JP2010094062A - 間葉系幹細胞の多分化能維持用培地、培養方法、及び分化方法 - Google Patents

間葉系幹細胞の多分化能維持用培地、培養方法、及び分化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】間葉系幹細胞の多分化能、及び増殖能を維持し、簡単に、効率よく間葉系幹細胞を培養することができる間葉系幹細胞の多分化能維持用培地、間葉系幹細胞の培養方法、及び該培養方法により得られた間葉系幹細胞、間葉系幹細胞の分化方法、及び該分化方法により得られた骨芽細胞、並びに脂肪細胞の提供。
【解決手段】本発明の間葉系幹細胞の多分化能維持用培地は、間葉系幹細胞の多分化能の維持、及び増殖が可能な培地であって、前記培地が、TGF−βを含有することを特徴とする。前記TGF−βの含有量が、2.5ng/mL〜5.0ng/mLである態様などが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、間葉系幹細胞の多分化能の維持、及び増殖が可能な間葉系幹細胞の多分化能維持用培地、間葉系幹細胞の培養方法、及び該培養方法により得られた間葉系幹細胞、間葉系幹細胞の分化方法、及び該分化方法により得られた骨芽細胞、並びに脂肪細胞に関する。
再生医療で利用が期待される幹細胞として、ES細胞、iPS細胞、間葉系幹細胞が挙げられる。ES細胞は、様々な細胞への分化が可能であるが、倫理的に樹立が困難であったり、腫瘍化するおそれがあったりするなど問題がある。また、iPS細胞は、様々な細胞への分化が可能であり、ES細胞のような倫理的な問題がほとんどないが、腫瘍化するおそれがあるという問題がある。
一方、間葉系幹細胞は、骨髄や臍帯血から採取することができ、再生医療で必要とされる様々な細胞(骨、軟骨、骨格筋、心筋など)に分化可能であり、また、臓器移植の際、移植片体宿主病を抑える働きがあるなど、応用範囲が広いという利点がある。
しかし、再生医療などに間葉系幹細胞から分化した細胞を用いるためには、間葉系幹細胞を大量に確保する必要があるが、間葉系幹細胞は、特定の細胞に分化してしまいやすく、培養をしている間に多分化能、及び細胞増殖能が低下してしまうため、大量の間葉系幹細胞を確保することが困難である(例えば、非特許文献1〜2参照)。その結果、再生医療などへの応用が進んでいないのが現状である。
間葉系幹細胞の培養方法としては、例えば、繊維芽細胞増殖因子(FGF)を培地に添加する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)が、間葉系幹細胞の多分化能、及び増殖能を維持し、簡単に、効率よく間葉系幹細胞を培養することができる間葉系幹細胞の培養方法の更なる改良が求められているのが現状である。
また、トランスフォーミング増殖因子(TGF)−βは、例えば、特許文献1にも記載されているように、デキサメタゾン、アスコルビン酸−2−リン酸などとともに培地に添加され、該培地を用いて間葉系幹細胞を軟骨へ分化誘導することができることが知られている。しかしながら、TGF−βを用いて、間葉系幹細胞の多分化能を維持した状態で培養することができることは知られていない。
国際公開第02/022788号パンフレット R.Izadpanah et al. J. Cell. Biochem. 99, 1285−1297 (2006年) R.Izadpanah et al. Cancer Res. 68, 4229−4238 (2008年)
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、間葉系幹細胞の多分化能、及び増殖能を維持し、簡単に、効率よく間葉系幹細胞を培養することができる間葉系幹細胞の多分化能維持用培地、間葉系幹細胞の培養方法、及び該培養方法により得られた間葉系幹細胞、間葉系幹細胞の分化方法、及び該分化方法により得られた骨芽細胞、並びに脂肪細胞を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、培地にTGF−βを添加することにより、間葉系幹細胞の多分化能、及び増殖能を維持した状態で間葉系幹細胞を培養することができ、前記培養を行った間葉系幹細胞を分化誘導培地で培養すると、前記培養を行っていない間葉系幹細胞に比べて、効率よく分化することができるという知見である。従来、TGF−βは、デキサメタゾンなどとともに培地に添加することにより、間葉系幹細胞を軟骨などへ誘導することは知られているが、間葉系幹細胞の多分化能を維持した状態で培養できることは全く知られておらず、前記知見は、本発明者らによって得られた予期せぬ新たな知見である。
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 間葉系幹細胞の多分化能の維持、及び増殖が可能な培地であって、
前記培地が、TGF−βを含有することを特徴とする間葉系幹細胞の多分化能維持用培地である。
<2> TGF−βの含有量が、2.5ng/mL〜5.0ng/mLである前記<1>に記載の間葉系幹細胞の多分化能維持用培地である。
<3> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の間葉系幹細胞の多分化能維持用培地を用いることを特徴とする間葉系幹細胞の培養方法である。
<4> 前記<3>に記載の間葉系幹細胞の培養方法により得られたことを特徴とする間葉系幹細胞である。
<5> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の間葉系幹細胞の多分化能維持用培地を用いて間葉系幹細胞を培養する工程と、
前記培養した間葉系幹細胞を分化誘導培地で培養する工程と、
を含むことを特徴とする間葉系幹細胞の分化方法である。
<6> 分化誘導培地が、骨芽細胞分化誘導培地、及び脂肪細胞分化誘導培地のいずれかである前記<5>に記載の間葉系幹細胞の分化方法である。
<7> 前記<5>から<6>のいずれかに記載の間葉系幹細胞の分化方法により得られたことを特徴とする骨芽細胞である。
<8> 前記<5>から<6>のいずれかに記載の間葉系幹細胞の分化方法により得られたことを特徴とする脂肪細胞である。
本発明によれば、前記従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、間葉系幹細胞の多分化能、及び増殖能を維持し、簡単に、効率よく間葉系幹細胞を培養することができる間葉系幹細胞の多分化能維持用培地、間葉系幹細胞の培養方法、及び該培養方法により得られた間葉系幹細胞、間葉系幹細胞の分化方法、及び該分化方法により得られた骨芽細胞、並びに脂肪細胞を提供することができる。
(間葉系幹細胞の多分化能維持用培地)
本発明の間葉系幹細胞の多分化能維持用培地は、間葉系幹細胞の多分化能の維持、及び増殖が可能な培地であって、TGF(トランスフォーミング増殖因子)−βを少なくとも含有し、必要に応じて、更にその他の成分を含有してなる。
−間葉系幹細胞−
前記間葉系幹細胞とは、少なくとも骨芽細胞または脂肪細胞への分化能を有する未分化間葉系幹細胞のことをいう。
前記間葉系幹細胞の多分化能とは、分化刺激に応答して骨芽細胞または脂肪細胞など種々の細胞へ分化する能力のことをいう。
前記間葉系幹細胞が多分化能を維持しているか否かを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、間葉系幹細胞に骨芽細胞などへの分化誘導を行い、骨芽細胞などに分化することができれば間葉系幹細胞は多分化能を維持していることが確認できる。
前記間葉系幹細胞が増殖可能か否かを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、MTSアッセイにより間葉系幹細胞の増殖活性を評価することで確認することができる。
−TGF−β−
前記TGF−βとは、サイトカインの1種であり、アイソフォームが存在することが知られている。前記TGF−βのアイソフォームとしては、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3が挙げられる。
本発明のTGF−βとは、TGF−βに分類されるものをいい、前記アイソフォームを含む。
前記TGF−βの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.25ng/mL〜5.0ng/mLが好ましく、2.5ng/mL〜5.0ng/mLがより好ましい。
−培地−
前記培地としては、特に制限はなく、公知の哺乳類細胞培地を目的に応じて適宜選択することができ、例えば、RPMI−1640培地やDMEM培地などが挙げられる。
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FBS、ペニシリン、ストレプトマイシンなどが挙げられる。
(間葉系幹細胞の培養方法、及び間葉系幹細胞)
本発明の間葉系幹細胞の培養方法は、本発明の間葉系幹細胞の多分化能維持用培地を用いて間葉系幹細胞を培養する工程(第1培養工程)を少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の工程を含んでいる。
本発明の間葉系幹細胞は、前記間葉系幹細胞の培養方法により得ることができる。
−第1培養工程−
前記第1培養工程は、前記間葉系幹細胞の多分化能維持用培地を用いて間葉系幹細胞を培養する工程である。前記第1培養工程により、多分化能を有する間葉系幹細胞を増殖させることができる。
−−間葉系幹細胞−−
前記間葉系幹細胞の入手方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウスなどの個体の骨髄などから単離することにより入手する方法、既にクローン化された間葉系幹細胞を各種機関から入手する方法などが挙げられる。
前記既にクローン化された間葉系幹細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マウスST2細胞、マウスNRG細胞、マウスDFAT−D1細胞などが挙げられる。なお、前記マウスST2細胞、及びマウスNRG細胞は、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター(BRC)から入手することができる。
−−培養方法、温度、CO濃度、時間−−
前記第1培養工程の培養方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、静置培養などが挙げられる。前記培養では、コンフルエント状態にならないように継代培養することが好ましい。
前記第1培養工程の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、37℃などが挙げられる。
前記第1培養工程のCO濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5%などが挙げられる。
前記第1培養工程の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−その他の工程−
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、間葉系幹細胞採取工程、間葉系幹細胞回収工程などが挙げられる。
−−間葉系幹細胞採取工程−−
前記間葉系幹細胞採取工程は、例えば、ヒト、マウスなどの個体の骨髄などから間葉系幹細胞を採取する工程である。
前記採取の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の方法を用いることができる。
−−間葉系幹細胞回収工程−−
前記間葉系幹細胞回収工程は、前記第1培養工程により得られた間葉系幹細胞を回収する工程である。
前記回収の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培養液を遠心分離し、間葉系幹細胞を回収する方法などが挙げられる。
(間葉系幹細胞の分化方法、並びに骨芽細胞、及び脂肪細胞)
本発明の間葉系幹細胞の分化方法は、本発明の間葉系幹細胞用培地を用いて間葉系幹細胞を培養する工程(第1培養工程)と、前記培養した間葉系幹細胞を分化誘導培地で培養する工程(第2培養工程)とを少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の工程を含んでなる。
本発明の骨芽細胞、及び脂肪細胞は、前記間葉系幹細胞の分化方法により得ることができる。
−第1培養工程−
前記第1培養工程は、前記間葉系幹細胞の多分化能維持用培地を用いて間葉系幹細胞を培養する工程であり、前記第1培養工程により、後述する第2培養工程で、間葉系幹細胞を効率的に分化させることができる。
前記第1培養工程は、前記間葉系幹細胞の培養方法における第1培養工程と同様に行うことができる。
前記第1培養工程の培養時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する第2工程において間葉系幹細胞を効率的に分化させることができる点で、コンフルエント状態になる前に継代することが好ましい。
前記第1培養工程の間葉系幹細胞の継代数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する第2工程において間葉系幹細胞を効率的に分化させることができる点で、継代の回数は少ないことが好ましい。
−第2培養工程−
前記第2培養工程は、前記培養した間葉系幹細胞を分化誘導培地で培養する工程である。前記第2培養工程により、間葉系幹細胞を目的とする細胞に分化させることができる。
前記第2培養工程では、必要に応じて、分化誘導因子を含まない培地で培養する工程を含んでもよい。
前記目的とする細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、骨芽細胞、脂肪細胞、心筋細胞、軟骨細胞などが挙げられる。
−−分化誘導培地−−
前記分化誘導培地としては、特に制限はなく、分化させる細胞に応じて適宜選択することができ、例えば、間葉系幹細胞を骨芽細胞へ分化させる場合には、骨芽細胞への分化誘導因子を含む骨芽細胞分化誘導培地を用いることができ、間葉系幹細胞を脂肪細胞へ分化させる場合には、脂肪細胞への分化誘導因子を含む脂肪細胞分化誘導培地を用いることができる。
前記骨芽細胞分化誘導培地としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分化誘導因子を含まない培地に骨芽細胞分化誘導因子を含有させた培地を用いることができる。
前記分化誘導因子を含まない培地としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10%FBS、100U/mLペニシリン、及び100μg/mLストレプトマイシン含有のRPMI−1640培地などが挙げられる。
前記骨芽細胞分化誘導因子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、BMP(bone morphogenetic protein)4、BMP2などが挙げられる。
前記骨芽細胞分化誘導培地中の骨芽細胞分化誘導因子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、BMP4の場合、50ng/mL〜300ng/mLが好ましく、50ng/mL〜100ng/mLが特に好ましい。前記BMP4の含有量が、25ng/mL未満であると骨芽細胞分化しないことがある。一方、前記BMP4の含有量が前記特に好ましい範囲内であると、骨芽細胞分化の点で有利である。
前記脂肪細胞分化誘導培地としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分化誘導因子を含まない培地に脂肪細胞分化誘導因子を含有させた培地を用いることができる。
前記分化誘導因子を含まない培地としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10%FBS、100U/mLペニシリン、及び100μg/mLストレプトマイシン含有のRPMI−1640培地などが挙げられる。
前記脂肪細胞分化誘導因子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)デキサメタゾン、3−イソブチル−1−メチルキサンチン、インスリン及びロシグリタゾン、(2)デキサメタゾン、3−イソブチル−1−メチルキサンチン、及びインスリン、(3)ロシグリタゾンなどが挙げられる。
前記脂肪細胞分化誘導培地中の脂肪細胞分化誘導因子の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、デキサメタゾン、3−イソブチル−1−メチルキサンチン、インスリン及びロシグリタゾンの場合、デキサメタゾンは、250nM〜1,000nMが好ましく、250nMが特に好ましく、3−イソブチル−1−メチルキサンチンは、0.5mMが特に好ましく、インスリンは、5μg/mL〜10μg/mLが好ましく、5μg/mLが特に好ましく、ロシグリタゾンは、0.3μM〜1μMが好ましく、1μMが特に好ましい。
前記デキサメタゾン、3−イソブチル−1−メチルキサンチン、インスリン、及びロシグリタゾンの含有量が、前記好ましい範囲から外れると脂肪細胞分化が十分に誘導されないことがある。一方、前記デキサメタゾン、3−イソブチル−1−メチルキサンチン、インスリン、及びロシグリタゾンの含有量が前記特に好ましい範囲内であると、脂肪細胞の分化誘導の点で有利である。
なお、前記第2培養工程では、第2培養工程において調製した培地を使用してもよく、前記第1培養工程の培地に前記分化誘導因子を添加した培地を使用してもよい。
−−培養方法、温度、CO濃度、時間−−
前記第2培養工程の培養方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、静置培養などが挙げられる。前記培養では、コンフルエント状態にならないように継代培養することが好ましい。
前記第2培養工程の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、37℃などが挙げられる。
前記第2培養工程のCO濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5%などが挙げられる。
前記第2培養工程の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、間葉系幹細胞を骨芽細胞へ分化させる場合には、分化誘導培地で5日間〜10日間培養する、などが挙げられる。また、間葉系幹細胞を脂肪細胞へ分化させる場合には、分化誘導培地で48時間〜60時間培養した後、さらに分化誘導因子を含まない培地で4日間〜6日間培養する、などが挙げられる。
−−骨芽細胞への分化の確認−−
前記第2工程により、前記間葉系幹細胞が骨芽細胞に分化したか否かを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細胞をアルカリフォスファターゼ染色する方法、細胞のアルカリフォスファターゼ活性を測定する方法、細胞内のOsterix遺伝子の発現量を測定する方法、及び細胞内のOsteocalcin遺伝子の発現量を測定する方法などが挙げられる。
−−脂肪細胞への分化の確認−−
前記第2工程により、前記間葉系幹細胞が脂肪細胞に分化したか否かを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細胞をOil Red Oで染色する方法、細胞内のトリグリセリド量を測定する方法(例えば、トリグリセリドE−テスト和光;和光純薬製)、細胞内のPPARγ(peroxisome proliferator−activated receptor gamma)遺伝子の発現量を測定する方法、及び細胞内のFabp4(fatty acid−binding protein 4)遺伝子の発現量を測定する方法などが挙げられる。
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
本発明の実施例で用いた間葉系幹細胞、培地、及び間葉系幹細胞の培養条件は以下の通りである。
−間葉系幹細胞−
間葉系幹細胞として、マウス間葉系幹細胞ST2細胞(独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター)を用いた。
−基本培地−
基本培地として、10%FBS、100U/mLペニシリン、及び100μg/mLストレプトマイシン含有のRPMI−1640培地(ナカライテスク製)を用いた。
−脂肪細胞分化誘導培地−
脂肪細胞分化誘導培地として、前記基本培地に、250nM デキサメタゾン(和光純薬製)、0.5mM 3−イソブチル−1−メチルキサンチン(ナカライテスク製)、5μg/mL インスリン(ITS;GIBCO製)、及び1μM ロシグリタゾン(Cayman Chemical製)を含有させた培地を用いた。
−骨芽細胞分化誘導培地−
骨芽細胞分化誘導培地として、前記基本培地に、50ng/mL rhBMP−4(bone morphogenic protein−4); R&D SYSTEMS製)を含有させた培地を用いた。
−培養条件−
間葉系幹細胞は、37℃、5%CO存在下で培養した。
(実施例1)
<TGF−β1を含有する培地を用いた間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化抑制>
前記間葉系幹細胞を直径6cmの培養皿1個あたり6×10個播種し、前記基本培地5mLで2日間の前培養を行った。
前記前培養を行った間葉系幹細胞を以下の4群に分け、それぞれの培地5mLで本培養を開始した。本培養を開始し、60時間培養(脂肪細胞への分化誘導)した後、全ての群の培地を吸引廃棄して基本培地に交換した。その後、基本培地5mLで培地交換を2日おきに行った。
(1)未処理群(対照群)
本培養は、基本培地で60時間培養した後、引き続き基本培地で培養。
(2)TGF−β1添加群
本培養は、基本培地に、5ng/mL rhTGF−β1(R&D SYSTEMS製)を含有させた培地で60時間培養した後、基本培地で培養。
(3)脂肪細胞分化誘導培地群
本培養は、脂肪細胞分化誘導培地で60時間培養した後、基本培地で培養。
(4)[脂肪細胞分化誘導培地+TGF−β1添加]群
本培養は、脂肪細胞分化誘導培地に5ng/mL TGF−β1を含有させた培地で60時間培養した後、基本培地で培養。
−オイルレッド(Oil Red)O染色法による間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化の度合の評価−
本培養開始7日後に、Oil Red O染色法(Yagi et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 321, 967−974 (2004年))により、間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化の度合を評価した。結果を図1〜図4に示す。
対照群(図1)、及びTGF−β1添加群(図2)では、Oil Red O陽性細胞が観察されなかった。
一方、脂肪細胞分化誘導培地群(図3)では、ほとんどの細胞がOil Red O陽性であった。しかし、[脂肪細胞分化誘導培地+TGF−β1添加]群(図4)では、Oil Red O陽性細胞が、脂肪細胞分化誘導培地群と比べて著しく減少した。
−トリグリセリド量による間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化の度合の評価−
本培養開始7日後に、細胞内のトリグリセリド量を測定し、間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化の度合を評価した(トリグリセライドE−テストワコー:和光純薬製)。結果を図5に示す。図5中の各棒グラフは、左から順に、対照群[1]、TGF−β1添加群[2]、脂肪細胞分化誘導培地群[3]、[脂肪細胞分化誘導培地+TGF−β1添加]群[4]の順に記載されている。
図5の結果から、上記Oil Red O染色法の場合と同様に、対照群(図5の[1])、及びTGF−β1添加群(図5の[2])では、トリグリセリド量がほぼ0であり、非常に少なかった。
一方、脂肪細胞分化誘導培地群(図5の[3])では、トリグリセリド量が、10(mg/mg protein)を超え、非常に多かった。しかし、[脂肪細胞分化誘導培地+TGF−β1添加]群(図5の[4])では、トリグリセリド量がほぼ0であり、脂肪細胞分化誘導培地群と比べて著しく減少した。
−脂肪細胞分化マーカー遺伝子による間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化の検証−
本培養開始7日後に、細胞を回収し、前記細胞からTotal RNAを抽出し、oligo(dT)プライマーを用いて、cDNAを合成した。前記cDNAを鋳型として、定量リアルタイムPCR法により、脂肪細胞分化マーカー遺伝子(PPARγ(peroxisome proliferator−activated receptor gamma)、Fabp4(fatty acid−binding protein 4))の発現を調べた。結果を図6〜図7に示す。なお、定量リアルタイムPCR法に使用した機器、試薬、プライマーは下記の通りである。
使用機器:Mx3000P(Stratagene製)
試薬:Power SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems製)
プライマー:
(1)PPARγ2 (Forward):
5’−ATGGGTGAAACTCTGGGAGA−3’(配列番号1)
(2)PPARγ2 (Reverse):
5’−GAGCTGATTCCGAAGTTGGT−3’(配列番号2)
(3)Fabp4 (Forward):
5’−TGGAAGCTTGTCTCCAGTGA−3’(配列番号3)
(4)Fabp4 (Reverse):
5’−TCCCCATTTACGCTGATGAT−3’(配列番号4)
(5)GAPDH (Forward):
5’−TGGAGAAACCTGCCAAGTATG−3’(配列番号5)
(6)GAPDH (Reverse):
5’−GGAGACAACCTGGTCCTCAG−3’(配列番号6)
図6〜図7中の各棒グラフは、左から順に、対照群[1]、TGF−β1添加群[2]、脂肪細胞分化誘導培地群[3]、[脂肪細胞分化誘導培地+TGF−β1添加]群[4]の順に記載されている。
図6〜図7の結果から、対照群(図6の[1]、及び図7の[1])、及びTGF−β1添加群(図6の[2]、及び図7の[2])では、PPARγ、及びFabp4遺伝子の発現レベルは低かった。
一方、脂肪細胞分化誘導培地群(図6の[3]、及び図7の[3])では、前記両遺伝子の発現が著しく誘導された。しかし、[脂肪細胞分化誘導培地+TGF−β1添加]群(図6の[4]、及び図7の[4])では、脂肪細胞分化誘導培地群と比べて、前記両遺伝子の発現は強く抑制されていた。
上記各評価、及び検証の結果、TGF−β1を含有する培地で間葉系幹細胞を培養すると、脂肪細胞への分化誘導を行った場合であっても、脂肪細胞への分化を抑制することができ、間葉系幹細胞の多分化能を維持した状態で培養することができることがわかった。
(実施例2)
<TGF−β1を含有する培地を用いた間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化抑制>
前記間葉系幹細胞を直径6cmの培養皿1個あたり6×10個播種し、前記基本培地5mLで2日間の前培養を行った。
前記前培養を行った間葉系幹細胞を以下の4群に分け、それぞれの培地で本培養(骨芽細胞への分化誘導)を開始した。なお、本培養の培地の交換は吸引除去後、各実験群の培地5mLで3日おきに行った。
(1)未処理群(対照群)
本培養は、基本培地5mLで培養。
(2)TGF−β1添加群
本培養は、基本培地5mLに、終濃度2.5ng/mLになるようにTGF−β1を含有させた培地で培養。
(3)骨芽細胞分化誘導培地群
本培養は、骨芽細胞分化誘導培地5mLで培養。
(4)[骨芽細胞分化誘導培地+TGF−β1添加]群
本培養は、骨芽細胞分化誘導培地5mLに終濃度2.5ng/mLになるようにTGF−β1を含有させた培地で培養。
−アルカリフォスファターゼ染色による間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化の度合の評価−
本培養開始5日後に、骨芽細胞分化マーカーの1つであるアルカリフォスファターゼ(ALP)の染色により、間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化の度合を評価した(Mizuno Y. et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 368, 267−272 (2008年))。結果を図8〜図11に示す。
対照群(図8)、及びTGF−β1添加群(図9)では、ALP陽性細胞が観察されなかった。
一方、骨芽細胞分化誘導培地群(図10)では、ALP陽性細胞が顕著に増加した。しかし、[骨芽細胞分化誘導培地+TGF−β1添加]群(図11)では、ALP陽性細胞が、骨芽細胞分化誘導培地群と比べて著しく減少した。
−アルカリフォスファターゼ活性の測定による間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化の度合の評価−
本培養開始5日後に、アルカリフォスファターゼ(ALP)活性の測定により(p−Nitrophenyl phosphate Liquid Substrate System: Sigma製)、間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化の度合を評価した。結果を図12に示す。図12中の各棒グラフは、左から順に、対照群[1]、TGF−β1添加群[2]、骨芽細胞分化誘導培地群[3]、[骨芽細胞分化誘導培地+TGF−β1添加]群[4]の順に記載されている。
対照群(図12の[1])、及びTGF−β1添加群(図12の[2])では、ALP活性がほぼ0であり、非常に低かった。
一方、骨芽細胞分化誘導培地群(図12の[3])では、ALP活性が約100%と非常に高かった。しかし、[骨芽細胞分化誘導培地+TGF−β1添加]群(図12の[4])では、ALP活性20%未満であり、骨芽細胞分化誘導培地群と比べて著しく低下した。
−骨芽細胞分化マーカー遺伝子による間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化の検証−
本培養開始5日後に、細胞を回収し、前記細胞からTotal RNAを抽出し、oligo(dT)プライマーを用いて、cDNAを合成した。前記cDNAを鋳型として、定量リアルタイムPCR法により、骨芽細胞分化マーカー遺伝子(オステリックス(Osterix)、オステオカルシン(Osteocalcin))の発現を調べた。結果を図13〜図14に示す。なお、定量リアルタイムPCR法に使用した機器、試薬、プライマーは下記の通りである。
使用機器:Mx3000P(Stratagene製)
試薬:Power SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems製)
プライマー:
(1)Osterix (Forward):
5’−CGTCCTCTCTGCTTGAGGAA−3’(配列番号7)
(2)Osterix (Reverse):
5’−TTCCCCAGGGTTGTTGAGT−3’(配列番号8)
(3)Osteocalcin (Forward):
5’−GGAGCTGCTGTGACATCCATAC−3’(配列番号9)
(4)Osteocalcin (Reverse):
5’−CTCTGTCTCTCTGACCTCACAG−3’(配列番号10)
(5)GAPDH (Forward):
5’−TGGAGAAACCTGCCAAGTATG−3’(配列番号11)
(6)GAPDH (Reverse):
5’−GGAGACAACCTGGTCCTCAG−3’(配列番号12)
図13〜図14中の各棒グラフは、左から順に、対照群[1]、TGF−β1添加群[2]、骨芽細胞分化誘導培地群[3]、[骨芽細胞分化誘導培地+TGF−β1添加]群[4]の順に記載されている。
図13〜図14の結果から、対照群(図13の[1]、及び図14の[1])、及びTGF−β1添加群(図13の[2]、及び図14の[2])では、オステリックス、及びオステオカルシン遺伝子の発現レベルは低かった。
一方、骨芽細胞分化誘導培地群(図13の[3]、及び図14の[3])では、前記両遺伝子の発現が著しく誘導された。しかし、[骨芽細胞分化誘導培地+TGF−β1添加]群(図13の[4]、及び図14の[4])では、骨芽細胞分化誘導培地群と比べて、前記両遺伝子の発現は強く抑制されていた。
上記各評価、及び検証の結果、TGF−β1を含有する培地で間葉系幹細胞を培養すると、骨芽細胞への分化誘導を行った場合であっても、骨芽細胞への分化を抑制することができ、間葉系幹細胞の多分化能を維持した状態で培養できることが示唆された。
(実施例3)
<脂肪細胞への分化を抑制された間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化(1)>
前記間葉系幹細胞を直径6cmの培養皿1個あたり6×10個播種し、前記基本培地5mLで2日間の前培養を行った。
前記前培養を行った間葉系幹細胞を以下の3群に分け、それぞれの培地で60時間培養(脂肪細胞への分化誘導)した。その後、全ての群の培地を骨芽細胞誘導培地に交換し、6日間培養(骨芽細胞への分化誘導)した。なお、骨芽細胞誘導培地の交換は吸引除去後、新しい骨芽細胞誘導培地5mLで3日おきに行った。
(1)対照群
基本培地5mLで60時間培養した後、骨芽細胞誘導培地5mLで6日間培養。
(2)脂肪細胞分化誘導培地群
脂肪細胞分化誘導培地5mLで60時間培養した後、骨芽細胞誘導培地5mLで6日間培養。
(3)[脂肪細胞分化誘導培地+TGF−β1添加]群
脂肪細胞分化誘導培地5mLにTGF−β1を終濃度5ng/mLになるように含有させた培地で60時間培養した後、骨芽細胞誘導培地5mLで6日間培養。
−オイルレッド(Oil Red)O染色法による間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化の度合の評価−
6日間培養後に、Oil Red O染色法により、間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化の度合を評価した(Yagi et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 321, 967−974 (2004年))。結果を図15〜図17に示す。
−アルカリフォスファターゼ染色による間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化の度合の評価−
6日間培養後に、骨芽細胞分化マーカーの1つであるアルカリフォスファターゼ(ALP)の染色により、間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化の度合を評価した(Mizuno Y. et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 368, 267−272 (2008年))。結果を図18〜図20に示す。
上記各評価の結果、対照群では、骨芽細胞分化誘導培地中のBMP4の作用でALP陽性細胞が多数誘導されたが(図18)、予測されたようにOil Red O陽性細胞は存在しなかった(図15)。
一方、脂肪細胞分化誘導培地群は、BMP4添加にも関らずALP陽性細胞は観察されなかったが(図19)、Oil Red O陽性細胞は多数観察された(図16)。
注目すべきことに、[脂肪細胞分化誘導培地+TGF−β1添加]群は、対照群と同様にALP陽性細胞が多数誘導されたが(図20)、Oil Red O陽性細胞はほとんど観察されなかった(図17)。
以上から、TGF−β1により脂肪細胞への分化を抑制された間葉系幹細胞は、その後のBMP4刺激に応答して骨芽細胞へ分化することができ、間葉系幹細胞の多分化能が維持されていることが示された。
(実施例4)
<脂肪細胞への分化を抑制された間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化(2)>
脂肪細胞への分化を抑制された間葉系幹細胞が骨芽細胞へ分化することができることを遺伝子発現プロファイルで評価するために、以下の実験を行った。
前記間葉系幹細胞を直径6cmの培養皿1個あたり6×10個播種し、前記基本培地5mLで2日間の前培養を行った。
前記前培養を行った間葉系幹細胞を以下の8群に分け、各培地で60時間培養(脂肪細胞への分化誘導)した後、6日間培養(骨芽細胞への分化誘導)した。なお、6日間培養における培地の交換は、吸引除去後、新しい培地(基本培地または骨芽細胞分化誘導培地)5mLで3日おきに行った。3日おきに行った。培養後、細胞を回収し、前記細胞からTotal RNAを抽出し、oligo(dT)プライマーを用いて、cDNAを合成した。前記cDNAを鋳型として、定量リアルタイムPCR法により、脂肪細胞分化マーカー遺伝子(PPARγ、Fabp4)、及び骨芽細胞分化マーカー遺伝子(オステリックス、オステオカルシン)の発現を調べた。前記リアルタイムPCR法は、実施例1、実施例2のリアルタイムPCR法と同様に行った。結果を図21〜図24に示す。
(1)実験群1
基本培地5mLで60時間培養した後、引き続き基本培地5mLで6日間培養。
(2)実験群2
基本培地に、TGF−β1(終濃度5ng/mL)を含有させた培地5mLで60時間培養した後、基本培地5mLで6日間培養。
(3)実験群3
脂肪細胞分化誘導培地5mLで60時間培養した後、基本培地5mLで6日間培養。
(4)実験群4
脂肪細胞分化誘導培地に、TGF−β1(終濃度5ng/mL)を含有させた培地5mLで60時間培養した後、基本培地5mLで6日間培養。
(5)実験群5
基本培地5mLで60時間培養した後、骨芽細胞分化誘導培地5mLで6日間培養。
(6)実験群6
基本培地に、TGF−β1(終濃度5ng/mL)を含有させた培地5mLで60時間培養した後、骨芽細胞分化誘導培地5mLで6日間培養。
(7)実験群7
脂肪細胞分化誘導培地5mLで60時間培養した後、骨芽細胞分化誘導培地5mLで6日間培養。
(8)実験群8
脂肪細胞分化誘導培地に、TGF−β1(終濃度5ng/mL)を含有させた培地5mLで60時間培養した後、骨芽細胞分化誘導培地5mLで6日間培養。
図21〜図24中の各棒グラフは、左から順に、実験群1から実験群8の順に記載されている。
図21〜図24の結果で特に興味深い点は、実験群7と実験群8の各遺伝子の発現パターンである。実験群7では、PPARγ、及びFabp4遺伝子の発現レベルは実験群3と同レベルに誘導されたが、オステリックス、及びオステオカルシン遺伝子の発現は顕著に低下した。一方、実験群8では、PPARγ、及びFabp4遺伝子の発現はほとんど誘導されなかったが、注目すべきことにオステリックス、及びオステオカルシン遺伝子の発現は実験群7と比べて顕著に誘導された。これらの結果は、TGF−β1は間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化を抑制するだけでなく、骨芽細胞への分化能を維持させる作用があることを示唆している。
また、実験群6では、オステリックス、及びオステオカルシン遺伝子の発現は、実験群5に比べて高くなる傾向を示した。この結果は、間葉系幹細胞をTGF−βで前処理すると、BMP4刺激に対する間葉系幹細胞の応答性が高くなっていることを示唆している。
(実施例5)
<間葉系幹細胞の増殖促進>
前記間葉系幹細胞を96穴培養皿1個あたり5×10個播種し、前記基本培地100μLで2日間の前培養を行った。
前記前培養を行った間葉系幹細胞を以下の2群に分け、下記培地100μLで培地交換して24時間培養後、MTSアッセイにより細胞の増殖活性を評価した(CellTiter 96 AQueous One Solution Cell Proliferation Assay: Promega製)。結果を図25に示す。
(1)対照群
基本培地100μLで24時間培養。
(2)TGF−β1添加群
終濃度2.5ng/mL TGF−β1を含有させた培地100μLで24時間培養。
図25の結果から、TGF−β1添加群では、対照群の1.5倍の増殖活性を有することが示された。この結果から、TGF−β1は、間葉系幹細胞の多分化能の維持に作用するだけでなく、増殖を促進する働きを持つことも示唆された。
本発明の間葉系幹細胞の多分化能維持用培地は、間葉系幹細胞の多分化能、及び増殖能を維持し、簡単に、効率よく間葉系幹細胞を培養することができるので、多分化能を維持した間葉系幹細胞を大量に得るために好適に用いることができる。これにより、従来困難とされてきた多分化能を維持する間葉系幹細胞を大量に調製することができ、間葉系幹細胞の産業ベースでの利用が可能となる。
本発明の間葉系幹細胞は、多分化能を維持しているので、骨芽細胞、脂肪細胞、心筋細胞、軟骨細胞などへ分化させるための細胞として、好適に用いることができる。
本発明の間葉系幹細胞の分化方法は、間葉系幹細胞を効率よく分化させることができるので、再生医療などに用いる骨芽細胞、脂肪細胞、心筋細胞、軟骨細胞などを大量に得るために好適に用いることができる。
本発明の間葉系幹細胞の分化方法により得られる細胞は、例えば、再生医療の原料として用いることができ、骨芽細胞は骨粗鬆症患者や大腿骨頭壊死患者などへの移植、心筋細胞は心筋梗塞患者などへの移植、軟骨細胞はリウマチ性関節炎患者への移植に好適に用いることができる。また、脂肪細胞は、遺伝子治療用の細胞として用いることができる。
図1は、Oil Red O染色法により、実施例1の対照群の間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化の度合を評価した結果を示す図である。 図2は、Oil Red O染色法により、実施例1のTGF−β1添加群の間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化の度合を評価した結果を示す図である。 図3は、Oil Red O染色法により、実施例1の脂肪細胞分化誘導培地群の間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化の度合を評価した結果を示す図である。 図4は、Oil Red O染色法により、実施例1の[脂肪細胞分化誘導培地+TGF−β1添加]群の間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化の度合を評価した結果を示す図である。 図5は、トリグリセリド量により、実施例1の間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化の度合を評価した結果を示す図である。 図6は、PPARγの発現量により、実施例1の間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化を検証した結果を示す図である。 図7は、Fabp4の発現量により、実施例1の間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化を検証した結果を示す図である。 図8は、アルカリフォスファターゼ染色により、実施例2の対照群の間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化の度合を評価した結果を示す図である。 図9は、アルカリフォスファターゼ染色により、実施例2のTGF−β1添加群の間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化の度合を評価した結果を示す図である。 図10は、アルカリフォスファターゼ染色により、実施例2の骨芽細胞分化誘導培地群の間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化の度合を評価した結果を示す図である。 図11は、アルカリフォスファターゼ染色により、実施例2の[骨芽細胞分化誘導培地+TGF−β1添加]群の間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化の度合を評価した結果を示す図である。 図12は、アルカリフォスファターゼ活性の測定により、実施例2の間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化の度合を評価した結果を示す図である。 図13は、Osterixの発現量により、実施例2の間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化を検証した結果を示す図である。 図14は、Osteocalcinの発現量により、実施例2の間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化を検証した結果を示す図である。 図15は、Oil Red O染色法により、実施例3の対照群の間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化の度合を評価した結果を示す図である。 図16は、Oil Red O染色法により、実施例3の脂肪細胞分化誘導培地群の間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化の度合を評価した結果を示す図である。 図17は、Oil Red O染色法により、実施例3の[脂肪細胞分化誘導培地+TGF−β1添加]群の間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化の度合を評価した結果を示す図である。 図18は、アルカリフォスファターゼ染色により、実施例3の対照群の間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化の度合を評価した結果を示す図である。 図19は、アルカリフォスファターゼ染色により、実施例3の脂肪細胞分化誘導培地群の間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化の度合を評価した結果を示す図である。 図20は、アルカリフォスファターゼ染色により、実施例3の[脂肪細胞分化誘導培地+TGF−β1添加]群の間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化の度合を評価した結果を示す図である。 図21は、PPARγの発現量により、実施例4の間葉系幹細胞の分化を検証した結果を示す図である。 図22は、Fabp4の発現量により、実施例4の間葉系幹細胞の分化を検証した結果を示す図である。 図23は、Osterixの発現量により、実施例4の間葉系幹細胞の分化を検証した結果を示す図である。 図24は、Osteocalcinの発現量により、実施例4の間葉系幹細胞の分化を検証した結果を示す図である。 図25は、MTSアッセイにより、実施例5の間葉系幹細胞の増殖活性を評価した結果を示す図である。

Claims (8)

  1. 間葉系幹細胞の多分化能の維持、及び増殖が可能な培地であって、
    前記培地が、TGF−βを含有することを特徴とする間葉系幹細胞の多分化能維持用培地。
  2. TGF−βの含有量が、2.5ng/mL〜5.0ng/mLである請求項1に記載の間葉系幹細胞の多分化能維持用培地。
  3. 請求項1から2のいずれかに記載の間葉系幹細胞の多分化能維持用培地を用いることを特徴とする間葉系幹細胞の培養方法。
  4. 請求項3に記載の間葉系幹細胞の培養方法により得られたことを特徴とする間葉系幹細胞。
  5. 請求項1から2のいずれかに記載の間葉系幹細胞の多分化能維持用培地を用いて間葉系幹細胞を培養する工程と、
    前記培養した間葉系幹細胞を分化誘導培地で培養する工程と、
    を含むことを特徴とする間葉系幹細胞の分化方法。
  6. 分化誘導培地が、骨芽細胞分化誘導培地、及び脂肪細胞分化誘導培地のいずれかである請求項5に記載の間葉系幹細胞の分化方法。
  7. 請求項5から6のいずれかに記載の間葉系幹細胞の分化方法により得られたことを特徴とする骨芽細胞。
  8. 請求項5から6のいずれかに記載の間葉系幹細胞の分化方法により得られたことを特徴とする脂肪細胞。
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