JP2010126505A - 核酸の放出性に優れたリポソームベクター - Google Patents

核酸の放出性に優れたリポソームベクター Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、ポリロタキサンと核酸との複合体を封入した細胞導入効率ならびに封入物の放出効率に優れた新たなリポソームベクターを開発することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、複数の環状分子を貫通させた線状分子の両末端に加水分解性結合を介して嵩高い置換基を有する生体親和性基が導入されたポリロタキサンと核酸との複合体が封入されてなるリポソームベクターであって、前記ポリロタキサンが正の電荷を有する置換基によって修飾されることで40〜60の正の電荷を有している、前記リポソームベクターに関する。本発明のリポソームベクターは、細胞内における封入された核酸の放出効率に優れており、生体に投与された核酸の発現効率が高められることで、従来のリポソームベクターよりも優れた治療効果を期待することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、内部に封入された核酸の細胞内における放出性に優れたリポソームベクターとその製造方法に関する。
リポソームを用いて薬物や核酸を生体に投与するに際して、薬物等の効果を発揮させるためには、リポソームが細胞に効率的に導入されることと同時に、細胞内に導入されたリポソームからその内部に封入された薬物等が効果的に放出されることが重要である。
リポソームが細胞に導入される効率を細胞導入効率と表せば、この細胞導入効率を高める方法として、リポソームの表面を複数のアルギニン残基からなるペプチド、例えばアルギニン8残基からなるオクタアルギニンペプチド(以下、R8ペプチドと称する)で修飾する方法が開発されている(非特許文献1)。このR8ペプチドで表面が修飾されたリポソームの細胞導入効率は、R8ペプチドを持たないリポソームのそれの100倍ほどである。この様な機能が付加されたリポソームは、多機能性エンベロープ型ナノ構造体(multifunctional envelope−type nano device;R8−MEND)とも呼ばれている。
一方、細胞内に導入されたリポソームの内部から封入された物質を放出させる効率を放出効率と表せば、この放出効率を高める技術は開発途上にある。特に封入物が核酸等の負に帯電した高分子化合物である場合、かかる高分子化合物を凝集化素子と呼ばれる物質を利用して凝縮化することが行われるが、この様な場合には、いったん凝縮化された物質を改めて解放させ、さらにリポソームを構成する脂質膜から細胞内部に放出させなければならない。従って、凝縮化素子を用いてリポソーム内に封入された物質に関するリポソームからの前記放出効率は、凝縮化素子からの物質の解放能(以下、デコンデンス能と表す)によっても影響を受ける。
リポソームに封入される物質、例えば核酸等に用いられる凝縮化素子の例としては、ポリリジン、ポリアルギニン、プロタミン等のポリアミノ酸化合物や、ポリエチレンイミン等のポリカチオン性ポリマー等を挙げることができる。
本発明者らは、ポリL−リジンやプロタミン等のポリアミノ酸化合物とは異なる新たな凝縮化素子として、ポリロタキサンと呼ばれる化合物を開発した(非特許文献2、特許文献1、特許文献2)。ポリロタキサンは、両端に加水分解性の結合を介して嵩高い官能基が結合された線状高分子が複数の環状分子を貫通してなる構造を有する包接化合物である。
ポリロタキサンは核酸等の負に荷電している化合物と静電的に結合して複合体を形成する性質を有しているが、この複合体が細胞質等の生理的条件下に置かれると、負に荷電している化合物が複合体から遊離される。これは、生理的条件下でポリロタキサンの両端にある加水分解性の結合が切断されて嵩高い基が離脱し、線状分子に貫通されることで密に近接していた環状分子が互いに離れることによるものと推察されている。
この様に、ポリロタキサンは核酸を凝縮化して複合体を形成する能力を有する一方、良好なデコンデンス能も有しており、細胞内の生理条件下で封入物を放出させる必要のあるリポソームにとって有益な物質である。しかし、ポリロタキサンのデコンデンス能とリポソームからの放出効率との関連については未だ十分な知見は蓄えられてはいない。
Kogureら、J.Control Release、2004年、第98巻、第317−323頁 Yamashitaら、Nature Protocols、2006年、第1巻、第6号、第2861−2869頁 国際特許出願公開WO2002/02159号パンフレット 日本特許第4104556号公報
本発明は、ポリロタキサンと核酸との複合体を封入した細胞導入効率ならびに封入物の放出効率に優れた新たなリポソームベクターを開発することを目的とする。
本発明者らは、ポリロタキサンと核酸との複合体を封入したリポソームの作製に際して、ポリロタキサンと核酸との複合体の高いデコンデンス能とリポソームからの封入物の高い放出効率とが必ずしも一致しないこと、特に一定数の正の電荷を有するポリロタキサンがピーク的に最も高い放出効率を示すことを見いだし、以下の各発明を完成させた。
複数の環状分子を貫通させた線状分子の両末端に加水分解性結合を介して嵩高い置換基を有する生体親和性基が導入されたポリロタキサンと核酸との複合体が封入されてなるリポソームベクターであって、前記ポリロタキサンが正の電荷を有する置換基によって修飾されることで40〜60の正の電荷を有している、前記リポソームベクター。
環状分子が環状ポリエーテル、環状ポリエステル、環状ポリエーテルアミン及び環状ポリアミンよりなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のリポソームベクター。
環状分子がα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンよりなる群から選ばれる1種以上である、請求項2に記載のリポソームベクター。
シクロデキストリンがα−シクロデキストリンである、請求項3に記載のリポソームベクター。
線状分子がポリアルキレングリコールもしくはその2種以上の共重合体又はポリアルキルビニルエーテルである、請求項1〜4の何れかに記載のリポソームベクター。
ポリアルキレングリコールが分子量1000〜100000のポリエチレングリコールである、請求項5に記載のリポソームベクター。
前記嵩高い置換基がベンジルオキシカルボニルチロシンである、請求項1〜6の何れかに記載のリポソームベクター。
前記ポリロタキサンの正の電荷が核酸の負電荷の0.3〜0.6倍又は3〜6倍である、請求項1〜7の何れかに記載のリポソームベクター。
正の電荷を有する置換基がモノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、イミノ基及びグアニジノ基よりなる群から選ばれる一種以上である、請求項1〜8の何れかに記載のリポソームベクター。
正の電荷を有する置換基がジメチルアミノエチル基である、請求項9に記載のリポソームベクター。
細胞膜透過性ペプチドをさらに脂質膜表面に有する、請求項1〜10の何れかに記載のリポソームベクター。
本発明のリポソームベクターは、細胞内における封入された核酸の放出効率に優れており、生体に投与された核酸の発現効率が高められることで、従来のリポソームベクターよりも優れた治療効果を期待することができる。
本発明は、複数の環状分子を貫通させた線状分子の両末端に加水分解性結合を介して嵩高い置換基を有する生体親和性基が導入されたポリロタキサンと核酸との複合体が封入されてなるリポソームベクターであって、前記ポリロタキサンが正の電荷を有する置換基によって修飾されることで40〜60の正の電荷を有している、前記リポソームベクターに関する。
前記ポリロタキサンを構成する環状分子としては、α、β又はγ−シクロデキストリンや、これらと類似の環状構造を持つものであってよく、そのような環状構造としては環状ポリエーテル、環状ポリエステル、環状ポリエーテルアミン、環状ポリアミン、環状フラクタン等が挙げることができるがこれらに特に限定されるものではない。また、シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンその他グルコース単位からなる環状オリゴ糖であればよいが、好ましくはα−シクロデキストリン又はγ−シクロデキストリン、より好ましくはα−シクロデキストリン(以下、α−CDと表す)である。
前記ポリロタキサンを構成する線状分子としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体等のポリアルキレングリコール、ポリアミノ酸、多糖類及びポリメチルビニルエーテルからなる群より選ばれる一種又は二種以上を例示することができる。本発明においては、後に説明する嵩高い置換基の導入が行えるポリアルキレングリコール、特にポリエチレングリコールが好ましい。
ポリアルキレングリコールは、アルキレンオキサイドの付加重合によって得られるオリゴマーであればよく、本発明ではポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、これらのブロック共重合体等を使用することができる。またオリゴマーの分子量は1000〜100000の範囲であることが好ましく、より好ましくは1000〜40000である。本発明の包接化合物を構成する好ましいポリアルキレングリコールは、分子量1000〜100000のポリエチレングリコールである。以下、ポリエチレングリコールをPEGと表す。
本発明にいう加水分解性結合としては、生体内で加水分解する結合であればどのような結合であってもよいが、エステル結合、シッフ塩基結合、カーバメート結合、ペプチド結合、エーテル結合、スルフィド結合、ジスルフィド結合、チオエステル結合等の各種の加水分解性の結合であってよい。このうち、生体内で速やかに非酵素的に加水分解することを考慮すればエステル結合又はジスルフィド結合であることが好ましい。
前記ポリロタキサンを構成する生体親和性基の嵩高い置換基としては、生体に対する親和性(生体に対する安全性)の高い基であって、線状分子から環状分子が抜け落ちるのを防止できる嵩高さを有する限りどのような基であってもよく、アミノ酸、ペプチド、単糖類、オリゴ糖類又はそれらの誘導体等を挙げることができる。アミノ酸としては、例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、リジン、アルギニン、ヒスチジンを挙げることができる。このうち、ベンゼン環を有するアミノ酸、例えばL−フェニルアラニン、L−チロシン、L−トリプトファン等が好ましい。
また、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、9−フレオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、ベンジルエステル(OBz)基、第三ブチルカルボニル(Boc)基、アミノ酸第三ブチルエステル(OBu基)等の1以上のベンゼン環を有する基又は1以上の第三ブチルを有する基で修飾されたアミノ酸、例えばN−ベンジルオキシカルボニル−L−フェニルアラニン等も利用することができる。さらに、アミノ酸の複数がペプチド結合して形成されたペプチド、オリゴ糖類、デキストラン、ヒアルロン酸、キチン、キトサン、アルギン酸、コンドロイチン硫酸、でんぷん、さらにはオリゴ糖類、多糖若しくは単糖をアセチル化やイソプロピル化等によって化学修飾した糖誘導体も利用可能である。
前記ポリロタキサンの好ましい具体例としては、上記線状分子がPEG4000、上記環状分子がα−CD、上記加水分解性結合がジスルフィド結合、上記嵩高い置換基を有する生体内分解性基がN−ベンジルオキシカルボニル−L−フェニルアラニンであることが特に好ましい。なお、α−CDをPEGに貫通させる場合、α−CDとPEGの繰り返し単位(エチレンオキシド単位)の比の化学量論数は1:2といわれている。
本発明におけるポリロタキサンは、窒素原子を含む正に荷電した置換基で修飾されていることが好ましい。窒素原子は正に荷電してカチオン化する性質を有していることから、負電荷を有している核酸の凝集効果が向上する。正の電荷を有する置換基は、包接体中のシクロデキストリンに対して導入されることが好ましく、また置換基としては、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基等のモノアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジメチルアミノエチル基等のジアルキルアミノ基、イミノ基、グアニジノ基等を挙げることができるが、ジアルキルアミノ基、特にジメチルアミノエチル基が好ましい。
本発明におけるポリロタキサンは、典型的には非特許文献2又は特許文献に詳細に記載された方法によって作製することができる。この非特許文献2及び特許文献の記載の全ては本明細書に参照して取り込まれるが、その作製方法は、両末端にアミノ基が導入されたPEGとα−CDとを混合して両者からなる包接体を形成させる工程a)、前記包接体を適当な縮合剤とα−CDの環状構造における環の内径よりも嵩高い置換基を有する化合物と共に有機溶媒に懸濁してPEGの末端に前記置換基を導入する工程b)、及び前記工程a)b)によって作製されるポリロタキサンに正の電荷を有する置換基を導入する工程c)を経て作製される。
本発明で使用されるポリロタキサンにおける正の電荷を有する置換基の数は40〜60である。かかる数の置換基は、工程a)b)により作製される包接体と正の電荷を有する置換基を導入するための前記置換基を供与することのできる化合物との反応モル比を調節すればよい。例えば、環状分子あたりの正の電荷を有する置換基の数を1〜6にするには、環状分子1モル等量に対して2〜12モル等量の前記置換基を供与することのできる化合物を反応させればよい。
本発明で使用されるポリロタキサンと核酸との複合体は、適当な水性溶媒中で両者を混合することで容易に作成することができる。特に、ポリロタキサンの正の電荷が核酸の負の電荷の0.3〜0.6倍または3〜6倍となるように両者の混合量を調節することが好ましい。以下、この混合比をN/P比と表すこととする。両者の具体的な混合量は、ポリロタキサンの正電荷を有する置換基の数と核酸の分子量によって定められる。
複合体の形成は、アガロースゲル電気泳動、粒子径、ゼータ電位を測定することで確認すればよい。核酸は、DNA、RNA、非天然塩基を含む人工的な核酸その他、いずれも利用することができるが、細胞内、特に核内において複合体からデコンデンスされ、リポソームから放出された後に遺伝情報を発現することができる遺伝子単位を含む核酸であることが好ましい。遺伝子にコードされる遺伝情報には特に制限はない。
本発明で使用されるポリロタキサンの代表的な例は、両末端にジスルフィド結合を介してベンジルカルボニルチロシンが結合した分子量1000〜100000のPEGによって、40〜60のジメチルアミノエチル基で修飾された18〜29個のα−シクロデキストリン分子を貫通してなる構造を有する、図1に模式的に表される様な構造を有する。
本発明のリポソームベクターは、上記の複合体を封入した脂質膜構造体という構成を有するリポソームベクターである。かかるリポソームは、リン脂質、糖脂質、ステロール、長鎖脂肪族アルコール又はグリセリン脂肪酸エステル等の、脂質膜構造体の構成成分として一般に使用される脂質を用い、一般的な方法によって製造することができる。
リン脂質としては、ホスファチジルコリン(例えば、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン等)、ホスファチジルグリセロール(例えば、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジグリセロール)、ホスファチジルエタノールアミン(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジエタノールアミン)、N−スクシニルホスファチジルエタノールアミン(N−スクシニルPE)、ホスファチジルエチレングリコール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、カルジオリピン、又はそれらの水素添加物、卵黄、大豆その他の動植物に由来する天然脂質(例えば、卵黄レシチン、大豆レシチン等)等を挙げることができる。上記のリン脂質は、リポソームの主要な構成成分として用いられる。その使用量は、リポソームの総脂質に対する量として10〜100%(モル比)であることが好ましく、50〜80%(モル比)であることがさらに好ましいが、これらの値に特に限定されるものではない。
糖脂質としては、セファリン、セレブロシド、セラミド、スフィンゴミエリン、ガングリオシド等の糖脂質が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。
ステロールとしては、コレステロール、コレステロールコハク酸、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、ジヒドロコレステロール等の動物由来のステロール、スチグマステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール等の植物由来のステロール(フィトステロール)、チモステロール、エルゴステロール等の微生物由来のステロール等を挙げることができる。これらのステロールは、一般には脂質二重層を物理的又は化学的に安定させたり、膜の流動性を調節したりするために用いられる。その使用量は、リポソームの総脂質に対する量として5〜40%(モル比)であることが好ましく、10〜30%(モル比)であることがさらに好ましいが、これらの値に特に限定されるものでない。
長鎖脂肪酸又は長鎖脂肪族アルコールとしては、炭素数10〜20の脂肪酸またはそのアルコールを使用することができる。好ましい例としては、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、アラキジン酸、リノール酸、パルミトイル酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、リノリルアルコール等を挙げることができる。その使用量は、リポソームの総脂質に対する量として5〜40%(モル比)であることが好ましく、10〜30%(モル比)であることがさらに好ましいが、これらの値に特に限定されるものでない。
グリセリン脂肪酸エステルとしては、モノアシルグリセリド、ジアシルグリセリド、トリアシルグリセリドを挙げることができる。その使用量は、リポソームの総脂質に対する量として5〜40%(モル比)であることが好ましく、10〜30%(モル比)であることがさらに好ましいが、これらの値に特に限定されるものでない。
本発明のリポソームの脂質膜には、上記の脂質の他に、トコフェロール、没食子酸プロピル、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシトルエン等の抗酸化剤、ステアリルアミン、オレイルアミン等の正電荷を付与する荷電物質、ジセチルホスフェート等の負電荷を付与する荷電物質、膜表在性タンパク質、膜内在性タンパク質等の膜タンパク質を含有させることができ、その含有量は適宜調節することができる。
また、国際特許出願公開第WO2005/032593号パンフレットに開示されているポリアルギニンペプチド等の細胞膜透過性ペプチド、国際特許出願公開第WO2005/032593号パンフレットに開示されているGALAペプチド等のpH応答性膜融合性ペプチド、その他の脂質膜構造体に機能を付加することのできるペプチドを、それぞれの特許文献に記載されている態様、使用量、製造方法等に準じて、本発明のリポソームにおいて使用してもよい。特に好ましいペプチドはポリアルギニンペプチドである。
本発明のリポソームをエンドサイトーシスによって細胞内に移行させる場合には、リポソームはその膜の構成成分としてカチオン性脂質を含ませることが望ましい。カチオン性脂質としては、例えば、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド(dioctadecyldimethylammonium chloride、DODAC)、N−(2,3−オレイルオキシ)プロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウム(N−(2,3−dioleyloxy)propyl−N,N,N−trimethylammonium、DOTMA)、ジドデシルアンモニウムブロミド(didodecylammonium bromide、DDAB)、1,2−ジオレイルオキシ−3−トリメチルアンモニウムプロパン(1,2−dioleoyloxy−3−trimethylammonio propane、DOTAP)、3β−N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモールコレステロール(3β−N−(N’,N’,−dimethyl−aminoethane)−carbamol cholesterol、DC−Chol)、1,2−ジミリストイルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(1,2−dimyristoyloxypropyl−3−dimethylhydroxyethyl ammonium、DMRIE)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアンモニウムトリフルオロアセテート(2,3−dioleyloxy−N−[2(sperminecarboxamido)ethyl]−N,N−dimethyl−1−propanaminum trifluoroacetate、DOSPA)等が挙げられる。
なお、本発明のリポソームに、例えば前記ポリアルギニンペプチドを付加する等をした場合には、リポソームはマクロピノサイトーシスによって細胞内に移行するものとなり、上記カチオン性脂質が脂質膜構造体に含まれている必要は必ずしもない。すなわち、前記ポリアルギニンペプチドを付加した場合の本発明のリポソームの脂質膜は、カチオン性脂質及び非カチオン性脂質のいずれか一方で構成されていてもよいし、両方で構成されていてもよく、オリゴエチレングリコールはそれらの脂質に結合させて使用すればよい。なお、カチオン性脂質は細胞毒性を有するので、本発明のリポソームの細胞毒性を低減させる点からは、脂質二重層に含まれるカチオン性脂質の量を出来る限り少なくすることが好ましく、脂質二重層を構成する総脂質に対するカチオン性脂質の割合は0〜40%(モル比)であることが好ましく、0〜20%(モル比)であることがさらに好ましい。
上記の「非カチオン性脂質」とは、中性脂質又はアニオン性脂質を意味し、中性脂質の例としては、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、コレステロール、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、セレブロシド等が挙げられ、アニオン性脂質の例としては、例えば、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N−スクシニルホスファチジルエタノールアミン(N−スクシニルPE)、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエチレングリコール、コレステロールコハク酸等が挙げられる。
本発明のリポソームを構成する脂質膜は、ポリアルギニンペプチド等の機能性分子で修飾された脂質を複数種類含んでいてもよく、またその様な機能性分子で修飾されていない脂質を成分として同時に含んでいてもよい。例えば、修飾された脂質と非修飾脂質、一の機能性分子で修飾された脂質と別の機能性分子で修飾された脂質等、脂質の組合せは任意に選択することができる。
後の実施例において詳細に述べるように、先に説明した複合体を封入した本発明のリポソームは、その内部に封入される核酸を効率的に細胞内、特に核において放出することができ、核酸の発現転写効率を飛躍的に高めることができる。従って、本発明のリポソームベクターは脂質膜構造体に封入された核酸の細胞内転写促進剤として利用することができる。
本発明のリポソームベクターは、脂質一重膜の形態でも、脂質多重膜の形態でもいずれでも良いが、封入された核酸の放出効率の点から一重膜あるいは二重膜であることが好ましい。本発明のリポソームベクターは、脂質一重膜からなるリポソームである限り、SUV(small unilamella vesicle)、LUV(large unilamella vesicle)、GUV(giant unilamella vesicle)等のいずれであってもよい。よって、本発明のリポソームのサイズは特に限定されるものではないが、直径50〜100nmであることが好ましく、直径100〜300nmであることがさらに好ましい。なお、一重あるいは二重の脂質膜を有するリポソームは、適当な大きさのフィルターを繰り返し通すことで作製することができ、これらは当業者が通常なしえる作業である。
本発明のリポソームベクターは、例えば、水和法、超音波処理法、エタノール注入法、エーテル注入法、逆相蒸発法、界面活性剤法、凍結・融解法等の公知の方法を用いて作製することができる。例えば水和法の場合、前記の脂質を有機溶剤に溶解した有機溶液を蒸発除去することにより脂質膜を得た後、脂質膜を前記複合体を含む溶液で水和させ、攪拌又は超音波処理することにより、前記複合体を封入したリポソームを製造することができる。
なお、ポリアルギニンペプチドやGALAペプチド等の機能性分子を本発明のリポソームに付加する場合は、前記の方法によってリポソームを作製した後にリポソーム表面にこれらのペプチドを導入すればよい。
上記の方法において、有機溶媒として、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類等を、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の脂質膜構造体には、前記ポリロタキサンと核酸との複合体の他に、薬剤、核酸、ペプチド、タンパク質、糖又はこれらの複合体等の種々の生理活性物質を封入することができ、診断、治療等の目的に応じて適宜選択することができる。生理活性物質が水溶性である場合には、脂質膜構造体の製造にあたり脂質膜を水和する際に使用される水性溶媒に生理活性物質を添加することにより、脂質膜構造体内部の水相に生理活性物質を封入することができる。また、生理活性物質が脂溶性である場合には、脂質膜構造体の製造にあたり使用される有機溶剤に生理活性物質を添加することにより、脂質膜構造体の膜に生理活性物質を封入することができる。
本発明のリポソームベクターは、例えば、分散液の状態で使用することができる。分散溶媒としては、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝液、クエン緩衝液、酢酸緩衝液等の緩衝液を使用することができる。分散液には、例えば、糖類、多価アルコール、水溶性高分子、非イオン界面活性剤、抗酸化剤、pH調節剤、水和促進剤等の添加剤を添加して使用してもよい。また本発明の脂質膜構造体は、分散液を乾燥(例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥等)させた状態で使用することもできる。乾燥させた脂質膜構造体は、生理食塩水、リン酸緩衝液、クエン緩衝液、酢酸緩衝液等の緩衝液を加えて分散液とすることができる。
本発明のリポソームベクターは、インビボ及びインビトロのいずれにおいても使用することができる。インビボにおいて使用する場合、投与経路としては、例えば、静脈、腹腔内、皮下、経鼻等の非経口投与が挙げられる。投与量及び投与回数は、リポソームベクターに封入された薬剤の種類や量等に応じて適宜調節することができる。この様なリポソームベクターは、0〜40℃という広範な温度域(効果的な温度域は4〜37℃)において使用することができるので、目的に応じた温度条件を設定することができる。
本発明のリポソームベクターは、核酸の細胞内送達用ベクター又は核内送達用ベクターとして使用することができる。目的物質を送達すべき細胞が由来する生物種は特に限定されるものではなく、動物、植物、微生物等のいずれであってもよいが、動物であることが好ましく、哺乳動物であることがさらに好ましい。哺乳動物としては、例えば、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、モルモット等が挙げられる。また、目的物質を送達すべき細胞の種類は特に限定されるものではなく、例えば、体細胞、生殖細胞、幹細胞又はこれらの培養細胞等が挙げられる。
以下、実施例を示して本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。
<実施例1>
1)ポリロタキサンの合成
1)−1 両末端にアミノ基を有するPEGの合成
分子量4000のPEG(33g,10mmol)と無水コハク酸(20g,200mmol)をトルエン(220ml)に溶解させ、この溶液を150℃で5時間還流させた。反応終了後、過剰のジエチルエーテルに注ぎ込み、濾別・減圧乾燥して粗生成物を得た。これをジクロロメタンに溶解させ、不溶物を遠心分離により除去し、過剰のジエチルエーテルに注ぎ込んで、濾別・減圧乾燥後に両末端にカルボキシル基を有するPEG(化合物A)を白色粉末として得た。
この化合物A(20g,5.7mmol)とN−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)(17.1g,148.2mmol)を1,4−ジオキサンとジクロロメタンの混合溶液(350ml,体積比1:1)に溶解させ、氷冷後ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(23.5g,114mmol)を加えた。氷冷したまま1時間攪拌し、その後室温で終夜攪拌した。副生成物のジシクロヘキシルウレアを濾別し、濾液は濃縮してから過剰のジエチルエーテルに注ぎ込んだ。濾別・減圧乾燥後にカルボキシル基が活性化されたPEG(化合物B)を白色粉末として得た。
次いで、エチレンジアミン(0.4ml,6mmol)を溶解させたジクロロメタン(75ml)に、化合物B(10g,2.7mmol)を溶解させたジクロロメタン(75ml)を滴下し、滴下終了後から室温で1時間攪拌した。反応終了後、溶液を過剰のジエチルエーテルに注ぎ込み、濾別・減圧乾燥後に両末端にアミノ基を有するPEG(化合物C)を白色粉末として得た。
1)−2 擬ポリロタキサンの調製
α−CDの飽和水溶液311ml(48g、49.2mmol)に、上記の化合物Cの水溶液(4g、1.12mmol)を、α−CD:化合物C=6:1となるように室温で滴下した。1時間超音波を照射しながら攪拌し、その後室温で24時間攪拌した。遠心分離により白色の沈殿物を回収し、50℃で減圧乾燥を行い、白色粉末の擬ポリロタキサンAを得た。
なお擬ポリロタキサンとは、線状高分子であるPEGと環状分子であるα−CDとからなる包接体であって、線状高分子の両末端が未だ嵩高い置換基でキャップされていないものをいう。
また、上記と同様にして、α−CD:擬ポリロタキサンを45:1に調節して、一分子あたりのα−CDの数が29である擬ポリロタキサンBを得た。
1)−3 末端キャップ剤の調製
α−CDの脱離を防止する嵩高い置換基としてベンジルオキシカルボニル−L−フェニルアラニン(Z−L−Phe、Zはベンジルオキシカルボニル基を表す)を導入するために、Z−L−Pheのカルボキシル基の活性化を行った。すなわち、Z−L−Phe(100g,334mmol)を1,4−ジオキサン(800ml)に溶解させ、氷冷しながらHOSu(38.42g,334mmol)を加えた。1時間後にDCC(75.7g,367mmol)を溶解させた1,4−ジオキサン溶液(200ml)をゆっくり加え、氷冷したまま1時間攪拌し、その後室温で終夜攪拌した。副生成物のジシクロヘキシルウレアを濾別し、濾液は濃縮してから過剰のジエチルエーテルに注ぎ込み、濾別・減圧乾燥後に粗生成物を得た。室温でできるだけ飽和濃度になるように粗生成物をジクロロメタンに溶解させた後、石油エーテルを適量加え冷蔵し、再結晶を行った。結晶を濾別・減圧乾燥して白色針状結晶のZ−L−Pheのスクシンイミドエステル(Z−L−Phe−OSu)を得た。
1)−4 ポリロタキサンの調製
Z−L−Phe−OSu(80g,200mmol)をジメチルスルフォキシド(DMSO)(60ml)に溶解させ、1)−2の2種の擬ポリロタキサンAとB(45g、2mmol)をそれぞれ加えた。この不均一溶液を室温で攪拌しながら、均一になるように少しずつDMSOを加えて96時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を過剰のジエチルエーテルに注ぎ込み、粗生成物を得た。粗生成物をアセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)の順で洗浄して不純物(未反応Z−L−Phe−OSu、α−CD、化合物C等)を除去し、濾別・減圧乾燥して生分解性のポリロタキサンAとBを白色粉末として得た。
ポリロタキサンAとBの合成の確認は、H−NMRにより行った。またポリロタキサンのα−CD貫通数をH−NMRでのPEGのプロトンとα−CDの1位のプロトンとの積分比から求めたところ、ポリロタキサンAは18、ポリロタキサンBは29であった。
この2種のポリロタキサンAとBそれぞれ1モル等量に対して、N,N−ジメチルエチレンジアミンを3、5、8、16モル等量反応させて、ジメチルアミノエチル基が16、46、76又は99導入されたポリロタキサンA(それぞれ16DMAE18CD、46DMAE18CD、76DMAE18CD、99DMAE18CDと表す)と、ジメチルアミノエチル基が35、52、110又は180導入されたポリロタキサンB(それぞれ35DMAE29CD、52DMAE29CD、110DMAE29CD、180DMAE29CDと表す)を合成した。
2)ポリロタキサンとプラスミドDNAとの複合体の調製
EGFPとルシフェラーゼとの融合タンパク質をコードする遺伝子を有するプラスミドpEGFPLuc(BD Bioscience clontech社)を用意し、10mM HEPES緩衝液pH7.4に濃度0.1mg/mL)となるように溶解した。また前記1)で合成した各種ポリロタキサンを10mM HEPES緩衝液pH7.4に適当な濃度で溶解した(16DMAE18CD(2.4mg/mL)、46DMAE18CD(0.97mg/mL)、76DMAE18CD(0.68mg/mL)、99DMAE18CD(0.57mg/mL)、35DMAE29CD(1.7mg/mL)、52DMAE29CD(1.2mg/mL)、110DMAE29CD(0.67mg/mL)、180DMAE29CD(0.47mg/mL))これらの溶液を等量ずつ混合して、ポリロタキサンとプラスミドDNAとからなる複合体を調製した。この時、包接化合物と核酸との複合体のN/P比はいずれも5となる。
3)複合体の粒子特性
前記2)で得られた複合体の粒子径(図2)及びゼータ電位(図3)を、それぞれ動的光散乱法及び電気泳動法を利用した光散乱測定機(Zetasizer Nano、Malvern instruments社)で測定した。その結果を図2(粒子径)と図3(ゼータ電位)に示す。
この測定から、導入されたカチオン数が多くなると複合体の粒子形が小さくなり、かつゼータ電位が増加するという傾向が認められた。
4)リポソームの作製
DOPE/PA=7:2のクロロホルム溶液250μL(全脂質濃度0.55mM)を試験管内で蒸発させて脂質膜を形成させた後、前記2)で得られた複合体を含む溶液250μLを加えて室温で15分間ボルテックスして水和した。これを試験管のままバスタイプソニケーター(AU−25C、Aiwa社)に置いて30秒間超音波処理して、前記2)で得られた複合体が封入されたリポソームを作製した。さらに、超音波処理後の試験管にステアリル化オクタアルギニン(STR−R8)/水溶液を全脂質濃度の20mol%となるように加えてインキュベーションして、表面にSTR−R8が組み込まれた、種々の複合体を含む8種類のリポソームを作製した。
<実施例2>
1)複合体からの遺伝子放出能の評価
実施例1の2)で調製した各種ポリロタキサンとpDNAとからなる8種類の複合体溶液(各pDNA100ng、2.5μL)を用意した。これに、水7.5μLを加えて37℃で1時間インキュベーションしたサンプル(コントロール)、終濃度10mMとなるようにDTTを加えて37℃で1時間インキュベーションしたサンプル(放出サンプル)、終濃度10mMとなるようにDTTを加えて37℃で1時間インキュベーションした後にポリアスパラギン酸(終濃度1mg/mL)を加えてさらに室温で20分間インキュベーションしたサンプル(置換サンプル)を用意した。
上記のサンプルをそれぞれ1%アガロースゲルにアプライして電気泳動を行った。泳動後のゲルをEtBrで染色してDNAを可視化すると共に、ImageJを用いてバンドにおけるスーパーコイルのバンド強度を数値化し、コントロールとして泳動したpDNAのバンド強度を100%として、下記式に従って各複合体からの核酸放出能(Release Efficiency)を算出した。
核酸放出能(RE)=(サンプル中のpDNAのバンド強度)/(コントロールとして
泳動したpDNA100ngのバンド強度)×100
この実験の結果、ポリロタキサンの正電荷数とポリロタキサンと核酸との複合体からの核酸のデコンデンス能との間には、ポリロタキサンの正電荷数が99である場合に特異的なピークが存在することが確認された(図4)。
2)細胞内でのリポソームの核酸放出能の確認
4×10cellsのマウス胎児線維芽細胞(NIH/3T3)/DMEM培地を24ウェルプレートに播種し、37℃で24時間インキュベーション後、実施例1の4)で作製された各リポソーム(pDNA量として0.5μg)/DMEM培地0.25mLをウェルに添加して、37℃で3時間インキュベーションした。
3時間後に10%血清を含む新鮮な培地に交換してさらに21時間インキュベーションした後、細胞を0.5mLのPBSで洗浄し、75μLのreporter Lysis buffer(Promega社)を加えて細胞を溶解した。−80℃で20分間インキュベーションした後、15,000×g、4℃で5分間遠心分離し、50μLの上澄み(細胞溶解液)を回収した。
ルシフェラーゼ活性は、細胞溶解液20μLにluciferase assay reagent(promega社)50μLを加え、ルミノメーター(ATTO社)を用いて測定した。また細胞溶解液のタンパク質濃度はBCAprotein assay kit(PIERCE社)を用いて測定した。また、上記操作におけるコントロールとして、ルシフェラーゼ遺伝子をコードするプラスミド用いた。この結果を図5に示す。
この結果、形質転換された細胞内におけるルシフェラーゼ活性強度には、前記1)で確認された最も高いデコンデンス能を示す正電荷数が99であるポリロタキサンではなく、またCD分子が18である場合29である場合にもよらず、正電荷数が46、52であるポリロタキサンを含むリポソームがもっとも高いルシフェラーゼ活性を示すことが確認された。
本発明で使用される包接化合物の構造を表した模式図である。図中、+が正の電荷を有する置換基を、円柱がシクロデキストリン分子を、楕円が嵩高い置換基を、棒線がポリアルキレングリコール鎖を、それぞれ示す。 実施例1の2)で得られた各種複合体の粒子径を表すグラフである。 実施例1の2)で得られた各種複合体のゼータ電位を表すグラフである。 実施例1の2)で得られた各種複合体からの核酸(プラスミドDNA)のデコンデンス能を表したグラフである。 実施例1で作製した各種リポソームを導入した細胞におけるルシフェラーゼ活性の測定結果を表したグラフである。

Claims (11)

  1. 複数の環状分子を貫通させた線状分子の両末端に加水分解性結合を介して嵩高い置換基を有する生体親和性基が導入されたポリロタキサンと核酸との複合体が封入されてなるリポソームベクターであって、前記ポリロタキサンが正の電荷を有する置換基によって修飾されることで40〜60の正の電荷を有している、前記リポソームベクター。
  2. 環状分子が環状ポリエーテル、環状ポリエステル、環状ポリエーテルアミン及び環状ポリアミンよりなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のリポソームベクター。
  3. 環状分子がα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンよりなる群から選ばれる1種以上である、請求項2に記載のリポソームベクター。
  4. シクロデキストリンがα−シクロデキストリンである、請求項3に記載のリポソームベクター。
  5. 線状分子がポリアルキレングリコールもしくはその2種以上の共重合体又はポリアルキルビニルエーテルである、請求項1〜4の何れかに記載のリポソームベクター。
  6. ポリアルキレングリコールが分子量1000〜100000のポリエチレングリコールである、請求項5に記載のリポソームベクター。
  7. 前記嵩高い置換基がベンジルオキシカルボニルチロシンである、請求項1〜6の何れかに記載のリポソームベクター。
  8. 前記ポリロタキサンの正の電荷が核酸の負電荷の0.3〜0.6倍又は3〜6倍である、請求項1〜7の何れかに記載のリポソームベクター。
  9. 正の電荷を有する置換基がモノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、イミノ基及びグアニジノ基よりなる群から選ばれる一種以上である、請求項1〜8の何れかに記載のリポソームベクター。
  10. 正の電荷を有する置換基がジメチルアミノエチル基である、請求項9に記載のリポソームベクター。
  11. 細胞膜透過性ペプチドをさらに脂質膜表面に有する、請求項1〜10の何れかに記載のリポソームベクター。
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