JP2010126111A - 車両用操舵力伝達装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】通常状態における2本のシャフトの連結が断たれた場合であっても、操舵力を転舵装置に伝達可能な車両用操舵力伝達装置を提供することを課題とする。
【解決手段】(A)第1シャフト88にそれの回転軸線から径方向に離れた位置に設けられた第1係合部150を、第2シャフト60に設けられた案内通路112によってその第2シャフト60の径方向への移動を許容することで、通常状態において、2本のシャフト60,88の回転位相差を変化させつつそれらの間で回転を伝達する第1回転伝達機構と、(B)その第1回転伝達機構による2本のシャフト60,88の連結が断たれた場合に、第1シャフト88に設けられた第2係合部152が、第2シャフトに設けられた第2係合部失陥時係合部114に係合することで、その第1回転伝達機構に代わって、2本のシャフト60,88の間で回転を伝達する第2回転伝達機構とを備えさせる。
【選択図】図4

Description

本発明は、ステアリング操作部材に入力された操舵力を転舵装置に伝達する車両用操舵力伝達装置に関する。
近年では、運転者によって操作されるステアリング操作部材と車輪を転舵する転舵装置との一方に連結されるシャフト(以下、「第1シャフト」という場合がある)の回転位相と、他方に連結されるシャフト(以下、「第2シャフト」という場合がある)の回転位相との差である回転位相差を変化させつつ、第1シャフトと第2シャフトとの一方の回転を他方に伝達する回転伝達機構を備えた車両用操舵力伝達装置の開発が進められている。下記特許文献には、その回転伝達機構を備えた操舵力伝達装置の一例が記載されている。
特開平3−227772号公報
上記回転伝達機構は、第1シャフトの他端部に設けられた係合部と、第2シャフトの他端部に設けられた1対の案内面を有する案内通路とを備えている。その係合部が1対の案内面によって挟まれた状態で案内通路に係合することで、2本のシャフトが連結されており、係合部と1対の側壁面の一方とを介して2本のシャフトの一方の回転が他方に伝達される。このような構造であるため、第1シャフトと第2シャフトとの相対回転に伴って、第1シャフトの係合部と第2シャフトの1対の案内面との間には、周方向の力が加わることになる。その力が大きい場合、係合部がシャフト本体部から分断されるような失陥が生じる虞がある。そのような失陥が生じた場合には、第1シャフトと第2シャフトとの連結が断たれ、第1シャフトと第2シャフトとの一方の回転を他方に伝達できないという問題がある。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、上記係合部と案内通路とによる2本のシャフトの連結が断たれた場合であっても、ステアリング操作部材に入力された操舵力を転舵装置に伝達可能な車両用操舵力伝達装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の車両用操舵力伝達装置は、(a)第1シャフトと、(b)その第1シャフトの回転軸線と自身の回転軸線とが平行でありかつそれら回転軸線が所定距離ズレた状態で配設された第2シャフトと、(c-1) 第1シャフトの他端部において、その第1シャフトの回転軸線からその第1シャフトの径方向に上記所定距離より離れた位置に設けられた第1係合部と、(c-2) 第2シャフトの他端部にその第2シャフトの径方向に延びるようにして設けられ、第1係合部が係合するとともに、その第1係合部の第2シャフトの径方向における移動を許容する案内通路とを含んで構成された第1回転伝達機構と、(d-1)第1係合部とは別に第1シャフトの他端部に設けられた第2係合部と、(d-2)
第2シャフトの他端部に、第1回転伝達機構によって2本のシャフトが連結されている状態である通常状態においては第2係合部が係合せず、かつ、第1回転伝達機構による2本のシャフトの連結が断たれる失陥が生じた状態である失陥状態において第2係合部が係合する第2係合部失陥時係合部とを含んで構成された第2回転伝達機構とを備えたことを特徴とする。
本発明の車両用操舵力伝達装置は、第1回転伝達機構が失陥して、その第1回転伝達機構によって第1シャフトと第2シャフトとの間で回転が伝達できない場合であっても、第2回転伝達機構によって、第1シャフトと第2シャフトとの間で回転を伝達することが可能である。つまり、本発明の操舵力伝達装置によれば、第1回転伝達機構が失陥した場合であっても、操作不能となるような事態を回避することが可能である。そのような利点を有することで、本発明の操舵力伝達装置は実用性の高いものとなる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、請求項1に(3)項の技術的特徴を付加したものが請求項2に、請求項1または請求項2に(4)項および(8)項の技術的特徴を付加したものが請求項3に、請求項3に(5)項の技術的特徴を付加したものが請求項4に、請求項3に(6)項の技術的特徴を付加したものが請求項5に、請求項3ないし請求項5のいずれか1つに(9)項の技術的特徴を付加したものが請求項6に、それぞれ相当する。
(1)運転者によって操作されるステアリング操作部材と車輪を転舵する転舵装置との一方に一端部が連結され、回転可能に配設された第1シャフトと、
前記ステアリング操作部材と前記転舵装置との他方に一端部が連結され、前記第1シャフトの回転軸線と自身の回転軸線とが平行でありかつそれら回転軸線が所定距離だけズレた状態で回転可能に配設された第2シャフトと、
(A-1) 前記第1シャフトの他端部において、その第1シャフトの回転軸線からその第1シャフトの径方向に前記所定距離より離れた位置に設けられた第1係合部と、(A-2) 前記第2シャフトの他端部において、その第2シャフトの径方向に延びるようにして設けられ、前記第1係合部が係合するとともに、その第1係合部の前記第2シャフトの径方向における移動を許容する案内通路とを含んで構成され、前記第1シャフトと前記第2シャフトとを連結し、それら第1シャフトおよび第2シャフトのそれぞれの回転位相の差である回転位相差を変化させつつ、それら第1シャフトと第2シャフトとの一方の回転をそれらの他方に伝達するように構成された第1回転伝達機構と、
(B-1) 前記第1シャフトの他端部において、前記第1係合部とは別に、その第1シャフトの回転軸線からその第1シャフトの径方向に前記所定距離より離れた位置に設けられた第2係合部と、(B-2) 前記第2シャフトの他端部に設けられ、前記第1回転伝達機構によって前記第1シャフトと前記第2シャフトとが連結されている状態である通常状態においては前記第2係合部が係合せず、かつ、前記第1回転伝達機構による前記第1シャフトと前記第2シャフトとの連結が断たれる失陥が生じた状態である失陥状態において前記第2係合部が係合する第2係合部失陥時係合部とを含んで構成され、その失陥状態において、前記第1シャフトと前記第2シャフトとを連結してそれら第1シャフトと第2シャフトとの一方の回転をそれらの他方に伝達する第2回転伝達機構と
を備えた車両用操舵力伝達装置。
本項に記載された「第1回転伝達機構」は、第1シャフトの回転角と第2シャフトの回転角との差を変化させるものである。ここで、2本のシャフトの回転角差(回転位相差)の無い状態の2本のシャフトのうちのステアリング操作部材に連結されるシャフト(以下、「操作部材側シャフト」という場合がある)の回転角を、基準回転角と定義し、その回転伝達機構について、具体的に説明する。例えば、操作部材側シャフトが上記基準回転角から回転すると、操作部材側シャフトが180°回転するまでは、2本のシャフトのうちの転舵装置に連結されるシャフト(以下、「転舵装置側シャフト」という場合がある)は、操作部材側シャフトの回転角より小さい回転角となる。あるいは、転舵装置側シャフトは、操作部材側シャフトの回転角より大きい回転角となる。そして、操作部材側シャフトが180°回転すると、転舵装置側シャフトも180°回転し、2本のシャフトの回転角の差がなくなる。
つまり、操作部材側シャフトが基準回転角から180°まで回転する際に、回転角差が0から増加し、途中から減少して0に到るのである。この場合、操作部材側シャフトの回転速度に対する転舵装置側シャフトの回転速度の比をステアリングギヤ比と呼べば、そのギヤ比は、操作部材側シャフトが基準回転角から180°まで回転するにつれて大きく、あるいは、小さくなる。そして、例えば、ギヤ比が、操作部材側シャフトが回転するにつれて大きくなるように構成するとともに、基準回転角が、ステアリング操作部材が車輪の転舵中立位置に対応する位置、つまり、中立操作位置にあるときの状態での操作部材側シャフトの回転角とすれば、ステアリング操作部材の操作角が小さい場合においては、穏やかで安定感のあるハンドリングを実現し、ステアリング操作部材の操作角が大きくなるにつれて、レスポンスの良いハンドリングを実現することが可能である。
したがって、本項に記載された「操舵力伝達装置」を搭載した車両においては、電磁モータ等のアクチュエータに依拠してステアリング操作部材の操作量に対する車輪の転舵量を変更するステアリングシステム、いわゆる操舵転舵比可変ステアリングシステム(VGRS(Variable Gear Ratio Steering)システム)等を搭載することなく、ステアリング操作部材の操作フィーリングを上述したように変化させることができるのである。ちなみに、転舵装置側シャフトの一端部と転舵装置との連結、もしくは、操作部材側シャフトの一端部と操作部材との連結は、それらが直接的に連結されるものであってもよく、それらの間にイタミディエイトシャフト,ユニバーサルジョイント等を介して連結されるものであってもよい。
上述した第1回転伝達機構においては、第1シャフトと第2シャフトとの一方から他方へ伝達される回転トルクが大きくなると、それら第1シャフトと第2シャフトとの連結部詳しく言えば、第1シャフトの第1係合部、および、それが係合する第2シャフトの案内通路を形成する部分に加わる周方向の力が大きくなる。そのことにより、第1シャフトと第2シャフトとの連結が断たれるような失陥、例えば、第1係合部と案内通路との係合の解除,第1係合部の第1シャフトからの分断等が生じる虞がある。特に、第1シャフトは、第1係合部が第1シャフトの回転軸線からそれの径方向に離れた位置に設けられることから、第1シャフトの本体部に対してその第1係合部を保持する部分の強度が、比較的弱くなってしまう場合がある。そのような場合、第1係合部に加わる周方向の力が大きいと、第1係合部を保持する部分が破断して、第1係合部が第1シャフトから分断される虞があるのである。そして、そのような失陥が生じると、第1回転伝達機構によっては、第1シャフトと第2シャフトとの間で回転伝達ができないことになる。つまり、ステアリング操作が不能な状態に陥ってしまうのである。
本項に記載の操舵力伝達装置は、第1回転伝達機構に加えて、その第1回転伝達機構が失陥した場合に第1シャフトと第2シャフトとの間で回転伝達可能な第2回転伝達機構を備えているため、第1回転伝達機構が失陥した場合であっても、ステアリング操作が不能となるような事態を回避することが可能である。つまり、本項に記載の装置は、フェールセーフという観点において、優れた装置となる。
上記「第2回転伝達機構」は、通常状態においては、第1回転伝達機構の動作を妨げず、失陥状態において、第1シャフトの第2係合部と第2シャフトの第2係合部失陥時係合部とが係合して、第1シャフトと第2シャフトとの間で回転伝達可能なものであれば、その構造,構成が特に限定されるものではない。通常状態において第1係合部が案内通路によって第2シャフトの径方向に移動するのに伴って、第2係合部は第2シャフトの周方向に移動することになるため、第2回転伝達機構は、例えば、その第2係合部の第2シャフトに対する周方向への移動を許容し、第1回転伝達機構が失陥した場合に、第2係合部と第2シャフトの一部とが係合するような構成のものとすることができるのである。
第2係合部が係合する第2シャフトの一部、つまり、第2シャフトの「第2係合部失陥時係合部」は、失陥状態において第2係合部が係合するためだけに設けられたものであってもよく、通常状態において第1係合部が係合する案内通路の少なくとも一部が、失陥状態において第2係合部失陥時係合部として機能するものであってもよい。なお、本項に記載の「第2シャフト」は、第1回転伝達機構の案内通路と、第2回転伝達機構の第2係合部失陥時係合部とを、第1シャフト側の端部に有するものであればよい。後に詳しく説明するが、第2シャフトの本体部からそれの径方向に延び出す部分に、案内通路および第2係合部失陥時係合部が形成されたものとすることが可能である。また、その「案内通路」は、例えば、第2シャフトの径方向に延びるようにそのシャフトの端部に形成される穴であってもよく、第2シャフトの径方向に延びるようにそのシャフトの第1シャフト側の端面に形成された溝であってもよい。ちなみに、その溝は、回転軸線方向の第1シャフト側にのみ開口するものであってもよく、その方向の両側に開口するものであってもよい。簡単に言えば、有底の溝であっても、底のない溝であってもよい。
一方、本項に記載の「第1シャフト」は、第1係合部と第2係合部とを有するものであれば、それの構造,構成が特に限定されるものではない。例えば、第1係合部と第2係合部との位置関係は、特に限定されず、種々の観点において配設した態様とすることが可能である。例えば、後で詳しく説明するように、第1シャフトの回転軸線と第1シャフトのそれの回転軸線周りの回転に対する重心位置とのズレを小さくすることを目的として配設した態様や、第2回転伝達機構において操作部材の切り返し時等の遊びを適切な大きさにすること等を目的として配設した態様とすることが可能である。また、第1シャフトの本体部に対して、第1係合部および第2係合部が配設される構造も、特に限定されない。例えば、第1シャフトの本体部から径方向に延び出す部分と、その部分から第1シャフトの回転軸線方向における第2シャフト側に突出する部分とを設けて、その突出する部分が係合部として機能する構造のものとすることができる。また、例えば、第1シャフトの本体部から径方向に延び出す部分を設け、その延び出す部分の先端部が係合部として機能する構造のものであってもよい。
(2)前記案内通路が、
それぞれが前記第1係合部の移動が許容される方向に平行に延びるとともに互いに向かい合うように設けられて当該案内通路を区画し、前記第1係合部を挟むことによって前記第2シャフトの周方向における移動を規制しつつそれの径方向における移動を許容する1対の案内面を有する(1)項に記載の車両用操舵力伝達装置。
本項に記載の態様は、第1回転伝達機構の構造、詳しくは、その機構を構成する案内通路の構造を具体的に限定した態様である。本項に記載の装置によれば、第1係合部を第2シャフトの回転に伴ってそのシャフトの径方向へ確実に案内することができる。
(3)前記第2係合部失陥時係合部が、
それぞれが、前記第2シャフトの周方向において前記第2係合部を挟んで互いに向かい合うとともに、前記通常状態において前記第2係合部が前記第2シャフトの周方向において移動する範囲より広い間隔をおいて設けられ、前記通常状態において前記第2係合部が当接せずにその第2係合部の前記第2シャフトの周方向における移動を許容し、かつ、前記失陥状態において前記第2係合部を自身のいずれかに当接させることによって前記第1シャフトと前記第2シャフトとの一方の回転をそれらの他方に伝達する1対の当接面を有する(1)項または(2)項に記載の車両用操舵力伝達装置。
本項に記載の態様は、第2回転伝達機構の構造、詳しくは、その機構を構成する第2係合部失陥時係合部の構造を具体化した態様である。本項の態様においては、第2係合部が、第2シャフトの周方向において、1対の当接面の各々との間に比較的大きなクリアランスがある状態で配設されている。つまり、第2係合部が1対の当接面の間に位置し、通常状態においては、それら1対の当接面に当接せずにそれらの間を移動し、第1回転伝達機構が失陥した場合に、第2係合部が1対の当接面の一方に当接した状態で、第1シャフトと第2シャフトとの間で回転伝達されることになる。ちなみに、本項の態様においては、失陥状態で、操作部材の切り返し時等に、第2係合部が1対の当接面の一方から他方に当接するまでの遊びが存在することになるが、その遊びの存在によって、運転者に第1回転伝達機構が失陥したことを認識させることが可能となる。
(4)前記第1シャフトが、
それの本体部である第1シャフト本体部と、
その第1シャフト本体部と一体的に設けられ、その第1シャフト本体部からそれの径方向に延び出す第1シャフト鍔部と、
それぞれが、前記第1シャフトの回転軸線からそれの径方向に前記所定距離より離れた位置において、その第1シャフト鍔部から、前記第1シャフトの回転軸線の延びる方向における前記第2シャフト側に向って突出する突出部であって、前記案内通路に係合して前記第1係合部として機能する第1突出部と、前記第2係合部として機能する1以上の第2突出部と
を有する(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の車両用操舵力伝達装置。
本項に記載の態様は、第1シャフトの構造を限定した態様である。本項に記載の「1以上の第2突出部」は、その数や第1突出部に対する位置関係が、特に限定されるものではない。本項に記載の「第1シャフト鍔部」は、それら複数の突出部を保持するために設けられるものであり、その形状は特に限定されない。例えば、第1シャフト本体部の周方向における全域から径方向に延び出すものであってもよく、周方向における一部の領域から特定の方向にのみ延び出すものであってもよい。
(5)前記第1シャフトが、前記第2突出部を1つ有するものであり、
その第2突出部と前記第1突出部とが、前記第1シャフトの回転軸線を挟んで反対側に位置するように設けられた(4)項に記載の車両用操舵力伝達装置。
(6)前記第1シャフトが、前記第2突出部を2つ以上有するものであり、
それら2以上の第2突出部の各々と前記第1突出部とが、前記第1シャフトの回転軸線周りに等角度ピッチで設けられた(4)項に記載の車両用操舵力伝達装置。
上記2つの項に記載の態様は、複数の突出部の位置関係を限定した態様である。上記2つの項の態様は、第1シャフトの回転軸線と、通常状態において第1シャフトの回転軸線と、第1シャフトのそれの回転軸線周りの回転に対する重心位置とのズレを小さくできる。つまり、通常状態における第1シャフトの回転軸線回りのモーメントを小さくすることが可能である。なお、後者の態様は、第1シャフトの周りをそれの周方向において等配した位置であれば、第1シャフトの回転軸線からの径方向における距離は異なっていてもよい。つまり、上述した第1シャフトの回転軸線と重心位置とのズレを小さくするという観点からすれば、第1突出部,第2突出部との質量に基づいて、それらの各々の、第1シャフトの回転軸線からの径方向における距離が決定されることが望ましい。
(7)前記案内通路が、
それぞれが前記第1係合部の移動が許容される方向に平行に延びるとともに互いに向かい合うように設けられて当該案内通路を区画し、前記第1係合部を挟むことによって前記第2シャフトの周方向における移動を規制しつつそれの径方向における移動を許容する1対の案内面を有し、
前記第1突出部が、
前記第1シャフト鍔部から前記第1シャフトの回転軸線の延びる方向における前記第2シャフト側に向って突出した状態で固定された軸体と、その軸体にそれの軸線回りに回転可能に保持されたローラとを有し、
当該第1突出部が前記案内通路内を移動する際に、前記ローラが、その案内通路の前記1対の案内面の一方に対して転動するように構成された(4)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車両用操舵力伝達装置。
本項に記載の態様は、第1係合部としての第1突出部の構造を具体化した態様である。本項の態様においては、突出部を1対の案内面の一方に対して転動させるため、第1シャフトと第2シャフトとの間での回転伝達が円滑なものとなる。ところが、本項の態様においては、構造上、軸体が比較的細くなってしまうため、その軸体が破断してしまう虞がある。つまり、本項の態様においては、前述した第2回転伝達機構が特に有効である。
(8)前記第2シャフトが、それの本体部である第2シャフト本体部と、その第2シャフト本体部と一体的に設けられてその第2シャフト本体部からそれの径方向に延び出す第2シャフト鍔部とを有し、
その第2シャフト鍔部が、
その第2シャフト鍔部の前記第1シャフト側の端面に開口するとともに前記第2シャフトの径方向に延びるように設けられ、前記第1突出部が嵌り入って前記第1回転伝達機構の前記案内通路として機能する径方向溝と、
当該第2シャフト鍔部の前記第1シャフト側の端面に開口して設けられ、前記1以上の第2突出部が内部に位置し、前記通常状態においてその第2突出部の内部での移動を許容し、かつ、前記失陥状態において前記1以上の第2突出部の少なくとも1つが内周面に当接するように構成され、前記第2回転伝達機構の前記第2係合部失陥時係合部として機能する開口穴と
を有する(4)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の車両用操舵力伝達装置。
本項に記載の態様は、回転軸線方向に突出する突出部を有する第1シャフトに対して、第2シャフトの構造を具体化した態様である。本項の態様は、第2シャフト本体部から回転軸線方向における第1シャフト側の端部の径方向に突出した部分に、第1係合部が係合する案内通路と、第2係合部が係合する第2係合部失陥時係合部とが設けられた態様である。本項に記載の「開口穴」は、第2シャフトの端面に開口する凹所,空洞であり、少なくとも、失陥状態において第2係合部を当接させた状態でその第2係合部の第2シャフトの径方向への移動を許容できるものであれば、それの断面形状が特に限定されるものではない。なお、本項の態様においては、失陥状態において、開口穴の内周面の一部が、先に述べた当接面として機能するのであり、本項の態様は、第2係合部失陥時係合部が1対の当接面を有する態様の一態様と考えることもできる。
ちなみに、本項に記載の「第2シャフト鍔部」は、先に説明した第1シャフト鍔部と同様に、その形状は特に限定されず、例えば、第2シャフト本体部の周方向における全域から径方向に延び出すものであっても、第2シャフト本体部の周方向における一部の領域から特定の方向にのみ延び出すものであってもよい。
(9)前記開口穴が、
前記通常状態における前記第1シャフトと前記第2シャフトとの回転に伴って、前記1以上の第2突出部が前記第2シャフトに対して移動する際、当該開口穴の内周面と前記第2突出部のそれに最も接近する部分との間隔が一定となるように形成された(8)項に記載の車両用操舵力伝達装置。
本項に記載の態様は、開口穴の断面形状に限定を加えた態様である。本項の態様においては、例えば、通常状態における第1シャフトと第2シャフトとの回転に伴って第2突出部が第2シャフトに対して移動する際にその第2突出部が第2シャフトに対して描く軌跡と、第2突出部と開口穴とのクリアランスとに基づいて、開口穴の断面形状を決定することが可能である。なお、通常状態における第2突出部の第2シャフトの周方向への自由な移動を許容するために、失陥状態において、第2突出部と開口穴との間には遊びが存在する。その遊びを、通常状態における第2突出部の第2シャフトの周方向への移動範囲より大きくしないためには、第2突出部と開口穴とのクリアランスは、できるだけ小さくすることが望ましい。
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。また、〔発明の態様〕の各項の説明に記載されている技術的事項を利用して、下記の実施例の変形例を構成することも可能である。
≪第1実施例≫
<車両用ステアリングシステムの全体構成>
図1に、第1実施例の車両用操舵力伝達装置を備えたステアリングシステムの全体構成を示す。本ステアリングシステムは、運転者によって操作されるステアリング操作部材としてのステアリングホイール10と、一端部においてステアリングホイール10を保持する操舵力伝達装置12と、車輪を転舵する転舵装置14と、操舵力伝達装置12と転舵装置14との間に位置するインタミディエイトシャフト(以下、「I/Mシャフト」と略す場合がある)16とを含んで構成されている。さらに、I/Mシャフト16の一端部と操舵力伝達装置12の備える出力シャフト18とは、ユニバーサルジョイント20によって連結され、I/Mシャフト16の他端部と転舵装置14の備える入力シャフト22の一端部とは、もう1つのユニバーサルジョイント24によって連結されている。
本システムは、図1において右側、つまり、ステアリングホイール10側が車両後方を、左側、つまり、転舵装置14側が車両前方を向くように配設されており、I/Mシャフト16は、車室とエンジン室とを区画するダッシュパネル26に設けられた穴を通るようにして配設されており、I/Mシャフト16のその穴を通る部分はブーツ28に被われている。
転舵装置14は、入力シャフト22と、外殻部材としてのハウジング30と、車輪を転舵するための転舵ロッド32とを備えており、その転舵ロッド32は、それの軸線方向に移動可能にそのハウジング30に保持されるとともに、車幅方向に延びるように配設されている。転舵ロッド32は、それの両端部が、左右の前輪の各々を保持するステアリングナックル(図示省略)に連結されている。また、入力シャフト22は、ハウジング30に回転可能に保持され、そのハウジング30内において、転舵ロッド32と係合している。入力シャフト22の車両前方側の端部にはピニオン(図示省略)が形成されており、転舵ロッド32の軸線方向における中間部に形成されたラック(図示省略)がそのピニオンと噛合することで、転舵ロッド32と入力シャフト22とが係合しているのである。
操舵力伝達装置12は、いわゆるステアリングコラムとして構成されたものであり、インパネリインフォースメント34に設けられたステアリングサポート36において、車体の一部に固定支持される。操舵力伝達装置12は、支持された状態では、図に示すように、車両前方側が下方に位置するように傾斜した姿勢で配置されることになる。操舵力伝達装置12には、それの前方部に前方ブラケット38が設けられるとともに、その前方ブラケット38より車両後方側にブレークアウェイブラケット(以下、「B.A.BKT」と略す場合がある)40が設けられており、それら前方ブラケット38とB.A.BKT40との各々が、ステアリングサポート36に取り付けられることで、操舵力伝達装置12は、2箇所において支持される。支持された操舵力伝達装置12は、後方に位置する部分がインパネ42から車両後方側に突出する状態とされ、その突出する後端部に、ステアリングホイール10が取り付けられている。操舵力伝達装置12のインパネ42から突出する部分は、コラムカバー44によって覆われ、また、下部は、インパネロアカバー46によってカバーされる。
図2に、操舵力伝達装置12の側面断面図を示す。操舵力伝達装置12は、大きくは、ステアリングホイール10を保持するとともに軸線方向に伸縮可能とされたコラムセクション50と、電動式パワーステアリング機能を実現する主体となるEPSセクション52とに区分することができ、それら2つのセクション50,52が一体化されたものとなっている。以下、それら各セクションについて、順に説明する。
コラムセクション50は、ステアリングホイール10を車両後方側の端部において保持するメインシャフト54と、そのメインシャフト54を挿通させた状態で回転可能に保持するコラムチューブ56とを含んで構成されている。メインシャフト54は、車両後方側つまり上方側に位置させられるアッパシャフト58と、車両前方側つまり下方側に位置させられるロアシャフト60とを含んで構成されている。アッパシャフト58はパイプ状に、ロアシャフト60はロッド状に形成され、アッパシャフト58の前方部にロアシャフト60の後方部が挿入されている。アッパシャフト58とロアシャフト60とはスプライン嵌合されており、アッパシャフト58とロアシャフト60とは、回転軸線方向に相対移動可能かつ相対回転不能な状態で接続されている。つまり、メインシャフト54は、回転軸線方向に伸縮可能な構造とされている。なお、ロアシャフト60は、シャフト本体部62と、そのシャフト本体部62の外径より大きな外径でシャフト本体部62の前方側に設けられた鍔部としての円形フランジ部64とから構成されており、その円形フランジ部64において、後に説明するEPSセクション52に連結されている。ちなみに、本操舵力伝達装置12では、ロアシャフト60のシャフト本体部62とアッパシャフト58とによって、メインシャフト54のシャフト本体部が構成されている。
コラムチューブ56は、車両後方側(上方)に位置させられるアッパチューブ66と、車両前方側(下方)に位置させられるロアチューブ68とを含んで構成されている。アッパアチューブ66およびロアチューブ68は、ともに筒状のものであり、アッパチューブ66の前方部にロアチューブ68の後方部が嵌入されている。ロアチューブ68は、段付形状とされており、それの後方の部分においてアッパチューブ66の内径より小さな外径の小径部70と、前方の部分においてアッパチューブ66の内径より大きな外形の大径部72と、小径部70と大径部72とをつなぐ段差部74とを有している。ロアチューブ68の小径部70とアッパチューブ66との間には、図示を省略するライナが設けられており、このライナを介することによって、ロアチューブ68がアッパチューブ66にがたつきなく嵌入されるとともに、アッパチューブ66とロアチューブ68との回転軸線方向の相対移動を容易ならしめている。つまり、コラムチューブ56は、回転軸線方向に伸縮可能な構造とされている。
また、アッパチューブ66の後端部とロアチューブ68の前端部とには、それぞれ、ラジアルベアリング76,78が設けられ、コラムチューブ56は、それらベアリング76,78を介して、メインシャフト54を、それのシャフト本体部において回転可能に保持している。このような構造とされていることで、コラムセクション50は、メインシャフト54の回転を担保しつつ、伸縮可能とされているのである。
図3に、EPSセクション52の側面断面図を示す。EPSセクション52は、ステアリングホイール10に加えられた操作力を転舵装置14に対して出力するための出力シャフト18と、動力源としての電磁モータ80を有してそのモータ80によって出力シャフト18の回転出力を助勢する助勢装置82と、出力シャフト18を回転可能に保持するとともに助勢装置82を収容するEPSハウジング84とを含んで構成されている。出力シャフト18は、出力側シャフト86,入力側シャフト88,トーションバー90の3つが一体化されたものとして構成されている。出力側シャフト86は、EPSハウジング84の車両前方側から延出しており、その延出する部分において、ユニバーサルジョイント20を介して、I/Mシャフト18に接続され、転舵装置14へ回転を出力する。
出力側シャフト86は、中空構造とされており、その出力側シャフト86の車両後方側の部分に入力側シャフト88が挿入している。出力側シャフト86の内周面と入力側シャフト88の外周面との間には、軸受92が介在させられており、出力側シャフト86と入力側シャフト88とは同軸的に相対回転可能とされている。入力側シャフト88は、回転軸線方向に貫通する穴を有し、出力側シャフト86も、回転軸線方向に貫通する穴を有している。それら入力側シャフト88の有するその穴と出力側シャフト86の有する穴とによって形成された空間に、トーションバー90が配設されている。トーションバー90の一端部は、入力側シャフト88の穴の後方側の端部においてピン94によって固定されており、また、トーションバー90のもう一方の端部は、出力側シャフト86の穴の前方側の端部においてピン96によって固定されている。このような構成により、出力シャフト18は、トーションバー90の捩りを許容し、その分だけ自身も捩じられるものとされているのである。また、出力側シャフト86は、その外周において2つのラジアルベアリング98,100を介してEPSハウジング84に回転可能に保持され、入力側シャフト88は、その外周においてニードルベアリング102を介してEPSハウジング84に回転可能に保持されている。
助勢装置82は、上記電磁モータ80と、その電磁モータ80のモータ軸に連結されたウォーム104と、そのウォーム104に噛合させられるウォームホイール106とを含んで構成されている。そのウォームホイール106は、出力シャフト18の出力側シャフト86に固定されており、出力側シャフト86に対して相対回転不能とされている。このような構造により、電磁モータ80によってウォーム104に回転力が付与され、ウォームホイール106に回転力が付与される。つまり、助勢装置82は、電磁モータ80によって出力シャフト18の回転出力が助勢されて、車輪の転舵を助勢する転舵助勢力(「操舵助勢力」と言うこともできる)を発生させる構造とされている。
また、EPSセクション52は、回転角センサ108を備えている。回転角センサ108は、トーションバー90の車両前方部が固定される出力側シャフト86の回転角度位置と、トーションバー90の車両後方部が固定される入力側シャフト88の回転角度位置との差である相対回転変位量を検出するためのデバイスとされている。2本のシャフト86,88の相対回転変位量に基づいて操舵トルクを推定することが可能であり、その操舵トルクの大きさに応じた転舵助勢力を発生させるように電磁モータ80の作動が制御される。
また、出力シャフト18は、メインシャフト54の回転軸線と自身の軸線とが平行であり、かつ、それら回転軸線が所定量ズレた状態で配設されており、メインシャフト54の車両前方側の端部、つまり、先に説明したロアシャフト60の円形フランジ部64に連結されている。その連結構造について、図3に加えて、それにおけるA−A’断面図である図4をも参照しつつ詳しく説明する。
まず、メインシャフト54を構成するロアシャフト60の円形フランジ部64は、図4に示すように、それの前方側の端面に開口してその円形フランジ部64の中心部に形成された円形穴110と、その円形穴110からその円形フランジ部64の径方向に延びるように形成された径方向溝112と、円形穴110の径方向溝112とは反対側に周方向に長い楕円形の開口穴114とを有している。
一方、出力シャフト18の入力側シャフト88には、それの後方側の端部に、円環プレート116が嵌合され、入力側シャフト88の後方側の端より前方側の部分に固定されている。その円環プレート116には、2本の軸体としてのピン118,119が、互いに入力側シャフト88の回転軸線について対称となる位置において、車両後方側に突出する状態で固定されている。それらピン118,119の先端部には、それぞれ、ニードルベアリング120,121を介して、円筒形状のローラ122,123が、ピン118,119回りに回転可能に設けられている。
そして、それら2つのローラうちの一方のローラ122が、ロアシャフト60の径方向溝112に嵌め入れられることで、入力側シャフト88、つまり、出力シャフト18と、メインシャフト54を構成するロアシャフト60とが連結されているのである。なお、その状態においては、入力側シャフト88の車両後方側の端部が、円形穴110に収容されるとともに、ローラ123が、開口穴114の内部に位置している。
なお、径方向溝112に嵌め入れられたローラ122について、図3のB−B’断面図である図5を参照しつつ、詳しく説明する。ローラ122は、段付円筒部材124と環状部材126とから構成されており、環状部材126が段付円筒部材124の最も外径の小さい部分に圧入されている。段付円筒部材124は、ローラ122の外周面として機能する大径円筒面128と、その大径円筒面128より小径の小径円筒面130と、大径円筒面128と小径円筒面130とをつなぐ段差面132と、環状部材126が圧入される圧入円筒面134とを有している。ローラ122の外周部には、小径円筒面130と段差面132と環状部材126の車両後方側の端面とによってローラ122の周方向に延びるように区画される周方向溝136が形成されており、その小径部としての周方向溝136内に円環状の弾性体としてのOリング138が設けられている。そのOリング138には環状の低摩擦部材であるテフロンリング140が外嵌されている。
そして、ローラ122が、テフロンリング140と共に、ロアシャフト60の径方向溝112に係合している。その径方向溝112の幅は、つまり、径方向溝112を区画する1対の側壁面142の間の距離は、ローラ122の外周面の径より僅かに大きくされており、ローラ122と1対の側壁面142の各々との間にはクリアランス(隙間)が存在する。一方、テフロンリング140の外径は径方向溝112の幅より僅かに大きくされており、テフロンリング140は、径方向に変形させられた状態で径方向溝112に係合する。テフロンリング140の内径とOリング138の外径とは略同じとされており、テフロンリング140の径方向への変形に伴ってOリング138も径方向に変形する。このため、テフロンリング140は、Oリング138の弾性力によって付勢された状態で1対の側壁面142の両方に接している。
運転者によってステアリングホイール10が回転操作されると、メインシャフト54が自身の回転軸線回りに回転する。その際、ロアシャフト60の円形フランジ部64に形成された径方向溝112に係合するローラ122は、径方向溝112の有する1対の側壁面142によってそのロアシャフト60の周方向への変位が規制されるとともに、その径方向溝112によってそのシャフト60の径方向への移動が許容される。ロアシャフト60の回転に伴って、ローラ122が径方向溝112内を移動させられる際に、そのロアシャフト60の回転力が、ローラ122,ピン118,円環プレート116等を介して、入力側シャフト88に伝達されて、その入力側シャフト88が自身の回転軸線回りに回転するのである。つまり、操舵力伝達装置12は、ロアシャフト60の回転軸線回りの回転を、自身の回転軸線がロアシャフト60の回転軸線からズレて配設された入力側シャフト88に伝達する第1回転伝達機構を備えるものとされてる。そして、上述のような構造によって、操舵力伝達装置12は、ステアリングホイール10に入力された操舵力をインタミディエイトシャフト16等を介して転舵装置14に伝達するのである。
なお、本操舵力伝達装置12では、1対の側壁面112が1対の案内面として機能し、径方向溝112が案内通路として機能するのである。また、本操舵力伝達装置12では、ピン118,ニードルベアリング120,ローラ122,Oリング138,テフロンリング140等によって、円環プレート116から入力側シャフト88の回転軸線の延びる方向に突出して、案内通路としての径方向溝112に係合する第1突出部150が構成されており、その第1突出部150が、第1係合部として機能しているのである。つまり、第1回転伝達機構は、案内通路として機能する径方向溝112と、第1係合部として機能する第1突出部150とを含んで構成されている。そして、本操舵力伝達装置12においては、転舵装置側のシャフトである出力シャフト18が、第1シャフトとして機能し、操作部材側のシャフトであるメインシャフト54が、第2シャフトとして機能する。
なお、第1シャフトである出力シャフト18は、ピン119,ニードルベアリング121,ローラ123を含んで構成されて、円環プレート116から第2シャフトであるメインシャフト54に向かって突出するもう1つの突出部152を有している。その突出部152は、先に説明したように、ロアシャフト60が有する開口穴114の内部に位置している。そして、その突出部152は、後に詳しく説明するが、第1回転伝達機構によって回転伝達が行われている場合には、開口穴114の内周面に当接せずに、メインシャフト54に対して、それの周方向および径方向の移動が許容されるようになっている。
操舵力伝達装置12は、EPSセクション52の前方端部と、コラムセクション50のアッパチューブ66とにおいて、車体の一部に取り付けられている。EPSセクション52のEPSハウジング84には、先に説明した前方ブラケット38が固定的に設けられており、この前方ブラケット38には、軸挿通穴160が設けられている。ステアリングサポート36には、軸穴162が穿設された軸受部材164が固定されており、前方ブラケット38の軸挿通穴160と軸受部材164の軸穴162とに、支持軸166が挿通されることで、操舵力伝達装置12は、その支持軸166を中心に揺動可能に支持される。
一方、コラムセクション50は、B.A.BKT40に保持され、そのB.A.BKT40がステアリングサポート36に取り付けられている。詳しく説明すれば、図6に示すように、B.A.BKT40は、アッパチューブ66に固定された被保持部材170を保持する保持部材172と、その保持部材172に固定されてステアリングサポート36に取り付けられる取付プレート174とを有しており、その取付プレート174に設けられたスロット176を利用してステアリングサポート36に締結されている。被保持部材170,保持部材172には、それぞれ長穴178,180が穿設され、それらにはロッド182が貫通しており、図では省略するが、そのロッド182を利用して保持部材172が被保持部材170を挟持するようにされている。この挟持力によって、アッパチューブ66の変位が禁止される構造とされている。操作レバー184を操作することによって、その挟持力を弱めることが可能とされており、挟持力が弱められた状態では、ロッド182の長穴178に沿った移動が許容されることで、アッパチューブ66のロアチューブ68に対する軸線方向の移動が、アッパシャフト58のロアシャフト60に対する軸線方向の移動とともに許容され、コラムセクション50の伸縮が許容される。また、ロッド182の長穴180に沿った移動が許容されることで、前方ブラケット38に挿通された支持軸166を中心とした操舵力伝達装置12の揺動が許容されることになる。つまり、本操舵力伝達装置12は、そのような構造のチルト・テレスコピック機構186を備えているのである。
車両の衝突に起因して運転者がステアリングホイール10に二次衝突した場合には、B.A.BKT40がステアリングサポート36から離脱するとともに、コラムセクション50が収縮させられる。本操舵力伝達装置12には、二次衝突の衝撃を吸収する衝撃吸収機構187が設けられており、ステアリングコラム56の収縮に伴ってEAプレート188が変形させられることによって、二次衝突の衝撃が効果的に吸収される。
<第1回転伝達機構の機能>
本操舵力伝達装置12においては、互いの軸線が平行にズレた状態で配設された第1シャフトとしての出力シャフト18と第2シャフトとしてのメインシャフト54とが、詳しく言えば、出力シャフト18の入力側シャフト88とメインシャフト54のロアシャフト60とが、上記第1回転伝達機構によって連結されている。そのことから、ロアシャフト60の回転位相と入力側シャフト88の回転位相とがズレて、それら2本のシャフト60,88の回転位相の差である回転位相差が変化するものとされている。以下に、具体的に図を用いて説明する。
図7に、ロアシャフト60の径方向溝112と、入力側シャフト88の第1突出部150とが係合する部分の断面図(図3におけるA−A’断面図に相当する)を示す。図7(a)は、ステアリングホイール10が車輪の転舵中立位置に対応する位置、つまり、中立操作位置にあるときの状態を、図7(b)は、ステアリングホイール10が中立操作位置から左旋回方向に90゜回転操作された位置にあるときの状態を、図7(c)は、ステアリングホイール10が中立操作位置から右旋回方向に90゜回転操作された位置にあるときの状態を、図7(d)は、ステアリングホイール10が中立操作位置から右、若しくは左旋回方向に180゜回転操作された位置にあるときの状態を、それぞれ示している。
図から解るように、ステアリングホイール10が中立操作位置から右、若しくは左旋回方向に90゜回転操作された場合には、ロアシャフト60は自身の回転軸線を中心に90°回転するが、入力側シャフト88は自身の回転軸線を中心に90°までは回転せずに、入力側シャフト88の回転角は90°未満となる。そして、ステアリングホイール10が、さらに回転操作されて、中立操作位置から右、若しくは左旋回方向に180゜回転操作された場合に、ロアシャフト60および入力側シャフト88は共に180°回転する。ロアシャフト60の回転角αと入力側シャフト88の回転角βとの関係は、図8に示すように、ステアリングホイール10が中立操作位置から180°未満回転操作される場合には、入力側シャフト88の回転角βはロアシャフト60の回転角αより小さく、ステアリングホイール10が中立操作位置から180°回転操作されると、入力側シャフト88の回転角βがロアシャフト60の回転角αと同じとなる。つまり、ロアシャフト60の回転位相が、ロアシャフト60の回転位相と入力側シャフト88の回転位相とが一致する特定回転位相となる場合、具体的にいえば、ロアシャフト60の回転角αが0°若しくは180°となる場合には、各回転角α,βがともに同じとなり、回転位相差は0となる。一方、ロアシャフト60の回転角αが0°から180°に変化する間に、回転位相差は徐々に増加し、ある回転角からは逆に、徐々に減少し、0となるのである。この場合の2本のシャフト60,88のギヤ比(dβ/dα)、つまり、ロアシャフト60の回転速度(dα/dt)に対する入力側シャフト88の回転速度(dβ/dt)の比(dβ/dα)は、図8に示すように、ロアシャフト60の回転角αに応じて変化する。
図から解るように、ロアシャフト60の回転角αが0°の場合には、ギヤ比(dβ/dα)は最も小さく、ロアシャフト60の回転角αが大きくなるにつれてギヤ比(dβ/dα)は大きくなる。つまり、本操舵力伝達装置12においては、ステアリングホイール10の操作角が小さい場合においては、穏やかで安定感のあるハンドリングが実現され、ステアリングホイール10の操作角が大きくなるにつれて、レスポンスの良いハンドリングが実現されるのである。なお、本システムにおいては、転舵装置12が車輪の転舵範囲を制限する転舵範囲制限機構を有しており、その転舵範囲制限機構によって、ステアリングホイール10の操作範囲は、中立操作位置から左右約180゜に制限されることになる。
なお、図9の縦軸に示されているeは、第1突出部150が径方向溝112に係合する位置の入力側シャフト88の回転軸線からのオフセット量L(図4)に対する入力側シャフト88の回転軸線とロアシャフト60の回転軸線とのズレ量d(図4)の比率(d/L)であり、ステアリングホイール10の操作フィーリングを左右するものとなっている。
また、図4および図7から分かるように、開口穴114の内部に位置する突出部152は、常に開口穴114の内周面と間に僅かな一定の隙間がある状態となっている。つまり、突出部152は、第1回転伝達機構によって回転伝達されている場合には、その第1回転伝達機構の動作を妨げないようになっているのである。
<本操舵力伝達装置の特徴>
i)第2回転伝達機構の機能
本車両用操舵力伝達装置12においては、先に述べたように、第1回転伝達機構の第1係合部として機能する第1突出部150が、軸体であるピン118とローラ122とを含んで構成されている。そのピン118は、その外径が、出力シャフト18のシャフト本体部の外径と比較しても細い。つまり、メインシャフト54と出力シャフト18との一方から他方へ回転トルクを伝達する場合、第1突出部150と径方向溝112との間には周方向の力が作用することになるが、その力に対する出力シャフト18の剛性は、ピン118が最も弱い部分となっている。したがって、メインシャフト54と出力シャフト18との一方から非常に大きな力が加わった場合、そのピン118が破断してしまう虞があるのである。その場合、第1回転伝達機構によるメインシャフト54と出力シャフト18との連結は断たれ、第1回転伝達機構によっては、回転伝達ができない事態に陥ってしまうのである。
ところが、本操舵力伝達装置12においては、第1回転伝達機構によるメインシャフト54と出力シャフト18との連結が断たれた場合、例えば、図10(a)に示した状態から、ステアリングホイール10を左旋回方向に操作すると、メインシャフト54のロアシャフト60が回転して、開口穴114の内周面が突出部152に当接することになる。さらに、ステアリングホイール10を左旋回方向に操作すると、図10(b)〜(d)に示すように、開口穴114の内周面が突出部152に当接した状態で、出力シャフト18の入力側シャフト88も回転するのである。つまり、本操舵力伝達装置12は、第1回転伝達機構によるメインシャフト54と出力シャフト18との連結が断たれた場合であっても、メインシャフト54と出力シャフト18とを連結して回転伝達を可能とする第2回転伝達機構を備えるものとされている。
そして、本操舵力伝達装置12では、突出部152が、円環プレート116から入力側シャフト88の回転軸線の延びる方向に突出して第2係合部として機能し、開口穴114が第2係合部失陥時係合部として機能しているのである。つまり、第2回転伝達機構は、第2突出部152と開口穴114とを含んで構成されている。ちなみに、ステアリングホイール10の左旋回,右旋回の各々の操作の際に、第2係合部失陥時係合部としての開口穴114は、入力側シャフト88の回転中心を通って径方向溝112の延びる方向に延びる直線を挟んで互いに対向する内周面の各々において、第2突出部152と当接することになる。つまり、開口穴114は、それぞれが、第1回転伝達機構が正常な状態(以下、「通常状態」と呼ぶ場合がある)において第2突出部152の周方向における移動を許容し、第1回転伝達機構が失陥した状態(以下、「失陥状態」と呼ぶ場合がある)において第2突出部152を当接させることによってメインシャフト54と出力シャフト18との間の回転伝達を可能とする1対の当接面を有するものとなっている。
なお、本操舵力伝達装置12においては、第2突出部152が、第1突出部150に対して、回転軸線について対称となる位置に設けられているため、通常状態における出力シャフト18の回転に対する重心位置と、出力シャフト18の回転軸線とのズレが、第2回転伝達機構(第2係合部)を有していない従来の装置に比較して、小さくされている。つまり、本操舵力伝達装置12は、通常状態における出力シャフト18の回転軸線回りのモーメントが小さくされているのである。
ii)第2回転伝達機構を構成する開口穴の形状決定
本実施例の操舵力伝達装置12においては、上記第2回転伝達機構を構成する開口穴114は、通常状態におけるメインシャフト54と出力シャフト18との回転に伴って第2突出部152がメインシャフト54に対して移動する際に、開口穴114の内周面と、第2突出部152のそれに最も近づく部分との間隔が一定となるように形成されている。具体的には、通常状態におけるメインシャフト54と出力シャフト18との回転に伴って第2突出部152がロアシャフト60に対して移動する際にその第2突出部152の中心がロアシャフト60の円形フランジ部64に対して描く軌跡と、第2突出部152の外径と、第2突出部152と開口穴114との間に設ける間隔とに基づいて、開口穴114の断面形状が決定されている。
以下に、第2突出部152の中心が円形フランジ部64に対して描く軌跡を求める方法について、図11を参照しつつ詳しく説明する。図11(a)は、ロアシャフト60がある角度だけ回転した場合の図であり、図11(b)は、ロアシャフト60の回転中心Oα周りを拡大して示す図である。なお、図11(a)においては、入力側シャフト88のシャフト本体部の図示を省略し、その入力側シャフト88が有する第1突出部150,第2突出部152は中心および外径のみが分かるように図示している。ちなみに、図11においては、入力側シャフト88の回転中心をOβ,第1突出部150の中心をO1,第2突出部の中心をO2としている。
まず、ロアシャフト60の回転角αと、入力側シャフト88の回転角βとの関係を求める。図11(b)に示すように、点A,点Bを定義し、ロアシャフト60の回転中心Oαと点Aとの距離をx1,第1突出部150の中心O1と点Aとの距離をx2とすると、三角形OβO1Aから、次式が得られる。
sinβ=x2/L ・・・(1)
cosβ=(d+x1)/L ・・・(2)
また、ロアシャフト60の回転中心Oαと第1突出部150の中心O1との距離をx3とすると、三角形OαO1Aから、次式が得られる
1=x3・cosα ・・・(3)
2=x3・sinα ・・・(4)
それら(3)式,(4)式を(1)式,(2)式に代入するとともに、先に述べたe=d/Lを用いてdを消去すれば、次式が得られる。
sinβ=x3・sinα/L ・・・(1')
cosβ=e+x3・cosα/L ・・・(2')
次に、三角形OβO1Bの各辺の長さの関係から、ロアシャフト60の回転中心Oαと第1突出部150の中心O1との距離x3が求まる。
3=(L2−(d・sinα)21/2−d・cosα
ここで、上記の式から、e=d/Lを用いてdを消去すると、次式が得られる。
3=L・((1−(e2・sin2α)1/2−e・cosα) ・・・(5)
この(5)式を(1')式,(2')式に代入すれば、次式が得られることになる。
sinβ=((1−e2・sin2α)1/2−e・cosα)・sinα ・・・(1")
cosβ=e・sin2α+cosα・(1−e2・sin2α)1/2 ・・・(2")
次に、図11(a)に示すように、ロアシャフト60の中心Oαを通って径方向溝112が延びる方向にP軸を、ロアシャフト60の中心Oαを通ってそのP軸に直交する方向にQ軸を定義し、第2突出部152の中心O2の座標を(p,q)とする。その第2突出部152の中心O2の座標は、三角形O12Cから、次式のように表すことができる。
p=2・L・cos(α−β)−x3
=2・L・(cosα・cosβ+sinα・sinβ)−x3 ・・・(6)
q=2・L・sin(α−β)
=2・L・(sinα・cosβ−cosα・sinβ) ・・・(7)
この(6)式,(7)式は、それに(1")式,(2")式,(5)式を代入することで、ロアシャフト60の回転角αの関数として表すことができる。つまり、第2突出部152の中心O2が円形フランジ部64に対して描く軌跡を求めることができるのである。なお、図11(a)には、0<α<180°の範囲における軌跡を、二点鎖線で示している。そして、以上のように求められた第2突出部152の中心O2が円形フランジ部64に対して描く軌跡から、第2突出部152の半径と、その通常状態における第2突出部152と開口穴114の内周面とのクリアランスとを足し合わせた距離だけシフトさせることで、開口穴114の断面形状が決定されているのである。
≪第2実施例≫
図12に、第2実施例の操舵力伝達装置が備える第1シャフトとしての出力シャフトと、第2シャフトとしてのメインシャフトとが連結する部分、詳しく言えば、出力シャフトを構成する入力側シャフト250とメインシャフトを構成するロアシャフト252とが連結する部分の断面図を示す。なお、第2実施例の操舵力伝達装置は、第2回転伝達機構の構成を除き、第1実施例の操舵力伝達装置12と同様あるいは類似の構成要素を含んで構成されているため、それらについては、同じ符号を用いるものとし、それらについての説明は、省略するものとする。
第1実施例の操舵力伝達装置12においては、第1シャフトである出力シャフト18の入力側シャフト88が、第1係合部として機能する第1突出部150の他に、突出部152を1つ有し、その突出部152が第2回転伝達機構を構成する第2係合部として機能するものとされていた。それに対して、本実施例の装置においては、入力側シャフト250が、第1突出部150の他に、2つの突出部260,262を有し、それら2つの突出部260,262が、第2係合部として機能するように構成されている。
本実施例においては、上記3つの突出部150,260,262は、入力側シャフト250の回転軸線を中心とした一円周上に、その円周を3等倍した位置に設けられている。一方、ロアシャフト252の円形フランジ部270には、第1実施例のものと同様の径方向溝112と、第1実施例のものとは形状が異なる開口穴272を有している。そして、第1突出部150が径方向溝112に嵌め入れられて出力シャフトとメインシャフトとが連結されるとともに、2つの突出部260,262が開口穴272の内部に位置させられている。
上記の開口穴272は、第1実施例のものと同様に、通常状態におけるメインシャフトと出力シャフトとの回転に伴って突出部260,262の各々がロアシャフト252に対して移動する際にそれら突出部260,262の中心が円形フランジ部270に対して描く軌跡と、突出部260,262の外径と、突出部260,262と開口穴272との間に設ける間隔とに基づいて、断面形状が決定されている。つまり、第1回転伝達機構が正常に動作している場合、図13に示すように、2つの突出部260,262は、開口穴272の内周面に当接せずに、それの内部を移動するようになっている。そして、第1回転伝達機構が失陥した場合には、2つの突出部260,262のいずれかが、開口穴272の内周面に当接し、そのように当接した状態で、メインシャフトと出力シャフトとの間で回転が伝達されることになる。
したがって、本実施例の操舵力伝達装置は、第1実施例の装置12と同様に、第2回転伝達機構を備えており、第1回転伝達機構によるメインシャフトと出力シャフトとの連結が断たれた場合であっても、第2回転伝達機構によって、それらメインシャフトと出力シャフトとを連結して回転伝達が可能とされているのである。また、本実施例の装置は、2つの突出部260,262によって第2係合部が構成されているため、1つの突出部が第2係合部として機能する第1実施例の装置12に比較して、より操舵不能に陥ることのない、信頼性の高い装置となっている。さらに、本実施例の装置は、3つの突出部150,260,262が周方向に等倍した位置に配設されているため、第1実施例と同様に、出力シャフトの回転軸線周りのモーメントが小さくされているのである。
≪第3実施例≫
図14,15に、第3実施例の操舵力伝達装置が備える第1シャフトとしての出力シャフトと第2シャフトとしてのメインシャフトとが連結する部分、詳しく言えば、出力シャフトを構成する入力側シャフト300とメインシャフトを構成するロアシャフト302とが連結する部分を示す。図14は、その連結する部分の側面図であり、図15は、それの断面図(図14におけるC−C’断面)である。なお、第3実施例の操舵力伝達装置は、第2回転伝達機構の構成を除き、第1実施例の操舵力伝達装置12と同様あるいは類似の構成要素を含んで構成されているため、それらについては、同じ符号を用いるものとし、それらについての説明は、省略するものとする。
第1実施例の操舵力伝達装置12においては、第2係合部として機能する第2突出部152が、第1係合部として機能する第1突出部150に対して、入力側シャフト300の回転軸線を挟んで反対側に設けられていた。それに対して、本実施例の装置においては、第2突出部310が、入力側シャフト300の回転軸線から第1突出部150に向かって延びる直線上で、その回転軸線から第1突出部150より離れた位置に設けられている。一方、ロアシャフト302の円形フランジ部320には、第1実施例のものと同様に、円形穴322と、径方向溝324とが設けられている。そして、第1突出部150が径方向溝324に嵌め入れられて出力シャフトとメインシャフトとが連結された状態において、第2突出部310は、径方向溝324の内部に位置している。
第1回転伝達機構が正常に動作している場合、図16に示すように、第2突出部310は、径方向溝324の1対の側壁面326の両者に当接せず、それら1対の側壁面326の間を移動するようになっている。そして、第1回転伝達機構が失陥した場合には、第2突出部310が、1対の側壁面326のいずれかに当接し、その状態でメインシャフトと出力シャフトとの間で回転が伝達されることになる。
したがって、本実施例の操舵力伝達装置は、第1実施例の装置12と同様に、第2回転伝達機構を備えており、第1回転伝達機構によるメインシャフトと出力シャフトとの連結が断たれた場合であっても、第2回転伝達機構によって、それらメインシャフトと出力シャフトとを連結して回転伝達が可能とされているのである。ちなみに、本実施例の装置においては、径方向溝324が第1回転伝達機構の案内通路として機能するだけでなく、第2回転伝達機構の第2係合部失陥時係合部としても機能するのである。また、その径方向溝324を区画する1対の側壁面326が、案内通路が有する1対の案内面として機能するだけでなく、第2係合部失陥時係合部が有する1対の当接面としても機能しているのである。つまり、本実施例の操舵力伝達装置は、第2突出部310を追加した第2回転伝達機構を有していない従来の装置に対して第2突出部310を追加するだけで構成することができ、比較的簡便に構成することが可能である。
請求可能発明の第1実施例である車両用操舵力伝達装置を備えた車両用ステアリングシステムを示す模式図である。 図1の車両用ステアリングシステムの備える車両用操舵力伝達装置を示す断面図である。 車両用操舵力伝達装置の備えるEPSセクションを示す断面図である。 図2の車両用操舵力伝達装置が備える回転伝達機構の要部を示す断面図(図3におけるA−A’断面)である。 図2の車両用操舵力伝達装置が備える回転伝達機構の要部を示す断面図(図3におけるB−B’断面)である。 車両用操舵力伝達装置の備えるコラムセクションを保持するブレークアウェイブラケットを示す斜視図である。 図2の車両用操舵力伝達装置が備える回転伝達機構の通常状態における動作を示す図である。 操作部材側シャフトの回転角と転舵装置側シャフトの回転角との関係を示すグラフである。 操作部材側シャフトの回転角に応じて変化する操作部材側シャフトと転舵装置側シャフトとのギヤ比を示すグラフである。 図2の車両用操舵力伝達装置が備える第2回転伝達機構の失陥状態における動作を示す図である。 図2の車両用操舵力伝達装置が備える第2回転伝達機構を構成する開口穴の形状を決定する際に用いる図である。 第2実施例である車両用操舵力伝達装置が備える回転伝達機構の要部を示す断面図である。 第2実施例である車両用操舵力伝達装置が備える回転伝達機構の通常状態における動作を示す図である。 第3実施例である車両用操舵力伝達装置が備える回転伝達機構の要部を示す側面断面図である。 第3実施例である車両用操舵力伝達装置が備える回転伝達機構の要部を示す断面図(図14におけるC−C’断面)である。 第3実施例である車両用操舵力伝達装置が備える回転伝達機構の通常状態における動作を示す図である。
符号の説明
10:ステアリングホイール(ステアリング操作部材) 12:車両用操舵力伝達装置 14:転舵装置 18:出力シャフト(第1シャフト) 54:メインシャフト(第2シャフト) 56:コラムチューブ 58:アッパシャフト 60:ロアシャフト 62:シャフト本体部 64:円形フランジ部(第2シャフト鍔部) 82:助勢装置 86:出力側シャフト 88:入力側シャフト 90:トーションバー 110:円形穴 112:径方向溝(案内通路) 114:開口穴(第2係合部失陥時係合部) 116:円環プレート(第1シャフト鍔部) 118,119:ピン(軸体) 122,123:ローラ 142:1対の側壁面(1対の案内面) 150:第1突出部(第1係合部) 152:第2突出部(第2係合部) 250:入力側シャフト(第1シャフト) 252:ロアシャフト(第2シャフト) 260,262:第2突出部(第2係合部) 270:円形フランジ部(第2シャフト鍔部) 272:開口穴(第2係合部失陥時係合部) 300:入力側シャフト(第1シャフト) 302:ロアシャフト(第2シャフト) 310:第2突出部(第2係合部) 320:円形フランジ部(第2シャフト鍔部) 324:径方向溝(案内通路,第2係合部失陥時係合部) 326:1対の側壁面(1対の案内面,1対の当接面)
α:ロアシャフトの回転角 β:入力側シャフトの回転角 dβ/dα:ギヤ比 L:係合位置のオフセット量 d:2本のシャフトのズレ量 e:比率

Claims (6)

  1. 運転者によって操作されるステアリング操作部材と車輪を転舵する転舵装置との一方に一端部が連結され、回転可能に配設された第1シャフトと、
    前記ステアリング操作部材と前記転舵装置との他方に一端部が連結され、前記第1シャフトの回転軸線と自身の回転軸線とが平行でありかつそれら回転軸線が所定距離だけズレた状態で回転可能に配設された第2シャフトと、
    (A-1) 前記第1シャフトの他端部において、その第1シャフトの回転軸線からその第1シャフトの径方向に前記所定距離より離れた位置に設けられた第1係合部と、(A-2) 前記第2シャフトの他端部において、その第2シャフトの径方向に延びるようにして設けられ、前記第1係合部が係合するとともに、その第1係合部の前記第2シャフトの径方向における移動を許容する案内通路とを含んで構成され、前記第1シャフトと前記第2シャフトとを連結し、それら第1シャフトおよび第2シャフトのそれぞれの回転位相の差である回転位相差を変化させつつ、それら第1シャフトと第2シャフトとの一方の回転をそれらの他方に伝達するように構成された第1回転伝達機構と、
    (B-1) 前記第1シャフトの他端部において、前記第1係合部とは別に、その第1シャフトの回転軸線からその第1シャフトの径方向に前記所定距離より離れた位置に設けられた第2係合部と、(B-2) 前記第2シャフトの他端部に設けられ、前記第1回転伝達機構によって前記第1シャフトと前記第2シャフトとが連結されている状態である通常状態においては前記第2係合部が係合せず、かつ、前記第1回転伝達機構による前記第1シャフトと前記第2シャフトとの連結が断たれる失陥が生じた状態である失陥状態において前記第2係合部が係合する第2係合部失陥時係合部とを含んで構成され、その失陥状態において、前記第1シャフトと前記第2シャフトとを連結してそれら第1シャフトと第2シャフトとの一方の回転をそれらの他方に伝達する第2回転伝達機構と
    を備えた車両用操舵力伝達装置。
  2. 前記第2係合部失陥時係合部が、
    それぞれが、前記第2シャフトの周方向において前記第2係合部を挟んで互いに向かい合うとともに、前記通常状態において前記第2係合部が前記第2シャフトの周方向において移動する範囲より広い間隔をおいて設けられ、前記通常状態において前記第2係合部が当接せずにその第2係合部の前記第2シャフトの周方向における移動を許容し、かつ、前記失陥状態において前記第2係合部を自身のいずれかに当接させることによって前記第1シャフトと前記第2シャフトとの一方の回転をそれらの他方に伝達する1対の当接面を有する請求項1に記載の車両用操舵力伝達装置。
  3. 前記第1シャフトが、
    (a-1)それの本体部である第1シャフト本体部と、(a-2)その第1シャフト本体部と一体的に設けられ、その第1シャフト本体部からそれの径方向に延び出す第1シャフト鍔部と、(a-3)それぞれが、前記第1シャフトの回転軸線からそれの径方向に前記所定距離より離れた位置において、その第1シャフト鍔部から、前記第1シャフトの回転軸線の延びる方向における前記第2シャフト側に向って突出する突出部であって、前記案内通路に係合して前記第1係合部として機能する第1突出部と、前記第2係合部として機能する1以上の第2突出部とを有し、
    前記第2シャフトが、
    (b-1)それの本体部である第2シャフト本体部と、(b-2)その第2シャフト本体部と一体的に設けられてその第2シャフト本体部からそれの径方向に延び出す第2シャフト鍔部とを有し、
    その第2シャフト鍔部が、
    その第2シャフト鍔部の前記第1シャフト側の端面に開口するとともに前記第2シャフトの径方向に延びるように設けられ、前記第1突出部が嵌り入って前記第1回転伝達機構の前記案内通路として機能する径方向溝と、
    当該第2シャフト鍔部の前記第1シャフト側の端面に開口して設けられ、前記1以上の第2突出部が内部に位置し、前記通常状態においてその第2突出部の内部での移動を許容し、かつ、前記失陥状態において前記1以上の第2突出部の少なくとも1つが内周面に当接するように構成され、前記第2回転伝達機構の前記第2係合部失陥時係合部として機能する開口穴と
    を有する請求項1または請求項2に記載の車両用操舵力伝達装置。
  4. 前記第1シャフトが、前記第2突出部を1つ有するものであり、
    その第2突出部と前記第1突出部とが、前記第1シャフトの回転軸線を挟んで反対側に位置するように設けられた請求項3に記載の車両用操舵力伝達装置。
  5. 前記第1シャフトが、前記第2突出部を2つ以上有するものであり、
    それら2以上の第2突出部の各々と前記第1突出部とが、前記第1シャフトの回転軸線周りに等角度ピッチで設けられた請求項3に記載の車両用操舵力伝達装置。
  6. 前記開口穴が、
    前記通常状態における前記第1シャフトと前記第2シャフトとの回転に伴って、前記1以上の第2突出部が前記第2シャフトに対して移動する際、当該開口穴の内周面と前記第2突出部のそれに最も接近する部分との間隔が一定となるように形成された請求項3ないし請求項5のいずれか1つに記載の車両用操舵力伝達装置。
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