JP2010117163A - 旋光計及び旋光計の較正方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】旋光度の測定精度を向上させた旋光計及び旋光計の較正方法を提供する。
【解決手段】本発明の旋光計は、サンプルセル13中の試料溶液を透過して偏光面が回転した直線偏光を検光子14に入射させ、中空モータ(電動機)15で検光子14を回動させ、検光子14を透過して受光素子(受光手段)16で受光される光量を最小にするように検光子14を回動させた回動角度に基づいて、試料溶液の旋光度を測定する。また旋光計は、旋光度の測定時に、中空モータ15で検光子14を揺動振動させることにより、検光子14の透過軸と直線偏光の偏光面とのなす角度を振動させ、検光子14を透過する光量を振動させ、振動する光量に基づいた処理を行う。更に旋光計は、中空モータ15よりも高精度のモータを用いて中空モータ15の回動角度を較正することにより、測定可能な旋光度に対して実測で較正を行ってある。
【選択図】図10
【解決手段】本発明の旋光計は、サンプルセル13中の試料溶液を透過して偏光面が回転した直線偏光を検光子14に入射させ、中空モータ(電動機)15で検光子14を回動させ、検光子14を透過して受光素子(受光手段)16で受光される光量を最小にするように検光子14を回動させた回動角度に基づいて、試料溶液の旋光度を測定する。また旋光計は、旋光度の測定時に、中空モータ15で検光子14を揺動振動させることにより、検光子14の透過軸と直線偏光の偏光面とのなす角度を振動させ、検光子14を透過する光量を振動させ、振動する光量に基づいた処理を行う。更に旋光計は、中空モータ15よりも高精度のモータを用いて中空モータ15の回動角度を較正することにより、測定可能な旋光度に対して実測で較正を行ってある。
【選択図】図10
Description
本発明は、旋光計に関し、より詳しくは、高精度で試料の旋光度を測定することができる旋光計、及び旋光計の較正方法に関する。
旋光性は、入射された直線偏光の偏光面を回転させる物質の性質であり、旋光性を有する物質に直線偏光を入射した場合に偏光面が回転する角度は旋光度と呼ばれる。単位物質量当たりの旋光度は物質に固有の値であるので、溶液の旋光度を測定することにより溶液中の物質の濃度を測定することができる。旋光度を用いて溶液の濃度を測定する方法は、光吸収を用いる方法に比べて、光を吸収しない物質の濃度をも測定できる点で優れている。また旋光性を有する物質には、一般に、偏光面を右ネジ回りに回転させる右旋性を示すD体と、偏光面を左ネジ回りに回転させる左旋性を示すL体との一対の光学異性体が存在する。濃度が定まっている物質の旋光度を測定することにより、物質中に含まれるD体及びL体の割合を求めることができる。特許文献1には、物質の旋光度を測定することができる旋光計が開示されている。
図13は、従来の旋光計の構成を示す模式図である。図中の矢印は光路であり、従来の旋光計は、光源51、干渉フィルタ52、レンズ53、偏光子54、ファラデーセル55、サンプルセル56、検光子57、レンズ58、受光素子59が光路に沿って並んで構成されている。旋光度は589nmの波長の光で測定されることが多く、光源51にはNaランプ、ハロゲンランプ又は発光ダイオード(LED)が用いられる。干渉フィルタ52は、旋光度の測定に用いる589nmの波長以外の波長の光を除去する。偏光子54は、単一の透過軸に平行な直線偏光成分のみを透過させる偏光板であり、光源51からの光を直線偏光に変換する。ファラデーセル55は、ファラデーコイル内にファラデーガラスが組み込まれた構成となっており、内部を光路が通る位置に配置されている。ファラデーセル55は、電流を供給されることによって内部に磁場を発生させ、磁場内を通過する直線偏光の偏光面をファラデー効果により回転させる。ファラデーセル55は、交流電流を供給された場合には、内部に振動磁場を発生させる。この場合、ファラデーセル55内を通過する直線偏光の偏光面は、振動磁場に応じて回転角度及び回転方向が変動し、交流電流に応じた振幅及び振動数で揺動振動する。
サンプルセル56は、試料溶液が満たされる透明セルであり、試料溶液内を直線偏光が通過するように配置されている。検光子57は、単一の透過軸を有する偏光板であり、サンプルセル56を通過した直線偏光が入射される。また検光子57は、ウオームホイール571の回転中心部分に固定されており、直線偏光はウオームホイール571の回転中心に入射されるようになっている。またウオームホイール571にはウオームギア572が噛合しており、ウオームギア572にはステッピングモータ573が連結している。ステッピングモータ573がウオームギア572を回転させ、ウオームギア572によりウオームホイール571が回転し、ウオームホイール571に固定された検光子57が回転する構成となっている。受光素子59は、フォトダイオード等で構成されており、検光子57を通過した光を検出する。
サンプルセル56内に試料溶液がなく、偏光子54及び検光子57の透過軸が直交した状態では、光は全て検光子57で遮蔽され、受光素子59は光を検出できない。旋光性を有する試料溶液がサンプルセル56に注入された場合、試料溶液によって直線偏光の偏光面が回転し、検光子57の透過軸に平行な直線偏光成分が検光子57を透過し、受光素子59は光を検出する。この状態で検光子57を回転させ、試料溶液を通過した直線偏光の偏光面と検光子57の透過軸とが直交するまで検光子57を回転させた回転角度を求める。求めた回転角度は、サンプルセル56内の試料溶液が直線偏光の偏光面を回転させた角度であり、これが試料溶液の旋光度である。
また測定の際、ファラデーセル55は、交流電流を供給されて直線偏光の偏光面を揺動振動させる。偏光面が揺動振動する状態では、検光子57の透過軸に平行な直線偏光成分の大きさが変動するので、検光子57を透過した光を受光した受光素子59の出力は交流となる。具体的には、直線偏光の偏光面と検光子57の透過軸との交差する角度が直角に近いほど検光子57を透過する直線偏光成分が小さくなって受光素子59の出力は小さくなり、逆に角度が直角から離れるほど受光素子59の出力は大きくなる。回転した検光子57の透過軸が、振動中心にある偏光面と直交する場合は、揺動振動する偏光面と透過軸との交差する角度の範囲が直角に最も近くなるので、受光素子59の交流出力は最小となる。従って、受光素子59の交流出力が最小になるように検光子57の回転角度を定めることによって、試料溶液の旋光度を測定することができる。
特開2004−279380号公報
前述の如く、従来の旋光計では、ウオームホイール571、ウオームギア572及びステッピングモータ573を用いて検光子57を回転させることによって旋光度を測定する。旋光計が測定する旋光度の精度は、ウオームホイール571の回転精度に依存し、回転精度は、ウオームホイール571、ウオームギア572及びステッピングモータ573の加工精度並びに組立精度、特にウオームギア572の回転直線性の精度に依存する。これらウオームホイール571、ウオームギア572及びステッピングモータ573の加工誤差並びに組立誤差は、旋光度の測定精度を悪化させる要因となる。
旋光度の測定精度を保つためには、旋光計の較正を行う必要がある。従来の旋光計の較正方法では、予め旋光度が判明しているショ糖溶液等の標準試料溶液の旋光度を測定し、測定した旋光度と実際の旋光度とのズレを記録し、記録したズレに基づいて較正を行っていた。しかしながら、従来の較正方法では、旋光度が異なる複数の標準試料溶液を作成する手間がかかり、また標準試料溶液を作成する際に旋光度にある程度の誤差が発生する。また実際には離散的ないくつかの旋光度の値に対して実測の旋光度が得られるのみであり、他の旋光度の値に対しては、実測の旋光度を補間又は外挿することによって較正を行っていた。なお、標準試料溶液ではなく標準旋光板を用いた較正方法もあり、この場合は標準試料溶液に起因する難点は回避できるものの、離散的ないくつかの実測の旋光度の値のみが得られることは同様である。従って、従来の旋光計では、充分な較正を行うことができず、ある程度以上に旋光度の精度を向上させることができないという問題がある。
また前述の如く、従来の旋光計では、ファラデーセル55を用いて直線偏光の偏光面を揺動振動させることによって旋光度を測定する。ファラデーセル55による偏光面の振動角幅は、±4°程度が限度であり、検光子57を透過する直線偏光成分の変動量が小さい。このため、検光子57を回転させる際に受光素子59の交流出力が変化する変化量が小さく、特に、検光子57の回転角度が、交流出力が最小となる回転角度の近辺にあるときに変化量が小さくなる。従って、受光素子59の交流出力が最小になるように検光子57の回転角度を正確に定めることが困難であり、旋光度の測定精度が低くなるという問題がある。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、検光子を回転させるために必要な機構の数を減らすことにより、旋光度の測定精度を悪化させる要因を減少させ、旋光度の測定精度を向上させることができる旋光計を提供することにある。
また本発明の他の目的とするところは、直線偏光の偏光面ではなく検光子を揺動振動させることにより、検光子を透過する直線偏光成分の変動量をより大きくし、受光素子の出力変動を大きくさせて旋光度の測定精度を向上させることができる旋光計を提供することにある。
更に本発明の他の目的とするところは、検光子の個々の回動角度を実測で較正することにより、旋光度の測定精度を向上させることができる旋光計及び旋光計の較正方法を提供することにある。
本発明に係る旋光計は、直線偏光を発生させる手段と、該手段が発生させた直線偏光に試料を透過させる手段と、直線偏光が入射され、特定の透過軸に平行な直線偏光成分を透過させる検光子と、前記透過軸の方向を変更するために前記検光子を回動させる回動手段と、前記検光子を透過した光を受光する受光手段とを備え、試料の旋光度を測定する旋光計において、前記受光手段が受光した受光量が試料のない状態で最小になる前記検光子の回動位置から、試料を通過した直線偏光が前記検光子に入射される状態で前記受光量が最小になる前記検光子の回動位置まで前記回動手段が前記検光子を回動させた回動角度に基づいて、試料の旋光度を測定する手段を備え、前記回動手段は、中空の筒状に形成してある電動機を有し、該電動機の中空部分を光路が通る位置に前記電動機を配置してあり、前記検光子を前記電動機の回転子に固定してあることを特徴とする。
本発明に係る旋光計は、前記回動手段は、前記電動機により前記検光子に所定の振動数で揺動振動させる手段を有しており、前記振動数に応じた振動数で変動する前記受光手段での受光量を小さくするように、前記回動手段に前記検光子を回動させる手段を備えることを特徴とする。
本発明に係る旋光計は、前記電動機の回動角度を、分解能に応じた間隔の離散的な数値として計測する手段と、該手段が計測可能な夫々の回動角度の値に対応付けて、当該回動角度の値を補正するための数値を記憶してある手段と、該手段で記憶している数値に基づいて、計測した回動角度を補正する手段とを更に備えることを特徴とする。
本発明に係る旋光計の較正方法は、本発明の旋光計を較正する方法であって、中空の筒状に形成してあり、前記電動機よりも高精度に回動角度を定めることができる高精度電動機と、該高精度電動機の回転子に固定してあり、前記高精度電動機により回動された回動角度に応じた角度だけ直線偏光の偏光方向を変更する偏光方向変更素子とを、前記検光子に入射される前の直線偏光が前記高精度電動機の中空部分及び前記偏光方向変更素子を通過する位置に配置し、前記高精度電動機により前記偏光方向変更素子を回動させると共に、前記電動機で前記検光子を回動させ、前記受光手段での受光量を最小にする前記高精度電動機の回動角度及び前記電動機の回動角度を計測し、計測した前記高精度電動機の回動角度に基づき、計測した前記電動機の回動角度の値を補正するための数値を求め、求めた数値を、計測した前記電動機による回動角度の値に対応付けて前記旋光計で記憶することを特徴とする。
本発明においては、旋光計は、中空部分に光路を通した中空の筒状の電動機を備え、試料を透過して偏光面が回転した直線偏光を検光子に入射させ、検光子を電動機で回動させ、検光子を透過して受光手段で受光される光量を最小にするように検光子を回動させた回動角度に基づいて、試料の旋光度を計測する。ウオームホイール及びウオームギア等の機構を使用せずに直接に電動機で検光子を回動させることにより、検光子を回動させるために必要な機構の数が減り、旋光度の測定精度を悪化させる要因が減少する。
また本発明においては、電動機で検光子を回動させ、また電動機で検光子を揺動振動させることにより、検光子の透過軸と直線偏光の偏光面とのなす角度を揺動振動させる。これにより、検光子を透過する光量が振動し、振動する光量に基づいて旋光度を測定することができる。
更に本発明においては、電動機よりも高精度で回動角度を決定することができる高精度電動機を用いて電動機の回動角度を較正することによって、電動機の回動角度を補正するための数値を求め、求めた数値を電動機の回動角度に対応付けて記憶し、電動機の回動角度の測定時には、記憶した数値に基づいて電動機の回動角度を補正する。標準試料溶液を用いずに旋光計を較正することが可能となり、また測定可能な全ての旋光度に対して実測で較正を行うことができる。
本発明にあっては、旋光度の測定精度は電動機の位置決め精度のみに依存しており、ウオームホイール及びウオームギアを使用していた従来の旋光計に比べて、検光子を回動させるために必要な機構の数が減少し、旋光度の測定精度を悪化させる要因が少ないので、高精度で旋光度を測定することができる。
また本発明にあっては、ファラデーセルにより直線偏光の偏光面を揺動振動させる従来の旋光計に比べて、より大きい振動角幅で検光子を揺動振動し、検光子を透過する光量の変動量を大きくすることができる。これにより、検光子の振動中心を回動させた場合に小さな角度の回動に応じた光量の変化を検出することが可能となるので、光量が最小になるように検光子の回動角度を正確に定めることができ、旋光度の測定精度をより向上させることが可能となる。
更に本発明にあっては、標準試料溶液を用いずに旋光計を較正できるので、複数の標準試料溶液を作成する手間が不必要となるので、旋光計の較正がより容易となり、また、標準試料溶液の旋光度の誤差による影響を受けることがなく、より正確な較正を行うことができる。また測定可能な全ての旋光度に対して実測で較正を行うことができるので、離散的な較正のみが可能であった従来の較正方法に比べ、正確な較正が可能となり、旋光度の測定精度が向上する等、本発明は優れた効果を奏する。
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る本発明の旋光計の構成を示す構成図である。図中の矢印は光路であり、旋光計は、光源31、干渉フィルタ32、レンズ33、偏光子11、ファラデーセル12、サンプルセル13、検光子14、中空モータ(電動機)15、レンズ34、受光素子(受光手段)16が光路に沿って並んで構成されている。光源31は、589nmの波長の光を発光するLEDであり、点灯回路30に接続されている。光源31は、点灯回路30から点灯用の電力を供給されて発光する。光源31としてLEDを用いることにより、光源31の小型化及び省電力化を図ることが可能であり、旋光計における発熱量を抑制することができ、また旋光計の低コスト化を図ることができる。なお、光源31は、589nmの波長の光を発光する光源であれば、LED以外の光源であってもよい。干渉フィルタ32は、旋光度の測定に用いる589nmの波長以外の波長の光を除去する光学フィルタである。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る本発明の旋光計の構成を示す構成図である。図中の矢印は光路であり、旋光計は、光源31、干渉フィルタ32、レンズ33、偏光子11、ファラデーセル12、サンプルセル13、検光子14、中空モータ(電動機)15、レンズ34、受光素子(受光手段)16が光路に沿って並んで構成されている。光源31は、589nmの波長の光を発光するLEDであり、点灯回路30に接続されている。光源31は、点灯回路30から点灯用の電力を供給されて発光する。光源31としてLEDを用いることにより、光源31の小型化及び省電力化を図ることが可能であり、旋光計における発熱量を抑制することができ、また旋光計の低コスト化を図ることができる。なお、光源31は、589nmの波長の光を発光する光源であれば、LED以外の光源であってもよい。干渉フィルタ32は、旋光度の測定に用いる589nmの波長以外の波長の光を除去する光学フィルタである。
偏光子11は、単一の透過軸に平行な直線偏光成分のみを透過させる偏光板であり、光源31が発光して干渉フィルタ32及びレンズ33を通過して入射された589nmの波長の光を直線偏光に変換する。偏光子11は旋光計内で固定されており、偏光子11に固有の透過軸の方向も固定されるので、偏光子11により発生される偏光の偏光面は一定である。ファラデーセル12は、内部を光路が通る位置に配置されており、交流電流を発信する発振器22に接続されている。発振器22は、所定の振動数の交流電流をファラデーセル12へ供給し、ファラデーセル12は、交流電流を供給されることによって内部に振動磁場を発生させる。ファラデーセル12を通過する直線偏光は、振動磁場により、交流電流に応じた振幅及び振動数で偏光面が揺動振動する。サンプルセル13は、試料溶液が満たされる透明セルであり、試料溶液内を光路が通る位置に配置されている。なお、ファラデーセル12とサンプルセル13とが並ぶ順番は逆であってもよい。
検光子14は、単一の透過軸を有する偏光板であり、サンプルセル13を通過した直線偏光が入射される。検光子14に入射された直線偏光の内、透過軸に平行な直線偏光成分のみが検光子14を透過する。また検光子14は、中空モータ15の回転子に固定されている。中空モータ15は、中空の筒状に形成した電動モータであり、中空部分を光路が通る位置に配置されている。また中空モータ15は、モータドライバ23に接続されており、モータドライバ23から駆動電流を供給されて回転子を回動させる構成となっている。中空モータ15としては、角度分解能が約18万〜800万パルス/1回転のものを使用する。検光子14は、中空モータ15の開口部を塞ぐ位置で回転子に固定されてあるので、中空モータ15の中空部分を光路が通ることにより、光路に交差する位置に配置される。中空モータ15の回転子が回動することにより、回転子に固定された検光子14が回動する。検光子14が回動することにより、検光子14に固有の透過軸の方向が変化し、検光子14を透過する直線偏光の強度が変化する。
検光子14を透過した直線偏光は、中空モータ15の中空部分を通過し、レンズ34を経て受光素子16へ入射される。受光素子16は、フォトダイオード等で構成されており、直線偏光を受光し、受光量を電圧で示す受光信号を増幅部24へ出力する。
本発明の旋光計は、更に、受光素子16が出力した受光信号に基づいて、旋光計の動作を制御するための信号処理を行う信号処理部21を備えている。信号処理部21には、発振器22、モータドライバ23及び増幅部24が接続されており、増幅部24は受光素子16が出力した受光信号を増幅して信号処理部21へ入力し、信号処理部21は、発振器22及びモータドライバ23を動作させるための制御信号を出力する。中空モータ15及びモータドライバ23は、本発明における回動手段に対応する。信号処理部21は、各種の信号を入出力するための入出力インタフェース、各種の演算処理を実行するマイクロプロセッサ又は集積回路等の演算部、信号処理に必要な一時的な情報を記憶するメモリ、信号処理に必要な処理プログラム又はデータを記憶する記憶部を含んで構成されている。また信号処理部21には、旋光度の測定結果等の情報を出力するディスプレイ又はプリンタ等の出力部25が接続されている。
旋光度の測定開始前の段階では、検光子14の回動位置は、偏光子11及び検光子14の透過軸が直交する初期回動位置に定められる。この状態では、サンプルセル13に試料溶液が注入されていない場合は、検光子14へ入射される直線偏光の偏光面は検光子14の透過軸と直交するので、光は全て検光子14で遮蔽され、受光素子16は光を受光できない。
旋光性を有する試料溶液がサンプルセル13に注入された場合、試料溶液によって直線偏光の偏光面が回転し、検光子14の透過軸に平行な直線偏光成分が検光子14を透過し、受光素子16は光を検出する。信号処理部21は、発振器22に交流電流を発生させるための制御信号を出力する処理を行い、発振器22は、所定の振動数fの交流電流をファラデーセル12へ供給する。ファラデーセル12は、所定の振動数fの交流電流を供給されることによって、振動数fで振動する振動磁場を発生させる。ファラデーセル12を通過する直線偏光は、振動磁場によって、振動数fで偏光面が揺動振動する。
図2は、直線偏光の偏光面の変化を示す概念図である。図中に示す矢印は、直線偏光の偏光面に平行で進行方向に直交する偏光方向を示す。また角度0°の方向は、偏光子11の透過軸の方向であり、角度90°の方向は、初期回動位置に配置された検光子14の透過軸の方向である。図2(a)は、偏光子11を透過した直線偏光の偏光面を示し、偏光方向は検光子14の透過軸に直交している。図2(b)は、ファラデーセル12を透過した直線偏光の偏光面を示し、偏光面は、角度0°の方向とのなす角度が角度0°を中心にして振動角幅δで周期的に変動する揺動振動を行う。図2(c)は、サンプルセル13中の試料溶液を透過した直線偏光の偏光面を示す。揺動振動する直線偏光の偏光面が試料溶液の旋光性によって更に回転しており、偏光面の揺動振動中心と角度0°の方向とのなす角度が試料溶液の旋光度αである。図2(c)には、α>δである例を示している。
信号処理部21は、中空モータ15を回動させるためのパルス信号をモータドライバ23へ出力する処理を行う。モータドライバ23は、信号処理部21からのパルス信号に応じた駆動電流を中空モータ15へ供給し、中空モータ15は、検光子14を回動させる。信号処理部21が出力するパルス信号の種類によって中空モータ15の回動方向が定まり、またパルス信号の数によって回動角度が定まる。中空モータ15は、信号処理部21からの信号に応じた方向に、パルス信号に応じた回動角度だけ検光子14を回動させ、その後停止する。また信号処理部21は、出力したパルス信号の数に基づいて、偏光子11及び検光子14の透過軸が直交する初期回動位置から検光子14を回動させた中空モータ15の回動角度を計測する処理を行う。中空モータ15の回転子を1ステップ回動させるためのパルス信号を現在の回動位置まで回動するまでに出力した数に、1ステップで回転子が回動する角度を乗ずることにより、中空モータ15の回動角度を計測することができる。信号処理部21で計測できる中空モータ15の回動角度の値は、中空モータ15の角度分解能に応じた間隔の離散的な数値となっている。
図3は、回動した検光子14の透過軸と直線偏光の偏光面との関係を示す概念図である。中空モータ15によって回動した検光子14の回動角度をβとする。図中には、回動後の検光子14の透過軸を示しており、角度90°の方向と回動後の検光子14の透過軸とのなす角が回動角度βである。また図中には、検光子14の透過軸に直交する方向を破線で示している。回動した検光子14へ入射された直線偏光は、検光子14の透過軸に平行な直線偏光成分のみが検光子14を透過する。検光子14を透過した光は、受光素子16で受光される。
図4は、検光子14の透過軸に直交する方向と直線偏光の偏光面とがなす角度に応じた受光量の変化を示す特性図である。図中の横軸は、検光子14の透過軸に直交する方向と直線偏光の偏光面とがなす角度θを示し、縦軸は受光量を示す。θ=0°の場合は、直線偏光の偏光面と検光子14の透過軸とが直交する場合であるので、検光子14の透過軸に平行な直線偏光成分はゼロであり、受光量もゼロとなる。θが0°から増加した場合は、検光子14の透過軸に平行な直線偏光成分は増大し、受光量はθ=90°で最大となるまで単純に増加する。またθがマイナス方向に変化した場合は、θの絶対値が大きくなるに従って、検光子14の透過軸に平行な直線偏光成分は増大し、受光量はθ=−90°で最大となるまで増加する。従って、図4に示すように、受光量は、−90°<θ<0°で単純減少し、θ=0°で極小値0となり、0°<θ<90°で単純増加する。
光を受光した受光素子16は、受光量を電圧で示す受光信号を出力し、増幅部24は受光信号を増幅して信号処理部21へ入力する。図3に示すように、検光子14へ入射される直線偏光の偏光面は振動数fで揺動振動しているので、検光子14の透過軸に直交する方向と直線偏光の偏光面とがなす角度は、振動数fで変動し、受光素子16での受光量も周期的に変動する。従って、受光素子16での受光量を電圧で示す受光信号は、電圧が周期的に変動する交流信号となる。
図5は、ファラデーセル12へ供給する交流電流と受光信号との関係を示す概念図である。ファラデーセル12へ供給する電流の内、直線偏光の偏光面をプラスの角度で回転させる電流をプラスの電流とする。図5(a)は、図3に示す如きβ<α−δの状態での交流電流及び受光信号を示す。この状態では、検光子14の透過軸に直交する方向と直線偏光の偏光面とがなす角度θは正であり、交流電流が増加した場合は、角度θが増大し、受光素子16での受光量は増大する。逆に交流電流が減少した場合は、角度θが減少し、受光素子16での受光量は減少する。従って、図5(a)に示すように、受光信号は、交流電流の振動数fとほぼ同一の振動数で振動し、しかも交流電流と同位相で振動する交流信号となる。
図5(b)は、β=αの状態での交流電流及び受光信号を示す。この状態では、検光子14の透過軸に直交する方向と直線偏光の偏光面とがなす角度θは、0°を中心に振動する。交流電流が0のときには、角度θは0°であるので、直線偏光の偏光面は検光子14の透過軸と直交し、受光素子16での受光量は0となり、受光信号も0となる。交流電流がプラス又はマイナスになったときは、いずれのときも受光素子16での受光量は0から増加し、交流電流が最大値になったとき及び最小値となったときに受光量は最大となる。従って、図5(b)に示すように、受光信号は、交流電流の振動数fの2倍の振動数2fで振動する交流信号となる。またこの状態では、検光子14の透過軸に直交する方向と直線偏光の偏光面とがなす角度θは最小であり、受光信号の強度は最小となる。
図5(c)は、β>α+δの状態での交流電流及び受光信号を示す。この状態では、検光子14の透過軸に直交する方向と直線偏光の偏光面とがなす角度θは負であり、交流電流が増加した場合は、角度θの絶対値が減少し、受光素子16での受光量は減少する。逆に交流電流が減少した場合は、角度θの絶対値が増大し、受光素子16での受光量は増大する。従って、図5(c)に示すように、受光信号は、交流電流の振動数fとほぼ同一の振動数で振動し、しかも交流電流と逆位相で振動する交流信号となる。
図5に示すように、信号処理部21へ入力される受光信号は、直流成分、振動数fの交流成分、及び振動数2fの交流成分が重なった交流信号となる。受光信号を入力された信号処理部21は、ローパスフィルタを用いた濾波の処理を行う。ローパスフィルタの遮断振動数は、振動数2fより大きい振動数としている。信号処理部21は、次に、受光信号から、振動数fの交流成分を抽出する処理を行い、抽出した振動数fの交流成分とファラデーセル12へ供給する交流電流との位相を比較する処理を行う。信号処理部21は、発振器22へ制御信号を出力する際に、制御信号に基づいて交流電流と同位相の交流信号を生成し、生成した交流信号と、受光信号から抽出した振動数fの交流成分とを比較する処理を実行すればよい。なお、発振器22が、ファラデーセル12へ供給する交流電流に同期した信号を信号処理部21へ入力し、信号処理部21は入力された信号に基づいて交流電流と同位相の交流信号を生成する処理を行ってもよい。
受光信号から抽出した振動数fの交流成分とファラデーセル12へ供給する交流電流とが同位相である場合は、図5(a)に示す場合を含むβ<αの場合であり、逆位相である場合は、図5(c)に示す場合を含むβ>αの場合である。信号処理部21は、βがαに近づく方向に検光子14の透過軸が回動するように中空モータ15を回動させるためのパルス信号をモータドライバ23へ出力する処理を行う。
また信号処理部21は、出力したパルス信号の数に基づいて計測した中空モータ15の回動角度の値に対する補正値を記憶している。補正値は、計測した中空モータ15の回動角度と真の回動角度とのズレを表す数値である。図6は、信号処理部21が記憶する補正値の例を示す特性図である。図中の横軸は、信号処理部21がモータドライバ23へ出力したパルス信号に基づいて計測される中空モータ15の回動角度の値を示し、検光子14を初期回動位置から回動させる中空モータ15の0°から360°までの回動角度が示されている。図中の縦軸は、各回動角度に対する補正値であり、計測される中空モータ15の回動角度に対する実際の回動角度からのズレを示している。補正値がプラスである場合は、実際の回動角度が計測される回動角度より大きい場合であり、補正値がマイナスである場合は、実際の回動角度が計測される回動角度より小さい場合である。信号処理部21は、計測可能な中空モータ15の回動角度の各値に対応付けて、図6に示す如き補正値を記憶してある。信号処理部21で計測可能な回動角度の値は、中空モータ15の分解能に応じた間隔の離散的な数値であるので、計測可能な回動角度の値の総数は有限であり、信号処理部21は、計測可能な回動角度の各値に対応付けて補正値を記憶している。個々の旋光計では、後述する較正方法により予め中空モータ15の較正を行っておき、信号処理部21は、較正によって得られた補正値を記憶している。
次に、本発明の旋光計で試料の旋光度を測定する方法を説明する。図7は、実施の形態1に係る旋光計で試料の旋光度を測定する処理の手順を示すフローチャートである。旋光計は、まず、サンプルセル13に試料溶液が注入される前の状態で、受光素子16が出力する受光信号の強度が最小になるような検光子14の初期回動位置を決定する(S101)。ステップS101では、信号処理部21は、発振器22に振動数fの交流電流を発生させ、パルス信号をモータドライバ23へ出力することにより、中空モータ15で検光子14を回動させ、検光子14の回動位置を、受光信号の強度が最小となる初期回動位置に定める。検光子14が初期回動位置にある状態では、偏光子11及び検光子14の透過軸が直交している。
信号処理部21は、検光子14の回動位置を初期回動位置に定めた中空モータ15の回動角度を回動角度0°に初期化する(S102)。なお、中空モータ15の回動位置の変動が充分小さい旋光計では、回動角度0°となる中空モータ12の回動位置を予め定めて信号処理部21で記憶しておくことにより、ステップS101及びS102の処理を省略してもよい。
ステップS102が終了した後、使用者によりサンプルセル13に試料溶液が注入される(S103)。なお、旋光計は、自動で試料溶液をサンプルセル13へ注入する機構、サンプルセル13を移動させる機構、又は直線偏光の光路を移動させる機構等を備えることにより、ステップS102の終了後に自動で直線偏光を試料溶液に入射させるようにする構成であってもよい。信号処理部21は、発振器22に振動数fの交流電流を発生させ、受光素子16が出力して増幅部24が増幅した受光信号を取得する(S104)。このとき、直線偏光は、ファラデーセル12により振動数fで偏光面が揺動振動しており、更に試料溶液を透過することによって、試料溶液の旋光度αだけ偏光面が回転している。信号処理部21は、次に、取得した受光信号に含まれる振動数fの交流成分とファラデーセル12へ供給する交流電流との位相を比較し(S105)、両者の位相が同位相であるか又は逆位相であるかを判定する(S106)。なお、同位相であると判定するためには、位相が完全に一致している必要はなく、例えば、位相のズレが−90°より大きく90°未満の場合は同位相と判定する等、ある程度の位相のズレを許容して判定を行えばよい。
受光信号に含まれる振動数fの交流成分とファラデーセル12へ供給する交流電流とが同位相である場合は、信号処理部21は、中空モータ15をプラス方向へ回動させるためのパルス信号をモータドライバ23へ出力することにより、中空モータ15にプラス方向へ検光子14を回動させる(S107)。受光信号に含まれる振動数fの交流成分とファラデーセル12へ供給する交流電流とが逆位相である場合は、信号処理部21は、中空モータ15をマイナス方向へ回動させるためのパルス信号をモータドライバ23へ出力することにより、中空モータ15にマイナス方向へ検光子14を回動させる(S108)。
ステップS107及びS108では、信号処理部21は、濾波後の受光信号の最大値を取得するか、濾波後の受光信号の時間平均を計算するか、又は受光信号に含まれる直流成分の強度を取得する等の方法により、受光信号の強度を取得し、取得した受光信号の強度に応じた速度で中空モータ15を回動させる。信号処理部21は、受光信号の強度が大であるほど中空モータ15の回動速度が大きくなり、受光信号の強度が最小となる場合に中空モータ15の回動速度がゼロとなるような、受光信号の強度と中空モータ15の回動速度との対応関係を予め記憶している。ステップS107及びS108では、信号処理部21は、受光信号の強度を繰り返し取得し、記憶している対応関係に基づき、中空モータ15の回動速度を受光信号の強度に応じた速度に調整する。最終的に、受光信号の強度が最小となった状態で中空モータ15の回動速度がゼロとなり、中空モータ15が停止する。中空モータ15が停止した状態は、振動中心にある偏光面と検光子14の透過軸とが直交し、検光子14を透過して受光素子16が受光する光量が最小となっており、図5(b)に示すβ=αの状態である。
中空モータ15が停止した状態で、信号処理部21は、中空モータ15を回動させるためにモータドライバ23へ出力したパスル信号の数に基づいて、回動角度0°の回動位置から停止するまで回動させた中空モータ15の回動角度を計測する(S109)。信号処理部21は、次に、計測した回動角度の値に対応付けて記憶してある補正値に基づいて、中空モータ15の回動角度を補正する(S110)。ステップS110では、信号処理部21は、計測した回動角度の値と、計測した回動角度の値に対応付けて記憶してある補正値とを用いて、回動角度の計測値に補正値を加算することにより中空モータ15の回動角度を補正する。中空モータ15の回動角度は、検光子14の回動角度βに一致し、また前述のように、この状態では回動角度βは旋光度αに一致する。信号処理部21は、次に、試料溶液の旋光度を、ステップS110で計算した補正後の回動角度と同一の値に決定する(S111)。信号処理部21は、決定した旋光度の値を出力部25に出力させ、処理を終了する。
次に、本発明の旋光計の較正方法を説明する。図8は、実施の形態1に係る旋光計の較正時の構成を示す構成図である。較正時には、旋光計では、サンプルセル13が備えられておらず、サンプルセル13の換わりに高精度中空モータ(高精度電動機)18及び1/2波長板(偏光方向変更素子)17が備えられる。また高精度中空モータ18は、中空モータ15よりも数倍以上高分解能・高精度で回動角度を決定することができる電動モータである。高精度中空モータ18は、中空の筒状に形成したモータであり、中空部分を光路が通る位置に配置される。1/2波長板17は、高精度中空モータ18の中空部分の開口部を塞ぐ位置で、高精度中空モータ18の回転子に固定されており、高精度中空モータ18の回動によって回動される構成となっている。1/2波長板17は、入射された直線偏光の偏光面を回転させることによって、直線偏光の偏光方向を変更する。1/2波長板17が角度φだけ回転した場合は、入射された直線偏光の偏光面は角度2φだけ回転する。検光子14には、1/2波長板17によって偏光面が回転された直線偏光が入射されることとなる。
また高精度中空モータ18には、モータドライバ27及びエンコーダ28が接続されており、モータドライバ27及びエンコーダ28は信号処理部21に接続される。モータドライバ27は、信号処理部21からのパルス信号に応じた駆動電流を高精度中空モータ18へ供給し、高精度中空モータ18は、駆動電流に応じて回動し、1/2波長板17を回動させる。エンコーダ28は、高精度中空モータ18の回動角度を測定し、測定結果を示す信号を信号処理部21へ入力する。
図9は、旋光計の較正を行う処理の手順を示すフローチャートである。旋光計は、まず、図8に示すように高精度中空モータ18が配置される前の状態で、受光素子16が出力する受光信号の強度が最小になるような検光子14の初期回動位置を決定する(S201)。信号処理部21は、次に、検光子14の回動位置を初期回動位置に定めた中空モータ15の回動角度を回動角度0°に初期化する(S202)。ステップS202が終了した後、図8に示す如く1/2波長板17及び高精度中空モータ18が光路上に配置されるように、1/2波長板17を備えた高精度中空モータ18が使用者により旋光計に装着される(S203)。この状態では、1/2波長板17によって直線偏光の偏光面が回転し、検光子14を通過する光量及び受光素子16での受光量が増加して、受光信号の強度が大きくなる。信号処理部21は、次に、発振器22に振動数fの交流電流を発生させ、パルス信号をモータドライバ27へ出力することにより、高精度中空モータ18に1/2波長板17を回動させ、受光素子16が出力する受光信号の強度が最小になるような1/2波長板17の初期回動位置を決定する(S204)。1/2波長板17が初期回動位置にある状態では、1/2波長板17によって回転された直線偏光の振動中心の偏光面は検光子14の透過軸に直交している。信号処理部21は、次に、1/2波長板17の回動位置を初期回動位置に定めた高精度中空モータ18の回動角度を回動角度0°に初期化する(S205)。
信号処理部21は、次に、パルス信号をモータドライバ27へ出力することにより、高精度中空モータ18を回動させ、停止させる(S206)。ステップS206では、信号処理部21は、例えば予め定められた角度だけ高精度中空モータ18を回動させればよい。高精度中空モータ18の回動によって1/2波長板17も回動し、1/2波長板17によって回転される直線偏光の偏光面の傾きは変化する。信号処理部21は、次に、エンコーダ28での測定結果を示す信号を受け付け、受け付けた信号に基づいて、回動角度0°の回動位置から停止するまで回動させた高精度中空モータ18の回動角度を計測する(S207)。信号処理部21は、次に、パルス信号をモータドライバ23へ出力することにより、中空モータ15で検光子14を回動させ、受光素子16が出力する受光信号の強度が最小になるような検光子14の回動位置を決定する(S208)。ステップS207では、信号処理部21は、検光子14を回動させながら受光信号の変化を順次測定し、例えば受光信号の強度が所定の閾値以下となる回動位置を求めることにより、受光信号の強度が最小となる検光子14の回動位置を決定する。また例えば、検光子14を回動させながら受光信号の極小値を与える検光子14の回動位置を求める処理を行ってもよい。この状態では、1/2波長板17によって回転された直線偏光の振動中心の偏光面は検光子14の透過軸に直交する。
信号処理部21は、次に、中空モータ15を回動させるためにモータドライバ23へ出力したパスル信号の数に基づいて、回動角度0°の回動位置から現在の回動位置まで回動させた中空モータ15の回動角度を計測する(S209)。ステップS207で計測した高精度中空モータ18の回動角度は、1/2波長板17が初期回動位置から回動した回動角度φに等しく、ステップS209で計測した中空モータ15の回動角度は、検光子14が初期回動位置から回動した回動角度に等しい。1/2波長板17が回動角度φだけ回動したことによって、検光子14へ入射される直線偏光の偏光面は、回動角度2φだけ回動している。従って、中空モータ15が検光子14を回動させた回動角度は、2φに等しく、ステップS209で計測した中空モータ15の回動角度の値は2φに等しいはずである。実際には、高精度中空モータ18の方が中空モータ15よりも高精度に回動角度を決定できるので、中空モータ15の回動角度の値と2φとは一致しないことが多く、2φの方が真の値に近い。
信号処理部21は、次に、ステップS207で計測した高精度中空モータ18の回動角度に2を乗じた値(2φ)から、ステップS209で計測した中空モータ15の回動角度の値を差し引くことにより、中空モータ15の回動角度を補正するための補正値を計算する(S210)。信号処理部21は、次に、計算した補正値を、中空モータ15の回動角度に対応付けて記憶する(S211)。信号処理部21は、次に、中空モータ15の回動角度の内、所定範囲内で計測可能な全ての回動角度に対する補正値を記憶したか否かを判定する(S212)。高精度中空モータ18は、中空モータ15よりも数倍以上高精度に回動角度を決定することができるので、中空モータ15の計測可能な全ての回動角度に対して、補正値を求めることができる。補正値を求める回動角度の範囲としては、−90°以上90°以下の範囲が少なくとも必要である。まだ補正値を記憶していない回動角度がある場合は(S212:NO)、信号処理部21は、処理をステップS206へ戻し、高精度中空モータ18を回動させる処理を再度行う。所定範囲内で計測可能な全ての回動角度に対する補正値を記憶している場合は(S212:YES)、信号処理部21は、処理を終了する。
較正の処理が終了した後は、1/2波長板17、高精度中空モータ18、モータドライバ27及びエンコーダ28は取り外され、サンプルセル13が備えられる。較正の処理は、旋光計の製造時に個々の旋光計について実行される。信号処理部21は、較正の処理によって得られた補正値を、不揮発性の記憶手段で記憶しておき、旋光度を測定する処理の際に利用する。なお、以上に説明した較正方法では、較正の処理の制御を信号処理部21で行う方法を示したが、本発明の較正方法は、これに限るものではなく、旋光計外の信号処理装置で較正の処理の制御を行い、信号処理装置で求めた補正値を信号処理部21に記憶させる方法であってもよい。
以上詳述した如く、本発明の旋光計は、中空モータ15で検光子14を回動させることにより、試料溶液の旋光度を測定する。ステッピングモータに加えてウオームホイール及びウオームギアを用いて検光子を回動させていた従来の旋光計に比べ、本発明の旋光計では、検光子14を回動させるために必要な機構の数が減少し、中空モータ15で検光子14を直接に回動させる。本発明の旋光計では、旋光度の測定精度がステッピングモータ、ウオームホイール及びウオームギアの加工精度並びに組立精度に依存する従来の旋光計に比べ、旋光度の測定精度は中空モータ15の位置決め精度のみに依存するので、測定精度を悪化させる要因が少なく、高精度で旋光度を測定することができる。
また本発明の旋光計は、中空モータ15よりも高分解能・高精度で回動角度を決定することができる高精度中空モータ18を用いて中空モータ15の回動角度を較正し、較正結果を記憶しておき、旋光度の測定時に中空モータ15の回動角度を補正する。従来の標準溶液を用いた較正方法に比べて、複数の標準試料溶液を作成する手間が不必要となるので、旋光計の較正がより容易となる。また標準試料溶液を利用しないので、標準試料溶液の旋光度の誤差による影響を受けることがなく、より正確な較正を行うことができる。更に、本発明の較正方法では、中空モータ15の測定可能な個々の回動角度に対して、高精度中空モータ18の回動角度による較正を行うので、測定可能な全ての旋光度に対して実測で較正を行うこととなる。実測では離散的ないくつかの旋光度の値に対してのみ較正が可能であった従来の較正方法に比べ、正確な較正が可能となり、旋光度の測定精度が向上する。また高精度中空モータ18を搭載するのではなく、較正時に利用するだけであるので、旋光計のコストを抑制することができる。
(実施の形態2)
図10は、実施の形態2に係る本発明の旋光計の構成を示す構成図である。本実施の形態では、実施の形態1の構成からファラデーセル及び発振器を除去した構成となっている。偏光子11により発生した直線偏光は、サンプルセル13及び検光子14を透過して受光素子16に受光される。本実施の形態では、信号処理部21は、中空モータ15に、振動数f及び振動角幅δで検光子14を揺動振動させるための制御信号をモータドライバ23へ出力する。モータドライバ23は、制御信号に従った駆動電流を中空モータ15へ供給し、中空モータ15は、回転子を揺動振動させる。回転子に固定された検光子14は、中空モータ15の揺動振動に伴って揺動振動し、検光子14の透過軸は、振動数f及び振動角幅δで揺動振動する。従って、検光子14へ入射される直線偏光の偏光面と検光子14の透過軸に直交する方向とがなす角度は、振動数fで変動し、受光素子16での受光量は振動数fで振動し、受光信号は交流信号となる。
図10は、実施の形態2に係る本発明の旋光計の構成を示す構成図である。本実施の形態では、実施の形態1の構成からファラデーセル及び発振器を除去した構成となっている。偏光子11により発生した直線偏光は、サンプルセル13及び検光子14を透過して受光素子16に受光される。本実施の形態では、信号処理部21は、中空モータ15に、振動数f及び振動角幅δで検光子14を揺動振動させるための制御信号をモータドライバ23へ出力する。モータドライバ23は、制御信号に従った駆動電流を中空モータ15へ供給し、中空モータ15は、回転子を揺動振動させる。回転子に固定された検光子14は、中空モータ15の揺動振動に伴って揺動振動し、検光子14の透過軸は、振動数f及び振動角幅δで揺動振動する。従って、検光子14へ入射される直線偏光の偏光面と検光子14の透過軸に直交する方向とがなす角度は、振動数fで変動し、受光素子16での受光量は振動数fで振動し、受光信号は交流信号となる。
本実施の形態における振動角幅δは、従来どおり約±4°とする。従来のファラデーセルによる振動数fは約40Hzであるので、同程度の振動数を確保するために、振動数40Hz及び振動角幅±4°の揺動振動を行うためには、中空モータ15は、回転速度が約220rpm以上であればよい。
旋光度の測定開始前の段階では、検光子14の振動中心は、偏光子11の透過軸と振動中心にある検光子14の透過軸とが直交する位置に定められる。更に信号処理部21は、中空モータ15に、揺動振動を行いながら検光子14を回動させるためのパルス信号をモータドライバ23へ出力する。モータドライバ23は、パルス信号に従った駆動電流を中空モータ15へ供給し、中空モータ15は、揺動振動を行いながら検光子14を回動させる。検光子14は、揺動振動を行いながら回動し、振動中心の位置の検光子14の透過軸が回動する。
図11は、回動した検光子14の透過軸と直線偏光の偏光面との関係を示す概念図である。図中には、振動中心にある検光子14の透過軸に直交する線を破線で示している。検光子14の透過軸が振動角幅δで揺動振動しており、角度90°の方向と振動中心にある検光子14の透過軸とのなす角が回動角度βである。また偏光面と角度0°の方向とがなす角度が試料溶液の旋光度αである。検光子14へ入射された直線偏光は、揺動振動する検光子14の透過軸に平行な直線偏光成分のみが検光子14を透過する。検光子14を透過した光は、受光素子16で受光される。
検光子14の透過軸に直交する方向と直線偏光の偏光面とがなす角度θに対する受光素子16での受光量は、実施の形態1と同様に、図4に示すように変化する。即ち、図4に示すように、受光量は、−90°<θ<0°で単純減少し、θ=0°で極小値0となり、0°<θ<90°で単純増加する。検光子14の透過軸が振動数fで揺動振動しているので、角度θは振動数fで変動し、受光素子16での受光量も周期的に変動し、受光素子16での受光量を電圧で示す受光信号は、電圧が周期的に変動する交流信号となる。
中空モータ15で検光子14を揺動振動させるために中空モータ15へ供給する駆動電流である交流電流と受光信号との関係は、図5で示した実施の形態1と同様である。なお、検光子14を揺動振動させるためにモータドライバ23から中空モータ15へ供給する交流電流の内、検光子14の透過軸に直交する方向と直線偏光の偏光面とがなす角度θを大きくする方向に検光子15を動かす電流をプラスの電流とする。β<α−δの状態では、角度θは正であり、図5(a)に示すように、受光信号は、交流電流の振動数fとほぼ同一の振動数で振動し、しかも交流電流と同位相で振動する交流信号となる。またβ=αの状態では、角度θは0°を中心に振動し、図5(b)に示すように、受光信号は、交流電流の振動数fの2倍の振動数2fで振動する交流信号となり、受光信号の強度は最小となる。またβ>α+δの状態では、角度θは負であり、図5(c)に示すように、受光信号は、交流電流の振動数fとほぼ同一の振動数で振動し、しかも駆動電流と逆位相で振動する交流信号となる。このように、信号処理部21へ入力される受光信号は、実施の形態1と同様に、直流成分、振動数fの交流成分、及び振動数2fの交流成分が重なった交流信号となる。
信号処理部21は、受光信号から、振動数fの交流成分を抽出し、抽出した振動数fの交流成分と検光子14を揺動振動させるために中空モータ15へ供給する駆動電流である交流電流との位相を比較する処理を行う。信号処理部21は、検光子14を揺動振動させるための制御信号をモータドライバ23へ出力する際に、制御信号に基づいて駆動電流と同期した交流信号を生成し、生成した交流信号と、受光信号から抽出した振動数fの交流成分とを比較する処理を実行すればよい。なお、モータドライバ23が、検光子14を揺動振動させるために中空モータ15へ供給する駆動電流に同期した信号を信号処理部21へ入力し、信号処理部21は入力された信号に基づいて駆動電流に同期した交流信号を生成する処理を行ってもよい。
受光信号から抽出した振動数fの交流成分と検光子14を揺動振動させるために中空モータ15へ供給する駆動電流である交流電流とが逆位相である場合は、図5(a)に示す場合を含むβ<αの場合であり、同位相である場合は、図5(c)に示す場合を含むβ>αの場合である。信号処理部21は、βがαに近づく方向に検光子14の透過軸の振動中心が回動するように中空モータ15を回動させるためのパルス信号をモータドライバ23へ出力する処理を行う。また旋光計では、実施の形態1と同様に、後述する較正方法により予め中空モータ15の較正を行っておき、信号処理部21は、計測可能な中空モータ15の回動角度の夫々に対応付けて、較正によって得られた補正値を記憶している。
以上の構成でなる本実施の形態に係る旋光計は、実施の形態1と同様に、図7のフローチャートに示す処理と同様の処理に従って試料溶液の旋光度を測定する。旋光計は、サンプルセル13に試料溶液が注入される前の状態で、受光素子16が出力する受光信号の強度が最小になるような検光子14の振動中心の初期回動位置を決定し(S101)、信号処理部21は、振動中心に対応する中空モータ15の回動角度を回動角度0°に初期化する(S102)。ステップS102が終了した後、使用者によりサンプルセル13に試料溶液が注入される(S103)。信号処理部21は、モータドライバ23へ制御信号を出力してモータドライバ23に振動数fの駆動電流を出力させることにより、中空モータ15で検光子14を揺動振動させ、受光素子16が出力して増幅部24が増幅した受光信号を取得する(S104)。このとき、直線偏光の偏光面は試料溶液の旋光度αだけ偏光面が回転し、また検光子14の透過軸は振動数fで揺動振動しており、検光子14の透過軸と偏光面とのなす角度は振動数fで変動し、検光子14の透過軸に平行な直線偏光成分は変動し、受光素子16の受光量を示す受光信号は交流信号となる。信号処理部21は、次に、取得した受光信号に含まれる振動数fの交流成分と検光子14を揺動振動させるために中空モータ15へ供給する駆動電流である交流電流との位相を比較し(S105)、両者の位相が同位相であるか又は逆位相であるかを判定する(S106)。
受光信号に含まれる振動数fの交流成分と交流電流とが同位相である場合は、信号処理部21は、中空モータ15でプラス方向へ検光子14を回動させる(S107)。受光信号に含まれる振動数fの交流成分と交流電流とが逆位相である場合は、信号処理部21は、中空モータ15でマイナス方向へ検光子14を回動させる(S108)。ステップS107及びS108では、信号処理部21は、揺動振動をさせながら、受光信号の強度に応じた速度で中空モータ15を回動させ、受光信号の強度が最小となった状態で中空モータ15の回動が終了する。揺動振動をしながら中空モータ15の回動が終了した状態は、直線偏光の偏光面と振動中心にある検光子14の透過軸とが直交し、実施の形態1と同様に、図5(b)に示すβ=αの状態である。
中空モータ15の回動が終了した状態で、信号処理部21は、中空モータ15で揺動振動を行いながら回転子の振動中心を回動角度0°の回動位置から回動を終了するまで回動させた中空モータ15の回動角度を計測する(S109)。信号処理部21は、次に、計測した回動角度の値に対応付けて記憶してある補正値に基づいて、中空モータ15の回動角度を補正し(S110)、試料溶液の旋光度を、計算した補正後の回動角度と同一の値に決定する(S111)。信号処理部21は、決定した旋光度の値を出力部25に出力させ、処理を終了する。
次に、本実施の形態に係る旋光計の較正方法を説明する。図12は、実施の形態2に係る旋光計の較正時の構成を示す構成図である。較正時の旋光計は、実施の形態1と同様に、サンプルセル13が備えられておらず、サンプルセル13の換わりに高精度中空モータ18及び1/2波長板17が備えられ、更にモータドライバ27及びエンコーダ28が備えられる。高精度中空モータ18、1/2波長板17、モータドライバ27及びエンコーダ28の構成は実施の形態1と同様である。
本実施の形態においては、実施の形態1と同様に、図9のフローチャートに示す処理と同様の処理に従って旋光計の較正を行う。旋光計は、図12に示すように高精度中空モータ18が配置される前の状態で、検光子14を中空モータ15で揺動振動させながら、受光素子16が出力する受光信号の強度が最小になるような検光子14の初期回動位置を決定する(S201)。信号処理部21は、中空モータ15の回動角度を回動角度0°に初期化し(S202)、次に、図12に示す如く1/2波長板17及び高精度中空モータ18が光路上に配置されるように、1/2波長板17を備えた高精度中空モータ18が使用者により旋光計に装着される(S203)。信号処理部21は、次に、検光子14を中空モータ15で揺動振動させながら、高精度中空モータ18で1/2波長板17を回動させ、受光素子16が出力する受光信号の強度が最小になるような1/2波長板17の初期回動位置を決定する(S204)。1/2波長板17が初期回動位置にある状態では、1/2波長板17によって回転された直線偏光の偏光面は、振動中心にある検光子14の透過軸に直交している。信号処理部21は、次に、高精度中空モータ18の回動角度を回動角度0°に初期化する(S205)。
信号処理部21は、次に、高精度中空モータ18を回動させて停止させ(S206)、エンコーダ28での測定結果に基づいて、回動角度0°の回動位置から停止するまで回動させた高精度中空モータ18の回動角度を計測する(S207)。信号処理部21は、次に、パルス信号をモータドライバ23へ出力することにより、揺動振動をさせながら中空モータ15で検光子14を回動させ、受光素子16が出力する受光信号の強度が最小になるような検光子14の回動位置を決定する(S208)。この状態では、1/2波長板17によって回転された直線偏光の偏光面は、振動中心にある検光子14の透過軸に直交する。信号処理部21は、次に、中空モータ15で揺動振動を行いながら回転子の振動中心を回動角度0°の回動位置から回動させた中空モータ15の回動角度を計測する(S209)。信号処理部21は、次に、高精度中空モータ18の回動角度に2を乗じた値から、中空モータ15の回動角度の値を差し引くことにより、中空モータ15の回動角度を補正するための補正値を計算し(S210)、計算した補正値を、中空モータ15の回動角度に対応付けて記憶する(S211)。信号処理部21は、次に、計測可能な全ての中空モータ15の回動角度に対する補正値を記憶したか否かを判定し(S212)、まだ補正値を記憶していない回動角度がある場合は(S212:NO)、処理をステップS206へ戻す。所定範囲内で計測可能な全ての回動角度に対する補正値を記憶している場合は(S212:YES)、信号処理部21は、処理を終了する。
実施の形態1と同様に、較正の処理が終了した後は、1/2波長板17、高精度中空モータ18、モータドライバ27及びエンコーダ28は取り外され、サンプルセル13が備えられる。較正の処理は、旋光計の製造時に個々の旋光計について実行され、信号処理部21は、較正の処理によって得られた補正値を、不揮発性の記憶手段で記憶しておき、旋光度を測定する処理の際に利用する。
以上詳述した如く、本実施の形態に係る旋光計は、中空モータ15で検光子14を回動させ、また直線偏光の偏光面を揺動振動させる代わりに中空モータ15で検光子14を揺動振動させることにより、試料溶液の旋光度を測定する。ファラデーセルを用いて直線偏光の偏光面を揺動振動させる従来の旋光計及び実施の形態1に係る旋光計と同様に、中空モータ15で検光子14を揺動振動させることにより、検光子14の透過軸と偏光面とのなす角度が振動し、検光子14の透過軸に平行な直線偏光成分の光量が振動し、振動する光量に基づいて旋光度を測定することができる。
従来の旋光計では、ファラデーセルによる偏光面の振動角幅は±4°程度が限度であったのに比べて、本実施の形態においては、検光子14の振動角幅をそれ以上にすることができ、中空モータ15をより高速に設計すれば振動角幅をより大きくすることも可能である。検光子14の振動角幅を大きくすることによって、検光子14を透過する直線偏光成分の光量の変動量を大きくすることができ、受光素子16が出力する受光信号の振幅を大きくすることができる。受光信号の振幅が大きくなることにより、検光子14を回動させた場合に受光信号が変化する変化量が大きくなるので、検光子14の小さな角度の回動に応じた光量の変化を検出することが可能となる。従って、受光信号の強度が最小になるように検光子14の回動角度を正確に定めることができ、実施の形態1に比べて旋光度の測定精度をより向上させることが可能となる。
また本実施の形態においては、実施の形態1に係る旋光計に比べて、ファラデーセルが省かれているので、必要な光路の長さが短くなり、旋光計をより小型化することが可能となる。また本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、高精度中空モータ18を用いて中空モータ15の回動角度を較正することにより、正確な較正が可能となり、旋光度の測定精度が向上する。
なお、以上の実施の形態1及び2においては、回転の向き、電流の向き及び信号の向きについて、便宜上特定の方向をプラス方向としたが、どの方向をプラス方向とするのかは任意に定めればよい。プラス方向が本実施例と異なる形態であっても、受光信号と電流との位相の比較結果に応じて、検光子14の回動角度βが旋光度αに近づく方向に検光子14を回動させる処理を行うことにより、本発明は実現可能である。
また実施の形態1及び2においては、中空モータ15の回動角度の値を補正するための数値として、計測した中空モータ15の回動角度と真の回動角度とのズレを表す補正値を使用する形態を示したが、本発明の形態は、これに限るものではない。例えば、本発明は、中空モータ15の回動角度の値を補正するための数値として、回動角度の真値を回動角度の計測値で除した補正係数を使用する形態であってもよい。この形態の場合は、信号処理部21は、較正の処理において、高精度中空モータ18の回動角度に2を乗じた値を空モータ15の回動角度の計測値で除した補正係数を計算し、計算した補正係数を回動角度の計測値に対応付けて記憶する。中空モータ15の回動角度の計測時には、信号処理部21は、計測した回動角度の値に対して、当該値に対応付けて記憶してある補正係数を乗じることにより、回動角度の値を補正する処理を行う。また例えば、本発明は、中空モータ15の回動角度の値を補正するための数値として、中空モータ15の回動角度の真値を使用する形態であってもよい。この形態の場合は、信号処理部21は、較正の処理において、高精度中空モータ18の回動角度に2を乗じた値を中空モータ15の回動角度の真値であると決定し、中空モータ15の回動角度の計測値に対応付けて真値を記憶する。中空モータ15の回動角度の計測時には、信号処理部21は、計測した回動角度の値を、当該値に対応付けて記憶してある真値に置き換えることにより、回動角度の値を補正する処理を行う。
また実施の形態1及び2においては、信号処理部21が出力したパルス信号の数に基づいて中空モータ15の回動角度を計測する形態を示したが、本発明は、これに限るものではなく、中空モータ15の回動角度を計測するエンコーダを更に備えた形態であってもよい。また実施の形態1及び2においては、589nmの波長の光を用いて旋光度を測定する形態を示したが、本発明は、これに限るものではなく、その他の波長の光を用いる形態であってもよく、また複数の波長の光で夫々に旋光度を測定することができる形態であってもよい。また実施の形態1及び2においては、光源31及び偏光子11を用いて直線偏光を発生させる形態を示したが、本発明は、これに限るものではなく、直線偏光のレーザ光を発光するレーザ光源を用いる等、その他の方法で直線偏光を発生させる形態であってもよい。
11 偏光子
12 ファラデーセル
13 サンプルセル
14 検光子
15 中空モータ(電動機)
16 受光素子
17 1/2波長板(偏光方向変更素子)
18 高精度中空モータ(高精度電動機)
21 信号処理部
22 発振器
23、27 モータドライバ
28 エンコーダ
31 光源
12 ファラデーセル
13 サンプルセル
14 検光子
15 中空モータ(電動機)
16 受光素子
17 1/2波長板(偏光方向変更素子)
18 高精度中空モータ(高精度電動機)
21 信号処理部
22 発振器
23、27 モータドライバ
28 エンコーダ
31 光源
Claims (4)
- 直線偏光を発生させる手段と、該手段が発生させた直線偏光に試料を透過させる手段と、直線偏光が入射され、特定の透過軸に平行な直線偏光成分を透過させる検光子と、前記透過軸の方向を変更するために前記検光子を回動させる回動手段と、前記検光子を透過した光を受光する受光手段とを備え、試料の旋光度を測定する旋光計において、
前記受光手段が受光した受光量が試料のない状態で最小になる前記検光子の回動位置から、試料を通過した直線偏光が前記検光子に入射される状態で前記受光量が最小になる前記検光子の回動位置まで前記回動手段が前記検光子を回動させた回動角度に基づいて、試料の旋光度を測定する手段を備え、
前記回動手段は、
中空の筒状に形成してある電動機を有し、
該電動機の中空部分を光路が通る位置に前記電動機を配置してあり、
前記検光子を前記電動機の回転子に固定してあること
を特徴とする旋光計。 - 前記回動手段は、前記電動機により前記検光子に所定の振動数で揺動振動させる手段を有しており、
前記振動数に応じた振動数で変動する前記受光手段での受光量を小さくするように、前記回動手段に前記検光子を回動させる手段を備えること
を特徴とする請求項1に記載の旋光計。 - 前記電動機の回動角度を、分解能に応じた間隔の離散的な数値として計測する手段と、
該手段が計測可能な夫々の回動角度の値に対応付けて、当該回動角度の値を補正するための数値を記憶してある手段と、
該手段で記憶している数値に基づいて、計測した回動角度を補正する手段と
を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の旋光計。 - 請求項1乃至3のいずれか一つに記載の旋光計を較正する方法であって、
中空の筒状に形成してあり、前記電動機よりも高精度に回動角度を定めることができる高精度電動機と、該高精度電動機の回転子に固定してあり、前記高精度電動機により回動された回動角度に応じた角度だけ直線偏光の偏光方向を変更する偏光方向変更素子とを、前記検光子に入射される前の直線偏光が前記高精度電動機の中空部分及び前記偏光方向変更素子を通過する位置に配置し、
前記高精度電動機により前記偏光方向変更素子を回動させると共に、前記電動機で前記検光子を回動させ、前記受光手段での受光量を最小にする前記高精度電動機の回動角度及び前記電動機の回動角度を計測し、
計測した前記高精度電動機の回動角度に基づき、計測した前記電動機の回動角度の値を補正するための数値を求め、
求めた数値を、計測した前記電動機による回動角度の値に対応付けて前記旋光計で記憶すること
を特徴とする旋光計の較正方法。
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