JP2010121210A - 水素貯蔵容器用高純度鉄合金および水素貯蔵容器 - Google Patents

水素貯蔵容器用高純度鉄合金および水素貯蔵容器 Download PDF

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Abstract

【課題】耐水素脆化特性に優れ、しかも加工性や溶接性にも優れたフェライト系の水素貯蔵容器用高純度鉄合金とその鉄合金を水素接触部に用いた水素貯蔵容器を提供する。
【解決手段】C,N,SおよびOの合計量が100massppm以下、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成からなり、好ましくはさらに、Cr:15〜50mass%、Mo:10mass%以下およびW:10mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、あるいはさらに、Al:3mass%以下、Nb:1mass%以下、Ti:1mass%以下、V:1mass%以下、P:0.1mass%以下およびB:0.0050mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有し、10MPaの水素雰囲気下における室温での引張試験の全伸びが10%以上である高純度鉄合金。
【選択図】図1

Description

本発明は、高純度鉄合金に関し、特に耐水素脆化特性に優れるフェライト系の水素貯蔵容器用高純度鉄合金とその鉄合金を水素との接触部分に用いた水素貯蔵容器に関するものである。ここで、本発明の上記高純度鉄合金には、極微量のC,N,SおよびOを含有する高純度鉄(純Fe)も含むものとする。
近年、地球環境を保護する観点から、COやNOx,SOx等の温室効果ガスの排出を抑制するため、水素をエネルギー源として利用する技術の開発が進められている。しかし、水素をエネルギーとして利用するためには、水素を安全かつ大量に輸送したり、貯蔵したりすることができる水素貯蔵容器が必要である。
例えば、水素を燃料とする燃料電池自動車では、ボンベ等に水素を35〜40MPaの圧力で圧縮・充填して、このボンベから燃料電池に水素ガスを供給する形式のものが知られている。また、この車搭載用のボンベに水素を充填するための水素ステーションの蓄ガス器(高圧容器)には、水素を自動車搭載のボンベより高圧の状態で貯蔵する必要があるため、通常、40〜45MPaの高圧容器が用いられている。
上記ボンベのような水素貯蔵容器には、従来、クロムモリブデン鋼のような炭素鋼が使用されていた。しかし、水素は、前記のクロムモリブデン鋼を含めた炭素鋼の機械的特性、特に延性を低下させることが知られている。また、炭素鋼は、高圧水素の充填と放出の繰り返しによる内圧の変動と水素の侵入により疲労強度が低下するため、これを高圧容器に用いた場合には、ガス圧により破壊を起こすことが懸念される。そのため、炭素鋼を用いた水素ガスのボンベでは、斯かる破壊を防止するために、肉厚を30mm程度にする必要があり、装置の大型化や重量増加が深刻な問題となっている。
水素による鋼の脆化問題を解消するには、鋼に適量のニッケルを加えることが有効であることが知られており、例えば、SUS316等のオ−ステナイト系ステンレス鋼は、高圧水素ガス環境下での耐水素脆化感受性が、上記Cr−Mo鋼などの炭素鋼と比べて良好であることから、燃料電池自動車の高圧水素貯蔵容器用材料あるいは配管用材料として有望視されている(例えば、特許文献1,2参照)。しかし、この脆化現象を有効に抑制するには、ニッケルを多量に添加する必要があるため高価となり、容器や配管系統全体をこのような耐水素脆化合金で構成することは、コスト的にも問題がある。
そこで、このような問題点を解決する技術が幾つか提案されている。
例えば、特許文献3には、オーステナイト系ステンレス鋼あるいはNi基合金からなる耐水素脆化特性に優れる金属によって形成された内層と、これを補強する炭素鋼もしくは低合金鋼で形成された外層とを組み合わせた高圧容器が提案され、また、特許文献4には、高圧容器の内層にNi−Cr系の金属を肉盛溶接する技術が提案され、さらに、特許文献5〜7には、ステンレス鋼の表面を改質して水素脆化を防止する技術などが提案されている。
特開2007−126688号公報 WO2004−111285号公報 特開2004−176885号公報 特公平06−030831号公報 特開2007−009276号公報 特開2006−009882号公報 WO2004−111291号公報
高純度20Cr−3Mo−2W−Fe合金と市販の20Cr−3Mo−2W−Fe合金を高圧水素雰囲気下で引張試験したときの応力−ひずみ曲線を比較したグラフである。 高純度20Cr−3Mo−2W−Fe合金と市販のSUS430の薄板材を半球形状にへら絞り加工したときの外観写真である。 高純度20Cr−3Mo−2W−Fe合金製の球形容器(TIG溶接後)の外観写真である。 図3の球形容器を浸透探傷試験した結果を示す外観写真である。 高純度20Cr−3Mo−2W−Fe合金の溶接部断面の組織写真と、溶接部断面の溶接部中央から母材部にわたる硬さ分布を示すグラフである。 SUS430市販材の溶接部断面の組織写真と、溶接部断面の溶接部中央から母材部にわたる硬さ分布を示すグラフである。 高純度20Cr−3Mo−2W−Fe合金、市販純度の20Cr−3Mo−2W−Fe合金および市販のSUS304の平均線膨張係数を比較したグラフである。 高純度20Cr−3Mo−2W−Fe合金、市販純度の20Cr−3Mo−2W−Fe合金および市販のSUS304の熱伝導率を比較したグラフである。
しかしながら、上記技術は、強靱鋼で形成した外層の内側に、耐水素脆化金属で別途加工した内層を嵌め込む煩雑な加工や、上記外層の内面に耐水素脆化金属を肉盛溶射したりすることが必要となる。また、内層材を通過した水素が内層材と外層材との間に充満して内層材が外層材から剥離したり、水素と接触した外層材が水素脆化を引き起こしたりおそれもある。また、表面改質し、水素の透過を防止する技術では、特別な表面改質処理が必要となる他、その改質層が何らかの原因で損傷を受けた場合には、そこが起点となって破壊を起こすおそれがある。
また、オーステナイト系ステンレス鋼は、フェライト鋼に比べて高強度化が困難である。そのため、オーステナイト系ステンレス鋼で貯蔵容器を作る場合、容器厚さを低減することは困難である。また、オーステナイト系ステンレス鋼は、フェライト鋼に比べ、熱膨張係数が大きく、熱伝導度が小さいという特性を有する。そのため、水素貯蔵容器の水素と接する内層をオーステナイト系ステンレス鋼とし、外層の補強材をフェライト鋼とした場合や、水素貯蔵容器をオーステナイト系ステンレス鋼とし、配管部材や接合ボルト・ナット等にフェライト鋼を使用した場合には、熱膨張の違いや温度むらによって、水素リークを起こしやすい。したがって、水素貯蔵容器用の材料としては、フェライト鋼であることが好ましいと言える。
さらに、オーステナイト系ステンレス鋼は、フェライト鋼に比べて高強度化が困難である。そのため、オーステナイト系ステンレス鋼で貯蔵容器を作る場合、容器厚さを低減することは困難である。また、オーステナイト系ステンレス鋼は、フェライト鋼に比べ、熱膨張係数が大ききため、システム全体を考えると水素リークの危険性が高い。
したがって、水素貯蔵容器用の材料としては、フェライト鋼であることが好ましいと言える。
一方、最近では、燃料電池自動車の走行距離を伸ばすため、車搭載ボンベへの水素充填圧力を、40MPaをはるかに超える70MPa程度まで高圧化しようとする計画もある。さらに、水素貯蔵容器を製造するためには、加工性や溶接性に優れていることが望ましい。
そこで、本発明の目的は、耐水素脆化特性に優れ、しかも加工性や溶接性にも優れたフェライト系の水素貯蔵容器用高純度鉄合金とその鉄合金を用いた水素貯蔵容器を提供することにある。
発明者らは、かねてから、フェライト系の純FeおよびFe−Cr系合金を高純度化したときの各種特性の変化に着目し、研究を重ねてきた。その結果、純FeやFe−Cr系合金を、従来の不純物混入レベルを超えてさらに低減し、C,N,SおよびOの合計を100massppm以下に高純度化することにより、加工性や溶接性に優れるだけでなく、水素による延性低下の小さい耐水素脆化特性に優れる材料(鉄合金)を得ることができることを知見し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、C,N,SおよびOの合計量が100massppm以下、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成からなり、10MPaの水素雰囲気下における室温での引張試験の全伸びが10%以上である水素貯蔵容器用高純度鉄合金である。
本発明の高純度鉄合金は、上記成分組成に加えて、Cr:15〜50mass%、Mo:10mass%以下およびW:10mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
また、本発明の高純度鉄合金は、上記成分組成に加えてさらに、Al:3mass%以下、Nb:1mass%以下、Ti:1mass%以下、V:1mass%以下、P:0.1mass%以下およびB:0.0050mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
また、本発明は、上記鉄合金を水素接触部に用いたことを特徴とする水素貯蔵容器である。
本発明によれば、Niを含有しないフェライト系でありながら、水素による延性の低下や脆化のおそれのない耐水素脆化特性に優れる高純度鉄合金を得ることができる。さらに、本発明の上記高純度鉄合金は、耐水素脆化特性に優れるだけでなく、加工性や溶接性にも優れるので、水素自動車や水素ステーションなどの水素貯蔵容器の構成材料として好適であり、安全性の向上や重量の軽量化、ひいては地球環境の改善に大きく寄与することができる。
本発明に係る高純度鉄合金の成分組成について説明する。
(C+N+S+O):100massppm以下
C,N,SおよびOは、鋼中に不純物として不可避的に混入してくる元素である。これらの元素は、他の元素と炭窒化物や硫化物、酸化物等を形成し、粒界や粒内に析出して、耐水素脆化特性を劣化させるだけでなく、加工性、耐食性、溶接性の低下を引き起こす。特に、これらの元素の合計量が100massppmを超えると水素脆化が顕著となるため、C,N,SおよびOは、合計で100massppm以下に制限する。好ましくは、50massppm以下、より好ましくは、30massppm以下である。
なお、C,N,SおよびOは、合計で100massppm以下であることが必須であるが、個々の成分については、C:20massppm以下、N:20massppm以下、S:10massppm以下およびO:50massppm以下であることが好ましく、C:10massppm以下、N:10massppm以下、S:5massppm以下およびO:30massppm以下であることがより好ましい。
本発明の高純度鉄合金は、上記C,N,SおよびO以外の成分として、Cr,WおよびMoのうちから選ばれる1種または2種以上を下記範囲で含有することができる。
Cr:15〜50mass%
Crは、本発明の高純度鉄合金においては、強度と耐食性を確保するために添加することができる元素であり、斯かる効果を発現させるためには、15mass%以上添加することが好ましい。Cr含有量が15mass%未満では、強度や耐食性の向上効果が十分に得られない。一方、Crの含有量が50mass%を超えると、上記効果が飽和すると共に、靭性も低下するようになる。より好ましいCrの範囲は20〜40mass%である。
W:10mass%以下
Wは、強度を高めるのに有効な元素であり、必要に応じて添加することができる。しかし、10mass%を超えて添加した場合には、靭性の低下を招く。よって、Wは、10mass%以下添加するのが好ましい。より好ましいWの添加範囲は1〜6mass%である。
Mo:10mass%以下
Moは、強度を高めるのに有効な元素であり、必要に応じて添加することができる。しかし、10mass%を超えて添加した場合には、靭性の低下を招く。よって、Moは、10mass%以下添加するのが好ましい。より好ましいMoの添加範囲は2〜6mass%である。
本発明の高純度鉄合金は、上記成分以外に、Al,Nb,Ti,V,PおよびBのうちから選ばれる1種または2種以上を下記範囲で含有することができる。
Al:3mass%以下
Alは、脱酸剤として添加される元素である。また、鋼の表面に酸化皮膜を形成して耐酸化性を向上させると共に、固溶して高温強度を高める元素でもある。この効果を得るには、0.05mass%以上添加するのが好ましい。しかし、3mass%を超えて添加した場合には、溶接性や靭性の低下を招く。よって、Alは、3mass%以下の範囲で添加するのが好ましい。より好ましくは、0.5〜2mass%、さらに好ましくは0.5〜1mass%の範囲である。
Nb:1mass%以下、Ti:1mass%以下、V:1mass%以下
Nb,TiおよびVは、C,Nと炭窒化物を形成したり、Sと硫化物等を形成したりして析出し、高温強度を高める元素であり、Nb:1mass%以下、Ti:1mass%以下およびV:1mass%以下の範囲で添加することができる。なお、これらの元素を同時添加する場合には、合計で1.5mass%以下に制限するのが好ましい。
P:0.1mass%以下
Pは、Tiの存在下において、鋼中で(Fe,Ti)Pを形成して析出し、高温度域での強度を高める元素である。この効果を得るためには、0.02mass%以上を添加するのが好ましい。しかし、Pは0.1mass%を超えて添加すると、粒界の脆化を促進する。よって、Pは、P:0.1mass%以下の範囲で添加する。好ましくは、P:0.07mass%以下である。
B:0.0050mass%以下
Bは、粒界に偏析して粒界強度を高め、高温でのクリープ特性を改善する効果を有する元素であり、この効果を得るには、0.0005mass%以上添加するのが好ましい。しかし、0.0050mass%を超えて添加すると、その効果が飽和するとともに、却って、熱間加工性が悪くなる。よって、Bを添加する場合は、0.0050mass%以下とする。好ましくは0.0010〜0.0030mass%の範囲である。
本発明の高純度鉄合金は、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。しかし、上記以外の成分は、本発明の作用効果を害さない範囲であれば含有することができ、例えば、Si:0.015mass%以下、Mn:0.01mass%以下、Ni:0.60mass%以下の範囲で含有してもよい。
その他の不可避的不純物としては、Cu,Pb,As,Sn,Zn,Zr等があるが、これらの元素は合計で0.01mass%以下に制限することが好ましい。
上記成分組成を有する本発明の高純度鉄合金は、高圧の水素雰囲気下において、従来のクロムモリブデン鋼のように、延性の著しい低下や脆性を起こすことがない。その結果、JIS Z2201に規定された13B号試験片を用いて、10MPa以上の水素雰囲気下において2.6×10−5/secの低速引張試験を行った場合の破断までの伸び(全伸び)が10%以上という優れた延性を示す。なお、本発明の合金は、大気中での引張強さと比較して、水素雰囲気下の引張強さが低下する傾向があるが、その低下分は、W,Mo等の合金成分の添加によって補償すれことができる。なお、上記伸びは、好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上である。
次に、本発明に係る水素貯蔵容器について説明する。
本発明の水素貯蔵容器は、上記優れた耐水素脆化特性を有する高純度鉄合金を水素と接触部位に用いたところに特徴がある。本発明の高純度鉄合金は、水素雰囲気中でも延性に優れ、脆性を起こさないので、従来の水素貯蔵容器のように炭素鋼もしくは低合金鋼で形成された強靭な外層は必要がなく、本発明の高純度鉄合金のみで水素貯蔵容器を製造することも可能である。勿論、より安全を望む場合には外層を設けてもよく、また、軽量化のためにグラスファイバーやカーボン繊維で強化したプラスチック容器に内蔵してもよい。
なお、本発明の高純度鉄合金は、高純度であること、即ち、C,N,SおよびOの含有量が極めて低いことに起因して、従来の高強度Cr−Mo鋼やステンレス鋼と比較して延性に優れており、加工性(成形性)が良好である。さらに、本発明の高純度鉄合金は、高純度であることに起因して、溶接性に優れ、しかも、溶接部の組織変化、強度や靭性の劣化もほとんどないので、水素貯蔵容器本体や水素ガス配管等を溶接によって組み立てることもできる。したがって、本発明の高純度鉄合金を水素貯蔵容器に適用することにより、その製造方法の選択の自由度を大きく拡げることが可能となる。
表1に示した高純度の20Cr−3Mo−2W−Fe合金(No.A)と、市販の20Cr−3Mo−2W−Fe合金(No.B)の熱延材に、大気雰囲気中で950℃×30minの溶体化処理を施した後、これらの熱延材から圧延方向を引張方向とする引張試験片(JIS Z2201に規定された13B号試験片)を採取し、この試験片を約12MPaの高圧水素雰囲気中および大気中で、歪み速度2.6×10−5/secの低速で引張試験を行い、応力−ひずみ曲線を測定し、降伏応力、引張強さおよび破断までの全伸びを測定した。
Figure 2010121210
上記測定の結果を表2に、また、応力−ひずみ曲線を図1に示した。この結果から、市販純度の20Cr−3Mo−2W−Fe合金は、僅か数%の伸びで破断しているのに対し、本発明の高純度20Cr−3Mo−2W−Fe合金は、12MPaの高圧水素雰囲気中においても15%を超える全伸びを示している。また、本発明の高純度合金は、大気中よりも水素雰囲気中の方が、引張強さが低下し、軟化している傾向も認められる。したがって、本発明の高純度20Cr−3Mo−2W−Fe合金は、耐水素脆性に優れており、水素貯蔵容器用材料として優れていることがわかる。
Figure 2010121210
表1に併記した高純度の15Cr−3Mo−2W−1Al−(V,Nb,B)−Fe合金(No.D)の熱延材(15mmφ)に大気雰囲気中で950℃×30minの溶体化処理を施した後、これらの熱延材から圧延方向を引張方向とする引張試験片(平行部径2.5mmφ、平行部長さ16mm)を採取し、この試験片を10MPaの高圧水素雰囲気中および大気中で、引張速度0.1mm/minの低速で引張試験(SSRT:Slow Strain Rate Technique)を行い、降伏応力、引張強さおよび破断までの全伸びを測定した。
上記測定の結果を表2に併記して示した。この結果から、本発明の高純度15Cr−3Mo−2W−1Al−(V,Nb,B)−Fe合金は、引張強さTSが750MPaを超える高強度であるにも拘わらず、10MPaの高圧水素雰囲気中においても15%を超える全伸びを示している。したがって、本発明の高純度鉄合金は、耐水素脆性に優れており、水素貯蔵容器用材料として優れていることがわかる。
表1に示した高純度の20Cr−3Mo−2W−Fe合金(No.A)と、市販のSUS430(No.C)の熱延材(板厚5mm)を冷間圧延して板厚0.5mmとし、その後、大気雰囲気中で950℃×1minの溶体化処理を施した薄板材を用いて、加工性および溶接性を評価した。
(1)へら絞り加工による加工性の評価
上記2種類の板厚0.5mmの薄板材から130mmφの円盤試験片を採取し、これをへら絞り加工により直径90mmφの半球状に加工し、目標とする形状に加工できるか否かで加工性を評価した。ここで、「へら絞り加工(スピニング加工)」とは、回転する金属材料に、へらあるいはローラーを押し付けて、回転する成形型に金属材料が密着するよう塑性変形させる方法である。なお、本実施例では、へら絞り加工を、へら押し付け圧力および成形速度を変えた3条件で実施し、両材料の加工性を評価した。
(2)溶接性の評価
上記2種類の薄板材のそれぞれから2つの半球をへら絞り加工し、機械加工により端面を処理してから、2つの半球の端面を突き合わせてTIG溶接し、球形の容器を製作した。この溶接後の球形容器は、目視による浸透探傷検査を行い、その後、溶接部を切断し、TIG溶接部断面のマクロおよびミクロ組織観察ならびに硬さ測定を行い、溶接性を評価した。
上記へら絞り加工性の結果として、へら絞り後の試験片の外観写真を図2に示した。図2から、加工条件による違いをまとめると以下のようになる。
・加工条件1(押付け圧力小、加工速度大):高純度20Cr−3Mo−2W−Fe合金および市販SUS430の薄板材のいずれも、外周に多くのしわが発生し、目的とする半球形状には加工することができなかった。
・加工条件2(押付け圧力中、加工速度中):高純度合金の薄板材は、目標とする半球形状にほぼ成形することができたが、金型に密着するまでには至らず、形状不良となった。一方、市販のSUS430の薄板材は、依然として外周にしわが発生し、目的とする半球形状には加工することができなかった。
・加工条件3(押付け圧力大、加工速度小):本発明の高純度合金の薄板材は、目標形状に成形できた。一方、市販のSUS430の薄板材は、半球形状には加工できたものの、頂部で金型との密着不良が発生し形状不良となった。
以上の結果から、本発明の高純度20Cr−3Mo−2W−Fe合金は、市販のSUS430より加工性に優れていることがわかった。
次に、図3にTIG溶接後の高純度20Cr−3Mo−2W−Fe合金製球形水素貯蔵容器の外観写真を、また、図4にその浸透探傷試験後の外観写真を示したが、いずれにおいても、溶接欠陥は認められなかった。なお、市販のSUS430を上記加工条件3で製作した半球についても、同様の溶接を行ったが、溶接欠陥の発生は認められなかった。
次に、図5および図6に、高純度20Cr−3Mo−2W−Fe合金と市販のSUS430の溶接部断面を光学顕微鏡で観察した写真と、その溶接部断面の溶接部中央から母材部にわたる硬さ分布を示した。
この結果から、市販のSUS430の場合(図6)には、溶接金属及びHAZの結晶粒の粗大化が著しく、これらの部位の硬さは母材に比べてビッカース硬さHvで約90程度上昇しているのに対して、高純度20Cr−3Mo−2W−Fe合金の場合(図5)には、溶接金属およびHAZで結晶粒の若干の粗大化が認められるものの、ビッカース硬さの上昇はHVで約40程度であり、溶接部と母材部との差が小さく、溶接性が優れていることが確認された。
フェライト鋼である表1に示した高純度20Cr−3Mo−2W−Fe合金(No.A)と市販純度の20Cr−3Mo−2W−Fe合金(No.B)と、市販のオーステナイト鋼であるSUS304の3材料について、平均線膨張係数および熱伝導率の温度依存性について関係を測定した結果を図7および図8に示した。これらの図から、本発明のフェライト系高純度鉄合金の平均線膨張係数は、市販のオーステナイト系ステンレス鋼SUS304の約1/2であること、また、市販純度の20Cr−3Mo−2W−Fe合金の熱伝導率は、市販のオーステナイト系ステンレス鋼SUS304より大きいが、高純度化することによりさらに大きくなり、オーステナイト鋼との差が拡大していることがわかる。したがって、本発明のフェライト系の高純度鉄合金は、熱膨張や温度むらに起因して起こる水素漏れを抑制する観点からは好ましい特性を有するものである。
本発明の高純度鉄合金は、耐水素脆化特性に優れているだけでなく、加工性や溶接性にも優れているため、発電プラントの薄肉耐熱部品や海水中で使用される部品にも好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. C,N,SおよびOの合計量が100massppm以下、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成からなり、10MPaの水素雰囲気下における室温での引張試験の全伸びが10%以上である水素貯蔵容器用高純度鉄合金。
  2. 上記成分組成に加えて、Cr:15〜50mass%、Mo:10mass%以下およびW:10mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵容器用高純度鉄合金。
  3. 上記成分組成に加えてさらに、Al:3mass%以下、Nb:1mass%以下、Ti:1mass%以下、V:1mass%以下、P:0.1mass%以下およびB:0.0050mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の水素貯蔵容器用高純度鉄合金。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉄合金を水素接触部に用いたことを特徴とする水素貯蔵容器。
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