JP2010098100A - プリント配線基板とその作製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】生産性、微細化、及びプリント配線と樹脂支持体との接着性が良好なプリント配線基板の作製方法を提供する。また、当該作製方法により作製されたプリント配線基板を提供する。
【解決手段】樹脂支持体と金属供給用フィルムを用いて作製されたプリント配線基板であって、当該樹脂支持体が、その表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体であり、かつパターニング露光を施されたことを特徴とするプリント配線基板。
【選択図】なし

Description

本発明は、生産性、微細配線化が可能で、樹脂支持体との接着性が良好なプリント配線基板の作製方法と当該方法により作製したプリント配線基板に関する。
従来のプリント配線基板の製造方法としては、銅張り版上にフォトレジスト材料を塗布し、パターン状マスクを通して露光した後エッチング処理する、いわゆるサブトラクティブ法と触媒インクを回路パターン状に形成した後、めっき処理により所望の導電性パターンを形成するいわゆるアディティブ法、導電性粒子をインクジェット等で直接描画する方法等がある。しかし、サブトラクティブ法は、操作が煩雑で、マスクが高価であり、さらなる細線化要望に十分対応できてなく、直接描画法は、高い導電性を得るためには高温焼成が必要であり、樹脂基板への対応は難しい。一方、アディティブ法は、簡便でより細い線を形成するのに有効であるが、支持体との接着性、特に樹脂支持体との接着性に問題があり、アディティブ法の拡大の妨げになっていた。
この問題を解決する方法として、アミノシランアンカーコート層を設ける方法(例えば特許文献1参照)やプラスチック基材と接着性のよい分子接着剤を用いた方法(例えば特許文献2参照)が開示されている。
しかし、特許文献1の方法では、アンカーコート層の上に別途触媒のパターニング形成が必要であり、細線化はこの触媒パターニング形成法に左右され、例えばグラビア等の印刷法では30μm、インクジェット法でも25μm程度が限界で有り、近年の高精細化の要望に応え切れていない。また、特許文献2の方法は、簡便で光によるパターニングのため細線を形成しやすいが、触媒液が不安定であるために連続的に生産するとめっき不良による導通性の低下を招きやすく、十分な生産性を得にくいという問題がある。
特開2006−7519号公報 特開2008−50541号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、生産性、微細化、及びプリント配線と樹脂支持体との接着性が良好なプリント配線基板の作製方法を提供することである。また、当該作製方法により作製されたプリント配線基板を提供することである。
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討する過程において、表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体を所望の回路パターンで露光した後、金属供給用フィルムを重ね合わせて、加熱処理を行うことにより、露光されていないチオール基が残った部分のみに金属供給用フィルムから供給された金属が選択的に還元形成されることで、パターン化された金属細線が迅速に形成されことを見出した。また、表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体を所望の回路パターンで露光しながら、連続的に金属供給用フィルムを重ね合わせ、加熱処理を行うことにより、常に同じ状態で細線が形成されるため、安定した生産に適していることがわかった。さらに、金属供給用フィルムに光硬化性樹脂を含有しておき、表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体と重ね合わせた状態で所望の回路パターン露光することにより、露光されていない部分のみに縦方向に配線を成長させることができ、より線幅が細く、導電性の高いプリント配線基板が形成されることを見出した。
すなわち、本発明に係る上記課題は、下記の手段により解決される。
1.樹脂支持体と金属供給用フィルムを用いて作製されたプリント配線基板であって、当該樹脂支持体が、その表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体であり、かつパターニング露光を施されたことを特徴とするプリント配線基板。
2.前記金属供給用フィルムが、金属供給源としての有機金属化合物と金属イオン還元剤とを含有することを特徴とする前記1に記載のプリント配線基板。
3.前記金属供給用フィルムが、光硬化性樹脂を含有することを特徴とする前記1又は2に記載のプリント配線基板。
4.前記1から3の何れか一項に記載のプリント配線基板を製造するプリント配線基板の作製方法であって、表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体単独で、又は金属供給用フィルムを重ね合わせた状態で、パターニング露光する工程と、前記樹脂支持体と金属供給用フィルムを重ね合わせて加熱処理する工程を含むことを特徴とするプリント配線基板の作製方法。
5.前記パターニング露光及び加熱処理の後に、更に電解めっき又は無電解めっきを行うことを特徴とする前記4に記載のプリント配線基板の作製方法。
本発明の上記手段により、生産性、微細化、及びプリント配線と樹脂支持体との接着性が良好なプリント配線基板の作製方法を提供することができる。また、当該作製方法により作製されたプリント配線基板を提供することができる。
すなわち、高精細・高導電性のプリント配線基板を簡便で連続生産性に適した方法で作製できるプリント配線基板の作製方法を提供することができる。
本発明のプリント配線基板は、樹脂支持体と金属供給用フィルムを用いて作製されたプリント配線板(基板)であって、当該樹脂支持体が、その表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体であり、かつパターニング露光を施されたことを特徴とする。この特徴は、請求項1から5に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記金属供給用フィルムが、金属供給源としての有機金属化合物と金属イオン還元剤とを含有する態様であることが好ましい。また、当該金属供給用フィルムが、光硬化性樹脂を含有することが好ましい。
本発明のプリント配線基板を製造するプリント配線基板の作製方法としては、表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体単独で、又は金属供給用フィルムを重ね合わせた状態で、パターニング露光する工程と、前記樹脂支持体と金属供給用フィルムを重ね合わせて加熱処理する工程を含む態様の作製方法であることが好ましい。この場合、前記パターニング露光及び加熱処理の後に、更に電解めっき又は無電解めっきを行うことが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための最良の形態等について詳細な説明をする。
〔表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体〕
本願発明に係る表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体としては、樹脂支持体に下記一般式1で表されるチオール基を持つアルコキシシラン化合物を塗布乾燥して、樹脂支持体上に結合させたものを用いることができる。
Figure 2010098100
(式中、Rは、水素原子又は炭化水素基を示し、Rは炭化水素鎖又は異種原子もしくは官能基が介在してもよい炭化水素鎖を示し、Xは、水素原子又は炭化水素基を示し、Yはアルコキシ基を示し、nは1から3までの整数あり、Mはアルカリ金属である。)
なお、一般式1中、Rは、H−,CH−,C−,n−C−,CH=CHCH−,n−C−,C−,又は、C11−であり、
は、−CHCH−,−CHCHCH−,−CHCHCHCHCHCH−,−CHCHSCHCH−,−CHCHCHSCHCHCH−,−CHCHNHCHCHCH−,−(CHCHNCHCHCH−,−C−,−C−,−CHCH−,−CHCHCHCHCHCHCHCHCHCH−,−CHCHOCONHCHCHCH−,−CHCHNHCONHCHCHCH−,又は−(CHCHCHOCONHCHCHCH−であり、
Xは、H−,CH−,C−,n−C−,i−C−,n−C−,i−C−,又はt−C−であり、
Yは、CHO−,CO−,n−CO−,i−CO−,n−CO−,i−CO−,又はt−CO−であり、
Mは、Li,Na,K,又はCsである。
〔樹脂支持体〕
本発明に用いられる樹脂支持体としては、プラスチックフィルムを用いることができる。プラスチックフィルムの原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、環状オレフィン系樹脂などのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。
中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロースフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが最も好ましい。
本発明に係る上記樹脂支持体については、その表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させ易くするために、表面処理を施すことや易接着処理することが好ましい。特に樹脂表面にOH基を導入もしくは結合させることが好ましい。この表面処理や易接着処理としては従来公知の方法をはじめとして様々な方法を用いることができる。樹脂表面にOH基を導入もしくは結合させるより好適な方法としてはコロナ放電処理、大気圧プラズマ処理、UV照射処理の方法がある。最適処理条件はこれらいずれの場合も、樹脂支持体の成分の種類や履歴、樹脂添加剤等の種類と量などを考慮して定めることができる。なお、樹脂支持体の樹脂成分の種類、その構成として表面にOH基が存在するようにしてもよい。これも本発明におけるOH基の導入、結合に含まれる。
次いで、チオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させる工程では、OH基の導入、結合された樹脂を、チオール基を持つアルコキシシラン化合物を含有する溶液と接触させる。その後、加熱乾燥することによりチオール基を持つアルコキシシラン化合物を樹脂表面に結合させる。
〔パターニング露光工程〕
本発明におけるパターニング露光方法としては、紫外線を用いればマスク露光、レーザー露光、EB線照射による直接描画露光などが適用可能である。特に、マスク露光、レーザー露光が好ましい。光源としては、水銀ランプやメタルハライドランプ等を用いることができる。紫外線照射時間としては、前期一般式1のチオール基を持つアルコキシシラン化合物のSH基が、SS基に変換する範囲が好ましく、1〜300秒、特に10〜120秒が好ましい。
なお、金属供給用フィルムと表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体を重ね合わせた状態で露光する場合には、樹脂支持体や金属供給用フィルムが透明であればどちら側から露光しても良い。
〔金属供給用フィルム〕
本発明の金属供給用フィルムは、加熱により金属イオンを還元することで金属を生成することが出来る有機金属化合物を含有したフィルムであれば特に限定されない。すなわち、金属供給源としての有機金属化合物と金属イオン還元剤とを含有する態様のフィルムであればよい。
〔有機金属化合物〕
本願でいう「有機金属化合物」とは、前述のように、有機酸金属塩及び有機金属錯体を含めた広義の金属含有・有機化合物をいうものとする。
本発明において用いられる有機金属化合物としては、脂肪酸又は脂肪酸誘導体とAu、Ag、Cu、Ni、Pd、Pt、及びSnから選ばれる金属元素の金属イオンとの化合物が好ましく用いられる。
本発明に用いる有機金属化合物は、金属イオン還元剤の存在下で、80℃あるいはそれ以上に加熱された場合に金属イオン供給体として機能し、還元反応により金属を形成せしめる化合物であることを要する。
本発明において好適に用いられる有機酸金属塩としては、脂肪族カルボン酸の金属塩である。特に、炭素数が3〜30、好ましくは15〜28の長鎖ないし分岐脂肪酸が好ましく、分子量としては、200〜500が好ましく、250〜400がより好ましい。
脂肪族カルボン酸の好ましい例としては、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプロン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びこれらの混合物などを含む。金属としては、Ag、Cu、Niがより好ましい。
〈調製〉
有機金属化合物の調製方法としては、例えば、脂肪族カルボン酸の金属塩は、水溶性金属化合物と当該金属イオンと錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号公報に記載されている様なコントロールド・ダブルジェット法等が好ましく用いられる。
例えば、脂肪族カルボン酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を加えて脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウムなど)の溶液もしくは懸濁液を作製した後に、コントロールド・ダブルジェット法により、硝酸銀などと混合して脂肪族カルボン酸銀塩の結晶を作製する。その際に、脂肪族カルボン酸銀塩の種結晶粒子を混在させてもよい。
使用できるアルカリ金属塩の種類の例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等がある。これらの内の1種類のアルカリ金属塩、例えば水酸化カリウムを用いることが好ましいが、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムを併用することも好ましい。
〈脂肪族カルボン酸の金属塩の組成〉
本発明においては、1種類の脂肪族カルボン酸の金属塩だけを用いることもできるが、金属供給速度等の性能を制御する手段の一つとして、炭素数の異なる脂肪族カルボン酸金属塩の混合組成比率を調整する手段を採ることができる。
例えば、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸等の脂肪族カルボン酸の金属塩の混合比率を調整し、性能を制御することができる。
〔金属イオン還元剤〕
本発明の金属供給用フィルムには、前記有機金属化合物から供給される金属イオンを還元するために、金属イオンを還元し得る還元剤(「金属イオン還元剤」)も含有していることが好ましい。
当該還元剤としては、所定の温度に加熱したときに、有機金属化合物から供給される金属イオンに対して強い還元作用を発揮する化合物であれば良いが、加熱温度100〜180℃の範囲内で、還元作用を発揮する化合物であることが好ましい。
本発明においては、例えば、フェノール性ヒドロキシル基含有化合物が好ましく、更に好ましくはオルト位に置換基を有するいわゆるヒンダードフェノール系還元剤あるいはビスフェノール系還元剤が好ましい。特に好ましくは、欧州特許第1,278,101号明細書に記載の一般式(S)、一般式(T)を満足する化合物であり、具体的にはP21〜28に記載の(1−24)、(1−28)〜(1−54)、(1−56)〜(1−75)の化合物があげられる。
〔金属供給促進剤〕
本発明の金属供給用フィルムには、前記有機金属化合物から供給される金属イオンの移動を促進する機能を有する金属供給促進剤を含有させることも好ましい。
本発明に用いられる好適な金属供給促進剤の例としては、イミド類(スクシンイミド、フタルイミド、ナフタールイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド等);メルカプタン類(3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール等);フタラジノン誘導体又はこれらの誘導体の金属塩(フタラジノン、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジンとフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸)の組合せ;フタラジンとマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸又はo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物等)から選択される少なくとも一つの化合物との組合せ等が挙げられる。特に好ましい金属供給促進剤としては、フタラジノン又はフタラジンとフタル酸類、フタル酸無水物類の組合せである。
〔結合剤:バインダー〕
本願発明の金属供給用フィルムは、前記有機金属化合物、金属イオン還元剤等を担持するために、結合剤(「バインダー」ともいう。)を含有していても良い。結合剤としては、透明又は半透明で、一般に無色であり、天然ポリマーや合成ポリマー、及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、特開2001−330918号公報の段落「0069」に記載のものが挙げられる。これらの内、特に好ましい例としては、メタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸アリールエステル類、スチレン類等が挙げられる。この様な高分子化合物の中でも、アセタール基を持つ高分子化合物を用いることが好ましい。アセタール基を持つ高分子化合物でも、アセトアセタール構造を持つポリビニルアセタールであることがより好ましく、例えば米国特許2,358,836号、同3,003,879号、同2,828,204号、英国特許771,155号等各明細書に示されるポリビニルアセタールを挙げることができる。ポリビニルアセタールとして、特に好ましくはポリビニルブチラールであり、主結合剤として用いることが好ましい。ここで言う主結合剤とは、「全結合剤の50質量%以上を占めている状態」をいう。従って、全結合剤の50質量%未満の範囲で他のポリマーをブレンドして用いてもよい。これらのポリマーとしては、本発明のポリマーが可溶となる溶媒であれば特に制限はない。より好ましくは、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。本発明で用いる結合剤のガラス転移温度(Tg)は、70〜105℃であることが、所望の配線パターンを形成するために好ましい。また、本発明の結合剤としては、数平均分子量が1,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、重合度が約50〜1,000程度のものが良い。結合剤の量としては、結合剤:有機金属化合物で0.02:1〜1:1(質量比)が好ましく、特に0.05:1〜0.5:1の範囲が好ましい。結合剤の量が少なすぎると有機銀の担持能力が劣り、金属供給用フィルムからの金属供給が不安定になる。一方、結合剤の量が多すぎると金属供給用フィルムからプリント配線基板への金属の移動が遅くなり、どちらの場合でも配線の導電性が劣ってしまう。
本発明の金属供給用フィルムは、有機性ゲル化剤を含有してもよい。尚、ここで言う有機性ゲル化剤とは、例えば多価アルコール類のように、有機液体に添加することにより、その系に降伏値を付与し、系の流動性を消失あるいは低下させる機能を有する化合物を言う。
〔光硬化性樹脂〕
本願発明に係る金属供給用フィルムには、光硬化性樹脂を含有していることが好ましい。
金属供給用フィルムに光硬化性樹脂を含有しておき、表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体と重ね合わせた状態で所望の回路パターン露光することにより、露光されていない部分のみに縦方向に配線を成長させることができ、より線幅が細く、導電性の高いプリント配線基板が形成される。
本願発明で用いられる光硬化性樹脂は、光の照射により硬化する樹脂であれば、特に限定されないが、表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体と重ね合わせた状態露光したときに、パターン露光と光硬化を同時に起なう場合には、表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体のパターン化が可能なUV領域の波長の光で効果する樹脂が好ましい。
〔金属供給用フィルム作製方法〕
本発明の金属供給用フィルムの作製方法としては、前記の有機金属化合物や還元剤、結合剤等を溶媒に溶解又は分散させた塗布液を作り、それら塗布液を塗布、乾燥して形成されることが好ましい。各成分の比率を変えた重層構成にしても、単層構成で形成しても良い。
塗布方法としては、特に制限はなく、例えば、バーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、リバースロール塗布法、グラビア塗布法、エクストリュージョン塗布法等の公知の方法を用いることができる。
本発明の塗布液に使用する溶媒としては、有機金属化合物や還元剤、結合剤等を溶解又は分散させることが出来れば特に限定されないが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、イソプロピルアルコール等の極性溶媒が好ましく使用される。
〔加熱処理工程〕
本願発明の加熱処理工程としては、樹脂基板と金属供給用フィルムを重ね合わせた後で、加熱したローラ間を加圧しながら通す、いわゆるラミネータや、加熱した金属板の間に挟みこんで上下から油圧ポンプ等プレスする、いわゆるホットプレス等が用いられるが、連続生産性等を考慮すると、ラミネータが好ましい。
加圧する圧力としては、樹脂基板と金属供給用フィルムが均一に密着していればよいが、密着性を確保することと、圧力による傷や痕がつかないためには、0.05〜5MPaが良く、好ましくは0.1〜3MPaが良い。
本発明の加熱温度としては、有機金属化合物が加熱還元剤で還元して金属になり、パターン露光した樹脂支持体上でのみ析出すればよく、好ましくは100〜180℃であり、115〜135℃がより好ましい。加熱温度が低すぎると十分に還元されず、好ましい導電性が得られなくなる。一方、加熱温度が高すぎると現像の制御が利かず、所望のパターン形成部以外でも金属の析出が起こり、プリント配線基板性能の劣化につながったり、フレキシブル基板の場合には、基板自身の熱劣化により基板と細線の密着力が低下したり、細線寸断の原因にもなる。
〔めっき処理〕
本願方法でプリント配線基板を作製した後、めっき処理を行うことがより好ましい。めっき処理には従来公知の種々のめっき方法を用いることができ、例えば電解めっき及び無電解めっきを単独、あるいは組み合わせて実施することができる。中でも、電流分布ムラによるめっきムラが発生しない無電解めっきを好ましく用いることができる。無電解めっきに用いることができる金属としては、例えば銅、ニッケル、コバルト、すず、銀、金、白金、その他各種合金を用いることができるが、めっき処理が比較的容易であり、かつ高い導電性を得やすいという観点から、銅無電解めっきを用いることが特に好ましい。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
〔金属供給フィルムA〕
コロナ放電処理を施した175μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに下引き層a−1とa−2をそれぞれ乾燥後の膜厚が0.2μm、0.03μmになるように塗布、乾燥し、その上に下記金属供給層を乾燥後の膜厚が50μmになるように塗布乾燥して、金属供給フィルムAを作製した。
下引き層a−1
アクリル系ポリマーラテックスC−3(固形分30%) 70.0g
エトキシ化アルコールとエチレンホモポリマーの水分散物(固形分10%)5.0g
界面活性剤(A) 0.1g
純水を加えて1000mlとした。
下引き層a−2
変性水性ポリエステルB−2(18質量%) 30.0g
界面活性剤(A) 0.1g
真球状シリカマット剤(日本触媒(株)製 シーホスターKE−P50)0.04g
純水を加えて1000mlとした。
金属供給層A
メチルエチルケトン 53.7g
ベヘン酸銀 12.5g
結合剤 1.0g
現像剤A 1.02g
4−メチルフタル酸 0.08g
脂肪族イソシアネート 2.26g
フタラジン 0.33g
*結合剤:ビニルアセトアセタール(41):ビニルブチラール(27):ビニルアルコール(16):酢酸ビニル(2)の共重合体(括弧内の数字はそれぞれのモノマーモル%を表す)
〔金属供給フィルムB〕
金属供給層Aのベヘン酸銀をステアリン酸銀に変更した以外は同様にして金属供給フィルムBを作製した。
〔金属供給フィルムC〕
金属供給層Aのベヘン酸銀をステアリン酸銅に変更した以外は同様にして金属供給フィルムEを作製した。
〔金属供給フィルムD〕
金属供給層Aで結合剤1.0gを光硬化性樹脂組成液UVHに変更した以外は同様にして金属供給フィルムDを作製した。
[光硬化性樹脂組成液UVHの調製]
MMA/BA/スチレン/MAA=30/25/20/25質量比の組成を有し、重量平均分子量が70000の共重合体の35%メチルエチルケトン溶液 142質量部
トリメチロールプロパントリメタクリレート(大日本インキ(株)製) 20質量部
ポリエチレングリコール#400ジアクリレート(日本油脂(株)製) 15質量部
N−フェニルグリシン(東京化成(株)製) 0.15質量部

(表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体の作製)
コロナ放電処理を行った厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをトリエトキシシリルプロピルトリアジンジチオール0.1%エタノール溶液に20℃1分間浸漬、乾燥した後、アルコールで未反応のアルコキシシラン化合物を除去して、表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体を作製した。
実施例1
上記のように作製した表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体を線幅5μm、間隔5μm、長さ10cmで並行に10本をUVレーザーでパターニング露光により描画した後、金属供給フィルムAを金属供給層と表面どうしが接触するように重ね合わせて、圧力0.4MPa、温度120℃の加圧加熱ローラーベルト間を12秒間保持されるように通した後、金属供給フィルムを樹脂支持体から剥離した。さらに、下記の無電解めっき液を用いて45℃で厚さ10μmになるように無電解めっきを行い、プリント配線基板A1を作製した。同様にして連続で10枚のプリント配線基板を作製し、A2からA10とした。
無電解めっき液
硫酸銅 0.04モル
ホルムアルデヒド(37%) 0.08モル
水酸化ナトリウム 0.10モル
トリエタノールアミン 0.05モル
ポリエチレングリコール 100ppm
水を加えて全量を1リットルとする。
実施例2
実施例1で金属供給用フィルムAを金属供給用フィルムBに変えた以外は同様にして、プリント配線基板B1からB10を作製した。
実施例3
実施例1で金属供給用フィルムAを金属供給用フィルムCに変えた以外は同様にして、プリント配線基板C1からC10を作製した。
実施例4
実施例1で金属供給用フィルムAを金属供給用フィルムDに変え、表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体と金属供給用フィルムDを金属供給層と表面どうしが接触するように重ね合わせてから、金属供給用フィルム側から線幅5μm、間隔5μmで並行に10本をレーザー露光で描画する以外は同様にして、プリント配線基板D1からD10を作製した。
比較例1
コロナ放電処理を行った厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの上に下記のアンカーコート層塗布液を、乾燥後0.05g/mになるようにグラビアコーターを用いて塗布、乾燥した後、110℃で5分間加熱硬化処理した。このアンカーコート層の上にPd触媒インクを用いてインクジェットでライン幅25μm、ライン間隔10μm、長さ10cmの並行する10本のパターンを印刷した後、80℃で10分間乾燥してから、実施例1と同様の方法で厚さ5μmになるように無電解めっきを行い、プリント配線基板E1からE10を作製した。
比較例2
実施例1で金属供給用フィルムAを貼り合わせる代わりに、表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体を触媒処理液NP−8(上村工業(株)製)150ml/lとHCl 150ml/l溶液に25℃、1分間浸漬、乾燥した後、無電解めっきを行う以外は同様にして、プリント配線基板F1からF10を作製した。
[配線形状観察]
作製した配線を切断して、顕微鏡で観察し、線幅、線間隔、厚さを測定した(図1参照)。
[導通性]
デジタルテスターで、作製したプリント配線基板の各々1枚目と5枚目、10枚目について10本のパターン線の抵抗値を測定し、導通性が維持されている本数を調べた。
上記評価結果を表1に示す。
Figure 2010098100
表1から明らかなように、比較例1では、インクジェット法で触媒をパターニング描画するため、線幅が細く出来ないだけでなく、線の形成がドットの重なりであるために、途中で細い部分が出来たりして、導通性が得られない。また、比較例2では、触媒溶液の不安定性に起因して、連続生産時に安定した配線が得られない、一方、本発明に係る試料は線幅を細く維持できたまま、1枚目から10枚目まで導通性が損なわれることなく、安定に連続的に生産できることがわかる。さらに、光硬化樹脂を含有した本発明においては、図2に示すように、細線形状が縦方向に形成でき、より高精細なプリント配線基板の作製が可能となる。すなわち、本発明の手段により、高精細化及び高導電性を持つ簡便で連続生産性に適したプリント配線基板の作製方法が提供できる。
アディティブ法プリント配線基板の模式図 本願発明の光硬化性樹脂含有時のプリント配線基板の模式図
符号の説明
1 プリント配線基板
2 樹脂支持体
3 配線

Claims (5)

  1. 樹脂支持体と金属供給用フィルムを用いて作製されたプリント配線基板であって、当該樹脂支持体が、その表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体であり、かつパターニング露光を施されたことを特徴とするプリント配線基板。
  2. 前記金属供給用フィルムが、金属供給源としての有機金属化合物と金属イオン還元剤とを含有することを特徴とする請求項1に記載のプリント配線基板。
  3. 前記金属供給用フィルムが、光硬化性樹脂を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のプリント配線基板。
  4. 請求項1から3の何れか一項に記載のプリント配線基板を製造するプリント配線基板の作製方法であって、表面にチオール基を持つアルコキシシラン化合物を結合させた樹脂支持体単独で、又は金属供給用フィルムを重ね合わせた状態で、パターニング露光する工程と、前記樹脂支持体と金属供給用フィルムを重ね合わせて加熱処理する工程を含むことを特徴とするプリント配線基板の作製方法。
  5. 前記パターニング露光及び加熱処理の後に、更に電解めっき又は無電解めっきを行うことを特徴とする請求項4に記載のプリント配線基板の作製方法。
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