JP2023095745A - 電池監視装置、バッテリマネージメントユニット - Google Patents

電池監視装置、バッテリマネージメントユニット Download PDF

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Abstract

【課題】リチウム析出量を算出する析出量検出部の信頼性を確保可能な電池監視装置を提供する。【解決手段】電池監視装置20は、リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を監視する。電池監視装置20は、電池の両端を一時的に短絡させて放電させる短絡回路371を含み、短絡回路371にて電池の両端を短絡させた際の電流および電圧の少なくとも一方の変化に基づいてリチウム析出量の推定値を算出する析出量検出部37を備える。電池監視装置20は、リチウムイオン電池の電池温度を検出する温度センサ31を備える。析出量検出部37は、リチウム析出量の推定値を電池温度で補正した補正値をリチウム析出量として算出する。【選択図】図4

Description

本開示は、電池監視装置およびバッテリマネージメントユニットに関する。
従来、リチウムイオン電池の内部短絡を診断する技術として、リチウムイオン電池の両端を短絡させるスイッチ、抵抗、コイル等を含む短絡回路を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
米国特許第11152652号明細書
ところで、本発明者らは、リチウムイオン電池におけるリチウム析出量と、リチウムイオン電池の両端を短絡させた際の電流および電圧の挙動との間に相関性があることに着眼し、当該挙動からリチウム析出量を推定することを検討した。
しかし、リチウムイオン電池の内部抵抗は、数mΩ~数百mΩ程度であり、外乱の影響を受け易く、上記の推定方法ではリチウム析出量を精度よく求めることが困難であり、信頼性に欠けることが分った。このことは、本発明者らの鋭意検討の末に見出された。
本開示は、リチウム析出量を算出する析出量検出部の信頼性を確保可能な電池監視装置を提供することを1つの目的とする。また、本開示は、リチウム析出量を適切に検出可能な電池監視装置を提供すことや、リチウム析出量の増加を適切に抑制可能なバッテリマネージメントユニットを提供することを別の目的とする。
請求項1に記載の発明は、
リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を監視する電池監視装置であって、
リチウムイオン電池の両端を一時的に短絡させて放電させる短絡回路(371)を含み、短絡回路にてリチウムイオン電池の両端を短絡させた際の電流および電圧の少なくとも一方の変化に基づいてリチウム析出量の推定値を算出する析出量検出部(37)と、
リチウムイオン電池の電池温度を検出する温度センサ(31)と、を備え、
析出量検出部は、推定値を電池温度で補正した補正値をリチウム析出量として算出する。
これによると、リチウム析出量の推定値に含まれる電池温度の影響を小さくして、リチウム析出量の検出精度を向上させることができるので、析出量検出部の信頼性を確保することができる。
請求項2に記載の発明は、
リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を監視する電池監視装置であって、
リチウムイオン電池の両端を一時的に短絡させて放電させる短絡回路(371)を含み、短絡回路にてリチウムイオン電池の両端を短絡させた際の電流および電圧の少なくとも一方の変化に基づいてリチウム析出量の推定値を算出する析出量検出部(37)と、
リチウムイオン電池と前記短絡回路との間に生ずる寄生抵抗値が予め記憶された記憶部(51)と、を備え、
析出量検出部は、推定値を寄生抵抗値で補正した補正値をリチウム析出量として算出する。
これによると、リチウム析出量の推定値に含まれる寄生インピーダンスの影響を小さくして、リチウム析出量の検出精度を向上させることができるので、析出量検出部の信頼性を確保することができる。
請求項7に記載の発明は、
リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を監視する電池監視装置であって、
リチウムイオン電池の両端を一時的に短絡させて放電させる短絡回路(371)を含み、短絡回路にてリチウムイオン電池の両端を短絡させた際の電流および電圧の少なくとも一方の変化に基づいてリチウム析出量の推定値を算出する析出量検出部(37)と、
リチウム析出量から推定される所定の電池状態とリチウム析出量以外の他の要素から推定される電池状態とを比較して、析出量検出部の適否を診断する診断部(541)と、を備える。
これによると、診断部によって析出量検出部の確からしさを診断することができるので、析出量検出部の信頼性を確保することができる。
請求項9に記載の発明は、
リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を監視する電池監視装置であって、
蓄電池に設置されるセンサの出力を用いてリチウム析出量を算出する析出量検出部(37)と、
リチウム析出量の時間変化をリチウムイオン電池の使用履歴の1つとして記憶する記憶部(51)と、を備える。
このようになっていれば、リチウム析出量を非破壊、且つ、短時間に適切に検出して、リチウム析出状態の検査を実施することができる。特に、電池モジュールBMに対してリチウム析出を検出するセンサを設置する構成になっているので、時間や場所を問わずリチウムの析出状態の検出を可能となる。さらに、リチウム析出量の時間変化をリチウムイオン電池の使用履歴の1つとして記憶部に記憶しておくことで、いつリチウムが析出したかを明確に把握することができる。このことは、リチウム析出の責任の所在を明確にできるといった利点がある。
請求項11に記載の発明は、
リチウムイオン電池を含む蓄電池を管理するバッテリマネージメントユニットであって、
リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を含む電池状態を監視するセンサ部(30)と、
蓄電池の充電制御を行う電池制御装置(140)を備え、
電池制御装置は、リチウム析出量が所定の閾値を超えて増加すると、蓄電池を昇温させる加熱要素(HM)によって蓄電池を加熱する。
これによると、リチウム析出量が増えるタイミングでリチウムイオン電池を加熱して、リチウム析出量の増加を適切に抑制するので、安全かつ高効率な態様でリチウムイオン電池を使用することができる。特に、本案のバッテリマネージメントユニットは、温度分布が拡大し易い大規模な蓄電設に好適である。
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
第1実施形態に係る電池監視装置が適用された電池パックを示す模式図である。 リチウムイオン電池を説明するための説明図である。 電池監視装置を含むバッテリマネージメントユニットの概略構成図である。 電池監視装置を説明するための説明図である。 電池監視装置に含まれる析出量検出部を説明するための説明図である。 リチウム析出量の算出方法を説明するための説明図である。 寄生抵抗値の求め方を説明するための説明図である。 リチウム析出量の算出の流れを説明するための説明図である。 診断部による析出量検出部の診断を説明するための説明図である。 電池の容積率SOHの算出方法を説明するための説明図である。 異常発熱現象の発生前後における各種センサの出力変化を示すタイミングチャートである。 電池監視装置が実行する制御処理の流れを説明するための説明図である。 電池監視装置を含む電池管理システムの概略構成図である。 電池監視装置を含む充電システムの概略構成図である。 第1実施形態の比較例となる充電システムでの電池モジュールの充電時における電流、電圧を説明するための説明図である。 電池モジュールの充電開始時に電池監視装置が実行する制御処理の流れを説明するための説明図である。 充電器が実行する制御処理の流れを説明するための説明図である。 電池モジュールの充電中に電池監視装置が実行する制御処理の流れを説明するための説明図である。 第1実施形態の充電システムでの電池モジュールの充電時における電流、電圧を説明するための説明図である。 電池評価システムの概略構成図である。 電池評価システムによる電池モジュールの価値算定および用途提案を説明明するための概略的なブロック図である。 電池評価システムが生成するリビルド情報を説明するための説明図である。 電池パックを車両に搭載するまでの製造過程を説明するための説明図である。 第2実施形態に係る電池監視装置の一部の機能を説明するための説明図である。 リチウムイオン電池のリチウムが析出した時期を説明するための説明図である。 第3実施形態に係る大容量蓄電システムの概略構成図である。 大容量蓄電システムの内部構成を説明するための説明図である。 大容量蓄電システムの概略的なシステム構成図である。 第3実施形態の比較例となる大容量蓄電システムの温度制御を説明するための説明図である。 第3実施形態に係る大容量蓄電システムの温度制御を説明するための説明図である。 温度制御の変形例を説明するための説明図である。 電池交換に適した時期を説明するための説明図である。 充電レートおよび温度とリチウム析出量との関係を説明するための説明図である。 第4実施形態に係る電池輸送機器の概略構成図である。 電池輸送機器の概略的なシステム構成図である。
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
(第1実施形態)
本実施形態では、まず、高圧バッテリである電池パック1を搭載した車両のバッテリマネージメントユニット(以下、BMUとも呼ぶ)に本開示の電池監視装置20および電池監視方法を適用した例について、図1~図13を参照しつつ説明する。その後に、本実施形態では、電池監視装置20を含む充電システムBCSおよび電池評価システムBRSについて説明する。
[BMU]
BMUは、図1に示す電池パック1を備える。電池パック1は、外殻を構成する密閉容器11を備え、当該密閉容器11の内側に、複数の電池モジュールBM、電池監視装置20、電池ECU100が収容されたものである。密閉容器11には、その内部の圧力が高まった際に、内側にあるガスを外部に排気するための高圧保護バルブHPVが設けられている。電池パック1は、図示しない温調機器によって各電池モジュールBMを適温に調整される。
複数の電池モジュールBMは、図示しない車両走行用に電動機等の電気機器に接続され、当該電気機器に電力を供給する電源である。複数の電池モジュールBMは、電気的に直列的に接続されている。また、複数の電池モジュールBMは、複数の電池セルCを電気的に直列に接続した組電池である。なお、本実施形態では、3つの電池モジュールBMを備える電池パック1を例示したが、電池モジュールBMの数はこれに限定されず、任意の数とすることができる。電池モジュールBMを構成する電池セルCの数についても任意の数とすることができる。なお、電池モジュールBMは、一部が電気的に並列に接続されていてもよい。以下では、電池セルCや電池モジュールBMのことを単に電池と呼ぶことがある。なお、本実施形態の電池モジュールBMは、リチウムイオン電池を含む蓄電池である。
電池セルCは、充放電可能な二次電池である。電池セルCは、リチウムイオン電池で構成されている。リチウムイオン電池は、例えば、図2示すように、正極剤としてリン酸鉄リチウムLFPやニッケル・マンガン・コバルトNMCが採用され、負極剤として黒鉛が採用されたもので構成される。また、リチウムイオン電池は、例えば、正極側集電体がアルミニウムで構成され、負極側集電体が銅で構成されている。このように構成されるリチウムイオン電池は、優れた充放電のサイクル特性を有する一方で、電極電位がリチウムの析出電位に非常に近く、充電状態においてリチウムが析出し易い特徴がある。
図3に示すように、電池監視装置20は、接続部材21を介して各電池モジュールBMそれぞれに電気的に接続されている。接続部材21には、配線パターンが印刷されたフレキシブル基板FPCが含まれている。電池監視装置20は、各電池モジュールBMと同数のセンサ部30A、30B、30Cと、各電池モジュールBMと同数の監視モジュール50A、50B、50Cを備える。各センサ部30A、30B、30Cは、基本構成が同じであるため、個別に説明するのではなく、センサ部30としてまとめて説明する。また、各監視モジュール50A、50B、50Cは、基本構成が同じであるため、個別に説明するのではなく、監視モジュール50としてまとめて説明する。
センサ部30は、各電池モジュールBMの電池状態を検出する。図4に示すように、センサ部30は、温度センサ31、電流センサ32、電圧センサ33、歪センサ34、ガスセンサ35、パック内圧センサ36、析出量検出部37、被膜検出部38を含んでいる。センサ部30を構成する各種センサは、少なくとも一部がフレキシブル基板FPCに実装されている。なお、センサ部30を構成する各種センサ全てが、フレキシブル基板FPCに実装されている必要はない。但し、温度センサ31、歪センサ34、ガスセンサ35は、電池セルCの近くにある方がよいので、フレキシブル基板FPCに実装することが望ましい。
温度センサ31は、リチウムイオン電池の電池温度を検出するセンサである。温度センサ31は、図1に示すように、フレキシブル基板FPCに対して複数実装されている。フレキシブル基板FPCには、電池モジュールBMを構成する全てのリチウムイオン電池の電池温度が把握可能なように、電池セルCと同数または電池セルCよりも若干少ない数の温度センサ31が実装されている。なお、電池温度は、電池セルCの内部インピーダンスの測定結果から推定するようになっていてもよい。この場合、電池温度を推定する手段が温度センサ31としての機能を果たす。
電流センサ32は、電池モジュールBMを流れる電流を検出するセンサである。各電池モジュールBMが電気的に直列に接続されている場合、電流センサ32は、電池パック1に1つあれば充分である。
電圧センサ33は、各電池セルCのセル電圧の検出機能に加えて、電池モジュールBMの電圧をブロック電圧として検出可能になっている。電圧センサ33は、例えば、各電池セルCのセル電圧をキャパシタに順次充電して、キャパシタの端子間電圧をセル電圧として検出するフライングキャパシタ型の回路で構成することができる。
歪センサ34は、各電池セルCの内部のガス発生等によって生ずる各電池セルCの歪を検出するセンサである。なお、電池セルCの歪は、歪センサ34ではなく超音波センサ等の他のセンサで検出するようになっていてもよい。
ガスセンサ35は、各電池セルCからのガスリークを検出するためのセンサである。ガスセンサ35は、例えば、リチウムイオン電池の異常が生じた際に発生する、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、フッ化水素の少なくとも1つを検出可能に構成されている。
パック内圧センサ36は、電池パック1の密閉容器11の内部の圧力をパック内圧力として検出するセンサである。パック内圧センサ36は、例えば、大気圧を基準とする大気圧レンジ型の圧力センサで構成される。
析出量検出部37は、リチウムイオン電池におけるリチウム析出を検出する機器である。析出量検出部37は、リチウムイオン電池におけるリチウム析出量と、リチウムイオン電池の両端を短絡させた際の電流および電圧の挙動との間の相関性を利用して、当該挙動からリチウム析出量を推定する。
図5に示すように、析出量検出部37は、リチウムイオン電池の両端を一時的に短絡させて放電させる短絡回路371と、短絡回路371でリチウムイオン電池を短絡させた際の電流および電圧の挙動に基づいてリチウム析出量を推定する演算器372を有する。短絡回路371は、フレキシブル基板FPCに実装されている。また、演算器372は、監視モジュール50に実装されている。
図示しないが、短絡回路371は、リチウムイオン電池の両端を短絡させるための短絡スイッチ、コイル、およびキャパシタを有する。リチウムイオン電池の内部抵抗、短絡回路371のコイル、キャパシタにより自己共振回路が構成される。
演算器372は、リチウムイオン電池の両端を短絡させた際に、短絡回路371を流れる電流および電圧のうち少なくとも一方の信号波形に含まれるリチウム析出量に相関性がある抵抗変化成分を抽出し、抽出した成分からリチウム析出量の推定値を算出する。
上記の推定方法は、非常に簡素な構成であり、リチウムイオン電池からの放電周波数を調整することで、特定の電池劣化モードを検出できる点において、非常に有用な方法である。
一方、リチウムイオン電池の内部抵抗は、数mΩ~数百mΩ程度であり、温度や寄生インピーダンス等の外乱の影響を受け易いこともあり、上記の推定方法ではリチウム析出量を精度よく求めることが困難であることが分った。このことは、本発明者らの鋭意検討の末に見出された。
このことを加味して、析出量検出部37の演算器372は、図6に示すように、上記の推定値を温度センサ31で検出される電池温度および監視モジュール50の記憶部51に予め記憶された寄生抵抗値の双方で補正した補正値をリチウム析出量として算出する。
寄生抵抗値は、リチウムイオン電池と短絡回路371との間に生ずる寄生インピーダンスの一部である。寄生抵抗値は、電池温度に応じて変化する。このため、演算器372は、記憶部51に記憶された寄生抵抗値を電池温度に応じて補正し、補正した寄生抵抗値を用いてリチウム析出量を算出する。なお、演算器372は、リチウム析出量の推定手段としての機能に加えて、リチウム析出量の推定値を補正するキャリブレーション手段としての機能を兼ねている。
ここで、寄生抵抗値は、図7に示すように、析出量検出部37をリチウムイオン電池に接続する前に既知のインピーダンスZを有する校正装置CDに対して接続して求める。具体的には、図8に示すように、短絡回路371を校正装置CDに接続し、この状態で寄生抵抗値を求める。そして、寄生抵抗値を監視モジュール50の記憶部51に保存する。次いで、短絡回路371を電池モジュールBMに接続し、この状態でリチウム析出量を算出する。
このように構成される析出量検出部37は、寄生インピーダンスおよび温度変化に対するロバスト性を確保することができる。このことは、リチウム析出量を精度よく検出する上で非常に有効である。
本実施形態の短絡回路371は、コイルを含んでおり、体格が大きくなってしまうので、搭載性を考慮して適宜小型化を図る必要がある。小型化は、例えば、コイルの飽和磁束密度を向上させることで実現可能である。小型化の具体的手段としては、例えば、磁束密度の高い材料で構成されるコイルを用いたり、ギャップを設けることによって飽和磁束密度を向上させたりすることが挙げられる。
被膜検出部38は、リチウムイオン電池の充電時に負極と電解液の界面に形成される被膜の厚みを検出する。この被膜は、SEI層とも呼ばれる。SEIは、Solid Electrolyte Interphase の略称である。
SEI層の厚みは、短絡回路371でリチウムイオン電池の両端を短絡させた際の電流および電圧の挙動と相関性を有する。被膜検出部38は、短絡回路371でリチウムイオン電池の両端を短絡させた際の電流および電圧の挙動からSEI層の厚みを推定する。具体的には、被膜検出部38は、短絡回路371で電池の両端を短絡させた際に、短絡回路371を流れる電流および電圧のうち少なくとも一方の信号波形に含まれるSEI層の厚みに相関性がある成分を抽出し、抽出した成分からSEI層の厚みを推定する。なお、SEI層の厚みを検出する際には、リチウム析出量の検出と同様に、電池温度で補正することが望ましい。
ここで、リチウム析出量およびSEI層の厚みは、電池の電圧および電流よりも電池の容量劣化に相関性が高い物理量である。本実施形態では、析出量検出部37および被膜検出部38が、電池の電圧および電流よりも電池の容量劣化に相関性が高い物理量を検出すう“劣化検出部”を構成している。また、リチウム析出量は、電池の温度が意図せずに上昇し続ける異常発熱現象につながる因子の1つである。このため、析出量検出部37は、異常発熱現象につながる因子を監視する“因子監視部”を構成している。
図4に示すように、フレキシブル基板FPCには、電池状態を検知する電池状態検知部39が実装されている。電池状態検知部39は、例えば、温度センサ31、電流センサ32、電圧センサ33それぞれのセンサ出力に基づいて、電池温度が過昇温となる電池状態、過充電となる電池状態、内部抵抗が大きく変化する電池状態等を検知する。
続いて、監視モジュール50について説明する。監視モジュール50は、電池モジュールBMに対して直に取り付けられるサテライトモジュールである。監視モジュール50は、BMUにおいて高電圧側にある機器である。監視モジュール50は、電池に電気的に接続されて電池の異常を検知する“異常検知部”を構成する。
監視モジュール50は、記憶部51、無線通信部52、内部抵抗検出部53、監視IC54等を備える。記憶部51には、監視モジュール50毎に設定された固有ID、電池モジュールBMの監視結果、前述の寄生抵抗値等の各種情報が記憶されている。記憶部51は、非遷移的実体的記憶媒体で構成される。
無線通信部52は、電池ECU100との間で双方向通信を可能とするための通信機器である。監視モジュール50は、電池ECU100からの各種信号を受信するとともに、電池ECU100に向けて監視モジュール50の監視結果等を送信する。
内部抵抗検出部53は、センサ部30から出力される各種情報に基づいて、電池の内部抵抗を検出する機器である。また、電池の内部抵抗の変化は、異常発熱現象につながる因子の1つである。このため、内部抵抗検出部53は、異常発熱現象につながる因子を監視する“因子監視部”を構成している。
監視IC54は、電池に電気的に接続されて電池の異常を検知する。監視IC54は、異常発熱現象につながる因子の監視結果に基づいて異常発熱現象の発生を未然に抑えるとともに、異常発熱現象の発生初期段階に電池に生ずる異常状態を検知し、異常状態の検知結果に基づいて異常発熱現象に対する対策を実施する。
監視IC54は、異常発熱現象につながる因子の監視および異常発熱現象の発生初期段階に電池に生ずる異常状態の検知のうち、少なくとも一部を行うアルゴリズムを有するASIC回路を含んでいる。具体的には、監視IC54は、各種制御を実行する機能部として、診断部541、SOH推定部542、監視制御部543を有した構成とされている。
リチウム析出量は、電池の残存価値を大きく左右するパラメータであるため、そのパラメータの確からしさの検証も重要である。診断部541は、リチウム析出量から推定される所定の電池状態とリチウム析出量以外の他の要素から推定される電池状態とを比較して、析出量検出部37の適否を診断する。
診断部541は、例えば、図9に示すように、析出量検出部37で検出されるリチウム析出量から電池の容積率SOHを推定する。また、診断部541は、温度センサ31、電流センサ32、電圧センサ33それぞれのセンサ出力に基づいて電池の容積率SOHを推定する。なお、SOHは、State of Healthの略称である。
続いて、診断部541は、リチウム析出量から推定される容積率SOHと、電池の温度、電流、電圧から推定される容積率SOHとを状態比較器で比較して、析出量検出部37の適否を診断する。例えば、診断部541は、リチウム析出量から推定される容積率SOHと、電池の温度、電流、電圧から推定される容積率SOHとの乖離が所定範囲内であれば析出量検出部37が適正と診断する。一方、診断部541は、リチウム析出量から推定される容積率SOHと、電池の温度、電流、電圧から推定される容積率SOHとの乖離が所定範囲を超えている場合は析出量検出部37が不適と診断する。析出量検出部37が不適と診断された場合、監視IC54は、リチウム析出量の検出およびリチウム析出量を用いた制御処理を禁止したり、無線通信部52を介して析出量検出部37の故障を示す信号を電池ECU100に向けて送信したりする。なお、本実施形態では、診断部541が推定する電池状態として電池の容積率SOHを例示したが、診断部541は、容積率以外の電池状態を推定するようになっていてもよい。
ここで、特開2014-102076号公報には電池の満充電量の算出方法が開示されている。この算出方法では、まず、電池の出力電流の電流値を時間積分することで、第1の時点と第2の時点の間の充放電量の変化量を算出する。そして、第1の時点と第2の時点のOCVを計測し、SOC-OCV曲線を用いて第1の時点と第2の時点の残存容量SOCを算出して、各時点の残存容量SOCの偏差として算出される変化量ΔSOCを算出する。次いで、残存容量SOCの変化量ΔSOCで充放電量の変化量を割ることで電池の満充電量を算出する。また、電池の容積率SOHは、上記の電池の満充電量を満充電量の初期値で割ることで得られる。
しかしながら、上記の残存容量SOCや容積率SOHの算出方法は、電流センサ32や電圧センサ33の誤差の影響を避けるために、ある程度の充電量や放電量が生ずるシーンでないと電池の充放電量を計算できず、リアルタイム性に欠け、実用性に課題がある。また、充放電量を算出する際に、電流センサ32のオフセット誤差により、時間と共に、容積率SOHの算出誤差が拡大するという課題もある。
これらを考慮して、SOH推定部542は、電池の電圧および電流よりも電池の容量劣化に相関性が高い物理量に基づいて電池の容積率SOHを推定する。なお、SOH推定部542は、“容積率推定部”を構成している。
電池の劣化の一要因は、電池の内部抵抗の増加である。電池の内部抵抗は、リチウム析出量および電池の内部抵抗といった物理量と強い相関性がある。また、電池の内部抵抗は、温度依存性があるとともに、電池の電流および電圧に影響する。
これらを加味して、本実施形態のSOH推定部542は、図10に示すように、リチウム析出量、SEI層の厚み、電池の温度、電流、電圧を容積率SOHの推定モデルを用いて容積率SOHを推定する。容積率SOHの推定モデルは、例えば、容積率SOH、リチウム析出量、SEI層の厚み、電池の温度、電流、電圧それぞれの関係を規定した制御マップや関数である。なお、推定モデルは、例えば、ニューラルネットワークを用いた深層学習、強化学習、深層強化学習によって得られたモデルであってもよい。
これによると、充放電量による容積率SOHの推定では困難であった、リアルタイムな電池状態診断が可能となる。また、温度を正確に計測することにより、電池の内部抵抗の温度影響を除外し、劣化情報を適切に抽出できるので、精度が向上する。
監視制御部543は、異常発熱現象につながる因子の監視結果に基づいて異常発熱現象の発生を未然に抑えるとともに、異常発熱現象の発生初期段階に電池に生ずる異常状態を検知し、当該異常状態の検知結果に基づいて異常発熱現象に対する対策を実施する。なお、図示しないが、監視IC54は、複数の電池セルCの電圧を均等化させる回路の制御等を行う。
続いて、電池ECU100について説明する。電池ECU100は、BMUにおけるメインモジュールであって、各電池モジュールBMの充放電制御を行う。電池ECU100は、BMUにおいて低電圧側にある機器である。
具体的には、電池ECU100は、プロセッサ、メモリ、I/O、無線通信機110等を備えたマイクロコンピュータによって構成されている。電池ECU100は、無線通信機110を介して各監視モジュール50A、50B、50Cと通信可能に構成されている。また、電池ECU100は、CAN等の通信経路を介して、各種ECUに接続されている。各種ECUとしては、電池の温調機器を制御する熱マネージメント用のECU、車両に搭載されたHMI装置のECU等が挙げられる。電池ECU100は、HMI装置等を介して各種の電池状態を外部に報知可能になっている。
このように構成される電池パック1は、リチウムイオン電池等のような充放電可能な電池を含んでいる。この種の電池は、何らかのきっかけにより電池内部の特定部材が発熱し、その発熱がさらに他の部材の発熱を引き起こし、電池の温度が意図せずに上昇し続ける異常な発熱現象が生じ得る。このような異常発熱現象が生じると、電池の熱的信頼性が著しく低下してしまうことから、好ましくない。故に、リチウムイオン電池等では、電池の異常発熱現象の有無を検出して熱的信頼性を確保することが重要である。
ここで、異常発熱現象の前後における各種センサの出力変化について、図11を参照しつつ説明する。図11は、本発明者らが異常発熱現象の前後における各種センサの出力変化を検証結果の一例を示している。
図11に示すように、異常発熱現象の発生前の段階では、まず、電池の異常の兆候として、電池セル内部のガス圧増加によって電池の体積変化が始まる。これにより、歪センサ34の出力が増加傾向を示す。
その後、電池の体積変化が大きくなると、電池が破損して電池セル内部のガスのリークが始まる。これにより、ガスセンサ35の出力が増加傾向を示す。なお、電池が破損すると、電池内部のガス圧が低下して、歪センサ34の出力が減少傾向を示す。
また、図11には示していないが、電池の劣化が進行すると、電池内部でリチウム析出が生じたり、SEI層の厚みが増加したりすることで電池の内部抵抗が増加する。
異常発熱現象が発生すると、電池温度および電池パック1内部の圧力(すなわち、パック内圧)が急上昇するとともに、電池の電圧が急激に降下する。さらに、ガスセンサ35の出力が増加傾向を示す。これらの兆候は、異常発熱現象の発生初期段階で顕著となる。
これらを加味して、電池監視装置20では、異常発熱現象の未然防止および早期検知を図るための制御処理を実行する。以下、電池監視装置20が実行する制御処理の一例について図12を参照しつつ説明する。
図12に示す制御処理は、例えば、車両の起動中および停止してから所定時間が経過するまでの期間に、定期的または不定期に、電池監視装置20によって実行される。なお、本フローチャートに示される各処理は、電池監視装置20の各機能部によって実現される。また、本処理を実現する各ステップは、電池監視方法を実現する各ステップとしても把握される。
図12に示すように、電池監視装置20は、ステップS100にて、センサ部30等から各種信号を読み込む。そして、電池監視装置20は、ステップS105にて、異常発熱現象が発生したか否かを判定する。前述したように異常発熱現象の発生初期段階では、電池温度、パック内圧、ガスセンサ35の出力が急上昇するとともに、電池の電圧が急激に降下する。このことを考慮し、電池監視装置20は、温度センサ31、電圧センサ33、ガスセンサ35、パック内圧センサ36の少なくとも一部のセンサ出力に基づいて異常発熱現象が発生したか否かを判定する。
異常発熱現象の発生が検知されると、電池監視装置20は、ステップS110に移行して、異常発熱現象に対する対策を実施する。この対策には、異常発熱現象の発生を外部に知らせる外部報知処理、電池の冷却および充放制御の少なくとも一方による電池保護処理が含まれている。
外部報知処理では、例えば、電池ECU100に向けて異常発熱現象の発生を示す信号を出力し、電池ECU100経由でHMI装置等の報知機能を有する機器を動作させてユーザ、電池管理者に異常発熱現象の発生を知らせる。
電池保護処理では、例えば、電池ECU100に向けて電池冷却を指示する信号を出力し、電池ECU100経由で電池の温調機器を動作させて電池を冷却する。このような電池冷却によると、電池の異常発熱の進行を遅延させることが可能となる。また、電池保護処理では、例えば、電池ECU100に向けて電池の充放電の制限を指示する信号を出力し、電池の動作を制限することで、電池の自己発熱を抑える。このような充放電制御によっても、電池の異常発熱の進行を遅延させることが可能となる。電池保護処理は、電池の寿命を延長させる延長処理を構成している。
また、異常発熱現象の対策の1つとして、電池監視装置20は、複数の電池セルCそれぞれでの監視結果および電池の異常状態の検知結果の少なくとも一方に基づいて、複数の電池セルCにおける異常なものを異常セルとして特定する。これによると、異常セルの使用を制限して、異常発熱現象の進行を遅延させることができる。
なお、異常発熱現象に対する対策は、上記の処理に限定されず、上記したもの以外の処理によって実現されていてもよい。異常発熱現象に対する対策は、例えば、警告灯を点灯させたり、警報音を鳴らしたりするものであってもよい。
一方、異常発熱現象の発生が検知されていない場合、電池監視装置20は、ステップS115以降の処理に移行する。なお、ステップS115以降の処理は、異常発熱現象の発生を未然に防止するための処理である。
電池監視装置20は、ステップS115にて、電池の過充電が検出されたか否かを判定する。電池の過充電は、例えば、電圧センサ33のセンサ出力を監視することで検出することができる。電池の過充電が検出された場合、電池監視装置20は、ステップS120にて、充電抑制処理を実行して、ステップS115に戻る。この充電抑制処理では、電池の充電を抑制したり、池の放電を行ったりする。
電池の過充電が検出されなかった場合、電池監視装置20は、ステップS125にて、電池の過昇温が検出されたか否かを判定する。電池の過昇温は、例えば、温度センサ31のセンサ出力を監視することで検出することができる。電池の過昇温が検出された場合、電池監視装置20は、ステップS130にて、出力制限や冷却制御を実施して、ステップS115に戻る。出力制限では、例えば、電池の充放電を抑制する。冷却制御では、例えば、電池の温調機器により電池を冷却する。
電池の過昇温が検出されなかった場合、電池監視装置20は、ステップS135にて、新たにリチウム析出が検出されたか否かを判定する。リチウム析出は、例えば、析出量検出部37で検出されるリチウム析出量の増加量を監視することで検出することができる。
新たにリチウム析出が検出された場合、電池監視装置20は、ステップS140にて、充電、回生制御や加温制御を実施して、ステップS115に戻る。充電・回生制御では、例えば、電池の充電を抑制する。加温制御では、例えば、電池の温調機器により電池を温める。なお、リチウム析出が検出された際に実施される各処理は、電池の寿命を延長させる延長処理を構成している。
新たにリチウム析出が検出されなかった場合、電池監視装置20は、ステップS145にて、電池の内部抵抗の変化が検出されたか否かを判定する。電池の内部抵抗は、例えば、内部抵抗検出部53で検出される内部抵抗の増加量を監視することで検出することができる。
電池の内部抵抗の変化が検出された場合、電池監視装置20は、ステップS150にて、電池の出力制限、温調制御、劣化度合いの通知を実施して、ステップS115に戻る。出力制御では、例えば、電池の放電を抑制する。温調制御では、例えば、温調機器により電池温度が適正範囲に維持されるように電池温度を調整する。劣化度合の通知では、電池の内部抵抗から電池の劣化度合いを判定し、劣化度合いの判定結果または判定結果から推定される電池の交換時期を外部に通知する。なお、内部抵抗の変化が検出された際に実施される各処理は、電池の寿命を延長させる延長処理を構成している。
電池の内部抵抗の変化が検出されなかった場合、電池監視装置20は、ステップS155にて、電池の変形が検出されたか否かを判定する。電池の変形は、歪センサ34のセンサ出力量を監視することで検出することができる。
電池の変形が検出された場合、電池監視装置20は、ステップS160にて、電池の出力制限を実施して、ステップS115に戻る。出力制御では、例えば、電池の充放電を抑制する。
電池の変形が検出されなかった場合、異常発熱現象の予兆が認められず、正常な状態であると考えられる。このため、電池の変形が検出されなかった場合、電池監視装置20は、図12に示す制御処理を終了する。
ところで、車両の急速な電動化が進み、近い将来に大量の使用済み電池が発生すると見込まれている。電池を製造するには、大量のCOの排出、希少金属使用を伴うため、使用済み電池は、電池の残存容量SOC・容積率SOHに応じ、リユース、リビルド、リサイクルが選択されることで、循環型社会に適応したバッテリエコシステムの構築が期待されている。このような、バッテリエコシステムを構築するためには、残存容量SOC・容積率SOHといった電池の価値を正しく診断することが重要である。また、車載利用の終了後、二次利用先が決定するまで電池が保管されているシーンが想定されるが、電池は未使用時も放電が続き、保管状態によっては劣化が進むことも想定される。故に、二次利用者としては、その瞬間における電池の残存容量SOC・容積率SOHを把握する必要があり、電池診断のリアルタイム性が重要となる。
上述したように本実施形態の電池監視装置20は、残存容量SOC・容積率SOHをリアルタイムで求めることができる。このことを考慮すると、電池モジュールBMと電池監視装置20とを電池ユニットUTとし、当該電池ユニットUTの単位で市場を流通させることが望ましい。そして、電池モジュールBMを、例えば、図13に示す電池管理システムBMSによって管理することが望ましい。
電池管理システムBMSは、電池モジュールBMに取り付けられた電池監視装置20および電池管理装置60を備える。電池管理装置60は、性能判定部61、価値設定部62、および性能通知部63を備える。
性能判定部61は、電池監視装置20のSOH推定部542で推定される容積率SOHに基づいて、電池の二次利用の可否を判定する。性能判定部61は、例えば、SOH推定部542で推定される容積率SOHが所定値以上であれば二次利用可とし、所定値未満であれば二次利用不可と判定する。なお、性能判定部61は、容積率SOH以外の電池状態に基づいて電池の二次利用の可否を判定するようになっていてもよい。
価値設定部62は、電池監視装置20のSOH推定部542で推定される容積率SOHに基づいて、電池の異常の有無を判定するとともに、電池の異常がある場合に電池の残存価値を設定する。価値設定部62は、例えば、容積率SOHの低下に伴って電池の残存価値を低く見積もる。なお、価値設定部62は、容積率SOH以外の電池状態に基づいて電池の残存価値を設定するようになっていてもよい。
性能通知部63は、電池監視装置20のSOH推定部542で推定される容積率SOHが電池の仕様データに示される容積率SOHの許容範囲内であるかを判定し、この判定の結果を外部に出力する。
性能通知部63は、電池の製造メーカ等によって提供される電池の仕様データを取得してメモリに記憶する。そして、性能通知部63は、例えば、SOH推定部542で推定される容積率SOHが仕様データに示される許容範囲内である場合、その旨を電池の販売業者、二次利用者等に通知する。また、性能通知部63は、例えば、SOH推定部542で推定される容積率SOHが仕様データに示される許容範囲外である場合、電池の二次利用が困難である旨を電池の販売業者、二次利用者等に通知する。
以上説明した電池監視装置20および電池監視方法によれば、有効な異常発熱対策、有効なリチウム析出量の検出、有効な容積率SOHの推定を実施することができる。具体的には次の通りである。
[異常発熱対策]
電池監視装置20および電池監視方法は、異常発熱現象につながる因子を監視し、当該因子の監視結果に基づいて異常発熱現象の発生を未然に抑える。加えて、電池監視装置20および電池監視方法は、異常発熱現象の発生初期段階に電池に生ずる異常状態を検知し、異常状態の検知結果に基づいて異常発熱現象に対する対策を実施する。これによると、異常発熱現象の発生を未然に防ぎつつ、万が一、異常発熱現象が生じたとしても、その発生初期段階から対策を実施するといった有効な熱対策を実施することができる。
加えて、電池監視装置20は、次の効果が得られる。
(1)電池監視装置20の監視モジュール50は、異常発熱現象につながる因子の監視と電池の異常状態の検知を並列的に実施する。換言すれば、監視モジュール50は、異常発熱現象につながる因子の監視結果によらず、電池の異常状態の検知を実施する。これによると、例えば、異常発熱現象につながる因子の監視後に異常状態の検知を行う場合に比べて、異常状態を早期に検知することができるので、異常発熱現象に対する対策を早期に実施することができる。
(2)異常発熱現象が生じた際の対策には、異常発熱現象の発生を外部に知らせる外部報知処理、または、電池の温度調整制御および充放制御の少なくとも一方による電池保護処理が含まれている。異常発熱現象の対策に外部報知処理が含まれている場合、電池監視装置20自身がとり得る対策に加えて、電池監視装置20の外部機器による対策や外部機器と連携した対策が実施し易くなる。また、異常発熱現象の対策に電池保護処理が含まれている場合、電池を適切に保護することが可能となる。
(3)監視モジュール50は、異常発熱現象の因子の監視結果に応じて、電池の寿命を延長させる延長処理を実施する。このように、異常発熱現象につながる因子の監視結果に応じて電池寿命の延長処理を実施する構成とすれば、電池寿命を適切に延長させることが可能となる。
(4)異常発熱現象につながる因子は、電池の内部でのリチウム析出および電池の内部抵抗の少なくとも一方を含んでいる。リチウムイオン電池の内部でのリチウム析出や内部抵抗の増加は、電池の異常発熱現象を招く要因となる。このため、リチウム析出や内部抵抗を監視すれば、電池の異常発熱現象の発生を未然に抑え易くなる。
(5)監視モジュール50は、複数の電池セルCそれぞれでの監視結果および複数の電池セルCの異常状態の検知結果の少なくとも一方に基づいて、複数の電池セルCにおける異常なものを異常セルとして特定する。このように、複数の電池セルCの中から異常セルを特定可能な構成であれば、例えば、異常セルの使用を制限して、異常発熱現象の発生を未然に抑えたり、異常発熱現象の進行を遅延させたりすることが可能となる。
(6)監視モジュール50は、電池の異常状態として密閉容器11の内圧異常、電池の温度異常、電池の電圧異常、密閉容器11内のガス異常の少なくとも1つを検知可能に構成されている。異常発熱現象の発生初期段階では、電池を収容する密閉容器11の内圧、電池の温度、電池の電圧、密閉容器11内のガス状態が異常な状態になる。このため、監視モジュール50は、密閉容器11の内圧異常、電池の温度異常、電池の電圧異常、密閉容器11内のガス異常の少なくとも1つを検知可能に構成されていれば、異常発熱現象を発生初期の段階で検知し易くなる。
(7)電池監視装置20は、異常発熱現象につながる因子の監視および電池の異常状態の検知のうち、少なくとも一部を行うアルゴリズムを有するASIC回路を含んでいる。これによると、異常発熱現象につながる因子の監視や異常状態の検知を簡素な構成で実現することができる。
(8)監視モジュール50は、異常発熱現象につながる因子の監視結果に基づいて、電池の劣化度合いを判定し、劣化度合いの判定結果または判定結果から推定される電池の交換時期を外部に通知可能に構成されている。このように、異常発熱現象につながる因子の監視結果から電池の劣化度合いを判定する構成とすれば、電池の劣化度合いを判定するための専用機器が不要となる。このことは、電池監視装置20の簡素化に寄与する。
(9)電池と監視モジュール50とを接続する接続部材21は、センサ部30の一部が実装されたフレキシブル基板FPCを含んでいる。このように、接続部材21を構成するフレキシブル基板FPCにセンサ部30の一部を実装すれば、電池に近い位置で電池の異常発熱現象につながる因子を監視することができる。
[リチウム析出量の検出]
電池監視装置20の析出量検出部37は、短絡回路371にてリチウムイオン電池の両端を短絡させた際の電流および電圧の少なくとも一方の変化に基づいてリチウム析出量の推定値を算出する。そして、析出量検出部37は、リチウム析出量の推定値を電池温度で補正する。これによると、リチウム析出量の推定値に含まれる電池温度の影響を小さくして、リチウム析出量の検出精度を向上させることができるので、析出量検出部37の信頼性を確保することができる。
また、析出量検出部37は、リチウム析出量の推定値を記憶部51に記憶された寄生抵抗値で補正する。これによると、リチウム析出量の推定値に含まれる寄生インピーダンスの影響を小さくして、リチウム析出量の検出精度を向上させることができるので、析出量検出部37の信頼性を確保することができる。
(1)具体的には、析出量検出部37は、記憶部51に記憶された寄生抵抗値を電池温度に応じて補正し、補正した寄生抵抗値を用いてリチウム析出量を算出する。これによると、リチウム析出量の推定値に含まれる電池温度および寄生インピーダンスの影響を小さくして、リチウム析出量の検出精度を向上させることができる。
(2)寄生抵抗値は、短絡回路371をリチウムイオン電池に接続する前に既知のインピーダンスZを有する校正装置CDに対して接続して求める。これによると、析出量検出部37の寄生抵抗値を精度よく求めることができる。このことは、リチウム析出量の検出精度を向上に大きく寄与する。
(3)電池監視装置20は、リチウム析出量から推定される所定の電池状態とリチウム析出量以外の他の要素から推定される所定の電池状態とを比較して、析出量検出部37の適否を診断する診断部541を備える。これによると、診断部541によって析出量検出部37の確からしさを診断することができるので、析出量検出部37の信頼性を確保することができる。
[電池監視装置20の変形例]
電池監視装置20は、上述したものと同一ではなく、上述したものとは一部が異なっていてもよい。また、上述の技術的事項は、車載機器以外の機器やシステムにも転用可能である。
[容積率SOHの推定]
電池監視装置20は、電池の電圧および電流よりも電池の容量劣化に相関性が高い物理量を検出し、当該物理量に基づいて電池の容積率SOHを推定する。このように、電池の容量劣化に相関性が高い物理量によって容積率SOHを推定する構成とすれば、電池の電流および電圧から容積率SOHを求める場合に比べて、誤差の影響を避ける必要性が小さいので、短時間で容積率SOHを推定することができる。したがって、本案の電池監視装置20によれば、実用的な態様で電池状態を把握することが可能となる。
(1)ここで、リチウム析出量およびSEI層の厚みは、電池の容量劣化に直接的に影響する物理量である。このため、リチウム析出量やSEI層の厚みを検出し、リチウム析出量やSEI層の厚みに基づいて、容積率SOHを求めることで、リアルタイム性を確保することができる。また、電池の内部の正極活性物質剤の割れ具合は、電池の容量劣化に直接的に影響する物理量である。このため、リチウム析出量やSEI層の厚みだけでなく、正極活性物質剤の割れ具合に基づいて容積率SOHを求める構成としても、容積率SOHの検出精度を向上させることができる。なお、正極活性物質剤の割れ具合は、リチウムイオン電池の両端を短絡させた際の電流および電圧の挙動、または、歪センサ34や超音波センサのセンサ出力に基づいて推定可能である。
(2)リチウムイオン電池におけるリチウム析出量やSEI層の厚みは、リチウムイオン電池の両端を短絡させた際の電流および電圧の挙動との間に相関性がある。このことを加味して、電池監視装置20は、短絡回路371にてリチウムイオン電池の両端を短絡させた際の電流および電圧の少なくとも一方の変化に基づいてリチウム析出量およびSEI層の厚みの少なくとも一方を算出する。
(3)具体的には、電池監視装置20は、リチウム析出量およびSEI層の厚みの少なくとも一方を電池温度で補正する。これによると、リチウム析出量の推定値やSEI層の厚みに含まれる電池温度の影響を小さくして、リチウム析出量やSEI層の厚みの検出精度を向上させることができる。
(4)電池管理システムBMSは、電池監視装置20のSOH推定部542で推定される容積率SOHに基づいて、電池の二次利用の可否を判定する。これによると、電池を二次利用する際に、リユース、リビルド、リサイクルのうちいずれを選択すべきかを判断し易くなる。このことは、循環型社会に適応したバッテリエコシステムの構築に大きく寄与する。
(5)電池管理システムBMSは、電池監視装置20のSOH推定部542で推定される容積率SOHに基づいて、電池の異常の有無を判定するとともに、電池の異常がある場合に電池の残存価値を設定する。これによっても、電池を二次利用する際に、リユース、リビルド、リサイクルのうちいずれを選択すべきかを判断し易くなるので、循環型社会に適応したバッテリエコシステムの構築に寄与する。
(6)電池管理システムBMSは、電池監視装置20のSOH推定部542で推定される容積率SOHが電池の仕様データに示される容積率SOHの許容範囲内であるかを判定し、この判定の結果を外部に出力する。これによっても、電池を二次利用する際に、リユース、リビルド、リサイクルのうちいずれを選択すべきかを判断し易くなるので、循環型社会に適応したバッテリエコシステムの構築に大きく寄与する。
[電池管理システムBMSの変形例]
電池管理システムBMSは、上述したものと同一ではなく、上述したものとは一部が異なっていてもよい。また、上述の技術的事項は、車載機器以外の機器やシステムにも転用可能である。
以上までがBMU等に関する説明である。以下、充電システムBCSおよび電池評価システムBRSについて説明する。
[充電システムBCS]
以下、充電システムBCSについて、図14~図19を参照しつつ説明する。充電システムBCSは、電池パック1に含まれる電池モジュールBMを充電するシステムである。充電システムBCSは、例えば、車両用の充電ステーションに適用される。
図14に示すように、充電システムBCSは、電池監視装置20、電池ECU100、充電器120、充電ケーブルCCを含んで構成されている。本実施形態では、電池パック1に含まれる電池監視装置20および電池ECU100が、リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を含む電池状態を監視する電池側機器を構成している。
電池モジュールBMは、システムメインリレー等のスイッチSW2を介して車両のパワーコントロールユニットPCUおよびモータジェネレータMGに接続されている。電池モジュールBMは、例えば、車両のスタートスイッチがオンされると、スイッチSW2がオンされ、パワーコントロールユニットPCUを介してモータジェネレータMGに電気的に接続されて充放電可能な状態になる。
電池監視装置20および電池ECU100は、基本的には前述した説明したものと同様に構成されている。電池ECU100は、通信機器CEを介して充電器120と通信可能になっている。電池ECU100は、充電器120と通信可能な状態になると、リチウム析出量、残存容量SOC等の電池状態を含む電池情報を充電器120に通知する。また、電池ECU100は、充電可能な状態であるか否かを判定し、当該判定結果を電池情報の1つとして充電器120に通知する。さらに、電池ECU100は、定電流での充電中の目標電流量であるCC充電電流および定電圧での充電中の目標電圧であるCV充電電圧を設定し、これら設定値を充電器120に通知する。なお、通信機器CEと充電器120との間の通信は、CANおよび充電ケーブルCCに含まれる通信線を介して行われる。
充電ケーブルCCは、電池モジュールBMと充電器120とを電気的に接続するものである。充電ケーブルCCは、ケーブル、図示しない充電コネクタ、図示しないコントロールボックス等を含んで構成されている。
充電器120は、電池モジュールBMを充電する機器である。充電器120は、CHAdeMO、CCS、GB/T等の充電規格に準ずる機器で構成されている。充電器120と電池モジュールBMとの間には、充電器120と電池モジュールBMとの電気的な接続をオンオフするスイッチSW1が設けられている。このスイッチSW1は、充電器120側に設けられていてもよいし、車両側に設けられていてもよい。
充電器120は、情報取得部121、充電判定部122、充電制御部123、充電時間算出部124を含んでいる。情報取得部121、充電判定部122、充電制御部123、充電時間算出部124は、例えば、プロセッサ、メモリ、I/O等を備えたマイクロコンピュータによって構成される。
情報取得部121は、電池モジュールBMの充電時等に電池監視装置20および電池ECU100からリチウム析出量、残存容量SOC等の電池状態を含む電池情報を取得する。また、情報取得部121は、CC充電電流およびCV充電電圧を電池ECU100から取得する。
ここで、リチウム析出量は、電池モジュールBMの安全性を示す重要な情報である。このため、本実施形態の情報取得部121は、リチウム析出量を示す情報を含む電池情報を報知装置NDによって外部へ通知するようになっている。なお、報知装置NDは、例えば、ディスプレイ、スピーカ、ランプ等の機器で構成される。
充電判定部122は、情報取得部121で取得した電池情報に基づいて電池モジュールBMの充電の可否を判定する。例えば、充電判定部122は、電池ECU100が実施する充電可能な状態であるか否かの判定の結果に基づいて、電池モジュールBMの充電の可否を判定する。なお、充電判定部122は、情報取得部121で取得したリチウム析出量等に基づいて充電の可否を判定するようになっていてもよい。
充電制御部123は、充電判定部122の判定結果に基づいて電池モジュールBMの充電を行う。充電制御部123は、充電判定部122の判定結果が電池モジュールBMの充電が可であることを示す場合は電池モジュールBMの充電を実施し、当該判定結果が電池モジュールBMの充電が不可であることを示す場合は電池モジュールBMの充電を実施しない。
本実施形態の充電制御部123は、定電流での充電の後に定電圧で充電を行うCCCV充電方式によって電池モジュールBMを充電するように構成されている。以下では、定電流での充電をCC充電とし、定電圧での充電をCV充電として説明することがある。
充電時間算出部124は、情報取得部121で取得した電池状態に基づいて充電に要する必要充電時間を見積もり、見積もった必要充電時間を示す情報を報知装置NDによって外部へ通知する。充電時間算出部124は、例えば、電池モジュールBMの残存量等と必要充電時間との関係を規定した制御マップを用いて、必要充電時間を見積もるように構成することができる。充電器120は、報知装置NDによって必要充電時間を外部に通知する際には、今回の急速充電が通常充電と比較してどれだけ短縮できているかを含めて通知されるようになっていることが望ましい。また、充電器120は、ユーザが保有する情報端末に充電完了まで残り時間を通知するようになっていることが望ましい。
以上の如く構成される充電システムBCSは、より高いエネルギ密度で、より高速な充電が可能なものが求められている。最近では、充電器120側において、CHAdeMO1.0仕様で50kW、CHAdeMO2.0仕様で400kW、CHAdeMO3.0仕様で900kWに対応することで、電池モジュールBMの充電時間を短縮させる試みがなされている。
充電時間の短縮は、充電の高出力化により可能であるが、高出力充電により増加した充電電流は、電池の負極へのリチウム析出を加速させ、それによって電池の寿命・安全性が著しく損なわれる可能性がある。
これを回避するために、図15に示すように、CC充電の前に小さな電流で充電する予備充電を行うことで、電池の深放電等の異常を検出する、といった劣化・不安全状態にならないような充電プロファイルが考えられる。
しかしながら、安全を考慮して予備充電を実施すると、その分だけ充電時間が長くなってしまうので、ユーザが不自由に感じる可能性がある。また、ユーザは、自身が想定したよりも充電時間が長くなると、不安やいらだちを覚える可能性がある。
これらを考慮し、本実施形態の充電システムBCSは、電池監視装置20および電池ECU100から取得した電池情報に基づいて充電器120が電池モジュールBMの充電の可否を判定する構成になっている。
以下、電池モジュールBMの充電開始時の電池ECU100側の制御処理について図16を参照しつつ説明する。この制御処理は、電池ECU100によって周期的または不定期に実施される。なお、図16に示す制御処理の各制御ステップは、電池ECU100が実行する各種機能を実現する機能実現部を構成している。
図16に示すように、電池ECU100は、ステップS200にて、充電器120が接続されたか否かを判定する。電池ECU100は、充電器120が接続されるまで待機し、充電器120が接続されると、ステップS210に移行する。
電池ECU100は、ステップS210にて、初期処理を実行する。電池ECU100は、初期処理にて、フラグ等の初期化を行ったり、電池監視装置20の監視結果を取得したりする。
続いて、電池ECU100は、電池モジュールBMが充電可能な状態であるか否かを判定する。電池ECU100は、例えば、リチウム析出量が所定値以内であれば充電可と判定し、リチウム析出量が所定値を超えていれば充電不可と判定する。なお、電池ECU100は、過充電状態や深放電状態である場合にも、充電不可と判定するようになっていてもよい。
電池モジュールBMへの充電が可能である場合、電池ECU100は、ステップS230にて、電池モジュールBMへの充電量を設定する。電池ECU100は、例えば、電池モジュールBMの残存容量SOC、容積率SOH等に基づいて、電池モジュールBMへの充電量を求める。また、電池ECU100は、ステップS240にて、CV充電電圧を設定する。電池ECU100は、例えば、電池モジュールBMの充電電圧として推奨される電圧値をCV充電電圧として設定する。さらに、電池ECU100は、ステップS250にて、CC充電電流を設定する。電池ECU100は、例えば、電池モジュールBMの充電電流として推奨される電流値をCC充電電流として設定する。そして、電池ECU100は、リチウム析出量を含む電池状態を示す電池情報、CV充電電圧およびCC充電電流を含む各種設定を、充電器120に通知して、本制御処理を抜ける。
一方、電池モジュールBMへの充電が不可である場合、電池ECU100は、ステップS270にて、電池モジュールBMへの充電が不可であることを充電器120に通知して、本制御処理を抜ける。
次に、電池モジュールBMの充電時における充電器120側の制御処理について図17を参照しつつ説明する。この制御処理は、充電器120によって周期的または不定期に実施される。なお、図17に示す制御処理の各制御ステップは、充電器120が実行する各種機能を実現する機能実現部を構成している。
図17に示すように、充電器120は、ステップS300にて、電池ECU100が発する通知を受信したか否かを判定する。充電器120は、電池ECU100からの通知を受信するまで待機し、電池ECU100からの通知を受信すると、ステップS310に移行する。充電器120は、ステップS310にて、電池ECU100からの通知に基づいて電池モジュールBMの充電の可否を判定する。なお、ステップS310の処理は、充電器120の充電判定部122によって実施される。
電池ECU100からの通知が充電不可を示す場合、充電器120は、ステップS320にて、電池モジュールBMへの充電が不可であることを示す情報、リチウム析出量を示す情報を報知装置NDによって外部へ報知し、電池モジュールBMへの充電を実施しない。
一方、電池ECU100からの通知が充電可を示す場合、充電器120は、ステップS330にて、CC充電を開始する。充電器120は、電池ECU100が設定したCC充電電流を目標電流量として電池モジュールBMの充電を行う。
続いて、充電器120は、ステップS340にて、電池モジュールBMの電圧が所定電圧に到達したか否かを判定する。この判定処理は、CC充電からCV充電への切り替えタイミングであるか否かを判定するものである。所定電圧は、例えば、CV充電電圧に設定される。
電池モジュールBMの電圧が所定電圧に達していない場合、充電器120は、ステップS350にて、電池ECU100からCC充電電流の設定更新の通知を受信したか否かを判定する。
ここで、電池ECU100は、CC充電中に、図18に示す設定更新処理を周期的または不定期に実行する。具体的には、図18に示すように、電池ECU100は、ステップS500にて、リチウム析出量が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。この閾値は、電池の異常時に析出されるリチウム析出量を想定した値に設定されている。電池ECU100は、リチウム析出量が所定の閾値以下の場合は以降のステップをスキップして設定更新処理を抜け、リチウム析出量が所定の閾値よりも大きい場合はステップS510に移行する。電池ECU100は、ステップS510にて、CC充電電流を現在よりも小さくなるように再設定する。電池ECU100は、例えば、リチウム析出量が所定の閾値を超える前の電流値をCC充電電流に再設定する。そして、電池ECU100は、ステップS520にて、CC充電電流の設定更新を充電器120に通知する。
図17に戻り、充電器120は、電池ECU100からCC充電電流の設定更新の通知を受信すると、ステップS360にて、CC充電電流を電池ECU100から通知された電流量に更新する。すなわち、充電器120は、CC充電中にリチウム析出量が所定の閾値を超えて増加すると、定電流の電流量を減少させる。なお、ステップS360の処理は、充電器120の充電制御部123によって実施される。
また、充電器120は、電池モジュールBMの電圧が所定電圧に達すると、ステップS370に移行し、CV充電を開始する。充電器120は、電池ECU100が設定したCV充電電圧を目標電圧として電池モジュールBMの充電を行う。
続いて、充電器120は、ステップS330にて、電池モジュールBMを流れる電流が所定値以下、または、電池モジュールBMの充電を開始してからの経過時間が所定時間以上であるか否かを判定する。
電池モジュールBMを流れる電流が所定値より大きく、充電開始からの経過時間が所定時間以内である場合、充電器120は、CV充電を継続する。また、電池モジュールBMを流れる電流が所定値以下、または、充電開始からの経過時間が所定時間を超える場合、充電器120は、ステップS390にて、充電終了処理を実行した後に、本制御処理を抜ける。充電終了処理では、例えば、充電完了、充電量、電池状態等を報知装置NDによってユーザに通知する。
以上説明した充電システムBCSは、リチウムイオン電池を含む電池モジュールBMの充電器120を備える。充電器120は、電池側機器から電池情報を取得する情報取得部121と、電池情報に基づいて電池モジュールBMの充電の可否を判定する充電判定部122と、充電判定部122の判定結果に基づいて電池モジュールBMの充電を行う充電制御部123とを備える。このように、電池側機器から取得した電池情報に基づいて、充電器120が電池モジュールBMの充電の可否を判定する構成になっていれば、予備充電の実施によって電池モジュールBMの充電の可否を判定するものに比べて、充電時間を短縮することができる。
また、本実施形態の充電システムBCSは、以下の特徴を備える。
(1)充電器120の充電制御部123は、定電流での充電の後に定電圧で充電を行うCCCV充電方式によって電池モジュールBMを充電するように構成されている。そして、充電制御部123は、例えば、図19に示すように、CC充電中にリチウム析出量が所定の閾値を超えて増加すると、定電流の電流量を減少させる。これによると、CC充電中におけるリチウム析出量が抑制されるので、電池モジュールBMの安全性を確保しつつ、電池モジュールBMの充電時間が長くなることを抑制することができる。
(2)電池側機器は、充電器120によるの充電が開始されると、リチウム析出量が閾値を超えて増加したか否かを周期的に判定する。そして、電池側機器は、リチウム析出量が閾値を超えて増加すると、定電流での充電時の目標電流量を現在の電流量よりも小さい値に設定し、当該目標電流量を充電器120に通知する。充電制御部123は、CC充電中に電池側機器から目標電流量を取得すると、当該目標電流量に基づいて定電流の電流量を調整する。このように、電池側機器でリチウム析出量を周期的に監視するとともに、監視結果に基づいて充電器120側で定電流での充電に適した電流量を調整する構成になっていれば、リチウム析出が発生しないよう充電レートを最大化するよう制御することが可能となる。これにより、ユーザの充電時間による待ち時間を適切に短縮することができる。
(3)充電器120は、電池状態に基づいて充電に要する必要充電時間を見積もり、見積もった必要充電時間を示す情報を報知装置NDによって外部へ通知する。これによると、ユーザが大凡の待ち時間を把握可能となるので、電池モジュールBMの充電時におけるユーザの心理負担の低減を図ることができる。
(4)充電器120は、リチウム析出量を示す情報を報知装置NDによって外部へ通知する。このように、必要充電時間を示す情報だけでなく、リチウム析出量を示す情報をユーザ側に提供可能になっていれば、ユーザがリチウムイオン電池の安全性についても把握可能となり、リチウムイオン電池に対するユーザの不安の軽減を図ることが可能となる。
[充電システムBCSの変形例]
充電システムBCSは、上述したものと同一ではなく、上述したものとは一部が異なっていてもよい。また、上述の技術的事項は、車載機器以外の機器やシステムにも転用可能である。
[電池評価システムBRSおよび電池評価方法]
リチウムイオン電池は、低温での充電や高速充電により、リチウムが析出する場合がある。リチウム析出が進行すると、内部短絡が発生し、発火・発煙に至る虞がある。そのため、リチウムイオン電池を含む蓄電池を再利用する際には、劣化度合いだけでなく、リチウム析出具合を加味した安全性を把握することが望ましい。
このことを加味して、本実施形態の電池評価システムBRSおよび電池評価方法は、リチウム析出量に基づいて蓄電池の安全性を判定するようになっている。また、電池評価システムBRSは、電池モジュールBMのリユースおよびリビルドを支援する支援システムとして機能する。以下、電池評価システムBRSおよび電池評価方法について、図20~図22を参照しつつ説明する。
図20に示すように、電池評価システムBRSは、電池モジュールBMの電池状態を監視する電池監視部としての電池監視装置20と、電池モジュールBMを評価する評価装置130とを備える。
電池監視装置20は、基本的には前述した説明したものと同様に構成されている。電池監視装置20は、電池モジュールBMに含まれるリチウムイオン電池におけるリチウム析出量を、電池状態を示す1つの指標として算出可能に構成されている。電池監視装置20は、監視モジュール50の無線通信部52を利用して、リチウム析出量を含む電池状態の監視結果を含む電池状態情報等を外部に出力可能になっている。この電池状態情報には、リチウム析出量以外にも、電池モジュールBMの用途を示す電池形態情報、電池モジュールBMの使用履歴等が含まれている。なお、電池監視装置20は、監視モジュール50の無線通信部52以外の通信機器によって電池状態情報等を外部に出力可能に構成されていてもよい。
評価装置130は、有線または無線の通信ネットワークを介して電池監視装置20、リユース電池の市場売買情報が保存されたデータセンタ、ユーザ、販売業者、二次利用者等が保有する情報端末UA、UB、UC等と通信可能に構成されている。評価装置130は、電池監視装置20から電池状態情報を取得し、当該電池状態情報に基づいて電池モジュールBMを評価する。本実施形態の評価装置130は、安全性判定部131、価値算定部132、用途提案部133、再利用判定部134、情報出力部135を備える。
安全性判定部131は、電池モジュールBMに含まれるリチウムイオン電池のリチウム析出量に基づいて電池モジュールBMの安全性を判定する。安全性判定部131は、リチウム析出量が少ないほど安全性が高いと判定し、リチウム析出量が多いほど安全性が低いと判定する。電池モジュールBMは、安全性に欠けるリチウム電池が一つでも含まれていると、電池モジュールBMの安全性が損なわれる。このため、安全性判定部131は、リチウム析出量に基づいて電池モジュールBMに含まれる複数のリチウムイオン電池それぞれの安全性のランク付けを実施可能になっている。
価値算定部132は、電池モジュールBMの安全性の判定結果を加味して、電池モジュールBMの価値を算定する。価値算定部132では、例えば、安全性が高い電池モジュールBMの方が、安全性が低い電池モジュールBMに比べて、値段が高いものとして価値を算出する。
価値算定部132は、例えば、図21に示すように、容積率SOHに基づく劣化状態、リチウム析出量に基づく安全性、用途を含む電池形態情報、使用履歴を電池監視装置20から取得するとともに、リユース電池の市場売買情報をデータセンタから取得する。そして、価値算定部132は、劣化状態、安全性、電池形態情報、使用履歴、市場売買情報に基づいて、電池モジュールBMの買取価格を算出する。価値算定部132は、例えば、劣化状態、安全性、電池形態情報、使用履歴、市場売買情報、電池モジュールBMの買取価格を関連付けたマップを参照し、電池監視装置20およびデータセンタから取得した情報に基づいて電池モジュールBMの買取価格を算出する。なお、価値算定部132は、電池モジュールBMの販売価格を算出するようになっていてもよい。
用途提案部133は、電池モジュールBMの安全性の判定結果を加味して、電池モジュールBMのリユース時の推移用途を提案する。用途提案部133は、例えば、図21に示すように、劣化状態、安全性、電池形態情報、使用履歴に基づいて、電池モジュールBMのリユース時の推奨用途を提案する。用途提案部133は、例えば、劣化状態、安全性、電池形態情報、使用履歴、リユース時の用途を関連付けたマップを参照し、電池監視装置20から取得した情報に基づいて、電池モジュールBMのリユース時の推奨用途を求める。
再利用判定部134は、電池モジュールBMを構成する複数のリチウムイオン電池それぞれの安全性を加味して、リチウムイオン電池の再利用の可否を判定する。再利用判定部134は、例えば、リチウム析出量が所定値以下であれば再利用可と判定し、リチウム析出量が所定値を超えていれば再利用不可と判定する。
情報出力部135は、再利用可能なリチウムイオン電池を組み変えて異なる電池をリビルドする際に、図22に示すように、リチウムイオン電池の安全性を加味して、異なる電池の用途に適したリチウムイオン電池の組み合わせをリビルド情報として出力する。
ここで、リビルド後の電池の使用態様に応じてリチウムイオン電池の最適な組み合わせが異なることがある。このため、情報出力部135は、リビルド後の電池の使用態様に応じた組み合わせを、リビルド電池を製造するリビルドシステムRSに出力するようになっていることが望ましい。情報出力部135は、例えば、リビルド後の電池の使用態様が定置型等の長期間で利用するものである場合、長寿命、且つ、安全性が高くなる組み合わせをリビルド情報として出力する。また、情報出力部135は、例えば、リビルド後の電池を短期間で利用するものである場合、寿命以外の事項を重視した組み合わせをリビルド情報として出力する。
以上説明した電池評価システムBRSおよび電池評価方法は、電池モジュールBMの電池状態を監視し、当該電池状態の監視結果を含む電池状態情報に基づいて電池モジュールBMを評価する。電池監視装置20は、リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を、電池状態を示す1つの指標として算出する。評価装置130は、リチウム析出量に基づいて電池モジュールBMの安全性を判定する。これによると、リチウム析出状態といった電池モジュールBMの安全性に関わる指標を判定しているので、安全性の要求を満たすか否かを含む評価を適切に行うことが可能となる。
また、本実施形態の電池評価システムBRSおよび電池評価方法は、以下の特徴を備える。
(1)評価装置130は、電池モジュールBMの安全性の判定結果を加味して、電池モジュールBMの価値を算定する価値算定部132を備える。これによると、ユーザに対して電池モジュールBMの適正な価値を情報として提供することができる。
(2)評価装置130は、電池モジュールBMの安全性の判定結果を加味して、電池モジュールBMのリユース時の用途を提案する用途提案部133を備える。これによると、ユーザに対して電池モジュールBMの適正な用途を情報として提供することができる。
(3)評価装置130は、リチウム析出量に基づいて電池モジュールBMに含まれる複数のリチウムイオン電池それぞれの安全性のランク付けを実施する。これによると、ユーザに対して電池モジュールBMを構成する複数のリチウムイオン電池の適正な状態を情報として提供することができる。
(4)評価装置130は、複数のリチウムイオン電池それぞれの安全性を加味して、リチウムイオン電池の再利用の可否を判定する再利用判定部134を備える。これによると、電池モジュールBM全体では再利用できない場合でも、電池モジュールBMにおける安全性の高いリチウムイオン電池を再利用し易くなる。
(5)再利用可能なリチウムイオン電池を組み変えて電池モジュールBMとは別の電池をリビルドする際に、評価装置130は、リチウムイオン電池の安全性を加味して、別の電池の用途に適したリチウムイオン電池の組み合わせをリビルド情報として出力する。これによると、電池モジュールBM全体では再利用できない場合でも、電池モジュールBMにおける安全性の高いリチウムイオン電池を利用して別の蓄電池を構築して再利用し易くなる。
(6)電池状態情報には、リチウム析出量以外にも、前記リチウムイオン電池の用途、使用履歴、劣化状態のうち少なくとも1つが含まれている。このように、様々な情報を用いて電池モジュールBMを評価する構成になっていれば、電池モジュールBMの多面的な評価が可能となる。
[電池評価システムBRSおよび電池評価方法の変形例]
電池評価システムBRSおよび電池評価方法は、上述したものと同一ではなく、上述したものとは一部が異なっていてもよい。また、上述の技術的事項は、車載機器以外の機器やシステムにも転用可能である。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図23~図25を参照して説明する。本実施形態では、電池モジュールBMの使用履歴と製造履歴に基づいて電池モジュールBMの異常の発生要因を特定する例について説明する。
まず、電池パック1を車両に搭載するまでの製造過程について図23を参照しつつ説明する。図23に示すように、電池セルCの製造工程→電池モジュールBMの製造工程→電池パック1の製造工程→車両への組付け工程を経て、電池パック1が車両に搭載される。
電池セルCの製造工程では、電極体の形成、セル組付け、電解液注液、初回充放電、性能検査がこの順序で実施される。この性能検査では、例えば、検査機器によって電池セルC単体の外観検査、異物検査、電池特性検査等が実施される。
ここで、リチウムイオン電池は、リチウムイオンが負極で還元されて析出してしまうことがある。特に大電流や低温域で充電した場合や、電池内部に金属異物が混入し、電流密度が集中した場合においては、正極活物質から放出されたリチウムイオンが、負極活物質に入りきらず、負極表面に析出し易い。リチウムが負極に析出すると、電池反応に寄与するリチウムイオンの量が減少するため容量低下を招いたり、内部短絡が発生したりする虞がある。
このため、電池セルCの製造工程では、リチウムの析出が発生しない電流、温度条件を算出してマップ化したり、電池セルCに金属異物が混入しないよう製造上の工夫や検査を行ったりしている。電池セルCの製造工程では、例えば、電池セルCの電極表面に光を当てることでリチウムが析出しているか否かを検査したり、負極活物質表面の抵抗分布を計測することで、リチウム析出のし易さを検査したりする。
続く電池モジュールBMの製造工程では、電池セルC同士を組み付けるモジュール組付けと、センサ部30等を電池セルCの組付体に組み付けるセンサ組付けが実施される。この電池モジュールBMの製造工程では、電池監視装置20が電池モジュールBMに取り付けられる。これにより、電池モジュールBMの製造段階では、リチウム析出量等を電池監視装置20で監視することができる状態となる。
続く電池パック1の製造工程では、電池モジュールBM同士を組み付けたものを密閉容器11に収容するパック組付けが実施される。この工程では、導通確認等の検査が適宜実施される。
続く車両組付け工程では、電池パック1を車両に組み付けるとともに車両検査を実施する。車両検査では、車載機器との導通確認等を実施する。その後、電池パック1が搭載された車両は、工場からユーザに出荷される。
ところで、電池セルCを解体してリチウム析出量を検査することも考えられるが、当該検査手法は、開発段階はともかく、実際に使用されている電池セルCや製造工程内にある電池セルCで実施するのは困難である。
これに対して、電池監視装置20は、図24に示すように、電池モジュールBMに設置されるセンサの出力を用いてリチウム析出量を算出する析出量検出部37と、リチウム析出量の時間変化を電池の使用履歴の1つのとして記憶する記憶部51と、を備える。
電池監視装置20は、例えば、ユーザによる車両の走行時に、リチウム析出量等を使用履歴の1つとして記憶媒体である記憶部51に記憶する。また、電池監視装置20は、電池モジュールBMの製造工程、電池パック1の製造工程、車両組付け工程でのリチウム析出量等を製造履歴の1つとして記憶部51または外部の記憶装置に記憶する。
また、電池監視装置20は、リチウムイオン電池に異常が生じた際に、記憶部51に記憶した使用履歴および記憶部51や外部の記憶装置に記憶された製造履歴に基づいて、リチウムイオン電池の異常の発生要因を特定する異常特定部544を備える。異常特定部544は、製造履歴を基準データとし、製造履歴と使用履歴とを照らし合わせることで、リチウムイオン電池の異常の発生時期を特定し、当該発生時期の前後における電池状態を検証することで、リチウムイオン電池の異常の発生要因と特定する。異常特定部544は、例えば、図25に示すように、リチウム析出量が増加したタイミングをリチウムイオン電池の異常の発生時期として特定する。
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態の電池監視装置20は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
また、本実施形態の電池監視装置20は、以下の特徴を備える。
(1)電池監視装置20は、リチウム析出量の時間変化をリチウムイオン電池の使用履または製造履歴の1つとして記憶する記憶部51を備える。このようになっていれば、リチウム析出量を非破壊、且つ、短時間に適切に検出して、リチウム析出状態の検査を実施することができる。特に、電池モジュールBMに対してリチウム析出を検出するためのセンサを設置する構成になっているので、時間や場所を問わずリチウムの析出状態の検出を可能となる。さらに、リチウム析出量の時間変化をリチウムイオン電池の使用履歴または製造履歴の1つとして記憶部51に記憶しておくことで、いつリチウムが析出したかを明確に把握することができる。このことは、リチウム析出の責任の所在を明確にできるといった利点がある。
(2)また、電池監視装置20は、リチウムイオン電池に異常が生じた際に、使用履歴とリチウムイオン電池の製造履歴に基づいて、リチウムイオン電池の異常の発生要因を特定する異常特定部544を備える。このように、使用履歴だけでなく、製造履歴を含めて履歴情報に基づいてリチウムイオン電池の異常の発生要因を特定するようになっていれば、異常の発生要因の探求を使用段階だけでなく、製造段階まで遡ることができる。このことは、責任の所在の明確化に大きく寄与する。
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態の電池監視装置20は、上述したものと同一ではなく、上述したものとは一部が異なっていてもよい。また、第2実施形態で説明した技術的事項は、車載機器以外の機器やシステムにも転用可能である。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、図26~図33を参照して説明する。本実施形態では、定置型の大容量蓄電システムBSSに本開示のバッテリマネージメントユニットBMUを適用した例について説明する。
図26、図27、図28に示すように、大容量蓄電システムBSSは、収容容器SC、複数の電池モジュールBM、送風装置CM、ヒータ装置HM、バッテリマネージメントユニットBMU等を備える。
複数の電池モジュールBMは、それぞれリチウムイオン電池を含む蓄電池である。複数の電池モジュールBMのそれぞれには、センサ部30が設置されている。このセンサ部30は、第1実施形態で説明したものと同様に構成されている。
収容容器SCは、複数の電池モジュールBMを収容する容器である。収容容器SCは、通気性を確保するための開口が適宜設けられている。収容容器SCには、送風装置CMおよびヒータ装置HMが設けられている。
送風装置CMは、電池モジュールBMの冷却要素であって、収容容器SCの内側に気流を生じさせるものである。送風装置CMは、収容容器SCの内側に空気を吸い込むタイプの装置として構成されていてもよいし、収容容器SCの内側に空気を押し込むタイプの装置として構成されていてもよい。送風装置CMは、後述の電池制御装置140からの制御信号に応じて作動が制御される。
ヒータ装置HMは、電池モジュールBMの加熱要素であって、通電により発熱する発熱体を含んで構成される。ヒータ装置HMは、直接的に電池モジュールBMを加熱するように構成されていてもよいし、間接的に電池モジュールBMを加熱するように構成されていてもよい。送風装置CMは、後述の電池制御装置140からの制御信号に応じて作動が制御される。
バッテリマネージメントユニットBMUは、複数の電池モジュールBMを管理するものである。バッテリマネージメントユニットBMUは、リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を含む電池状態を監視するセンサ部30と、複数の電池モジュールBMの充電制御を行う電池制御装置140とを備える。
電池制御装置140は、センサ部30が監視する電池状態に基づいて複数の電池モジュールBMの充電制御を実施する。電池制御装置140は、例えば、太陽発電等で得られた電力や電気代の安い時間帯の電力を利用して、複数の電池モジュールBMを充電する。
また、電池制御装置140は、報知装置NDが接続されている。電池制御装置140は、センサ部30が監視する電池状態等を報知装置NDによって外部へ通知するようになっている。
ここで、リチウムイオン電池は、充電時の電極電位がリチウムの酸化還元電位近傍まで低下するため、低温充電や大容量充電、過充電のような状況において、リチウムが析出し易くなる。リチウム析出は、電池内部の利用可能なリチウムイオンを減少させ、急速な電池容量の低下を引き起こす。また、リチウム析出が継続されると、内部短絡を引き起こし、最悪の場合は電池の熱暴走へと発展する可能性がある。
また、ひとたび電池が故障すると、普及するまでは発電したエネルギの蓄電ができなくなる可能性があり、ユーザおよび事業者は多大な損害を被る場合がある。故に、電池を安心安全に使い続けるためには、リチウムイオン電池の温度を適切に管理しつつ、充放電を行うことに加え、内部短絡のような電池故障の兆候を早期に検出し、ダウンタイムを最小化することが求められている。
これに対して、例えば、図29に示すように、リチウムイオン電池の温度が所定の低温閾値以下になった場合、電池に蓄えた電力を動力源とし、ヒータ装置HM等の加熱要素によって電池を昇温させることが考えられる。
しかしながら、上記手法は、電池温度のみに着目した制御手法であり、電池の充放電レートによっては、必ずしも電池を昇温させる必要がない場合もある。また、電池の温度のみに着目すると、過剰に電池の温度を制御してしまい、結果として、電池に蓄えた電力を過剰に使用してしまう可能性がある。また、大容量蓄電システムBSSのような大規模な蓄電設備の場合、電池の温度分布は複雑なものとなり、電池の温度を適切に把握することは困難になる。また、リチウムイオン電池の温度情報だけでは、内部短絡のような電池故障を早期に検出することは困難であり、事業者は適切な保守工数を確保する間もなくシステムが故障してしまうため、多大なダウンタイムが発生する可能性がある。なお、充放電レートは、充電および放電のスピードである。
これらを考慮し、電池制御装置140は、充電制御時に、リチウム析出量に応じてリチウムイオン電池を加熱するようになっている。なお、リチウムの析出は、充電制御時以外にも生じ得る。このため、電池制御装置140は、充電制御に限らず、リチウム析出量に応じてリチウムイオン電池を加熱するようになっていることが望ましい。
電池制御装置140は、例えば、図30に示すように、リチウム析出量が第1析出閾値Hiを超えて増加すると、ヒータ装置HMへの通電を開始して電池モジュールBMを加熱する。電池モジュールBMの加熱によりリチウム析出量が減少する。そして、電池制御装置140は、リチウム析出量が第1析出閾値Hiよりも小さい第2析出閾値Loを下回ると、ヒータ装置HMへの通電を停止して電池モジュールBMの加熱を止める。
ここで、前述の如く、リチウムの析出は、低温充電時に限らず、大容量充電、過充電のような状況においても生ずる。大容量充電、過充電のような状況では、電池モジュールBMの電池温度がある程度高くなっている場合もあり得る。
このため、電池制御装置140は、リチウム析出量および電池モジュールBMの温度に応じてリチウムイオン電池を加熱するようになっていてもよい。電池制御装置140は、例えば、図31に示すように、リチウム析出量が第1析出閾値Hiを超えて増加し、且つ、電池モジュールBMの電池温度が所定の低温閾値以下になると、ヒータ装置HMへ通電して電池モジュールBMを加熱するようになっていてもよい。
なお、電池制御装置140は、電池モジュールBMの電池温度が低温閾値を超えている状態でリチウム析出量が第1析出閾値Hiを超えると、電池モジュールBMの充放電を制限したり、報知装置NDで電池の異常を外部へ報知したりするようになっている。
ここで、ダウンタイムを抑えるためには、例えば、図32に示すように、劣化によって電池の容積率SOHがある程度小さくなってから、リチウム析出量が電池の内部短絡を引き起こす量に達するまでの期間に電池交換を実施することが望ましい。
このことを加味して、本実施形態の電池制御装置140は、センサ部30が出力する容積率SOHの変化およびリチウム析出量の変化から望ましい電池交換期間を推定し、当該電池交換期間を推奨期間として報知装置NDによって外部へ報知するようになっている。これによると、事業者等が、電池交換の推奨期間を知ることができるので、保守や電池故障を含むシステム障害によるダウンタイムを抑えることが可能となる。
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態のバッテリマネージメントユニットBMUは、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
また、本実施形態のバッテリマネージメントユニットBMUは、以下の特徴を備える。
(1)バッテリマネージメントユニットBMUは、リチウム析出量が所定の閾値を超えて増加すると、電池モジュールBMを昇温させるヒータ装置HMによって電池モジュールBMを加熱する。これによると、リチウム析出量が増えるタイミングでリチウムイオン電池を加熱するして、リチウム析出量の増加を適切に抑制するので、安全かつ高効率な態様でリチウムイオン電池を使用することができる。特に、本案のバッテリマネージメントユニットは、温度分布が拡大し易い大規模な蓄電設に好適である。
(2)センサ部30は、リチウムイオン電池の電池温度を検出する温度センサ31を含んでいる。電池制御装置140は、リチウム析出量が所定の閾値を超えて増加し、且つ、電池温度が所定の低温閾値以下になると、ヒータ装置HMによって電池モジュールBMを加熱するようになっていてもよい。これによっても、安全かつ高効率な態様でリチウムイオン電池を使用することができる。
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態では、大容量蓄電システムBSSのバッテリマネージメントユニットBMUについて詳細について説明したが、バッテリマネージメントユニットBMUは、上述したものと同一ではなく、上述したものとは一部が異なっていてもよい。
また、第3実施形態で説明した技術的事項は、大容量蓄電システムBSS以外の機器やシステムにも転用可能である。バッテリマネージメントユニットBMUは、例えば、車両等の移動体の電源管理に転用することができる。
第3実施形態では、加熱要素をヒータ装置HMで構成したが、これに限らず、加熱要素は、電池の周囲にある負荷機器で構成されていてもよい。また、加熱要素は、電池モジュールBM以外からの電力供給により加熱されるようになっていてもよい。
ここで、リチウム析出量は、電池温度が低く、且つ、充電レートが高いとリチウム析出量が多くなり、電池温度が高く、且つ、充電レートが低いとリチウム析出量が少なくなる傾向がある。このように、リチウム析出量と充電レートおよび電池温度との間には一定の相関性がある。このため、析出量検出部37は、例えば、図33に示すように、リチウム析出量と充電レートおよび電池温度との間の相関関係を規定した制御マップを参照して、リチウム析出量を算出するようになっていてもよい。このことは、本実施形態以外の実施形態も同様である。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、図34、図35を参照して説明する。本実施形態では、電池を収容容器SCに収容して輸送する電池輸送機器BSCについて説明する。
リチウムイオン電池は有毒性、可燃性の化学物質も含んでいるため、安全に輸送する必要がある。例えば、航空機による輸送は、リチウム含有量に応じて梱包基準が国際法規で規定されている。電気自動車に使用されるような組電池は、リチウム含有量が多く、航空機による輸送は法規上困難であり、船舶による海上輸送が一般的である。空輸と比較し、海上輸送は長時間の輸送になる。例えば、夏季などは高温・高湿状態での長時間の輸送となったり、冬季等は低温状態での長時間の輸送となったりする。このようなストレス環境下において、リチウムイオン電池がひとたび不安全な状態へ移行すると、リチウムイオン電池は制御困難な状態になり、他の積み荷や乗員に被害が及ぶ虞があるため、リチウムイオン電池の安全状態を監視することが重要である。
これに対して、不燃製材料で形成され、かつ、冷却機構をもつ輸送容器を用いてリチウムイオン電池を輸送し、ガスセンサ35を用いて電池の不安全イベントを検出した場合に、冷却機構によりリチウムイオン電池を不活性化することが考えられる。
しかし、リチウムイオン電池が不安全状態に至る化学反応は発熱反応の連鎖反応であり、上記手法の如く、電池の不安全イベント検出にガスセンサ35を使用する場合、リチウムイオン電池からガスが噴出した時点で既に連鎖反応は始まっている。連鎖反応は急激に進行するため、このような時点において、リチウムイオン電池を不活性化することは困難である。また、噴出したガスは有害であるため、積み荷や乗員に被害が及ぶ可能性がある。
これらを考慮し、本実施形態の電池輸送機器BSCは、電池の温度が意図せずに上昇し続ける異常発熱現象につながる因子を監視し、当該監視結果に基づいて異常発熱現象の発生初期段階に電池に生ずる異常状態を検知可能に構成されている。
図34に示すように、電池輸送機器BSCは、複数の電池モジュールBMを収容する収容容器SC、複数の電池モジュールBMの電池状態を検出するセンサ部30A、異常検知部150を備える。
図35に示すように、センサ部30Aは、第1実施形態で説明した温度センサ31、ガスセンサ35、析出量検出部37に加えて、湿度センサHSおよび加速度センサGSを含んでいる。湿度センサHSは、収容容器SCの内側に設置されて、収容容器SCの内側の湿度を検出する。加速度センサGSは、収容容器SCに設定されて収容容器SCに加わる振動や衝撃を検出する。なお、センサ部30Aは、他のセンサを含んでいてもよい。
本実施形態のセンサ部30Aは、異常検知部150と無線通信するための図示しない無線通信機を備える。なお、センサ部30Aは、異常検知部150と有線通信するための通信機を備えていてもよい。
異常検知部150は、異常発熱現象につながる因子の監視結果に基づいて異常発熱現象の発生を未然に抑えるとともに、異常発熱現象の発生初期段階に電池に生ずる異常状態を検知し、異常状態の検知結果に基づいて異常発熱現象に対する対策を実施する。異常検知部150は、第1実施形態で説明した監視モジュール50と同様に構成されている。すなわち、異常検知部150は、記憶部51、無線通信部52、内部抵抗検出部53、監視IC54等を備える。
異常検知部150は、異常発熱現象の未然防止および早期検知を図るため、第1実施形態で説明した図12で示す制御処理を実行する。また、異常検知部150は、異常発熱現象に対する対策として、第1実施形態で説明した外部報知処理や電池保護処理等を実施する。
外部報知処理では、異常発熱現象の発生を示す信号を報知装置NDに出力し、当該報知装置NDを介して異常発熱現象の発生を外部へ報知する。この外部報知処理では、例えば、温度センサ31、湿度センサHS、加速度センサGSのセンサ出力、異常発熱現象が発生した電池モジュールBMの位置情報の少なくとも1つを外部へ報知するようになっていることが望ましい。理由は、異常発熱現象の発生に関する責任の所在を明らかにし易くなるからである。なお、電池モジュールBMの位置情報は、例えば、センサ部30Aが発する信号の電波強度等に基づいて特定した情報を用いることができる。
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態の電池輸送機器BSCは、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
また、本実施形態の電池輸送機器BSCは、以下の特徴を備える。
(1)電池輸送機器BSCは、収容容器SCと、電池の温度が意図せずに上昇し続ける異常発熱現象につながる因子を監視する因子監視部と、電池の異常を検知する異常検知部150と、を備える。そして、異常検知部150は、因子監視部の監視結果に基づいて異常発熱現象の発生を未然に抑えるとともに、異常発熱現象の発生初期段階に電池に生ずる異常状態を検知し、異常状態の検知結果に基づいて異常発熱現象に対する対策を実施する。これによると、電池を輸送する際に、異常発熱現象の発生を未然に防ぎつつ、万が一、異常発熱現象が生じたとしても、その発生初期段階から対策を実施するといった有効な熱対策を実施することができる。
(第4実施形態の変形例)
第4実施形態では、電池輸送機器BSCについて詳細について説明したが、電池輸送機器BSCは、上述したものと同一ではなく、上述したものとは一部が異なっていてもよい。また、第4実施形態で説明した技術的事項は、電池輸送機器BSC以外の機器やシステムにも転用可能である。
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
本案の電池監視装置20は、電池監視装置20によるリチウムイオン電池のリチウム析出量の検出は必須であるが、電池の異常発熱対策や電池の容積率SOHの推定等については必須ではない。
上述の実施形態では、異常発熱現象につながる因子として、リチウム析出量および電池の内部抵抗を監視するものを例示したが、これら以外の物理量を異常発熱現象につながる因子として監視するようになっていてもよい。
上述の実施形態では、異常発熱現象に対する対策として複数の処理を例示したが、そのうちの一部の処理を電池監視装置20が実施するようになっていてもよい。また、異常発熱現象に対する対策は、上記したもの以外の処理でもよい。
上述の実施形態では、異常発熱現象の発生初期段階に電池に生ずる異常状態として、密閉容器11の内圧異常、電池の温度異常、電池の電圧異常、密閉容器11内のガス異常を例示したが、これに限定されない。これら以外の電池状態を異常発熱現象の発生初期段階に生ずる異常状態として検知するようになっていてもよい。
上述した電池監視装置20は、フレキシブル基板FPCやASIC回路を備えているが、これに限定されない。フレキシブル基板FPCやASIC回路は、電池監視装置20において必須な構成ではない。
上述の実施形態の如く、電池監視装置20は、リチウム析出量の推定値を電池温度または寄生抵抗値で補正するようになっていることが望ましいが、そのようになっていなくてもよい。
上述の実施形態の如く、電池監視装置20は、リチウム析出量から推定される所定の電池状態と他の要素から推定される所定の電池状態とを比較して、析出量検出部37の適否を診断するようになっていることが望ましいが、そのようになっていなくてもよい。
上述の実施形態では、リチウム析出量および電池のSEI層の厚みに基づいて、容積率SOHを推定するものを例示したが、容積率SOHは、他の物理量に基づいて推定されるようになっていてもよい。電池監視装置20は、例えば、電池の正極の割れを含む劣化状態を検出し、当該劣化状態に基づいて容積率SOHを算出するようになっていてもよい。
上述の実施形態の如く、電池監視装置20は、電池管理装置60とともに電池モジュールBMを管理する電池管理システムBMSを構成可能になっていることが望ましいが、そのようになっていなくてもよい。このことは、充電システムBCSおよび電池評価システムBRSについても同様である。なお、電池評価システムBRSは、電池管理システムBMSにおける1つの機能部として構成されていてもよい。
電池監視装置20の監視対象は、車両に搭載された車載バッテリに限定されない。電池監視装置20は、例えば、定置型の蓄電池、可搬型の蓄電池を監視する装置としても利用可能である。
電池監視装置20は、基本的にリチウムイオン電池を監視対象としているが、これに限らず、リチウムイオン電池と同様の課題が生じ得るものがあれば、当該電池を監視対象とすることもできる。なお、電池監視装置20の監視対象となる電池は、複数の電池セルCがモジュール化されたものでなくてもよい。
電池監視装置20は、電池ECU100に対して無線ではなく、有線で接続される構成になっていてもよい。電池監視装置20は、上述したものと完全に一致するものに限定されず、上述したものと一部が異なっていてもよい。
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
本開示の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせで構成された一つ以上の専用コンピュータで、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
[本開示の特徴]
本開示は以下の特徴を備える。
[開示1]
リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を監視する電池監視装置であって、
前記リチウムイオン電池の両端を一時的に短絡させて放電させる短絡回路(371)を含み、前記短絡回路にて前記リチウムイオン電池の両端を短絡させた際の電流および電圧の少なくとも一方の変化に基づいて前記リチウム析出量の推定値を算出する析出量検出部(37)と、
前記リチウムイオン電池の電池温度を検出する温度センサ(31)と、を備え、
前記析出量検出部は、前記推定値を前記電池温度で補正した補正値を前記リチウム析出量として算出する、電池監視装置。
[開示2]
リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を監視する電池監視装置であって、
前記リチウムイオン電池の両端を一時的に短絡させて放電させる短絡回路(371)を含み、前記短絡回路にて前記リチウムイオン電池の両端を短絡させた際の電流および電圧の少なくとも一方の変化に基づいて前記リチウム析出量の推定値を算出する析出量検出部(37)と、
前記リチウムイオン電池と前記短絡回路との間に生ずる寄生抵抗値が予め記憶された記憶部(51)と、を備え、
前記析出量検出部は、前記推定値を前記寄生抵抗値で補正した補正値を前記リチウム析出量として算出する、電池監視装置。
[開示3]
前記リチウムイオン電池の電池温度を検出する温度センサ(31)を備え、
前記析出量検出部は、前記推定値を前記寄生抵抗値および前記電池温度の双方を用いて補正した補正値を前記リチウム析出量として算出する、開示2に記載の電池監視装置。
[開示4]
前記析出量検出部は、前記記憶部に記憶された前記寄生抵抗値を前記電池温度に応じて補正し、補正した前記寄生抵抗値を用いて前記リチウム析出量を算出する、開示3に記載の電池監視装置。
[開示5]
前記寄生抵抗値は、前記短絡回路を前記リチウムイオン電池に接続する前に既知のインピーダンスを有する校正装置に対して接続して求める、開示2ないし4のいずれか1つに記載の電池監視装置。
[開示6]
前記リチウム析出量から推定される所定の電池状態と前記リチウム析出量以外の他の要素から推定される前記電池状態とを比較して、前記析出量検出部の適否を診断する診断部(541)を備える、開示1ないし5のいずれか1つに記載の電池監視装置。
[開示7]
リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を監視する電池監視装置であって、
前記リチウムイオン電池の両端を一時的に短絡させて放電させる短絡回路(371)を含み、前記短絡回路にて前記リチウムイオン電池の両端を短絡させた際の電流および電圧の少なくとも一方の変化に基づいて前記リチウム析出量の推定値を算出する析出量検出部(37)と、
前記リチウム析出量から推定される所定の電池状態と前記リチウム析出量以外の他の要素から推定される前記電池状態とを比較して、前記析出量検出部の適否を診断する診断部(541)と、
を備える電池監視装置。
[開示8]
前記リチウム析出量の時間変化を前記リチウムイオン電池の使用履歴の1つまたは製造履歴の1つとして記憶する記憶媒体(51)を備える、開示1ないし7のいずれか1つに記載の電池監視装置。
[開示9]
リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を監視する電池監視装置であって、
前記リチウムイオン電池を含む蓄電池に設置されるセンサの出力を用いて前記リチウム析出量を算出する析出量検出部(37)と、
前記リチウム析出量の時間変化を前記リチウムイオン電池の使用履歴の1つまたは製造履歴の1つとして記憶する記憶部(51)と、を備える、電池監視装置。
[開示10]
前記リチウムイオン電池に異常が生じた際に、前記使用履歴および前記製造履歴に基づいて、前記異常の発生要因を特定する異常特定部(544)を備える、開示8または9に記載の電池監視装置。
[開示11]
前記リチウム析出量が所定の閾値を超えて増加すると、前記リチウムイオン電池を昇温させる加熱要素(HM)によって前記リチウムイオン電池が加熱される、開示1ないし9のいずれか1つに記載の電池監視装置。
[開示12]
リチウムイオン電池を含む蓄電池を管理するバッテリマネージメントユニットであって、
前記リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を含む電池状態を監視するセンサ部(30)と、
前記蓄電池の充電制御を行う電池制御装置(140)を備え、
前記電池制御装置は、前記リチウム析出量が所定の閾値を超えて増加すると、前記蓄電池を昇温させる加熱要素(HM)によって前記蓄電池を加熱する、バッテリマネージメントユニット。
[開示13]
前記センサ部は、前記リチウムイオン電池の電池温度を検出する温度センサ(31)を含んでおり、
前記電池制御装置は、前記充電制御時に、前記リチウム析出量が所定の閾値を超えて増加し、且つ、前記電池温度が所定の低温閾値以下になると、前記加熱要素によって前記蓄電池を加熱する、開示12に記載のバッテリマネージメントユニット。
20 電池監視装置
31 温度センサ
37 析出量検出部
371 短絡回路

Claims (13)

  1. リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を監視する電池監視装置であって、
    前記リチウムイオン電池の両端を一時的に短絡させて放電させる短絡回路(371)を含み、前記短絡回路にて前記リチウムイオン電池の両端を短絡させた際の電流および電圧の少なくとも一方の変化に基づいて前記リチウム析出量の推定値を算出する析出量検出部(37)と、
    前記リチウムイオン電池の電池温度を検出する温度センサ(31)と、を備え、
    前記析出量検出部は、前記推定値を前記電池温度で補正した補正値を前記リチウム析出量として算出する、電池監視装置。
  2. リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を監視する電池監視装置であって、
    前記リチウムイオン電池の両端を一時的に短絡させて放電させる短絡回路(371)を含み、前記短絡回路にて前記リチウムイオン電池の両端を短絡させた際の電流および電圧の少なくとも一方の変化に基づいて前記リチウム析出量の推定値を算出する析出量検出部(37)と、
    前記リチウムイオン電池と前記短絡回路との間に生ずる寄生抵抗値が予め記憶された記憶部(51)と、を備え、
    前記析出量検出部は、前記推定値を前記寄生抵抗値で補正した補正値を前記リチウム析出量として算出する、電池監視装置。
  3. 前記リチウムイオン電池の電池温度を検出する温度センサ(31)を備え、
    前記析出量検出部は、前記推定値を前記寄生抵抗値および前記電池温度の双方を用いて補正した補正値を前記リチウム析出量として算出する、請求項2に記載の電池監視装置。
  4. 前記析出量検出部は、前記記憶部に記憶された前記寄生抵抗値を前記電池温度に応じて補正し、補正した前記寄生抵抗値を用いて前記リチウム析出量を算出する、請求項3に記載の電池監視装置。
  5. 前記寄生抵抗値は、前記短絡回路を前記リチウムイオン電池に接続する前に既知のインピーダンスを有する校正装置に対して接続して求める、請求項2ないし4のいずれか1つに記載の電池監視装置。
  6. 前記リチウム析出量から推定される所定の電池状態と前記リチウム析出量以外の他の要素から推定される前記電池状態とを比較して、前記析出量検出部の適否を診断する診断部(541)を備える、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電池監視装置。
  7. リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を監視する電池監視装置であって、
    前記リチウムイオン電池の両端を一時的に短絡させて放電させる短絡回路(371)を含み、前記短絡回路にて前記リチウムイオン電池の両端を短絡させた際の電流および電圧の少なくとも一方の変化に基づいて前記リチウム析出量の推定値を算出する析出量検出部(37)と、
    前記リチウム析出量から推定される所定の電池状態と前記リチウム析出量以外の他の要素から推定される前記電池状態とを比較して、前記析出量検出部の適否を診断する診断部(541)と、
    を備える電池監視装置。
  8. 前記リチウム析出量の時間変化を前記リチウムイオン電池の使用履歴の1つまたは製造履歴の1つとして記憶する記憶媒体(51)を備える、請求項1、2、3、4、7のいずれか1つに記載の電池監視装置。
  9. リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を監視する電池監視装置であって、
    前記リチウムイオン電池を含む蓄電池に設置されるセンサの出力を用いて前記リチウム析出量を算出する析出量検出部(37)と、
    前記リチウム析出量の時間変化を前記リチウムイオン電池の使用履歴の1つまたは製造履歴の1つとして記憶する記憶部(51)と、を備える、電池監視装置。
  10. 前記リチウムイオン電池に異常が生じた際に、前記使用履歴および前記製造履歴に基づいて、前記異常の発生要因を特定する異常特定部(544)を備える、請求項9に記載の電池監視装置。
  11. 前記リチウム析出量が所定の閾値を超えて増加すると、前記リチウムイオン電池を昇温させる加熱要素(HM)によって前記リチウムイオン電池が加熱される、請求項1、2、7、9のいずれかに記載の電池監視装置。
  12. リチウムイオン電池を含む蓄電池を管理するバッテリマネージメントユニットであって、
    前記リチウムイオン電池におけるリチウム析出量を含む電池状態を監視するセンサ部(30)と、
    前記蓄電池の充電制御を行う電池制御装置(140)を備え、
    前記電池制御装置は、前記リチウム析出量が所定の閾値を超えて増加すると、前記蓄電池を昇温させる加熱要素(HM)によって前記蓄電池を加熱する、バッテリマネージメントユニット。
  13. 前記センサ部は、前記リチウムイオン電池の電池温度を検出する温度センサ(31)を含んでおり、
    前記電池制御装置は、前記充電制御時に、前記リチウム析出量が所定の閾値を超えて増加し、且つ、前記電池温度が所定の低温閾値以下になると、前記加熱要素によって前記蓄電池を加熱する、請求項12に記載のバッテリマネージメントユニット。
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