器の胴側に熱媒体を供給することにより、反応生成ガスを得る気相酸化反応において、反応器内の熱媒体熱収支を考慮した所定の条件を満たすように運転する。
【選択図】図1
Description
本発明は、多管式熱交換器型反応器を用いた気相酸化反応の運転方法に関する。
例えば、プロピレンからのアクロレインやアクリル酸、イソブチレンからのメタクロレインやメタクリル酸などの気相酸化反応を工業的に実施する場合、一般的にその反応にて発生する反応熱が大きいため、巨大な多管式熱交換器型反応器を用いることが広く行われている。
特に、反応生成ガスからの触媒の分離性の観点から、酸化反応触媒を複数の反応管に充填し、そこに原料ガスや分子状酸素を流通させ、反応管の外側を、熱媒を用いて加熱、もしくは除熱することで酸化反応を進行させている場合が多い。これにより、反応量を安全に制御し、触媒の急速な劣化を回避し、かつ過度の反応を抑制し収率を確保することが行いやすい。
ところで、一般に用いられる反応器は、通常の熱交換器同様に、熱媒体が該反応器内の反応管の周囲を均一に通過するように、邪魔板と呼ばれる熱媒体の流路を定めるための板が設置されている。この邪魔板により熱媒体の短絡流を抑制し、かつ反応管周囲の除熱能力を維持するわけであるが、逆にこの邪魔板により反応器内での熱媒体の温度分布が発生することはあまり意識されていない。
反応で発生する熱や原料ガスの予熱に必要な熱が、熱媒体の流路過程で熱媒体に出入することにより、熱媒体温度は反応器の中で大きな分布を持ちやすい。熱媒体温度が高い領域に存在する反応管と熱媒体温度が低い領域に存在する反応管では、異なる反応状態が形成される。特に熱媒体温度が高い領域に存在する反応管では、周囲の反応管よりも過度の反応が生じ収率の低下を引き起こしたり、局部的な触媒の劣化を引き起こしたり、引いては除熱能力に対し反応発熱速度が勝る場合には反応の暴走に繋がる場合がある。反応の暴走が起こりそうな状況に陥った場合には、原料ガスの供給を抑えたり、緊急停止したりせねばならず、生産計画に大きな損害を与えうる。
ここで重要なことは、局部的な反応管のみ不良もしくは危険な状態にあり、その他の反応管は至って正常にあることである。即ち、反応器の構造に起因する障害であり、特許文献1などに示される触媒の活性調整や、特許文献2などに示される不活性担体による触媒層の希釈などでは、本質的に対応が難しい。
このような巨大反応器内の熱媒体温度分布に対する処置として、例えば特許文献3に、反応管内部の反応状態を予測し、その予測結果に応じて、反応管間の反応状態の不均一性が減少されるように反応管における触媒の充填仕様を変更する方法が示されている。しかしながら、この方法では、反応管ごとに触媒の充填仕様を変える必要があるため、触媒計量や充填作業が複雑となる。また、その予測のためには高価な計算ソフトや膨大な情報量を処理できる高価な計算機などを揃えたり、反応予測式の構築のために膨大な基礎データの採取を行ったりなど、費用、作業負荷が高い割にはその予測精度の信頼性も問題である。
特開平9−241209号公報
特公昭53−30688号公報
特開2003−206244号公報
本発明は、多管式熱交換器型反応器にて気相酸化反応を行う場合に、反応器の特性を考慮した、簡便で安定な運転方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、反応器内の熱媒体温度分布を助長するのは特に反応器の原料ガス入側の熱媒体熱量収支であり、この箇所の熱量収支をある条件に設定するだけで、反応管ごとの不均一性を低減し、局部的な異常反応を抑制し、安定に気相酸化反応を実施可能であることを見出した。
すなわち本発明は、少なくとも触媒が充填された触媒層を有する複数本の反応管と、少なくとも1枚の邪魔板とを備える多管式熱交換器型反応器を用いて、前記反応管の内部に原料ガスを供給しつつ、前記多管式熱交換器型反応器の胴側に熱媒体を供給することにより、反応生成ガスを得る気相酸化反応において、下記式(1)を満たすことを特徴とする気相酸化反応の運転方法である。
ここで、Frは原料ガス流量(kg/s)を熱媒体供給量(kg/s)で除したものを表し、CPは熱媒体の比熱(J/kg/K)を表し、CPgは原料ガスの比熱(J/kg/K)を表し、ΔTgは熱媒体の供給温度(K)から原料ガスの供給温度(K)を引いたものを表し、βは総括伝熱係数(J/m2/K)を原料ガス流量(kg/s)で除したものを表し、Aは反応管への原料ガス導入部から一段目の邪魔板までの触媒層が形成された領域における反応管一本あたりの伝熱面積(m2/本)を表し、ΔTcは反応管への原料ガス導入部から一段目の邪魔板までの触媒層の平均温度(K)から熱媒体の供給温度(K)を引いたものを表す。
また本発明は、さらに、それぞれの反応管が、原料ガスが触媒層へ到達するまでの位置に不活性物質のみを充填した不活性物質層を有しており、前記反応管への原料ガス導入部から一段目の邪魔板までの長さのうち、前記不活性物質層の長さをX、前記触媒層の長さをLとしたとき、下記式(2)を満たすことを特徴とする運転方法である。
0.15<X/L<0.90 (2)
また本発明は、前記の気相酸化反応の運転方法により、メタクロレインを含有する原料ガスを用いてメタクリル酸を製造するメタクリル酸の製造方法である。
また本発明は、前記の気相酸化反応の運転方法により、メタクロレインを含有する原料ガスを用いてメタクリル酸を製造するメタクリル酸の製造方法である。
本発明によれば、多管式熱交換器型反応器にて気相酸化反応を行う際に、非常に簡便な方法で、反応器構造に由来する局部的な異常反応を抑制し、安定した運転が可能となる。
本発明では、多管式熱交換器型反応器を用いて、反応管の内部に原料ガスを供給しつつ、多管式熱交換器型反応器の胴側に熱媒体を供給することにより、反応生成ガスを得る気相酸化反応において、前記式(1)を満たすことを特徴とする。式(1)の左辺の第1項は熱媒が奪われる熱量を表しており、式(1)の左辺の第2項は熱媒に与えられる熱量を表している。すなわち、式(1)の左辺の値は、反応器半径方向の熱媒体温度分布の程度を表しており、その値を0.5以下となるように条件を設定することで、安定した運転が可能となる。
さらに本発明では、前記式(2)を満たすことが好ましい。式(2)を満たすことで、式(1)を満たす条件を設定することが容易になる。
本発明における気相酸化反応とは、限定されるものではないが、中でもイソブチレンもしくはプロピレンからの(メタ)アクロレイン生成、(メタ)アクロレインからの(メタ)アクリル酸生成などの、酸化反応熱が著しく大きいものに好適である。
用いられる触媒としては、例えば、イソブチレン等からメタクロレイン等への酸化反応やプロピレンからアクロレイン等への酸化反応には、次の式(3)で表される組成を有する固体触媒が好適であるが、目的とする反応に適したものであれば特に限定されない。
MoaBibFecMdXeYfZgSihOi (3)
(式(3)において、Mo、Bi、Fe、SiおよびOはそれぞれモリブデン、ビスマス、鉄、ケイ素および酸素を示し、Mはコバルトおよびニッケルからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、Xはクロム、鉛、マンガン、カルシウム、マグネシウム、ニオブ、銀、バリウム、スズ、タンタルおよび亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、Yはリン、ホウ素、硫黄、セレン、テルル、セリウム、タングステン、アンチモンおよびチタンからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、Zはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示す。a、b、c、d、e、f、g、hおよびiは各元素の原子比を表し、a=12のときb=0.01〜3、c=0.01〜5、d=1〜12、e=0〜8、f=0〜5、g=0.001〜2、h=0〜20であり、iは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素原子比である。)
また、メタクロレインからメタクリル酸への酸化反応には、次の式(4)で表される組成を有する固体触媒が好適であるが、目的とする反応に適したものであれば特に限定されない。
(式(3)において、Mo、Bi、Fe、SiおよびOはそれぞれモリブデン、ビスマス、鉄、ケイ素および酸素を示し、Mはコバルトおよびニッケルからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、Xはクロム、鉛、マンガン、カルシウム、マグネシウム、ニオブ、銀、バリウム、スズ、タンタルおよび亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、Yはリン、ホウ素、硫黄、セレン、テルル、セリウム、タングステン、アンチモンおよびチタンからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、Zはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示す。a、b、c、d、e、f、g、hおよびiは各元素の原子比を表し、a=12のときb=0.01〜3、c=0.01〜5、d=1〜12、e=0〜8、f=0〜5、g=0.001〜2、h=0〜20であり、iは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素原子比である。)
また、メタクロレインからメタクリル酸への酸化反応には、次の式(4)で表される組成を有する固体触媒が好適であるが、目的とする反応に適したものであれば特に限定されない。
MoaPbVcCudXeYfZgOh (4)
(式(4)において、Mo、P、V、CuおよびOはそれぞれモリブデン、リン、バナジウム、銅および酸素を示し、Xはアンチモン、ビスマス、ヒ素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、セレン、ケイ素、タングステン、ホウ素および銀からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、Yは鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、タンタル、マンガン、コバルト、バリウム、ガリウム、セリウムおよびランタンからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、Zはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、a、b、c、d、e、f、gおよびhは各元素の原子比を表し、a=12のときb=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0〜2、e=0〜3、f=0〜3、g=0.01〜3であり、hは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素原子比である。)
固体触媒の形状、大きさ等については特に制限はなく、球状、円柱状、リング状、星形状等、通常の打錠成形機、押出成形機、造粒機等で成形されたものが用いられる。また、上記のような形状を有する担体に触媒活性物質を担持した担持触媒であってもよい。2以上の固体触媒群に含まれる固体触媒の形状は触媒群ごとに異なっていてもよいが、触媒の製造が簡易になることから、形状は同一であることが好ましい。
(式(4)において、Mo、P、V、CuおよびOはそれぞれモリブデン、リン、バナジウム、銅および酸素を示し、Xはアンチモン、ビスマス、ヒ素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、セレン、ケイ素、タングステン、ホウ素および銀からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、Yは鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、タンタル、マンガン、コバルト、バリウム、ガリウム、セリウムおよびランタンからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、Zはカリウム、ルビジウム、セシウムおよびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を示し、a、b、c、d、e、f、gおよびhは各元素の原子比を表し、a=12のときb=0.5〜3、c=0.01〜3、d=0〜2、e=0〜3、f=0〜3、g=0.01〜3であり、hは前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素原子比である。)
固体触媒の形状、大きさ等については特に制限はなく、球状、円柱状、リング状、星形状等、通常の打錠成形機、押出成形機、造粒機等で成形されたものが用いられる。また、上記のような形状を有する担体に触媒活性物質を担持した担持触媒であってもよい。2以上の固体触媒群に含まれる固体触媒の形状は触媒群ごとに異なっていてもよいが、触媒の製造が簡易になることから、形状は同一であることが好ましい。
また、固体触媒を充填する際には、固体触媒をシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリコンカーバイト、チタニア、マグネシア、セラミックボールやステンレス鋼等の不活性担体で希釈して用いることもできる。
多管式熱交換器型反応器としては、化学工業で広く使用される化学機械の一つである多管式熱交換器を用いることができる。多管式熱交換器とは、一般的に管状胴体の両端部にそれぞれ1枚以上の管板を内蔵し、該管板間に両端部外周を固定された多数本の伝熱管(反応管)を有するものである。伝熱管の本数は、複数本であればよく、例えば10000〜35000本でもよい。この多管式熱交換器の伝熱管の内部に固定触媒が充填され、伝熱管の中に原料ガスが流通され、一方伝熱管の外側を熱媒体が流通することにより、伝熱管の管壁を介して酸化反応熱が授受され、反応器内の反応を制御できる。
多管式熱交換器の中に設置される、伝熱管外側を流通する熱媒体の流路を定める邪魔板の枚数は、特に限定されない。例えば、1枚でもよく、2枚以上でもよい。伝熱管の取り付け強度、熱媒体循環設備の能力、熱媒体循環による圧力損失、管板の耐圧性などを考慮し、適宜経済性に合うように設計すればよい。
また、邪魔板の形式としては、セグメンタル型、ダブルセグメンタル型、ディスク−ドーナツ型、ロッド型など様々な型式があり、本発明は特に熱媒体の流路履歴の影響を受けやすい欠円型セグメンタルバッフルにおいて効果を発揮するが、特に限定されるものではない。
反応器に原料ガスを供給する方法は、原料の形態によって適宜選定すればよい。例えば、原料が液体の場合にはケトル型リボイラーやストリッパーなどを用いて原料を揮発させて供給することもできるし、原料が気体の場合には圧力差を利用してそのまま反応器に導入しても良いし、圧縮機で押し込む操作を行っても良い。また、反応器に原料ガスが導入される前に、原料ガスを予熱する操作を行っても良い。
反応器胴側に導入する熱媒体としては、例えば、硝酸カリウムおよび亜硝酸ナトリウム他を含む塩溶融物が挙げられるが特に限定されず、使用する温度、圧力環境によって適したものを選定すればよい。
熱媒体の供給設備としては、熱媒体タンクを備えポンプを経由して循環させてもよいし、複数台のポンプを備えて循環流量を制御してもよいし、さらに反応器にポンプを直結して熱媒体タンクを省略してもよい。また、供給設備は1系列でもよいし、2系列以上設けてもよい。また、反応器への熱媒体供給方法は、反応器円周から均一に供給する方法を用いてもよいし、複数個のノズルから供給する方法を用いても良いし、あるいは単一のノズルから供給する方法を用いてもよい。ノズルを用いる場合は、反応器への供給口に角度を持たせ、できるだけ均一に導入することが好ましい。
原料ガスの流通方向と熱媒体の流通方向は、併流型、向流型、直交流型など適宜選択できるが、一般的には原料ガス入側の反応速度が大きく、かつ反応生成ガス出側は途中の反応履歴の影響を受けやすいことから、反応制御の観点から併流型とすることが好ましい。
反応管の原料ガス入り口部と触媒層との間に、触媒のサポートや原料ガスの予熱などを目的とした不活性物質層を設けても良い。不活性物質層は不活性物質のみからなる。不活性物質とは、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリコンカーバイト、チタニア、マグネシア、セラミックボールやステンレス鋼等、目的とする酸化反応に寄与しない物質であれば何を用いても良いが、特に、触媒層の平均的な活性を調整するために不活性担体で触媒濃度の希釈操作を行っている場合には、同一の不活性担体を用いると、反応終了後の抜き取り、篩別操作が簡便となり好都合である。
反応管への原料ガス導入部から一段目の邪魔板までの触媒層の平均温度(K)を把握するために、触媒層の中に測温器具を設置することが好ましい。特に、伝熱管の原料ガス入側の端部と、端部から数えて反応器内の1枚目の邪魔板との間には測定ポイントを設けておくと便利である。設置される測温器具の個数は、多いほど内部の状態を的確に把握できるが、一方で設置コストやデータ処理の煩雑性を増すため、反応管外側の熱媒体の流路方向が変化する場所や、触媒の反応特性上発熱しやすい場所など、代表的なポイントを適宜選択してその設置数を最低限としておくことが好ましい。触媒の反応特性上発熱しやすい場所は、例えばベンチ反応器のように反応管が1本の反応設備で反応を行った際に触媒層の温度を計測して設定しても良いし、反応速度解析やシミュレーションを用いて計算で求めても良い。また、代表的なポイントを選択せずとも、現実的な分割数で反応器を仮想的に均一に分割し、各分割された領域に一様に測温器具を設置することでも構わない。
設置される測温器具は、直接触媒層の中に設置しても良いし、保護管の中など隔壁を設けて設置してもよい。また、測温器具は、必要に応じて移動可能とし、一つの測温器具で多数の場所の温度を測定しても良い。
触媒層の平均温度を求めるには、触媒層の中に埋設された多数の測温器具から得られる数値を直接平均して求めても良いし、代表的な測定点での測定結果と反応速度解析結果を合わせてその近傍の触媒層温度分布を類推してもよい。また、反応器全体をシミュレーションした結果から温度分布を類推して求めることでも構わない。
上記のような気相酸化反応の運転方法により、メタクロレインを含有する原料ガスを用いてメタクリル酸を製造する際に用いるメタクロレインを含有する原料ガスは、反応原料としてメタクロレインと酸素を含んでいれば特に限定されないが、一般的にはメタクロレインを3〜9容量%、酸素を5〜15容量%および水蒸気を5〜50容量%含むガス(以下、単に原料ガスという。)を用いることが好ましい。この原料ガスには、本反応に対して実質的に影響を与えない低級飽和アルデヒド、ケトンなどの不純物を少量含んでいてもよいし、二酸化炭素等の不活性ガスを加えて希釈してもよい。原料ガスの流量は特に限定されないが、空間速度が300〜3000hr-1となるような流量が好ましい。また、反応圧力は常圧から数気圧まで実施できる。また、原料ガスの酸素源には空気を用いるのが経済的に有利である。反応器に供給される原料ガスの温度としては、特に限定されないが、100〜300℃が好ましい。
〔実施例1〕
図1に示す反応器を用いて、メタクロレインの気相接触酸化を行った。式(4)で示される組成であり、酸素を除いた原子比(Mo12P1.5V0.5Cu0.3Te0.1Fe0.4Cs1)の、φ5mm×H5mmの円筒形状であるメタクロレインの気相接触酸化によるメタクリル酸合成用触媒(以下、触媒)と、直径6mmのアルミナ球を、内径27.2mm、長さ6mの反応管2を備えるセグメンタル型邪魔板3を有する反応器1に、原料ガス入り側5から次の条件で充填した。また、原料ガス入り側端部から数えて1枚目の邪魔板4の近傍に、触媒層温度を測定するための熱電対7〜12を設置した。
第一層(不活性物質層):担体250g
第二層(触媒層):担体382g、触媒1440g
第三層(触媒層):触媒1822g
その結果、X/L=0.441、A=0.07773となった。
図1に示す反応器を用いて、メタクロレインの気相接触酸化を行った。式(4)で示される組成であり、酸素を除いた原子比(Mo12P1.5V0.5Cu0.3Te0.1Fe0.4Cs1)の、φ5mm×H5mmの円筒形状であるメタクロレインの気相接触酸化によるメタクリル酸合成用触媒(以下、触媒)と、直径6mmのアルミナ球を、内径27.2mm、長さ6mの反応管2を備えるセグメンタル型邪魔板3を有する反応器1に、原料ガス入り側5から次の条件で充填した。また、原料ガス入り側端部から数えて1枚目の邪魔板4の近傍に、触媒層温度を測定するための熱電対7〜12を設置した。
第一層(不活性物質層):担体250g
第二層(触媒層):担体382g、触媒1440g
第三層(触媒層):触媒1822g
その結果、X/L=0.441、A=0.07773となった。
反応器の胴側部6には、硝酸カリウム50質量%および亜硝酸ナトリウム50質量%からなる塩溶融物(CP=1547J/kg/K)を熱媒体として循環させ、反応管2にはメタクロレイン:酸素を1:2で含む原料ガス(CPg=1157J/kg/K)を流通させた。熱媒体循環量と原料ガス流量を調節してFr=0.01754、β=100000とし、熱媒体温度と原料ガス温度を調整してΔTg=147Kとした。
その結果、ΔTc=22.1Kとなり、測定点の温度は全て一定値のまま安定し、メタクリル酸の製造を安定に行うことができた。この時、式(1)の左辺の値は0.019であった。
〔比較例1〕
表1に示す条件で、実施例1と同様の操作を行った。その結果、熱電対7の温度は安定することなく徐々に上昇し、反応暴走を起こす危険性があったため、急遽原料ガスの供給を通常の75%まで落とした。熱電対7の温度が安全な温度に低下するまでおよそ2週間を要し、その間は低負荷運転を余儀なくされた。この時、式(1)の左辺の値は0.544であった。
表1に示す条件で、実施例1と同様の操作を行った。その結果、熱電対7の温度は安定することなく徐々に上昇し、反応暴走を起こす危険性があったため、急遽原料ガスの供給を通常の75%まで落とした。熱電対7の温度が安全な温度に低下するまでおよそ2週間を要し、その間は低負荷運転を余儀なくされた。この時、式(1)の左辺の値は0.544であった。
〔実施例2、3〕
表1示す条件で、実施例1と同様の操作を行った場合にどのようになるかを、流動解析ソフトと反応解析で得られた反応シミュレーションをハイブリッドさせた反応シミュレーションで確認した。その結果、測定点の温度は全て一定値のまま安定した。この時、式(1)の左辺の値は、それぞれ0.279、0.356であった。
表1示す条件で、実施例1と同様の操作を行った場合にどのようになるかを、流動解析ソフトと反応解析で得られた反応シミュレーションをハイブリッドさせた反応シミュレーションで確認した。その結果、測定点の温度は全て一定値のまま安定した。この時、式(1)の左辺の値は、それぞれ0.279、0.356であった。
〔比較例2〕
表1示す条件で、実施例1と同様の操作を行った場合にどのようになるかを、流動解析ソフトと反応解析で得られた反応シミュレーションをハイブリッドさせた反応シミュレーションで確認した。その結果、熱電対11の位置の温度は安定することなく上昇し続け、安定的に運転することが難しいことが判明した。この時、式(1)の左辺の値は0.853であった。
表1示す条件で、実施例1と同様の操作を行った場合にどのようになるかを、流動解析ソフトと反応解析で得られた反応シミュレーションをハイブリッドさせた反応シミュレーションで確認した。その結果、熱電対11の位置の温度は安定することなく上昇し続け、安定的に運転することが難しいことが判明した。この時、式(1)の左辺の値は0.853であった。
1・・・反応器
2・・・反応管
3・・・セグメンタル型邪魔板
4・・・原料ガス入り側端部から数えて1枚目の邪魔板
5・・・原料ガス入り口部
6・・・反応器の胴側部
7・・・熱電対
8・・・熱電対
9・・・熱電対
10・・・熱電対
11・・・熱電対
12・・・熱電対
2・・・反応管
3・・・セグメンタル型邪魔板
4・・・原料ガス入り側端部から数えて1枚目の邪魔板
5・・・原料ガス入り口部
6・・・反応器の胴側部
7・・・熱電対
8・・・熱電対
9・・・熱電対
10・・・熱電対
11・・・熱電対
12・・・熱電対
Claims (3)
- 少なくとも触媒が充填された触媒層を有する複数本の反応管と、少なくとも1枚の邪魔板とを備える多管式熱交換器型反応器を用いて、前記反応管の内部に原料ガスを供給しつつ、前記多管式熱交換器型反応器の胴側に熱媒体を供給することにより、反応生成ガスを得る気相酸化反応において、下記式(1)を満たすことを特徴とする気相酸化反応の運転方法。
- それぞれの反応管が、原料ガスが触媒層へ到達するまでの位置に不活性物質のみを充填した不活性物質層を有しており、前記反応管への原料ガス導入部から一段目の邪魔板までの長さのうち、前記不活性物質層の長さをX、前記触媒層の長さをLとしたとき、下記式(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の気相酸化反応の運転方法。
0.15<X/L<0.90 (2) - 請求項1または2に記載の気相酸化反応の運転方法により、メタクロレインを含有する原料ガスを用いてメタクリル酸を製造することを特徴とするメタクリル酸の製造方法。
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