JP2010076085A - ワイヤソー装置およびこれを用いた切断方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ワイヤが長寿命であり、且つ加工精度が高く、信頼性の高いワイヤソー装置を提供すること。
【解決手段】 ワイヤソー装置1は、1本のワイヤ2を巻きつける3個の多溝ローラー3a、3b、3cを有し、各多溝ローラーに、例えば約120ミクロンの直径を有するワイヤ2を巻き付けるワイヤ列を構成し、このワイヤ列のワイヤ2をワイヤ駆動モータ4により駆動されるドライブ側多溝ローラー3aの駆動により往復運動させるようになっている。またワイヤ2を巻き取り、送り出すボビン5a、5bを持っている。被切断物9と多溝ローラー3b、3cの間のワイヤ2に摺動板18である炭素繊維複合材料を接合した超音波振動子13を接触させる。炭素繊維複合材料の繊維方向はワイヤの走行方向と一致させている。そして超音波振動子13の振動方向は切断方向と一致させる。
【選択図】図3
【解決手段】 ワイヤソー装置1は、1本のワイヤ2を巻きつける3個の多溝ローラー3a、3b、3cを有し、各多溝ローラーに、例えば約120ミクロンの直径を有するワイヤ2を巻き付けるワイヤ列を構成し、このワイヤ列のワイヤ2をワイヤ駆動モータ4により駆動されるドライブ側多溝ローラー3aの駆動により往復運動させるようになっている。またワイヤ2を巻き取り、送り出すボビン5a、5bを持っている。被切断物9と多溝ローラー3b、3cの間のワイヤ2に摺動板18である炭素繊維複合材料を接合した超音波振動子13を接触させる。炭素繊維複合材料の繊維方向はワイヤの走行方向と一致させている。そして超音波振動子13の振動方向は切断方向と一致させる。
【選択図】図3
Description
本発明は、例えば、磁性材料等の脆性材料をワイヤにより切断するワイヤソー装置およびこれを用いた切断方法に関する。
一般にワイヤソー装置は、複数の加工用ローラーが所定間隔をおいて配設され、それらのローラーの外周に複数の環状溝が所定ピッチで形成されており、それらの環状溝間には1本のワイヤが順に巻回されている。そして、加工用ローラーの回転にともなって、ワイヤを走行させながら、そのワイヤ上に遊離砥粒を含むスラリを供給し、この状態でワイヤに対し被切断物を押し付け接触させて、被切断物を切断するように構成されている。
このように構成されるワイヤソー装置においては、切断能力を向上させるために各種の提案がなされている。例えば、特許文献1においては、外周に凹凸部を有した補助ローラーを被切断物近傍のワイヤに接触するように設け、このローラーの回転によりワイヤに対して直接上下に振動を付与するようにしている。
特開平8−99262号公報
しかしながら、上に述べたワイヤソー装置においては、ワイヤと補助ローラーが接触することにより、補助ローラーの外周に凹凸部が平坦化するためワイヤの振動は小さくなってしまう。このため、補助ローラーの頻繁な交換が必要である。また、被切断物を効率よく切断するために、15KHz以上の振動数でかつ振幅を3μm以上の振動をワイヤの付与することが好ましいが、補助ローラに所望の振動数と振幅を発生させる凹凸部を設ける構成では難しい。
そこで特許文献2のワイヤソー装置が提案された。このワイヤソー装置は、一対の磁界発生器を被切断物の加工域におけるワイヤ進行方向両側に設ける。そして、磁界発生器に対して、所定の駆動出力を供給し、磁界発生器を動作させて、ワイヤを間欠的に吸引し、ワイヤに対して上下振動を付与する。
特開2001−62700号公報
この発明によれば、ワイヤ列に近接し、微少間隔を介してワイヤに振動を付与する振動手段が設けられるため、ワイヤの振動により、ワイヤと被切断物との間に十分な量のスラリを供給することができ、効率的な切断加工を行うことができるとされている。しかも、ワイヤに振動を付与する振動付与手段がワイヤと接触しないため、その振動付与手段がワイヤによって切断されたり、磨耗されたりすることがなく、耐久性を向上させることができるとされている。
上記の特許文献2に記載のワイヤソー装置においては、ワイヤと非接触で交流電源から磁界発生器によりワイヤに交番する振動力を印加するものであるが、非接触であるためワイヤの振幅量を調整することは困難である。
また、磁界発生を発生させるための交流電源は、15KHz以上の超音波領域では、効率が低く熱を発生させるのでワイヤの温度を上昇させる虞がある。ワイヤの温度上昇は加工精度の悪化そしてワイヤの寿命を短くすることの原因にもなる。
さらに、ワイヤが磁界発生装置により磁化されてしまい、被切断物が磁性体である場合、ワイヤに磁性体の粉末が付着する。このワイヤに付着した磁性体粉末により被切断物を加工する時の加工負荷が大きくなる虞がある。また同時に加工精度も悪化する虞がある。
本発明の目的は、加工精度が高く、かつ切断速度を向上させることができるワイヤソー装置およびこれを用いた切断方法を提供することである。
本発明は、遊離砥粒を含むスラリを供給された走行するワイヤ、または砥粒を固定した走行するワイヤに対し被切断物を押し付け接触させて被切断物を切断するワイヤソー装置においてワイヤに、超音波振動子を接合した非磁性体を接触させ、前記超音波振動子に交流電圧を印加するものである。
前記非磁性体がプラスチックであり、かつプラスチックを繊維複合材料とするものである。
前記ワイヤソー装置において、非磁性体を接合した超音波振動子に貫通する孔を設け、その孔の中に冷却液を通すものである。
前記ワイヤソー装置において、超音波振動子に接合された非磁性体の表面に、その対向する位置から冷却液を与えるものとすることである。
本発明のワイヤソー装置を用いた切断加工により、高精度かつ高速加工が可能となり、さらにワイヤが長寿命となる。
以下、本発明に関わるワイヤソー装置の実施の形態について図1の斜視図を用いて説明する。ワイヤソー装置1は、1本のワイヤ2を巻きつける3個の多溝ローラー3a、3b、3cを有し、各多溝ローラーに、例えば約120ミクロンの直径を有するワイヤ2を巻き付けるワイヤ列を構成し、このワイヤ列のワイヤ2をワイヤ駆動モータ4により駆動されるドライブ側多溝ローラー3aの駆動により往復運動させるようになっている。またワイヤ2を巻き取り、送り出すボビン5a、5bを持っている。多溝ローラー3a、3b、3cの表面に設けられた複数の溝は図面の都合上省略した。また、ワイヤに超音波振動を印加する手段も図面が複雑になるため省略した。
次にワイヤ2に超音波振動を印加する手段を図2の平面図と図3の側面図を用いて説明する。被切断物9と多溝ローラー3b、3cの間のワイヤ2に摺動板18である炭素繊維複合材料を接合した超音波振動子13を接触させる。炭素繊維複合材料の繊維方向はワイヤの走行方向と一致させている。そして超音波振動子13の振動方向は切断方向と一致させる。
ここに用いた超音波振動子13の詳細を図4の平面図、そして図4のA−A線での断面を示す図5を用いて説明する。超音波振動子13はランジュバン型超音波振動子と呼ばれているもので、チタン合金製のフロントマス14と同じくチタン合金製のメネジを持ったリアマス15の間に圧電セラミック16a、16bと燐青銅製の電極板12a、12bを、フロントマス14と一体で製作したボルト17により締め付け一体化したものである。ボルト17とフロントマス14の中心部には貫通した孔19が設けられている。そして燐青銅製の電極板12a、12bはリード線で電気的に結ばれている。リード線の他方は超音波発振器に接続されている。
炭素繊維複合材料はエポキシ樹脂を炭素繊維で補強したものである。繊維複合材料は強化される側(プラスチック)の母材あるいはマトリックスと、ガラス繊維やカーボン繊維などの強化材とからなる。マトリックスの例として、エポキシ樹脂、ナイロン、ポリエチレン、フッ素樹脂そしてポリイミド樹脂などがある。また、強化材の例として、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維そして炭化珪素繊維などがある。
超音波振動子を接合した摺動板18である炭素繊維複合材料をワイヤ2接触させる。接触を確保するために超音波振動子13の自重を用いる構成とした。また超音波振動子13と摺動板18である炭素繊維複合材料の中心部に貫通した孔19を設け、その孔19の中に水を流す。炭素繊維複合材料を接合した超音波振動子13の振動は、水に伝播し、さらにワイヤ2に伝播する。ワイヤ2と炭素繊維複合材料は薄い膜の水を介して接触しているが、水が存在するため、摩擦による熱は冷却され、かつ超音波振動により摩擦力は小さくなるためワイヤ2の磨耗、切断の虞はほとんどない。
そして、超音波振動子13の振動がほぼそのままワイヤ2に伝播するので、超音波振動子13の振幅量を調整することでワイヤ2の振動振幅を調整することができる。このため、不要に大きい振動をワイヤ2に与えることはない。
また、ワイヤ列に対向する上方には、送りモータ6を有し被切断物9を送るフィードユニット7が設けられており、このフィードユニット7のカーボンベース8に接着された被切断物9、例えばネオジ鉄インゴットをワイヤ列に押し付けて研磨切断するようになっている。
多溝ローラー3b、3cと被切断物9の間のワイヤ列にスラリ11を供給するスラリポンプを有するスラリ供給装置10が設けられている。
次に本発明のワイヤソー装置1を用いたネオジ鉄インゴットの切断方法について説明する。
最初に、図1に示すように、被切断物9であるネオジ鉄インゴットをカーボンベース8に接着する。ワイヤ駆動モータ4を回転させて、ワイヤ列を高速で動かし、そして図2、図3に示す炭素繊維複合材料を接合したランジュバン型超音波振動子13の圧電セラミック16a、16bに超音波発振器よりの超音波交流電圧を印加する。そしてほぼ同時ランジュバン型超音波振動子13の貫通する孔19に水をポンプにより供給する。もし、1台の超音波発振器も用いて多数のランジュバン型超音波振動子を駆動したい場合は、ランジュバン型超音波振動子のそれぞれの固有振動数が異なるため、固有振動数の最小、最大値を含むスイープ周波数の電圧を印加するとよい。
さらに、ワイヤ列にスラリ供給装置10を作動させスラリ11を供給し、送りモータ6を回転させてネオジ鉄インゴットをワイヤ列に接触させ、切断を開始し、切断を継続する。
ワイヤ2と接触する炭素繊維複合材料の表面には常に水が供給されているため、水が潤滑および冷却の役割をするのでワイヤ2に損傷を与えることはほとんどない。
ワイヤ2の超音波振動により、ワイヤ2と被切断物との摩擦が減少することにより、ワイヤ2の消耗は少なくなり、かつワイヤ2の切断の恐れも小さくなる。さらに、ワイヤ2と被切断物9との摩擦熱が小さくなるため、加工精度も向上する。したがって、従来よりもワイヤの走行速度を向上させることができるので、加工効率が向上する。
また、ワイヤ2の超音波振動により、ワイヤ2と被切断物9との間にスラリ11が十分供給されるので、切断速度が向上する。さらに、被切断物9の切断粉及びワイヤ2の消耗粉などが速やかに排除されるため加工精度は向上し、切断速度も向上する。
なお超音波切削加工は、例えば、非特許文献1に詳しく記載されている。超音波切削加工は、加工対象物と工具との摩擦抵抗が、小さくなるため、加工面の熱歪みが低減され、加工精度が高くなり、そして、切削工具の寿命が長くなるなどの利点を有している。そして、加工速度が倍以上になることも非特許文献2に詳しく記載されている。
超音波便覧編集委員会、「超音波便覧」、丸善株式会社、平成11年8月、p679−684 日本電子機械工業会、「超音波工学」、株式会社コロナ社、1993年、p218−229
超音波便覧編集委員会、「超音波便覧」、丸善株式会社、平成11年8月、p679−684 日本電子機械工業会、「超音波工学」、株式会社コロナ社、1993年、p218−229
さらにワイヤ2と接触する炭素繊維複合材料の表面には常に水が供給され、かつ超音波振動が水に付加されるため、ワイヤを超音波洗浄する効果も生じる。このため、ランジュバン型超音波振動子13の位置において被切断物9の切断粉及びワイヤ2の消耗粉などが速やかに排除される。このことにより加工精度は向上し、切断速度も向上する。
また、ワイヤ2は磁化されないので、被切断物9の切断粉及びワイヤ2の消耗粉は、どこにも付着しない。このことによっても加工精度は向上し、切断速度も向上する。
さらにワイヤ2を非磁性体で構成すれば、ワイヤ2は全く磁力により付着しなくなるので一段と加工精度は向上し、切断速度も向上する。
図6の側面図にワイヤ2と接触する摺動板18である炭素繊維複合材料の表面に水を供給する別の方法を説明する。炭素繊維複合材料の表面と対向する方向からノズル20から水21を供給する。この水21により炭素繊維複合材料の表面は水で覆われ、超音波振動が水に付加されるため、ワイヤを超音波洗浄する効果も生じる。このため、ランジュバン型超音波振動子13の位置において被切断物9の切断粉及びワイヤ2の消耗粉などが速やかに排除される。このことにより加工精度は向上し、切断速度も向上する。また、この構成は、摺動板18および超音波振動子13に孔を設ける必要が無いため、構成が簡単になる利点がある。
上記のように、ワイヤに超音波振動を付与することによりワイヤが長寿命であり、加工精度の高い、信頼性の高いワイヤソー装置を提供できる。
ワイヤと接触する材料として、炭素繊維複合材料を用いたが、ポリウレタン、ポリエチレン、アクリルなどのプラスチックでもよい。
高強度の芯線の周面上に超砥粒をボンド層(固着層)より固定した固定砥粒ワイヤにも本発明は利用できることはもちろんである。
本発明のワイヤソー装置は、磁性材料等の脆性材料を切断することに用いることができる。
1 ワイヤソー装置
2 ワイヤ
3 多溝ローラー
4 ワイヤ駆動モータ
5 ボビン
6 送りモータ
7 フィードユニット
8 カーボンベース
9 被切断物
10 スラリ供給装置
11 スラリ
12 電極板
13 超音波振動子
14 フロントマス
15 リアマス
16 圧電セラミック
17 ボルト
18 摺動板
19 孔
20 ノズル
21 水
2 ワイヤ
3 多溝ローラー
4 ワイヤ駆動モータ
5 ボビン
6 送りモータ
7 フィードユニット
8 カーボンベース
9 被切断物
10 スラリ供給装置
11 スラリ
12 電極板
13 超音波振動子
14 フロントマス
15 リアマス
16 圧電セラミック
17 ボルト
18 摺動板
19 孔
20 ノズル
21 水
Claims (5)
- 遊離砥粒を含むスラリを供給された走行するワイヤまたは、砥粒を固定した走行するワイヤに対し被切断物を押し付け接触させて、被切断物を切断するワイヤソー装置において、ワイヤに超音波振動子を接合した非磁性体を接触させ、前記超音波振動子に交流電圧を印加することを特徴とする。
- 前記非磁性体が、プラスチックであることを特徴とする請求項1に記載のワイヤソー装置。
- 前記プラスチックが繊維複合材料であることを特徴とする請求項2に記載のワイヤソー装置。
- 非磁性体を接合した超音波振動子に貫通する孔を設け、その孔の中に冷却液を通すことを特徴とする請求項1〜3に記載のワイヤソー装置。
- 超音波振動子に接合された非磁性体の表面に、その対向する位置から冷却液を与えることを特徴とする請求項1〜3に記載のワイヤソー装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008272497A JP2010076085A (ja) | 2008-09-24 | 2008-09-24 | ワイヤソー装置およびこれを用いた切断方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008272497A JP2010076085A (ja) | 2008-09-24 | 2008-09-24 | ワイヤソー装置およびこれを用いた切断方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2010076085A true JP2010076085A (ja) | 2010-04-08 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2008272497A Withdrawn JP2010076085A (ja) | 2008-09-24 | 2008-09-24 | ワイヤソー装置およびこれを用いた切断方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012045682A (ja) * | 2010-08-27 | 2012-03-08 | Tokuriki Honten Co Ltd | 固定砥粒ワイヤーソー装置 |
JP7070311B2 (ja) | 2018-10-10 | 2022-05-18 | 株式会社デンソー | 切断装置 |
-
2008
- 2008-09-24 JP JP2008272497A patent/JP2010076085A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2012045682A (ja) * | 2010-08-27 | 2012-03-08 | Tokuriki Honten Co Ltd | 固定砥粒ワイヤーソー装置 |
JP7070311B2 (ja) | 2018-10-10 | 2022-05-18 | 株式会社デンソー | 切断装置 |
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Legal Events
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A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
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