JP2010116314A - 複層ガラスパネル - Google Patents

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Abstract

【課題】高い温度でも使用が可能であり、かつ使用環境の温度変化により複層ガラスが凹凸状に変形するのを防止し、これにより、高温度でも寸法などの制約を受けず使用が可能な複層ガラスパネルを提供する。
【解決手段】複層ガラスパネルの中空層と外気を連結する通気装置8を有する複層ガラスにおいて、通気装置8がスペーサに連結されたある範囲の通気抵抗を有する中空管構造12であり、スペーサの内部には吸放湿材を充填することにより該ガラス1の加熱時に吸放湿材の吸湿性能を再生させることを可能ならしめ、かつ該ガラス周辺部のスペーサ2とガラスの間の接着シールをシリコーン系あるいはアクリル系の接着シール材で実施してなる複層ガラスパネル構造とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、高温度での使用が可能な複層ガラスパネルに関する。
近年、地球環境改善のため省エネルギーが強く叫ばれ、種々の用途で断熱性に優れた複層ガラスパネルが積極的に取り入れられるようになってきた。例えば、住宅・ビルの窓ガラス、電車など車両の窓ガラス、加熱型の調理用オーブン、産業用乾燥機でのドアガラス、コンビニエンスストアなどで見られる冷蔵冷凍ショウケースのガラス扉など多くの用途で欠くことのできない部材となっている。
複層ガラスパネルは、2枚あるいは3枚以上の複数のガラスの間の周囲部分にスペーサを取り付けることにより、それぞれのガラスを一定の間隔で対峙させ、かつ当該ガラスの周囲を封着剤で密封することによって中空層を形成し、更に、当該中空層に乾燥空気や熱伝導率の低いガスを充填してなる、断熱性に優れたガラスパネルである。
このようなガラスの断熱性の程度は、その熱貫流率で比較することができる。例えば、表1aに示すようにフロートガラスやハードコートローエミッシブガラスのガラスの組み合わせや中空層厚みを変えることで得られる代表的な複層ガラスで、一枚ガラスを置換することにより、ガラス部の熱損失は表1の通り40%〜70%削減される。
図4に従来から用いられている複層ガラスパネルの断面図を示す。一対のガラス1はスペーサ2により一定の間隔(一般的には6〜12ミリメートル)、隔てられて保持され、その中空層3には空気もしくは断熱性を高めるためにアルゴン、クリプトンなどのガスが充填されている。複層ガラスでは、この中空層3の中の水分濃度をいかに低く抑えるかが重要であり、この濃度が高いと中空層の中の気体の露点が上昇し、比較的高い外気温度でも中空層3に面したガラスの表面に結露が発生し、ガラスとしての透視性を著しく損ない実用に供さなくなる。
この中空層3への水分侵入を防ぐ目的で、ガラス1とスペーサ2の間は水分の非透過性の高い一次シール用接着材4、例えばポリイソブチレンで接着され、中空層3は密封構造となっている。更には、ガラス1と接着材4の界面や接着材4を通して極めて微量の外気中水分が複層ガラスの中空層3へ侵入したとしても、これらの水分はスペーサ2の中空層3側に設けた小さな多数の通気孔5を通し、その中に充填されているモレキュラシーブやシリカゲルなどの吸湿材6により吸収されるので、中空層3の水分濃度は極限まで低濃度に維持されている。
また、一対のガラス1が引き離され一次シール用接着材4の接着・水分非透過といった機能が損なわれないよう、一対のガラス1は接着力や構造的強度にすぐれた二次シール用接着剤7、例えばポリサルファイドやシリコーンといった弾性シール剤、でスペーサ2の外側周囲部がシールされている。このため、風圧や振動などの外力が複層ガラスに加わっても、中空層3の密封構造は長時間にわたり維持され、かつ水分濃度も低く維持され、長い時間にわたり低温度でも中空層3内で結露が発生することなく断熱性が維持される。
しかしながら、複層ガラスは密閉構造であることから、使用環境の温度・気圧により、中空層の空気層あるいはガス層に膨張あるいは収縮などの体積変化が生じるため、様々な制約を設けて使うことが余儀なくされてきた。
例えば、平地の常圧下で製造した複層ガラスを高い山地で使用する場合、山地の気圧が低い分、中空層の空気が膨張しガラスが膨れ常に大きく変形し見苦しい反射映像の外観をもたらすほか、場合によっては変形でガラスの破損さえ生じることが少なくなかった。
このため、複層ガラスは1000m以上の山地では使用を避けることが行われてきた。
平地においても、日射の有無でガラスの温度が著しく変動し、都度、中空層の空気が膨張収縮を繰り返すことでガラスが凹凸状に変形を繰り返し、反射映像の大きな乱れをもたらしていたほか、使用する温度環境によってはガラスが熱割れをおこすため、その環境に合わせてガラスの種類・大きさなどを適正に選択しつつ使用するのが常であった。
また、産業用の高温装置・加熱型調理用機器などの扉に複層ガラスを用いた場合、その中空層の気体は加熱膨張し中空層の内部圧力を大きく高め、複層ガラスのシール材を外側に押し出し複層ガラスの密封構造を破壊するほか、ガラスにも大きな曲げ変形をもたらし破損にいたることも少なくなかった。このため、断熱性の良いガラスを使用するにしても、多くの場合ガラスの周囲部のシールを施さない単なる二重のガラスが用いられ、極く稀な例として複層ガラスが使用温度を150℃を上限とし、かつガラスの縦横寸法も15cm程度以下と制限し使用されることもあった。
このような複層ガラスの使用環境の温度の変化による中空層の空気あるいは気体の膨張・収縮など体積変化が、複層ガラスのガラスを曲げ変形させ、引いては封着剤の弱体化や密封性を低下させ複層ガラスの寿命を大きく損なうとの問題に対しては、これまで多くの改良技術が提案されてきた。
例えば下記特許文献1では、スペーサ形状・材質の厚み・封着剤の充填部囲などの改良でガラスの曲げ変形時の封着剤の弱体化を緩和するとの技術が開示されている。また、下記特許文献2では、封着剤厚みを厚くすることで温度変化などによるガラス変形が封着剤に及ぼす影響度合いを軽減することが提案され、更に下記特許文献3では、ガラスの曲げ変形に追随しやすいスペーサ形状・構造を考案し、ガラス変形時の封着剤の変化量を抑制する技術も開示されている。
また、下記特許文献4では、複層ガラスの中空層の気体の膨張・収縮に合わせ、内容積が膨張収縮する中空構造を有する防湿部材を、複層ガラスのスペーサに付設して、加温冷却時のガラスの曲げ変形を防止するとの技術が開示されている。
更には、特許文献5では、複層ガラスの中空層と外気を導通する構造として、外気の温度・圧力の変化が中空層内の圧力変化をもたらさないよう、複層ガラスのスペーサの外側にブリーザ管なる中空状の通気管を付設し、その通気管の中に吸湿材を充填する技術が開示されている。
同様に、特許文献6では、複層ガラスの中空層と外気を直接つなぐ中空通路を設け、この通路の中に吸湿性の通気性材料を取り付ける技術も開示されている。
また、特許文献7では、複層ガラスの周囲に挟持されているスペーサの一部あるいは全部を中空層と外気を導通させる中空管で置換し、その中空管の中に乾燥剤を充填する技術が開示されている。
また、特許文献8では、複層ガラスの中空層と外気を導通させるため、スペーサの外側に細長い連通管を付設し、外気中の水分が中空層に浸入する際の抵抗部とする技術が開示されている。
特表昭61−500737号公報 特開平6−1185267号公報 特表2003−509324号公報 特開2007−277052号公報 特開昭59−096380号公報 特公昭63−054864号公報 特開平2−061282号公報 実全昭62−105288号公報
しかしながら、特許文献1〜特許文献3の技術は、ガラス変形がもたらす一次シール用接着材の変形歪を軽減し、結果として接着材の弱体化・密封性の低下を抑制することに限定され、従来の複層ガラスを高い温度域での使用する際に見られた多くの制約を緩和あるいは除去するには殆ど効果はなかった。
特許文献4は、複層ガラスの密封構造を維持しつつ中空層の体積変化の弊害を抑制する一つの技術ではあるが、主に建築用の複層ガラスを意図して考案されたもので高温域への適用を示唆する具体的な技術の開示はない。
その上、実用に際し構造的に複雑で製造する上で非効率的であり経済的に問題があるほか、加熱機器などに用いられる場合の中空層内空気の膨張収縮によるが体積変化の中空層の0.5〜1.0倍にもなることを考慮すると現実的な解決手段とは思われない。
特許文献5〜特許文献8は、複層ガラスと外気が導通されている構造で、原理的には中空層内圧力に大きな変化が生じることは避けられ、建築用など常温度域での使用に限れば複層ガラスの密封構造が抱える問題の一部を解消できるが、実用に際しては様々な問題を有しているほか、本発明の目的である高温度域への適用するための具体的な技術の開示は全くない。
例えば、特許文献5は、ブリーザ管を細長い管状とすることで外気中の水分の中空層内への侵入を抑制し、それでも侵入する水分はそのブリーザ管の中に充填する吸湿材で吸収するとしている。しかしながら、細長いブリーザ管内に例え細かく粉砕したとはいえ微粒状の吸湿材を充填するのは至難の作業であり、とても現実的な生産手法とはなり得ない。更には、ブリーザ管を通しての水分の侵入は永続的であり限られた量の吸湿材での吸収では中空層内空気の露点維持は一時的な効果しか望めない。
この点に関し当該文献では、中空層内の乾燥空気がブリーザ管を通って外気中に放出される際にブリーザ管内の吸湿材から水分を奪い、その吸湿性能を再生させると述べているが、乾燥空気が吸湿材中の水分を奪う速度は極めて緩慢であり、日々の気温変化による中空層内の空気の膨張に伴い外気中に排出される乾燥空気で吸湿材の吸湿性能が再生されるとは考えがたい。ましてや、本発明の目的である加熱器機などに用いた時のように中空層内の空気の体積変化が急激に行われるような場合では、そのような再生過程は殆ど期待できず、中空層内の空気の露点維持に直ちに問題をきたす。
特許文献6に至っては、中空層内空気の露点を長期に維持するとの積極的な技術開示もなければ、高温度域への適用を示唆する技術開示もない。
特許文献7においても中空層内空気の露点維持が、中空層と外気をつなぐ中空通路内の経路を長くし、かつ中空通路内に充填してある吸湿材で水分を吸収することで、中空層内に侵入する水分を抑制するとの技術に留まり、吸湿材の吸湿性能の再生は付設した加熱手段によるとしている。即ち、複層ガラスの露点維持には、ガラスに付設した加熱手段が必須の技術であり、複層ガラスの生産工程の非効率さ・不経済さや、建物・装置への取り付けに際し加熱用配線など作業の煩雑さ、可動部として用いられる際の加熱用配線の切断トラブルなど、現実的な技術とはなりえない多くの問題を含んでいる。
更に、特許文献8についても、建築用の複層ガラスを目的に考案されたもので、中空層と外気を連通させるため、細長い管状の連通管を複層ガラスのスペーサの外側に取り付け、スペーサ内の吸湿性能が劣化した場合は、その吸湿材を取り替えられる構造が開示されている。原理的に長期的に複層ガラスの露点維持は可能ではあるが、シール材で窓枠に固着取り付けされた複層ガラスを窓枠から取り外し、吸湿材を入れかえるのは現実的手段としては考えがたい。また、仮に加熱機器の扉に応用した場合においても同様で、とても実現性のある技術とは言い難い。
本発明は、かかる従来の複層ガラスの問題を鑑みなされたもので、高い温度で使用が可能な複層ガラスの提供を目的としている。より詳しくは、当該複層ガラスの使用時のガラスエッジの温度が40℃以上である用途、典型的には調理用加熱機器・産業用乾燥機あるいは反応装置などの高温装置に取り付けられた扉窓や覗き窓用の複層ガラスにおいて、使用環境の温度変化あるいは圧力変化があっても広い高温度域にわたって何らガラス寸法に制約を設ける必要がなく、また使用中にガラス面に発生する結露をも防止し、長期的に使用が可能な複層ガラスパネルを提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明では、中空層と外気を導通させる通気装置を有する構造の複層ガラスを用い、高温度域においても中空層の空気あるいは気体の膨張収縮によるガラスの内外への曲げ変形がなく、中空層内の空気を長期的かつ安定的に低露点に維持する方法を提供する。
まず、本発明での第一の特徴構造の一つは、通気装置を中空管構造とし、その一端は複層ガラスのスペーサと連結し、他端は外気に開放状態にして、複層ガラスの中空層の空気がスペーサ内部を経由して外気側に自由に行き来できるような構成としている点にある。この通気装置により、高温で中空層の空気が膨張する場合は、膨張により増加した気体は通気装置を通して外気側に放出され、また低温時に中空層の気体が収縮する際には通気装置を通して空気が外気より取り入れられ、ガラスに曲げ変形を引き起こしていた中空層の内部圧力の上昇は抑制される。
本発明の第一の特徴構造の二つ目は、通気構造が連結されているスペーサの内部に吸放湿材を充填することにある。この吸放湿材は、ガラスが非加熱すなわち不使用状態の時に通気用中空管を通して外気中水分が拡散透過し中空層内の空気の露点を高めるのを抑制するのに有効である。
本発明の第一の特徴構造の三つ目は、ガラスとスペーサの間の接着シールをシリコーン系・変性シリコーン系またはアクリル系の弾性シール材とすることにより高温度域で使用可能な複層ガラスが実現できることを見出した点にある。
従来の複層ガラスでは図4に代表例を示すように、一次シール用接着材4としてポリイソブチレンなど透過水分に対する遮断性能の高いシール材で中空層への水分透過を抑制し、二次シール用接着材7、例えばポリサルファイドやシリコーン、で2枚のガラスが引き離されないよう結合強度を維持し接着剤4の水分遮断性を長期的に維持できるような、いわゆる二重シール方法を用いるのが殆どであった。
あるいは数少ない例として、接着剤4と接着剤7をいずれも変性ポリイソブチレンとする一重シール方法が用いられることもあった。
しかしながら、これらポリイソブチレンの優れた水分透過抑制効果をベースとした従来の複層ガラス構造では、ポリイソブチレンが60℃以上で軟化する性質があるため、例え通気構造を取り入れ加熱冷却に伴う中空層内の圧力変化を抑制できたとしても、加熱機器などで使用した場合は軟化したポリイソブチレンが中空層内のガラス面にはみ出し複層ガラスの外観を大きく損なったりするなど、高温度域で使用可能な複層ガラスにはなり得なかった。
一方、シリコーン系・変性シリコーン系の接着シール材はポリイソブチレン系接着シール材に比べ、水蒸気透過度が2000〜7000倍にも当たり、接着シール材の中でも最も水分透過性の高い部類に属する材料で、このような接着シール材を複層ガラスのガラスとスペーサの間に、即ち、水分透過遮断の目的を有する接着シール材として用いて複層ガラスの機能が果たせるなど、従来の複層ガラスの技術では考えも及ばなかった。
しかしながら、このような従来の複層ガラスの技術をもってしても困難であった高温域へ適用できる断熱性に優れた複層ガラスに関し鋭意研究の結果、本発明は、通気構造を有する複層ガラスのガラスとスペーサの間の接着シールに本発明のシリコーン系・変性シリコーン系あるいはアクリル系の接着シール材を採用すれば、中空層内空気の露点上昇に悪影響を及ぼすことなく、広い範囲の高温度域において適用可能な複層ガラスが実現できることを見出した。
表1bは、4ミリ厚みのローエミッシブガラス(放射率 0.015)と4ミリ厚みのフ ロートガラスから成る中空層厚みが12ミリで、中空層の寸法が500ミリx500ミリの複層ガラスを加熱装置の扉とし、ローエミッシブガラスを庫内側に配した上で、加熱温度を上昇させたときの2枚のガラスエッジの平均温度および庫外側ガラス(フロートガラス)の中央部のガラス温度を計算により求めた結果である。厳密にはガラスエッジの温度はガラスエッジを被覆する材料・取り付け寸法および扉へのガラスの取り付け構造などにより異なるが、表2bにはガラスエッジにはサッシなどの被覆体がない状態での温度を計算し示している。
この表より、従来の複層ガラスの周辺シールに用いられていたポリイソブチレンでは庫内温度150℃近くになると接着部となるガラスエッジ部の温度が軟化温度60℃を超え始め使用に耐えなくなることが分かる。その点、シリコーン系・変性シリコーン系あるいはアクリル系の接着シール材では120℃〜150℃までの耐熱性が期待できるので、加熱温度に関してはガラスエッジ部の温度が120℃となる300℃までの広い範囲の高温度域で使用可能なことが分かる。
本発明ではシリコーン系接着シール材などを複層ガラスのガラスとスペーサの間に用いるとしたが、スペーサの外側の2枚のガラスの間(図1における接着剤材7)に用いる接着シール材については、ガラスが用いられる温度域に適用可能な接着シール材で弾性率などを満たすのであれば、本発明のシリコーン系などの接着シール材にこだわる必要はない。但し、生産効率の面からいえば、本発明の接着シール材をそのまま用いるのが望ましい。
また、ガラスとスペーサの間には一切の接着シール材を用いず、スペーサの外側の2枚のガラスの間(図1における接着剤材7)のみにシリコーン系など本発明の接着シール材を用い複層ガラスを生産することも考えられる。中空層内への水分の侵入を阻止する目的のみならその効果は期待できるが、接着シール材なしでガラスが直接スペーサなどの金属に接すると、温度変化や人為的な外力等によるガラスの繰り返し変形、スペーサとガラスの膨張差による伸び縮み差など、スペーサとガラス表面の繰り替えし摩擦に起因する微小な傷がガラス面に発生し、これがガラスの破損をもたらす恐れがあり好ましくない。
このように複層ガラス周囲の接着シール部から侵入する水分については、本発明のシリコーン系などの接着シール材で阻止できるが、本発明の目的である加熱機器などに用いた場合、該ガラスの加熱冷却など中空層内の圧力変化の都度、外気が通気装置を通して中空層内に吸引され中空層内の露点を大きく上昇させるとの問題がある。このため本発明では、中空層が連結されている複層ガラススペーサのみならず、その他のスペーサの一部あるいは全部にも吸放湿材を充填し、このような吸引される外気中水分を吸収することで中空層内の露点を低く維持する。
本発明の第二の特徴構成は、通気装置に水分透過抑制機能を持たせた点である。ガラスの加熱冷却に伴う中空層内圧の変化で通気装置を通して中空層内に吸引される水分は、スペーサ内に充填した吸放湿材で吸収されるが、ガラスが非加熱状態、即ち中空層の気体の膨張収縮が殆どない状態においても、外気中水分は拡散現象により通気装置を通って中空層内部に侵入し、スペーサ内に充填された吸湿材の吸湿能力を低下させる。即ち、この外気中水分の通気装置内への拡散透過は、複層ガラス中空層の気体の露点を上昇させ、中空層内での結露を発生させ易くし複層ガラスとしての寿命を損なう原因となる。
本発明では、このような中空層の気体の膨張収縮が小さい場合の外気中水分の拡散現象による侵入は水分透過抑制機能により軽減される。このような水分透過抑制機能は水分の気体状拡散を抑制する意味から通気装置にある程度の通気抵抗を持たせることにより達成され、そのような通気抵抗体としては多孔質管状の多孔質体、細孔、細長い中空管などがあげられ、最も好ましくは長尺の細長い中空管が用いられる。
必要な通気抵抗としては、通風量4・0リッター/分、静風圧30kPaの条件下で求められる通気抵抗が120Pa以上であることが望ましい。
また、外気中の水分は、通気装置を構成する材料が親水性、吸水性であると、一度はこれら材料中に吸着され、その後材料中を液状拡散し、更にその後、通気装置内の空気中に再蒸発する形で通気装置内を透過する。このため、表面に親水基を有しない材料、例えば、金属、セラミックス、耐熱性高分子材料などで形成することが望ましい。
本発明の第三の特徴構成は、複層ガラスス間隙部に面するスペーサの内、通気装置が連結されていないスペーサの通気孔の面積を大きくし、速やかに中空層の気体中の水分がスペーサ内部に充填している吸放湿材で吸収されるようにした点である。本発明の複層ガラスでは、高温度で使用される間に中空層の気体は膨張し一部は通気装置を通って外部へ放出されるが、冷却時には収縮により外気が水分を含んだ状態で通気装置を通って中空層へ取り込まれる。
この場合、本発明に従来の複層ガラスに見られた細孔から成る通気孔構造を採用すると、細孔面積が小さいためスペーサ内の吸放湿材で吸収されるのに時間がかかり、冷却時に中空層へ取り込まれた外気中の水分の一部が中空層内に残り、一時的に中空層の気体中の水分分圧が高くなることが発生する。この高い水分分圧は高温装置あるいは加熱機器の未使用時間中の冷却で複層ガラス内のガラス面に結露をもたらす原因となる。
このため本発明では、通気装置が連結されていないスペーサにおいては通気孔の大きさは、スペーサ厚み(一対のガラスの間の間隔)が12mmで、スペーサの長さ1m当たり、即ち、中空層に面するスペーサの表面積120cm当たりで、通気孔の総開口面積で少なくとも134mm以上とし、より好ましくは835mm以上とする。この場合、個々の通気孔の直径は、必ずしも全て同じ直径にする必要はないが、スペーサに充填されている吸放湿材の粒子が通気孔から中空層側へ飛び出さないよう、大きくても直径は1.8mm以下とするのが好ましい。
一方、通気装置が連結されているスペーサでは、通気装置を通って吸引あるいは拡散侵入する水分と、当該スペーサ内に充填されている吸放湿材の接触経路あるいは時間を長くし、その吸湿効果を高めるために、当該スペーサの通気孔の直径は従来の複層ガラスなみ即ち、中空層内に面するスペーサ表面積120cm当たりで14.9mm2以下とする。最も効果のある方法は、通気装置とスペーサの連結部より最も遠い位置の通気孔の1個あるいは複数個を大きい直径とし、その他の通気孔は設けない構造で、複層ガラスパネルの使用環境が多湿など苛酷な場合には有効である。
本発明の第四の特徴構成は、スペーサ内に充填される吸放湿材として、シリカゲルAまたはシリカゲルBを用い、複層ガラスが加熱される時の温度でシリカゲルAまたはシリカゲルBからそれらが既に吸収していた水分を放出・通気装置を通して外部に排出させ、結果としてそれらの吸湿性能を再生させる、所謂、自己再生的に吸放湿性能を維持させ長期的に中空層内空気の露点を低温度に維持するようにした点にある。
従来の複層ガラスでは、スペーサ内の吸湿材としては0℃〜室温近辺での吸湿量が大きいことからモレキュラシーブ3Aがよく用いられてきたが、モレキュラシーブ3Aの再放湿温度は高く大よそ120℃以上で再放湿が始まるため、表1bから分かるように加熱温度が300℃以下の高温装置の場合その吸湿性能は再生されない。このため多くの加熱機器において、冷却時に吸湿した水分が加熱時に再放出されず加熱冷却の繰り返しの都度、吸放湿材中に積算されていくとの問題がある。また、モレキュラシーブ3Aは加熱・冷却の繰り返しの間に吸放湿性能が低下する性質もあり、これらより、モレキュラシーブ3Aを本発明の目的である高温度域で使用可能な複層ガラスの吸放湿材と使用することは好ましくない。
これに対し、シリカゲルAまたはシリカゲルBは35℃〜40℃の温度以上であれば吸湿した水分を短時間で放湿する性質があり、これらを吸放湿材として用いることで、冷却時に吸湿放材が吸収した水分は、表2bより類推すれば加熱機器内温度で70℃以上であれば再放湿され、高温装置あるいは加熱機器の繰り返し使用によっても吸放湿材の吸湿性能を低下させることもなく、複層ガラス中空層の露点を長期にわたり低いレベルに安定的に維持することができる。
本発明により、従来の複層ガラスでは困難であった150℃以上の加熱温度に使用でき、かつガラスの寸法を小さく制限する必要のない断熱性に優れた複層ガラスガラスが提供可能となったことで、調理用加熱機器・産業用加熱装置や環境試験装置など高温装置の内部観察・監視に必要な窓材を、本発明の断熱性に優れた複層ガラスにすることで、これら機器装置の省エネルギーに大きく貢献することができる。
実施形態に係る複層ガラスパネルのガラス面に平行な平面で切った縦断面図である。 (a)は実施形態に係る複層ガラスパネルのガラス面に平行な平面で切った縁部近傍を模式的に示す一部拡大断面図であり、(b)は実施形態に係る複層ガラスパネルの前記縁部に垂直な平面で切った縁部近傍を模式的に示す一部拡大断面図である。 (a)は変形例に係る複層ガラスパネルのガラス面に平行な平面で切った縁部近傍を模式的に示す一部拡大断面図であり、(b)は変形に係る複層ガラスパネルの前記縁部に垂直な平面で切った縁部近傍を模式的に示す一部拡大断面図である。 従来の複層ガラスパネルを模式的に示す横断面図である。
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(1−1)複層ガラスの構造
図1に実施形態に係る複層ガラスパネルのガラス面に平行な平面で切った縦断面図を示す。また、図2(a)に実施形態に係る複層ガラスパネルのガラス面に平行な平面で切った縁部近傍を模式的に表す一部拡大断面図を示し、図2(b)に複層ガラスパネルの前記縁部に垂直な平面で切った縁部近傍を模式的に表す一部拡大断面図を示す。
本実施形態における複層ガラスパネルは、従来技術において用いられてきたスペーサ2に通気装置8が連結されており、スペーサ2の内部の気体と通気装置8の内部の気体は連結孔9でつながっている。かつ、通気装置8には連結孔9と離れた外気側に近い端部に設けられた開孔部10があり、この開孔部10を通して通気装置内部の気体と外気はつながるようになっている。即ち、複層ガラスの中空層3内の気体は、連結孔9と開孔部10を通して外気とつながっており、中空層3が密封構造の従来の複層ガラスと基本的に異なる。
通気装置8内部には、水分透過抑制部として水分透過抑制効果をもたらすため外気水分の拡散透過に対する抵抗体となる細長い中空管12が設けられる。この中空管の一端は、連結孔9で吸放湿材6’ が充填してあるスペーサ内部に連通する吸放湿材6’ が充填してある筒体である吸放湿材充填部11の一端側が連通することで、スペーサ内部に連通し、その他端は開孔部10で外気に繋がる構造となっている。この構造は、外気の出入りに伴う目詰まりが起きにくい点で効果的である。この場合において、細長い中空管全体としての通気抵抗は、静風圧30kPaの条件下で120Pa以上、26kPa以下であることが望ましい。
尚、この態様を更に発展させ、中空管12とスペーサ2を間接的に連結させることに代えて図3(a)(b)に示すように、図1において通気装置を細長い中空管12でのみで構成し、この中空管12とスペーサ2を直接連結し、吸放湿充填部をことさら設けず、吸放湿材を充填したスペーサに吸放湿充填部11の役割を兼ねさせる方法でもよい。この態様はガラス寸法が小さい場合に特に有効である。
さらに、中空管12は上記のようにスペーサの外側に隣接しても良いが、スペーサ内の中空部に保持する方法を採用することもできる。
中空管12の形状・材質としては、100℃以上の高温度域で使用を考慮しステンレス・アルミニウムなど金属材料、ガラスやセラミックスなどの無機材料、あるいはシリコン・ポリイミド樹脂など耐熱性樹脂製などを用いる必要がある。
(1−2)水分透過抑制部に対する侵入水分量の抑制に関する試験
内容積80cmのポリエチレン製の蓋つきビン16個を準備し、蓋に貫通孔をあけた試料1〜試料3と、更に蓋に開けた貫通孔にポリエチレンホースを通して蓋との接触部をシリコーン接着剤でシールしポリエチレンビンの内部への外気の出入りがホースを通してのみ可能となるような試料4〜試料16を作成した。試料1〜試料3では貫通孔の直径を変えることでビン内部と外気の間の通気抵抗が変えられており、試料4〜試料8では一定の直径のホースの一部に長さの異なるステンレスメッシュを充填し通気抵抗が変えられており、試料9〜16では、ホースの内径、長さを変えることにより、各試料の通気抵抗が変えられている。また、比較参照のため、試料17として蓋のないシャーレをも準備した。これら試料1〜試料17それぞれに20グラムのモレキュラシーブ3Aを入れた後、温度25℃、相対湿度80%の恒湿槽中に静置し、経過時間ごとに試料の全体重量を計測しモ レキュラシーブの吸水量を求めた。この場合、各試料の蓋の貫通孔やポリエチレンホースの通気抵抗は、通風量4.0リッター/分、静風圧30kPaの条件下で測定した。
結果は表2に示す通りで、試料17のシャーレではモレキュラシーブ3Aの吸湿は24時間でほぼ飽和し、その後は吸湿による全重量の増加は見られなかった。
これに対し、外気とビン内部の間に通気抵抗を有する部分を設けると、モレキュラシーブ3Aの見かけ上の吸湿速度は著しく減じられることが分かった。例えば、本実施例の中でも、その水分透過抑制効果が比較的小さいと見られる蓋に10mm直径の貫通孔をあけた通気抵抗20Paの試料1でも、シャーレと同程度の吸湿量になったのは約1000時間経過後であった。この水分透過抑制効果は、同じ通気抵抗でも蓋に直接貫通孔をあけたものよりも、蓋にステンレスメッシュ入りのポリエチレンホースを取り付けたものの方が優れており、例えば、通気抵抗20Paの試料4では相対湿度80%の雰囲気中で1ケ月静置の条件であってもモレキュラシーブ3Aの吸湿能は飽和状態に至らず、大半が温存されていることが分かった。
水分透過抑制効果が最も顕著であったのは細い直径のホースを取り付けた試料9〜16で、中でも試料10〜試料16では、相対湿度80%の雰囲気中で1ケ月間静置の条件であってもモレキュラシーブ3Aの吸湿能の殆どが温存される結果となった。
この実施例からも分かるように、通気装置の一部に20Pa程度の通気抵抗を有する部分を設けることで、外気から通気装置内への水分の拡散透過は著しく減じられる。どの程度の水分透過抑制効果、通気抵抗が高温装置・加熱用機器に適しているかは、装置機器の使用目的、使用頻度、使用環境などにより変わるが、重要な点は加熱温度の上昇により複層ガラススペーサに充填してある例えばシリカゲルAが放湿をはじめ、中空層内の空気の露点が上昇し、その時のガラス近傍温度よりも高くなり始めると加熱中ではあってもガラスの中空層側表面に結露が発生するとの問題である。
この結露が発生すると加熱装置の温度を上昇させても結露がなくなるまでに多くの時間を要し、その間、透視性を大きく損なうことになる。
表1bには、ガラス寸法が500x500mmの場合ではあるが、ガラスの加熱温度ごとに中空層内での飽和水蒸気量が求めてある。各温度でスペーサ内に充填した吸放湿材から放湿される水分量が、この飽和水蒸気量を上回ると庫外側ガラスの中空層側表面に結露が発生することになる。この種の結露を防止するためには、シリカゲルAが加熱機器の不使用期間に吸収する水分量は、シリカゲルAが放湿しはじめる庫内温度70〜80℃での飽和水蒸気量に相当する0.1g以下である必要があり、加熱機器の一般的な使用条件から不使用期間を長くて10日とすれば、表3において10日間にシリカゲルAが吸湿する量が0.1g以下、即ち、通気装置の通気抵抗が120Pa以上の時ということができる。
一方、通気抵抗が大きくなりすぎると、複層ガラスが加熱冷却に伴う中空層内空気の膨張収縮により中空層内に大きな圧力変化が生じ、複層ガラス周囲の接着シール部の間の接着部に繰り返し引き剥がし変形をもたらし、実質的にシールを破壊し、場合によってはガラスの破損をももたらす。
中でも、通気抵抗を大きくするため断面の小さい細長い中空管を用いる場合、中空管の中に付着した水滴の表面張力で実質密閉したような状態が生まれるやすい。円形断面の中空管でいえば、内径が0.6mmx長さ450mm以上(通気抵抗26kPa)でこの効果が顕著となる。このため、通気抵抗は大きくても26kPa以下であることが必要である。
このような通気装置の形状については特段の制約はないが、望ましくは複層ガラスの空隙部にスペーサに重ねて収納できるよう、幅においてはスペーサと同等かもしくは小さく、長さにおいては一辺のスペーサよりは短い細長い管状がよい。断面形状は、いかなる形状でもよいが一般には矩形もしくは円形・楕円形である。勿論、小さな管状あるいは小さな箱型などの形状の通気装置を複数個あるいは多数にわけて複層ガラススペーサの一辺もしくは各辺に取り付けることも出来る。
(1−3)通気装置が連結されているスペーサ内に充填する吸放湿剤
本発明においては、ガラスの不使用状態すなわち非加熱状態の時に拡散現象により通気装置内を通って中空層に侵入する外気中水分については、通気装置に水分透過抑制効果の大きい細長い中空管を用いることにより著しく減少させることが可能であり、1ケ月の間の透過水分量を0.2g以下にすることができる。
それでも透過する水分については、基本的には通気装置が連結されている複層ガラススペーサ内に充填している吸放湿材で吸収する。この吸放湿材が吸収した水分は、ガラス使用時すなわち加熱時に再放湿させることで、吸放湿材の吸湿性能を再生させ、常時高い吸湿性能を維持することで中空層内の空気の露点を長期に安定的に維持するよう工夫されている。
表1bよりこのような再生は40℃以上の温度で行われる必要があり、このような低温度で放湿特性を有する吸放湿材としては、後述する複層ガラススペーサ内の吸放湿材と同様の理由から、シリカゲルAまたはシリカゲルBを選択するのが効果的である。
通気装置が連結されているスペーサ内の吸放湿材の充填量としては、ガラス寸法すなわち中空層の体積・スペーサ内の吸湿材充填量の大きさなどの関与は小さく、主として通気装置の水分透過抑制能力で決まる。
例えば、この通気装置を透過する水分量を0.2g/月とし、シリカゲルAまたはシリカゲルBの吸湿量を自重比15%とし、高温設備あるいは加熱機器の最も長い不使用期間を1ケ月とすれば、必要な充填量は1.5gとなり、50%の安全率を見込んでも3gですむことになる。
但し、実際に使用においては、冷却時に取り込む外気中の水分の一部はこの吸放湿材でも吸収され、吸放湿材の吸湿能も上記の数字よりも低下するため、更なる安全率を見込み
自重比5%とし吸放湿材の充填量は少なくとも8g程度とするのが望ましい。
(2−1)通気装置が連結されていないスペーサ内の吸放湿剤
本発明で用いるスペーサ2内部に充填される吸放湿材としては、吸湿水分を低温度でも容易に再放湿し吸湿性能が再生されるシリカゲルAまたはシリカゲルBを用いる。
従来の複層ガラスでは、スペーサ内の吸湿材としては0℃〜室温近辺での吸湿量が大きいことからモレキュラシーブ3Aがよく用いられてきたが、後述する試験からレキュラシーブ3Aの再放湿温度は高く大よそ120℃以上で再放湿が始まり、高温装置あるいは加熱機器の使用条件によっては冷却時の取り込み水分が積算されていく恐れがある。また、モレキュラシーブ3Aは加熱・冷却の繰り返しの間に吸放湿性能が低下する傾向がある。
これに対し、シリカゲルAまたはシリカゲルBは35℃程度の温度以上であれば吸湿した水分を短時間で放湿する性質があり、これらを吸湿材として用いることで、冷却時に吸湿材が吸収した水分は加熱時に再放湿され、高温装置あるいは加熱機器の繰り返し使用によっても吸放湿性能の低下もなく、吸湿材に水分が蓄積されることはなく、複層ガラス中空層の露点を長期にわたり低いレベルに安定的に維持することができる。
一例を挙げて説明する。本発明の複層ガラスが一定の温度・湿度の空気中にてt℃まで加熱され、その後の冷却過程でAg/mの外気中水分をその中空層に取り込み、次の加熱まで間に一部はシリカゲルにより吸収され、残る一部は中空層内に水分として残留し、次の加熱においてシリカゲルが既に吸湿していた水分量の内ある割合(W%)を中空層内に放出し、この放出された水分と中空層内に残留していた水分の総量のうち中空層内空気の膨張による体積増加分が通気装置を通って外部に排出されるとすると、加熱冷却の繰り返しの過程で中空層内水分量は徐々に増加するが、n回の繰り返しで冷却後の中空層内総水分量はある一定値に収斂する。その数値は室温を20℃、加熱温度をt℃、シリカゲルAの加熱時間中の放湿割合(=放湿水分量/吸収している全水分量)をWとすると、A+A× Σ{1−(t−20)W/293)}のような概略式で表される。即ち、その後の加熱冷却の繰り返しにおいても中空層内の水分量は殆ど変わらない状態になる。
この場合Wは、加熱温度t℃の時のシリカゲルの加熱温度(概ねガラスエッジ温度)及び加熱時間などにより変わる数字で、実験的数字でいえば、WはシリカゲルAの加熱温度が100℃の場合で、加熱時間が5分では0.25、同10分では0.33、同20分で0.75である。
例えば、大きさが400mmx500mmで中空層の厚みが12mmの複層ガラスが、30℃・相対湿度80%の環境で加熱冷却を繰り返される場合、加熱条件が250℃・10分の例では、表1bよりシリカゲルの温度は約100℃であり、この温度での放湿割合(W)は前項に記述の通り0.33であることから、約20回の加熱冷却の繰り返しで中空層内へ取り込まれる水分総量は0.18gに収斂する。この水分量はシリカゲルの吸湿能を自重比15%とすれば、シリカゲル1.2gの吸湿量に相当し、スペーサ内充填の吸放湿材で完全に吸収できる。
100℃・10分の加熱の場合においても、表1bより加熱温度100℃の時のシリカゲルの温度が約50℃、実験的に求めた50℃・10分での放湿割合(W)が0.05であることから、一回の冷却で中空層に取り込まれる水分量は0.016gであり、約2000回の加熱冷却で中空層内に取り込まれる水分総量は1.35gに収斂し、この水分量はシリカゲル吸湿量9・0gに相当し、容易にスペーサ内充填の吸放湿材で吸収できる。
一方、中空層内に取り込まれる水分量が一定値に収斂した時、一回の加熱で外部に排出される水分の量も0.016gに収斂する。即ち、その後の加熱冷却において中空層内の水分は殆ど変わらない状態になる。
このため、複層ガラスのスペーサ内への吸放湿材の充填量については、複層ガラス本来の中空層内の水分分圧と外気中の水分分圧の差によるシール材を透過して中空層へ侵入する水分の吸収に必要な充填量でよく基本的は従来の複層ガラスと同様に、自重比で15%〜20%の吸湿性能を有するシリカゲルAやBなど一般的な吸放湿材の量であれば、ガラス寸法での縦辺のスペーサ1〜2辺に充填するか、もしくはガラス面積1m当たり50〜200gでよい。
吸湿材のスペーサ内充填量については前項記述の通りであるが、複層ガラスが使用される高温装置・加熱機器等が短い間隔で加熱を繰り返す場合、中空層に取り込まれた水分が充分に吸放湿材により吸収されず一時的に中空層内の露点を高めることがある。このような一時的な露点の上昇を避けるために、スペーサの通気孔の大きさ・数などの増大により、吸放湿材による中空層内水分の吸収速度を高めるようにすることも本発明では重要である。
(2−2)吸放湿材の吸湿性能試験(24℃、相対湿度60%)
シリカゲルA、シリカゲルB、モレキュラシーブ3A、塩化カルシウム(CaCl2)、稚内ケイソウ土、サーモゲル300の6種類の吸放湿材をそれぞれ20グラムをシャーレにとり、60℃、相対湿度60%の雰囲気中に放置し、3,6,24,48時間後のそれぞれの重量を測定し、吸湿量を調べた。結果は、表3に示すとおり、塩化カルシウム、モレキュラシーブ3A、シリカゲルA、シリカゲルBが優れ、稚内ケイソ−土、サーモゲル300は相対湿度60%殆ど吸湿特性を示さなかった。
このうち塩化カルシウムは吸湿性能には最も優れていたが、潮解性のため吸湿が進むにつれペースト状になって通気性を阻害する恐れがあり、本発明のような細い管状のスペーサの内部に充填するには適さないことが分かった。
(2−3)吸放湿材の放湿試験(35℃〜200℃)
モレキュラシーブ3A、シリカゲルA、シリカゲルBをそれぞれ20グラムをシャーレにとり、24℃、相対湿度60%の恒湿槽内に6時間保管した後に、オーブン中で35℃、45℃、55℃の各温度で加熱し、それぞれの吸放湿材につき1時間後、2時間後の重量の減少分を測定し、表4aに示すような放湿量の結果を得た。
更に、モレキュラシーブ3AとシリカゲルAの各10グラムをシャーレにとり、24℃、相対湿度60%の恒湿槽内に20時間保管した後に、オーブン中で80℃、100℃、120℃、150℃、200℃の各温度で1時間加熱後の重量の減少分を測定し、表4aおよび表4bに示すような放湿量の結果を得た。
従来の複層ガラスによく用いられているモレキュラシーブは120℃以下の温度域では放湿特性は示さず、むしろ吸湿性を示しており、低い温度域で用いられる加熱機器あるいは加熱条件では、吸湿性能が使用中に再生されることは期待できず、本発明の吸放湿材として使用する場合は、使用条件などを吟味して使う必要があることが分かった。
シリカゲルA,シリカゲルBはどちらも、35℃以上のどの温度域においても使用中に吸湿性能の再生が期待でき本発明の吸放湿材として幅広い高温度域で使用可能なことが分かった。
(2−4)加熱冷却の繰り返し条件下での吸放湿材の吸放湿能試験(250℃)
高温度域で使用される用途あるいは加熱機器での使用等いずれの場合においても、大抵は一定時間の高温度状態での使用の後に室温まで冷却され、その後加熱冷却が繰り返される場合が多い。本実施例では、このような加熱冷却の繰り返しで吸放湿性能が低減しないかを調べた。
試験の方法としては、シリカゲルA・シリカゲルBおよびモレキュラシーブ3Aをそれぞれ20gをガラス製シャーレに入れ、加熱状態で2時間、25℃・相対湿度60%の環境で2時間保管の操作を繰り返し、加熱後・保管後の各試料の重量を10サイクル毎に100サイクルまで測定した。加熱条件としては、40分で250℃まで昇温の後、250℃で40分間維持し、その後室温まで40分かける加熱冷却サイクルを採用した。
結果は表5に示すとおりで、シリカゲルA、シリカゲルBの吸湿性能・放湿性能は安定しているのに対し、モレキュラシーブ3Aでは加熱冷却の繰り返しと共に吸湿・放湿性能が低下する結果となった。この結果からも、本発明の吸放湿材としては、シリカゲルAまたはシリカゲルBが適していることが分かった。
(2−5)スペーサの通気孔の直径が吸湿材の吸湿速度に及ぼす影響に関する試験
断面が6mmx11mmで長さが22mmの中空構造をもったアルミニウムスペーサで 通気孔の直径およびその数が異なるものを表6の通り8個準備した。各スペーサにはシリカゲルAを7g充填し、両端をアルミテープで密封の後、初期状態で相対湿度が60%近辺に調整してある密封ガラスボックス(内寸法で12mmx320mmx450mm、内容積で1720cm)の中に静置し、時間経過ごとのボックス内の相対湿度をボックス内に挿入した温湿度センサーで測定し、その測定値をもとにボックス内空気中の水分量を計算により求めた。結果は表6に示す通りで、スペーサの吸湿量は通気孔径が0.6mm〜1.8mmの間では、概ね総面積に比例する結果となった。即ち、通気孔径が同じであればスペーサの長さに比例する。

ここで、本発明の複層ガラスが高温度で使用される場合の一例として、300℃に加熱された後に30℃まで冷却され、その過程で通気装置より周囲の空気、比較的過酷な環境として温度30℃、相対湿度80%の空気を中空層に取り込むとすると、取り込まれた空気中の水分量は大よそ20.9x10−3g(30.4 x 10-6 x 0.8 x 1720 x 0.5 )となり、本発明の望ましい態様としては、この水分量を複層ガラスが使用される高温装置や加熱機器の使用条件、例えば加熱から次の加熱までの時間間隔、の間にスペーサ内の吸湿材が吸湿するこが求められる。
仮に、取り込まれた水分量をスペーサ内の吸湿材が吸収できず、次の加熱工程に移る場合は、取り込まれた水分量の一部が中空層の中に蓄積され、使用を繰り返すにつれて中空層内の空気の露点を高め、高温装置あるいは加熱機器が休止の状態になったときに、容易に複層ガラス内部に結露をもたらすような問題が発生する。
どの程度の吸湿時間が必要かは高温装置あるいは加熱機器の使用目的によるが、少なくとも従来の複層ガラスのように通気孔径が0.2mmのスペーサでは、スペーサ4辺に吸湿材を充填しても加熱から次の加熱までの時間間隔が5時間以上でなければ、中空層に取り込んだ水分が吸湿材で吸収されないことになり、高温装置あるいは加熱機器の目的には限定的な使用しか出来ない。
これに対して、通気孔径0.6mmでは仮にスペーサ4辺すべてに吸湿材を充填しても加熱間隔10分への対応はできないが、スペーサ3辺への吸湿材充填で30分間隔での使用に対応できる。通気孔径1.5mm以上であれば3辺への充填で10分間隔での使用にも対応可能となり、実質的には殆どの条件への対応が可能となる。
即ち、本発明の目的には、本実験に見られるスペーサの通気孔径は少なくとも0.6mm以上が望ましく、好ましくは1.5mm以上であることがわかった。
言い換えれば、本発明では、通気装置が連結されていないスペーサにおいては通気孔の大きさは、スペーサ厚み12mmでスペーサ1m当たり、即ち、中空層に面するスペーサの表面積120cm当たりで、通気孔の総開口面積で少なくとも134mm以上(1cm当たり1.12mm以上) とし、より好ましくは835mm以上(1cm当たり6.96mm以上)とするのが望ましい。この場合、個々の通気孔の直径は、必ずしも全て同じ直径にする必要はないが、シリカゲルAまたはシリカゲルBの粒子が通気孔から中空層側へ飛び出さないよう、大きくても直径は1.8mm以下とするのが好ましい。
この場合、総開口面積が大き過ぎることの弊害は使用する上では特になく、吸放湿材がスペーサ内部から脱落しない状態を保持できる最大の開口面積を上限とすることができる。例えば直径1.0mmの通気孔が幅12mmx長さ1000mmのスペーサの中空層側面に機械的に可能な範囲で設けられた1列11個x900列からなる総数12000個の通気孔総面積7770mmであってもよく、あるいは中空層側面を開口率80%のメッシュで構成し実質通気孔総面積9600mmのスペーサを用いることも考えられるが、技術的に通気孔総開口面積を大きくしても835mm以上では実用的に殆ど効果は変わらず、むしろ通気孔総開口面積を過大にすることが逆にコストアップなど不利益を招く。
このため、通気孔の総開口面積は実用的には大きくても、スペーサ厚み12mmでスペーサ1m当たり、個数においては従来の複層ガラスの通気孔と同程度の472個であり、大きさにおいては直径1.8mmを上限とし、通気孔の総開口面積にして1200mm以下(スペーサ表面積1cm当たり10mm以下)であればよい。
一方、通気装置が連結されているスペーサでは、通気装置を通って吸引あるいは拡散侵入する水分と、当該スペーサ内に充填されている吸放湿材の接触経路あるいは時間を長くし、その吸湿効果を高めるために、当該スペーサの通気孔の直径は従来の複層ガラスなみ即ち、中空層内に面するスペーサ表面積120cm当たりで14.9mm2以下(1cm当たり0.12mm以下)とする。最も効果のある方法は、通気装置とスペーサの連結部より最も遠い位置の通気孔の1個あるいは複数個を大きい直径とし、その他の通気孔は設けない構造で、複層ガラスパネルの使用環境が多湿など苛酷な場合には有効である。
但し、この場合、通気孔が小さすぎ、通気装置の通気抵抗の上限値を超えるような総開口面積になると、当該ガラスの加熱冷却に伴う中空層内空気の吸引・排出を阻害し中空層内に大きな圧力変化をもたらす結果となる。このため通気孔がスペーサ表面積120cm当り1個の場合、通気孔が円形であれば直径にして0.3mm以上、即ち、総開口面積で0.07mm以上であることが望ましく、更に、通気孔がスペーサ内の無数の吸放湿材により塞がれる可能性をも考慮すると、通気孔はスペーサ表面積120cm当たり少なくとも10個以上、総開口面積で0.7mm以上(1cm当たり0.006mm以上)であることが好ましい。
(3)シール材
本発明で用いるガラス周囲の接着シール、中でも外気中水分の中空層内への侵入を防止する上で重要なガラスとスペーサの間のシール材としては、高温度での使用を可能にするため、従来の複層ガラスの周辺シールに用いられていたポリイソブチレンは不適当で、耐熱性に優れた弾性シール材であるシリコーン系・変性シリコーン系およびアクリル系の接着シール材が用いられる。
これらの接着シール材のうち、アクリル系は加熱温度(庫内温度)が300℃位、即ちガラスエッジ温度にして120℃位までは使用可能であるが、300℃以上の加熱温度ではシリコーン系もしくは変性シリコーン系が用いられる。勿論、300℃であるため用いられるガラスもそれまでのフロートガラス製強化ガラスに変わり硼珪酸ガラスや結晶化ガラスが用いられることは言うまでもない。
加熱温度が550℃以上になればガラスエッジ温度、即ち、接着シール材温度も200℃以上となり、シリコーン系のなかでも特に耐熱性に優れた室温硬化型シリコーン(RTVシリコーン)が用いられる。
その他の接着シール材に関して言えば、耐熱性だけ考えれば、エポキシ系・フェノール系などの適用も考えられるが、これらの接着シール材は熱硬化性のため、複層ガラス工程に熱処理・加圧処理などの二次処理を必要とし非生産的であるほか、硬化後の接着シール層が硬くガラスの変形やガラスとスペーサの膨張差に伴う伸縮み差などへの追随性に欠け、接着部の剥離あるいはガラス破損をもたらす恐れがあり好ましくない。
また、弾性接着シール材系(エラストマー系)のものではブチルゴム系のみならずクロロプレンゴム系・ニトリルゴム系・スチレンブタジエンゴム系・ポリサルファイド系・ウレタンゴム系あるいはシリル化ウレタン系のものがあるが、いずれも連続使用可能な温度が100℃以下と低く汎用的な高温度用途には望ましくない。
なかでも従来より複層ガラスの二次シール材として用いられてきたポリサルファイド系は80℃近辺より大きな体積変化が見られ本目的の接着シールには不適当である。
このような、従来の水分透過抑制効果に優れたポリイシブチレンに対し、水分透過にきわめて劣るシリコーン系接着シール材が使用できるようになった理由については、定かではないが、一つには、通気装置により複層ガラスの中空層内と外気の間に圧力差が殆どなくなった点が考えられる。また、その結果、中空層内空気の膨張収縮が小さくなりガラスエッジを構成する接着シール材に繰り返し伸縮変化をもたらさなくなった点も二つ目の理由と考えられる。
このため、本発明の複層ガラスパネルでは周囲温度の変化があっても中空層内が減圧状態になることもない。このため、中空層と外気の間の水分分圧差による水分のシール材中の拡散透過への対応のみが求められる。
一般的なシリコーンエラストマーの透湿度は、JIS K 7129に基づく数値として、厚み25ミクロンのフィルムを挟む両側の相対湿度さが90%、周囲温度25℃の場合で820g/m.24hrが知られており、ガラス寸法が400mmx500mmで、シール材の厚みが0.5mm、シール幅が10mmの場合、水分透過量は0.0037g/日であり、1年あたりでも1.35gに過ぎない。この水分透過量は、シリカゲルAの吸湿性能を自重比15%とすると、シリカゲルAの9.0gで1年間の透過水分を吸湿できることになる。
更に、本発明の複層ガラスパネルは加熱機器など高温度で使用されるため、スペーサ内部に充填した吸放湿材の吸湿性能が再生され、水分分圧差によりシール材を透過する水分は差ほど大きな問題とはならない。
(4)複層ガラス扉としての加熱冷却試験
厚さ3.2mmで寸法が484mmx484mmの一対の強化ガラス1を用い、図1、2に示す中空層厚みが12mmの複層ガラスを3組作成し、それぞれ供試体I、供試体IIおよび供試体IIIとした。この場合図中のスペーサ2には、断面高さで6mmx幅11mmであって、複層ガラスに組み込み後の外形寸法が464mmx464mm、内形寸法が452mmx452mmとなるようなアルミニウムスペーサを使用した。各供試体の仕様の詳細は以下の通りとした。
供試体II:本発明の複層ガラス
本発明の特徴である通気装置としては図1、2に沿った構造とし、断面寸法が6mmx11mmとアルミニウムスペーサと同断面であり長さが250mmの中空管を通気装置8とし、通気装置8の一端には水分透過抑制を目的に外径3.4mmx内径2.84mmで長さが150mmのステンレスチューブ(中空管12)を取り付け、外気側への開放端10mmをL型に曲げた状態で試験に供した。また、図に示すスペーサ2には、従来の複層ガラスなみの直径0.2mmの通気孔5が4mmピッチで長さ方向に2列にわたってあけられた通気孔総面積が1202mm/スペーサ1mのものを使用した。
スペーサ内の吸放湿材6’ としてはシリカゲルAを用い、図1の左右の縦辺に各14g、上辺に12gの計40gを充填した。また、通気装置内の吸放湿材11としてもシリカゲルAを用い7gを充填した。これらシリカゲルAの充填量は、複層ガラスが250℃で加熱の後30℃まで冷却される間に、温度30℃・相対湿度80%の外気が中空層に取り込まれ、この中の水分量50x10−3gを、スペーサ内の吸湿材で30分で吸収するよう、表5の通気孔径1.8mmの30分放置後の吸湿量8.88x10−g/シリカゲル7gを参考に求めた。
図に示すスペーサとガラスの間の一次シール用接着材4(厚み0.5mm)としては、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の超耐熱RTVシリコーンTSE3826を用い、二次シール用接着材7の部分にも同じシール材を用い、7日間の養生期間をとった後に試験に供した。
供試体III:本発明の複層ガラス
供試体IIと同じ寸法形状・材料構成であって、唯一、スペーサの通気孔の直径を1.8mmとした本発明の最も望ましい複層ガラスに類するもの。
供試体I:比較例
本発明の複層ガラスの効果を比較するための単なる二重ガラスで、一対のガラスとシリカゲルの充填していないスペーサからなる。このため本発明の特徴の一つでもある通気装置もなく、またガラス周囲のシールもない。
このようにして作成した複層ガラスを熱風乾燥機の扉に取り付け、中空管12の開孔部10はシリコンホースで温度28℃・相対湿度80%の恒温槽内に連結した。尚、熱風乾燥機の扉側の開口部は450mmx450mmであった。
試験では、加熱前に中空層内の空気の露点測定を行い、その後40分かけて250℃まで加熱し10分間同温度維持の後に30分間で室温まで冷却した。この加熱冷却を1サイクルとし、5サイクルを終えたところで再度中空層内の露点を測定した。
結果は次の表7に示すとおりである。
供試体Iの二重ガラスでは、加熱により中空層内の空気は外気中に吐き出され、冷却時には単に中空層に再び外気が取り込まれる結果、当然のことながら中空層内の露点は外気の露点と同じとなった。このことは、外気中の相対湿度が高い場合、例えば80%の場合、外気の温度がわずか4℃低下しただけで中空層内に結露が発生することを意味する。例えば、28℃・相対湿度80%の厨房でこの二重ガラスを使用していた場合、厨房内の温度が24℃に下がったところで二重ガラス内部に結露が見られることになる。
このような結露は、加熱機器の内部を観察するにも支障をきたす他、水跡状の汚れの原因ともなり、いずれにしろ実用面では大きな問題となる。
供試体IIは基本的には本発明の複層ガラスに属するが、スペーサの通気孔径が0.2mmと従来の複層ガラスなみに小さいところが、本発明の中で好ましい通気孔径の範囲を外れている。供試体作成後7日経過しているため、加熱前の中空層内の露点はー45℃以下を維持できているが、加熱後の冷却過程で30℃x相対湿度80%の外気をとりこむことにより冷却後30分の露点はー4℃まで上昇している。
この結果は、表6の結果からも裏づけされており、スペーサの通気孔径が小さいため冷却過程で中空層に取り込んだ空気中の水分が30分と短い時間ではスペーサ内の吸湿材で充分に吸収されないことを示している。このため、加熱冷却を更に繰り返すと、中空層内の空気中の水分濃度はますます上昇し、即ち、露点は上昇し、二重ガラスと同様な問題を引き起こすことになる。
もっとも、加熱終了後15時間たっての中空層内露点は−45℃以下を示し、その後恒温層から切り離して大気に開放したところ30日経過しても中空層内露点は−38℃以下であったことから、加熱使用する頻度が15時間間隔以上のような場合は、通気孔0.2mmでも使用が可能といえるが、実用的範囲はかなり限定的と考えられる。
供試体IIIは本発明の望ましい態様の一つであり、加熱使用後30分でも中空層内の露点は−38℃と実用温度域を下回る低い温度を示しており、この結果は加熱終了後15時間たっても維持され、さらに、その後恒温層から切り離して大気に開放したところ30日経過しても中空層内露点は−33℃以下であったことから、本発明の複層ガラスが高温装置や加熱機器など高温度で使用される装置の複層ガラスにふさわしい性能を有していることが分かる。
(5)発明の効果
従来の産業用高温装置や加熱型調理機器などで用いられる複層ガラスでは、最大の大きさでも150ミリx150ミリ程度と極めて小さく、その上、最高使用可能温度も200℃以下と限られ、実用範囲は極めて限定的であった。
本発明では、高温度仕様の水分透過抑制部・通気装置および、高耐熱仕様の接着シール材、例えばシリコーン系・変性シリコーン系あるいはアクリル系を使用すれば、従来の複層ガラスに見られたガラス寸法の制約はなく、300℃あるいはそれ以上の温度域でも使用可能な断熱性に優れた複層ガラスを作ることができる。このため、従来、多くの加熱機器に用いられていた一枚ガラスを本発明の複層ガラスで置換することにより、著しく省エネルギー性に優れた高温装置あるいは加熱機器に改良することが出来る。
更には、本発明の複層ガラスは、従来の複層ガラスの密封構造とは異なる通気構造のため、複層ガラス製造時の中空層3の温度に比べ、周囲温度が上昇し中空層3の内部の気体が加温され膨張した場合でも、膨張により増加した体積分の気体は通気装置8を通して外気側に放出され、中空層3の内部圧力が上昇することはなく一対のガラス1が外側に凸上に膨れた変形をすることはない。
この本発明の効果は、従来の複層ガラスが細かい制限を設けて細心の注意をして用いられていた用途、例えば、日射によりガラスエッジの温度が40℃を超えるような構造の建築用窓・トップライト・温室屋根などの建築用途あるいは太陽熱温水器など太陽熱利用機器などにも適用可能であり、使用制限のない断熱性に優れたガラスの利用が可能となる。
1 ガラス板
2 スペーサ
3 中空層
4 一次シール用接着材
5 通気孔
6 吸湿材
6’ 吸放湿材
7 二次シール用接着材
8 通気装置
9 連結孔
10 開孔部
11 吸放湿剤充填部
12 中空管

Claims (4)

  1. 以下の(1)〜(4)の要件を満たす高温度域で使用可能な複層ガラスパネル。
    (1)ガラスパネル同士は、少なくとも一部に吸放湿材が充填される中空のスペーサにより支持されている。
    (2)スペーサの中空層に存する面には、内部に連通する通気孔が設けられる。
    (3)複層ガラスの中空層と外気とを導通する通気構造として、一端が複層ガラスのスペーサの内部と連結され、他の一端が外気に開放状態とされる中空管を有する。
    (4)スペーサとガラスパネルの間の接着シールは、シリコーン系・変性シリコーン系又はアクリル系の弾性シール材から成る。
  2. 前記通気構造を構成する中空管は、内部に吸放湿材やその他通気上で抵抗となるようなものを含まず、その通気抵抗が、通風量4.0リッター/分、静風圧30kPaの条件下で求められる数値で120Paから26kPaであることを特徴とする請求項1に記載の複層ガラス
  3. 前記通気孔の総開口面積は、中空層側に存するスペーサの面の表面積1cm当たりで、
    前記通気用中空管が連結されているスペーサでは、0.12mm以下から0.006mm以上であり、
    その他のスペーサでは、1.12mm以上である
    ことを特徴とする請求項1又は2項に記載の複層ガラスパネル。
  4. 前記スペーサの内部に充填される吸放湿材が、シリカゲルA及び/又はシリカゲルBを含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の複層ガラスパネル。
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