JP2010085519A - 位相差フィルムの製造方法 - Google Patents

位相差フィルムの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2010085519A
JP2010085519A JP2008252183A JP2008252183A JP2010085519A JP 2010085519 A JP2010085519 A JP 2010085519A JP 2008252183 A JP2008252183 A JP 2008252183A JP 2008252183 A JP2008252183 A JP 2008252183A JP 2010085519 A JP2010085519 A JP 2010085519A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
casting
widening
solvent
retardation
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2008252183A
Other languages
English (en)
Inventor
Kosuke Yamaki
孝介 八牧
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Corp
Original Assignee
Fujifilm Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujifilm Corp filed Critical Fujifilm Corp
Priority to JP2008252183A priority Critical patent/JP2010085519A/ja
Priority to US12/585,949 priority patent/US20100078852A1/en
Publication of JP2010085519A publication Critical patent/JP2010085519A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B29WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
    • B29CSHAPING OR JOINING OF PLASTICS; SHAPING OF MATERIAL IN A PLASTIC STATE, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; AFTER-TREATMENT OF THE SHAPED PRODUCTS, e.g. REPAIRING
    • B29C41/00Shaping by coating a mould, core or other substrate, i.e. by depositing material and stripping-off the shaped article; Apparatus therefor
    • B29C41/24Shaping by coating a mould, core or other substrate, i.e. by depositing material and stripping-off the shaped article; Apparatus therefor for making articles of indefinite length
    • B29C41/26Shaping by coating a mould, core or other substrate, i.e. by depositing material and stripping-off the shaped article; Apparatus therefor for making articles of indefinite length by depositing flowable material on a rotating drum
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B29WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
    • B29CSHAPING OR JOINING OF PLASTICS; SHAPING OF MATERIAL IN A PLASTIC STATE, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; AFTER-TREATMENT OF THE SHAPED PRODUCTS, e.g. REPAIRING
    • B29C55/00Shaping by stretching, e.g. drawing through a die; Apparatus therefor
    • B29C55/02Shaping by stretching, e.g. drawing through a die; Apparatus therefor of plates or sheets
    • B29C55/04Shaping by stretching, e.g. drawing through a die; Apparatus therefor of plates or sheets uniaxial, e.g. oblique
    • B29C55/08Shaping by stretching, e.g. drawing through a die; Apparatus therefor of plates or sheets uniaxial, e.g. oblique transverse to the direction of feed
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B29WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
    • B29KINDEXING SCHEME ASSOCIATED WITH SUBCLASSES B29B, B29C OR B29D, RELATING TO MOULDING MATERIALS OR TO MATERIALS FOR MOULDS, REINFORCEMENTS, FILLERS OR PREFORMED PARTS, e.g. INSERTS
    • B29K2001/00Use of cellulose, modified cellulose or cellulose derivatives, e.g. viscose, as moulding material
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B29WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
    • B29KINDEXING SCHEME ASSOCIATED WITH SUBCLASSES B29B, B29C OR B29D, RELATING TO MOULDING MATERIALS OR TO MATERIALS FOR MOULDS, REINFORCEMENTS, FILLERS OR PREFORMED PARTS, e.g. INSERTS
    • B29K2995/00Properties of moulding materials, reinforcements, fillers, preformed parts or moulds
    • B29K2995/0018Properties of moulding materials, reinforcements, fillers, preformed parts or moulds having particular optical properties, e.g. fluorescent or phosphorescent
    • B29K2995/0031Refractive
    • B29K2995/0032Birefringent

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Moulding By Coating Moulds (AREA)
  • Polarising Elements (AREA)
  • Shaping By String And By Release Of Stress In Plastics And The Like (AREA)

Abstract

【課題】ヘイズの値が0.5以下であり、50nm以上であるReを有する位相差フィルムを製造する。
【解決手段】ドープを流延ドラムに流延する。この流延ドラムにより流延膜を冷却する。流延膜を固化する。溶媒が多く含まれた状態の流延膜をフィルム12として剥ぎ取る。フィルム12をテンタ15で乾燥する。溶媒残留率が60重量%となるまでフィルム12を乾燥する。溶媒残留率が10重量%になるまで、温度が105℃以下の気体を吹き付けてフィルム12を乾燥する。溶媒残留率が10重量%のフィルム12のセルロースアシレートのガラス転移点をTg℃とする。フィルム12が(Tg+10)℃以上(Tg+60)℃以下の温度範囲のときにフィルム12を拡幅して、位相差フィルム14を得る。
【選択図】図3

Description

本発明は、偏光板に用いられる位相差フィルムの製造方法に関する。
位相差フィルムは、液晶ディスプレイにおける液晶層の位相差と合わせることにより、液晶層を通過した後の楕円偏光を直線偏光に近い状態へ変換するものである。そして、液晶層の位相差は一律ではない。そこで、用いる液晶層に応じて、組み合わせるべき位相差フィルムを選択する必要がある。
このため、位相差フィルムには、様々な光学特性が要求される。光学特性として、液晶ディスプレイに高い正面コントラストを発現させ、かつ、50nm以上という高いReを発現する位相差フィルムが特に求められている。
Reは、フィルムの厚み方向に直交する方向、すなわちフィルムの面方向におけるレタデーション値(単位;nm)であり、以下の式(1)により求められる。Rthは、フィルムの厚み方向におけるレタデーション値であり、以下の式(2)により求められる。Nxは位相差フィルムの面での遅相軸方向であるX軸における屈折率、Nyは進相軸方向であるY軸における屈折率、Nzはフィルムの厚み方向Z軸における屈折率、dはフィルムの厚み(nm)である。
Re=(Nx−Ny)×d ・・・(1)
Rth={(Nx+Ny)/2−Nz}×d ・・・(2)
正面コントラストとは、液晶ディスプレイを正面から見たときに、その液晶ディスプレイの最も明るい部分(白)と暗い部分(黒)との輝度の比をいう。正面コントラストは、位相差フィルムが透明であるほど高くなることが知られている。
一般に、位相差フィルムの透明性を表す値としてヘイズ値がある。ヘイズ値は小さくなるほど、フィルムの透明性が高いことを示す。従って、小さいヘイズ値を有する位相差フィルムを液晶ディスプレイで使用したときには、その液晶ディスプレイの正面コントラストは高くなる傾向がある。正面コントラストを高くすることについては、これまでも重視されてきたが、最近では、その目標レベルが一層高まってきており、位相差フィルムの透明性のレベルを従来よりも更に高めることが求められるようになってきた。求められる透明性のレベルは、ヘイズ値で1前後という従来のレベルよりも非常に小さい0.5以下といわれている。
ヘイズ値は、透明なフィルムの内部又は表面のくもり様の度合いを意味し、以下の式(3)により求められる。ヘイズの試験方法では、フィルムの光線透過率が測定される。Thはヘイズ値、Tdは散乱光線透過率、Ttは全光線透過率である。
Th=100×(Td/Tt) ・・・(3)
位相差フィルムとされるポリマーフィルムには、様々なものがあり、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルメタクリレートのフィルムが例として挙げられる。これらのフィルムは、溶液製膜方法と溶融製膜方法との少なくともいずれか一方で製造される。長尺の位相差フィルムを製造する場合には、例えば長尺のポリマーフィルムの側端部をクリップ等の保持手段により保持して、幅方向に張力を付与して幅を広げ、Reを上昇させる。このような拡幅により、Reを上昇させるとともにヘイズの調整を行うこともある。
上記のようなポリマーフィルムのうちセルロースアシレートフィルムは、主に溶液製膜方法で製造される。溶液製膜方法は、周知のように、ポリマーを溶媒に溶かしたポリマー溶液(以下、ドープと称する)を、ドラムあるいはバンドのような支持体に流延して流延膜とし、この流延膜を支持体から剥がして乾燥することによりフィルムをつくる方法である。位相差フィルムを用途とする場合には、上記のような拡幅を、溶液製膜の過程で、あるいは、溶液製膜で製造されたセルロースアシレートフィルムに対して行う。
延伸工程を溶液製膜の過程で実施する場合には、セルロースアシレートフィルムの溶媒残留率が極めて小さくなってから拡幅工程を行うことが多い。これは、溶媒残留率が高いうちに拡幅してもReを上昇させる効果が小さいからである。例えば、特許文献1では、溶媒残留率が10〜100質量%以下であるセルロースアシレートフィルムに対して、延伸後の幅が延伸前の幅の1.0〜4.0倍となるように延伸工程を実施し、これによりReが30〜300nmであるセルロースアシレートフィルムが得られるとしている。
特許文献2には、流延膜を溶媒残留率が70〜160質量%の範囲になるまで乾燥してからセルロースアシレートフィルムとして剥がし、溶媒残留率が10〜50質量%の範囲になるまでこのセルロースアシレートフィルムを乾燥してから延伸し始める方法が提案されている。この方法は2回の延伸工程を有し、2回目の延伸工程は、溶媒残留率が5質量%以下のセルロースアシレートフィルムに対して実施している。
また、少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物をドープに含ませて、セルロースアシレートからなる位相差フィルムを製造する方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。このように、添加によりレタデーションを上昇させて位相差を発現させるものはレタデーション上昇剤と呼ばれる。
特開2002−187960号公報 特開2002−311245号公報 国際公開第00/65384号パンフレット
Reを高くするためには、延伸による拡幅率を大きくすればよい。しかし、拡幅率を大きくするほど、フィルムに空隙が生じ、更には、この空隙がクレイズ、すなわち割れ目になってしまうことがある。空隙やクレイズには、目視では明確に確認されなくても光学顕微鏡で観察すると確認できるようなものもある。そして、フィルムに空隙やクレイズがある箇所は、白濁して見えることもある。このような空隙やクレイズがある箇所では、フィルムに入射した光が反射してしまい、散乱してしまうからであるからである。従って、空隙やクレイズがあるフィルムはヘイズ値が高くなってしまう。
特許文献1や特許文献2の方法では、延伸によりReが高い位相差フィルムを得ることはできるものの、ヘイズ値が高くなるため、その位相差フィルムでは、液晶ディスプレイに近年求められる程度の高い正面コントラストを発現させることができない。このため、Reが高く、かつ、高い正面コントラストを液晶ディスプレイに発現させる位相差フィルムを得ることはできない。
特許文献3では、ドープにレタデーション上昇剤を添加することにより、Reを上昇させている。しかし、このレタデーション上昇剤の割合が多くなると、このレタデーション上昇剤がドープに溶解しにくくなるため、ヘイズ値が高くなる傾向がある。このため、その位相差フィルムでは、液晶ディスプレイに高い正面コントラストを発現させることができない。結果的に、Reが高く、かつ、液晶ディスプレイに高い正面コントラストを発現させる位相差フィルムを得ることはできなかった。
そこで、本発明では、上記問題に鑑み、ヘイズの値が0.5以下であり、50nm以上であるReを発現する位相差フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の位相差フィルムの製造方法は、セルロースアシレートと溶媒とを含むドープを、支持体上に流延ダイから連続的に流出して流延膜とし、この流延膜を前記支持体からフィルムとして剥ぎ取る流延工程と、溶媒残留率が60重量%となるまで前記フィルムを加熱して乾燥する第1乾燥工程と、溶媒残留率が60重量%から10重量%になるまで、前記フィルムを温度が105℃以下の気体を吹き付けて乾燥する第2乾燥工程と、溶媒残留率が10重量%である前記フィルム中の前記セルロースアシレートのガラス転移点をTgとするとき、前記第2工程を終えた前記フィルムを(Tg+10)℃以上(Tg+60)℃以下の温度範囲に保持しながら拡幅する拡幅工程とを有し、前記拡幅工程では、前記フィルムの拡幅前の幅をL1、拡幅後の幅をL2とするときに、(L2−L1)/L1×100で求める拡幅率(%)が30%以上65%以下の範囲となるように前記フィルムを拡幅することを特徴とする。また、前記支持体を冷却することにより前記流延膜を固化させることが好ましい。
本発明により、ヘイズの値が0.5以下であり、かつ、50nm以上であるReを有する位相差フィルムを製造することができる。
以下に、本発明の実施様態について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施様態に限定されるものではない。
[原料]
ポリマーとしては、溶液製膜方法により位相差フィルムとすることができる公知のポリマーを用いることができる。ポリマーの中でもセルロースアシレートが好ましく、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、つまりアシル基の置換度(以下、アシル基置換度と称する)が下記式(I)〜(III)の全ての条件を満足するものがより好ましい。なお、(I)〜(III)において、A及びBはともにアシル基置換度であり、Aにおけるアシル基はアセチル基であり、Bにおけるアシル基は炭素原子数が3〜22のものである。
2.5≦A+B≦3.0 ・・・(I)
0≦A≦3.0 ・・・(II)
0≦B≦2.9 ・・・(III)
セルロースを構成しβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部がエステル化されて、水酸基の水素が炭素数2以上のアシル基に置換された重合体(ポリマー)である。なお、グルコース単位中のひとつの水酸基のエステル化が100%されていると置換度は1であるので、セルロースアシレートの場合には、2位、3位および6位の水酸基がそれぞれ100%エステル化されていると置換度は3となる。
ここで、グルコース単位の2位のアシル基置換度をDS2、3位のアシル基置換度をDS3、6位のアシル基置換度をDS6とする。DS2+DS3+DS6で求められる全アシル基置換度は2.00〜3.00であることが好ましく、2.22〜2.90であることがより好ましく、2.40〜2.88であることがさらに好ましい。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.32以上であることが好ましく、0.322以上であることがより好ましく、0.324〜0.340であることがさらに好ましい。
アシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上であってもよい。アシル基が2種類以上であるときには、そのひとつがアセチル基であることが好ましい。2位、3位及び6位の水酸基の水素のアセチル基による置換度の総和をDSAとし、2位、3位及び6位におけるアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は2.2〜2.86であることが好ましく、2.40〜2.80であることが特に好ましい。DSBは1.50以上であることが好ましく、1.7以上であることが特に好ましい。そして、DSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましいが、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは31%以上、特に好ましくは32%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。
また、セルロースアシレートの6位のDSA+DSBの値が0.75以上であることが好ましく、0.80以上であることがより好ましく、0.85以上であることが特に好ましい。以上のようなセルロースアシレートを用いることにより、溶解性が好ましいドープや、粘度が低く、ろ過性がよいドープを製造することができる。特に非塩素系有機溶媒を用いる場合には、上記のようなセルロースアシレートが好ましい。
炭素数が2以上であるアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定されない。例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどがあり、これらは、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、プロピオニル基、ブタノイル基が特に好ましい。
セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号公報の[0140]段落から[0195]段落に記載されており、これらの記載は本発明にも適用することができる。
ドープには、レタデーション上昇剤を含ませることができる。レタデーション上昇剤は、特に限定されず、例えば、特開2006−235483号公報の段落[0030]〜[0142]に記載されるものを用いることができる。また、溶媒及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤,光学異方性コントロール剤,染料,マット剤,剥離剤等の添加剤についても、同じく同じく特開2005−104148号公報の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
ドープを製造するための溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが例示される。なお、ここで、ドープとはポリマーを溶媒に溶解または分散媒に分散して得られるポリマー溶液または分散液である。
セルロースアシレートの溶媒としては、これらの溶媒の中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく、ジクロロメタンが最も好ましい。そして、セルローストリアセテート(以下、「TAC」と称する。)の溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度、フィルムの光学特性等の特性の観点から、炭素原子数1〜5のアルコールを一種ないし数種類を、ジクロロメタンに混合して用いることが好ましい。このとき、アルコールの含有量は、溶媒全体に対し2重量%〜25重量%であることが好ましく、5重量%〜20重量%であることがより好ましい。アルコールの好ましい具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノール等が挙げられるが、中でも、メタノール,エタノール,n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
環境に対する影響を最小限に抑えることを目的にした場合には、ジクロロメタンを用いずにドープを製造してもよい。この場合の溶媒としては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルが好ましく、これらを適宜混合して用いることがある。これらのエーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−,−CO−及び−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、溶媒として用いることができる。また、溶媒は、例えばアルコール性水酸基のような他の官能基を化学構造中に有するものであってもよい。
流延すべきドープの製造方法は特に限定されない。しかし、後述のように、流延されたドープからなる流延膜を冷却により固化させて剥ぎ取る場合には、流延膜を乾燥して剥ぎ取る場合のドープよりも、セルロースアシレート等の固形分の濃度が高くなるように、ドープを製造することが好ましい。この方法としては、いわゆるフラッシュ濃縮法を用いることが好ましい。フラッシュ濃縮法とは、目的とする濃度よりも低い濃度のドープを一旦つくり、このドープを公知のフラッシュ装置で吹き出させることにより溶媒の一部を蒸発させる方法である。
流延すべきドープは、セルロースアシレートの濃度が5重量%〜40重量%であることが好ましく、15重量%以上30重量%以下の範囲とすることがより好ましく、17重量%以上25重量%以下の範囲とすることがさらに好ましい。
なお、TACフィルムを得る溶液製膜法における素材、原料、添加剤の溶解方法、ろ過方法、脱泡、添加方法については、特開2005−104148号公報の[0517]段落から[0616]段落が詳しく、これらの記載も本発明に適用することができる。
[フィルム製造設備及び方法]
図1は位相差フィルムを製造するための、本発明の実施形態の溶液製膜設備10を示す概略図である。ただし、本発明は、この溶液製膜設備10に限定されるものではない。以下の説明では、ドープのポリマー成分としてセルロースアシレートを用いる場合を例として記載するが、他のポリマーを用いてもよい。
溶液製膜設備10には、ドープ11を流延してセルロースアシレートフィルム(以下、単にフィルムと称する)12とするための流延室13と、フィルム12の両側端部を保持してフィルム12を拡幅し位相差フィルム14とするテンタ15と、位相差フィルム14の両側端部を切り離す耳切装置16と、位相差フィルム14を複数のローラ17に掛け渡して搬送しながら乾燥する乾燥室21と、位相差フィルム14を冷却するための冷却室22と、位相差フィルム14の帯電量を減らすための除電装置23と、側端部にエンボス加工を施すナーリング付与ローラ対24と、位相差フィルム14を巻き取る巻取室25とが上流側から順に備えられる。
流延室13には、案内されてきたドープ11を連続的に流出する流延ダイ31と、周面にドープ11が流延されるように流延ダイ31のドープ流出口に対向して備えられ、周方向に回転する支持体としての流延ドラム32とを備える。
流延ダイ31には、流延ドラム32に向けて流出するドープ11の温度が所定温度に保持されるように、流延ダイ31の温度を制御する温度コントローラ(図示なし)が取り付けられる。流延ドラム32は、駆動手段(図示せず)により、矢線Aに示す回転方向に回転する。回転方向Aに回転する流延ドラム32の上に流延ダイ31から連続的にドープ11を流出することにより、流延ドラム32の周面でドープ11が流延されて流延膜33が形成される。
流延ドラム32には、流延ドラム32に所定の温度の伝熱媒体を供給して、流延ドラム32の周面温度を制御する伝熱媒体循環装置34が備えられる。流延ドラム32の内部には、伝熱媒体の流路(図示せず)が形成されており、その流路中を、伝熱媒体が通過することにより、流延ドラム32の周面の温度が所定の値に保持されるものとなっている。流延ドラム32の表面温度は、溶媒の種類、固形成分の種類、ドープ11の濃度等に応じて適宜設定する。流延ドラム32は、回転速度むらが所定の回転速度の0.2%以内となるように高精度で回転できるものであることが好ましい。
流延ドラム32の回転方向Aにおける流延ダイ31の上流側には、空気を吸引する減圧チャンバ35が備えられる。減圧チャンバ35による空気の吸引により、ビードとして流出されたドープ11の上流側のエリアを減圧して下流側のエリアよりも低い圧力にする。
流延室13には、その内部温度を所定の値に保つための温調装置36と、ドープ11及び流延膜33から蒸発した溶媒を凝縮回収するための凝縮器(コンデンサ)37とが設けられる。そして、凝縮液化した溶媒を回収するための回収装置38が流延室13の外部に設けられている。
流延室の下流に設けられるテンタ15には、矢線Bに示す、フィルム12の搬送方向に延び、温度調整された空気をフィルム12に対して上方から吹き付けるように送り出す送風ダクト41が備えられる。この送風ダクト41は、内部がフィルムの搬送方向で複数に区画されており、各区画にはフィルム12の幅方向に延びるスリット(図示せず)がフィルム搬送路に対向するように形成されている。そして、これらの各スリットから空気が流出する。この空気は、送風ダクト41に接続された送風機42により送風ダクト41に送られる。送風機42には、送風ダクト41の各区画のスリットからの空気の送り出しのオン・オフ、風量、風速、空気の温度及び湿度を制御するコントローラ(図示無し)が備えられ、このコントローラが、区画毎に、送り出す空気の温湿度と空気の流出条件とを独立して制御する。
耳切装置16には、切り取られた位相差フィルム14の側端部屑を細かく切断処理するためのクラッシャ43が備えられる。
乾燥室21には、位相差フィルム14から蒸発した溶媒、すなわち溶媒ガスを吸着して回収する吸着回収装置44が接続する。乾燥室21の下流には冷却室22が設けられており、乾燥室21と冷却室22との間に位相差フィルム14の含水量を調整するための調湿室(図示しない)がさらに設けられてもよい。除電装置23は、除電バー等のいわゆる強制除電装置であり、位相差フィルム14の帯電圧を所定の範囲となるように調整する。除電装置23の位置は、冷却室22の下流側に限定されない。ナーリング付与ローラ対24は、位相差フィルム14の両側端部にエンボス加工でナーリングを付与する。巻取室25の内部には、位相差フィルム14を巻き取るための巻取ロール46と、その巻き取り時のテンションを制御するためのプレスローラ47とが備えられている。
次に、溶液製膜設備10により位相差フィルム14を製造する方法の一例を説明する。ドープ11は、伝熱媒体により冷却された流延ドラム32に流延ダイ31から流延される。流延時におけるドープ11の温度は30〜35℃の範囲で一定、流延ドラム32の表面温度は−10〜10℃の範囲で一定とされることが好ましい。流延室13の温度は、温調装置36により10℃〜30℃とされることが好ましい。なお、流延室13の内部で蒸発した溶媒は回収装置38により回収された後、再生させてドープ製造用の溶媒として再利用される。
流延ダイ31から流延ドラム32にかけては流延ビードが形成され、流延ドラム32の上には流延膜33が形成される。流延ビードの様態を安定させるために、このビードに関し上流側のエリアは、所定の圧力値となるように減圧チャンバ35で制御される。ビードに関して上流側のエリアの圧力は、下流側のエリアよりも2000Pa〜10Pa低くすることが好ましい。なお、減圧チャンバ35にジャケット(図示しない)を取り付けて、内部温度が所定の温度を保つようにすることが好ましい。この温度は、ドープ11の溶媒の凝縮点以上であることが好ましい。
流延膜33を流延ドラム32で冷却することによりゲル状にし、固化させる。そして、流延膜33が自己支持性をもつように固まったら、流延ドラム32から剥ぎ取る。この剥ぎ取りは、流延ドラム32の下流側からフィルム12を引っ張って、このフィルム12が搬送路に備えられた剥取ローラ51に支持されることにより、実施される。流延膜33の溶媒残留率の高低に関わらず、流延膜33が搬送に十分な硬さとなっていれば、剥ぎ取りを行うことができる。このように、主に乾燥によるのではなく冷却により固化することにより、流延膜33の剥ぎ取りのタイミングを早めることができるようになり、位相差フィルム14の製造速度を35m/分以上、さらには、45m/分以上120m/分以下の範囲にまでアップさせることができる。
生産速度をアップさせるほど、剥ぎ取り時の溶媒残留率が高くなるので、冷却速度、すなわち単位時間あたりに下降する温度の変化量が大きくなるように、冷却することが好ましい。溶媒残留率が320%よりも高い場合には、流延膜33を冷却しても搬送するに十分な硬さとはいえず、また、テンタ15での拡幅開始までに十分な硬さとはならずに拡幅時に裂けてしまうことがあるので、剥ぎ取り時における流延膜33の溶媒の重量は、固形分の重量を100%としたときに320%以下であることが好ましい。このように、本発明において溶媒残留率(単位;%)は乾量基準の値であり、具体的には、溶媒の重量をx、流延膜33の重量をyとするときに、{x/(y−x)}×100で求める値である。
溶媒を含んだ状態で流延ドラム32から剥ぎ取られたフィルム12は、テンタ15に案内される。そして、フィルム12の両側端部が保持手段としてのピンに保持されて下流側へ搬送される。この搬送の間に、フィルム12は送風ダクト41から熱せられた空気が吹き付けられて、乾燥がすすめられる。加えて、このテンタ15では、フィルム12を拡幅して、フィルム12の幅方向の屈折率を高くして、フィルム12を、高いReを発現する位相差フィルム14とすることができる。
なお、フィルム12の温度は、送風ダクト41から流出される空気により制御される。送風ダクト41のスリットは、フィルム12の搬送路近傍に設けられている。また、テンタ15における、フィルム12の溶媒残留率と、温度条件と、拡幅するフィルム12の幅の制御とについては、別の図面を用いて後述する。
テンタ15からの位相差フィルム14は、ピンで保持されていた両側端部を耳切装置16により切断除去される。切り離された両側端部はカッターブロワ(図示なし)によりクラッシャ43に送られる。クラッシャ43により、側端部は粉砕されてチップとなる。このチップはドープ製造用に再利用されるので、原料の有効利用を図ることができる。
一方、両側端部を切断除去された位相差フィルム14は、乾燥室21に送られて、さらに乾燥される。乾燥室21では、位相差フィルム14はローラ17に巻き掛けられながら搬送される。乾燥室21の内部温度は、特に限定されるものではないが、50〜160℃とすることが好ましい。なお、乾燥室21は、送風温度を変えるために、位相差フィルム14の搬送方向で複数の区画に分割されていることがより好ましい。また、耳切装置16と乾燥室21との間に予備乾燥室(図示せず)を設けて位相差フィルム14を予備乾燥すると、乾燥室21で位相差フィルム14の温度が急激に上昇することが防止されるので、乾燥室21での位相差フィルム14の形状変化を抑制することができる。
乾燥室21で蒸発して発生した溶媒ガスは、吸着回収装置44により吸着回収される。溶媒成分が除去された空気は、乾燥室21の内部に乾燥風として再度送られる。
位相差フィルム14は、冷却室22で略室温にまで冷却される。そして、除電装置23により、位相差フィルム14の帯電圧が−3kV〜+3kVとされることが好ましい。さらに、位相差フィルム14は、ナーリング付与ローラ対24によりナーリングが両側端部に付与される。なお、ナーリングされた箇所の凹凸の高さは1μm〜200μmであることが好ましい。
位相差フィルム14は、巻取室25の巻取ロール46で巻き取られる。プレスローラ47で所望のテンションを位相差フィルム14に付与しつつ巻き取ることが好ましい。なお、テンションは巻取開始時から終了時まで徐々に変化させることがより好ましく、これによりフィルムロールにおける過度な巻き締めを防止することができる。巻き取られる位相差フィルム14の長さは100m以上とすることが好ましい。巻き取られる位相差フィルム14の幅は600mm以上であることが好ましく、1400mm以上2500mm以下であることが好ましい。しかし、2500mmよりも幅が大きい場合でも本発明は適用される。また、本発明は、厚みが15μm以上100μm以下の薄いフィルムを製造する際にも本発明は適用される。
流延ダイ、減圧チャンバ、支持体などの構造、剥離法、延伸、各工程の乾燥条件、ハンドリング方法、カール、平面性矯正後の巻取り方法から、溶媒回収方法、フィルム回収方法まで、特開2005−104148号公報の[0617]段落から[0889]段落に詳しく記述されている。これらの記載は本発明に適用することができる。
図2は、テンタ15の内部の概略図である。テンタ15の内部には、フィルム12の搬送路に沿って、フィルム12の両側端部の位置に、フィルム12の保持手段としての多数のピン71を有するピンプレート72と、この多数のピンプレート72が取り付けられた無端で走行するチェーン73とチェーンの軌道を決定するレール76と、送風ダクトとが備えられる。そして、レール76にはシフト機構77が備えられる。テンタ15に送り込まれたフィルム12は、所定の位置に達すると、両側端部にピン71が差し込まれて保持される。シフト機構77は、レール76をフィルム12の幅方向に移動させ、これによりチェーン73は変位する。チェーン73上のピンプレート72は、フィルム12を保持した状態でフィルム12の幅方向に移動し、フィルム12は幅方向に張力が付与される。
流延ドラム32(図1参照)から剥ぎ取った直後のフィルム12は、多量の溶媒を含んでおり非常に不安定であるために、ローラで搬送するのが困難である他、クリップによる把持にも耐えることができない場合がある。そこで、本実施形態のように、ピン71でフィルム12の両側端部を突き刺すと、フィルム12を安定的に保持して搬送することができる。
図3は、流延ドラム32(図1参照)からの剥ぎ取りからテンタ15のピンでの保持を解除するまでのフィルム12の説明図である。矢線Bは、フィルム12の搬送方向である。テンタ15では、フィルム12を矢線X1,X2で示す幅方向に張力を加える。テンタ15において、ピン71(図2参照)によるフィルム12の保持を開始する位置を保持開始位置PS、保持を解除する位置を保持解除位置PE、流延ドラム32からの剥ぎ取り位置を第1位置P1とする。なお、テンタ15の入口は保持開始位置PSよりも上流側、出口は保持解除位置PEよりも下流側にあるが、図3においては図示を略す。なお、符号KLは、ピン71で保持されるフィルム12の保持対象部のうち、フィルム12の幅方向における最も中央部側の位置を表す。
第1位置P1で流延ドラム32から剥がされてから、フィルム12からは徐々に溶媒が蒸発し、また、テンタ15では送風ダクト41(図1参照)から吹き付けられる乾燥風によりさらに蒸発が進められる。このため、フィルム12の溶媒残留率は、剥ぎ取られた直後より低くなる。フィルム12の溶媒残留率が60重量%となる第2位置P2までフィルム12の乾燥は進められる。以降の説明においては、この工程を第1乾燥工程と称する。第1位置P1から第2位置P2までの間、第1乾燥工程が行われることとなる。
溶媒残留率が60重量%以上のときには、送風ダクト41からフィルム12に吹き付けられた乾燥風の熱エネルギーのうち、フィルム12にある溶媒が気体となるための蒸発潜熱に消費される割合が多い。このため、送風ダクト41から吹き付けられる乾燥風の温度を高くしても、フィルム12自体の温度が大きく上昇することはない。そこで、溶媒残留率が60重量%になるまでの第1乾燥工程では、フィルム12に吹き付ける乾燥風の温度を、最高で120℃にまで上げることができる。120℃を超える場合には、フィルム12が発泡してしまう可能性がある。なお、第1位置P1から第2位置P2に至るまでのフィルム12を加熱する手段は、特に限定されない。
次に、第2位置P2から、溶媒残留率が10重量%となる第3位置P3まで、フィルム12には送風ダクト41から乾燥風が吹き付けられる。この工程を、以降の説明においては、第2乾燥工程と称する。第2乾燥工程における乾燥風の温度は40℃以上105℃以下の範囲となるように制御される。この乾燥風の温度は、より好ましくは、50℃以上95℃以下の範囲であり、更に好ましくは、55℃以上85℃以下の範囲である。
第2乾燥工程における乾燥風の温度を40℃より低くすると、フィルム12から溶媒が蒸発する速度が遅くなりすぎるため、位相差フィルム14の生産性が悪くなる。
一方、第2乾燥工程での乾燥風の温度を105℃よりも高くすると、後に行われる拡幅で、フィルム12に空隙更にはクレイズまでもが発生してしまうことがある。これは、この第2乾燥工程での溶媒残留量のタイミングで105℃よりも高い温度の乾燥風にフィルム12が接触することにより、拡幅により生じる空隙よりも非常に小さくこの空隙のもととなる極微小な空隙(以下、ミクロボイドと称する)がフィルム12に生じるからである。このミクロボイドは、光学顕微鏡でも認めることができないほどの微小なものである。このように、ミクロボイドは非常に小さいので、第2乾燥工程を終了した時点のフィルム12には白濁はみられないが、後に、フィルム12が拡幅されることによりミクロボイドは大きくなって白濁を呈する大きさの空隙ないしクレイズとなる。
乾燥風の温度の上限を105℃とすることの上記効果は、フィルム12にいわゆるマット剤のような微粒子を含ませてある場合に特に顕著である。微粒子が含まれる場合には、後の拡幅で、セルロースアシレートと微粒子との間に隙間が生じやすく、この隙間も上記空隙やクレイズと同様に白濁の原因、すなわち、ヘイズ上昇の原因となる。しかし、乾燥風の温度の上限を上記値として乾燥を進めることにより、後の拡幅では、セルロースアシレートと微粒子との間に隙間が生じない。なお、微粒子としては、粒径が0.001μm以上20μm以下のものが位相差フィルム14には好ましく用いられる。
溶媒残留率が60重量%以下の場合には、フィルム12に吹き付けられる乾燥風により、フィルム12の温度が影響を受け易い。フィルム12に含まれる溶媒の量が少ないため、乾燥風から与えられる熱エネルギーが、溶媒が気体となるための蒸発潜熱にだけでなく、フィルム12の温度上昇にも使われるからである。
溶媒残留率が60重量%のフィルム12を温度が105℃以下の乾燥風で乾燥させる場合、フィルム12の膜面温度は、結晶化温度Tcを超えることはない。
フィルム12は、テンタ15において、矢線X1,X2で示す幅方向に張力を加えずにいると、自重で弛んだり、溶媒の蒸発に伴い幅方向X1,X2に収縮したりする。そこで、弛みを防ぐ目的の他、本発明ではReをより高く発現させるために、フィルム12を幅方向X1,X2に張力を加えて拡幅する。張力は、フィルム12の幅方向における中心に関して対称に、フィルム12に付与されることが好ましい。分子配向の制御を、フィルム12の幅方向で均等に行うためである。
第3位置P3または、第3位置P3よりも下流で拡幅を開始する。以降の説明においては、この拡幅を拡幅工程と称する。ここで、拡幅とは、フィルム12の幅を大きくすることをいう。なお、フィルム12の幅を保持することは拡幅に該当しない。本実施形態では、第3位置P3よりも下流の第4位置P4でフィルム12を拡幅しはじめている。本発明では、フィルム12が第2乾燥工程を経ていれば、フィルム12を拡幅することができ、拡幅を開始するタイミングは、必ずしも第3位置P3の下流からでなくてもよい。すなわち、この実施形態に限らず、第3位置P3からフィルム12の拡幅をし始めてもよい。以下の説明では、拡幅を終了する位置を第5位置P5と称する。
この拡幅工程の前に、溶媒残留量が60重量%から10重量%になるまでの乾燥を、105℃以下である乾燥風の吹き付けにより実施することにより、この拡幅工程では、フィルム12に空隙ないしクレイズが発生することがない。従って、フィルム12の透明性は拡幅工程でも保持され、得られる位相差フィルム14はヘイズが従来よりも低いものとなる。
溶媒残留率が10重量%であるフィルム12のセルロースアシレートのガラス転移点をTg℃とするとき、拡幅工程では、フィルム12の温度が(Tg+10)℃以上(Tg+60)℃以下の範囲となるように、送風ダクト41から吹き出す乾燥風の温度を調整する。この拡幅工程においては、フィルム12の温度を(Tg+20)℃以上(Tg+50)℃以下の範囲とすることがより好ましく、(Tg+30)℃以上(Tg+40)℃以下の範囲とすることが更に好ましい。
フィルム12の温度が(Tg+10)℃未満の場合には、フィルム12を拡幅すると、フィルム12が破断する可能性があるため、好ましくない。フィルム12の温度が(Tg+60)℃より大きい場合には、位相差フィルム14に、50nm以上の高いReを発現させることができないため、好ましくない。
フィルム12に幅方向X1,X2に張力を加えることにより、第4位置P4におけるフィルム12の幅L1(以後、「第1幅」と称する。)を、第5位置P5におけるフィルム12の幅L2(以後、「第2幅」と称する)に大きくする。なお、第1幅L1、第2幅L2はいずれも両側の保持対象ラインKL間の距離である。
拡幅工程の拡幅率は、30%以上65%以下とする。40%以上60%以下とすることがより好ましく、更には、45%以上55%以下とすることが好ましい。ここで、拡幅率とは、拡幅する前の幅に対する拡幅して伸びた分の幅の割合のことであり、{(L2−L1)/L1}×100で求める値である。
拡幅率が30%より小さい場合には、フィルム12に50nm以上の高いReを発現させることができない。拡幅率が65%より大きい場合には、フィルム12にクレイズが生じる可能性が高くなり、ヘイズ値が高くなりやすい。加えて、フィルム12が破断する可能性もある。
このテンタ15では、フィルム12を拡幅して、幅方向X1,X2における、フィルム12を構成するセルロースアシレートの分子の配向性を高めることができる。これにより、フィルム12の幅方向の屈折率が高くなるのでReが高くなり、フィルム12を50nm以上のReを発現する位相差フィルム14とすることができる。
拡幅工程が終了した第5位置P5から保持解除位置PEまでの間では、フィルム12を拡幅せずに、幅を一定に保持してもよいし、縮幅してもよい。すなわち、この幅L2はこの後変わらないように保持されてもよいし、さらに、図3に示すように保持の後に小さくしてもよい。第2幅L2を保持する場合も、第2幅L2から幅を小さくする場合もフィルム12には幅方向X1,X2に張力が付与される。縮幅する場合には、ピンで保持しない場合に自然に収縮するというフィルム12の収縮力を利用して、この収縮力とピンによる張力とのバランスを調整することにより幅を制御する。
ところで、溶液製膜方法では、流延膜を支持体上で乾燥することにより固化して剥ぎ取るという方法(以下、乾燥流延法と称する)と、流延膜を支持体上で冷却することにより固化して剥ぎ取るという方法(以下、冷却流延法と称する)とがある。
生産効率、すなわち単位時間あたりの生産量の点では、冷却流延法の方が乾燥流延法より格段に優れる。従って、冷却流延法により位相差フィルムを生産することが望ましい。しかし、冷却流延法では、乾燥流延法におけるよりも溶媒残留率が高い状態で流延膜は、流延ドラムに付着する傾向がある。このため、流延ドラムから流延膜をフィルムとして剥離するために、流延膜を搬送方向に強く引っ張る必要がある。また、乾燥流延法の場合と同じ程度の力で引っ張って、流延膜が流延ドラムから剥がれたとしても、乾燥流延の場合よりも、その力によって、溶媒残留率が高い状態の流延膜及びフィルムは伸ばされる傾向がある。これにより、フィルムは搬送方向Bに、分子が配向し易く屈折率が高くなる。このため、Reを高くするには、幅方向に拡幅する拡幅率を乾燥流延の場合よりも高くする。
ところが、従来では、冷却流延法であっても、溶媒残留率が60重量%から10重量%になるまでのフィルムを105℃より高い温度の気体を吹き付けてフィルムを乾燥してから、拡幅を行っていた。このため、結晶化温度を超えた場合に、結晶化するフィルムであるか、あるいは、結晶化温度を超えた場合に、結晶化するか明確ではないフィルムであっても、結晶化するフィルムであれば、拡幅する前のフィルムは結晶化が進んでおり、これを拡幅して得られた位相差フィルムは白濁し、ヘイズの値が高いものとなっていた。一方、本発明によれば、拡幅を行う前に、105℃より低い温度の気体を吹き付けて、溶媒残留率が60重量%から10重量%となるまでフィルムを乾燥してから、拡幅を行う。これにより、フィルムが白濁することを抑え、ヘイズ値を低く抑えることができる。このようにして、本発明は、比較的に高い溶媒残留率の状態で流延膜が剥ぎ取られて乾燥が行われる冷却流延法では、特に有効である。
本実施形態は、冷却流延法を実施する場合を示すものであるが、この態様に代えて、勿論、流延ドラムを連続走行する流延バンドとして乾燥流延法を実施することもできる。
さらに、本実施形態は、拡幅工程をピンテンタで実施するものであるが、本発明がこの態様に限るものではなく、可能であれば、拡幅工程をクリップテンタで実施してもよい。クリップテンタとは、ピンテンタにおけるピンに代えて、フィルムの側端部を把持するクリップを用いるものである。
次に、拡幅工程をオフラインで実施する態様を説明する。この態様では、製造工程のうち、拡幅工程を除いて、フィルムをつくり、巻き取る。このようにして得られたフィルムロールを以下のオフライン設備で延伸する。
図4は、オフライン延伸設備の概略図である。オフライン延伸設備81では、フィルム送出室82にあるフィルム送出機83から、フィルムロール84からフィルム85を送出して、テンタ86で拡幅工程を実施する。図4において、第1実施形態と同じ部材については、同じ符号を付する。
テンタ86において、拡幅工程が実施されて位相差フィルム87が形成される。それから、位相差フィルム87は、冷却室(図示せず)を経由して、巻取室25で、巻き取られる。
このように、拡幅工程を、第1乾燥工程と第2乾燥工程とはオフライン延伸設備で行っても良い。この実施形態に限られず、第1乾燥工程を先に行い、後に、拡幅工程と第2乾燥工程とをオフライン延伸設備で行っても良い。
下記の処方のドープ11をつくった。
セルロースアシレート 100重量部
(置換度2.94のセルローストリアセテート、粘度平均重合度305.6%、ジクロロメタン溶液6質量%の粘度 350mPa・s)
ジクロロメタン(溶媒の第1成分) 390重量部
メタノール(溶媒の第2成分) 60重量部
レタデーション上昇剤 9重量部
クエン酸エステル混合物(クエン酸、モノエチルエステル、ジエチルエステル、トリエチルエステル混合物) 0.006重量部
微粒子(二酸化ケイ素(平均粒径15nm)、モース硬度 約7) 0.05重量部
なお、レタデーション上昇剤としては、N−N’−ジ−m−トルイル−N”−p−メトキシフェニル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンを用いた。
上記ドープを用いて、図1に示す溶液製膜設備10により厚み65μmの複数の位相差フィルム14を60m/分の生産速度で製造した。第1位置P1における溶媒残留率を250重量%とし、テンタ15での第1乾燥工程におけるフィルム12に吹き付ける乾燥風の温度を70℃とした。第2乾燥工程におけるフィルム12に吹き付ける乾燥風の温度を105℃とした。拡幅工程では、溶媒残留率が10重量%であるフィルム12のセルロースアシレートのガラス転移点をTg℃とするとき、フィルム12の温度をTg+30℃とした。拡幅率を57%とした。拡幅工程の後に、フィルム12の幅をL2に保持した。
実施例2では、第2乾燥工程におけるフィルム12に吹き付ける乾燥風の温度を90℃とした以外は実施例1と同じ条件とした。
[比較例1]
比較例1では、拡幅工程におけるフィルム12の温度を(Tg+5)℃とした以外は実施例1と同じ条件とした。
[比較例2]
比較例2では、拡幅工程におけるフィルム12の温度を(Tg+65)℃とした以外は実施例1と同じ条件とした。
[比較例3]
比較例3では、第2乾燥工程におけるフィルム12に吹き付ける乾燥風の温度を110℃とした以外は実施例1と同じ条件とした。
[比較例4]
比較例4では、溶媒残留率が10重量%であるフィルム12の拡幅率を25%とした以外は実施例1と同じ条件とした。
実施例1から比較例4で得られた各位相差フィルムにつき、Re,Rthとヘイズ値を測定した。以上の実施例1から比較例4の実施条件及び、Re,Rthとヘイズ値を測定結果及び評価結果を表1に示す。
Figure 2010085519
Re,Rthについては、巻取室25で巻き取られた位相差フィルム14の一部をサンプリングし、このサンプル片の屈折率を測定した。具体的には、Reは、25℃,60%RHでの各屈折率による値(単位:nm)であり、Rthは25℃,60%RHでの各屈折率による値(単位:nm)である。ヘイズ値(単位:%)も同様に、25℃,60%RHでのサンプル片の光線透過率を測定し、100×(散乱光線透過率Td/全光線透過率Tt)の値とした。
Reが50nm以上であれば、良好である。ヘイズ値については、0.5以下であれば、位相差フィルムとして良好である。
ヘイズ値≦0.5 ;良好
0.5<ヘイズ値 ;従来品並であり、不良
本発明を満たさない比較例1〜4について、比較例1,3においては、位相差フィルム14の透明性を保つことができず、低いヘイズ値を有する位相差フィルム14を得ることができなかった。比較例2,4においては、50nm以上の高いReを発現する位相差フィルム14を得ることができなかった。
一方、本発明を満たす実施例1,2では、Reが50nm以上であり、ヘイズ値も0.5以下である、高いReを有し、ヘイズ値が低い位相差フィルム14が得られたことがわかる。
本発明によると、0.5以下のヘイズ値を有し、50nm以上であるReを有する位相差フィルムを製造することができる。そして、ヘイズ値が0.5以下であるため、この位相差フィルムは、液晶ディスプレイに高い正面コントラストを発現させることができる。
本発明の実施形態の溶液製膜設備を示す概略図である。 テンタにおけるフィルムの保持状態を示す概略図である。 テンタにおけるフィルムの拡幅及び縮幅を示す説明図である。 本発明の実施形態のオフライン延伸設備を示す概略図である。
符号の説明
10 溶液製膜設備
11 ドープ
12 フィルム
14 位相差フィルム
15 テンタ
31 流延ダイ
32 流延ドラム

Claims (2)

  1. セルロースアシレートと溶媒とを含むドープを、支持体上に流延ダイから連続的に流出して流延膜とし、この流延膜を前記支持体からフィルムとして剥ぎ取る流延工程と、
    溶媒残留率が60重量%となるまで前記フィルムを加熱して乾燥する第1乾燥工程と、
    溶媒残留率が60重量%から10重量%になるまで、前記フィルムを温度が105℃以下の気体を吹き付けて乾燥する第2乾燥工程と、
    溶媒残留率が10重量%である前記フィルム中の前記セルロースアシレートのガラス転移点をTgとするとき、前記第2工程を終えた前記フィルムを(Tg+10)℃以上(Tg+60)℃以下の温度範囲に保持しながら拡幅する拡幅工程とを有し、
    前記拡幅工程では、前記フィルムの拡幅前の幅をL1、拡幅後の幅をL2とするときに、(L2−L1)/L1×100で求める拡幅率(%)が30%以上65%以下の範囲となるように前記フィルムを拡幅することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
  2. 前記支持体を冷却することにより前記流延膜を固化させることを特徴とする請求項1記載の位相差フィルムの製造方法。
JP2008252183A 2008-09-30 2008-09-30 位相差フィルムの製造方法 Pending JP2010085519A (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008252183A JP2010085519A (ja) 2008-09-30 2008-09-30 位相差フィルムの製造方法
US12/585,949 US20100078852A1 (en) 2008-09-30 2009-09-29 Retardation film producing method

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008252183A JP2010085519A (ja) 2008-09-30 2008-09-30 位相差フィルムの製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2010085519A true JP2010085519A (ja) 2010-04-15

Family

ID=42056542

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008252183A Pending JP2010085519A (ja) 2008-09-30 2008-09-30 位相差フィルムの製造方法

Country Status (2)

Country Link
US (1) US20100078852A1 (ja)
JP (1) JP2010085519A (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20150137705A (ko) * 2014-05-30 2015-12-09 삼성전자주식회사 필름 제조 장치 및 방법
US20180036936A1 (en) * 2016-08-04 2018-02-08 General Electric Company Apparatus and method of processing a continuous sheet of polymer material

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN1173198C (zh) * 1999-04-21 2004-10-27 富士胶片株式会社 包含一纤维素酯膜的相位延迟板、圆偏振板和液晶显示装置
JP2006159464A (ja) * 2004-12-03 2006-06-22 Fuji Photo Film Co Ltd 溶液製膜方法及びセルロースエステルフィルム

Also Published As

Publication number Publication date
US20100078852A1 (en) 2010-04-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR20080085789A (ko) 셀룰로오스 에스테르 필름 및 그 제조방법
JP4901249B2 (ja) ポリマーフイルムの製造方法
JP5162358B2 (ja) ポリマーフィルムの製造方法及びセルロースアシレートフィルム
JP2011178043A (ja) ウェブの搬送方法及びその装置、並びに溶液製膜方法及びその設備
JP2012206312A (ja) ナーリング形成方法及び装置、溶液製膜方法、並びにポリマーフィルム
JP4964723B2 (ja) ピンテンタ及び溶液製膜方法
JP2009096183A (ja) フイルムの延伸方法及び溶液製膜方法
JP2010046932A (ja) フィルムの製造方法
JP2010082993A (ja) 溶液製膜方法
JP2010085519A (ja) 位相差フィルムの製造方法
JP4804882B2 (ja) ポリマーフイルムの製造方法
JP5292339B2 (ja) 熱可塑性フィルムの延伸方法及び装置、並びに溶液製膜方法
JP2009262528A (ja) フィルムの製造方法
JP2010082992A (ja) 位相差フィルムの製造方法
JP4823783B2 (ja) ポリマーフイルムの製造方法
JP2007290370A (ja) ポリマーフイルムの製造装置及び製造方法
JP5127654B2 (ja) 溶液製膜方法
JP4989529B2 (ja) セルロースアシレートフィルムの製造方法
JP4879057B2 (ja) セルロースアシレートフィルムの製造方法
JP5188247B2 (ja) 溶液製膜方法
JP2007137962A (ja) ドープの調製方法
JP2009242493A (ja) セルロースアシレートフィルムの製造方法
JP2009107272A (ja) フイルム延伸緩和方法及び溶液製膜方法
JP2010014994A (ja) 位相差フィルムの製造方法
JP2010000773A (ja) フィルムの製造方法