JP2010086901A - リチウム二次電池の劣化診断装置および劣化診断方法 - Google Patents

リチウム二次電池の劣化診断装置および劣化診断方法 Download PDF

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Abstract

【課題】リチウム二次電池の内部に析出するデンドライトの析出量を推定することができるリチウム二次電池の劣化診断装置を提供する。
【解決手段】本発明のリチウム二次電池の劣化診断装置100は、電圧調整手段10、電流検出手段30、および推定手段40を有する。電圧調整手段10は、リチウム二次電池70に電気的に並列に接続され、リチウム二次電池70の端子間電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させる。電流検出手段30は、リチウム二次電池70と電圧調整手段10との間を流れる電流を検出する。推定手段40は、検出される電流に基づいて、リチウム二次電池70の内部に析出しているデンドライトの析出量を推定する。
【選択図】図2

Description

本発明は、リチウム二次電池の劣化診断装置および劣化診断方法に関する。
近年、電気自動車(EV)およびハイブリッド電気自動車(HEV)のモータ駆動用電源として、リチウム二次電池の開発が盛んである。
リチウム二次電池に関する技術としては、リチウムのデンドライト(樹脂状結晶)の析出に起因するリチウム二次電池の短絡防止の要求から、下記の特許文献1に示すような電源装置が提案されている。特許文献1に開示されている電源装置は、リチウム二次電池の電圧を検出する電圧検出回路と、電圧検出回路の検出値が瞬間的に低下する微短絡の発生を判別する制御回路と、を備える。このような構成の電源装置によれば、デンドライトの析出に起因して繰り返し発生する微短絡を検知することにより、リチウム二次電池が完全短絡状態になることを防止することができる。
特開2003−9405号公報
しかしながら、上記電源装置では、デンドライトがある程度析出して初めて発生する微短絡に基づいてリチウム二次電池の劣化状態が判定されるため、リチウム二次電池の短絡そのものを防止することができないという問題がある。リチウム二次電池の寿命を延ばすためには、デンドライトが微短絡を引き起こす前にデンドライトの成長度合いを予測して、デンドライトを除去することが望ましい。
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものである。したがって、本発明の目的は、リチウム二次電池の内部に析出するデンドライトの析出量を推定することができるリチウム二次電池の劣化診断装置および劣化診断方法を提供することである。
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
本発明のリチウム二次電池の劣化診断装置は、電圧調整手段、電流検出手段、および推定手段を有する。前記電圧調整手段は、リチウム二次電池に電気的に並列に接続され、当該リチウム二次電池の端子間電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させる。前記電流検出手段は、前記リチウム二次電池と前記電圧調整手段との間を流れる電流を検出する。前記推定手段は、前記検出される電流に基づいて、前記リチウム二次電池の内部に析出しているデンドライトの析出量を推定する。
本発明のリチウム二次電池の劣化診断方法は、電圧調整段階、電流検出段階、および推定段階を有する。前記電圧調整段階は、リチウム二次電池の端子間電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させる。前記電流検出段階は、前記リチウム二次電池から流出する電流または前記リチウム二次電池に流入する電流を測定する。前記推定段階は、前記検出される電流に基づいて、前記リチウム二次電池の内部に析出しているデンドライトの析出量を推定する。
本発明のリチウム二次電池の劣化診断装置および劣化診断方法によれば、デンドライトの析出量を推定することができる。
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施の形態におけるリチウム二次電池の劣化診断装置の概略構成を示す図である。図1に示すとおり、本実施の形態におけるリチウム二次電池の劣化診断装置100は、電気自動車200に電気的に接続され、電気自動車200に搭載されるリチウム二次電池の劣化状態を診断する。より具体的には、本実施の形態の劣化診断装置100は、リチウム二次電池の内部に析出するデンドライトの析出量を推定することにより、リチウム二次電池の劣化状態を診断する。本実施の形態の劣化診断装置100は、電気自動車200の充電装置に適用され、電気自動車200を充電する前にリチウム二次電池の劣化状態を診断する。
次に、図2を参照して、本実施の形態におけるリチウム二次電池の劣化診断装置100について詳細に説明する。図2は、図1に示すリチウム二次電池の劣化診断装置の概略構成を示すブロック図である。本実施の形態の劣化診断装置100は、リチウム二次電池の内部に析出するデンドライトの析出量を推定することにより、リチウム二次電池の劣化度合いを判定するものである。
図2に示すとおり、本実施の形態におけるリチウム二次電池の劣化診断装置100は、可変電源10、電圧検出部20、電流検出部30、制御部40、タイマ50、および記憶部60を備える。劣化診断装置100は、電気自動車200内部のリチウム二次電池(以下、組電池と称する)70と電気的に接続されている。組電池70は、複数のリチウム単電池(以下、単セルと称する)71が電気的に直列に接続されて形成されている。
可変電源10は、電圧調整手段として、組電池70の端子間電圧を変化させるものである。可変電源10は、組電池70に電気的に並列に接続され、組電池70の正極端子および負極端子間の電圧を変化させる。本実施の形態の可変電源10は、制御部40によって制御され、組電池70の端子間電圧を第1の電圧Vから第2の電圧Vに変化させる。
電圧検出部20は、組電池70の端子間電圧を検出するものである。電圧検出部20は、組電池70と電気的に並列に接続され、組電池70の正極端子および負極端子間の電圧を検出する。電圧検出部20は、制御部40と電気的に接続されており、電圧検出部20の電圧信号は制御部40に送信される。
電流検出部30は、電流検出手段として、組電池70と可変電源10との間を流れる電流を検出するものである。電流検出部30は、組電池70と可変電源10とを電気的に接続する配線上に設けられ、組電池70と可変電源10との間を流れる電流を検出する。本実施の形態の電流検出部30は、制御部40によって制御され、電流検出部30の電流信号は制御部40に送信される。
制御部40は、電圧検出部20から電圧信号を受信して、可変電源10を制御するものである。また、制御部40は、推定手段として、電流検出部30で検出される電流に基づいて、組電池70の単セル71内部に析出しているデンドライトの析出量を推定する。
タイマ50は、時間計測手段として、組電池70の電圧が第2の電圧Vに達した時点からの経過時間を計測するものであり、記憶部60は、第1および第2の電圧V,V、設定時間T、ならびに初期電流値(基準電流値)Iを格納している。タイマ50および記憶部60は、通信配線を介して制御部40に接続されている。
次に、図3を参照しつつ、本実施の形態におけるリチウム二次電池の劣化診断装置100による劣化診断処理について説明する。
図3は、図1に示すリチウム二次電池の劣化診断装置における劣化診断処理を説明するためのフローチャートである。本実施の形態におけるリチウム二次電池の劣化診断方法は、リチウム二次電池の端子間電圧をステップ状に低下させ、これに遅れてリチウム二次電池から流出する電流を検出することにより、デンドライトの析出量を推定するものである。
図3に示すとおり、本実施の形態の劣化診断処理では、まず、組電池70の端子間電圧が第1の電圧Vに設定される(ステップS101)。本実施の形態では、制御部40が、電圧検出部20からの電圧信号を受信しつつ、可変電源10を制御することにより、組電池70の端子間電圧を第1の電圧Vに設定する。ここで、第1の電圧Vは、組電池70の充電量(以下、SOCと称する)が50%の場合に対応する電圧であり、予め設定されて記憶部60に格納されている。正極活物質としてリチウムマンガン酸化物を含み、負極活物質として難黒鉛化炭素(HC)を含むリチウム二次電池において、第1の電圧Vは、単セル71あたり約3.8Vである。
次に、組電池70の端子間電圧が低下される(ステップS102)。本実施の形態では、制御部40が可変電源10を制御して、組電池70の端子間電圧を低下させる。
次に、組電池70の端子間電圧が検出され、組電池70の端子間電圧が第2の電圧Vに到達したか否かが判断される(ステップS103,S104)。本実施の形態では、電圧検出部20からの電圧信号に基づいて、制御部40が、リチウム二次電池70の端子間電圧が第2の電圧Vに到達したか否かを判断する。ここで、第2の電圧Vは、組電池70のSOCが0%の場合に対応する電圧であり、予め設定されて記憶部60に格納されている。リチウムマンガン酸化物を正極活物質として含むリチウム二次電池において、第2の電圧Vは、単セル71あたり約2.5Vである。
組電池70の端子間電圧が第2の電圧Vに到達していない場合(ステップS104:NO)、組電池70の端子間電圧が第2の電圧Vに到達するまで、ステップS103以下の処理が繰り返される。一方、組電池70の端子間電圧が第2の電圧Vに到達した場合(ステップS104:YES)、ステップS105以下の処理に移行する。
以上のとおり、ステップS101〜S104に示す処理によれば、まず、組電池70の端子間電圧が第1の電圧Vに設定される。そして、組電池70の端子間電圧が第1の電圧Vから第2の電圧Vに短時間(たとえば、約0.1秒)で低下される。なお、組電池70の端子間電圧を第1の電圧Vから第2の電圧Vに低下させるのに要する時間は、適宜設定されることができる。低下された組電池70の端子間電圧は、第2の電圧Vに維持される。
次に、組電池70の端子間電圧が第2の電圧Vに到達した時点からの経過時間が計測され、経過時間が予め設定された設定時間Tに到達したか否かが判断される(ステップS105,S106)。本実施の形態では、制御部40が、タイマ50からの時間信号に基づいて、予め設定された設定時間Tに経過時間が到達したか否かを判断する。ここで、設定時間Tは、0.03秒よりも長く、かつ、組電池70の電圧が第2の電圧Vに達した時点から電流の流れが終了する時点までの時間(数秒〜数十秒)よりも短い時間(たとえば、2秒)であり、予め設定されて記憶部60に格納されている。設定時間Tが0.03秒よりも短い場合、組電池70の各単セル71がキャパシタとして動作するため適切な電流が流れない。
経過時間が設定時間Tに到達していない場合(ステップS106:NO)、経過時間が設定時間Tに到達するまで、ステップS105以下の処理が繰り返される。一方、経過時間が設定時間Tに到達した場合(ステップS106:YES)、組電池70から可変電源10に向かって流れる電流が検出される(ステップS107)。本実施の形態では、制御部40が、電流検出部30からの電流信号を受信して、組電池70の端子間電圧の瞬間的な低下に遅れて組電池70から流出する電流を検出する。
そして、検出された電流の電流値Iに基づいて、デンドライトの析出量が推定される(ステップS108)。本実施の形態では、制御部40が、検出された電流値Iと記憶部60に格納されている初期電流値Iとを比較することによって、組電池70の内部に析出しているデンドライトの析出量を推定する。デンドライトの析出量を推定する析出量推定処理についての詳細な説明は後述する。
以上のとおり、ステップS105〜S108に示す処理によれば、まず、組電池70の端子間電圧が第2の電圧Vに達した時点からの経過時間が計測される。次に、経過時間が設定時間Tに達した時点において、組電池70から可変電源10に向かって流れる電流が検出される。そして、検出された電流の電流値Iに基づいて、組電池70の内部に析出されているデンドライトの析出量が推定され、組電池70の劣化度合いが判定される。
以上のとおり、図3に示すフローチャートの処理によれば、まず、リチウム二次電池の端子間電圧がステップ状に低下される。次に、このようなステップ状の電圧変化にともなってリチウム二次電池から流出する電流が検出される。そして、検出される電流に基づいて、デンドライトの析出量が推定され、リチウム二次電池の劣化度合いが判定される。したがって、本実施の形態におけるリチウム二次電池の劣化診断方法によれば、デンドライトの析出量が推定されるため、デンドライトがリチウム二次電池の短絡を引き起こす前にデンドライトを除去するなどの対策をとることができる。その結果、リチウム二次電池の寿命を延ばすことができる。
次に、図4を参照して、本実施の形態のリチウム二次電池の劣化診断装置100における電流検出部30で検出される電流について説明する。
図4は、図1に示すリチウム二次電池の劣化診断装置における電流検出部で検出される電流を説明するための図である。
図4中の実線は、デンドライトが析出した劣化状態のリチウム二次電池における電流変化を表しており、図4中の破線は、デンドライトが析出していない新品状態のリチウム二次電池における電流変化を表している。図4の横軸は時間であり、縦軸は電流である。
図4に示すとおり、組電池70の端子間電圧を第1の電圧Vから第2の電圧Vにステップ状に低下させた場合、電流検出部30では、直後に大きな電流が検出され、その後、時間の増加にしたがって電流の大きさは減少する。ここで、図4の破線と実線とを比較すれば、リチウム二次電池の劣化度合いが大きいほど、すなわち、デンドライトの析出量が多いほど、電流検出部30で検出される電流値は小さくなる。
したがって、本実施の形態におけるリチウム二次電池の劣化診断方法では、新品状態のリチウム二次電池と劣化状態のリチウム二次電池に対して、同じ条件(同一の電圧変化範囲、かつ、同一の設定時間)で電流を検出する。そして、同一条件で検出された新品状態のリチウム二次電池の電流値と劣化状態のリチウム二次電池の電流値とを比較することによって、劣化状態のリチウム二次電池におけるデンドライトの析出量を推定する。
以下、図5および図6を参照して、本実施の形態におけるデンドライトの析出量推定処理について詳細に説明する。図5は、図3のフローチャートのステップS108に示す析出量推定処理の詳細を示すフローチャートである。なお、本実施の形態の析出量推定処理に先立って、新品状態の組電池70に対して上記ステップS101〜S107に示す処理が事前に実行される。そして、新品状態の組電池70に対して検出された電流値が、初期電流値Iとして記憶部60に格納されている。
図5に示すとおり、本実施の形態の析出量推定処理では、まず、電流値Iの初期電流値Iに対する比率が算出される(ステップS201)。本実施の形態では、図3のステップS107に示す処理で検出された電流値Iの初期電流値Iに対する比率(I/I)が算出される。なお、上述したとおり、劣化状態の組電池70に対して検出された電流値Iは、新品状態の組電池70に対して検出された初期電流値Iよりも小さいため、初期電流値Iに対する電流値Iの比率は、1以下の値となる。
次に、初期電流値Iに対する電流値Iの比率が閾値以下か否かが判断される(ステップS202)。本実施の形態では、ステップS201に示す処理で算出された初期電流値Iに対する電流値Iの比率が、所定の閾値と比較され、初期電流値Iに対する電流値Iの比率が閾値以下か否かが判断される。ここで、閾値は、デンドライトがリチウム二次電池の短絡を引き起こさない程度の値に予め設定され、記憶部60に格納されている。
初期電流値Iに対する電流値Iの比率が閾値以下の場合(ステップS202:YES)、組電池70が劣化状態にあることが報知される(ステップS203)。本実施の形態では、デンドライトの成長によってリチウム二次電池の内部短絡が発生するおそれがあるとして、「短絡危険」などの文章が表示部(不図示)に表示される。
一方、初期電流値Iに対する電流値Iの比率が閾値よりも大きい場合(ステップS202:NO)、組電池70の充電履歴情報が取得される(ステップS204)。本実施の形態では、記憶部60に組電池70の充電履歴情報が予め格納されており、制御部40が充電履歴情報を取得する。充電履歴情報は、組電池70が充電された回数を示す充電回数情報、高速充電された回数を示す高速充電回数情報、および満充電された満充電回数情報を含む。
そして、充電履歴情報に基づいて閾値が補正される(ステップS205)。本実施の形態では、予め設定される第1係数(たとえば、1.8×10−7)と充電回数(たとえば、80回)との積により、第1補正値(1.4×10−5)が算出される。次に、予め設定される第2係数(たとえば、2.9×10−5)と高速充電回数(たとえば、40回)との積により、第2補正値(1.2×10−3)が算出される。そして、予め設定される第3係数(たとえば、5.8×10−6)と満充電回数(たとえば、25回)との積により、第3補正値(1.5×10−4)が算出される。それから、第1〜第3補正値の和(たとえば、0.0013)が閾値に加算される。このようにすると、図6(A)および図6(B)に示すとおり、組電池70の充電回数が多いほど、閾値が大きくなるように閾値が補正される。言い換えれば、組電池70の充電回数が多いほど、デンドライトの析出量が多くなるように補正される。
次に、初期電流値Iに対する電流値Iの比率が、補正された閾値以下か否かが判断される(ステップS206)。本実施の形態では、ステップS201に示す処理で算出された初期電流値Iに対する電流値Iの比率が、ステップS205に示す処理で補正された閾値と比較され、初期電流値Iに対する電流値Iの比率が閾値以下か否かが判断される。
初期電流値Iに対する電流値Iの比率が閾値以下の場合(ステップS206:YES)、組電池70が劣化状態にあることが報知される(ステップS203)。一方、初期電流値Iに対する電流値Iの比率が閾値よりも大きい場合(ステップS206:NO)、組電池70の温度情報が取得される(ステップS207)。本実施の形態では、記憶部60に組電池70の温度情報が予め格納されており、制御部40が温度情報を取得する。ここで、温度情報は、電気自動車が使用される地域の気候情報、または、組電池70の近傍もしくは劣化診断装置100に設けられる温度センサ(不図示)の出力情報を含む。
そして、温度情報に基づいて閾値が補正される(ステップS208)。本実施の形態では、まず、温度情報に応じて設定される第4係数(たとえば、1.08)を上記第1補正値に乗ずることにより、第4補正値(たとえば、1.6×10−5)が算出される。次に、温度情報に応じて設定される第5係数(たとえば、1.2)を上記第2補正値に乗ずることによって、第5補正値(たとえば、1.4×10−3)が算出される。そして、温度情報に応じて設定される第6係数(たとえば、1.5)を上記第3補正値に乗ずることによって、第6補正値(たとえば、2.2×10−4)が算出される。それから、第4〜第6補正値の和(たとえば、0.0016)が、ステップS202に示す処理で用いられた閾値に加算される。このようにすると、図6(B)および図6(C)に示すとおり、リチウム二次電池が使用される環境の温度が多いほど閾値が大きくなるように閾値が補正される。言い換えれば、組電池70が使用される環境の温度が高いほど、デンドライトの析出量が多くなるように補正される。
次に、初期電流値Iに対する電流値Iの比率が、補正された閾値以下か否かが判断される(ステップS209)。本実施の形態では、ステップS201に示す処理で算出された初期電流値Iに対する電流値Iの比率がステップS208に示す処理で補正された閾値と比較され、初期電流値Iに対する電流値Iの比率が閾値以下か否かが判断される。
初期電流値Iに対する電流値Iの比率が閾値以下の場合(ステップS209:YES)、組電池70が劣化状態にあることが報知される(ステップS203)。一方、初期電流値Iに対する電流値Iの比率が閾値よりも大きい場合(ステップS209:NO)、デンドライトによって短絡が発生する可能性は低いとして、処理が終了される。
以上のとおり、図5に示すフローチャートの処理によれば、まず、電流値Iの初期電流値Iに対する比率が算出されて、デンドライトの析出量が推定される。そして、初期電流値Iに対する電流値Iの比率が閾値と比較されることによって、リチウム二次電池の劣化度合いが判定される。このとき、閾値は、リチウム二次電池の充電履歴情報および温度情報に基づいて補正される。なお、本実施の形態とは異なり、放電履歴情報(たとえば、運転時間)に基づいて、電気自動車200の運転時間が長いほど、閾値が大きくなるように補正されてもよい。あるいは、閾値に代わって、初期電流値Iに対する電流値Iの比率に補正値が加算され、充電回数が多いほど、または、温度が高いほど、デンドライトの析出量が多くなるように、初期電流値Iに対する電流値Iの比率が補正されてもよい。
以上のとおり、本実施の形態のリチウム二次電池の劣化診断方法によれば、リチウム二次電池の端子間電圧をステップ状に低下させ、リチウム二次電池から遅れて流出する電流を検出することにより、デンドライトの析出量が推定される。そして、推定されるデンドライトの析出量に基づいて、リチウム二次電池の劣化度合いが判定される。したがって、デンドライトがリチウム二次電池の短絡を引き起こす前にデンドライトを除去するなどの対策をとることによって、リチウム二次電池の寿命を延ばすことができる。また、リチウム二次電池の使用可能時間を予測することができる。
なお、上述した実施の形態では、正極活物質としてリチウムマンガン酸化物を含むリチウム二次電池を例に挙げ、単セルあたりの電圧を3.8Vから2.5Vに低下させた。しかしながら、SOC50%に対応する単セルあたりの電圧は、正極活物質として用いられる材料によって異なる。種々の材料のSOC毎の電圧を表1に示す。
Figure 2010086901
表1に示すとおり、正極活物質としてリチウムコバルト酸化物を含むリチウム二次電池では、単セルあたりの電圧を3.6Vから2.5Vに低下させることが好ましい。また、正極活物質としてリチウムニッケル酸化物を含むリチウム二次電池では、単セルあたりの電圧を3.7Vから2.5Vに低下させることが好ましい。
以上のとおり、説明した本実施の形態は、以下の効果を奏する。
(a)本実施の形態におけるリチウム二次電池の劣化診断装置は、可変電源、電流検出部、および制御部を有する。可変電源は、組電池に電気的に並列に接続され、組電池の端子間電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させる。電流検出部は、組電池と可変電源との間を流れる電流を検出する。制御部は、電流検出部で検出される電流に基づいて、組電池の内部に析出しているデンドライトの析出量を推定する。したがって、デンドライトの析出量が推定されるため、デンドライトがリチウム二次電池の短絡を引き起こす前にデンドライトを除去するなどの対策をとることができる。その結果、リチウム二次電池の寿命を延ばすことができる。また、リチウム二次電池の使用可能時間を予測することができる。
(b)本実施の形態におけるリチウム二次電池の劣化診断装置は、組電池の端子間電圧が第2の電圧に達した時点からの経過時間を計測するタイマをさらに有する。また、制御部は、経過時間が予め設定された設定時間に達した時点における電流の電流値を初期電流値と比較することによって、デンドライトの析出量を推定する。したがって、電流値を比較することによって、デンドライトの析出量を容易に推定することができる。
(c)可変電源は、組電池の端子間電圧を第1の電圧から第2の電圧に低下させ、電流検出部は、組電池から可変電源に向かって流れる電流を検出する。したがって、リチウム二次電池から流出する電流(放電電流)を検出することにより、デンドライトの析出量を推定することができる。
(d)可変電源は、組電池のSOCが50%から0%になるように組電池の端子間電圧を第1の電圧から第2の電圧に低下させる。したがって、リチウム二次電池から流出する電流(電荷)の量を確保しつつ、リチウム二次電池の端子間電圧を容易に調整することができる。
(e)可変電源は、組電池の端子間電圧を、単セルあたり3.8Vから2.5Vに低下させる。したがって、リチウムマンガン酸化物を正極活物質に含むリチウム二次電池に対して、SOCが50%から0%になるように端子間電圧を変化させることができる。
(f)デンドライトの析出量は、組電池の充放電履歴情報に基づいて補正される。したがって、デンドライトの析出量をより正確に推定することができる。
(g)デンドライトの析出量は、組電池の充電回数が多いほど、多くなるように補正される。したがって、リチウム二次電池の充電履歴情報を用いて、デンドライトの析出量をより正確に推定することができる。
(h)デンドライトの析出量は、組電池が使用される環境の温度が高いほど、多くなるように補正される。したがって、リチウム二次電池の温度情報を用いて、デンドライトの析出量をより正確に推定することができる。
(i)本実施の形態におけるリチウム二次電池の劣化診断方法は、電圧調整段階、電流検出段階、および推定段階を有する。電圧調整段階は、組電池の端子間電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させる。電流検出段階は、組電池から流出する電流を検出する。推定段階は、検出される電流に基づいて、組電池の内部に析出しているデンドライトの析出量を推定する。したがって、デンドライトの析出量が推定されるため、デンドライトがリチウム二次電池の短絡を引き起こす前にデンドライトを除去するなどの対策をとることができる。その結果、リチウム二次電池の寿命を延ばすことができる。また、リチウム二次電池の使用可能時間を予測することができる。
以上のとおり、説明した一実施の形態において、本発明のリチウム二次電池の劣化診断装置および劣化診断方法を説明した。しかしながら、本発明は、その技術思想の範囲内において当業者が適宜に追加、変形、および省略することができることはいうまでもない。
たとえば、上述した実施の形態では、組電池の端子間電圧が第2の電圧に到達した時点から設定時間が経過した時点における電流の電流値を初期電流値と比較することによって、デンドライトの析出量を推定した。しかしながら、電流検出部で検出される電流からデンドライトの析出量を推定する方法は上記形態に限定されず、たとえば、図4に示す電流−時間曲線を利用して、種々の方法により推定することができる。具体的には、図4に示す電流−時間曲線に対して、所定の設定時間が経過した時点における電流−時間曲線の微分値(曲線の傾き)、第1の時点から第2の時点までの曲線の積分値(曲線の面積)、あるいは、曲線の形状などから、デンドライトの析出量を推定してもよい。
また、上述した実施の形態では、組電池の端子間電圧を第1の電圧から第2の電圧までステップ状に低下させ、組電池から流出する電流を検出した。しかしながら、組電池の電圧を第2の電圧から第1の電圧までステップ状に上昇させ、組電池に流入する電流を検出することにより、デンドライトの析出量を推定してもよい。
また、上述した実施の形態では、SOC50%に対応する第1の電圧からSOC0%に対応する第2の電圧に組み電池の電圧を低下させた。しかしながら、第1の電圧および第2の電圧は上記実施の形態に限定されず、たとえば、SOC100%に対応する第1の電圧からSOC50%に対応する第2の電圧に電圧を低下させてもよい。
また、上述した実施の形態では、本発明のリチウム二次電池の劣化診断装置を電気自動車の充電装置に適用した場合について説明した。しかしながら、本発明のリチウム二次電池の劣化診断装置は単独で設けられてもよく、あるいは、電気自動車に搭載されてもよい。また、本発明のリチウム二次電池の劣化診断装置は、電気自動車に搭載される前のリチウム二次電池の劣化診断に用いられてもよい。
本発明の一実施の形態におけるリチウム二次電池の劣化診断装置の概略構成を示す図である。 図1に示すリチウム二次電池の劣化診断装置の概略構成を示すブロック図である。 図1に示すリチウム二次電池の劣化診断装置におけるリチウム二次電池の劣化診断処理を説明するためのフローチャートである。 図1に示すリチウム二次電池の劣化診断装置における電流検出部で検出される電流を説明するための図である。 図3のフローチャートのステップS108に示す析出量推定処理の詳細を示すフローチャートである。 図5のフローチャートに示す閾値の補正を説明するための図である。
符号の説明
10 可変電源(電圧調整手段)、
20 電圧検出部、
30 電流検出部(電流検出手段)、
40 制御部(推定手段)、
50 タイマ(時間計測手段)、
60 記憶部、
70 組電池(リチウム二次電池)、
71 単セル(リチウム二次電池)、
100 リチウム二次電池の劣化診断装置、
200 電気自動車。

Claims (9)

  1. リチウム二次電池に電気的に並列に接続され、当該リチウム二次電池の端子間電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させる電圧調整手段と、
    前記リチウム二次電池と前記電圧調整手段との間を流れる電流を検出する電流検出手段と、
    前記検出される電流に基づいて、前記リチウム二次電池の内部に析出しているデンドライトの析出量を推定する推定手段と、
    を有することを特徴とするリチウム二次電池の劣化診断装置。
  2. 前記リチウム二次電池の端子間電圧が前記第2の電圧に達した時点からの経過時間を計測する時間計測手段をさらに有し、
    前記推定手段は、前記経過時間が予め設定された設定時間に達した時点における前記電流の電流値を基準電流値と比較することによって、前記デンドライトの析出量を推定することを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池の劣化診断装置。
  3. 前記第1の電圧は前記第2の電圧よりも高く、前記電圧調整手段は、前記リチウム二次電池の端子間電圧を前記第1の電圧から前記第2の電圧に低下させ、
    前記電流検出手段は、前記リチウム二次電池から前記電圧調整手段に向かって流れる電流を検出することを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム二次電池の劣化診断装置。
  4. 前記電圧調整手段は、前記リチウム二次電池の充電量が50%から0%になるように当該リチウム二次電池の端子間電圧を前記第1の電圧から前記第2の電圧に低下させることを特徴とする請求項3に記載のリチウム二次電池の劣化診断装置。
  5. 前記リチウム二次電池は、リチウムマンガン酸化物を正極活物質として含み、
    前記電圧調整手段は、前記リチウム二次電池の端子間電圧を、単電池あたり3.8Vから2.5Vに低下させることを特徴とする請求項4に記載のリチウム二次電池の劣化診断装置。
  6. 前記デンドライトの析出量は、前記リチウム二次電池の充放電履歴情報に基づいて補正されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウム二次電池の劣化診断装置。
  7. 前記デンドライトの析出量は、前記リチウム二次電池の充電回数が多いほど、多くなるように補正されることを特徴とする請求項6に記載のリチウム二次電池の劣化診断装置。
  8. 前記デンドライトの析出量は、前記リチウム二次電池が使用される環境の温度が高いほど、多くなるように補正されることを特徴とする請求項6に記載のリチウム二次電池の劣化診断装置。
  9. リチウム二次電池の端子間電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させる段階と、
    前記リチウム二次電池から流出する電流または前記リチウム二次電池に流入する電流を検出する段階と、
    前記検出される電流に基づいて、前記リチウム二次電池の内部に析出しているデンドライトの析出量を推定する段階と、
    を有することを特徴とするリチウム二次電池の劣化診断方法。
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