JP2010125671A - 包装用フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】結晶化熱量が5J/g〜80J/gの条件を満たすオレフィン系重合体(A)を含有する両表面層と、乳酸系重合体(B)を主成分として含有する中間層とを備え、表面層と中間層の間に、下記(1)の条件を満たすオレフィン系重合体(A)及び乳酸系重合体(B)を主成分として含有する接着層を備えた包装用フィルムを提案する。オレフィン系重合体(A)及び乳酸系重合体(B)を主成分として接着層を形成するため、各層を構成する樹脂の溶融粘度差を小さくでき、接着層の透明性を確保しつつ生産安定性を維持できる。
【選択図】なし
Description
このような小巻ラップフィルムは、通常カッター刃を具備した紙箱の中に筒に巻かれた状態で収納されている。包装する際は、フィルムを紙箱から引き出して食品を覆うように被せ、フィルムを紙箱に具備されたカッター刃に押し当て、このカッター刃でフィルムにミシン目状の孔を開けてフィルムを引きちぎることにより、引き裂きを幅方向に伝播させるようにしてフィルムをカットし、そしてフィルムの端部を容器に密着させて包装するように使用する。このため、小巻ラップフィルムには、透明性のほか、容器への密着性、箱から引き出したフィルムをカットする際のカット適性などの諸特性が必要とされる。
近年、環境問題の高まりから枯渇性資源の有効活用が重要視されるようになり、天然植物由来の樹脂が注目されている。中でも、乳酸系重合体は、とうもろこしやジャガイモ等のでんぷんから得られる天然植物由来の樹脂であり、量産が可能であるばかりか透明性に優れているため、包装フィルムの原料としても注目されており、乳酸系重合体を原料に用いた包装フィルムの研究開発が行なわれている。
耐熱性を同時に具備した生分解性ラップフィルムとして、JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した40℃における貯蔵弾性率の値が100MPa〜3GPaの範囲にあり、100℃における貯蔵弾性率の値が30MPa〜500MPaの範囲にあり、損失正接(tanδ)のピーク値が0.1〜0.8の範囲にある乳酸系樹脂組成物、例えば乳酸系重合体と可塑剤とを60:1〜99:1の質量割合で含有する乳酸系樹脂組成物を主成分として含有する生分解性ラップフィルムが開示されている。
また、乳酸系重合体がラップフィルムの表裏層に露出していると、加水分解によって乳酸系重合体の分子量が経時的に低下してしまうため、さらにブロッキングを生じ易くなるという問題もあった。
さらに、小巻ラップフィルムとして機能させるには、上記の如く、透明性のほか、容器への密着性、引き出したフィルムをカットする際のカット適性などの諸特性が求められるが、乳酸系重合体を主原料に用いて、このような諸特性を満足する包装フィルムを作製することは容易なことではなく、特に特許文献2のように、多層構造の積層フィルムにおいては、容器への密着性に優れるフィルムを作製することは簡単なことではなかった。
(1)オレフィン系重合体(A)の結晶化熱量が5J/g〜80J/g。
オレフィン系重合体(A)は、表面層及び接着層の主成分である。両層のオレフィン系重合体(A)は互いに異なる種類でもよいが、層間の溶融粘度差を小さくする観点などから同じ種類、特に同一樹脂を用いるのが好ましい。
本包装用フィルムでは、オレフィン系重合体(A)及び乳酸系重合体(B)の混合樹脂が接着層の主成分をなすため、当該混合樹脂が優れた透明性を有する必要がある。
ポリマーブレンドにおける透明性は、分散相の粒径と、分散相−マトリックス相間の平均屈折率の差に影響される。分散相の粒径が可視光の波長より小さい場合、その樹脂組成物は優れた透明性を示す。一方、分散相の粒径が可視光の波長より大きい場合、その透明性は分散相とマトリックス相の平均屈折率差が小さいものほど優れている。一般にオレフィン系重合体(A)と乳酸系重合体(B)から得られる樹脂組成物及びフィルムの透明性は両成分の平均屈折率の差に大きく影響される。
一般的なオレフィン系重合体の屈折率は、乳酸系重合体の屈折率はよりも高く、両者の屈折率差が大きいため、オレフィン系重合体(A)及び乳酸系重合体(B)の混合樹脂の透明性は好ましいものではない。そこで、本包装用フィルムでは、一般的なオレフィン系重合体よりも低い結晶化熱量を有するオレフィン系重合体を用いることにより、乳酸系重合体(B)との屈折率差を減少させ、オレフィン系重合体(A)及び乳酸系重合体(B)からなる混合樹脂の透明性を高めている。
よって、このような透明性の観点から、オレフィン系重合体(A)の結晶化熱量は5〜80J/gであるのが好ましく、特に5〜60J/g、中でも特に5〜40J/gであるのが特に好ましい。
よって、表面層及び接着層で同じオレフィン系重合体(A)を使用する場合には、透明性確保と耐熱性確保の両方を考慮して、オレフィン系重合体(A)の結晶化熱量は20〜80J/gであるのが好ましく、特に30〜60J/gであるのがより好ましい。
上述のように本包装用フィルムの透明性は、オレフィン系重合体(A)及び乳酸系重合体(B)の平均屈折率の差に大きな影響を受ける。一般に乳酸系重合体の平均屈折率は1.45〜1.46程度であり、オレフィン系重合体の平均屈折率は1.50〜1.51程度であるため、その差の絶対値は0.04〜0.06程度となる。この値が0.04を超える場合には、得られる樹脂組成物及びフィルムは白濁する傾向にある。
これに対し、オレフィン系重合体(A)が、比較的低結晶性のオレフィン系重合体であり、平均屈折率が1.48〜1.49であれば、乳酸系重合体(B)との平均屈折率差が小さく、オレフィン系重合体(A)及び乳酸系重合体(B)からなる混合樹脂の透明性を高めることができる。オレフィン系重合体(A)及び乳酸系重合体(B)の平均屈折率差の絶対値が0.04以下であれば、より一層透明性に優れた樹脂組成物及びフィルムが得られる。かかる観点から、オレフィン系重合体(A)及び乳酸系重合体(B)の平均屈折率差の絶対値は、0.03以下であるのがより好ましく、中でも0.02以下であるのがさらに好ましい。
ちなみに、オレフィン系重合体の平均屈折率はその結晶性に影響され、結晶化熱量ΔHcが低いオレフィン系重合体ほどその平均屈折率は低下する傾向にある。
当該共重合体としては、プロピレン−α−オレフィン共重合体やエチレン−α−オレフィン共重合体が好適に用いられる。α−オレフィンとしては、好ましくは炭素数2〜20のものが挙げられ、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどを例示できる。この際、共重合するα−オレフィンは1種のみを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いても構わない。
具体的には、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体およびポリプロピレン系エラストマーの中から選ばれる1種のプロピレン系重合体、又は、これら2種以上の組み合わせからなる混合樹脂を用いるのが好ましい。
中でも、低結晶性や柔軟性と耐熱性とのバランス及び工業的に比較的安価に入手可能であること等から、プロピレン−エチレンランダム共重合体が特に好適である。
乳酸系重合体(B)は、中間層及び接着層の主成分である。両層の乳酸系重合体(B)は互いに異なる種類でもよいが、層間の溶融粘度差を小さくする観点などから同じ種類、特に同一樹脂を用いるのが好ましい。
但し、ここでいうポリ(L−乳酸)またはポリ(D―乳酸)は、理想的にはL−乳酸またはD−乳酸100%からなるポリマーであるが、重合に際し不可避的に異なる乳酸が含まれる可能性があるため、L−乳酸またはD―乳酸を98%以上含むものを意図している。
なお、L体とD体との共重合比が異なる乳酸系重合体をブレンドしてもよい。その場合、複数の乳酸系重合体のL体とD体との共重合比の平均値が上記範囲内に入るようにするのが好ましい。
例えば縮合重合法では、L−乳酸またはD−乳酸、あるいはこれらの混合物等を直接脱水縮合重合して任意の組成を有する乳酸系重合体を得ることができる。
また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調節剤等を用いながら、適当な触媒を使用して任意の組成、結晶性を有する乳酸系重合体を得ることができる。
ラクチドには、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D―乳酸の二量体であるD−ラクチド、或いはL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成、任意の結晶性を有する乳酸系重合体を得ることができる。
内外両面の表面層(以下単に「表面層」という)は、上記のオレフィン系重合体(A)を主成分として含有する表面層形成組成物から形成することができる。
例えば、炭素数が1〜12、好ましくは1〜6の脂肪族アルコールと、炭素数が10〜22、好ましくは12〜18の脂肪酸との化合物である脂肪族アルコール系脂肪酸エステル、具体的には、モノグリセリンオレート、ポリグリセリンオレート、ポリグリセリンポリリシノレート、グリセリントリリシノレート、グリセリンアセチルリシノレート、ポリグリセリンステアレート、ポリグリセリンラウレート、メチルアセチルリシレート、エチルアセチルリシレート、ブチルアセチルリシレート、プロピレングリコールオレート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレート、ポリエチレングリコールオレート、ポリプロピレングリコールオレート、ソルビタンオレート、ソルビタンラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンオレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等、ならびに、ポリアルキレンエーテルポリオール、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、更に、パラフィン系オイルなどから選ばれた化合物の少なくとも1種を、各種を構成する樹脂成分100質量部に対して0.1〜12質量部配合させることができ、好適には1〜8質量部配合させるのが好ましい。
中間層は、乳酸系重合体(B)を主成分として含有する中間層形成組成物から形成することができる。
グリセリン脂肪酸エステル(C)は、乳酸系重合体(B)を可塑化することができる。このようなグリセリン脂肪酸エステルとしては、その種類を特に制限するものではなく、例えばモノグリセライド、ジグリセライド、トリグリセライド、アセチル化モノグリセライドの他、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリンなどのポリグリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。中でも、下記化学式(1)のような分子構造を有するアセチル化モノグリセライドは、乳酸系重合体への良好な相溶性、高い可塑化能力の点で特に好ましい。
例えば、本包装用フィルムの実用特性を保持するために、乳酸系重合体100質量部に対して、カルボジイミド化合物を好ましくは0.1〜3質量部、より好ましくは0.5〜1質量部配合することで質量平均分子量を増大させることができる。かかる範囲を下回る場合、質量平均分子量を増大させる効果が薄い場合が多く、またかかる範囲を上回る場合には、フィルム成形時にフィッシュアイやゲルを生じる場合があり好ましくない。
本包装用フィルムの接着層は、オレフィン系重合体(A)及び乳酸系重合体(B)を主成分として含有する接着層形成組成物から形成することができる。
中でも、表面層形成組成物及び中間層形成組成物のみから接着層形成組成物を構成するのが好ましい。その理由は、表面層形成組成物及び中間層形成組成物のみから接着層形成組成物を構成するようにすれば、表面層、接着層間、並びに中間層、接着層間の構成樹脂の溶融粘度差がより小さくなるため、より好ましい製膜安定性を得ることができるほか、例えば製膜したフィルムの両端をカットしてトリミングした際に発生するトリミングロスを接着層形成組成物の原料として用いることができ、材料の無駄を無くし、コストの軽減を図ることができるからである。
このような混合比に調整するには、トリミングロスを利用する場合には、トリミングロスの成分組成に応じて不足する成分の樹脂を追添するようにすればよい。トリミングロスの全量を接着層として使い切ることができない場合には、余剰分を再生層として設けるようにすればよい。また、トリミングロスの代替として、オレフィン系重合体(A)と乳酸系重合体(B)を含む混合物を用いてもよい。
例えば、炭素数が1〜12、好ましくは1〜6の脂肪族アルコールと、炭素数が10〜22、好ましくは12〜18の脂肪酸との化合物である脂肪族アルコール系脂肪酸エステル、具体的には、モノグリセリンオレート、ポリグリセリンオレート、ポリグリセリンポリリシノレート、グリセリントリリシノレート、グリセリンアセチルリシノレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノオレート、ポリグリセリンステアレート、ポリグリセリンラウレート、メチルアセチルリシレート、エチルアセチルリシレート、ブチルアセチルリシレート、プロピレングリコールオレート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレート、ポリエチレングリコールオレート、ポリプロピレングリコールオレート、ソルビタンオレート、ソルビタンラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンオレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等、ならびに、ポリアルキレンエーテルポリオール、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、更に、パラフィン系オイル、ポリブテン、テルペン樹脂、石油樹脂などから選ばれた化合物の少なくとも1種を、各種を構成する樹脂成分100質量部に対して0.1〜30質量部配合させることができ、好適には3〜25質量部配合させるのが好ましい。
本包装用フィルムは、両表面層と、中間層と、接着層とを備えた積層フィルムであり、少なくとも表面層/接着層/中間層/接着層/表面層をこの順に有する5層以上の積層フィルムであればよく、力学特性や層間接着性の改良など必要に応じて他の層を適宜導入してもかまわない。また、表面層と接着層の間や、中間層と接着層との間に再生層を設けることもできる。
さらに、安定した製膜加工性と柔軟性をより重視する場合には、フィルム全体の厚みに対する中間層の厚み比は35〜65%であるのが好ましく、特に35〜60%であるのがより好ましい。
他方、カット性及び容器への密着性、さらには植物度すなわちCO2削減等をより重視する場合には、フィルム全体の厚みに対する中間層の厚み比は60〜90%であるのが好ましく、特に65〜90%であるのがより好ましい。
なお、中間層が上記したように2層以上ある場合には、全ての中間層の合計厚みを用いて厚み比を計算すればよい。
前述のように、本包装フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、再生層を有することができる。これは、例えば製膜したフィルムの両端をカットしてトリミングした際に発生するトリミングロスについて、接着層に用いた後の余剰分や成形不良品などを用いることができ、材料の無駄を無くし、材料コストの軽減を図ることができる。
再生層は、表面層と接着層の間や、中間層と接着層との間に設けることができる。例えば、表面層、中間層、あるいは接着層の構成を2層構成にしておき、一方の層にフィルム両端のトリミングロスをリターンすることによって、表面層と接着層の間、または中間層と接着層との間に再生層を設けることができる。この場合、各層の厚み比や組成比のほか、リターンを含有させる層が表面層、中間層、あるいは接着層のいずれをベースとしているかによって、3成分の混合比が調整できる。
次に本包装用フィルムの物性的特徴について説明する。
本包装用フィルムは、家庭用小巻ラップフィルムとして好適に用いるためには、全ヘーズ値が3%以下であることが好ましく、本包装用フィルムであれば全ヘーズ値を3%以下とすることができる。
本包装用フィルムは、(1)動的粘弾性測定により、周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E’)が1〜4GPaであり、(2)損失正接(tanδ)のピーク温度が20℃〜70℃であって、(3)そのピーク値が0.1〜0.8の範囲になるように調製することできる。
ちなみに、(1)〜(3)を全て備えているフィルムであれば、小巻ラップフィルムとして利用することができる。
また、tanδのピーク温度が70℃以下であり、そのピーク値が0.1以上であれば、フィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こることがないため、フィルムを容器に包装する際、僅かな間にフィルムが復元することがなく容器への密着性が良好となるため好ましい。また、tanδのピーク温度が20℃以上であり、そのピーク値が0.8以下であれば、塑性的な変形を示すことがないため、通常の使用方法では問題となることがないため好ましい。
なお、tanδ(損失正接)とは、貯蔵弾性率(E’)に対する損失弾性率(E”)の比、すなわち損失正接(tanδ=E”/E’)であり、この値が高い温度領域では、材料の損失弾性率(E”)、すなわち粘弾性特性のうち粘性の寄与率が大きいことを意味している。このtanδのピーク値及びピーク温度を評価することにより、包装時の容器への密着性や包装工程におけるフィルムの応力緩和挙動などを判断する大きな目安となる。
本包装用フィルムの製造方法について説明するが、下記製造方法に限定されるものではない。
この際、実用的にはTダイより押出した溶融物をそのまま、キャスティングロールなどで急冷しながら引き取るようにしてフィルムを製膜するのが好ましい。
延伸温度としては、押出シートの温度を30〜90℃の範囲に設定とすることが好ましく、さらに40〜60℃の範囲とすることが好ましい。延伸温度がかかる範囲内であれば、中間層の乳酸系重合体(B)と、表面層のエチレン系共重合体(A)の両方を延伸に好適な弾性率に近づけることができるため好ましい。また、延伸倍率は1.2〜5.0倍の範囲内とすることが好ましく、さらに1.5〜4.0倍の範囲とすることが好ましい。延伸倍率がかかる範囲内であれば、押出シートの破断や白化等のトラブルが生じることなくカット性を向上させることができる。
熱処理条件としては、熱処理温度を40〜100℃の範囲に設定することが好ましく、さらに60〜90℃の範囲とすることがより一層好ましい。熱処理温度が40℃以上であれば熱処理の効果を十分に得ることができ、100℃以下であればフィルムがロールにべたつく等の成形性の問題を生じることがない。
本発明において「主成分」とは、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含する。この際、当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)が組成物中の50質量%以上、特に70質量%以上、中でも特に90質量%以上(100%含む)を占めるのが好ましい。
なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向(以下「MD」と記載する場合がある)、その直角方向を横方向(以下「TD」と略する場合がある)と称する。
JIS K7121に準じて、パーキンエルマー(株)製Pyris1 DSCを用いて、オレフィン系重合体10mgを加熱速度10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温したときに測定されたサーモグラムから結晶化熱量ΔHc(J/g)を求めた。
JISK7105に準拠してフィルム厚み10μmでフィルムの全ヘーズ値を測定した。
JIS K−7198
A法に記載の動的粘弾性測定法により、アイティー計測制御(株)製動的粘弾性測定装置「DVA−200」を用い、フィルムの横方向(TD)について、振動周波数10Hz、歪み0.1%にて、昇温速度1℃/分で−50℃から150℃まで測定し、得られたデータから温度20℃での貯蔵弾性率(E’)、並びに、損失正接(tanδ)のピーク温度及びそのピーク値を求めた。
得られたフィルムを、40℃×90質量%に調整したタバイエスペック製の恒温恒湿機LH−112内にて1ヶ月静置した。
東ソー(株)製のゲルパーミエーションクリマトグラフィーHLS−8120GPCに、(株)島津製作所製のクロマトカラムShim−PackシリーズのGPC−800CPを装着し、溶媒クロロホルム、溶液濃度0.2wt/vol質量%、溶液注入量200μl、溶媒流速1.0ml/分、溶媒温度40℃の条件で、試験前後(すなわち、前記1ヶ月静置の前後)のフィルムの質量平均分子量を測定し、表1には、これをポリスチレン換算した質量平均分子量を算出して示した。この際、用いた標準ポリスチレンの質量平均分子量は、2000000、670000、110000、35000、10000、4000、600である。
○:分子量保持率が60質量%以上、100質量以下%で、且つ、経時後の分子量が10万以上のもの。
×:分子量保持率が0質量%以上、60質量%未満で、且つ、経時後の分子量が10万未満のもの。
フィルムを製膜する際、特にガラス転移温度(Tg)が室温付近である場合には、押出の際にキャスティングロールに貼り付いてしまって、安定した製膜を妨げることがある。
◎:極めて安定している。
○:安定している。
×:不安定である。
◎:生産中、各層の押出時の流動性の違いによる厚みムラや破断などが生じず、安定した生産ができる。
○:生産中、各層の押出時の流動性の違いによる厚みムラはあるが、破断などは生じずに製膜できる。
×:生産中、各層の押出時の流動性の違いにより厚みムラが顕著であり、破断が頻繁に生じる。
得られたフィルムの巻き物を、温度43℃、相対湿度40%の条件の恒温室内に5日間保管し、その後の表面状態と巻き返し性を観察し、以下の基準で評価した。
◎:フィルム同士のブロッキングが全くないレベル。
○:フィルム同士のブロッキングが少しあるが実用上問題とならないレベル。
×:フィルム同士のブロッキングにより剥離が出来ず巻き返しが不可となり実用上問題となるレベル。
直径10cm、深さ5cmの茶碗状の陶磁器製容器に包装したときの容器への密着性を、以下の基準で評価した。
◎:適度に包装できるレベル。
○:少し容器形状から広がるが実用上問題ないレベル。
×:フィルムが容器に沿わず広がってしまい実用上問題となるレベル。
小巻ラップフィルムを生産する場合には、生産性を考慮して、最初に長尺の原反として製膜した後、用途に応じて20m、50m、100mなどに巻き替えをしたもの(小巻)を箱に入れて出荷するのが通常である。この巻き替え工程(小巻替え)における適正も、小巻ラップフィルムの生産においては重要である。
◎:600m/minの巻き取りスピードでも問題なく小巻替えできる。
○:200m/min以上600m/min未満の巻き取りスピードで問題なく小巻替えできる。
×:200m/min以上600m/min未満巻き替え途中で、層間剥離およびフィルムの破断が生じる。
製膜したフィルムを金属製鋸刃付きのカートンボックスに入れ、フィルムを引き出してカットし、その際のカットのし易さを以下の基準で評価した。
◎:カット時に違和感なく使用できるレベル。
○:カット時に多少の抵抗を感じるが実用上問題ないレベル。
×:カット時にラップが金属製鋸刃に食い込み、過度の抵抗を感じるレベル。
表面層形成組成物については、オレフィン系重合体(A)としての、日本ポリプロ社製プロピレン・エチレンランダム共重合体「ノバテックPP MG3F」(エチレン含量:3質量%、結晶化熱量ΔHc:60J/g、屈折率1.49、MFR:9g/10分)(以下「A−1」と略する)100質量部と、粘着剤としてのヤスハラケミカル社製水添テルペン樹脂「クリアロンP125」10質量部とを、押出設定温度170〜190℃に設定した同方向二軸押出機に投入し溶融混練して、調製した。
さらに、接着層用の押出機に、前記A−1、B−1およびC−1をA−1/B−1/C−1=45/46/9の質量割合で予め同方向二軸押出機にてプレコンパウンドした樹脂組成物を投入し、接着層形成組成物を調製した。
実施例1と同様に共押出し、総厚み30μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=4.8μm/2.25μm/15.9μm/2.25μm/4.8μm)の原反フィルムを得た。
次いで、ロール延伸により、延伸温度60℃、延伸倍率3倍にてMDに一軸延伸した後、90℃で熱処理を行い、厚み10μmの包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
接着層用の押出機に投入する樹脂を、旭化成社製「タフテックH1041」(スチレン−エチレン−ブタジエンブロック共重合体)に変更した以外は、実施例1と同様にして、総厚み10μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=1.6μm/0.75μm/5.3μm/0.75μm/1.6μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
表面層用の押出機に、日本ユニカー社製直鎖状低密度ポリエチレン「NUCG5361」(MFR:4.0g/10分、結晶化熱量ΔHc:100J/g、屈折率1.51)(以下「A−2」と略する)および「NUCG5371」(MFR:12.0g/10分、屈折率1.51)以下「A−3」と略する)を、質量比でA−2/A−3=50/50となるように秤量して混合して投入する一方、接着層用の押出機に、前記A−2、A−3、B−1及びC−1をA−2/A−3/B−1/C−1=19/19/53/9の割合で予め同方向二軸押出機にてプレコンパウンドして接着層形成組成物を調製した以外は、実施例2と同様にして、総厚み10μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=1.6μm/0.75μm/5.3μm/0.75μm/1.6μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
接着層用の押出機に、あらかじめ実施例1の中間層と同様の組成となるようにプレコンパウンドしたペレットを投入し、実質的に三層フィルムとした以外は実施例1と同様にして総厚み10μm(表面層/中間層/表面層=1.6μm/6.8μm/1.6μm)の包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
比較例3において、表面層用の押出機に、あらかじめ実施例1の中間層と同様の組成となるようにプレコンパウンドしたペレットを投入し、実質的に単層フィルムとした以外は比較例3と同様にして総厚み10μmの包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
比較例3において、中間層用の押出機に、あらかじめ実施例1の両表面層と同様の組成となるようにプレコンパウンドしたペレットを投入し、実質的に単層フィルムとした以外には比較例3と同様にして総厚み10μmの包装用フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
これに対して、比較例1〜5においては、表裏層と中間層の間の接着層として、スチレン系エラストマーを用いた場合(比較例1)には、製膜時に各層の流動性が合わずにフィルムの穴あきなどが観察され、また、表裏層および接着層に直鎖状低密度ポリエチレンを用いた場合(比較例2)には、透明性(全ヘーズ値)が不十分となることが確認された。また、接着層樹脂を有さない場合(比較例3)には、小巻替え適性で問題を生じることが確認され、表裏層樹脂を有さない場合(比較例4)には、製膜後のブロッキングが著しく、経時後の分子量の低下も顕著であった。乳酸系重合体を主成分とする中間層を有さない場合(比較例5)には、ブロッキング、製膜安定性は良好であったが、容器密着性が不十分であった。
但し、耐熱性を高めるためには結晶化熱量は高いほうが好ましいため、透明性確保と耐熱性確保の両方を考慮すると、オレフィン系重合体(A)の結晶化熱量は20〜80J/gであるのが好ましく、特に30〜60J/gであるのがより好ましいものと考えることができる。
Claims (8)
- 下記(1)の条件を満たすオレフィン系重合体(A)を主成分として含有する表面層形成組成物からなる両表面層と、乳酸系重合体(B)を主成分として含有する中間層形成組成物からなる中間層とを備え、表面層と中間層の間に、下記(1)の条件を満たすオレフィン系重合体(A)及び乳酸系重合体(B)を主成分として含有する接着層形成組成物からなる接着層を備えた包装用フィルム。
(1)オレフィン系重合体(A)の結晶化熱量が5J/g〜80J/g。 - 全ヘーズ値が3%以下であることを特徴とする請求項1記載の包装用フィルム。
- 接着層形成組成物は、表面層形成組成物及び中間層形成組成物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装用フィルム。
- 中間層形成組成物は、分子量2000以下のグリセリン脂肪酸エステル(C)を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の包装用フィルム。
- 中間層形成組成物は、乳酸系重合体(B)100質量部に対してグリセリン脂肪酸エステル(C)を1〜20質量部含有することを特徴とする請求項4に記載の包装用フィルム。
- 乳酸系重合体(B)が、LD比率の異なる2種類以上の乳酸系重合体の混合樹脂であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の包装用フィルム。
- オレフィン系重合体(A)が、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体およびポリプロピレン系エラストマーの中から選ばれる1種のプロピレン系重合体、又は、これら2種以上の組み合わせからなる混合樹脂であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の包装用フィルム。
- 動的粘弾性測定により、周波数10Hz、温度20℃で測定した貯蔵弾性率(E’)が1〜4GPa、損失正接(tanδ)のピーク温度が20〜70℃であり、そのピーク値が0.1〜0.8の範囲にあることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の包装用フィルム。
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