JP2010103325A - プラズマ中に存在する活性種の測定装置及び方法 - Google Patents

プラズマ中に存在する活性種の測定装置及び方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水晶振動子センサでの測定について、圧力を測定するのと同様な、簡単な方法で測定を行うことが可能であり、実用の製造装置への実用も容易なプラズマ中に存在する活性種の測定装置及び方法を実現する。
【解決手段】水晶振動子センサ1を備えており、物性依存出力が既存の分子構成に対する検量線とのズレからプラズマによって生成した活性種の量を計測する装置によって、プラズマが発生している反応装置3内のガスの物性値に依存する物性依存出力を測定することにより、分子以外の化学種であって、プラズマによって生成されるイオン及びラジカルを含む化学種の量を計測する。
【選択図】図1

Description

真空装置中に存在する分子以外のイオン、ラジカルなどの活性種量の測定装置及び方法に係り、特にプラズマなどの気相中に存在する活性量を求めるための測定装置及び方法に関する。
従来、半導体製造装置等の分野でプラズマを利用したいろいろな加工処理が行われている。このようなプラズマを利用した装置において、ラジカルやイオンといった分子以外の活性種の量を測定することはプラズマを加工に適した状態に維持し、当該加工の精度、効率を一定に保つために必要なことである。
そこで、従来、プラズマモニタ方法、プラズマ処理方法、半導体装置の製造方法、およびプラズマ処理装置のようなプラズマ測定手段が提案されている(特許文献1参照)。
さらに、従来、反応槽中のガス分解率の測定方法及び装置は知られている(特許文献2参照)。
ところで、水晶振動子センサ出力が測定するガスの分子量及び粘性に依存することを利用すると、二種類のガスから成る混合ガス中の各ガスの濃度(分圧)を求めることができる。このような、二成分混合気体における濃度測定法については既に知られている(特許文献3参照)。
クリーニングの終点検出方法は、知られている(特許文献4参照)。
特許第3873943号公報 特開昭62−272152号公報 特許第3336384号公報 特開2006−086325号公報
イオンやラジカルといった活性種の計測については、光を用いた方法が利用されるのが一般的である。具体的には、プラズマ中においてそれ自身が発光する性質を持つイオンやラジカルについては、その光の波長を分光器を用いて計測することによりその波長の光を発光する活性種の種類を解析する計測が最も簡便な方法である。
発せられる光の波長は活性種の種類によって一定に決まっているため、このプラズマ発光の強度分析によって発光している活性種量を計測することができる。これらのプラズマ発光を利用する方法は、特に高いエネルギー状態にある励起状態の活性種やイオンの計測に有効である。
これら以外の、エネルギーの定常状態である基底状態にある活性種の計測については、別途計測用の光をプラズマに導入する必要がある。光源としては高強度、高志向性であるレーザーをプ ラズマ中に照射し、基底状態にある活性種による吸収を計測するか、吸収後に活性種が発する蛍光やりん光といった光を検出する方法などがある。
活性種が吸収する光及び発する光の波長は活性種の種類によって決まっているためどの光の波長かを解析することによって元の活性巣の種類及び量を求めることができる。なお、以上は「プラズマと成膜の基礎、小沼光晴著、日刊工業新聞社」第4章に詳しく記載されている。また、このような方法で測定した活性種量の変化を利用したプラズマ処理によるクリーニング終点を検出する特許文献4が出願されている。
しかしながら、以上の方法では、光源として用いるレーザーが高価である他測定装置及び測定結果の解析が複雑である。さらに光がプラズマ処理に悪影響を与える場合には利用できない。
一方上記特許文献2はプラズマを主とする反応装置中のガスの分解率を、ラジカル量を元として測定する方法である。この方法は希ガスの発光を利用する点で上述の光を用いた検出方法に属するものであるが、希ガスを利用することが不可欠な方法であるため、希ガスを装置中に導入することが製造製品の品質等に悪影響を与えるような場合など、希ガスの導入が不適当な場合には利用できない。
以上のような状況に鑑み、プラズマ処理を行う装置その場において、プラズマ処理に必要なガス以外の、製造には不必要なガスや光を導入することなく真空装置中に存在するプラズマにより生成したイオン、ラジカルなどの活性種の量を計測することのできる装置を提供する。
具体的には、装置中に存在するガスの粘性及び分子量といった物性値に依存する出力(物性依存出力)を出力できる水晶振動子センサなどを用い、製造装置のその場に直接取り付け、プラズマにおいて測定し物性依存出力を求める。この物性依存出力を、予め作製しておいた、成分と構成する気体の分圧が既知の混合気体について求めた検量線と照らし合わせる。その結果得られる、水晶振動子センサ校正値と検量線から予測される値のズレの量から活性種の量を計測する。
予めガス分析などでプラズマ中のガス分子の構成比が明らかな場合、一定圧力・温度下では水晶振動子センサ校正値はその構成比に依存した一定の値をとる。したがってこのような場合に、水晶振動子センサ校正値が仮にそのとるべき値からずれている場合には、そのずれは装置中にその存在を想定しているガス分子以外の化学種、すなわちイオンやラジカルなどの活性種による影響によるものであると考えられる。
したがって、以上を応用すれば、この測定によって測定が困難なプラズマ中の活性種の量を計測することができる。活性種の絶対量及び個々の活性種の成分及び密度を求めるには他の方法によって全ての活性種を測定する必要があり、ここで得られるのは主として活性種の相対量であるが、活性主全体の量を把握するためには有効である。
具体的な物性依存出力のひとつは、上記した水晶振動子センサによって求めることができる。この水晶振動子センサの出力は、このセンサ中の水晶振動子を含む電気回路のインピーダンスが、測定するガスの分子量及び粘性に依存することから、これらの変化に伴って変化する。したがって水晶振動子センサを用い、ガスの分子量及び粘性に依存する物性依存出力を得ることができる。
このような、水晶振動子センサ出力が測定するガスの分子量及び粘性に依存することを利用すると、二種類のガスから成る混合ガス中の各ガスの濃度(分圧)を求めることができる。
このような、二成分混合気体における濃度測定法については既に特許化されている(2種類混合気体濃度測定方法、特第3336384号)。ところがたとえ、供給ガスとして1種類のガスしか用いない場合でも、プラズマの気相中には供給ガスと電子との衝突によりさまざまな種類の分子、イオン、ラジカルが生成され、存在する。したがって、上記特許(特第3336384号)だけではプラズマ気相中に存在する全ての物質の濃度を測定することはできない。
しかしながら、上述のように測定された物性依存出力から活性種の量に相関する値を求めることができれば、従来のような発光及び光を用いた、高価で複雑かつ製造装置、あるいは製造過程に影響を与えるような測定方法を用いることなく、活性種の量を測定することができる。
本発明は、水晶振動子センサでの測定について、圧力を測定するのと同様な、簡単な方法で測定を行うことが可能な、実用の製造装置への実用も容易であり、簡便に測定を行うことができるプラズマ中に存在する活性種の測定装置及び方法を実現することを課題とする。
さらに、本発明は、水晶振動子を含む圧電素子を用いる場合に、熱や光を照射しない測定法であるため、熱や光による刺激によって爆発の起こる反応性の高い混合気体でも安全に測定することができ、測定に際して特定の波長の紫外線ランプ等を必要とせず、メンテナンスが容易なプラズマ中に存在する活性種の測定装置及び方法を実現することを課題とする。
本発明のプラズマ中に存在する活性種の測定装置及び方法は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)ガスを媒体とするプラズマにおいて、プラズマが存在する容器内を水晶振動子センサと絶対圧力計のみを用いてプラズマ中の活性種量を求めることができる。この測定では測定時に測定される気体を消費することなく、高速な測定が可能で、混合気体の圧力が大気圧以外の時でも、また圧力が変化しても常に測定することができる。
(2)さらに、水晶振動子を含む圧電素子を用いる場合には、熱や光を照射しない測定法であるため、熱や光による刺激によって爆発の起こる反応性の高い混合気体でも安全に測定することができる。測定に際して特定の波長の紫外線ランプ等を必要とせず、メンテナンスが容易であり、更に気体組成の変化に対応して即時にその組成を測定することが可能となる。
以下、図面を参照して、プラズマ中に存在する活性種の測定装置及び方法の最良の形態を実施例に基づいて詳細に説明する。
本発明に係るプラズマ中に存在する活性種の測定装置及び方法は、従来の光を用いたプラズマ診断法と比較して簡便な方法及び装置でプラズマによる活性種量を測定する方法及び装置を提供するものである。
具体的には、プラズマ装置内のガスに対してプラズマにおいて物性に依存する物性依存出力を測定し、既知のガス構成において得られる分圧測定の検量線との差から真空装置中に存在する活性種量を求めるものである。
この物性値としては粘性及び分子量とし、これに依存した量を測定できる水晶振動子センサ、並びに絶対圧力計及び温度計による計測を行い、プラズマを発生させた時の水晶振動子センサの出力から、圧力及び温度校正を行うことによりプラズマでの物性依存出力を測定する。そして、別途、質量分析などの方法で測定した気体分子の構成比における検量線からの値と比較することにより活性種量を求める。その具体的な装置及び方法を、実施例においてさらに説明する。
プラズマ加工装置は、図1に示すように、プラズマ装置の反応装置3と、高周波電源10から高周波電圧を供給するプラズマ装置の反応装置3内に突設されプラズマ電極5と、複数種の供給ガスを導入する複数の気体流量制御装置(マスフローコントローラー:MFC)7を有する複数の導入管と、1センチ以下のサイズの小さい水晶振動子センサ1と、隔膜圧力計2と、製造物であるワーク支持台15と、圧力制御弁9を備えている。
このようなプラズマ加工装置におけるプラズマ装置に適用する例として、本発明のプラズマ中に存在する活性種の測定装置及び方法の実施例を説明する。この実施例の活性種の測定装置は、プラズマ装置からの物性依存出力を受け、気相中の気体成分に依存する量である「水晶振動子センサ校正値」を求めるための圧力補正手段4及び温度補正手段6が設けられている。圧力補正手段4及び温度補正手段6は、具体的には、図示しないが入力部、出力部、CPU、記憶装置等を備えたコンピュータ17が利用される。
コンピュータ17の入力部には、水晶振動子センサ1と隔膜圧力計2がデータ線を介して接続されている。水晶振動子センサ1の校正値は、圧力補正手段4で得られたデータを直接用いるか、または必要であれば、らさらにそのデータを温度補正手段6で処理して得られたデータを用いて求められる。
圧力補正手段4は、水晶振動子センサ1と隔膜圧力計2からそれぞれ計測データを入力し、水晶振動子センサ1の出力から絶対圧力の影響を補正する。この圧力補正された値(圧力補正値)を、測定中の温度変化が大きい場合には温度補正手段6へデータを出力し、そうでない場合にはこの値をそのまま水晶振動子センサ校正値として用いる。
温度補正手段6は、上記圧力補正値及び水晶振動子センサ1から生じる温度と相関の大きい水晶振動子の共振周波数の情報または実測で得られる雰囲気温度を入力し、圧力補正値に対してさらに温度補正を行うことにより水晶振動子センサ校正値を求める。
図2(a)は、各気体における水晶振動子センサ出力の絶対圧力依存性を示すグラフであり、図2(b)は、水晶振動子圧力計の表示圧力の絶対圧力依存性を示すグラフであり、図2(c)は、スピニングロータゲージの指示圧力の絶対圧力依存性を示すグラフである。
図2(a)に示すように、気体の種類によって同じ絶対圧力での水晶振動子センサ1(水晶振動子センサではなく、水晶摩擦真空計またはスピニングロータゲージでもよい。)の出力が異なることを利用することにより、プラズマ中の活性種量を測定することができる。
なお、図2(a)〜(c)の範囲の圧力に限らず、すべての圧力においても気体の種類によって同一の絶対圧力においてそれぞれの出力がガスの種類によって異なることから、これらに示される以外の圧力範囲においてもプラズマ中の成分変化を測定できる。
ここで、水晶摩擦圧力計とは、電気により発振させた水晶振動子センサを内蔵し、これに気体分子が衝突する際に発生する抵抗が、気体の圧力及び粘性に依存することを利用して同センサを含む電気回路の電圧として取り出すことにより測定を行う圧力計である。
また、スピニングロータゲージとは、気体中で鋼球等を高速に回転させた後動力を停止し、この動力停止後の回転数の減少速度が同じく気体の圧力及び粘性に依存することを利用する圧力計である。
本発明における成分測定は、気体の種類によって同じ絶対圧力の場合、水晶振動子センサ(或いは、水晶摩擦真空計またはスピニングロータゲージ)の出力が異なることを利用するため、一般的には、水晶振動子センサ1と隔膜圧力計2の両方での測定が必要である。大気圧下のように実質的な絶対圧力変化がない場合には、水晶振動子センサ1のみの測定でも計測が可能である。
水晶振動子センサ1の出力から絶対圧力の影響を取り除くことによって、水晶振動子センサ校正値が求められる。具体的には、まず図2(a)のような水晶振動子センサ出力の絶対圧力依存性を調べ、同出力の圧力に対する変化率である圧力係数を求める。この圧力係数を用いて絶対圧力変化による同出力の変化を補正できる。
仮に、上記測定器出力、測定圧力、圧力係数をそれぞれV,P,Cとすれば、圧力補正値Vpは、任意の一点での絶対圧力P0に対して、Vp=V−C×(P−P0)で求められる。この圧力補正された値Vpは気体の分子量及び粘性と相関する量であり、この値を用いて気体成分の変化を測定することができる。
温度の影響を補正するために、水晶振動子センサ1の測定場所の雰囲気温度を温度計18で同時に測定するか、または水晶振動子センサ1から得られる温度と相関の大きい共振周波数の情報から、図3に示すような水晶振動子センサ出力の温度係数を求め、温度補正を行う。なお、図3は、圧力一定条件における水晶振動子出力の測定雰囲気温度依存性を示すグラフである。
水晶振動子センサの出力と温度との相関は一定であるため、予め求められた水晶振動子センサ出力―温度直線の傾き、すなわち水晶振動子センサ出力の温度係数を用いて水晶振動子センサ出力値を校正することにより温度変化の影響を排除し、水晶振動子センサ校正値を求めることができる。
仮に、上記測定器出力、測定温度、温度係数をそれぞれV,T,Kとすれば、温度補正値 Vtは任意の一点での絶対温度T0に対して、Vt=V−K×(T−T0)で求められる。
なお、水晶振動子の振動周波数には温度依存があるため、この振動周波数の温度依存性から水晶振動子センサ出力の温度係数を求めることも可能である。
以上の方法で求めた、物性依存出力である「水晶振動子センサ校正値」を用いて、プラズマ装置中に存在する活性種の量を求める方法は以下の通りである。
まずプラズマを発生させる前に、供給ガスを導入した装置においてプラズマを発生させ、水晶振動子センサ測定を行い、圧力と温度を校正することにより水晶振動子センサ校正値を求める。
プラズマ中のガス分子成分を計測し、そこから得られた分子の構成が把握できる場合、その構成に対する混合気体に対する水晶振動子センサ校正値の検量線を作製する。実際のプラズマ中には分子の他にラジカルやイオンといった活性種が存在するから、プラズマ中の測定で求められた水晶振動子センサ校正値は、分子のみから構成された場合について作製された検量線の結果とは活性種の影響により異なってくる。
この時のプラズマ計測で求めた水晶振動子センサ校正値と、検量線との不一致の大きさは、活性種の影響の大きさ、すなわち活性種の量と相関するから、この不一致の大きさを求めることにより活性種の量を求めることができる。このようにして作製された検量線に、水晶振動子センサ計測によって得られたプラズマでの結果を当てはめた際の、想定されるガス分子構成とのズレの大きさから活性種量が求められる。
実際にアンモニアを用いた場合についての結果を図4に示す。図4は横軸の時間に対して水晶振動子センサ校正値をプロットしたものである。図4からわかるように、プラズマの生成とともに「水晶振動子センサ校正値」が変化する。
圧力、ガス流量、電極温度、投入放電電力、電極電位バイアスなどのプラズマ条件を様々に変化させることにより供給ガスの分解率を変えることが可能である。プラズマ条件のうち、投入電力を変化させると活性種の量は大きく変化し、通常投入電力とともに増加する。
そこで投入電力を変化させて上記の水晶振動子センサによる測定を行った。結果を放電電力に対してプロットしたものが図5である。ここで、「水晶振動子センサ校正値」は、値が十分安定となった図4の「安定値」を用いた。図5に示すように、プラズマでの「水晶振動子センサ校正値」は、プラズマ放電電力に対して増加していることがわかった。
一方ガス分析の結果は、プラズマ中にはアンモニアガスの分解によって窒素及び水素ガスが常に概ね1:3で生成している(NH3→N2+3H2)ことを示した。ここで窒素及び水素の割合がほぼ常に一定であるとすると、この窒素−水素混合気体をひとつの安定分子成分と見なすことにより、プラズマ中の主な成分はアンモニア及びこの窒素1:水素3の混合気体の二成分のみから成ると簡略化できる。
このようにアンモニアプラズマの気相中の成分が二成分混合気体で近似できれば、水晶振動子センサ測定によりプラズマ中のこれらのガスの各分圧を、二成分気体分圧測定法を用いて測定できる。
以上に基づき二成分混合気体の分圧を測定するための検量線を、各ガスについてプラズマを立てない状態で図6のように作成した。 その方法は次の通りである。まず、アンモニア、水素、窒素についてそれぞれ1種類のガスに対して圧力を測定しながら水晶振動子センサ校正値の圧力依存性を調べる。一方窒素―水素混合気体について同様に水晶振動子センサ校正値の圧力依存性を調べる。窒素―水素混合気体についてはその混合比に依存した検量線群となる。
なお、アンモニア、水素、窒素のような一種類のガスから成る成分の圧力依存性については、ガスを装置中に導入した後、その出入口を封じることにより静的な状態で測定するか、または真空排気しながらガスを流した状態での測定で求めることができる。
一方、窒素―水素混合気体のように二種類以上のガスから成る混合気体についての水晶振動子センサ校正値の圧力依存性については、ガスを流した状態では装置中に存在するガス比が意図した導入流量比に一致しない場合があるため、前述の静的な方法でのみ求めることができる。
プラズマ気相をアンモニア―窒素1:水素3混合ガスの二成分から成る混合気体と仮定すると、このときの水晶振動子センサ校正値はこの2つ、すなわち、アンモニアと窒素1:水素3混合ガスの水晶振動子センサ校正値の圧力依存性の2つの検量線の間の値を、これら2つの構成ガスの相対比に応じてその値を取る。
この、アンモニア―窒素1:水素3混合ガスにおける水晶振動子センサ校正値は、図7に示すようにほぼアンモニアの相対比に対して逆比例の関係にあるため、その相対比は測定した水晶振動子センサ校正値から容易に求められる。
この混合気体の分圧測定の検量線から、水晶振動子センサ測定によって求めた相対比を、四重極質量分析器を用いたガス分析によって求めた相対比に対してプロットすると、図8のようになるが、両者は必ずしも一致せず、特に放電電力が大きくなるに従いそのズレが大きくなっている。
水晶振動子センサ測定及び四重極質量分析器による定量分析が正しいとすると、両者の結果が一致しないのは、上述の二成分の仮定が厳密には成立しておらず、プラズマ中のアンモニア、窒素、水素以外の何らかの化学種の影響を受けているものと推測される。
両者の不一致を放電電力に対してプロットしたのが図9であるが、放電電力が大きい条件で不一致が大きくなっていることから安定分子成分以外の、中性ラジカルおよびイオンといった活性種の影響を受けていると考えることが妥当と考えられる。したがって、以上の水晶振動子センサ測定によりプラズマ中の活性種量の相対量が求められる。
以上のようにプラズマ中の活性種量の大小は、この「水晶振動子センサ校正値」が、想定される分子構成から求められる混合気体の分圧測定のための検量線からのズレから求められる。そのズレの程度が大きければ活性種の量は多く、また小さければ少なくなる。
以上を行うためにはこのアンモニアプラズマで生じる窒素と水素の相対比が常にほぼ1:3であること、また各気体及び混合気体についてのQセンサ校正値の圧力依存性が明らかになっている必要があるが、これらは事前に一度行っておくだけで十分であり、一度それらの関係得られればそれ以降はこれらガス分析などの作業を行うことなく水晶振動子センサによる測定のみでプラズマ中の活性種量を簡便に求めることができる。
上記水晶振動子センサで求められる物性依存出力が依存する物性量は、粘性及び分子量であるが、例えば粘性は、上記水晶振動子センサ以外にも、水晶振動子圧力計、スピニングロータゲージで測定される値から、隔膜真空計などの絶対圧力計で計測した絶対圧力の影響を除くことによって求められる。
水晶振動子センサは、プラズマからの荷電粒子を導通しない絶縁物からなるカバーで覆えば、測定中にプラズマへの擾乱を防止することができる。
上記水晶振動子センサは、小型であり装置内で移動することが可能であるため、装置内で固定プラズマ電極に対して移動して測定できる。活性種量を求めるに当たっては、例えば平行平板電極間に生じる放電に対しては、その電極間で測定することが最適であるが、それが何らかの条件で不可能な場合、プラズマ電極にできるだけ近い場所で測定することが望ましい。
その場合、水晶振動子センサの電極までの距離が平行平板間の間隔よりも小さい場合には、水晶振動子センサへのプラズマの直接的な影響が大きくなり測定が不正確になるため、この平行平板電極間隔だけ離れた位置で測定することが好ましい。
この時プラズマ電極付近での測定では温度による影響が顕著になるが、この影響を補正するため別に温度測定を行うか、水晶振動子センサから得られる、温度との相関の高い共振周波数を測定することで温度の補正を行うことにより物性値出力を校正し水晶振動子センサ校正値を求めることは上述した通りである。
以上のようにして求められる活性種の相対量の情報から、プラズマ処理の高性能化に寄与することができるために有効な知見を得ることができる。
活性種の相対量は、プラズマが発生中いずれの時点でもリアルタイムに求めることができるため、これを用いたモニタリングが可能になり、必要ならば諸条件を調節することにより所望の分解率に保ちながら製造することができる。
また、このリアルタイム性を利用すると、プラズマその場での条件制御も可能となる。プラズマ中の活性種量は製造条件の重要な条件の一つであるから、これが分かれば、その量をリアルタイムに変調制御することにより、製品を高度化することができる。また、製品の均一化・均質化を図ることができる。プラズマの異常放電が発生する場合には、プラズマ中の活性種量が大きく変化することから、この異常な変化をモニタリングすることによりプラズマの異常運転、プラズマ停止を早期発見できる。
なお供給ガスの分解率を制御するプラズマ条件としては、各供給ガス流量、装置内の全圧、高周波電力及び周波数、製造物温度・電界、プラズマ電極温度・電界、装置温度、装置内気相温度などがある。
これらの条件のうち温度に関する条件以外は全て電気信号によって迅速な制御が可能である。一方、本測定装置による測定出力も電気信号で出力できるため、迅速な結果出力とこれによる迅速な制御が可能である。
本発明の測定方法によって気体成分の変化をプラズマ運転中に常時測定しておけば、何らかの異常によって当初想定した活性種量が変化しても、その変化を本測定法によってそのずれを検出することによって、気体成分変化に有意差が現れた場合、供給ガスの流量にフィードバックをかけることにより、活性種量を所望の値に保つことができる。
迅速な測定が可能な活性種量測定装置を用いることで、簡便小型、低価格な膜厚・成膜速度・膜構造自動制御装置を提供することができる。特に、薄膜シリコン製造プロセスで用いられるシラン−水素二成分系においては、活性種量は、製造される膜構造(アモルファスか微結晶か)や光安定性といった重要な物性に影響を与えるため、予め、物性と供給ガスの分解率との相関を求めておけば、実際のプロセス中に本方法で活性種量の測定を行うことにより、製造物の特性をも一定に保つことができる。
同様に得られる製造物の膜厚、電気特性、エッチング比などの諸物性と活性種量との相関を求めておけば、実際のプロセス時にこれらの相関を利用してプロセスの諸条件を制御することができる。
フルオロカーボン、硫化フルオロ系のガスを用いたエッチングプラズマにおいては、エッチング比などの諸物性と活性種量との相関を求めておき、実際のプロセス時にこれらの相関を利用してプロセスの諸条件を制御してエッチング処理を改善することができる。
本発明はその他にダイヤモンド薄膜やカーボンナノチューブ、ハード材料などを作成するメタンなどの炭化水素系プラズマ、ゲルマンガスプラズマ及びこれらの混合ガスプラズマなど任意の種類のガスを用いるガスプラズマに利用することができる。
以上、本発明に係るプラズマ中に存在する活性種の測定装置及び方法を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されることなく、特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内で、いろいろな実施例があることは言うまでもない。
本発明に係るプラズマ中に存在する活性種の測定装置及び方法は、以上のような構成であるから、プラズマ装置を使用した加工や工作、製造を行う各種の製造装置に適用可能である。
本発明に係る分解率測定装置及び測定方法の実施例を説明する図である。 物質の種類について、圧力を変化した場合の物性依存出力の変化を示す図であり、(a)は水晶振動子センサ出力の変化を示し、(b)は水晶振動子圧力計の表示圧力の変化を示し、(c)はスピニングロータゲージの指示圧力の変化を示す図である。 水晶振動子センサ出力の温度依存性を示す図である。 アンモニアプラズマを発生・停止させた際の水晶振動子センサ校正値の経時変化を示す図である。 放電電力に対する水晶振動子センサ校正値変化量を示す図である。 物質の種類について、圧力を変化した場合の水晶振動子センサ出力(物性依存出力)の変化を示す図である。 アンモニアと窒素―水素混合ガス(ただし窒素:水素=1:3)との混合ガス中のアンモニアの存在比(%)を示す図である。 水晶振動子センサ計測およびガス分析で求めた窒素―水素混合ガスの存在比の比較を示す図である。 放電電力に対するプラズマ測定して得られた水晶振動子センサ校正値の、想定分子成分での検量線からのずれの大きさを示す図である。
符号の説明
1 水晶振動子センサ
2 隔膜圧力計
3 プラズマ装置の反応装置
4 圧力補正手段
5 プラズマ電極
6 温度補正手段
7 気体流量制御装置(マスフローコントローラー:MFC)
8 ヒータ
9 圧力制御弁
10 高周波電源
12 ワーク
15 ワーク支持台
17 コンピュータ
18 温度計

Claims (4)

  1. プラズマが発生している反応装置内のガスの物性値に依存する物性依存出力を測定することにより、分子以外の化学種であって、プラズマによって生成されるイオン及びラジカルを含む化学種の量を計測する活性種量測定装置において、
    前記物性依存出力は、粘性及び分子量に依存するものであることを特徴とする活性種量測定装置。
  2. 前記物性依存出力を測定する装置は、水晶振動子センサを備えており、前記物性依存出力が既存の分子構成に対する検量線とのズレからプラズマによって生成した活性種の量を計測することを特徴とする請求項1記載の活性種量測定装置。
  3. プラズマが発生している反応装置内のガスの物性値に依存する物性依存出力を測定することにより、分子以外の化学種であって、プラズマによって生成されるイオン及びラジカルを含む化学種の量を計測する活性種量の測定方法において、
    前記物性依存出力は、粘性及び分子量に依存するものであることを特徴とする活性種量の測定方法。
  4. 前記物性依存出力の測定は、水晶振動子センサを備えており、前記物性依存出力が既存の分子構成に対する検量線とのズレからプラズマによって生成した活性種の量を計測することを特徴とする請求項3記載の活性種量の測定方法。
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