上述のように、遊技盤はそれ単体での出荷が可能であることから、この遊技盤を製品個体として受け取った遊技場は既存の枠から古い遊技盤を取り外し、そこへ新規な遊技盤を取り付けて実際に稼働させることとなる。一方、新規な遊技盤にはその機種を特徴付ける盤面構成要素や表示装置、装飾体等が新しく付されており、さらに今までとはゲーム性の異なる遊技内容を制御するための制御装置が装備されている。こうした電子機器類が全て正常に作動するか否かは生産主体がその出荷前に検査するべきものであり、それゆえ公知技術においても、遊技盤の製造ラインの終端近くに検査工程が設けられている(同じく特許文献1の第3頁参照。)。
ところで、遊技盤に付属する電子機器類の検査を行うためにはこれらに通電する必要があるが、この種の遊技機では通常、電子機器類への電力の供給は枠に付属する電源装置から行われるため、たとえ製造ライン上では遊技盤単体として出荷できる状態に完成していたとしても、これをわざわざ枠に取り付けて電源を取り入れない限り検査ができない。その一方で、枠に付属する賞球装置の動作は、遊技盤に付属する制御装置から送信される賞球信号に依存するものであるため、たとえ遊技盤だけを出荷する場合であっても、その制御装置から賞球信号が正常に送信されているか否かを出荷前に検査しておかなければならない。この場合もやはり、製造ライン上では遊技盤単体として完成していたとしても、これを枠に取り付けなければ遊技盤と枠との間で通信インタフェースの接続検査を行うことができないという技術的な問題がある。
前述した公知技術は、遊技盤だけを単体で出荷することがあるという遊技機の特殊性に着目し、遊技盤と枠とで製造ラインを相互に分離することで生産効率をわずかに高めるところまでは到達したものの、その出荷前における検査の効率化にまでは考え至っていない。このため公知技術を遊技機工場に適用したとしても、それだけで飛躍的な生産効率の向上を期待できるわけではない。
そこで本発明は、遊技機の生産現場において一層の効率化を実現することができる有用な技術の提供を課題としたものである。
(解決手段1)
上記の課題を解決するため、本発明の生産設備は検査装置を用いて遊技盤の検査を行うこととしている。すなわち検査装置は、所定の生産ラインを通じて組み立てられた遊技盤が順次列をなして移送される移送経路の途中で遊技盤に付属する制御装置および可動体の検査を行うことができる。これにより、遊技盤として完成したものを枠に取り付けることなくその検査を行うことができる。
(解決手段2)
本発明の生産設備で取り扱われる遊技機は、その基本構成として外部から取り込んだ電力を所望の状態に調整して出力する電源装置と、この電源装置から電力の供給を受けて遊技動作を実行する動作部と、この動作部による遊技動作を制御するべく制御信号を出力する制御装置とを備えている。また遊技機は、その前提として制御装置および動作部が遊技盤に装備される一方で電源装置が枠体に装備されるとともに、この枠体に遊技盤が装着された状態で電源装置から制御装置および動作部への給電が可能となっている。
遊技機の動作部には、例えば盤面に付属する可動体や電動役物、演出上の発光装飾を行う各種のランプ、図柄表示器等が含まれ、また、枠体に付属する球発射装置や賞球払出装置、演出上の発光装飾を行う枠ランプ、スピーカ等が含まれる。また、動作部による遊技動作には、例えば遊技球の発射動作やその払出動作の他に、電動役物による入賞機会の増加や演出上の発光装飾、図柄の変動・停止表示、音響出力等が含まれる。
こうした前提のもとに、本発明の生産設備は所定の生産ラインを通じて組み立てられた遊技盤が順次列をなして移送される移送経路と、この移送経路に沿って移動可能に設けら
れ、遊技盤に接続された状態でその移送方向に移動しつつ制御装置および動作部の作動に必要な電力を供給する給電ユニットとを備えている。
本発明の生産設備によれば、組み立て済みの遊技盤が単体で移送経路上を移送される間に給電ユニットから電力を供給することにより、遊技盤を枠体に装着することなく制御装置および動作部の作動を検査することが可能となる。また、給電ユニットは遊技盤の移送とともに移動可能であることから、移送経路上では流れ作業で制御装置や動作部の検査を行うことができ、生産ラインの流れを最後まで停滞させることなく円滑に作業を進めることができる。
(解決手段3)
また給電ユニットは、制御装置から制御信号を受け取ってその出力状態を表示することにより制御装置の検査を可能とする検査手段をさらに含んでいる。この場合、給電ユニットの表示を確認するだけの簡単な作業によって制御信号の出力状態を効率よく検査することができる。
(解決手段4)
上述の動作部は作動電圧の異なる複数種類の負荷を有しており、給電ユニットは制御装置および複数種類の負荷の全ての作動電圧に対応する電力を供給可能である態様が好ましい。上述したように、動作部には機械的な動作を行うものの他に、電気的な発光や音出力を行うもの等の各種の負荷が含まれており、これら負荷にはそれぞれ最適な作動電圧が設定されている。したがって、1つの給電ユニットからそれぞれの負荷に対応する全ての作動電圧が供給可能であれば、作動電圧ごとに異なる給電ユニットを用意してこれらを一々付け替える必要がなく、より一層の効率化が図られる。
(解決手段5)
本発明の生産設備は、移送経路の途中に設けられ、遊技盤が給電ユニットに接続されている状態で所定の検査を実行するための検査区間と、移送経路に並行して給電ユニットの移動を案内し、かつ、検査区間に対応する位置で給電ユニットに対して電力を供給するトロリーレールとをさらに備えることができる。この場合、給電ユニットはトロリーレールに移動を案内されて遊技盤とともに移動することができ、また、この間にトロリーレールから供給された電力を調整して出力することで、制御装置および動作部の検査に必要な電力を供給することができる。
(解決手段6)
さらに本発明の生産設備は、トロリーレールの起点から終点まで給電ユニットが移動した後、この終点から送出された給電ユニットをトロリーレールの起点まで循環させる循環手段をも備えることができる。
トロリーレールは検査区間に対応した長さを有することから、その案内軌道上に多数の給電ユニットをぶら下げておくことができる。したがって、移送経路上の検査区間に多数の遊技盤が同時に存在したとしても、生産設備では全ての遊技盤に対応して給電ユニットを割り当てることができるため、ここでも流れ作業による検査が可能である。
なお、製品としての遊技盤は生産ラインを通じて次々と大量に生産されるものであるが、その全てを検査するために遊技盤の生産量と同数の給電ユニットを前もって用意しておくことはあまり現実的でない。一方、移送経路上で給電ユニットが必要となるのは、上述の検査区間を遊技盤が通過するときだけであることから、この検査区間内に同時に存在できる台数分の給電ユニットがあれば事足りる。ただし作業の効率を考えると、給電ユニットの個数にはある程度の余裕が必要であるので、生産設備では同時に検査対象となる遊技盤の台数を上回る個数の給電ユニットを保有しておくことが望ましい。
この場合、遊技盤の検査が終わると給電ユニットはひとまずその役目を終えるため、役目の終わった給電ユニットを順次循環させて次の遊技盤の検査に回すことができれば、最少資源で最大の効率を期待できる。したがって、トロリーレールの終点から送出された給電ユニットをその起点まで循環させる手段を有していれば、工場内の資源の有効活用とともに作業効率の向上をも実現できる。
(解決手段7)
本発明の生産設備は、上述の循環手段により給電ユニットがトロリーレールを通過して一巡する間にその給電が停止される停電区間をさらに備えており、給電ユニットは、停電区間から検査区間への移行に伴って給電を開始されたとき、所定の自己診断動作を実行する診断手段をさらに含むものとなっている。
生産設備において、多数の給電ユニットを循環させながら繰り返し使用する場合、途中で給電ユニットに何らかの不具合が生じた後は、その給電ユニットを用いて検査を行った遊技盤は全て、充分な検査が行われなかったことになる。こうした事態を回避するため、給電ユニットが1回の役目を終えて次の検査に使用される前に自己診断動作を実行することができれば、検査が開始される前にその都度、給電ユニットの正常性を保証することができる。
(解決手段8)
給電ユニットの循環手段は、きわめて機構的に実現することができる。すなわち循環手段はその具体的な構成として、トロリーレールの上方に配置され、トロリーレールによる案内方向とは逆向きに下り傾斜を有することで給電ユニットをトロリーレールの終点から起点に向けて案内するリターンレールと、トロリーレールの起点および終点の位置にそれぞれ配置され、トロリーレールの終点から送出された給電ユニットを受け取ってリターンレールの起点位置まで持ち上げる一方、リターンレールの終点位置で給電ユニットを受け取ってトロリーレールの起点位置まで降ろす一対の昇降機と、これら一対の昇降機にそれぞれ隣接して配置され、一対の昇降機により各起点位置まで上げ下げされた給電ユニットを各レールによる案内方向へ押し出す一対のプッシャとを含むものとなっている。
例えば、1つの給電ユニットが一通りの役目を終えてトロリーレールの終点から送出されると、これを昇降機が受け取ってリターンレールの起点位置まで持ち上げる。これを次にプッシャが押し出すと、押し出された給電ユニットはリターンレールの傾斜を下ってトロリーレールの起点方向へ案内される。そして、給電ユニットがリターンレールの終点に達すると、これを昇降機が受け取ってトロリーレールの起点位置まで降ろす。さらに給電ユニットはプッシャにより押し出され、再びトロリーレール内に送り出される。こうした一連の動作を繰り返すことで、全ての給電ユニットが一定のサイクルで稼働することとなる。
(解決手段9)
また給電ユニットは、トロリーレールからの給電が所定時間だけ途切れた場合であっても、制御装置への供給電圧を保持可能な保持手段をさらに含む態様が好ましい。トロリーレールを用いた給電形態はホイールや摺動子等との接触に頼っているため、給電ユニットの移動中に接触面の汚れや異物の付着等によって瞬間的に給電が途切れる場合がある。こうした場合であっても、制御装置への供給電圧をそれまでと同じレベルに保持することができれば、そのまま検査を続行できるので作業性が損なわれることはない。
(解決手段10)
より好ましくは、移送経路上を順次移送される複数の遊技盤に対応して複数の給電ユニットが列をなして配置されており、個々の給電ユニットには、その列上にて互いに隣接する給電ユニットとの衝突を緩和する緩衝器が設けられている。この場合、給電ユニットどうしが多少強く衝突しても、その衝撃によって何らかの損傷を被る可能性は低くなるので、給電ユニットの耐久性が向上する。
(解決手段11)
遊技盤に装備される制御装置は、遊技機による遊技内容の進行を制御する主基板と、この主基板から指令信号を受け取って所定の演出動作を制御する演出制御基板とを含んでおり、給電ユニットは、主基板から受け取った主制御信号に基づいて賞球の払い出し個数を数値表示する表示部と、演出制御基板から受け取った演出制御信号に基づいて音および光の少なくとも一方を出力する演出動作部とを含んでいる。
近年の高度化された遊技機の制御装置にあっては、主基板と演出制御基板とがそれぞれの役割を分担して遊技動作の制御を高効率に行うとともに、個々の基板が有するCPUの処理負担を軽減することに成功している。すなわち、主基板では抽選の実施や賞球の払出指示等といった遊技動作の根幹となる制御プログラムが実行されており、この主基板から出力される主制御信号に基づいて演出制御基板による装飾ランプやスピーカ等を用いた演出動作の制御プログラムが実行されている。この場合、主基板から枠体(賞球制御装置)に出力される主制御信号として賞球制御信号があり、また演出制御基板から枠体(装飾ランプ、音響機器)へ出力される演出制御信号として装飾ランプの点灯制御信号やスピーカの駆動制御信号等がある。
このため、給電ユニットを用いた検査においても両方の基板から出力される主制御信号および演出制御信号を取り扱う必要があることから、給電ユニットには表示部と演出動作部とが一緒に含まれる態様が好ましい。この場合、実際の検査においては賞球払い出し個数の数値表示を確認するだけで主基板から出力される主制御信号の良否を知ることができるし、また、演出動作部にて音および光の少なくとも一方の出力状態を確認することで演出制御基板から出力される演出制御信号の良否を知ることができる。
(解決手段12)
より実用的には、演出制御基板が少なくとも2つのスピーカから音を出力するべく2つの制御信号を出力可能である場合、給電ユニットの演出動作部は、2つの制御信号の一方に基づいて音を出力するもととに、その他方に基づいて光を出力する態様であることが好ましい。すなわち、2つの制御信号の良否をいずれも音の出力状態によって判別するのではなく、その一方を音で判別し、他方を光で判別することができるので、たとえ検査を作業者の五感に頼っている場合であっても、作業者が感覚的にそれぞれの良否を判別し安いという利点がある。この点、2つの制御信号をいずれも音で判別する態様も可能ではあるが、2つの音の違いを瞬時に聞き分けることは作業者への負担が大きいといえる。
(解決手段13)
また主基板は、遊技内容の進行に伴い所定の処理を実行する処理部と、この処理部による処理の途中で発生および推移し得る事象に関する情報を一時的に記憶可能な一時記憶部と、この一時記憶部の記憶内容が正常でなかったとき演出制御基板に対し所定期間にわたって報知音の指令信号を出力する指令部とを含むものであり、この場合、給電ユニットは移送経路上での主基板に対する最初の通電を所定の通電時間だけ行った後にこの通電を中断し、さらに所定の中断時間が経過した後に通電を再開する通電制御手段をさらに含む態様が好ましい。
本発明の生産設備において上記の解決手段13を採用する理由は、遊技機に設けられている不正対策の仕様による。いわゆる「バックアップ機能を持った初期値変更乱数方式」により大当りの抽選を行う遊技機にあっては、その抽選において発生させる乱数の初期値を不規則に変動させることにより、体感器等を用いた不正行為を技術的に阻止している。
主基板の処理部(CPU、カウンタ等)は乱数の発生や初期値の変更、抽選等を行う処理を行っており、その結果、さまざまに発生・推移する事象(乱数の初期値、大当り中、確変状態、時短状態等の各種事象)に関する情報は全て一時記憶部(RAM)にバックアップされる。この記憶内容は遊技機の電源が断たれても一定時間内は保存されており、通常は遊技場の翌営業日まで一時記憶部の記憶内容が維持される。しかしながら、一時記憶部(RAM)の記憶内容が強制的にクリアされると、その時点で発生する乱数の初期値が0に戻ってしまうため、この性質が悪用された場合には体感器による不正行為が行われる可能性が僅かに残る。このため同種の遊技機には、一時記憶部の記憶内容が強制的にクリアされた場合はこれを正常でないと判断し、所定期間に渡って報知音(比較的大音量のもの)を出力することにより、そこで何らかの不正がはたらかれたことを周囲に発覚させる不正対策が施されている。
こうした不正対策の仕様に基づき、遊技盤が生産されて始めて主基板に通電された場合であっても、その時点では一時記憶部の記憶内容が完全な空白であるため、記憶内容が強制的にクリアされた場合と全く同じ状況、つまり正常でない状況がつくり出される。このため検査のために給電ユニットから主基板に始めて通電されると、演出制御基板に対し所定期間にわたって報知音の指令信号が出力されるため、そのままでは演出動作部から報知音が鳴り響き、その大音量で周囲を煩わせることとなる。このため給電ユニットの通電制御手段は、主基板に対する最初の通電を所定の通電時間だけ行った後にこの通電を中断することで、報知音の出力をひとまず停止させる。このとき主基板では所定の停電処理を行った後、一時記憶部にある記憶内容を保持した状態でその作動を停止する。そして、さらに所定の中断時間が経過した後に通電制御手段が通電を再開することで、引き続き検査の続行を可能とする。この通電の再開に伴って主基板は停電後の復帰処理を行い、一時記憶部の記憶内容をもとに通常の作動状態に復帰することができる。この時点ではもはや一時記憶部は空白でなく、正常にバックアップした記憶内容を保持した状態であるため、演出制御基板に対して報知音の指令信号が出力されることはないし、演出制御基板にはバックアップ機能がないため、停電前に報知音の指令信号が出力されていたという事実は通電再開時にリセットされている。
(解決手段14)
本発明の生産設備において、給電ユニットは電力の供給および検査の少なくとも一方を実現するためのプログラムを有しており、このプログラムは書き換え可能である態様が好ましい。すなわち、給電ユニットが有するプログラムはその給電動作(異なる作動電圧の生成や保持手段による電圧の保持、通電制御手段による通電の制御等を含む)を実現したり、あるいは検査手段による各種の動作(表示部による表示や演出動作部の動作等を含む)を実現したりするためのものであり、これらの少なくとも一方はプログラムにしたがって自動的に実行されている。一方、生産対象となる遊技機の機種・仕様等が変われば、それに合わせて最適な給電態様や検査内容も異なってくるため、これらに合わせてプログラムの内容を書き換えることができれば、同一のハードウェアを用いて常に最適な給電態様や検査内容を実現することが可能となる。
本発明の遊技機の生産設備は、生産ラインにおいて遊技盤の検査を効率的に行うのに適した環境を提供することができる。
以下、本発明の生産設備を実施するための形態について説明する。
現に既存の生産設備を保有する生産主体(遊技機メーカー)であれば、その生産設備を本発明の実施のために転用する形態が最も好ましいといえる。すなわち本発明は、あらゆる既存の生産設備への適用が可能であり、これに何からの改作・変更を加えるだけで容易に実施可能である。あるいは全く新規に本発明の生産設備を構築しようとする場合であっても、汎用の既存設備に対して新規に追加するべき構成はきわめて最小限に抑えられる。
図1は、一実施形態となるパチンコ機の生産設備の構成を概略的に示している。この生産設備はパチンコ機の生産ライン中に含まれており、ここでは生産ラインの上流で組み立てられた多数の遊技盤1が直立した姿勢で横方向に列をなし、移送経路2に沿って順次移送されている。なお移送経路2は、例えばローラーコンベヤやベルトコンベヤ、ガイドレール等から構成することができる。また移送経路2はその途中に2つのターンテーブル4を含み、これらターンテーブル4上で遊技盤1を水平方向に回転させることができるものとなっている。
この生産設備において、移送経路2の途中には遊技盤1の検査を行うための検査区間が規定されている。この検査区間内で遊技盤1の検査を行った結果、その検査を通過したものが次の工程(出荷処理または枠体との組み合わせライン)に引き継がれる。また検査を通過しなかったものは不良品として移送経路2の外へはねられ、不良箇所の修理にまわされる。なお、検査区間の必要長さについては特に制約がないので、本発明を実施する際に個々の生産現場における実際の作業性や空間効率を考慮して、最適な長さの検査区間を設ければよい。
移送経路2の上方にはトロリーレール6が配置されており、このトロリーレール6は移送経路2と並行して水平に延びている。さらにトロリーレール6は検査区間に対応して配置されており、その全長は検査区間を充分カバーできる程度に設定されている。またトロリーレール6には多数の給電ユニット8がぶら下がるようにして設置されており、これら給電ユニット8はトロリーレール6に案内されてその長手方向に移動することができる。給電ユニット8は移送経路2上で遊技盤1に接続され、上述の検査区間内で遊技盤1に対する給電を行うほか、その検査を行うための機能を有している。
図2は給電ユニット8をより具体的に示している。図2に示されているように、給電ユニット8は箱形のケーシング8aを有しており、このケーシング8a内に各種の構成要素が収容されている。ケーシング8aの上部には集電装置10が取り付けられており、この集電装置10はブラケット12を介してケーシング8aに連結されている。トロリーレール6は例えば断面C字形状の形鋼材からなり、その内側に形成された凹部がちょうど上方から集電装置10に覆い被さるようにして配置されている。
集電装置10はトロリーホイール10aを有し、このトロリーホイール10aをトロリーレール6の内側に入り込ませることでケーシング8aを吊り下げた状態に支持することができる。なおトロリーレール6の内側にはトロリー線6aが敷設されており、集電装置10はトロリーホイール10aをトロリー線6aに接触させながら移動することができる。
図2でみてケーシング8aの前面には、その下寄りの位置に表示部14が形成されている。表示部14の中央には3桁分の7セグメントLED14aが配置されており、これら7セグメントLED14aには記号または数値を表示可能となっている。さらに7セグメントLED14aの周囲には4つのLED14bが配置されており、これらLED14bはその点灯の組み合わせパターンによって一定の情報を表示可能となっている。
表示部14の上方には高音用スピーカ16や低音用スピーカ代用LED18、枠ランプ代用LED20等(演出動作部)が配列されており、これらはパチンコ機の枠体に付属する電子機器類の代わりをするものとして給電ユニット8に設けられている。
さらに、ケーシング8aの右上隅の位置に押しボタン式のリセットスイッチ22が配置されているほか、ケーシング8aから前面に突出してハンドル24が設けられている。このハンドル24は例えばコ字形状に成形された棒材またはボルトをケーシング8aの前面に固定することで形成されており、作業者はこのハンドル24を把持しながら給電ユニット8をトロリーレール6に沿ってスライドさせることができる。
また、上述のブラケット12には緩衝器(ショックアブソーバ)26が取り付けられており、この緩衝器26の先端はブラケット12の一側面(この例では左側面)から突き出ている。一方、その反対の側面には接触パッド28が取り付けられており、この接触パッド28と緩衝器26とは同一水平線上に位置している。さらに緩衝器26の先端はケーシング8aの側面よりも外に位置するため、トロリーレール6上で隣り合う給電ユニット8どうしがぶつかり合ったとしても、その一方の緩衝器26が他方の接触パッド28に当たることで衝撃が緩和されるものとなっている。
その他、ケーシング8aの下面には配線ダクト30が取り付けられており、この配線ダクト30から配線束32が延びている。またケーシング8aには、配線ダクト30から僅かに離れた位置にフック34が取り付けられており、このフック34には使用されていない配線束32を引っ掛けておくことができる。
次に図3は、上述した給電ユニット8の構成を図式的に示している。給電ユニット8はケーシング8aに内蔵された基板8bを有し、この基板8bには上述した表示部14のほか、各種の電源回路36,38,40,42や制御部44が形成されている。電源回路36〜42はいずれもヒューズを介して外部電源(例えばAC24V)に接続されており、この外部電源は上述のトロリー線6aを通じて集電装置10から給電ユニット8内に取り込まれている。このうち1つの電源回路36は給電ユニット8の作動に必要となる内部電力を生成するためのものであり、その他の電源回路38,40,42はパチンコ機の作動に必要な3段階の電力(例えばDC5V,12V,34V)をそれぞれ生成するためのものである。
制御部44は電源回路36から必要な電力の供給を受けて作動する。また制御部44は他の3つの電源回路38〜42に接続されることでこれら電源回路38〜42を制御するとともに、その異常検出をも行うことができる。制御部44は上述の表示部14にも接続されており、その表示(各種LED14a,14bによる表示)の内容は制御部44により制御することができる。また制御部44には上述のリセットスイッチ22が接続されており、その操作信号が制御部44に入力されるものとなっている。
図2に示される配線束32には、制御部44から延びる信号線46のほか、各種のスピーカ・LED16,18,20から延びる信号線48や、電源回路38,40,42から延びる電力線50等が含まれている。図2には示されていないが、これら信号線46,48や電力線50の末端にはそれぞれコネクタ46a,48a,50aが取り付けられている。また電力線50には制御部44から延びる接続線50bが合流し、この接続線50bもまたコネクタ50aにつながっている。
図4および図5は、給電ユニット8と遊技盤1との接続関係を示している。生産ラインの上流から移送経路2上に遊技盤1が送出されてくると、ここで遊技盤1に給電ユニット8が接続される。遊技盤1の背面には主基板52をはじめ演出制御基板54、液晶制御基板(図示されていない)を含む制御装置が装備されており、給電ユニット8から延びる配線束32は、そこから分岐した各線が主基板52や演出制御基板54に接続されるものとなっている。これらは生産主体の違いや遊技機の仕様によって、例えば主基板52を「メイン基板」、「メイン制御基板」等と呼称し、また演出制御基板54を「サブ基板」、「サブ制御基板」等と呼称している場合もある。いずれにしても、主基板52はパチンコ機の遊技内容を制御する機能を有するものであり、演出制御基板54は遊技の進行に伴う各種の演出(発光装飾や音響出力、映像出力等)を制御する機能を有するものである。
給電ユニット8との具体的な接続関係は、先ず主基板52には電力線50および信号線46が接続され、そして演出制御基板54には信号線48が接続されている。なお図4には示されていないが、主基板52と演出制御基板54、また演出制御基板54と液晶制御基板とは、既に生産ラインの上流にて全て配線による結合が完了している。本実施形態で扱うパチンコ機では、最初に主基板52に電力が供給されると、これを主基板52から演出制御基板54、そして演出制御基板54から液晶制御基板へと順次、橋渡しするように電力が供給される態様となっている。なお、生産対象となるパチンコ機の仕様によってこのような給電態様を採用しない場合は、それぞれの基板に専用の電力線を給電ユニット8に設けてこれらを接続するようにすればよい。
図4に示される態様で給電ユニット8が遊技盤1に接続されると、遊技盤1が移送経路2を移送される過程で各種の検査が流れ作業で行われる。またこの過程で遊技盤1がターンテーブル4上に達すると、そこで向きを反転されて図5の状態となる。このとき例えば、配線束32は遊技盤1の右側縁を通ってその背面に回り込むことができる。図5の状態では主に、遊技盤1の盤面の検査や賞球検査等が行われるものとなっているが、これら検査の具体的な内容については後述する。
一通りの検査が終了すると、図1に示されるように遊技盤1は検査区間から抜け出て次のターンテーブル4上に乗り、ここで再度反転される。そして、給電ユニット8の配線束32が取り外されると、遊技盤1は次の工程に移行される。
一方、配線束32を取り外された給電ユニット8はトロリーレール6に案内されてさらに移動し、その終端(終点)から送出される。図1には示されていないが、このとき取り外された配線束32はフック34に引っ掛けた状態で小さくまとめられている。また、トロリーレール6の終端より先の位置には昇降機56が配置されており、この昇降機56はトロリーレール6の終端から送出された給電ユニット8を受け取ると、そのまま上昇して給電ユニット8を持ち上げる。トロリーレール6の上方にはリターンレール58が配置されており、このリターンレール58はトロリーレール6による給電ユニット8の案内方向とは逆向きに下り傾斜を有している。このためリターンレール58は、その傾斜にしたがってトロリーレール6とは逆向きに給電ユニット8を案内することができる。
昇降機56によって持ち上げられた給電ユニット8は、ちょうどリターンレール58の始端(起点)に位置付けられる。昇降機56を挟んだ反対側の位置にはプッシャ60が配置されており、このプッシャ60は給電ユニット8をリターンレール58に向けて押し出すことができる。押し出された給電ユニット8は昇降機56からリターンレール58に乗り移り、その傾斜に沿ってリターンレール58内を下っていく。
リターンレール58の終端(終点)より先の位置にも昇降機62が配置されており、この昇降機62はリターンレール58の終端(終点)とトロリーレール6の始端(起点)との間をつないでいる。給電ユニット8がリターンレール58の終端(終点)から送出されると、これを昇降機62が受け取って下降し、その給電ユニット8をトロリーレール6の始端(起点)位置まで降ろす。同様に、昇降機62を挟んだ反対側の位置にプッシャ64が配置されており、このプッシャ64により押し出された給電ユニット8は再度トロリーレール6内に送出される。
このように、本実施形態の生産設備では多数の給電ユニット8がトロリーレール6およびリターンレール58内に存在し、これらはトロリーレール6とリターンレール58、そして両側一対の昇降機56,62からなる循環経路内を循環しながら遊技盤1の検査に使用される。
図6は、トロリーレール6の始端部を取り立てて示している。トロリー線6aは移送経路2上の検査区間に対応した位置に敷設されているだけであって、検査区間外となる位置にはトロリー線6aが敷設されていない。同様に、リターンレール58にもトロリー線が敷設されておらず、それゆえ検査区間に対応する範囲外は給電ユニット8そのものが通電されない停電区間となっている。なお、図1には水平方向でしか停電区間を示していないが、両側一対の昇降機56,62による昇降経路や、トロリーレール6内でも検査区間に対応する範囲の外は全て停電区間に含まれている。
以上が一実施形態となる生産設備の主な構成である。以下に、この生産設備を用いた検査の実施例について説明する。また以下の説明により、給電ユニット8が有する各種の機能的要素についても明らかとなる。
図7は、給電ユニット8内での各種電圧についてその時間的な変化を示している。例えば、給電ユニット8がトロリーレール6に沿って移動し、ある時刻t1に停電区間から検査区間に移行すると、その時点でトロリー線6aから給電ユニット8に給電(AC24V)が開始される。これに伴って電源回路36が起動し、給電ユニット8内の電源電圧(Vcc)が立ち上がる。
制御部44は電圧(Vcc)の立ち上がりを検出すると、所定時間(例えば100ms程度)をかけて自己診断プログラムを実行する(診断手段)。この自己診断プログラムにおいては、基板8bが正常に作動するか否かがチェックされ、この結果、正常であれば表示部14内にて特定の単体LED14b(例えば左上位置にあるもの)を一定時間点灯させて正常である旨を表示する。なお給電ユニット8内の電源回路36は、外部電源(AC24V)からの給電が所定時間τ(例えば100ms程度)だけ途絶えた場合であっても、その間に出力電圧を保持できるだけの容量を有している(保持手段)。これは、外部電源の引き込みが集電装置10に依存しているため、瞬間的な停電対策を考慮したものである。
自己診断プログラムの実行が終わって検査の作業者が表示部14に正常表示がなされていることを確認すると、次に作業者はフック34から配線束32を取り外し、コネクタ46a,48a,50aをそれぞれ対応する基板コネクタに接続する(図3,4参照)。
コネクタ46a,48a,50aを接続して一定時間(例えば50ms以上)経過後に給電ユニット8の電源スイッチ(図示していない)がONにされると、この時点(時刻t2)で各電源回路38〜42からの出力電圧(DC5V,12V,34V)がそれぞれ立ち上がり、主基板52をはじめ演出制御基板54、液晶表示基板に通電され、さらに盤面中の各動作部(液晶表示器、装飾ランプ、可動体等)へも通電される。
主基板52に電源が投入されると、通常、そのCPUは直前の電源断時にバックアップされたはずのデータ領域にあるデータからチェックサムを作成し、これを同じく電源断時にバックアップされたはずのチェックサムと比較することで、バックアップデータが正常であるか否かを判断する。このとき主基板52にとっては全く始めての通電(組み立て完了後の初回通電)となるため、CPUはバックアップデータの内容が壊れている(正常でない)と判断してRAM(一時記憶部)の記憶内容をひとまずクリアし、さらにCPUは演出制御基板54に対してRAMクリア報知音の指令信号を出力し(指令部)、そして通常の遊技処理を開始する。この指令信号を受け取ると、演出制御基板54は高音用スピーカ16からRAMクリア報知音を出力させる。このRAMクリア報知音は比較的大音量に設定されているため、あまり長時間にわたって鳴り続けると周囲を煩わせるし、検査作業の妨げにもなる。
このため給電ユニット8の制御部44は、各電源回路38〜42の出力電圧が最初に立ち上がると、所定の通電時間T1(例えば2秒程度)経過後に全ての電源回路38〜42の出力電圧を一旦0にし、主基板52への通電を中断することでRAMクリア報知音を鳴りやませる。そして、また所定の待機時間T2(例えば2秒程度)経過後に各電源回路38〜42の出力電圧を立ち上げ、主基板52への通電を再開させる(通電制御手段)。
この一連の処理は、パチンコ機に備えられた不正対策の仕様を特に考慮したものである。すなわち、生産対象が「バックアップ機能を持った初期値変更乱数方式」のパチンコ機である場合、その主基板52に始めて通電すると、遊技場においてRAMクリアスイッチを操作しながら電源を投入した場合か、あるいは何らかの不正行為によって強制的にRAMがクリアされた場合と全く同じ挙動を示すこととなる。これらの場合、そこから所定時間(例えば数十秒)にわたってRAMクリア報知音が大音量で鳴り響き、RAMがクリアされたことを報知するものとなっている。
この事態を改善するには、先ず主基板52に通電することで一通りCPUに通常処理を実行させ、RAM内に遊技内容の記録が書き込まれた状態で通電を中断する。このときCPUは停電(電源断)シーケンスを実行し、RAMに記憶されている遊技内容から作成したサムおよびレジスタの内容を保持したまま停止状態となる。一方、演出制御基板54にはバックアップ機能がないため、電源断とともにそのCPUはそのまま作動を停止する。そしてこの後、RAMのバックアップ期限内に通電が再開されると、主基板52のCPUは自己診断処理を終えて復電シーケンスを実行し、このときはレジスタの内容とサムの内容とが合致するので、RAMに記憶された遊技内容を引き継いで通常処理を開始する。
この手順を踏めば、最初の通電時間T1内にRAMクリア報知音が出力されるだけにとどまり、2回目の通電が開始されても、このとき主基板52のCPUはRAMの記憶内容を元に遊技内容を再開できるため、RAMクリア報知音の指令信号を出力しない。一方、演出制御基板54にはもともとバックアップ機能がないため、2回目の通電が開始された時点で、それまでRAMクリア報知音の指令信号が与えられていたことは既にキャンセルされている。したがって、給電ユニット8が接続されてから2回目の通電開始(図7中の時刻t3)以降はRAMクリア報知音を鳴らさなくすることができる。
給電ユニット8から遊技盤1への給電が開始されると、その制御部44は各コネクタ46a,48a,50aの接続状態が良好であるか否かを検査するとともに、主基板52との間の通信(双方向通信)が正常に行われるか否かを検査する。この検査は主に、枠体に装備される賞球制御基板の機能を給電ユニット8が代替して行うものであり、具体的には以下の手順により検査が行われる。
図8および図9は、給電ユニット8と主基板52との間で行われる通信の手順を示している。このうち図8は制御部44による検査処理の内容であり、図9は主基板52による賞球処理の内容である。
先ず制御部44は検査処理を開始すると、主基板52からの主制御信号(賞球信号またはセルフチェック信号)の待ち受け状態となる(ステップS11)。この状態で、例えば作業者が遊技盤1の各種入賞口に遊技球を投入すると、個別に配置された入賞センサにより主基板52が入賞を検出し、それぞれの賞球個数に対応した賞球信号を送信する(ステップS21)。
図10は、主基板52から送信される賞球信号の出力パターン例を示している。主基板52は各入賞を検出すると、それぞれ対応した賞球数を指示する賞球コマンドを生成し、これを2バイトで構成するとともに1バイトずつ時間間隔をおいて送信する。伝送データは、例えばその1バイト分で賞球数を1〜16個まで指定することができ、さらに1バイト目と2バイト目とでは相互に論理値が反転されている(2バイト目の論理値=NOT〔1バイト目の論理値〕)。
また主基板52は、これら伝送データの出力タイミングにそれぞれ被さるようにしてライト信号を2回出力するとともに、さらに2バイト目の伝送データに被せてセレクト信号を出力する。
給電ユニット8の制御部44は、上記の出力パターンで賞球信号を正常に受信すると(ステップS12=Yes)、これを受けてACK信号を主基板52に送信する(ステップS13)。一方、主基板52はACK信号を受け取ると(ステップS22=Yes)、その他に賞球があるか否かを判断し(ステップS23)、未だ賞球がある場合(Yes)はステップS21に戻って賞球信号を出力し、逆にそれ以上の賞球がなければ(No)、この処理を終了する。
また、給電ユニット8の制御部44はACK信号を送信すると、次に主基板52からセルフチェック信号を受信したか否かを判断する(ステップS14)。この時点でセルフチェック信号を受信していなければ(ステップS14=No)、制御部44は伝送データによって指示された賞球数を表示部14にて数値表示する(ステップS15)。このとき表示部14には、各入賞口に対応する賞球数が合算して表示される。したがって、例えば検査において盤面の全ての入賞口(一般入賞口、始動入賞口、大入賞口)に1個ずつ遊技球を投入すると、最終的に表示部14に表示される数値は全ての入賞口に1回ずつ入賞があった場合の合計賞球数となる。
なお、実際の検査においてどの入賞口に何個ずつ遊技球を投入するかは生産主体が自己の判断で決めることができる。また、検査の途中で作業者がリセットスイッチ22を操作(1回押し)すると、それまでに表示部14にて加算表示されていた数値をリセットすることができる。この場合、あらためて遊技球を投入することで最初から賞球検査をやり直すことができる。いずれにしても、最終的に合算された賞球数が正しく数値表示されていることを確認できれば、その遊技盤1は賞球検査を通過することができる。
以上の処理は正常に通信が行われた場合についてのものであるが、何らかの通信異常があった場合は以下の処理が行われる。
先ず主基板52の賞球信号に何らかの異常があると、給電ユニット8では正常に信号を受信できなかったと判断される(ステップS12=No)。この場合、制御部44は表示部14の7セグメントLED14aにて通信異常を表すエラーコード(例えば「E61」)を表示するとともに、その右上と右下の位置にある単体LED14bを点灯させる(ステップS16)。またこの場合、制御部44はACK信号を送信することなく検査処理を終了する。
これに対し、主基板52の賞球信号には異常がなく(ステップS12=Yes)、それゆえ給電ユニット8から主基板52にACK信号が送信された場合(ステップS13)であっても、主基板52がこれを正常に受信できなければ(ステップS22=No)、主基板52はステップS21に戻ってセルフチェック信号を送信する。このセルフチェック信号を給電ユニット8が受け取ると(ステップS14=Yes)、制御部44は通信異常があったものと判断して同じく上記の異常表示を行う(ステップS16)。
通信異常表示が確認されると、その遊技盤1について再度の検査を試みるか、あるいは給電ユニット8を別のものに取り替えて再検査を行うこともできる。それでも引き続いて通信異常表示が確認された場合、その遊技盤1は検査を通過できなかったものとして生産ラインからはねられ、不良箇所の修理にまわされる。
さらに検査区間においては、給電ユニット8から供給される電力を利用して遊技盤1の盤面検査を行うことができる。例えば、液晶表示器、装飾ランプ、可動体等が正常に動作するか否かを作業者の目視によって確認することで動作部の検査を行うことができる。さらに液晶表示器については、始動口に遊技球を投入したときに特別図柄の変動・停止が表示されるか否かを確認したり、あるいはゲート口に遊技球を通過させて普通図柄の変動・停止が表示されるか否かを確認したりすることで、液晶表示器そのものの検査が可能であるほか、演出制御基板54から送信される演出制御信号の検査をも実施することができる。
さらに演出制御基板54から送信される演出制御信号については、給電ユニット8に付属する各種の演出動作部、つまり高音用スピーカ16、低音用スピーカ代用LED18、枠ランプ代用LED20の動作をそれぞれ確認することで検査が可能である。具体的には、図柄の変動・停止や入賞等に合わせて高音用スピーカ16から規定の音が出力されているか否か、また低音用スピーカ代用LED18が明滅しているか否か、さらに枠ランプ代用LED20が点灯・点滅しているか否かをそれぞれ作業者が試聴・目視によって確認することができる。このように、音については両方の音域(高音と低音)を実際の音で確認するのではなく、一方を光によって確認する態様であれば、瞬時に音域の判別がつくため検査の効率や精度が高まる。
このほかにも給電ユニット8を用いた検査においては、遊技盤1への給電状態の良否を確認することができる。これについては大きく分けて2通りの検査項目が用意されており、その1つは給電ユニット8のセルフチェック項目であり、もう1つは給電中の動作チェック項目である。これらチェック項目の表示内容とそのときの表示部14による表示態様、備考等は、例えば図11に一覧表にして示されている。
図11中、表示部14の4つの単体LED14aについては便宜上、その左上に位置するものをランプ(A)、左下に位置するものをランプ(B)と呼称し、同様に右上・右下にそれぞれ位置するものをランプ(C),(D)と呼称して区別している。また、ランプ(A)〜(C)の点灯はそれぞれに異なった意味が与えられており、例えばランプ(A)の点灯は、既に述べたようにAC24Vの正常な給電状態を意味する。またランプ(C)単体での点灯は電流エラーを意味し、ランプ(D)単体での点灯は電圧エラーを意味する。さらにランプ(C),(D)の同時点灯は、上記以外のエラーを意味する。
具体的なエラー項目は図11中にNo.1〜No.22まで挙げられている。例えば最初の欄(No.1)に示されているように、給電ユニット8から遊技盤1へ給電を開始してもその電源が切れた(OFF)ままであると、表示部14ではランプ(C),(D)が同時点灯されるとともに、7セグメントLED14aによりエラーコード「E00」が表示される。この場合、その備考に示されているように、エラー原因としては24V電源と34V電源とのショートが考えられる。
同様に、エラー項目のNo.2〜No.11までがセルフチェック項目であり、これらは給電ユニット8自身のエラーを表している。既に述べたように、給電ユニット8が自己診断プログラムを実行した結果、何らかのエラーを確認するとその結果がエラーコードにより表示される。また、エラー項目のNo.12〜No.22までが動作チェック項目であり、これらは給電ユニット8からの給電中に遊技盤1との関係において発生したエラーを表している。例えば、図7中の時刻t2で給電を開始したにもかかわらず所定の電流が流れなかった場合は遊技盤1の断線や接続不良等が疑われるので、表示部14にはエラーコード「E10」が表示されるとともにランプ(C),(D)が点灯する。逆に、過電流が流れた場合は遊技盤1でのショートが疑われるため、この場合は表示部14にエラーコード「E41」または「E42」が表示されるとともにランプ(C)が点灯する。その他にも電圧異常や賞球数異常等のエラー項目があり、それぞれに対応するエラーコードが割り当てられている。なお、個々のエラーについての詳細は図11の各欄に記載したとおりである。
いずれにしても、検査の途中で何らかのエラーが生じると給電ユニット8から遊技盤1への給電が停止される。この場合、作業者は表示部14による表示を確認した上でそのエラー原因を取り除き、リセットスイッチ22を操作することでエラー表示をクリアするとともに、はじめから検査をやり直すことができる。
その他にも、リセットスイッチ22の使用例として次のものが挙げられる。例えば、リセットスイッチ22を押したまま給電ユニット8を通電状態にすると(停電区間から検査区間への移行)、表示部14にて検査用ソフトウェアのバージョンが表示される。なお、給電ユニット8の検査用ソフトウェアは適宜書き換え、バージョンアップ等が可能となっている。
また、配線束32を遊技盤1に接続するときに給電用のコネクタ50aを挿し損ねた場合、正しくその挿し直しを行ってからリセットスイッチ22を操作(1回押し)することで、エラー表示をクリアして賞球検査を開始することができる。あるいは、このときリセットスイッチ22を長押し(例えば1秒程度以上)操作することで、エラー表示をクリアするとともに、コネクタ50aの接続確認をやり直すこともできる。
このように、本実施形態の生産設備を用いた検査においては、遊技盤1を枠体に装着することなくそれ単体で通電状態の良否や賞球信号等の通信状態の良否を検査することができる。このため、遊技盤1を単体で出荷する場合であっても、いちいちこれを枠体に装着して検査を行う手間が必要なくなり、工数削減や生産コスト低減に大きく寄与する。
図1に示される生産設備のレイアウトを採用するのであれば、最初に遊技盤1が検査区間に移送されてきた段階で給電ユニット8のセルフチェックや給電状態の検査を行い、次にターンテーブル4上で遊技盤1を反転させた後に盤面検査や賞球検査、動作部の検査等を流れ作業で行う態様が最も好ましい。
ただし、上記の作業態様はあくまで一例であり、生産主体が有する生産ラインのレイアウトや作業者の配置に応じて最適な作業態様は変化する。したがって、上述した一実施形態は最良のものではあるが唯一のものではない。
また、給電ユニット8の具体的な仕様は一実施形態のものに制約されない。すなわち、給電ユニット8の形態や各種構成要素の配置等はいずれも変更が可能であり、個々の生産者が最適と考える形態を設計して使用することができる。
さらに、一実施形態では給電ユニット8を循環させる手段として昇降機56,62およびプッシャ60,64を用いているが、例えばサーキット状に閉じたトロリーレールを設置することで、給電ユニット8が同一平面内を周回するように構成してもよい。あるいは、一実施形態のトロリーレール6またはリターンレール58において、給電ユニット8は自走しながら移動するタイプのものであってもよいし、別の移送手段から動力を受けて移動するタイプのものであってもよい。