JP2010117269A - スケール防止剤濃度の測定方法及び測定装置 - Google Patents

スケール防止剤濃度の測定方法及び測定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】試料溶液中の有効なスケール防止剤濃度を簡便かつ正確に測定でき、自動化が容易なスケール防止剤濃度の測定方法及び測定装置。
【解決手段】液膜型のイオン選択性電極11と参照電極12とからなるイオン電極10を用いて、酸化剤を含む試料溶液に含まれるスケール防止剤の濃度を測定する。前記スケール防止剤を含む試料溶液に液膜型のイオン選択性電極11及び参照電極12を浸漬して応答電位を測定し、前記応答電位と予め作成した検量線とから前記スケール防止剤の濃度を換算することが好ましく、前記試料溶液のpHと前記応答電位と前記検量線とから前記スケール防止剤濃度を換算してもよく、前記液膜型のイオン選択性電極11は、Cu、Zn、Mo、Cd、Tl、Pb、Sm及びYbのいずれかの金属イオンに選択的に応答する液膜型のイオン選択性電極11であることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、スケール防止剤濃度の測定方法及び測定装置に関するものである。
スケールとは、水中に溶解又は懸濁しているいわゆる硬度成分(Ca2+、Mg2+等)等の物質が装置内に析出する現象である。冷却水、ボイラー水、汚泥処理水、し尿処理水、膜分離処理水、製造プロセス水等の工業用水系において、熱交換面、配管、壁面等にスケールが生じると、熱交換効率の低下、装置の破損、ポンプ差圧上昇等の障害を引き起こす。このため、工業用水系では、スケール発生による障害を未然に防止することが重要であり、その手段として使用する工業用水にポリアクリル酸(PAA)等のスケール防止剤を添加することが行われている。しかし、添加したスケール防止剤の濃度は、蒸発、飛散、排出、希釈等により増減する。スケール防止剤濃度が不足すると工業用水系の各機器にスケールが生じやすくなる。一方、スケール防止剤の過剰な注入は、工業用水のゲル化に加え、スケール防止剤コストが嵩むという問題もある。従って、工業用水系では、工業用水中のスケール防止剤の濃度を適切な範囲に維持制御する必要がある。
工業用水中のスケール防止剤濃度を制御するためには、正確なスケール防止剤濃度を随時確認することが必要である。従来のスケール防止剤濃度の測定方法として、例えば、スケール防止剤を含む薬剤にトレーサー物質としてリチウムの水溶性塩を一定量添加し、そのリチウム濃度を測定することでスケール防止剤濃度を算出する方法がある(例えば、特許文献1)。また、例えば、蛍光物質等を結合して標識化したスケール防止剤を用い、このスケール防止剤をモニターする方法がある(例えば、特許文献2)。また、あるいは、鉄−チオシアネート比色法により、スケール防止剤の一種であるカルボン酸基含有水溶性ポリマーを測定する方法がある(例えば、特許文献3)。
特許文献1に記載の方法はスケール防止剤濃度とトレーサー物質のリチウム濃度の濃度比が変化しないことが前提であり、スケール防止剤を使用する工業用水系においてリチウム濃度とスケール防止剤濃度が一致することを別途検証しなければならないという問題があった。加えて、薬剤にトレーサー物質を添加するためコストが嵩むという問題もあった。
特許文献2に記載の方法では、標識化したスケール防止剤を合成する必要があり、コストが嵩むという問題があった。
特許文献3に記載の方法では、吸着剤ゲルを用いた吸着−脱離操作により、試料溶液中に含まれるカルボン酸基含有水溶性ポリマーを試料溶液から分離する必要があり、操作が煩雑で自動化が困難であるという問題があった。
そして、特許文献1〜3のいずれの方法においても、スケール防止剤濃度はスケール防止機能を失ったスケール防止剤を含む総濃度として算出される。このため、スケール防止機能が有効なスケール防止剤の濃度を適切に把握することができないという問題があった。
このような問題に対し、イオン選択性電極と参照電極からなるイオン電極を用いて試料溶液中のスケール防止剤濃度を測定する方法が提案されている(特許文献4)。特許文献4に記載のスケール防止剤濃度の測定方法によれば、硫化物系難溶性塩固体膜型のイオン選択性電極を用いることで、金属プローブイオンを添加することなく、水中の有効なスケール防止剤濃度を良好に測定することができる。一般的に、硫化物系難溶解性固体膜型等の固体膜型のイオン選択性電極は、液膜型等のイオン選択性電極に比べて、特定のイオンに対する応答性が高い。このため、イオン電極には、固体膜型のイオン選択性電極が用いられる場合が多い。
特開昭51−111388号公報 特開平7−109587号公報 特開平11−337491号公報 特開2006−215014号公報
しかしながら、スケール防止剤濃度の測定対象となる工業用水等には、殺菌剤として次亜塩素酸等が添加されている場合が多い。このような試料溶液について、固体膜型のイオン選択性電極を有するイオン電極を用いてスケール防止剤濃度を測定すると、応答電位が不安定となり正確な濃度が測定できないという問題があった。試料溶液から殺菌剤等の薬剤を除去する方法も考えられるが、測定操作が煩雑になり簡便性に欠ける。加えて、スケール防止剤濃度の測定の自動化が困難となる。
そこで、本願発明は、試料溶液中の有効なスケール防止剤濃度を簡便かつ正確に測定でき、自動化が容易なスケール防止剤濃度の測定方法及び測定装置を目的とする。
本発明者達は、鋭意検討を行った結果、試料溶液中に次亜塩素酸等の酸化剤が存在すると、固体膜型のイオン選択性電極を用いたスケール防止剤濃度の測定において、測定精度が保てないとの見解に至った。そして、イオン選択性電極に液膜型のイオン選択性電極を用いることで、酸化剤の影響を受けずに、スケール防止剤濃度を正確に測定できることを見出し、以下の発明に至った。
即ち本発明のスケール防止剤濃度の測定方法は、酸化剤を含む試料溶液に含まれるスケール防止剤の濃度をイオン電極を用いて測定する方法であって、前記イオン電極は液膜型のイオン選択性電極と参照電極とからなることを特徴とする。スケール防止剤を濃度既知として検量線を作成し、前記スケール防止剤を含む試料溶液に液膜型のイオン選択性電極及び参照電極を浸漬して応答電位を測定し、前記応答電位と前記検量線とから前記スケール防止剤の濃度を換算することが好ましく、前記試料溶液のpHを測定し、測定したpHと前記応答電位と前記検量線とから前記スケール防止剤濃度を換算してもよく、前記液膜型のイオン選択性電極は、Cu、Zn、Mo、Cd、Tl、Pb、Sm及びYbのいずれかの金属イオンに選択的に応答する液膜型のイオン選択性電極であることが好ましい。
本発明のスケール防止剤濃度の測定装置は、酸化剤を含む試料溶液に含まれるスケール防止剤の濃度を測定するスケール防止剤濃度の測定装置であって、液膜型のイオン選択性電極及び参照電極からなるイオン電極と、前記イオン電極が生じる応答電位を測定する電位計測部と、スケール防止剤を濃度既知として予め作成した検量線と前記応答電位とからスケール防止剤濃度を換算する演算部とを有することを特徴とする。pHセンサ及びpH計測部を有してもよく、前記液膜型のイオン選択性電極は、Cu、Zn、Mo、Cd、Tl、Pb、Sm及びYbのいずれかの金属イオンに選択的に応答する電極であることが好ましい。
本発明のスケール防止剤濃度の測定方法及び測定装置によれば、試料溶液中の有効なスケール防止剤濃度を簡便かつ正確に測定でき、容易に自動化が図れる。
本発明について、実施形態を挙げて説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
[第1の実施形態]
(スケール防止剤濃度の測定装置)
本発明のスケール防止剤濃度の測定装置(以下、濃度測定装置ということがある)の第一の実施形態について、図1を用いて説明する。図1は、第一の実施形態にかかる濃度測定装置8の模式図である。図1に示すように、本実施形態の濃度測定装置8は、イオン電極10と電位計測部20と演算部30とを有している。
イオン電極10は、イオン選択性電極11と参照電極12とで構成されている。測定セル14には、イオン電極10と攪拌部16が設けられている。イオン選択性電極11は配線111により電位計測部20と接続され、参照電極12は配線121により電位計測部20と接続されている。電位計測部20は演算部30と接続されている。
イオン選択性電極11は、液膜型のイオン選択性電極である。液膜型のイオン選択性電極を用いることで、酸化剤を含む試料溶液においても、スケール防止剤濃度を正確に測定することができる。「イオン選択性電極」とは、特定のイオンに対し選択的に応答する感応部を有し、該感応部が試料溶液中の特定のイオンと接すると、そのイオン濃度に応じた膜電位を生じるものである。「液膜型のイオン選択性電極」とは、前記感応部が、高分子材料に可塑剤及びイオン選択性分子、さらには有機イオン分子を添加し膜状とした感応膜で構成されているイオン選択性電極である。
イオン選択性電極11について図2を用いて説明する。図2は、イオン選択性電極11の一例を示す模式図である。イオン選択性電極11は、略円筒形の筐体110の一方の開口部に感応膜である液膜114が設けられ、他方の開口部に蓋体118が設けられている。筐体110の内部には、内部液116が充填されている。内部電極112は、内部液116に浸漬し、かつ、液膜114と離間するように筐体110の内部に設けられている。内部電極112は、配線111と接続されている。
イオン選択性電極11は特定の金属イオンに対し選択的に応答するものであればよく、試料溶液中のスケール防止剤の種類等を勘案して決定することが好ましい。中でも、Cu、Zn、Mo、Cd、Tl、Pb、Sm及びYbのいずれかの金属イオンに対し選択的に応答するものが好ましい。このようなイオン選択性電極を用いることで、試料溶液中のスケール防止剤濃度をより正確に測定できるためである。
液膜114を構成する高分子材料は、可塑剤、イオン選択性分子、有機イオン分子を膜状に保持できる物質であり、試料溶液の水質等を勘案して決定することができる。例えば、入手のし易さからポリ塩化ビニル、ポリアニリン、ポリウレタン、セルローストリアセテート、ポリアクリル酸エステル等が挙げられる。中でも、耐久性の観点から、ポリ塩化ビニルが好ましい。
液膜114における高分子材料の含有割合は、イオン選択性分子の種類や液膜114の膜厚や強度等を勘案して決定することができ、例えば、5〜80質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましい。上記範囲であれば、適切な強度の液膜114が得られるためである。液膜114における高分子材料の含有割合が5質量%未満であると、液膜114が軟らかくなりすぎ、膜として保持することが困難となり、80質量%を超えると、液膜114中におけるイオン選択性分子の流動が阻害され、金属イオンとの応答が得られ難くなる。
イオン選択性分子とは、特定のイオンに選択的に配位可能な分子である。液膜114に用いられるイオン選択性分子は、金属イオンに特異的に配位する分子が用いられる。イオン選択性分子は、試料溶液中のスケール防止剤の種類等を勘案して決定することができ、例えば、Cuイオンに対するイオン選択性分子としては、例えば、o−キシレンビス(N,N−ジイソブチルジチオカルバメート)、N,N,N’,N’−テトラシクロヘキシル−2,2’−チオジアセトアミド等、Znイオンに対するイオン選択性分子としては、例えば、テトラブチルチウラムジスルフィド、3,7,12,17−テトラメチル−8,13−ジビニル−2,18−ポルフィンジプロピオン酸等、Moイオンに対するイオン選択性分子としては、例えば、5,10,15,20−テトラキス(4−メトキシフェニル)ポルフィリン コバルト(II)等、Cdイオンに対するイオン選択性分子としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラブチル−3,6−ジオキサオクタンジ(チオアミド)、N,N,N’,N’−テトラドデシル−3,6−ジオキサオクタンジチオアミド等、Tlイオンに対するイオン選択性分子としては、1,10−ジベンジル−1,10−ジアザ−18−クラウン−6等、Pbイオンに対するイオン選択性分子としては、N,N−ジオクタデシル−N’,N’−ジプロピル−3,6−ジオキサオクタンジアミド、S,S’−メチレンビス(N,N−ジイソブチルジチオカルバメート、N,N,N’,N’−テトラドデシル−3,6−ジオキサオクタンジチオアミド、tert−ブチルカリックス[4]アレン−テトラキス(N,N−ジメチルチオアセトアミド)、N,N’−ジヘプチル−N,N’,6,6−テトラメチル−4,8−ジオキサウンデカンジアミド等、Smイオンに対するイオン選択性分子としては1,10−ジベンジル−1,10−ジアザ−18−クラウン−6等、Ybイオンに対するイオン選択性分子としてはセフィキシム三水和物等が好適に用いられる。
液膜114におけるイオン選択性分子の含有割合は、イオン選択性電極11に求める感度に応じて決定することができ、例えば、0.1〜30質量%の範囲で決定することが好ましく、1〜15質量%の範囲で決定することがより好ましい。上記範囲であれば、スケール防止剤濃度を正確に測定できるイオン選択性電極11が得られるためである。液膜114におけるイオン選択性分子の含有割合が0.1質量%未満であると、金属イオンとの応答が得られ難く、30質量%を超えると応答性の向上が飽和し、イオン選択性分子の含有量が過剰となり不経済である。
液膜114に用いられる可塑剤は、高分子材料を可塑化するものであればよく、高分子材料の種類に応じて決定することができる。可塑剤としては、入手のし易さの観点から2−ニトロフェニルフェニルエーテル、2−ニトロフェニルオクチルエーテル、ビス(1−ブチルペンチル)アジペート、ビス(1−ブチルペンチル)デカン−1,10−ジイル−ジグルタレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ジブチルフタレート、ジブチルセバケート、ジオクチルフェニルホスホネート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェイト等を好適に用いることができる。
液膜114における可塑剤の含有割合は、高分子材料の種類や含有割合、液膜114に求める物性等を勘案して決定することができ、例えば、20〜85質量%の範囲で決定することが好ましく、30〜80質量%の範囲で決定することがより好ましい。上記範囲であれば、適切な強度の液膜114を得られるためである。液膜114における可塑剤の含有割合が20質量%未満であると、液膜が硬くなりすぎ液膜114におけるイオン選択性分子の流動が阻害され、金属イオンとの応答が得られ難くなる。液膜114における可塑剤の含有割合が85質量%を超えると、液膜114が軟らかくなりすぎ、膜として保持することが困難となる。
さらに、必要に応じて液膜114には有機イオン分子を配合することができる。液膜114に用いられる有機イオン分子は、液膜114中に保持される有機性の陰イオン分子であれば特に限定されないが、保持性能や入手のし易さの観点から、例えば、テトラキス(4−クロロフェニル)ホウ酸カリウム、テトラキス(4−ビフェニリル)ホウ酸カリウム、テトラキス(4−tert−ブチルフェニル)ホウ酸カリウム、テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸カリウム、テトラ(p−トリル)ホウ酸ナトリウム、テトラキス(4−フルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム二水和物、テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸ナトリウム、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ酸ナトリウム三水和物、テトラフェニルホウ酸ナトリウム等が好適に用いられる。このような有機イオン成分を配合することで、試料溶液中に含まれる共存イオンの影響を排除できるためである。
液膜114における有機イオン分子の含有割合は、液膜114に求める物性や測定対象等を勘案して決定することができる。有機イオン分子を配合する場合には、例えば、イオン選択性分子の含有量に対し、0〜100モル%の範囲で決定することが好ましい。なお、イオン選択性分子の含有量を超えて配合すると、金属イオンとの応答が阻害される傾向にある。加えて、測定対象によっては、有機イオン分子を配合しなくてもよい。
液膜114は、例えば次の方法により製造することができる。まず、溶媒にイオン選択性分子を溶解する。この際、必要に応じて有機イオン分子を溶解する。さらに、高分子材料と可塑剤とを添加して混合し、感応膜液とする。該感応膜液を任意の厚さに広げて室温で乾燥してゲル状の膜とした後、任意の寸法に切り取ることで液膜114を製造できる。あるいは、液膜114は、感応膜液をスピンコータにより薄膜として得ることもできる。
前記感応膜液に用いる溶媒は、イオン選択性分子、有機イオン分子、高分子材料、可塑剤の種類に応じて決定することができ、例えば、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム等が挙げられる。
内部液116は、金属塩の水溶液である。内部液116に用いる金属塩は、イオン選択性分子の種類に応じて決定することができ、イオン選択性分子が対象とする金属イオンを含む金属塩を選択する。例えば、Cuイオンに対し選択的に配位可能なイオン選択性分子を用いる場合には、CuCl、Cu(NO等が挙げられ、Pbイオンに対して選択的に配位可能なイオン選択性分子を用いる場合には、PbCl、Pb(NO等が挙げられる。
内部液116の金属イオン濃度は特に限定されないが、例えば、0.1mmol/L〜1mol/Lの範囲で決定することが好ましい。金属イオン濃度が0.1mmol/L未満であるとイオン選択性電極11の応答が不安定となり、金属イオン濃度が1mol/Lを超えると、金属がイオン選択性電極11内で析出するおそれがあるためである。
筐体110は、試料溶液や内部溶液116に対して安定なものを選択でき、例えば、ガラス管やエポキシ樹脂等の樹脂管等が挙げられる。
蓋体118は、内部液116の漏洩を防ぐ機能を有するものであれば特に限定されず、例えば、樹脂製のキャップが挙げられる。
内部電極112は、例えば、銀/塩化銀電極等が挙げられる。
参照電極12は、基準電位を発生するものである。参照電極12は、標準水素電極に対して電位が既知であって、電位が安定しているものであればよく、単一液絡形、二重液絡形のいずれであってもよい。参照電極12の内部電極としては、例えば、銀/塩化銀電極等が挙げられる。このような参照電極としては、東亜ディーケーケー株式会社製のHS−205C等が挙げられる。
電位計測部20は、イオン選択性電極11が出力する膜電位と、参照電極12が出力する基準電位との差である電位差(応答電位)を測定する装置であり、例えば直流電位差計を挙げることができる。直流電位差計としては、高入力のインピーダンスの回路であればよく、特に低ノイズの回路が好ましい。このような直流電位差計としては、東亜ディーケーケー株式会社製のIM−55G等が挙げられる。
演算部30は、既知のスケール防止剤を濃度既知として予め作成した検量線に基づいて、電位計測部20で測定した応答電位からスケール防止剤濃度に換算する機能を有するものである。例えば、演算部30としては、マイクロコンピュータ等を挙げることができる。
電位計測部20と演算部30との接続は、電気的に接続されていることの他、電位計測部20での応答電位を人手で演算部30に入力することをも含む概念である。
測定セル14は、試料溶液に対する安定性を有するものであれば特に限定されず、例えば、ガラスや樹脂製等の容器が挙げられる。
攪拌部16は、測定セル14内の試料溶液を攪拌するものであれば特に限定されず、攪拌羽根やスターラー等の公知の攪拌機を用いることができる。
(スケール防止剤濃度の測定方法)
濃度測定装置8を用いたスケール防止剤濃度の測定方法について、図1を用いて説明する。スケール防止剤を含む試料溶液Aを測定セル14に入れる。攪拌部16で試料溶液Aを攪拌しながら、イオン選択性電極11の液膜114及び参照電極12の感応部が試料溶液Aに接触するように、イオン電極10を試料溶液Aに浸漬する。イオン電極10を試料溶液Aに浸漬し、特定のイオンが接触すると、イオン選択性電極11では試料溶液A中のスケール防止剤濃度に応じた膜電位を生じる。イオン選択性電極11は、配線111を通じて膜電位を電位計測部20に出力する。一方、参照電極12は、基準電位を電位計測部20に出力する。電位計測部20は、イオン選択性電極11から出力された膜電位と、参照電極12から出力された基準電位との電位差である応答電位を測定する(電位測定操作)。電位計測部20は、応答電位を演算部30に出力する。演算部30は、予め作成された検量線と応答電位とから試料溶液A中のスケール防止剤濃度を換算する(濃度換算操作)。
検量線は、濃度既知のスケール防止剤水溶液について、上述の電位測定操作と同様にして応答電位を測定し、測定した応答電位とスケール防止剤濃度との間の関係に基づいて作成する(検量線作成操作)。
試料溶液Aは、スケール防止剤と酸化剤とを含む溶液であり、例えば、冷却水、ボイラー水、汚泥処理水、し尿処理水、膜分離処理水、製造プロセス水等の工業用水等が挙げられる。
スケール防止剤は、硬度成分(Ca2+、Mg2+等)とキレート錯体を形成し、遊離の硬度成分濃度の低減、あるいは、水中への分散等により、スケール発生を防止する物質である。スケール防止剤は、EDTA、有機カルボン酸(例えばコハク酸やアミノカルボン酸等)等のキレート剤、及び、スレスホールド処理で用いるポリリン酸、ホスホン酸、カルボン酸系高分子電解質(以下、低分子量ポリマーという)等が挙げられる。低分子量ポリマーを構成するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボン酸、及び、これらと共重合可能なビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルアルコール等が挙げられる。低分子量ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸等が挙げられる。
試料溶液A中のスケール防止剤濃度は、イオン電極10の感度を勘案して決定することができ、例えば、1.0×10−6〜1.0×10−3mol/Lの範囲となるように、適宜、希釈又は濃縮をすることが好ましい。上記範囲内であれば、試料溶液A中のスケール防止剤濃度を正確に測定することができるためである。
試料溶液Aは、スケール防止剤の他、酸化剤を含むものである。酸化剤としては、次亜塩素酸、過酸化水素、過硫酸等が挙げられる。
試料溶液A中の酸化剤濃度は特に限定されることはない。例えば、酸化剤として次亜塩素酸が用いられている場合、本発明は、遊離塩素濃度が0.01mg/L以上である試料溶液に適用されることが好ましく、遊離塩素濃度が0.05mg/L以上である試料溶液に適用されることがより好ましい。上記範囲において、本発明の効果が顕著に表れるためである。
試料溶液AのpHは、スケール防止剤の種類、液膜114に配合するイオン選択性分子の種類等に応じて決定することができ、例えば、pH3.0〜pH12.0の範囲で決定することが好ましく、pH7.0〜pH10.0の範囲で決定することがより好ましい。ここで、スケール防止剤の種類によっては、応答電位が試料溶液のpHに大きく影響される場合がある。このため、試料溶液A中のスケール防止剤濃度の測定においては、検量線作成操作で用いたスケール防止剤水溶液のpHの近傍に調整することが好ましい。例えば、検量線作成操作においてスケール防止剤水溶液をpH7.0とした場合には、スケール防止剤濃度の測定時においては、試料溶液AをpH7.0±0.1に調整することが好ましく、pH7.0±0.05に調整することがより好ましい。上記範囲に調整することで、スケール防止剤濃度の測定精度が向上するためである。なお、スケール防止剤濃度が試料溶液AのpHに依存しないことが既知の場合には、pH調整を行わなくてもよい。
試料溶液AのpHの調整方法は特に限定されず、例えば、塩酸水溶液等の酸性水溶液や水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液の添加、緩衝剤の添加等、公知の手法を用いることができる。
試料溶液Aの温度は特に限定されず、例えば5〜45℃の範囲とすることが好ましい。
上述のとおり、液膜型のイオン選択性電極と参照電極からなるイオン電極を用いて応答電位を測定し、該応答電位と検量線とからスケール防止剤濃度に換算することで、酸化剤を含む試料溶液であっても、試料溶液中のスケール防止剤濃度を正確に測定することができる。加えて、試料溶液に金属プローブイオンを添加したり、試料溶液中の酸化剤を除去する等、煩雑な作業を伴うことがないため、簡便にスケール防止剤濃度を測定でき、スケール防止剤濃度の測定の自動化が容易となる。さらに、イオン選択性電極に、Cu、Zn、Mo、Cd、Tl、Pb、Sm及びYbのいずれかの金属イオンに選択的に応答するものを用いることで、より正確にスケール防止剤濃度を測定することができる。
液膜型のイオン選択性電極と参照電極からなるイオン電極を用いることで、酸化剤を含む水溶液のスケール防止剤濃度を測定できる理由について検討する。
固体膜型のイオン選択性電極では、感応膜表面において、下記(1)式で表される平衡関係が成立しており、試料溶液中に金属イオンが感応膜からわずかながら溶出する。
AgS(固体)+M2+⇔2Ag+MS(固体) ・・・(1)
[上記(1)式中、Mは金属イオンを表す。]
固体膜型のイオン選択性電極は、この溶出した金属イオンとスケール防止剤との相互作用の結果を応答電位として検出していると推測される。しかしながら、硫化物は、酸化剤の影響を受けやすいため、酸化剤を含む試料溶液では、スケール防止剤濃度を正確に測定できないと考えられる。
一方、液膜型のイオン選択性電極では、感応膜表面において、下記(2)式で表される平衡関係が成立しており、固体膜型のイオン選択性電極と同様に、試料溶液中に金属イオンが感応膜からわずかながら溶出する。
LMn+(感応膜中)⇔L(感応膜中)+Mn+ ・・・(2)
[上記(2)式中、Mn+はn価の金属イオンを表し、Lはイオン選択性分子を表す。]
液膜型のイオン選択性電極は、この溶出した金属イオンとスケール防止剤との相互作用の結果を応答電位として検出していると推測される。液膜型のイオン選択性電極では、酸化剤の影響を受けやすい物質が応答に関与していないため、酸化剤を含む試料溶液でも、スケール防止剤濃度を正確に測定できると考えられる。
[第二の実施形態]
(スケール防止剤濃度の測定装置)
本発明の濃度測定装置の第二の実施形態について、図2、3を用いて説明する。図3は、第二の実施形態にかかる濃度測定装置101を示す模式図である。なお、第一の実施形態の濃度測定装置8と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について主に説明する。図3に示すように、濃度測定装置101は、イオン電極10と電位計測部20と演算部31とpHセンサ40とpH計測部42とを有している。
測定セル50は、試料溶液が流通する試料流路51が設けられている。イオン電極10は、イオン選択性電極11の液膜114及び参照電極12の感応部が、測定セル50の試料流路51内に位置するように、測定セル50に設けられている。pHセンサ40は、その感応部が試料流路51内に位置するように、測定セル50に設けられている。試料流路51は、配管により試料用ポンプ52と接続されている。
pHセンサ40は、配線41によりpH計測部42と接続され、pH計測部42は演算部31と接続されている。演算部31は、電位計測部20と制御部34と記録部36と表示部38とに接続されている。制御部34は、スケール防止剤を工業用水に添加する薬剤注入ポンプ54と接続されている。
演算部31は、予め作成した検量線と、電位計測部20で測定した応答電位と、pH計測部42で測定したpHとからスケール防止剤濃度を換算する機能を有するものである。演算部31としては、マイクロコンピュータ等を挙げることができる。
電位計測部20と演算部31との接続は、電気的に接続されていることの他、電位計測部20での応答電位を人手で演算部31に入力することをも含む概念である。加えて、pH計測部42と演算部31との接続は、電気的に接続されていることの他、pH計測部42でのpH測定値を人手で演算部31に入力することをも含む概念である。
制御部34は、演算部31で求めたスケール防止剤濃度に応じて、薬剤注入ポンプ54の起動・停止を行う装置である。
記録部36は、演算部31で求めたスケール防止剤濃度を適宜記録する装置であり、ICチップや印字装置等、公知の記録装置を用いることができる。
表示部38は、演算部31で求めたスケール防止剤濃度を表示する装置である。
pHセンサ40は特に限定されず、ガラス膜電極やISFET(イオン感応性電界効果型トランジスタ)等、公知のpHセンサを用いることができる。pH計測部42は、pHセンサ40が出力した信号を測定しpHを測定する装置であり、公知の装置を用いることができる。
測定セル50は、フロー型のセルであれば特に限定されることはない。
測定セル50の材質は、試料溶液に対する安定性を有するものであれば特に限定されず、例えば、ガラスや樹脂等が挙げられる。
(スケール防止剤濃度の測定方法)
濃度測定装置101を用いたスケール防止剤濃度の測定方法について、図3を用いて説明する。まず、試料用ポンプ52を起動して、工業用水を試料溶液Bとして試料流路51に流通させる。イオン選択性電極11の液膜114及び参照電極12の感応部が試料溶液Bに接触すると、イオン選択性電極11は、試料溶液B中のスケール防止剤濃度に応じて生じた膜電位を電位計測部20に出力する。一方、参照電極12は、基準電位を電位計測部20に出力する。電位計測部20は、膜電位と基準電位との電位差である応答電位を測定し、測定した応答電位を演算部31に出力する。
pHセンサ40は、試料流路51を流通する試料溶液Bと接触するとpHに応じた電位を生じ、生じた電位をpH計測部42に出力する。pH計測部42は、pHセンサ40から出力された電位からpHを測定し、測定したpHを演算部31に出力する。
演算部31では、予め作成した検量線と、pH計測部42から出力されたpHと、電位計測部20から出力された応答電位とから試料溶液B中のスケール防止剤濃度を換算する。換算したスケール防止剤濃度は、演算部31から制御部34、記録部36、表示部38に出力される。出力されたスケール防止剤濃度は、記録部36で記録され、表示部38で表示される。また、制御部34では、演算部31から出力されたスケール防止剤濃度に基づいて、薬剤注入ポンプ54を起動・停止し、工業用水中のスケール防止剤濃度を調整する。
試料溶液Bは、第一の実施形態の試料溶液Aと同様である。
演算部31におけるスケール防止剤濃度の換算方法は、例えば、検量線作成操作で検量線を異なるpH毎に作成し、その検量線の中から、pH計測部42で測定したpHに応じた検量線を選択し、選択した検量線と電位計測部20で測定した応答電位とからスケール防止剤濃度を算出に換算する方法が挙げられる。
上述のとおり、本実施形態の濃度測定装置は、試料溶液をフロー型の測定セルを用いているため、連続的に工業用水のスケール防止剤濃度を測定できる。加えて、測定したスケール防止剤濃度に基づいて工業用水のスケール防止剤濃度を調整できる。このため、スケール防止剤濃度の測定値に基づいた、工業用水中のスケール防止剤濃度の適正化を自動で行うことができる。
[その他の実施形態]
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
第一の実施形態では、pHセンサ及びpH計測部を有していないが、pHセンサ及びpH計測部を有していてもよい。
第一の実施形態では、制御部、表示部、記録部を有していないが、本発明はこれに限られず、制御部、表示部、記録部を有していてもよい。加えて、第一の実施形態にかかる濃度測定装置は、制御部を介して薬剤注入ポンプの制御を行うものであってもよい。
第二の実施形態は、制御部、表示部、記録部を有していなくてもよい。加えて、第二の実施形態にかかる濃度測定装置は、制御部を介して薬剤注入ポンプの制御を行わないものであってもよい。
第二の実施形態では、測定セルはフロー型のセルを用いているが、第一の実施形態の測定セルのようにバッチ式のものであってもよい。また、第一の実施形態においては、フロー型の測定セルであってもよい。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、実施例に限定されるものではない。
<イオン選択性電極のPbイオンへの応答性>
実験例1、2では、Pbイオンに対し選択的に応答する液膜型のイオン選択性電極(以下、液膜型Pbイオン電極)、Pbイオンに対し選択的に応答する難溶性塩固体膜型のイオン選択性電極(以下、固体膜型Pbイオン電極)について、Pbイオンへの応答性の検証を行った。
[実験例1]
(濃度測定装置)
図1の濃度測定装置8と同様の濃度測定装置を下記仕様にて作成し、濃度測定装置Aを得た。
イオン選択性電極:液膜型Pbイオン電極
参照電極:HS−205C(東亜ディーケーケー株式会社製)
電位計測部:直流電位差計IM−55G(東亜ディーケーケー株式会社製)
攪拌部:スターラー
液膜型Pbイオン電極は、以下の手順により作成した。液膜はイオン選択性分子としてtert−ブチルカリックス[4]アレン−テトラキス(N,N−ジメチルチオアセトアミド)(フルカ社製)1.0質量部と、有機イオン分子としてテトラキス(4−クロロフェニル)ホウ酸カリウム(フルカ社製)0.4質量部とをテトラヒドロフラン15質量部に溶解し、これに高分子材料としてポリ塩化ビニル33.0質量部と、可塑剤として2−ニトロフェニルオクチルエーテル(フルカ社製)65.6質量%を加えて攪拌し、官能膜液が厚さ0.8mg/mmとなる様にガラスシャーレ上に展開して一昼夜風乾させた。その後、直径6mmの円形状に切り出し、筐体に取り付けた。筐体の内部には、内部電極として銀−塩化銀電極を設け、内部溶液として5mmol/LのPbCl溶液を充填した。こうして、液膜型Pbイオン電極を得た。
(測定方法)
得られた濃度測定装置Aを用い、Pbイオンの濃度(4.8×10−9mol/L〜4.8×10−5mol/L)が既知である0.1M−KNO溶液(以下、Pb標準液という)について、25℃の条件下でPbイオン濃度を測定した。Pb標準液中のPbイオンは、Pb(NOを添加して調整した。Pb標準液は、NaOHを用いてpH7.0±0.05に調整した。濃度測定装置AによるPb標準液の応答電位の測定結果を図4に示す。
[実験例2]
(濃度測定装置)
液膜型Pbイオン電極を固体膜型Pbイオン電極(難溶性塩固体膜型電極7184L、東亜ディーケーケー株式会社製)とした以外は、実験例1と同様の濃度測定装置Bを得た。
難溶性塩固体膜型電極の一例について図9を用いて説明する。図9に示すように、難溶性塩個体膜型電極900は、略円筒状の筐体910の一方の開口部に難溶性塩固体膜914が設けられ、他方の開口部には蓋体918により閉止されている。リード線912は、蓋体918を貫通して筐体910の内部に設けられ、該リード線912は該難溶性塩固体膜914に接続されている。膜電位はリード線914を通じて、電位計測部に出力される。難溶性塩固体膜914には、Pbイオンの硫化物と硫化銀とを混合し、ペレット状に成形したものが用いられる。
(測定方法)
濃度測定装置Aに換えて、濃度測定装置Bを用いた以外は、実験例1と同様にして、Pb標準液の応答電位を測定した。測定結果を図4に示す。
<PAA濃度の測定>
[参考例1]
実験例1で作成した濃度測定装置Aを用いて、以下の条件でスケール防止剤濃度を測定した。スケール防止剤としては、PAAを用いた。PAA濃度を1.0×10−6〜1.0×10−3mol/Lの任意の濃度とした0.1M−KNO溶液(以下、PAA標準液という)を調製した。PAA標準液は、NaOHでpH7.0±0.05に調整した。このPAA標準液を試料溶液とし、25℃の条件下でPAA標準液の応答電位を測定した。測定した結果を図5に示す。
[実施例1]
参考例1で用いたPAA標準液に酸化剤として次亜塩素酸を添加し、遊離残留塩素濃度を0.2mg/Lとした塩素添加PAA標準液を調製した。試料溶液を塩素添加PAA標準液とした以外は、参考例1と同様にして応答電位を測定した。測定結果を図5に示す。
[比較例1]
濃度測定装置Aを実験例2で作成した濃度測定装置Bとした他は、参考例1と同様にしてPAA標準液の応答電位を測定した。測定した結果を図6に示す。
[比較例2]
濃度測定装置Aを実験例2で作成した濃度測定装置Bとした他は、実施例1と同様にして塩素添加PAA標準液の応答電位を測定した。測定した結果を図6に示す。
図4は、横軸にPb標準液中のPbイオン濃度(mol/L)をとり、縦軸には実験例1の応答電位差(mV)と実験例2の応答電位差をとった、Pbイオン濃度と応答電位差との相関関係を示すグラフである。前記応答電位差は、実験例1及び2それぞれにおいて、Pbイオン濃度が10mg/L(4.8×10−5mol/L)のPb標準液を測定した際の応答電位を基準とし、該基準に対する応答電位の差として示したものである。凡例(a1)は実験例1の結果を示し、凡例(b1)は実験例2の結果を示す。
図5は、横軸に試料溶液中のPAA濃度(mol/L)をとり、縦軸に応答電位(mV)をとった、PAA濃度と応答電位との相関関係を示すグラフである。凡例(a2)は参考例1の結果を示し、凡例(b2)は実施例1の結果を示す。図6は、横軸に試料溶液中のPAA濃度(mol/L)をとり、縦軸に応答電位(mV)をとった、PAA濃度と応答電位との相関関係を示すグラフである。凡例(a3)は比較例1の結果を示し、凡例(b3)は比較例2の結果を示す。
図4に示すとおり、酸化剤を含まないPb標準液を測定対象とした場合、液膜型Pbイオン電極(実験例1)は固体膜型Pbイオン電極(実験例2)に比べて、Pbイオンへの感度が劣っていた。
図5の参考例1と図6の比較例1とを比較すると、液膜型Pbイオン電極のPAA濃度への応答性は、測定したPAA濃度範囲(約60mVの応答電位差)において固体膜型Pbイオン電極とほぼ同等であることが判った。
さらに、図5に示すとおり、液膜型Pbイオン電極を用い、酸化剤を含まない試料溶液を測定した参考例1と、液膜型Pbイオン電極を用い、酸化剤を含む試料溶液を測定した実施例1とは、PAA濃度が同じ試料溶液に対して同等の応答電位を示していた。図6に示すとおり、固体膜型Pbイオン電極を用い、酸化剤を含まない試料溶液を測定した比較例1では、試料溶液中のPAA濃度に応じた応答電位が測定された。固体膜型Pbイオン電極を用い、酸化剤を含む試料溶液を測定した比較例2では、測定された応答電位とPAA濃度とは相関性を示さなかった。このことから、イオン選択性電極に液膜型Pbイオン電極を用いることで、酸化剤が共存する試料溶液においても、PAA濃度に応じた応答電位を測定し試料溶液中のスケール防止剤濃度を測定できることが判った。
<イオン選択性電極のCuイオンへの応答性>
実験例3、4では、Cuイオンに対し選択的に応答する液膜型のイオン選択性電極(以下、液膜型Cuイオン電極)、及び、Cuイオンに対し選択的に応答する難溶性塩固体膜型のイオン選択性電極(以下、固体膜型Cuイオン電極)について、Cuイオンへの応答性の検証を行った。
[実験例3]
(濃度測定装置)
液膜型Pbイオン電極を後述の方法で作成した液膜型Cuイオン電極とした以外は、実験例1と同様の濃度測定装置Cを得た。
液膜型Cuイオン電極は、以下の手順により作成した。液膜はイオン選択性分子としてo−キシレンビス(N,N−ジイソブチルジチオカルバメート)(フルカ社製)6.9質量部と、有機イオン分子としてテトラキス(4−クロロフェニル)ホウ酸カリウム(フルカ社製)1.6質量部とをテトラヒドロフラン15質量部に溶解し、これに高分子材料としてポリ塩化ビニル57.2質量部と、可塑剤として2−ニトロフェニルオクチルエーテル(フルカ社製)34.3質量部を加えて攪拌し、官能膜液が厚さ0.8mg/mmとなる様にガラスシャーレ上に展開して一昼夜風乾させた。その後、直径6mmの円形状に切り出し、筐体に取り付けた。筐体の内部には、内部電極として銀−塩化銀電極を設け、内部溶液として1mmol/LのCuCl溶液を充填した。こうして、液膜型Cuイオン電極を得た。
(測定方法)
得られた濃度測定装置Cを用い、Cuイオンの濃度(1.6×10−8mol/L〜1.6×10−4mol/L)が既知である0.1M−KNO溶液(以下、Cu標準液という)について、25℃の条件下でCuイオン濃度を測定した。Cu標準液中のCuイオンは、Cu(NOを添加して調整した。Cu標準液は、NaOHを用いてpH7.0±0.05に調整した。濃度測定装置CによるCu標準液の応答電位の測定結果を図7に示す。
[実験例4]
(濃度測定装置)
液膜型Pbイオン電極を固体膜型Cuイオン電極(難溶性塩固体膜型電極7184L、東亜ディーケーケー株式会社製)とした以外は、実験例1と同様の濃度測定装置Dを得た。
(測定方法)
濃度測定装置Aに換えて、濃度測定装置Dを用いた以外は、実験例1と同様にして、Cu標準液を測定し、Cu標準液の応答電位を測定した。測定結果を図7に示す。
<PAA濃度の測定>
[参考例2]
濃度測定装置Aに換えて、実験例3で作成した濃度測定装置Cを用いた他は、参考例1と同様にして、PAA標準液の応答電位を測定した。測定した結果を図8に示す。
[実施例2]
濃度測定装置Aに換えて、実験例3で作成した濃度測定装置Cを用いた他は、実施例1と同様にして、塩素添加PAA標準液の応答電位を測定した。測定結果を図8に示す。
図7は、横軸にCu標準液中のCuイオン濃度(mol/L)をとり、縦軸には実験例3と実験例4との応答電位差(mV)をとった、Cuイオン濃度と応答電位差との相関関係を示すグラフである。前記応答電位差は、実験例3及び4のそれぞれにおいて、Cuイオン濃度が10mg/L(1.6×10−5mol/L)のCu標準液を測定した際の応答電位を基準とし、該基準に対する応答電位の差として示すものである。凡例(a4)は実験例3の結果を示し、凡例(b4)は実験例4の結果を示す。
図8は、横軸に試料溶液中のPAA濃度(mol/L)をとり、縦軸に応答電位(mV)をとった、PAA濃度と応答電位との相関関係を示すグラフである。凡例(a5)は参考例2の結果を示し、凡例(b5)は実施例2の結果を示す。
図7に示すとおり、酸化剤を含まないCu標準液を測定対象とした場合、液膜型Cuイオン電極(実験例3)は固体膜型Cuイオン電極(実験例4)に比べて、Cuイオンへの感度は劣っていた。
図8に示すとおり、固体膜型Cuイオン電極に比べてCuイオンへの感度が低い液膜型Cuイオン電極であっても、試料用液中のPAA濃度に応じた応答性を示した。さらに、図8に示すとおり、液膜型Cuイオン電極を用い、酸化剤を含まない試料溶液を測定した参考例2と、液膜型Cuイオン電極を用いて酸化剤を含む試料溶液を測定した実施例2とは、PAA濃度が同じ試料溶液に対して、同等の応答電位を示していた。このことから、イオン選択性電極に液膜型Cuイオン電極を用いることで、酸化剤が共存する試料溶液においても、PAA濃度に応じた応答電位を測定し試料溶液中のスケール防止剤濃度を測定できることが判った。
[実施例3]
実験例1で得られた濃度測定装置Aを用い、表1に記載の遊離塩素濃度となるように次亜塩素酸を添加したPAA濃度1.0×10−5mol/Lの試料溶液について、応答電位を測定した。測定結果を表1に示す。
[比較例3]
濃度測定装置Aに換えて、実験例2で得られた濃度測定装置Bを用いた以外は、実施例3と同様にして試料溶液の応答電位を測定した。測定結果を表1に示す。
Figure 2010117269
表1に示すように、液膜型のイオン選択性電極を用いた実施例3では、遊離塩素濃度0〜1.0mg/Lの範囲で、応答電位は−14±2mVで安定していた。これに対し、固体膜型のイオン選択性電極を用いた比較例3では、遊離塩素濃度が0.01mg/L以上になると、酸化剤が含まれていない試料溶液の応答電位に対し10mV以上の差異が生じていた。加えて、比較例3では、試料溶液の遊離塩素濃度の上昇に従い、酸化剤が含まれていない試料溶液の応答電位との差異が大きくなっていた。このことから、液膜型のイオン選択性電極を用いることで、遊離塩素濃度の濃度にかかわらず、試料溶液中のPAA濃度を安定して正確に測定できることが判った。
本発明の第一の実施形態に係るスケール防止剤濃度の測定装置を示す模式図である。 本発明のスケール防止剤濃度の測定装置に用いる液膜形のイオン選択性電極の構造を説明する模式図である。 本発明の第二の実施形態に係るスケール防止剤濃度の測定装置を示す模式図である。 実験例1及び実験例2における応答電位差とPbイオン濃度との相関関係を示すグラフである。 参考例1及び実施例1における応答電位とPAA濃度との相関関係を示すグラフである。 比較例1及び比較例2における応答電位とPAA濃度との相関関係を示すグラフである。 実験例3及び実験例4における応答電位差とCuイオン濃度との相関関係を示すグラフである。 参考例2及び実施例2における応答電位とPAA濃度との相関関係を示すグラフである。 難溶性塩固体膜型のイオン選択性電極の一例を示す模式図である。
符号の説明
8、100 スケール防止剤濃度の測定装置
10 イオン電極
11 イオン選択性電極
12 参照電極
20 電位計測部
30、31 演算部
40 pHセンサ
42 pH計測部

Claims (7)

  1. 酸化剤を含む試料溶液に含まれるスケール防止剤の濃度をイオン電極を用いて測定する方法であって、前記イオン電極は液膜型のイオン選択性電極と参照電極とからなることを特徴とする、スケール防止剤濃度の測定方法。
  2. スケール防止剤を濃度既知として検量線を作成し、前記スケール防止剤を含む試料溶液に液膜型のイオン選択性電極及び参照電極を浸漬して応答電位を測定し、前記応答電位と前記検量線とから前記スケール防止剤の濃度を換算することを特徴とする、請求項1に記載のスケール防止剤濃度の測定方法。
  3. 前記試料溶液のpHを測定し、測定したpHと前記応答電位と前記検量線とから前記スケール防止剤濃度を換算することを特徴とする、請求項2に記載のスケール防止剤濃度の測定方法。
  4. 前記液膜型のイオン選択性電極は、Cu、Zn、Mo、Cd、Tl、Pb、Sm及びYbのいずれかの金属イオンに選択的に応答する液膜型のイオン選択性電極であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスケール防止剤濃度の測定方法。
  5. 酸化剤を含む試料溶液に含まれるスケール防止剤の濃度を測定するスケール防止剤濃度の測定装置であって、
    液膜型のイオン選択性電極及び参照電極からなるイオン電極と、前記イオン電極が生じる応答電位を測定する電位計測部と、スケール防止剤を濃度既知として予め作成した検量線と前記応答電位とからスケール防止剤濃度を換算する演算部とを有することを特徴とする、スケール防止剤濃度の測定装置。
  6. pHセンサ及びpH計測部を有することを特徴とする、請求項5に記載のスケール防止剤濃度の測定装置。
  7. 前記液膜型のイオン選択性電極は、Cu、Zn、Mo、Cd、Tl、Pb、Sm及びYbのいずれかの金属イオンに選択的に応答する電極であることを特徴とする、請求項5又は6に記載のスケール防止剤濃度の測定装置。
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