JP2010097055A - 位相差フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】配向基板なしに光学的異方性膜を形成することができ、また、厚みを変えずに所望の位相差値とすることのできる位相差フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】フィルムに感光性層を形成した後、これを等方相転移温度以上に加熱してからガラス相−液晶相転移温度以下に冷却する。冷却後の感光性層に対して偏光を照射して光学的異方性膜とした後に加熱処理を行う。その後、感光性化合物のガラス相−液晶相転移温度以上で光学的異方性膜に非偏光を照射する。これにより、フィルムの厚みを変えずに位相差値を変えることができる。
【選択図】図1
【解決手段】フィルムに感光性層を形成した後、これを等方相転移温度以上に加熱してからガラス相−液晶相転移温度以下に冷却する。冷却後の感光性層に対して偏光を照射して光学的異方性膜とした後に加熱処理を行う。その後、感光性化合物のガラス相−液晶相転移温度以上で光学的異方性膜に非偏光を照射する。これにより、フィルムの厚みを変えずに位相差値を変えることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、位相差フィルムの製造方法に関する。
位相差フィルムは、屈折率異方性によって入射偏光を変換する光学素子であり、互いに垂直な主軸方向に振動する直線偏光成分を透過して、これらの間に所定の位相差を与える。位相差フィルムの使用量は、液晶ディスプレイの薄型化、軽量化、大型化、さらには高精細化などに伴って増加しており、位相差フィルムに対する生産量増大の要求が高まっている。
位相差フィルムの製造方法には、基材上に光学的異方性層を形成する方法や、高分子フィルムを延伸する方法などがある。
例えば、特許文献1には、基材上に液晶性化合物を含む層を形成した後、この層に液晶配向能を有する配向基板を接触させて、層中の液晶性化合物を配向させることにより、位相差フィルムを製造する方法が記載されている。配向基板には、基材上に液晶配向能を有する配向膜を設けたものが用いられる。
しかし、特許文献1の方法では、光学的異方性層を形成するために、上記のような配向基板を準備することが必要となる。また、配向基板が接触した際に配向膜が剥がれると、剥がれた配向膜が位相差フィルム中に異物となって残るおそれがある。さらに、配向処理の方法として一般に用いられているラビング法は、配向膜の表面をラビング布で擦ることによって配向処理を施すものであるが、ラビング布に損傷があると、部分的な配向不良が生じて配向ムラとなり、位相差値にばらつきが生じる。こうした異物や配向ムラの発生は、位相差フィルム製造工程での歩留まりを低下させる結果となる。
さらに、従来法においては、位相差フィルムの厚みを変えて位相差値を制御することが行われていた。このため、例えば、所望とする位相差値に応じて、位相差フィルムの厚みを細かく調整する必要があった。また、位相差値を大きくするには位相差フィルムを厚くするのがよいが、液晶ディスプレイの薄型化の点からは好ましくない。したがって、位相差フィルムの厚みを変えずに位相差値を制御する方法の開発が求められていた。
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、配向基板なしに光学的異方性膜を形成することができ、また、厚みを変えずに所望の位相差値とすることのできる位相差フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
本発明の位相差フィルムの製造方法は、基材の一方の面に液晶性を発現し得る感光性化合物を含む感光性層を形成する工程と、
前記感光性層を前記感光性化合物の等方相転移温度以上に加熱する工程と、
前記感光性層を前記加熱をした状態から前記感光性化合物のガラス相−液晶相転移温度以下に冷却する工程と、
前記冷却後の感光性層に対して偏光を照射して光学的異方性膜とする工程と、
前記偏光を照射した後で、前記光学的異方性膜を感光性化合物のガラス相−液晶相転移温度より高い温度で加熱処理する工程と、
前記加熱処理した後で、前記感光性化合物のガラス相−液晶相転移温度以上で前記光学的異方性膜に非偏光を照射する工程とを有することを特徴とする。
前記感光性層を前記感光性化合物の等方相転移温度以上に加熱する工程と、
前記感光性層を前記加熱をした状態から前記感光性化合物のガラス相−液晶相転移温度以下に冷却する工程と、
前記冷却後の感光性層に対して偏光を照射して光学的異方性膜とする工程と、
前記偏光を照射した後で、前記光学的異方性膜を感光性化合物のガラス相−液晶相転移温度より高い温度で加熱処理する工程と、
前記加熱処理した後で、前記感光性化合物のガラス相−液晶相転移温度以上で前記光学的異方性膜に非偏光を照射する工程とを有することを特徴とする。
前記非偏光を照射する工程は、前記感光性化合物の等方相転移温度以下で行われることが好ましい。
前記加熱は、輻射熱を用いて行われることが好ましい。
本発明によれば、配向基板を準備しなくても光学的異方性膜を形成することができる。特に、本発明においては、加熱処理した後で感光性化合物のガラス相−液晶相転移温度以上で光学的異方性膜に非偏光を照射する。これにより、位相差フィルムの厚みを変えずに位相差値を変えることができる。
本発明で用いられる基材としては、ロール状に巻回された状態で保持でき、繰り出しや巻き取りが可能な高分子フィルムが好ましく用いられる。
高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリスチレンおよびアクリロニトリル・スチレン共重合体などのスチレン系ポリマー、ジアセチルセルロースおよびトリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ビスフェノールA・炭酸共重合体などのポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレン・プロピレン共重合体などの直鎖または分枝状ポリオレフィン、ポリノルボルネンなどのシクロ構造を含むポリオレフィン、塩化ビニル系ポリマー、脂肪族および芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、または、エポキシ系ポリマーなどが挙げられる。
基材の厚さは、特に限定されないが、10μm〜300μmが適当である。
基材は、位相差フィルムを作製した後に剥離して除去してもよく、また、基材自身が透明で光学的に等方性であれば剥離しないでそのまま位相差フィルムとして使用することもできる。透明で光学的に等方性である基材としては、ジアセチルセルロースおよびトリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマーからなるフィルムが挙げられる。尚、高分子フィルムにおいては、後述する感光性化合物に侵されないようにするため、表面に保護層を設けてもよい。また、基材には易接着層などを設けてもよい。
本発明における「液晶性を発現し得る感光性化合物(以下、単に「感光性化合物」ということがある。)」としては、感光性基を有する液晶性重合体若しくは液晶性低分子化合物またはこれらの混合体などを挙げることができる。ここで、感光性基とは、光照射により他の分子と結合する官能基をいう。感光性化合物は、感光性基を有さない液晶性化合物や、液晶性を損なわない程度の非液晶性低分子化合物との併用が可能である。非液晶性低分子化合物としては、配向性を向上させるための配向助剤や、耐熱性を向上させるための架橋剤などが挙げられる。感光性化合物として、感光性基を有する液晶性重合体を用いた場合には、その液晶性を損なわない程度に非液晶性の単量体を共重合させることができる。
感光性基を有する液晶性重合体としては、例えば、液晶性高分子のメソゲン成分として多用されているビフェニル基、ターフェニル基、フェニルベンゾエート基またはアゾベンゼン基などと、シンモナイル基、カルコン基、シンナミリデン基、β−(2−フリル)アクリロイル基、ケイ皮酸基またはこれらの誘導体基などの感光性基とを結合した構造を含む側鎖を有し、アクリレート、メタクリレート、マレイミド、N−フェニルマレイミドまたはシロキサンなどの構造を主鎖に有する高分子を用いることができる。この重合体は、同一の繰り返し単位からなる単一の重合体であってもよく、構造の異なる側鎖を有する単位の共重合体であってもよい。さらには、感光性基を含まない側鎖を有する単位を含む共重合体とすることもできる。
感光性基を有する液晶性低分子化合物としては、例えば、メソゲン成分として多用されているビフェニル基、ターフェニル基、フェニルベンゾエート基またはアゾベンゼン基などと、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基若しくはケイ皮酸基またはこれらの誘導体などの感光性基を、屈曲性成分を介して、または、屈曲性成分を介さずに結合した液晶性化合物を用いることができる。
液晶性を発現し得る感光性化合物を含む感光性層を基材の上に形成する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、感光性化合物に、所望により溶剤やその他の成分を加えた塗布液を塗布する方法が挙げられる。塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、バーコート法、グラビア印刷法、ディップコート法、ナイフコート法、ダイコート法、またはスプレーコート法などを挙げることができる。尚、塗布性を向上させるために、溶剤を用いた場合には、塗布後に乾燥させて溶剤をある程度まで除去しておくことが好ましい。但し、この工程は必ずしも独立した工程である必要はなく、次に述べる等方相転移温度以上に加熱する工程と一緒にしてもよい。また、塗布膜の厚さ(乾燥後)は、0.3〜30μmが好ましく、0.5〜20μmがより好ましい。
基材の上に感光性層を形成した後は、液晶相から等方相に転移する温度(等方相転移温度)以上に加熱して、感光性化合物を等方性の相にする。例えば、感光性化合物が感光性基を有する液晶性重合体と液晶性低分子化合物との混合体からなる組成物の場合、等方相にすると、重合体の側鎖部や低分子化合物は、特定の方向を向かずに各々が無秩序な方向を向いた状態となる。以下では、この組成物を例にとり説明する。
本発明においては、上記の加熱方法として、温風を吹き付ける方法や、遠赤外線ヒータなどを用いた輻射熱によって加熱する方法などが挙げられる。特に、後述する加熱部と冷却部を備えた装置を用いて位相差フィルムを製造する場合、温風が冷却部に流入して冷却工程に熱の影響が及ぶおそれを低減できることから、輻射熱によって加熱する方法が好ましい。加熱時間は、特に限定されないが、通常は1秒〜10分程度である。
上記の加熱工程後に感光性層を冷却すると、組成物は、等方相から液晶相を経てガラス相へと変化する。すなわち、組成物の温度が、等方相転移温度より低くなると液晶相になり、さらに、ガラス相−液晶相転移温度以下になるとガラス相になる。このとき、冷却速度を大きくして等方相である組成物をガラス相−液晶相転移温度以下まで冷却(以下、急冷という。)すると、組成物を構成する重合体や低分子化合物は、分子配列に明確な規則性を有しない状態で動きが固定される。例えば、100℃で等方相にある組成物を、6秒以内に50℃まで急冷してガラス相にすると、分子配列を不規則な状態で固定することができる。本発明においては、冷却速度を5℃/秒以上とすることが好ましい。冷却速度が5℃/秒より小さくなると、局所的に規則的な分子配列が存在するおそれがあり、これによって位相差フィルムの品質が低下することがある。
急冷は、例えば、気体を組成物に吹き付けることによって行うことができる。このとき、気体は吹き付けられる際に組成物のガラス相−液晶相転移温度以下に冷却されていることが好ましい。具体的には、予め冷却された気体を吹き付けたり、冷却された雰囲気下で気体を吹き付けたりする。吹き付ける気体としては、例えば、空気、窒素またはアルゴンなどの不活性気体が好適である。気体を吹き付ける際の風速は、0.5m/分〜20m/分が好ましく、風量は感光性層表面の1m2あたり0.1m3/分〜2.0m3/分が好ましい。風速および風量がこの範囲であると、組成物をガラス相−液晶相転移温度以下まで効率的に急冷することができ、かつ、感光性層表面の平滑性を保つことができる。
急冷は、冷却ロールを基材の感光性層が設けられた面とは反対側の面に接触させることにより行うこともできる。この方法によれば、後述する加熱部と冷却部を備えた装置を用いた位相差フィルムの製造工程において、冷却工程に隣接する加熱処理工程に冷却の影響が及ぶのを防ぐことができる。また、気体を吹き付ける方法に比べて熱交換効率が高いので、冷却速度の向上を図ることができる。さらに、ロールを回転させながら冷却するので、温度ムラを防ぐことができ、位相差フィルム面内で位相差値にばらつきが生じるのを抑制できる。
冷却ロールとしては、例えば、内部に冷却水が通っていて、ロールに接している基材から熱を奪う仕組みのものが用いられる。具体的には、パイプ状のロールに中空軸付の蓋が取り付けられていて、一方の軸部から冷却水が供給され、他方の軸部から冷却水が排出される構造のものが挙げられる。また、ロールの内部にスパイラル構造の冷却水パイプが設けられていて、ロール表面の温度が均一になるように構成されたものも挙げられる。温度調整の方法としては、例えば、ロール表面に取り付けた温度センサによって、ロール表面の温度を検出して冷却水の流量を調節する方法などが挙げられる。
上述したように、等方相にある感光性層を急冷すると、感光性層を構成する分子の配向が無秩序な状態に固定される。例えば、側鎖に感光性基を有する液晶性重合体と液晶性低分子化合物との混合体からなる組成物の場合、重合体の側鎖部や低分子化合物は、特定の方向を向かない状態で動きが固定される。
ガラス相において、無秩序に共存している感光性基を有する液晶性重合体の中には、その長軸(感光性基の分極方向)が、照射光の光路軸および電界振動方向の双方に対してともに平行となっているものがあり、このような配置の重合体の側鎖は、他の配置にある感光性基に比べて高い光反応性を有する。それ故、急冷後の組成物の重合体の長軸に平行な偏光を照射すると、長軸が当該直線偏光に平行な重合体間で選択的に二量化反応が起こる。ここで、本発明における偏光とは、次式で表わされる偏光度が50%を超えるものをいう。
偏光度={完全偏光成分/(完全偏光成分+非偏光成分)}×100(%)
偏光度={完全偏光成分/(完全偏光成分+非偏光成分)}×100(%)
二量化反応により分子量が大きくなった重合体は配向が固定され、その結果、組成物は光学的異方性を有する膜(光学的異方性膜)となる。尚、この光反応を進めるには、感光性基の部分が反応し得る波長の光を照射することが必要となる。この波長は、感光性基の種類によっても異なるが、一般には、200nm〜500nmであり、中でも250nm〜400nmの領域の光に高い感光性を有する場合が多い。
上記の偏光照射の際には、基材の搬送方向に対し斜め方向から偏光を照射することにより、光軸を任意に傾斜させて配向させることが可能となる。したがって、この方法によれば、光軸を所望の方向に設定した位相差フィルムが得られる。
偏光を照射した後、組成物のガラス相−液晶相転移温度より高い温度で光学的異方性膜に対して加熱処理を施す。この加熱処理により光反応を起こさなかった重合体の側鎖部と、低分子化合物とは、光反応を起こした側鎖と同じ方向に分子運動によって配向(再配向)する。これにより、膜全体において、未反応の感光性の重合体の液晶性側鎖部および低分子化合物が、光反応を起こした液晶性を有する側鎖と平行方向に配向して、位相差が誘起される。尚、位相差を効率よく誘起するには、感光性基を有しない側鎖を含有させ、光反応点の密度を下げることによって、再配向時の分子運動の自由度を上げてもよい。
この場合の加熱温度は、組成物の等方相転移温度より高く、光反応を起こした組成物の軟化点より低いことが好ましい。加熱時間は、好ましくは1秒〜10分、より好ましくは3秒〜3分である。尚、後述する加熱部および冷却部を備えた装置を用いる場合、位相差フィルムの製造工程で加熱部に隣接する冷却部の温度上昇を防ぐ点からは、加熱は、赤外線ヒータなどの輻射熱によって行うのがよい。
上記の加熱処理を行った後は、光学的異方性膜に非偏光を照射する。非偏光を照射すると、組成物に含まれる未反応の感光性基を有する液晶性重合体が反応して配向が固定され、位相差フィルムが得られる。本発明においては、組成物(感光性化合物)のガラス相−液晶相転移温度以上で非偏光を照射する。この方法によれば、位相差フィルムの厚みを変えずに照射時の温度を変えることにより位相差値を変えることができる。すなわち、同じ厚さであっても異なる位相差値の位相差フィルムとすることができる。非偏光照射時の温度は、組成物の等方相転移温度以下とすることが好ましい。組成物の等方相転移温度より高い温度では、位相差値が小さくなりすぎる。したがって、加熱処理温度が組成物の等方相転移温度より高い場合は、加熱処理後、組成物を徐々に冷却して等方相転移温度以下とすることが好ましい。また、組成物をガラス相−液晶相転移温度より低い温度まで冷却した後、再び加熱してガラス相−液晶相転移温度以上として非偏光を照射してもよい。
非偏光照射時の温度を変えることにより位相差値が変わる理由は明らかではないが、非偏光が照射され、組成物に含まれる未反応の液晶性重合体が反応するときに配向の乱れが生じることと、配向の乱れは温度によって異なることの2点によると推測される。分子の動きやすさは温度に依存するので、温度が高いほど位相差値の変化率を大きくすることができる。ここで、位相差値の変化率は次式で表わされる。
位相差値の変化率=(非偏光照射後の位相差値/非偏光照射前の位相差値)×100(%)
位相差値の変化率=(非偏光照射後の位相差値/非偏光照射前の位相差値)×100(%)
図1は、温度を変えて照射量と位相差値の変化率との関係を調べた一例である。この図より、温度が高くなるほど位相差値の変化率は大きくなる。これは、温度が高いほど分子が動きやすくなるためと考えられる。
図2は、加熱部および冷却部を備えた装置内で基材を搬送しながら位相差フィルムを製造する方法を示している。この図の例では、基材として、ロール状に巻回された高分子のフィルム2を用い、保持リール1からフィルム2を繰り出して矢印の方向に搬送する。まず、塗布部3において、フィルム2の上に、液晶性を発現し得る感光性化合物を塗布する。この場合の塗布方法としては、例えば、グラビア印刷法を挙げることができる。次いで、乾燥部4で溶剤を除去した後、遠赤外線ヒータ(図示せず)が設けられた加熱部5の中にフィルム2を送って、感光性層を加熱する。このとき、加熱部5の温度は、感光性化合物の等方相転移温度以上に設定しておく。一方、加熱部5の出口付近には、冷却部6を設けておく。冷却部6としては、前述の気体を吹き出す機構や冷却ロールが挙げられる。
図2では、冷却部6に連続して、偏光照射部12、加熱・徐冷部13および非偏光照射部14が連続して設けられている。偏光照射部12では、フィルム2に対して斜めの方向から偏光15が照射される。また、非偏光照射部14では、同じ方向から非偏光16が照射される。加熱・徐冷部13では、感光性化合物のガラス相−液晶相転移温度より高い温度で光学的異方性膜が加熱された後、徐々に冷却される。非偏光照射部14には、必要により加熱機構を設け、光学的異方性膜を感光性化合物のガラス相−液晶相転移温度以上の温度とする。組成物は、これらの工程を経て位相差フィルムとなる。その後、巻き取りロール17に巻き付けられた状態となって回収される。尚、偏光および非偏光は、図2に示すように、フィルム2の片面側からのみ照射してもよいが、両面側から照射することもできる。
以上述べたように、液晶性を発現し得る感光性化合物を含む感光性層をこの化合物の等方相転移温度以上に加熱した後、ガラス相−液晶相転移温度以下に冷却することにより、等方相にある化合物の分子配列を不規則な状態に固定できる。そして、この状態で偏光を照射して特定方向の光反応を誘起し、これを契機として複屈折性を発現させるので、配向基板を準備しなくても光学的異方性膜を形成することができ、また、光軸を任意に傾斜させて配向させることが可能となる。特に本発明では、加熱処理した後で感光性化合物のガラス相−液晶相転移温度以上で光学的異方性膜に非偏光を照射するので、位相差フィルムの厚みを変えずに位相差値を変えて、所望の位相差値の位相差フィルムとすることができる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。
以下に、本発明の実施例と比較例を述べる。
実施例1
図2に示した装置を用いて位相差フィルムを製造した。基材として、光等方性の保護層を表面に設けたトリアセチルセルロースフィルム(リンテック株式会社製:商品名CHC−TAC80E1K、厚さ85μm)を、幅300mmで長さ100mとしてロール状に巻回されたものを用いた。保持リールから基材を繰り出しながら、グラビア印刷によって、液晶性を発現し得る感光性化合物として林テレンプ株式会社製の光配向材(商品名:HT−EZ)を基材の保護層側に塗布し110℃で1分間乾燥して、約2μmの厚さの塗布膜(感光性層)を形成した。尚、用いた光配向材の等方相転移温度は100℃、ガラス相−液晶相転移温度は40℃である。
図2に示した装置を用いて位相差フィルムを製造した。基材として、光等方性の保護層を表面に設けたトリアセチルセルロースフィルム(リンテック株式会社製:商品名CHC−TAC80E1K、厚さ85μm)を、幅300mmで長さ100mとしてロール状に巻回されたものを用いた。保持リールから基材を繰り出しながら、グラビア印刷によって、液晶性を発現し得る感光性化合物として林テレンプ株式会社製の光配向材(商品名:HT−EZ)を基材の保護層側に塗布し110℃で1分間乾燥して、約2μmの厚さの塗布膜(感光性層)を形成した。尚、用いた光配向材の等方相転移温度は100℃、ガラス相−液晶相転移温度は40℃である。
次に、遠赤外線ヒータを用いて、塗布膜を110℃で30秒間加熱した。その後、遠赤外線ヒータから出た基材の塗布膜側に、温度20℃の空気(冷却した気体)を吹き付け、10秒間かけて室温(25℃)まで冷却した。この急冷工程における空気の風速は1m/分、風量は0.12m3/分であった。尚、塗布膜の温度は、塗布膜表面の温度を熱電対(チノー(株)製シートカップルC060−Kと、キーエンス(株)製NR−600データロガーを使用)を用いて測定した。
次に、塗布膜に対しその表面の側から偏光を照射して光学的異方性膜とした。具体的には、ハリソン東芝ライティング株式会社製の紫外線照射装置(製品名:HCM−96011S−DM)を用い、ブリュースター角の原理を適用して、完全偏光成分と非偏光成分からなる偏光度85%の紫外線(90mJ/cm2)を照射した。光軸および電界振動方向は基材の流れ方向に平行になるように設定した。尚、ブリュースター角については、「初等物理シリーズ8、光と電波、培風館」に記載されている。
偏光を照射した後は、塗布膜を110℃まで加熱し30秒間保持して加熱処理を行った。その後、10分間かけて室温(23℃)まで冷却してから、遠赤外線ヒータを用いて光学的異方性膜を加熱し、43℃に保った状態でアイグラフィックス株式会社製の2kWアイグランデージ(ECS−401GX)を用いて、非偏光性の紫外線を照射した。得られた位相差フィルムを、再びロールに巻き取った。同様にして、非偏光性の紫外線の光量(積算光量)のみを変更して位相差フィルムを作製した。
作製した位相差フィルムの位相差値の測定は、王子計測機器株式会社製の位相差測定装置(製品名:KOBRA−WR)を用いて位相差フィルムを室温(23℃)まで降温して行った。位相差値の変化率における非偏光照射前の位相差値は、加熱処理を行った後、10分かけて25℃まで冷却した時の位相差値(187.6nm)である。表1に、非偏光性の紫外線の光量、位相差値および位相差値の変化率をまとめた結果を示す。表1から分かるように、光量が多くなるほど位相差値は小さくなった。
実施例2
非偏光性の紫外線を照射する際の温度を55℃に保った状態で非偏光性の紫外線を照射した他は、実施例1と同様にして位相差フィルムを作製した。表1に、非偏光性の紫外線の光量、位相差値および位相差値の変化率をまとめた結果を示す。実施例1と同様に、光量が多くなるほど位相差値は小さくなることが分かった。
非偏光性の紫外線を照射する際の温度を55℃に保った状態で非偏光性の紫外線を照射した他は、実施例1と同様にして位相差フィルムを作製した。表1に、非偏光性の紫外線の光量、位相差値および位相差値の変化率をまとめた結果を示す。実施例1と同様に、光量が多くなるほど位相差値は小さくなることが分かった。
実施例3
非偏光性の紫外線を照射する際の温度を60℃に保った状態で非偏光性の紫外線を照射した他は、実施例1と同様にして位相差フィルムを作製した。表1に、非偏光性の紫外線の光量、位相差値および位相差値の変化率をまとめた結果を示す。実施例1と同様に、光量が多くなるほど位相差値は小さくなることが分かった。
非偏光性の紫外線を照射する際の温度を60℃に保った状態で非偏光性の紫外線を照射した他は、実施例1と同様にして位相差フィルムを作製した。表1に、非偏光性の紫外線の光量、位相差値および位相差値の変化率をまとめた結果を示す。実施例1と同様に、光量が多くなるほど位相差値は小さくなることが分かった。
実施例4
非偏光性の紫外線を照射する際の温度を85℃に保った状態で非偏光性の紫外線を照射した他は、実施例1と同様にして位相差フィルムを作製した。表1に、非偏光性の紫外線の光量、位相差値および位相差値の変化率をまとめた結果を示す。実施例1と同様に、光量が多くなるほど位相差値は小さくなることが分かった。
非偏光性の紫外線を照射する際の温度を85℃に保った状態で非偏光性の紫外線を照射した他は、実施例1と同様にして位相差フィルムを作製した。表1に、非偏光性の紫外線の光量、位相差値および位相差値の変化率をまとめた結果を示す。実施例1と同様に、光量が多くなるほど位相差値は小さくなることが分かった。
実施例5
非偏光性の紫外線を照射する際の温度を108℃に保った状態で非偏光性の紫外線を照射した他は、実施例1と同様にして位相差フィルムを作製した。表1に、非偏光性の紫外線の光量、位相差値および位相差値の変化率をまとめた結果を示す。実施例1と同様に、光量が多くなるほど位相差値は小さくなることが分かった。
非偏光性の紫外線を照射する際の温度を108℃に保った状態で非偏光性の紫外線を照射した他は、実施例1と同様にして位相差フィルムを作製した。表1に、非偏光性の紫外線の光量、位相差値および位相差値の変化率をまとめた結果を示す。実施例1と同様に、光量が多くなるほど位相差値は小さくなることが分かった。
比較例
非偏光照射部で光学的異方性膜を加熱せず23℃に保った状態で非偏光性の紫外線を照射した他は、実施例1と同様にして位相差フィルムを作製した。表1に、非偏光性の紫外線の光量、位相差値および位相差値の変化率をまとめた結果を示す。紫外線照射後の位相差フィルムに位相差値の変化は見られなかった。
非偏光照射部で光学的異方性膜を加熱せず23℃に保った状態で非偏光性の紫外線を照射した他は、実施例1と同様にして位相差フィルムを作製した。表1に、非偏光性の紫外線の光量、位相差値および位相差値の変化率をまとめた結果を示す。紫外線照射後の位相差フィルムに位相差値の変化は見られなかった。
1 保持リール
2 フィルム
3 塗布部
4 乾燥部
5 加熱部
6 冷却部
12 偏光照射部
13 加熱・除冷部
14 非偏光照射部
15 偏光
16 非偏光
17 巻取軸
2 フィルム
3 塗布部
4 乾燥部
5 加熱部
6 冷却部
12 偏光照射部
13 加熱・除冷部
14 非偏光照射部
15 偏光
16 非偏光
17 巻取軸
Claims (3)
- 基材の一方の面に液晶性を発現し得る感光性化合物を含む感光性層を形成する工程と、
前記感光性層を前記感光性化合物の等方相転移温度以上に加熱する工程と、
前記感光性層を前記加熱をした状態から前記感光性化合物のガラス相−液晶相転移温度以下に冷却する工程と、
前記冷却後の感光性層に対して偏光を照射して光学的異方性膜とする工程と、
前記偏光を照射した後で、前記光学的異方性膜を感光性化合物のガラス相−液晶相転移温度より高い温度で加熱処理する工程と、
前記加熱処理した後で、前記感光性化合物のガラス相−液晶相転移温度以上で前記光学的異方性膜に非偏光を照射する工程とを有することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。 - 前記非偏光を照射する工程は、前記感光性化合物の等方相転移温度以下で行われることを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法。
- 前記加熱は、輻射熱を用いて行われることを特徴とする請求項1または2に記載の位相差フィルムの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008268608A JP2010097055A (ja) | 2008-10-17 | 2008-10-17 | 位相差フィルムの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008268608A JP2010097055A (ja) | 2008-10-17 | 2008-10-17 | 位相差フィルムの製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2010097055A true JP2010097055A (ja) | 2010-04-30 |
Family
ID=42258771
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2008268608A Pending JP2010097055A (ja) | 2008-10-17 | 2008-10-17 | 位相差フィルムの製造方法 |
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JP (1) | JP2010097055A (ja) |
-
2008
- 2008-10-17 JP JP2008268608A patent/JP2010097055A/ja active Pending
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