JP2010099031A - 藻場増殖礁 - Google Patents
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Abstract
【課題】植食動物の接近を阻害するとともに藻類の成長に必要な日光を十分に確保することを可能にし、さらには設置者等の利便性に配慮した藻場増殖礁を提供する。
【解決手段】海底に配置して藻類SWを育成し、藻場を形成するための藻場増殖礁Aであって、藻類を育成し活着させ得る育成部材Pと、この育成部材Pを取り付け可能なベース体Bと、このベース体Bと接続して前記育成部材P及びこれに活着した藻類SWを上面を開放した状態で包囲して植食動物の接近を阻害し得る海中構造物1とを具備してなるものとした。
【選択図】図1
【解決手段】海底に配置して藻類SWを育成し、藻場を形成するための藻場増殖礁Aであって、藻類を育成し活着させ得る育成部材Pと、この育成部材Pを取り付け可能なベース体Bと、このベース体Bと接続して前記育成部材P及びこれに活着した藻類SWを上面を開放した状態で包囲して植食動物の接近を阻害し得る海中構造物1とを具備してなるものとした。
【選択図】図1
Description
本発明は、海底に配置して藻類を育成し、藻場を造成するための藻場増殖礁に関する。
従来、藻場の増殖を目的として、藻類の新たな着床基質を供給する藻場増殖礁としては、天然の岩場、テトラポット、コンクリートブロックなどを用いたものや、コンクリート製品を重積してその間に自然石や貝殻等を配したものなどが知られている(例えば特許文献1参照)。
藻場は、沿岸における一次生産の場であるとともに、環境保全の場として生態学的に重要な機能を営むものである。また、水産上有用な魚介類やその他の多様な海中生物にとっては貴重な生息場となり得るものである。このように、藻場の存在は生態系及び地球環境にとって極めて重要なものであり、前述のような藻場増殖礁を適所に配置して藻場を増殖する活動が進められているところである。
ところが、近年、浅海の岩礁・転石域において、藻場が季節的消長や多少の経年変化の範囲を越えて著しく衰退又は消失して貧植生状態となる現象であるいわゆる磯焼け現象が深刻な問題となっている。磯焼け現象の原因としては様々なものが挙げられているが、地球温暖化等の環境変化に起因して、藻類の生産量が減少する一方、藻類等の植物を主な餌とするウニやブダイ等の植食動物の摂食量が増加しているということが特に重大な原因と考えられており、植食動物による藻類の食害対策は喫緊の課題となっている。
この植食動物による藻類の食害に対する具体的対策としては、網などにより海底に生育する藻類の全面である上面及び周囲ならびに下面を包囲して植食動物の侵入を防御するものや、藻類の全面である上面及び周囲ならびに下面を囲んだFRP製又は鋼製の籠などを用いて植食動物の侵入を防御するものなどが考えられている。
特開2004−222530号公報
しかしながら、従来の対策は、網や籠などを用いて藻類の全体を包囲するものであるため、植食魚類の接近を阻害することはできるものの、藻類の生育には必ずしも好適なものではない。すなわち、網や籠などには次第に様々な付着物が堆積するため、特に上面を包囲する箇所の付着物により藻類に必要な日光が遮られてしまい、光合成ができなくなって藻類の生育に支障を来たすという不具合が生じていた。
この問題に対しては、藻類の生育に必要な日光の確保と合わせて、設置者や使用者等の利便性についても十分に配慮する必要がある。
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、植食動物の接近を阻害するとともに、藻類の成長に必要な日光を継続して十分に確保することができ、さらには設置者や使用者等にとって利便性の高い藻場増殖礁を提供することにある。
すなわち、本発明の藻場増殖礁は、海底に配置して藻類を育成し、藻場を形成するための藻場増殖礁であって、藻類を育成し活着させ得る育成部材と、この育成部材を取り付け可能なベース体と、このベース体と接続して前記育成部材及びこれに活着した藻類を上面を開放した状態で包囲して植食動物の接近を阻害し得る海中構造物とを具備してなることを特徴とする。
このようなものであれば、海中構造物が上面を開放した状態で育成部材及びこれに活着した藻類を包囲するため、藻類に必要な日光が遮られることがなく、藻類の成長に支障を来たすことがないものとなる。しかも、前記海中構造物は、前記ベース体と接続するものであるため、前記海中構造物を適宜ベース体と別個に取り扱うことができ、設置者や利用者等の利便性向上に寄与するものとなる。
なお、前記海中構造物の具体的なものとしては、前記海中構造物が、前記藻類の側面側を包囲し得る側面部を具備してなるものがある。
ここで、「上面を開放した状態」とは、海中構造物の上面に、海中構造物の内部空間に日光を十分に取り込み得る開口部が形成されている状態である。この「開口部」とは、海中構造物の側面部に形成された孔や網目の広さよりも広いものであればよい。
ところで、前記海中構造物は、育成部材及びこれに活着した藻類を上面を開放した状態で包囲してなるものであるため、海中構造物に形成された開口部から植食魚類が侵入し、海中構造物の内部空間にある藻類を食べてしまうことが懸念されるが、植食魚類の習性上かかる可能性は極めて少ないものである。
すなわち、植食魚類は藻類が自生している海域において、窪地に成育する藻類を食べ残していることが調査により判明しており、次のような理由が考えられている。
まず、植食魚類のうち、藻場の藻類を食べ尽くす被害をもたらすものは一定の体長を備えた成魚(以下、「植食成魚」という)であるが、植食成魚は藻類を噛み切る力が一般的に弱いため、藻類を食べるためには藻類を銜えた状態で体を大きく前後左右に運動させ藻類を引き千切る必要がある。したがって、植食成魚が藻類を食べるには一定の運動領域を必要とし、植食成魚の運動領域が制限される場所では藻類を食べることができないと考えられる。
次に、植食成魚は常時頭部を下方にした状態を維持して藻類を食することが困難であるため、仮に藻類の上端部を食されたとしてもその被害は極めて少ないものであると考えられる。
したがって、海中構造物の内部空間が、植食成魚の運動領域を制限し得る大きさであれば、海中構造物の上面を開放した状態であっても、藻類が植食成魚に食べられる可能性は極めて少ないものとなる。
なお、ブダイ、アイゴ等に代表される植食成魚の体長が約40cm〜45cmであることを考慮すると、植食成魚の運動領域が制限される海中構造物の開口部の開口端の幅は、50cm以下であることが望ましい。ただし、開口部の開口端の幅が後述する海中構造物の内部空間の左右幅に対応している場合は、海中構造物の内部空間の左右幅を優先して設定されるものである。
また、海中構造物の内部空間の左右幅は、植食成魚の体長及び内部空間で常時揺れ動く藻類の存在を考慮すると、60cm以下であることが望ましい。
前記海中構造物が、前記育成部材への潮通りを許容し得るものであれば、育成部材に活着した藻類に新鮮な海水が供給されるため、藻類の生育に寄与するものとなる。前記育成部材への塩通りを許容しうるものとしては、前記海中構造物が網目状に形成してなるものを挙げることができる。その他にも、前記海中構造物の側面部に複数の貫通孔が設けられた板状の部材などが挙げられる。
ここで、前記ベース体の具体的なものとしては、略円柱状をなすブロック部材や、略矩形柱状をなすブロック部材を挙げることができ、これらに好適な海中構造物としては、前記略円柱状をなすブロック部材の少なくとも一部の側面と接続し得る略円筒状の構造物や、前記略矩形柱状をなすブロック部材の少なくとも一部の側面と接続し得る略矩形筒状の構造物を挙げることができる。
さらに、前記ベース体が、前記育成部材を取り付け可能な育成部材取り付け部を具備してなるものであれば、育成部材を安定配置することができるため、潮流れ等の影響を受けて育成部材が移動したり転倒したりする恐れが無く、藻類の好適な生育環境を維持し得るものとなる。
取り扱いが容易であり、且つ藻類が着床し易い育成部材としては、前記育成部材が、表面に藻類が活着し得る凹凸形状を形成した板状部材を具備してなるものが好ましい。また、前記育成部材に藻類をより確実に着床させ、藻場増殖を確実なものとするためには、予め生育させた藻類である中間育成藻を着床させた育成部材を用いることが望ましい。ここで、「中間育成藻」とは、種々の方法による中間育成によって、数cm〜30cm程度までに成長した藻類であり、育成部材の適所に確実に着床した状態のものである。
前記海中構造物の側面部が、対向する側端部を離間した状態に形成したものであって、これら対向する側端部同士を引寄部材を用いて引き寄せることによって前記ベース体と前記海中構造物とを互いに接続し得るようにしたものであれば、前記海中構造物と前記ベース体との着脱が極めて容易になり、設置者の取り扱いにおいて便宜なものとなる。
ここで、前記対向する側端部同士を接続したときの側面部の内周の長さが、前記ベース体の外周の長さよりも短く設定されているものであれば、対向する側端部同士を引き寄せて、前記ベース体の側面に確実に接続させることができるものとなる。この場合において、前記海中構造物の側面部が、前記対向する側端部同士を接近可能な変形を許容するものが好適である。
前記引寄部材の具体的なものとしては、例えば、樹脂製バンド、針金、両端をかぎ状に形成したフックなどを挙げることができる。
以上説明したように本発明によれば、植食動物の接近を阻害するとともに藻類の成長に必要な日光を十分に確保することを可能にし、さらには設置者の利便性に配慮して、所期の目的を達成し得る藻場増殖礁を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
<第一実施形態> 本発明の第一実施形態である藻場増殖礁Aは、図1及び図3等に示すように、藻類SWを育成し活着させ得る育成部材Pと、この育成部材Pを取り付け可能な円柱形状をなすコンクリート製のブロック部材たるベース体Bと、このベース体Bの側面側と接続して育成部材P及びこれに活着したアラメ、クロメ、カジメ、ホンダワラ等の藻類SWの側面側を上面を開放した状態で包囲して植食動物の接近を阻害し得る海中構造物1とを具備してなる。
藻場増殖礁Aは、植食成魚の侵入を効果的に回避するべく、一の藻場増殖礁Aに対し、一の育成部材Pを具備してなるものであることを基本構成としている。なお、一の藻場増殖礁Aに対し、複数の育成部材Pを具備してもよい。また、藻場増殖礁Aは、図3に示すように、コンクリート製の台座部3の上に設置される場合がある。この点については後述する。
育成部材Pは、表面に藻類SWが活着し得る凹凸形状を形成した板状部材P1を具備してなる。板状部材P1は、20cm×6cm程度の平面視略長方形をなす板状のコンクリート又は樹脂製のものである。そして、板状部材P1は、表面の所要箇所に上に凸形状をなすように部分的に盛り上げた隆起部P11を備えている。隆起部P11は、藻類SWが確実に着床し、活着し得るためのものであり、例えば人工的なブロック形状や円柱形状の他、自然石を模した形状のものやボルトの頭部や軸を模したものなど種々の形状を採用することできる。また、隆起部P11以外の部分には、砂利の形状を模した凹凸形状を形成させても好適である。一方、この育成部材Pの裏面は略平面状に形成され、後述するベース体Bのベース体上面部B11の所定位置に容易に設置し得るものとなっている。また、図6に示すように、後述するベース体Bに設けられた育成部材取付部B111を取り付け可能にできるようにするため、板状部材P1の略中央部に貫通孔P12が設けられている。
育成部材Pの重量は約1キログラム程度のものとしているため、育成部材Pに活着した藻類SWの重さを考慮しても、一人の人間によって運搬、設置、メンテナンス等を容易に行うことができる使い勝手の良好なものである。
ブロック部材たるベース体Bは、海底において安定し得る重さを備えたもので、育成部材Pを取り付け可能な円柱形状をなすコンクリート製のベース体本体B1を主体として構成されるものである。
ベース体本体B1は、略円柱形状をなすコンクリート製のブロック部材であり、その左右幅は約55cmに設定されている。ベース体本体B1は、ベース体本体B1の上面をなし、育成部材Pと接続し得るベース体上面部B11と、ベース体本体B1の側面をなすベース体側面部B12と、ベース体本体B1の底面をなし、海底面や後述する海底面に設置された人工の台座部3等と接続し得るベース体底面部B13とを具備してなるものである。
ベース体上面部B11は、育成部材Pを載置可能な領域が維持されたものとしている。ベース体上面部B11の幅(ベース体上面部B11の直径)は、ベース体本体B1の左右幅と同様に約55cmに設定されている。ベース体上面部B11の所要箇所には育成部材Pを取り付け可能な育成部材取付部B111を備えている。育成部材取り付け部B111は、図6に具体的に示すように、ベース体上面部B11の中央部近傍にボルト部材を立設してなるもので、これを育成部材Pに備えた貫通孔P12に挿通し、ナット部材NT等により螺着できるようになっている。このような構成により、ベース体上面部B11に育成部材Pを安定配置させ固定することができるため、潮流れ等の影響を受けて育成部材Pがベース体Bの上で移動したり転倒したりする恐れが無くなり、藻類SWの好適な生育環境を維持し得るものとなる。
ベース体側面部B12は、後述する海中構造物1の側面包囲部11の内側面が添設し得る部位をなすものである。さらには、海底に生息する植食動物であるウニや巻き貝等の侵入を好適に阻害し得る高さ方向の寸法を有するものである。なお、具体的に、本実施形態におけるベース体側面部B12の高さ方向の寸法は約20cmに設定されている。
ベース体底面部B13は、ベース体本体B1の底面をなす平面形状のものである。ベース体底面部B13には、設置個所に応じて設置する部位と係合するための部位を設けたり凹凸形状に形成したりするなど適宜変更することが可能である。
続いて、海中構造物1について説明する。
海中構造物1は、ベース体本体B1のベース体側面部B12の少なくとも一部と添設し、育成部材P及び育成部材Pに活着した藻類SWの側面側を上面を開放した状態で包囲して植食動物の接近を阻害し得るものである。
海中構造物1は、図1、図7及び図8に示すように、全体形状が略円筒形状をなしたものであり、且つ、平面視において一部に間隙Sを形成した略C字形状をなしたもので、育成部材P及び育成部材Pに活着した藻類SWの側面側の周囲を包囲してなる側面部たる側面包囲部11を主体とするものである。
側面包囲部11は、側面包囲部11の上端側に開口部12を形成しており、側面包囲部11の下端側に下端開口部13を形成している。さらに、側面包囲部11は、その側面の一部において、対向して位置する側端部ST1、ST2を具備してなる。
海中構造物1の側面部たる側面包囲部11は、例えば直径6mm〜9mm程度の丸鋼棒等を用いた金属製のフレーム部材を複数配し網目状(格子状)に形成したもので、全体形状は略円筒状のものである。側面包囲部11を網目状に形成したものであれば、海中構造物1の内部空間に配設された育成部材Pに潮通りを許容し得るため、育成部材Pに活着した藻類SWに常時新鮮な海水を供給することができる。また、金属性のフレーム部材を配して形成したものであると、軟質の網を用いたものと比較して海中での耐用期間が飛躍的に長くなり実用性に富んだものとなる。
詳細に説明すれば、側面包囲部11は、水平方向に配設され平面視C字形状に形成された複数の第一フレーム部材111と、高さ方向に配設され正面視直線状に形成された複数の第二フレーム部材112とを具備してなる。本実施形態では、第一フレーム部材111の両端部と、第一フレーム部材の両端部にそれぞれ接続する第二フレーム部材112によって、対向する側端部ST1、ST2を形成している。
側面包囲部11は、例えば、次のように形成される。まず、正面視直線状をなす加工前の第一フレーム部材111と、直線状をなす第二フレーム部材112とを適宜配して格子状の板状体を形成した後、その格子状の板状体を略円筒形状に曲げ加工して形成される。換言すれば、格子状の板状体は、円筒形状にクセ付けられることによって対向する側端部ST1、ST2間に、所定幅の間隙Sを保持した状態の略円筒形状に形成される。なお、他の形成方法としては、予め第一のフレーム部材111をその端部同士を離間させたC字形状に形成しておき、その第一のフレーム部材111と第二フレーム部材112とを適宜配して、側面に上下方向の隙間Sを有した円筒形状に形成するものなどがある。
側面包囲部11は、対向する側端部ST1、ST2同士を接続又は接近可能にし得るべく一定の変形を許容するものであり、対向する側端部ST1、ST2同士を接続し得る方向に力を加えることによって変形又は弾性的に変形できるようになっている。また、側面包囲部11の対向する側端部ST1、ST2同士を接続した場合における側面包囲部11の内周の長さが、ベース体側面部B12の外周の長さよりも若干短く設定されている。これは、ベース体側面部B12と側面包囲部11の内周面とを確実に添設させるためである。換言すれば、対向する側端部ST1、ST2同士が実際に接続されると、側面包囲部11の内周面と、ベース体側面部B12との添設状態が不十分になる恐れがあることから、これを回避できるようにしている。但し、側面包囲部11の内周の長さと、ベース体側面部B12の外周の長さの差が大きなものであると、植食成魚が対向する側端部ST1、ST2の間に形成される隙間から海中構造物の内部空間に侵入する恐れがあるので、これを回避し得るように設定される。
側面包囲部11に形成された正面視略矩形状をなす複数の網目の寸法は、植食成魚の通過できない程度の大きさに設定される。具体的には、並設される第一フレーム部材111同士の間隔(高さ方向の間隔)及び第二フレーム部材112同士の間隔(横方向の間隔)が5cm以下であるものが好適である。なお、本実施形態における網目の寸法は、5cm×5cm程度のものとしている。もちろん、網目の寸法は設置海域の植食成魚の大きさ等に対応して適宜調整することができる。
海中構造物1の側面包囲部11によって形成される内部空間の左右幅は、植食成魚の体長及び内部空間で常時揺れ動く藻類SWの存在を考慮すると、60cm以下であることが望ましい。図1に示される第一実施形態においては、海中構造物1の全体形状が略円筒状であるので、開口部12の開口端の幅と海中構造物1の内部空間の左右幅とは略同一である。本実施形態では、開口部12の開口端の幅と海中構造物1の内部空間の左右幅は約55cmに設定されている。
本実施形態における海中構造物1の高さ方向の寸法は、藻類SWの種類等に対応して任意に設定することができる。これは、海中構造物1はベース体Bと分離している別体であるため、容易に着脱可能であるからである。例えば、アラメ等の比較的背丈が低い藻類SWを育成させる場合には、海中構造物1の高さ方向の寸法を70cm〜90cm程度に設定(なお、ベース体Bの高さ寸法として約20cmを考慮している)することが望ましい。また、後で詳述する図2に示す第二実施形態のように、ホンダワラ等の比較的背丈が高い藻類SWを育成させる場合は海中構造物1の高さ方向の寸法を100〜120cm程度に設定(なお、ベース体Bの高さ寸法として20cmを考慮している)することが望ましい。もちろん、海中構造物1の高さ寸法は、藻類SWの種類に応じて適宜調整されるべきものであり、これらの数値に限定されるものではない。
引寄部材Hは、図1及び図8等に示すように、側面包囲部11の対向する側端部ST1、ST2同士を引き寄せるとともに、所定位置において両側端部ST1、ST2を引き寄せた状態で固定させ得るものである。図1に示すように、引寄部材Hは、両側端部ST1、ST2同士を引き寄せるために、その上端から下端にかけて複数配されるものである。図8では、引寄部材Hの具体例として、針金を用いたものが示されている。なお、引寄部材Hは、種々のものが適用できる。例えば、一定の強度を有する樹脂製バンドを用いたものであれば、取り付けが容易であるとともに、取り外しの際には容易に刃物等によって切り離すことができるため便宜である。また、図10に示すように両端をかぎ状に形成した鋼鉄製のS字フックや、図11に示すような両端をかぎ状に形成した簡易形状のフックを用いたものであれば、側面包囲部11の対向する側端部ST1、ST2同士を引き寄せた状態で一定の強度をもって確実に固定することが可能である。
台座部3は、コンクリート等を用いた直方体のものであり、縦横をそれぞれ2m程度の寸法に、高さを30cm程度の寸法に形成してなるものである。この台座部3は、藻場を形成する際に、海上からクレーン等を用いて沈設される。
続いて、第二実施形態について図2及び図4を参照して説明する。なお、図中において、第一実施形態のものと同様の部材については同一の符号を付して説明を省略する。
<第二実施形態> 第二実施形態における藻場増殖礁A2は、第一実施形態における藻場増殖礁Aと比べて、海中構造物1の高さ方向の寸法が異なるのみである。これは、ホンダワラ等の比較的背丈が高い藻類SWに対応して、その側面部11の高さ方向の寸法を藻類SWを十分に包囲し得る長さにしたものである。具体的に、第二実施形態における海中構造物1の高さ方向の寸法は100〜120cm程度に設定(なお、ベース体Bの高さ寸法として20cmを考慮している)されている。本実施形態では、図4に具体的に示すように、ベース体Bと海中構造物1とを着脱可能な別個の部材としているため、ホンダワラ等の背丈が長い藻類SWに対しても柔軟に対応することが可能である。
続いて、以上の構成をなす藻場増殖礁の設置工程について図4及び図6ないし図9等を参照して説明する。なお、これらの設置工程は、第一、第二及び第三実施形態において共通するものである。
<第一工程> ベース体Bを海底面の所要箇所に設置する。ベース体Bは、コンクリートにより円柱状に形成されたもので一定の重さを有するものであるため、海底において安定した状態に設置される。なお、ベース体Bを、海底に沈設させた台座部3の上面に設置する場合は、本工程の前に、台座部3を海底に沈設させる工程が付加される。
<第二工程> ベース体Bのベース体上面部B11に藻類SWを活着させた育成部材Pを設置する。図6に具体的に示すように、育成部材Pは、ナット部材NTを用いてベース体Bに固定される。
<第三工程> 海中構造物1をベース体Bの上方から下端開口部13を下にした状態で下降させ、海中構造物1の下端側の内側面とベース体側面部B12とが対向する状態に位置付ける。海中構造物1は、側面包囲部11を平面視C字状に形成させているため、引寄部材Hを用いて側面包囲部11の両側端部ST1、ST2とを引き寄せる前は、側面包囲部11の内側面の幅がベース体本体B1の左右幅と比べて略同一又は若干大きな幅に設定されている。
<第四工程> 海中構造物1の側面包囲部11に形成された、対向する側端部ST1、ST2同士を引き寄せて、側面包囲部11の内側面とベース体側面部B12の少なくとも一部とを添設ないし接続させた状態とする。ここで、側面包囲部11の対向する側端部ST1、ST2同士を接続したときの側面包囲部11の内周の長さが、ベース体本体B1の外周の長さよりも若干短く設定されているため、側端部ST1、ST2同士が実際に接続される前に、側面包囲部11の内側面とベース体本体B1のベース体側面部B12とが先に添設されることになる。
<第五工程> 側面包囲部11の側端部ST1、ST2同士を引寄部材Hで固定する。引寄部材Hは、前述のように、種々の材質、形状のものを用いることができる。
以上の工程によって、藻場増殖礁を海底の所要位置に設置することができる。なお、側面包囲部11をベース体Bから離間させる場合は、引寄部材Hを図9に示すように刃物で切断したり、引寄部材Hを取り外したりすることによって迅速に対応することができる。このようなものであれば、例えば、育成部材Pに活着する藻類SWに異常が発生した場合や、育成部材Pの点検を行う場合などには、極めて便宜である。
続いて、第三、第四実施形態について説明する。
<第三実施形態> 本発明の第三実施形態を図5を参照して説明する。なお、図中において、第一実施形態のものと同様の部材については同一の符号を付して説明を省略する。
図5に示すものは、藻場増殖礁Aを、台座部3の上面に複数配置してなる複数配置型藻場増殖礁M1を示したものである。
台座部3は、コンクリート等を用いた直方体のものであり、縦横をそれぞれ2m程度の長さに、高さを30cm程度の長さに形成してなるものである。
複数配置型藻場増殖礁M1は、複数のベース体Bを台座部3の上面に固定させたものとしている。なお、海中構造物1及び育成部材Pの取り付けは、海底においても行うことが可能である。
このようなものであれば、複数の藻場増殖礁Aをまとめて海底に設置するにあたって極めて便宜である。すなわち、単体の藻場増殖礁Aを個々に海底に配置する作業を大幅に軽減することができ、藻場の造成作業を迅速に進めることができるものとなる。
<第四実施形態> 本発明の第四実施形態を、図12乃至図14を参照して説明する。図14は、第四実施形態である藻場増殖礁A3を示した全体斜視図である。第一実施形態の藻場増殖礁Aと基本的な構成は変わらないが、ベース体Baの形状と、海中構造物1aの側面包囲部11aの形状等が異なるものである。また、図中において、第一実施形態のものと同様の部材については同一の符号を付すこととする。
第四実施形態におけるベース体Baは、海底において安定し得る重さを備えたもので、育成部材Pを取り付け可能な矩形柱形状をなすコンクリート製のベース体本体B1aを主体として構成されるものである。このベース体B1aの左右幅は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲に設定されるものである。ベース体Baの他の各部については、第一実施形態と同様であるので説明を省略する。
海中構造物1aの側面包囲部11aは、平面視略矩形状に形成した開口部12aを備え、全体形状をボックス形状に形成してなるものである。側面包囲部11aは、平面視コの字状をなす第一の側面包囲部材11a1と第二の側面包囲部材11a2とを備えてなるものである。第一、第二の側面包囲部材11a1、11a2は、平面視コの字状をなすもので、各部材の側端には側端部ST11、ST21が形成されている。
その他、本実施形態の構成等は第一実施形態と同様であるため説明を省略する。
以上の構成をなす第四実施形態に係る藻場増殖礁A3は、図12及び図13に示すように、第一、第二の側面包囲部材11a、11a2をベース体Baにそれぞれはめ込むように挿入して各部材の内側面とベース体Baの外側面とを添設させた状態にした後、引寄部材Hを用いて側端部ST11、ST12同士を引き寄せて固定させたものとしている。このようなものであれば、海底において設置者が容易に藻場増殖礁を構築することができるものとなる。
以上、各実施形態における藻場増殖礁は、ベース体と海中構造物とを別個の部材として取り扱うことによって、設置者の利便性に富んだ藻場増殖礁を提供することができるものとなる。
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
例えば、育成部材は、藻類を育成し、活着させ得るものであればよく本実施形態に示される具体的形状等に限定されるものではない。例えば円盤状のものや、立体的な形状をなすものなど、様々なものが考えられる。
ベース体は、海中構造物の下面側を被覆するものであればどのような形状のものでも良い。例えば、ベース体としてコンクリートブロックのほか、金属を用いたものや自然石などを適用することが可能である。また、ベース体の側面部の所定箇所に凸部を設けたものとすれば、この凸部が海中構造物と係わり合って海中構造物が潮流れの影響を受けて抜け取れる事態を好適に回避することができる。
ベース体の育成部材取り付け部は、本実施形態にて説明したものに限定されるものではなく、育成部材を海中構造物に固定し得る部材であればどのようなものでもよい。
海中構造物は、育成部材及び育成部材に活着した藻類を上面を開放した状態で包囲してなるものであればよく、本実施形態に示された形状のものに限定されるものではない。例えば、全体形状が上面を開放してなる多角筒状のものなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形状のものが考えられる。さらに、海中構造物は、縦横方向のフレーム部材をそれぞれ3〜4本程度用いて骨枠を形成し、その側面に網等を包囲してなるものであってもよい。
設置の際の利便性を向上させるために、海中構造物の所要箇所に人間が持ち運びをするのに便宜となる吊手部材等を取り付けておけばより好適である。
引寄部材は、海中構造物の所定部位同士である側端部同士を引き寄せる機能と、側端部同士を引き寄せた状態において固定する機能とを営むものであるが、海中構造物の構造によっては、所定部位同士を固定する機能のみを発揮する場合がある。換言すれば、引寄部材は分離する可能性がある部位同士を締結する機能のみを発揮する場合がある。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
1…海中構造物
A…藻場増殖礁
B…ベース体
P…育成部材
SW…藻類
A…藻場増殖礁
B…ベース体
P…育成部材
SW…藻類
Claims (13)
- 海底に配置して藻類を育成し、藻場を形成するための藻場増殖礁であって、
藻類を育成し活着させ得る育成部材と、この育成部材を取り付け可能なベース体と、このベース体と接続して前記育成部材及びこれに活着した藻類を上面を開放した状態で包囲して植食動物の接近を阻害し得る海中構造物とを具備してなることを特徴とする藻場増殖礁。 - 前記海中構造物が、前記藻類の側面側を包囲し得る側面部を具備してなる請求項1記載の藻場増殖礁。
- 前記海中構造物の内部空間が、植食成魚の運動領域を制限し得る大きさである請求項1又は2記載の藻場増殖礁。
- 前記海中構造物が、前記育成部材への潮通りを許容し得るものである請求項1、2又は3記載の藻場増殖礁。
- 前記ベース体が、略円柱状のブロック部材であり、前記海中構造物が前記円柱状のブロック部材の少なくとも一部の側面と接続し得る略円筒状の構造物である請求項1、2、3又は4記載の藻場増殖礁。
- 前記ベース体が、略矩形柱状のブロック部材であり、前記海中構造物が前記矩形柱状のブロック部材の少なくとも一部の側面と接続し得る略矩形筒状の構造物である請求項1、2、3又は4記載の藻場増殖礁。
- 前記海中構造物が、網目状に形成してなるものである請求項1、2、3、4、5又は6記載の藻場増殖礁。
- 前記ベース体が、前記育成部材を取り付け可能な育成部材取り付け部を具備してなる請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の藻場増殖礁。
- 前記育成部材が、表面に藻類が活着し得る凹凸形状を形成した板状部材を具備してなるものである請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の藻場増殖礁。
- 前記海中構造物の側面部が、対向する側端部を離間した状態に形成したものであって、これら対向する側端部同士を引寄部材を用いて引き寄せることによって前記ベース体と前記海中構造物とを互いに接続し得るようにしたものである請求項2、3、4、5、6、7、8又は9記載の藻場増殖礁。
- 前記対向する側端部同士を接続したときの側面部の内周の長さが、前記ベース体の外周の長さよりも短く設定されている請求項10記載の藻場増殖礁。
- 前記海中構造物の側面部が、前記対向する側端部同士を接近可能な変形を許容するものである請求項10又は11記載の藻場増殖礁。
- 前記引寄部材が、樹脂製バンドである請求項10、11又は12記載の藻場増殖礁。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008274385A JP2010099031A (ja) | 2008-10-24 | 2008-10-24 | 藻場増殖礁 |
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JP2008274385A JP2010099031A (ja) | 2008-10-24 | 2008-10-24 | 藻場増殖礁 |
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JP2008274385A Pending JP2010099031A (ja) | 2008-10-24 | 2008-10-24 | 藻場増殖礁 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101383462B1 (ko) | 2012-09-13 | 2014-04-09 | 박선명 | 해조류 채묘용 캡슐 |
KR102400531B1 (ko) * | 2021-09-03 | 2022-05-20 | 곽철우 | 바다숲 조성을 위한 조식동물 접근 차단 장치 |
-
2008
- 2008-10-24 JP JP2008274385A patent/JP2010099031A/ja active Pending
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