JP2010071901A - 位置検出装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リニアモータにおいて、一対の固定子の間に可動子が相対移動可能に配設されるとともに、可動子の両側に、それぞれセンサA,B,センサC,Dが設けられる。固定子の一方には、磁石18がセンサA,Bとの間の距離が正弦波状に変化するように設けられ、他方の固定子には、磁石19がセンサC,Dとの間の距離が余弦波状に変化する状態で設けられる。センサA,Bの出力信号から求めた振幅とセンサC,Dの出力信号から求めた振幅との組は絶対位置に1対1に対応するため、これら振幅に基づけば絶対位置を検出することができる。このように、リニアモータに設けられた磁石を利用して絶対位置が検出されるため、別個に磁石等を設ける必要がなく、コストダウンを図ることができる。
【選択図】図5
Description
固定子において、複数の磁石の各々は、軸方向の長さ(両端がN極、S極とされた)が互いに異なるものとされ、軸方向において、長さが単調に増加あるいは減少する状態で、直列に並べて配設される。また、可動子には、軸方向に隔てて複数の磁界検出部が設けられる。
可動子が固定子に対して相対移動させられると、複数の磁界検出部の出力信号は、それぞれ、磁界検出部が対向する磁石の磁極に応じて変化するが、その出力信号の波長は磁極間の距離(以下、磁極間ピッチと称する)に応じて変化するのであり、相対移動に伴って波長が単調に増加あるいは減少する。したがって、複数の磁界検出部の出力信号に基づけば、軸方向における可動子の固定子に対する相対位置である絶対位置を検出することができる。
特許文献2には、(a)それぞれ、複数の磁石を備えた長手形状の一対の固定部材と、(b)それら一対の固定部材の間に、固定部材の長手方向に相対移動可能に配設され、固定部材に対向する一対の磁界検出部を備えた可動部材とを備え、それら磁界検出部の出力信号に基づいて、可動部材の固定部材に対する相対位置である絶対位置を検出する絶対位置検出装置が記載されている。一対の固定部材の各々において、複数の磁石は、一対の固定部材の間を可動部材が相対移動させられた場合に、一方の固定部材に対向する磁界検出部の出力信号の周波数と他方の固定部材に対向する磁界検出部の出力信号の周波数とが1異なる状態で配設される。例えば、一方の固定部材に、軸方向の両端部にN極、S極が生じる磁石が全ストロークに対してN個配設される場合には、他方の固定部材には、N±1個配設される。また、一方の固定部材に、可動部材との対向面がN極の磁石とS極の磁石とが交互に、合計2N個配設される場合には、他方の固定部材には、合計(2N±2)個配設されることになる。一方、可動部材には、一対の固定部材の各々に対向して、それぞれ、軸方向に1/4位相ずれた位置に2つずつの磁界検出部が設けられる。可動部材が相対移動させられると、一方の固定部材に対向する2つの磁界検出部のうちの一方がsin(mθ)の信号を出力し、他方がcos(mθ)の信号を出力し、他方の固定部材に対向する2つの磁界検出部が、sin{(m±1)θ}、cos{(m±1)θ}の信号を出力する。それらの4つの出力信号が合成されて、そのtanθの信号が得られ、tanθの信号等に基づいて絶対位置が検出される。
請求項1に記載の位置検出装置は、(i)複数の磁石を有し、軸方向に延びる長手部材と、(ii)1つ以上の磁界検出部を有し、前記長手部材と前記軸方向に相対移動可能な検出部材とを備え、前記1つ以上の磁界検出部の出力信号に基づいて、前記検出部材の前記長手部材に対する前記軸方向の相対位置を検出する位置検出装置であって、前記複数の磁石の各々が、前記軸方向の長さが互いに同じものであり、前記軸方向に沿って等間隔で、かつ、前記長手部材と前記検出部材とを前記相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴って前記1つ以上の磁界検出部の出力信号の合成信号が、前記相対位置と1対1に対応して変化する状態で配設されたものとされる。
この位置検出装置においては、リニア駆動装置によって固定子と可動子とが相対移動させられる場合に、その固定子と可動子との相対位置が絶対位置で検出される。ここにおいて、絶対位置とは、前回の停止位置からの距離で規定される相対的な位置ではなく、予め定められた基準位置からの距離で規定される絶対的な位置である。
リニア駆動装置の駆動源は、リニアモータであっても、回転モータであってもよい。リニア駆動装置は、回転モータと運動変換機構とを含むものとすることもできる。
本位置検出装置において、長手部材に、複数の磁石が設けられるが、複数の磁石は、軸方向の長さが互いに同じものであり、軸方向に沿って等間隔で、かつ、検出部材と長手部材とを軸方向に相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴って、1つ以上の磁界検出部の出力信号の合成信号が、相対位置(以下、絶対位置と称する)と1対1に対応して変化する状態で配設される。そのため、1つ以上の磁界検出部の出力信号の合成信号に基づけば、検出部材の長手部材に対する絶対位置を検出することができる。複数の磁石の配設の態様については後述する。
なお、磁界検出部が複数ある場合には、それらの出力信号を合成することが可能であるが、磁界検出部が1つの場合は、実際に出力信号を合成することはできない。しかし、本発明においては、1つの出力信号は、同じ複数の出力信号を合成した特殊な合成信号であると考えることとする。合成信号には、(a)磁極の変化に従って正弦波的に変化しつつ、絶対位置の変化に応じて振幅が変化する位相が異なる2つの出力信号を処理して得られる振幅を表す信号、(b)さらに、2つ以上の振幅を表す信号のベクトル和の信号(2つ以上の振幅を表す信号のリサジュ曲線を表す信号)、(c)磁極の変化に従って周期的に変化しつつ、絶対位置の変化に応じてそれぞれ別個に波長が変化する2つの出力信号を処理して得られる位相差を表す信号、(d)さらに、2つ以上の位相差を表す信号のベクトル和の信号等が該当する。
「複数の磁石が、互いに軸方向の長さが同じであり、軸方向に等間隔で配設される」とは、長手部材が1つである場合には、その長手部材において、軸方向の長さが同じ磁石が、等間隔で配設されることをいい、長手部材が2つ(一対)設けられる場合には、両方の長手部材において、すべての磁石各々の軸方向の長さが同じで、隣接する磁石間の間隔がすべて同じ状態で配設されることをいう。
「複数の磁石が、1つ以上の磁界検出部の出力信号の合成信号が、検出部材の長手部材に対する相対位置と1対1に対応して変化する状態で配設される場合」には、(a)磁界検出部が2つ以上である場合に、磁界検出部の各々と磁石の各々との相対位置関係の組み合わせが、絶対位置と1対1に対応する状態で配設される場合、(b)検出部材に設けられる磁界検出部が1つである場合に、その1つの磁界検出部と磁石との相対位置関係が、絶対位置と1対1に対応する状態で配設される場合等が該当する。磁界検出部の各々と磁石の各々との相対位置関係の組み合わせが絶対位置と1対1に対応する場合には、2つ以上の磁界検出部の出力信号の合成信号が、絶対位置と1対1に対応することになる。なお、検出部材には、2つ以上の磁界検出部が設けられるのが普通である。
「磁界検出部」は、磁界の向きおよび磁界の大きさ(強さ)を検出するものである。
特許文献1に記載の位置検出装置においては、長手部材に設けられた複数の磁石の各々の軸方向の長さが互いに異なる。特許文献2に記載の位置検出装置においては、一方の固定部材における場合と他方の固定部材における場合とで、複数の磁石の軸方向の長さが異なるか、磁石間の間隔が異なるかのいずれかである。それに対して、本願請求項1に記載の位置検出装置においては、長手部材の各々において、軸方向の長さが同じである複数の磁石が等間隔で配設される。このように、軸方向の長さが互いに同じ複数の磁石を等間隔で配設すれば、軸方向の長さが異なる磁石を配設したり、異なる間隔で配設したりする場合に比較して、位置検出装置のコストダウンを図ることができる。
明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載,従来技術等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
前記複数の磁石の各々が、前記軸方向の長さが互いに同じものであり、前記軸方向に沿って等間隔で、かつ、前記長手部材と前記検出部材とを前記相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴って前記1つ以上の磁界検出部の出力信号の合成信号が、前記相対位置と1対1に対応して変化する状態で配設されたことを特徴とする位置検出装置(請求項1)。
位置検出装置は、リニア駆動装置に設けても、リニア駆動装置とは別個に設けてもよい。すなわち、(a)位置検出装置の長手部材、検出部材の一方をリニア駆動装置の固定子、可動子の一方とし、長手部材、検出部材の他方を固定子、可動子の他方としたり、(b)位置検出装置の長手部材、検出部材の一方を、リニア駆動装置の固定子、可動子とし、長手部材、検出部材の他方を、固定子、可動子とは別個に設けた部材としたり、(c)位置検出装置の長手部材、検出部材のいずれも、リニア駆動装置の固定子、可動子とは別個の部材としたりすること等ができる。
(2)前記長手部材と前記検出部材とを前記相対移動させたと仮定した場合に、前記1つ以上の磁界検出部の出力信号の各々が、磁極の変化に起因して周期的に変化しつつ、前記1つ以上の磁界検出部の各々と磁石の各々との間の軸方向と平行な方向と、直交する方向との少なくとも一方における相対位置関係の変化に基づいて変化する状態で、前記複数の磁石が配設された(1)項に記載の位置検出装置。
(3)前記出力信号が、(a)前記磁極の変化に起因して周期的に変化する短周期成分と、(b)前記相対位置関係の変化に起因して変化する長周期成分とを含み、当該位置検出装置が、(i)前記出力信号の前記長周期成分に基づいて第1の絶対位置を検出する粗絶対位置検出部と、(ii)その粗絶対位置検出部によって検出された前記第1の絶対位置と、前記出力信号の前記短周期成分とに基づいて第2の絶対位置を検出する細絶対位置検出部とを含む(2)項に記載の位置検出装置。
磁界検出部の出力信号は、磁極(その磁界検出部によって磁界が検出される磁石の磁極をいう。以下、同様とする)の変化に基づく短周期成分(振動成分)と、磁石(その磁界検出部によって磁界が検出される磁石をいう。以下、同様とする)との相対位置関係の変化に基づく長周期成分(位置変化成分)とを含んで変化する。
長周期成分に基づけば、第1の絶対位置(以下、「およその絶対位置」と称する)を検出できる。「およその絶対位置」を、大きな誤差(例えば、最大で磁極間ピッチの1/2弱の誤差)を含む絶対位置として使用することも、「詳細な位置」を検出するための一要素として使用することも可能である。磁界検出部との間の相対位置関係が、1磁極間ピッチ内において同じとされ、磁極間ピッチが「およその絶対位置」の最小単位とされてもよい。この場合には、最大で磁極間ピッチの誤差を含む可能性があることとなる。
「およその絶対位置」と短周期成分とに基づけば、「詳細な絶対位置」を検出することができる。「詳細な絶対位置」とは、「およその絶対位置」と、長周期成分で決まる磁石で規定される磁極間ピッチ内の位置とで決まる絶対位置である。例えば、「およその絶対位置」から、長周期成分に対応する磁石が決まるが、その磁石の絶対位置は既知である。具体的には、その長周期成分で決まる磁石で規定される磁極間ピッチの始点{例えば、(a)N極の中心点、(b)N極、S極との間の中央点、(c)磁界検出部による出力信号が極大値、あるいは、極小値、あるいは、0となる点}の絶対位置は既知である(この始点の絶対位置が「およその絶対位置」である場合もある)。そして、短周期成分に基づけば、その磁極間ピッチ内の始点からの距離が決まる。したがって、「およその絶対位置」で決まる磁石の磁極間ピッチの始点の絶対位置と、短周期成分に基づいて検出されるその始点からの距離とに基づけば、「詳細な絶対位置」を検出することができる。
以下、「およその絶対位置」を検出するための複数の磁石の配設の態様について説明する。なお、「相対位置関係が絶対位置と1対1で決まる」、「合成信号が絶対位置と1対1に対応して変化する」とは、絶対位置の所望の最小単位に関して1対1で決まることを意味する。
(4)前記複数の磁石が、前記長手部材と前記検出部材とを前記相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴って、前記1つ以上の磁界検出部との間の、前記軸方向と平行な方向と前記軸方向と直交する方向との少なくとも一方における相対位置関係が変化する状態で配設された(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の位置検出装置(請求項2)。
磁界検出部が1つである場合には、複数の磁石は、1つの磁界検出部と磁石との間の軸方向と直交する方向と、軸方向と平行な方向との少なくとも一方における相対位置関係が、絶対位置と1対1に対応する状態で配設される。
磁界検出部が2つ以上である場合には、複数の磁石は、2つ以上の磁界検出部の各々と磁石の各々との間の上述の相対位置関係の組合わせが、絶対位置と1対1に対応する状態で配設される。
(5)前記複数の磁石が、前記等間隔で配設された位置において、前記軸方向と直交する方向に隣接する磁石に対して相対的に移動させられた状態で配設された(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の位置検出装置。
移動には、回転も含まれ、軸方向と直交する方向への相対移動には、軸方向と直交する方向の直線相対移動、軸線回りの相対回転が含まれる。等間隔な状態は維持される。
(6)前記複数の磁石の各々の前記軸方向と直交する方向の位置が、前記長手部材と前記検出部材との前記相対位置で決まる状態で配設された(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の位置検出装置。
「軸方向と直交する方向の位置」には軸線回りの位相で決まる回転位置も含まれる。
長手部材が1つである場合には、複数の磁石の各々が、絶対位置と1対1で決まる状態で配設される。
長手部材が2つであり、磁界検出部が2つ以上である場合には、複数の磁石の絶対位置で決まる姿勢の組み合わせが、絶対位置と1対1で決まる状態で配設される。
(7)互いに前記軸方向と直交する向きに離間するとともに、前記軸方向と平行な第1直線および第2直線を前記長手部材に対して規定し、その長手部材と前記磁界検出部とを、それら第1直線、第2直線に沿って相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴う磁界検出部の出力信号の振幅と波長との少なくとも一方の変化が、前記第1直線に沿って相対移動させた場合と前記第2軸方向に沿って相対移動させた場合とで互いに異なる状態で、前記複数の磁石が配設された(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の位置検出装置(請求項3)。
第1直線、第2直線は、互いに軸方向に平行で、軸方向と直交する方向に互いに離間した直線である。また、平面視、あるいは、側面視において、長手部材と重なった直線であっても、重ならない直線であってもよい。
複数の磁石は、例えば、磁界検出部を第1直線に沿って相対移動させたと仮定した場合に、出力信号が、同じ振幅で変化するが、第2直線に沿って相対移動させたと仮定した場合に、振幅が変化する状態で配設され得る。この場合には、1つ以上の磁界検出部を、少なくとも、第2直線に沿って相対移動させた場合の出力信号の合成信号に基づいて絶対位置が検出される。
複数の磁石は、磁界検出部を第1直線に沿って相対移動させたと仮定した場合にも、第2直線に沿って相対移動させたと仮定した場合にも、出力信号の波長が変化するが、その波長の変化の態様が、互いに異なる状態で配設することができる。この場合には、(a)1つ以上の磁界検出部を、第1直線、第2直線のいずれか一方に沿って相対移動させた場合の出力信号の合成信号に基づいて絶対位置が検出される場合、(b)第1直線、第2直線に沿って相対移動させた場合の出力信号の合成信号に基づいて絶対位置が検出される場合、(c)第1直線、第2直線、第3直線、第4直線・・・等に沿って相対移動させた場合のそれぞれの出力信号の合成信号に基づいて絶対位置が検出される場合等がある。
波長とは、同じ状態が再現される点の間の距離をいい、周期とは、同じ状態が再現される間隔をいう。周期は、時間的な間隔をいう場合があるが、それに限らない。周期を、時間的な間隔でない意味に用いる場合には、波長と同じであると考えることができる。また、周期が時間的な間隔をいう場合には、全ストロークにおいて、長手部材と検出部材との相対移動速度が一定である場合には、波長が同じである場合には周期が同じになり、波長が変化すると、それに伴って周期も変化する。したがって、長手部材と検出部材との相対移動速度が一定である場合には、波長が同じ場合には周期が同じであるということができる。
(8)前記複数の磁石が、前記長手部材と前記検出部材とを前記相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴って、前記軸方向と直交する方向における前記磁界検出部との間の距離が変化する状態で配設された(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の位置検出装置(請求項4)。
磁界検出部と磁石との間の距離が大きい場合は小さい場合より、出力信号の振幅が小さくなる。そのため、1つ以上の磁界検出部の出力信号を処理して得られた振幅(合成信号の一態様である)、2つ以上の磁界検出部の出力信号の振幅の組合わせ(2つ以上の振幅を表す信号の合成信号)のいずれか一方に基づけば、検出部材の絶対位置を検出することができる。
複数の磁石が、1つ以上の磁界検出部の各々と磁石の各々との間の軸方向と直交する方向の距離の組み合わせが、絶対位置と1対1で決まる状態で配設された場合には、前記1つ以上の磁界検出部の出力信号の合成信号に基づいて「およその絶対位置」が検出される。
(9)前記複数の磁石が、前記長手部材と前記検出部材とを、前記軸方向に沿った一方向に相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴って、前記磁界検出部との間の距離が単調に増加または減少する状態で配設された(8)項に記載の位置検出装置(請求項5)。
複数の磁石のすべての一端面から離間した軸方向に平行な第3直線を想定した場合に、その第3直線と磁石の各々の一端面との間の距離が、絶対位置と1対1に対応する状態で、複数の磁石が配設される。
長手部材と検出部材とが相対移動させられた場合に、磁界検出部が第3直線に沿って相対移動させられる場合には、磁界検出部と磁石の各々との間の距離が、単調に増加または減少することになる。
複数の磁石は、磁界検出部との間の距離が、直線的に変化する状態で設けても、曲線的に変化する状態で設けてもよい。いずれにしても、周期的に変化するのではないため、前記距離と絶対位置とが1対1に対応する。
本項に記載の位置検出装置は、片側リニアモータにおいて、固定子と可動子との相対位置を絶対的に検出するのに適している。
(10)前記長手部材が、互いに平行に一対設けられ、それら長手部材の各々において、それぞれ、前記軸方向と平行で、複数の磁石のすべての一端面から離間した第3直線を想定した場合に、前記長手部材の一方における前記第3直線と前記磁石の各々の前記一端面との間の距離と、前記長手部材の他方における前記第3直線と前記磁石の各々の前記一端面との間の距離との組合わせが、前記相対位置と1対1に対応する状態で、前記複数の磁石が配設された(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の位置検出装置。
長手部材の各々において、磁石の一端面と磁界検出部との間の距離が、絶対位置の変化に対して周期的に変化する場合には、距離と絶対位置とが1対1に対応しないため、複数の(磁界検出部および長手部材)の組が設けられるのである。したがって、検出部材の一方の長手部材に対向して設けられた磁界検出部の出力信号と、他方の長手部材に対向して設けられた磁界検出部の出力信号との合成信号に基づけば、絶対位置を検出することができる。
例えば、一方の長手部材と他方の長手部材とにおいて、複数の磁石を、距離が互いに異なるパターン(例えば、互いに異なる周期関数)で変化する状態で設けることができる。例えば、一方の長手部材においてはsin関数で変化し、他方の長手部材においてはのこぎり波状に変化する状態が該当する。
なお、周期関数には、三角関数、のこぎり波状に変化する関数、三角波状に変化する関数等が含まれるが、単なる、ON状態とOFF状態との間で変化する関数は含まない。また、周期関数は、全ストロークを1波長以下とするものであり、全ストロークを1波長以上とする周期関数は含まない。以下、(11)項、(12)項についても同様とする。
本項に記載の位置検出装置は、両側リニアモータにおいて、固定子と可動部との相対位置を絶対的に検出するのに適している。
(11)前記長手部材が、互いに平行に一対設けられ、前記長手部材の各々において、それぞれ、前記軸方向と平行で、複数の磁石のすべての一端面から離間した第3直線を想定した場合に、それら第3直線の各々と前記磁石の各々の一端面との間の距離が、前記相対位置に対して、位相と波長との少なくとも一方が異なるが、同じ周期関数で変化する状態で、前記複数の磁石が配設された(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の位置検出装置。
(12)前記長手部材が、互いに平行に一対設けられ、前記磁界検出部が、それら一対の長手部材の各々に対向する位置に、少なくとも1つずつ設けられ、前記長手部材の各々において、前記複数の磁石が、それぞれ、前記長手部材と前記検出部材とを前記相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴って、各磁界検出部との間の前記軸方向と直交する方向の距離が、位相は互いに異なるが、同じ波長で変化する状態で配設された(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の位置検出装置(請求項6)。
長手部材の各々に対して、複数の磁石のすべての一端面から離間した軸方向と平行な第3直線を想定し、それら第3直線の各々と磁石の各々の一端面との間の距離が、位相は異なるが、同じ波長で変化する状態で、複数の磁石が配設される。
例えば、一方の長手部材において、複数の磁石を、sin関数で変化する状態で配設し、他方の長手部材において、cos関数で変化する状態で配設することができる。
(13)前記複数の磁石の各々が、長手方向に延びた棒状磁石で、かつ、その長手方向と直交する寸法が互いに同じものであり、それら複数の磁石が、それぞれ、前記長手方向が前記軸方向と直交する姿勢で、かつ、前記長手部材と前記検出部材とを前記相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴って前記長手方向の一端と前記磁界検出部との間の距離が変化する状態で配設された(1)項ないし(8)項、(10)項ないし(12)項のいずれか1つに記載の位置検出装置(請求項7)。
磁石は、両端部が、それぞれ、N極、S極とされたものであっても、両側面が、それぞれ、N極、S極とされたものであってもよい。長手部材がリニアモータの可動子と固定子のいずれか一方である場合には、両側面が、それぞれ、N極、S極とされた磁石が用いられる。
(14)前記長手部材に対して、互いに前記軸方向と直交する方向に離間するとともに、前記軸方向と平行な第1直線および第2直線を想定し、前記磁界検出部を、前記第1直線、第2直線に沿って相対移動させたと仮定した場合に、その磁界検出部の出力信号の波長が、前記第1直線に沿って相対移動させた場合と前記第2直線に沿って相対移動させた場合とで、異なる態様で変化する状態で、前記複数の磁石が配設された(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の位置検出装置。
(15)前記複数の磁石が、前記磁界検出部を前記第1直線に沿って移動させた場合の出力信号に対する前記第2直線に沿って移動させた場合の出力信号の位相差が、前記長手部材と前記検出部材との相対位置の変化に伴って変化する状態で、配設された(14)項に記載の位置検出装置。
磁界検出部が第1直線に沿って相対移動させられた場合と、第2直線に沿って相対移動させられた場合とで、出力信号の波長が異なる態様で変化する。そのため、第1直線に沿って相対移動させた場合の出力信号(第1信号)の波長と、第2直線に沿って相対移動させた場合の出力信号(第2信号)の波長との組み合わせが絶対位置と1対1に対応する場合には、第1信号と第2信号との合成信号に基づいて絶対位置を検出することができる。
また、第1信号と第2信号とで波長が異なり、これらの位相差(合成信号の一態様である)が、絶対位置と1対1に対応する状態で、複数の磁石が配設された場合には、位相差に基づいて絶対位置を検出することが可能である。
それに対して、位相差が、周期的に変化する場合には、第3直線、第4直線等に沿って相対移動させられる磁界検出部を設けて、第3信号と第4信号の位相差と、第1信号と第2信号との位相差との組合わせと、絶対位置とが1対1に対応するように、複数の磁石を配設し、かつ、磁界検出部を設けることが望ましい。この場合には、第1信号と第2信号との位相差と、第3信号と第4信号との位相差との合成信号に基づいて絶対位置を検出することができる。
本項は円筒型リニアモータにおいて可動子と固定子との相対位置を絶対的に検出するのに適している。
(16)前記複数の磁石の各々が、外周面が円筒面で、両端面が互いに平行でかつ軸方向に対して傾斜し、形状および寸法が互いに同じものであり、それら複数の磁石が、それぞれ、前記軸方向と平行な姿勢で、かつ、相対回転位相が、軸方向において等角度ずつ変化する状態で、直列に配設された(14)項または(15)に記載の位置検出装置(請求項8)。
複数の磁石の各々は、外周面が円筒面で、両端面が互いに平行でかつ軸方向に対して傾斜したものである。複数の磁石の各々は、中実であっても、中空であってもよいが、互いに、形状および寸法が互いに同じものである。
磁石を等間隔で同じ姿勢で配設し、その位置において、隣接する磁石に対して、等角度ずつ相対回転させる。例えば、第1,第2,第3の3つの磁石を、同じ姿勢で、等間隔で配設し、第1の磁石をそのままとし、第2の磁石をθ回転させ、第3の磁石を2θ同じ方向に回転させる。第1,第2,第3の3つの磁石は、互いに、隣接する磁石に対して、θ相対回転させられた姿勢となる。
その結果、軸方向に平行な第1直線、第2直線を想定した場合、第1直線に沿った隣接する磁石の縁同士の間の距離が絶対位置の変化に伴って変化する場合の変化の態様と、第2直線に沿った隣接する磁石の縁同士の間の距離が絶対位置の変化に伴って変化する場合の変化の態様とが、互いに異なることになる。例えば、第1直線に沿った第1の磁石の縁と第2の磁石の縁との間の距離がΔ1a,第2の磁石の縁と第3の磁石の縁との間の距離がΔ1bであり、第2直線に沿った第1の磁石の縁と第2の磁石の縁との間の距離がΔ2a、第2の磁石の縁と第3の磁石の縁との間の距離がΔ2bである場合に、(Δ1a,Δ1b)と、(Δ2a,Δ2b)とは異なるのである。例えば、それぞれの距離Δ1a,Δ1b,Δ2a,Δ2bが互いに異なる値であったり、距離の変化(Δ1a−Δ1b)、(Δ2a−Δ2b)が異なったりするのである。一方、第1直線に沿った場合にも第2直線に沿った場合にも磁石の寸法(第1の磁石、第2の磁石、第3の磁石の各々の軸方向の長さ)は互いに同じである。したがって、磁界検出部を第1直線に沿って相対移動させた場合と、第2直線に沿って相対移動させた場合とで、出力信号の波長の変化の態様が異なることになる。
また、磁石の両端面が軸方向に対して傾斜し、かつ、平行であるため、第1直線と第2直線とが、周方向に180°隔たった位置に想定される場合には、第1直線に沿って磁界検出部を相対移動させた場合に、出力信号の波長が大きくなると、第2直線に沿って相対移動させた場合に出力信号の波長が小さくなる関係にある。すなわち、第1直線に沿って相対移動させた場合の出力信号と第2直線に沿って相対移動させた場合の出力信号とで、一方の波長が他方より大きくなったり、小さくなったりするのである。
このことから、周方向に180°隔たった位置に設けられた2つの磁界検出部の出力信号の波長の差に起因する位相差が、全ストロークにおいて、絶対位置に1対1に対応する場合には、2つの出力信号の位相差に基づいて絶対位置を検出することができる。
それに対して、位相差が、全ストロークにおいて周期的に変化する場合には、互いに180°隔たった2つの直線の組を複数設け、複数の位相差の組が、絶対位置と1対1に対応するように、磁界検出部を設ければ、複数の位相差の組(複数の位相差を表す信号の合成信号)に基づいて絶対位置を検出することが可能となる。
(17)前記磁界検出部が、前記検出部材に、前記軸方向と交差する方向に隔てて複数設けられ、前記複数の磁石が、前記長手部材と前記検出部材とを前記相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴って、前記複数の磁界検出部の各々との間の前記軸方向と平行な方向における相対位置関係がそれぞれ変化する状態で配設され、当該位置検出装置が、前記複数の磁界検出部による出力信号の合成信号に基づいて前記長手部材と前記検出部材との前記相対位置を計算する計算部を含む(1)項ないし(8)項、(14)項ないし(16)項のいずれか1つに記載の位置検出装置(請求項9)。
例えば、第1直線に沿って相対移動させられる磁界検出部の出力信号、第2直線に沿って相対移動させられる磁界検出部の出力信号等の複数の出力信号の合成信号に基づいて絶対位置が検出される。
(18)前記検出部材が、前記軸方向と平行な方向に隔たった複数の磁界検出部を有する(1)ないし(17)項のいずれか1つに記載の位置検出装置(請求項10)。
軸方向と平行な方向に隔たった複数の磁界検出部を設ければ、その磁界検出部の出力信号は、同じ波長で異なる位相で変化するとみなし得る。その位相のずれの向きに基づけば、検出部材の移動の向きを取得することができる。
また、ほぼ同じ振幅、波長で、異なる位相で変化する2つの出力信号に基づけば、磁極間ピッチ内における絶対位置を検出することが可能となる。
特に、2つの出力信号の位相差が1/4位相ずれている場合には、リサジュ曲線が円となり、磁極間ピッチ内における絶対位置を取得するための演算が容易となり、「詳細な絶対位置」を容易に取得し得る。
(20)前記情報処理部が、前記軸方向と平行な方向に隔たって設けられた2つ以上の磁界検出部の出力信号の合成信号に基づいて、前記相対位置を検出する平行方向情報処理部を含む(19)項に記載の位置検出装置。
1つの長手部材において、前述の第3直線と磁石との間の距離が、絶対位置と1対1に対応する状態で、複数の磁石が設けられる場合には、軸方向と平行な方向に隔たった2つ以上の磁界検出部の出力信号に基づいて、「およその絶対位置」、「詳細な絶対位置」の両方を取得することができる。
例えば、軸方向に1/4位相隔たって磁界検出部が2つ設けられ、それぞれの、出力信号が、磁極の変化に基づいて正弦波的に変化しつつ、距離の変化に基づいて振幅が変化する場合において、2つの磁界検出部の出力信号の値(大きさ)が、a,bである場合に、その出力信号の振幅Wは、
W=√(a2+b2)
となる。「およその絶対位置」は、この振幅Wに基づいて取得される。
次に、振幅Wに基づいて、磁石を特定し、その磁石で決まる磁極間ピッチ内の位置を求める。振幅Wの円を想定し、座標(a,b)と磁極間ピッチの基準点との成す中心角θを求める。中心角θは、磁極間ピッチMを2πとした場合の基準点からの距離MXに対応する。そのため、式
MX=M・θ/(2π)
に従えば、磁極間ピッチM内の基準点からの距離MXを取得することができるのである。
(21)前記情報処理部が、(a)前記軸方向と直交する方向に隔てて設けられた2つ以上の磁界検出部の出力信号の合成信号に基づいて、第1の相対位置を検出する主情報処理部と、(b)前記軸方向と平行な方向に隔てて設けられた2つ以上の磁界検出部の出力信号の合成信号に基づいて、前記第1の相対位置で決まる磁石の磁極間ピッチ内の位置を検出する副情報処理部とを含む(19)項に記載の位置検出装置。
主情報処理部によって、出力信号の長周期成分の合成信号が取得され、その合成信号に基づいて「およその絶対位置」が検出され、副情報処理部によって取得された磁極間ピッチ内の位置が検出される。「およその絶対位置」と「磁極間ピッチ内における位置」とに基づけば、「詳細な絶対位置」を検出することができる。
(22)当該位置検出装置が、前記長手部材と前記検出部材とを相対移動させなくても、前記相対位置を検出可能なものである(1)項ないし(21)項のいずれか1つに記載の位置検出装置。
本項に記載の位置検出装置においては、長手部材と検出部材との相対位置がいずれであっても、その位置における磁界検出部の出力信号に基づけば、その絶対位置を検出することができる。
例えば、全ストロークを1周期とするsin 信号の大きさと変化の状態(増加、減少、変化なし)とに基づけば、絶対位置を検出することができる。しかし、sin信号の大きさのみに基づいて絶対位置を検出することはできない。換言すれば、その位置からわずかに相対移動させれば、絶対位置を検出することができるが、その位置における出力信号のみに基づいて絶対位置を検出することはできない。
それに対して、全ストロークを1周期とするsin信号の大きさと、全ストロークを1周期とするcos信号の大きさとを合わせた信号に基づけば、絶対位置を検出することができる。例えば、sin信号のベクトルとcos信号のベクトルとの和(合成信号に対応)は、全ストロークを2πとする円周上を移動するため、和のベクトルの信号に基づけば、基準点からの角度を取得することができ、全ストロークに対する位置である絶対位置を検出することができる。この場合には、相対移動させなくても、絶対位置を検出することができることになる。本項に記載の位置検出装置において、「合成信号」には、後者のsin信号とcos信号との合成信号が含まれ、前者のsin信号は含まれない。
また、長手部材と検出部材とが相対移動させられた場合の、それまでの出力信号、出力信号を処理して得られる情報等を記憶しておかなくても、その位置における磁界検出部の出力信号に基づけば、絶対位置を検出することができる。
例えば、インクリメンタル式の位置検出装置において、前回検出された絶対位置を記憶しておけば、その位置から相対移動させられた場合の今回の絶対位置を検出することができる。しかし、前回の絶対位置を記憶しない場合には、前回の絶対位置からの隔たりを検出できるのみで、絶対位置を検出することができない。本項に記載の位置検出装置は、インクリメンタル式のものではなく、前回の絶対位置を記憶しておかなくても、今回の絶対位置を検出できるものである。
前記複数の磁石の各々が、前記軸方向の長さが互いに同じものであり、前記軸方向に沿って等間隔で、かつ、前記長手部材と前記検出部材とを前記相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴って、前記1つ以上の磁界検出部との間の、前記軸方向と平行な方向と前記軸方向と直交する方向との少なくとも一方における相対位置関係が変化する状態で配設された位置検出装置。
本項に記載の位置検出装置には、(1)項ないし(22)項のいずれか1つに記載の技術的特徴を採用することができる。
(24)(i)複数の磁石を有し、軸方向に延びる長手部材と、(ii)1つ以上の磁界検出部を有し、前記長手部材と前記軸方向に相対移動可能な検出部材とを備え、前記1つ以上の磁界検出部の出力信号に基づいて、前記検出部材の前記長手部材に対する前記軸方向の相対位置を検出する位置検出装置であって、
前記複数の磁石の各々が、前記軸方向の長さが互いに同じものであり、前記軸方向に沿って等間隔で、かつ、互いに前記軸方向と直交する方向に離間するとともに、前記軸方向と平行な第1直線および第2直線を前記長手部材に対して規定し、その長手部材と前記磁界検出部とを、それら第1直線、第2直線に沿って相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴う磁界検出部の出力信号の振幅と波長との少なくとも一方の変化が、前記第1直線に沿って相対移動させた場合と前記第2軸方向に沿って相対移動させた場合とで互いに異なる状態で配設された位置検出装置。
本項に記載の位置検出装置には、(1)項ないし(22)項のいずれか1つに記載の技術的特徴を採用することができる。
(25)前記検出部材が、コイルを備えた電機子であり、前記長手部材に前記軸方向と直交する方向において隙間を隔てて対向し、その長手部材と前記軸方向に相対移動可能に配設されるとともに、それら電機子と前記長手部材とによってリニアモータが構成され、当該位置検出装置が、そのリニアモータにおける前記長手部材と前記電機子との前記軸方向における相対位置を検出するものである(1)項ないし(24)項のいずれか1つに記載の位置検出装置(請求項11)。
リニアモータにおいては、長手部材に複数の磁石が設けられる。そのため、その磁石を利用して、電機子の長手部材に対する相対位置を検出することができる。すなわち、別個に位置検出装置を設ける必要はないのであり、電機子に磁界検出部を設ければ、絶対位置を検出することができるのである。その結果、リニアモータの小形化を図ることができ、コストアップを抑制することができる。
また、複数の磁石の各々の軸方向の長さが互いに同じであるため、リニアモータにおいて、推力を安定して発生させることができ、また、コイルの電流制御を従来のリニアモータと同様とすることができる。
(26)(i)複数の磁石を有し、軸方向に延びる長手部材と、(ii)1つ以上のコイルと、1つ以上の磁界検出部とを有し、前記長手部材に前記軸方向と直交する方向に隙間を隔てて配設された電機子と、(iii)前記1つ以上の磁界検出部の出力信号の合成信号に基づいて前記長手部材と前記電機子との前記軸方向における相対位置を検出する位置検出装置とを含むリニアモータであって、
前記複数の磁石の各々が、前記軸方向の長さが互いに同じものであり、前記軸方向に沿って等間隔で、かつ、前記長手部材と前記電機子とを前記相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴って前記1つ以上の磁界検出部の出力信号の合成信号が、前記相対位置と1対1に対応して変化する状態で配設されたことを特徴とするリニアモータ。
本項には、(1)項ないし(25)項のいずれか1つに記載の技術的特徴を採用することができる。
リニアモータは、物品を連続的に搬送する搬送機の駆動源として使用したり、電子回路部品装着機において、基板の搬送、トレーの引き出し、マガジンの昇降の駆動源として使用したり、装着ヘッドの移動、昇降の駆動源として使用したりすることができる。
ベース10は、軸方向Pに延びたものであり、軸方向Pに平行に一対の固定子12,14が固定されている。固定子12,14は、それぞれ、磁石保持部材(ハウジング)16,17と、それら磁石保持部材16,17の内側に、それぞれ、保持された複数の磁石18,19とを含む。また、ベース10には、互いに平行に軸方向Pに延びる一対のガイドレール20,21が設けられる。本実施例においては、長手方向が軸方向Pに対応し、固定子12,14が長手部材に該当する。
一対の固定子12,14の間に、隙間δを隔てて、可動子24が配設される。可動子24は、ガイドレール20,21に係合可能な係合部26,27を有し、係合部26,27がガイドレール20,21に係合させられることにより、固定子12,14に対して軸方向Pに相対移動可能に保持される。可動子24は、図3に示すように、複数のコイル30を備えたものであり、コイル30に電流が供給されると、コイル30と複数の磁石18、19との間に生じる推進力により、軸方向Pに移動させられる。本実施例においては、一対の固定子12,14と可動子24とにより両側式のリニアモータ32が構成される。
センサA,BおよびセンサC,Dは、図3に示すように、可動子24の、固定子12,14の磁石18,19の上端面40,41の内側に対向する位置に、間隔を隔てて取り付けられる。可動子24が軸方向Pに全ストロークLに渡って相対移動させられても、センサA,B,C,Dが、すべての磁石18,19の上端面40,41より上方に位置する状態に取り付けられるのである。
本実施例において、センサA,CおよびセンサB,Dが、軸方向Pの同じ位置に、センサA,BおよびセンサC,Dが、軸方向Pと平行な方向に隔たった位置(出力信号が1/4位相ずれる位置)に設けられる。例えば、センサA,Cが磁石のN極に対向する場合に、センサB,Dが磁石の間(N極とS極との間)に位置する状態で取り付けられる。
固定子12において、磁石18a,b,・・・が、図4(a)、図5(a)に示すように、上端面40とセンサA,Bとの間の距離ΔHが、基準位置0点から正弦波状(−sin )に段階的に変化する状態で設けられ、固定子14において、磁石19a,b,・・・が、図4(b)、図5(b)に示すように、上端面41とセンサC、Dとの間の距離ΔHが正弦波状(cos)に段階的に変化する状態で(磁石18の変化に対して1/4位相ずれて変化する状態で)設けられる。
また、2つずつの(磁石18a,b)、(磁石18c,d)、・・・、(磁石19a,b)、(磁石19c,d)、・・・が対にされ、それぞれ、距離ΔHが同じになる姿勢で取り付けられる。
磁極間ピッチMは、N極の磁石18a(19a)の軸方向Pにおける中心とそれに隣接するN極の磁石18c(19c)の軸方向Pにおける中心との間の距離Mである。この距離は、磁石18aの軸方向Pの側面44と磁石18cの同じ側の側面44との間の距離と同じになり、式
M=2X+2Y
で表される長さとなる。この長さは、磁石18,19の幅方向の寸法Xと、間隔Yとで決まる長さであり、一対の磁石18a,b(磁石19a,b)の大きさ、配置で決まる。
また、センサが一対の2つの磁石18a,b(磁石19a,b)に対向する間は、振幅Wは同じになる。一方、N極間のピッチMは、N極間の距離であるため、磁石18a(19a)に対向する場合と磁石18c(18c)に対向する場合とでは、振幅Wが異なることになる。しかし、振幅の差はわずかであり、N極間のピッチ全体において、磁石18cの磁界の影響を受ける位相は僅かであるため、N極間のピッチにおいて、振幅Wが一定であるとみなしても差し支えないのである。また、N極間のピッチが「およその絶対位置」を検出する場合の最小単位となるのである。
磁石18,19の寸法X,間隔Yは、リニアモータ32として効果的に推力を出力可能であり、かつ、絶対位置の検出精度を満たし得る大きさに決定される。絶対位置検出のためであれば、寸法X、間隔Yは小さい方が望ましい。
なお、図5(a)、(b)において、可動子24の固定子12,14に対する相対移動により、センサA,B,C,Dは1点鎖線上を通り、コイル30は、破線の間において磁石18,19に対向して相対移動させられる。しかし、実際には、磁石18,19の長さZは、幅方向の寸法X、間隔Yに対して長いため、コイル30が対向し得る領域(破線の間の領域)は、図5(a)、(b)に示す領域より広い。
センサA〜DがN極に対向する場合に、出力信号は極大となり、S極に対向する場合に極小となり、センサA〜DがN極とS極との間に位置する場合に0となる。出力信号の波長は磁石18,19のN極間のピッチMである。出力信号の、センサが対向する磁石の磁極の変化に起因する変化の成分を短周期成分と称する。
また、センサB,Dの出力信号は、センサA,Cの出力信号に対して1/4位相ずれて変化する。
矢印Q方向へ相対移動させられる場合には、センサBの出力信号がセンサAの出力信号に対して1/4位相進み、矢印R方向へ相対移動させられる場合には、センサBの出力信号が遅れる。そのことを利用すれば、可動子24の進行方向がわかる。
可動子24が矢印Qの方向へ相対移動させられると、センサA,Bと磁石18の上端面40との間の距離ΔHが増加した後減少し、増加する。そのため、センサA,Bの出力信号は、図5(c)に示すように、振幅Wが減少した後に増加し、再び減少する。また、磁極間のピッチM内においては、距離ΔHが同じであるため、出力信号が1周期変化する間の振幅Wは同じとなる。本実施例において、出力信号の波長Mで短い周期で変化する成分を短周期成分と称し、距離ΔHの変化に起因して全ストロークLを1波長として変化する成分(振幅)を長周期成分と称する。なお、シミュレーションにより得られたセンサA,Bの出力信号を、図6(a)に示す。実線がセンサAの出力信号を表し、破線がセンサBの出力信号を表す。シミュレーションは、有限要素法(FEM)により磁石18,19等を分割して行ったものである。有限要素法において用いられる分割要素(セル、メッシュと称すること等もある)は、比較的に大きなものであるため、演算誤差が大きいと考えられる。
センサC,Dの出力信号についても同様であり、図5(d)に示すように変化する。センサC,Dと磁石19の上端面41との間の距離ΔHが、増加した後減少するのに伴って、振幅Wが、減少した後増加する。シミュレーションにより得られたセンサC、Dの出力信号を、図6(b)に示す。実線がセンサCの出力信号を表し、破線がセンサDの出力信号を表す。
また、リサジュ曲線の円の半径は、振幅Wに応じた大きさとなる。振幅Wは、可動子24の移動に伴って、すなわち、絶対位置の変化に伴って変化するのであり、円の半径は、絶対位置の変化に伴って段階的に変化する。
同様に、センサC,Dの出力信号を合成して得られるリサジュ曲線を図7(b)に示す。この場合においても、絶対位置の変化に伴う振幅の変化に伴って、半径が変化する。
このことから、全ストロークLを2πとして表すことも可能であり、その場合には、それぞれの絶対位置を角度θとして表すことができる。
なお、シミュレーションにより得られた振幅と絶対位置との関係を、図8(a)に示す。図8(a)の実線がセンサA,Bの出力信号から得られる振幅と絶対位置(角度)との関係を表し、破線がセンサC,Dの出力信号から得られる振幅と絶対位置(角度)との関係を表す。
全ストロークLは、可動子24の相対移動可能な領域であり、図示しないストッパで決まる。絶対位置は、ストッパで規定される基準位置{例えば、図8(a)、(b)の0点}からの距離である。
具体的には、センサA、Bの出力信号で決まる振幅がWABであり、センサC、Dの出力信号で決まる振幅がWCDである場合に、図9(a)の点SLが決まる。そして、その場合の角度θは、式
tanθ=−(WAB0−WAB)/(WCD0−WCD)
θ=arctan{−(WAB0−WAB)/(WCD0−WCD)}
と、(WAB0−WAB)、(WCD0−WCD)の値の符号(正の値であるか、負の値であるか)とから、取得することができる。
センサA,Bの出力信号の振幅WABは、センサA,Bの出力信号の値IA、IBから、式
WAB=√(IA 2+IB 2)
に従って、取得することができ、センサC,Dの出力信号の振幅WCDは、センサC,Dの出力信号の値IC、IDから、式
WCD=√(IC 2+ID 2)
に従って、取得することができる。
また、値WAB0、WCD0は、振幅Wの最大値と最小値との中間値であり、リサジュ曲線の取得後に求められる。また、センサと磁石との間の距離ΔHの最小値と最大値との中間値で決まるため、予め求めて記憶させておくことも可能である。
本実施例においては、振幅WABを表す信号は、センサA,Bの出力信号IA,IBを処理することにより取得され、振幅WCDを表す信号は、センサC,Dの出力信号IC,IDを処理することにより表され、これら振幅WAB、WCDを処理することにより、角度θを表す信号が取得される。角度θを表す信号が、本実施例における合成信号の一態様である。
LX=θ・L/(2π)
に従って、絶対位置LXを求めることができる。
本実施例においては、記憶部54に、本リニアモータ32におけるセンサA,Bの出力信号から得られた振幅WABと、センサC,Dの出力信号から得られた振幅WCDと、絶対位置との関係が予め記憶されている。そのため、モータ制御部50において、センサA,B,C,Dの信号が処理されて得られた振幅WAB、WCDと、予め記憶された関係とに基づいて、図8(b)に示すように、絶対位置LXが検出される。このように検出された絶対位置をおよその絶対位置と称する。これらの関係は、リニアモータ32の特性の影響を受けるため、リニアモータ個々について実際に取得しておくことが望ましい。また、シミュレーションにおいて、図8(b)に示す目盛りの1/4の間に、一対の磁石(18a,b)、あるいは、一対の磁石(19a,b)が位置することとした。
なお、記憶された関係は、定期的に取得されて、修正されるようにすることができる。コイル30の経時変化等に起因して、これらの関係が変わることがあるからである。
例えば、およその絶対距離LXに基づけば、現時点においてセンサA,Bが対向する磁石(例えば、磁石18x、yであるとする。磁石19x、yとしても同じである)がわかる。一方、センサA,Bの出力信号に基づけば、磁極間ピッチM内における位置、すなわち、磁石18xの中心からの距離(あるいは磁石18zの中心からの距離)MXがわかる。
センサAの出力信号の値がIAであり、センサBの出力信号の値がIBである場合には、図9(b)に示すように、点SMが決まり、tanφ、角度φが求められる。
tanφ=−(IB/IA)
φ=arctan{−(IB/IA)}
上述の場合と同様に、tanφの値と、出力信号の値IA、IBの符号とから、角度φが決まるのである。
そして、円の1周が磁極間ピッチMに対応するため、式
MX=φ・M/(2π)
に従って、磁石18xの中心からの絶対位置MXを取得することができる。
一方、磁石18xの中心の絶対位置は、LX近傍の値であるが、固定子12の構造から既知である(LX0)。そのため、その時点の可動子24の絶対位置LXは、磁石18xの中心までの距離LX0と、磁極間ピッチM間の距離MXとの和として取得することができる。
LX=LX0+MX
このように得られた絶対位置を詳細な絶対位置と称する。この場合には、角度φが、センサA,Bの出力信号の合成信号に対応する。
また、磁石18a,b,c,・・・,磁石19a,b,c,・・・の幅方向の寸法Xが同じで、等間隔Yで設けられるため、寸法X,間隔Yが変化する状態で設ける場合に比較して、絶対位置の変化に起因する推進力の変化を抑制することができる。さらに、コイル30に供給される電流を、従来と同様に制御することもできる。
さらに、磁石18a,b,c,・・・,磁石19a,b,c,・・・のすべてを、同じ大きさ、形状を成したものとすれば、磁石18,19の製造コストを低減することが可能となり、より一層、コストダウンを図ることができる。
また、全ストローク内の任意の位置において、センサA〜Dの出力信号を検出すれば、その絶対位置を検出することができる。可動子24の前回の位置を記憶したり、短周期成分の振動数をカウントしてそのカウント値を記憶したりする必要がないのである。換言すえば、可動子24を移動させなくても、その絶対位置を検出することができるのである。
さらに、図5(a)、(b)の破線が第1直線に対応し、一点鎖線が第2直線に対応する。第2直線は第3直線でもある。
また、位置検出装置は、リニアモータ32とは関係なく、回転モータとボールねじ機構等の運動変換機構とを有するリニア駆動装置において、可動部の相対位置を検出するために使用することもできる。
さらに、磁極間のピッチM内における位置を求める場合に、センサA、センサBのいずれか一方の出力信号に基づいて決めることができる。すなわち、センサAの出力信号IAとセンサBの出力信号IBとからtanθを求めて、角度θを求めるのではなく、出力信号IAと出力信号IBとのうち、変化が大きい方の値を用いて、角度θを求めるのである。例えば、角度θが0あるいはπ、2π近傍の場合、換言すれば、出力信号IAが極大値、あるいは極小値近傍の値であり、出力信号IBが0近傍の値である場合には、出力信号IBから角度θを求めるのである。角度θが0あるいはπ、2π近傍の値をとる場合には、出力信号IBの方が出力信号IAより変化勾配が大きいため、角度θを正確に取得することができるのである。
IB/WAB=cosθ
θ=arccos(IB/WAB)
同様の理由から、角度θがπ/2,3π/2近傍である場合には、出力信号IAに基づく方が角度θを正確に取得することができる。
{−IA/WAB}=sinθ
θ=arcsin{−(IA/WAB)}
以上のように、2つの出力信号の値を比較して、絶対値が小さい方の値に基づいて磁極間のピッチ内における位置を求めることができるのである。
さらに、磁極間ピッチ内における絶対位置を求める場合においても、センサA,Bの出力信号と絶対位置との実際の関係を予め取得して、記憶させておき、それに基づいて磁極間ピッチ内の絶対位置を取得することもできる。また、それによって、θの値を補正することもできる。
その場合の実施例を図10に示す。図10に示す片側式のリニアモータは、図1,2に示す両側式のリニアモータにおいて、固定子の一方が設けられていないものであり、可動子の片側にはセンサが設けられていない。
片側式のリニアモータ70において、軸方向Pに沿って固定子72が延び、固定子72の磁石保持部(ハウジング)74に複数の磁石76が保持される。これら複数の磁石76に隙間δを隔てて可動子78が配設され、相対移動可能に保持される。可動子78の固定子72側には、磁石76の上端面79の内側に対向してセンサE,F(図11参照)が設けられる。センサE,Fは、互いに軸方向Pと平行に、1/4位相ずれた位置に設けられる。
本実施例においては、磁石76が可動子78のセンサE,Fとの間の距離ΔHが、可動子78が矢印Q向に相対移動させられる場合に、単調減少する状態で設けられる。その結果、センサE,Fの出力信号は、図11(b)に示すように、磁極間ピッチMを波長として正弦波状に変化するとともに、その振幅Wが、矢印Q方向へ移動するのに伴って(距離ΔHが小さくなるのにつれて)、大きくなる。そのため、センサE,Fの信号のリサジュー曲線は、図示は省略するが、半径が増加する多重の円から構成されるものとなる。また、振幅Wと、絶対位置LXとの関係は、図11(c)に示すようになるのであり、振幅Wは、絶対位置と1対1に対応する。
したがって、センサE,Fの出力信号の振幅Wに基づけば、「およその絶対位置LX」を取得することができるのであり、本実施例においては、振幅Wが、センサE,Fの出力信号の合成信号に対応する。
また、上記実施例における場合と同様に、振幅Wに基づいて、磁石76x、yの位置を特定し、図12に示すように、その場合のセンサE,Fの出力信号IE,IF等から角度φを取得し、磁石18xの位置LX0からの距離MXを取得することが可能となる。
tanφ=−(IF/IE)
φ=artan{−(IF/IE)}
MX=φ・M/(2π)
その結果、「詳細な絶対位置LX」を、
LX=LX0+MX
として取得することができる。
また、磁石76の上端面79とセンサE,Fとの間の距離ΔHが、可動子78が矢印Qに相対移動させられた場合に増加する状態で設けたり、単調に曲線的に増加あるいは減少する状態で設けたりすることもできる。
円筒型のリニアモータ100は、固定子としてシャフト102と、可動子104とを含む。シャフト102は、軸方向Pに延びた長手部材であり、両端において、ベース105に設けられた一対の支持部材106に、相対回転不能かつ相対移動不能に保持される。シャフト102は、軸方向Pに沿って直列に配設された複数の磁石110を有する。
可動子104は、シャフト102の外側に嵌合されたものであり、軸方向Pに沿って直列に配設された複数の筒状のコイル120を含む。可動子104は、また、ベース105に、軸方向Pと平行に設けられた一対のガイドレール122、123に係合可能な係合部124、125を有し、ガイドレール122,123に係合部124,125が係合させられることにより、軸方向Pに相対移動可能に保持される。なお、可動子104の内周面とシャフト102の外周面との間には、隙間が設けられる。
このように、本実施例における円筒型のリニアモータ100は、ムービングコイル型のものである。
図15に示すように、4つのセンサG,H,I,Jは、可動子104の軸方向Pの同じ位置に、周方向の隔たった位置に設けられる。センサG,Hは180°隔たった位置に、センサI,Jは180°隔たった位置に、また、センサG,Iが90°隔たった位置に、それぞれ、設けられる。すなわち、4つのセンサG,I,H,Jは、互いに90°ずつ隔たった位置に設けられるのである。
また、4つのセンサG,H,I,Jの各々と、軸方向Pと平行な方向に1/4位相ずれた位置(電気角度90°隔たった位置)に、それぞれ4つのセンサG′,H′,I′,J′が設けられる。なお、後述するように、可動子104の相対移動に伴って波長が変化するため、全ストロークにおいて、1/4位相ずれた信号が出力されるとは限らないが、波長の変化の幅は非常に小さいため、1/4位相ずれたとみなすことができる。
磁石110a,b,c,・・・の各々は、図16(a)、(b)に示すように、外周面が円筒面で、両端面130,132が互いに平行かつ軸方向Pに対して傾斜した円柱形状(中実な円筒形状)を成したものであり、形状および各寸法が互いに同じものである。すなわち、軸方向の長さX、半径R、端面130,132の傾斜角度ηが同じものである。また、両端面130,132の一方がN極とされ、他方がS極とされたものである。
磁石110は、図17(a)に示すように、軸方向Pにおいて互いに等しい間隔Yを隔てた位置に配設される。そして、各々の位置において、隣接する磁石との間で同じ磁極同士が対向し、かつ、軸線Pの回りに、等角度ずつ相対回転させられた姿勢とされる。例えば、磁石110において基準点Kを定めた場合に、隣接する磁石110において基準点K間の距離がそれぞれ同じとされる。また、各々の位置において、例えば、磁石110cにおける外周上の基準点Kの位相が0である場合に、磁石110bにおける基準点Kの軸線Pに対する位相が−α°となり、磁石110dにおける位相が+αとなるように、相対回転させられるのである。
その結果、隣接する2つの磁石110同士においては、相対位相は互いに同じになる。そのため、スペーサ128の各々は、同じ形状、寸法を成したものとすることができ、それぞれ、異なる位相で配設される。
なお、図17(a)において、磁石110各々の相対位相を明確にするため、磁石110の端面の輪郭を直線で描いたため、角部が形成されたが、実際には、端面の輪郭は曲線であるため、角部も丸められることになる。
また、複数の磁石110,複数のスペーサ128は、図17(a)に示す姿勢で、磁石支持筒126の内部に支持されるが、磁石110とスペーサ128との間に作用する吸引力によって吸着させた状態で支持されるようにしたり、磁石110,スペーサ128を予め接着材等で接着しておいて、その状態で支持されるようにしたりすることもできる。
さらに、相対位相は、隣接する磁石110とスペーサ128とにおいて、一方の端面の中心から隔たった位置に凸部を設け、他方の端面のその凸部に対応する部分に凹部を設け、これらの嵌合により決まるようにすることができる。
また、磁石支持筒126の内周面に、長手方向に延びた突部を設けるとともに、磁石110,スペーサ128の各々の外周面の、その突部に対応する位置に、軸方向に延びた凹部を設け、これらの嵌合により相対位相が決まるようにすることもできる。
これらセンサG,H,I,Jの出力信号は、センサが磁石110の中央に対向する相対位置において0となり、スペーサ128の中央に対向する相対位置において極大、あるいは、極小となる。
一方、複数の磁石110は、図17(a)に示すように配設されるため、センサG、H、I、Jの各々の磁石110に対する相対位置が軸方向Pにおいて変化する。換言すれば、磁石110は、等間隔で配設され、その位置において、相対回転させられるため、周方向の予め定められた位置(センサG,H,I,Jの位置)において、互いに隣接する磁石110の縁同士の距離Vが、相対移動に伴って、異なる態様で変化するのである。
例えば、図17(a)において、可動子104が固定子102に対して相対移動させられた場合に、センサG、G′が通る直線を第1直線とし、センサH、H′が通る直線を第2直線、センサI,I′が通る直線を第3直線、センサJ,J′が通る直線を第4直線とする。第1〜第4直線は、それぞれ、軸線Pに平行で、互いに軸方向Pと直交する方向に隔たった位置にある。第1直線と第2直線とは互いに180°位相が隔たった位置にあり、第3直線と第4直線とは180°位相が隔たった位置にあり、第1直線と第3直線とは90°位相が隔たった位置にある。
センサG,G′は第1直線に沿って相対移動させられるが、第1直線に沿った磁石110fの縁と磁石110gの縁との間の距離VG1と、磁石110hの縁と磁石110iの縁との間の距離VG2とは異なる。また、第3直線(センサI,I′)に沿った磁石110dの縁と磁石110eの縁との間の距離VI1と、磁石110gの縁と磁石110hの縁との間の距離VI2とは異なり、第2直線(センサH,H′)に沿った磁石110fの縁と磁石110gの縁との間の距離VH1と、磁石110hの縁と磁石110iの縁との間の距離VH2とは異なる。さらに、第4直線(センサJ,J′)に沿った磁石110dの縁と磁石110eの縁との間の距離VJ1と、磁石110gの縁と磁石110hの縁との間の距離VJ2とは異なる。
また、磁石110d、eの間において、第3直線に沿った距離VI1の方が第4直線に沿った距離VJ1より大きいが、磁石110g、hの間において、第3直線に沿った距離VI2より第4直線に沿った距離VJ2の方が大きくなる。すなわち、位相が180°隔たった2つの直線に沿ってセンサがそれぞれ相対移動させられる場合、一方のセンサが通る直線に沿った距離が大きい場合は他方のセンサが通る直線に沿った距離が小さく、一方のそれの距離が小さい場合は他方のそれの距離が大きい関係にあるのである。
同様に、磁石110f、gの間において、第1直線に沿った距離VG1が第2直線に沿った距離VH1より大きくなり、磁石110h、i間において、第1直線に沿った距離VG2より第2直線に沿った距離VH2の方が大きくなるのであり、一方が大きいと他方が小さい関係がある。
さらに、第1〜第4直線に沿った距離VG、VH、VI,VJは、いずれも、センサが軸方向Pに移動したと仮定した場合に、増・減することになる。
このことから、センサG,H,I,Jの出力信号は、図17(b)に示すように変化するのであり、波長が、軸方向Pに相対移動させられるのに伴って、それぞれ、別個に変化する。上述のように、センサG,Hの出力信号の間、センサI,Jの出力信号の間には、一方の波長が長くなると他方の波長が短くなる関係にある。
図17(c)には、センサG,Hの出力信号を重ねて記載し、図17(d)には、センサI,Jの出力信号を重ねて記載した。図17(c)に示すように、可動子104が矢印Qの方向に相対移動した場合において、センサG、Hの出力信号の位相は、絶対位置L0,L2,L4で一致し、絶対位置L1,L3で位相差が最大となる。絶対位置L1においては、センサGの出力信号の方が進み、絶対位置L3においてはセンサHの出力信号の方が進む。図17(d)に示すように、センサI、Jの出力信号の位相は、絶対位置L1,L3において一致し、絶対位置L0,L2,L4において位相差が最大となる。絶対位置L0,L4においては、センサIの出力信号の方が進み、絶対位置L2においては、センサJの方が進むことがわかる。
このように、センサGの出力信号、センサHの出力信号の波長が、可動子104の相対移動に伴って変化するため、センサGの出力信号がセンサHの出力信号に対して進んだり、遅れたりするのであり、これらの位相差が正弦波的に変化する。センサI、Jの出力信号についても同様であるが、位相差が1/4位相ずれて変化する。
また、図19(a)〜(d)には、センサG,G′の出力信号、センサH,H′の出力信号、センサI,I′の出力信号、センサJ,J′の出力信号のリサジュ曲線を、それぞれ、示す。図19(a)〜(d)に示すように、リサジュ曲線は、上述のように、ほぼ円になる。センサGの出力信号とセンサG′の出力信号とは、それぞれ、周期(波長)、振幅が同じであり、位相が1/4ずれているため、前述のように、リサジュ曲線は円になるのである。センサH,H′の出力信号、センサI,I′の出力信号、センサJ,J′の出力信号についても同様にリサジュ曲線は円になる。
そして、センサG、Hの出力信号の位相差、センサI、Jの出力信号の位相差は、図21に示すように変化する。すなわち、センサG、Hの位相差は、実線で示すように、可動子104の相対位置の変化に伴って正弦波的に変化し、センサI、Jの位相差は、破線で示すように、1/4位相ずれた状態で変化する。
そして、センサG、Hの出力信号の位相差を表す信号、破線で表されるセンサI、Jの出力信号の位相差を表す信号のリサジュ曲線は、図22に示すように、全ストロークLを一周(2π)とする円となる。
図24に示すように、センサG,Hの出力信号の位相差Δαsinと、センサI,Jの出力信号の位相差Δαcosとから、全ストロークを2πとした場合の角度θを取得すれば、その角度θからおよその絶対位置を取得することができる。
例えば、センサG,H、センサI,Jの位相差が、それぞれ、Δαsin、Δαcosである場合に、位相差の符号を考慮して、式
tanθ=−(Δαsin/Δαcos)
θ=arctan{−(Δαsin/Δαcos)}
に従って、θを取得することができ、式
LX=θ・L/(2π)
に従って、「およその絶対位置LX」を取得することができるのである。このように、位相差の組と絶対位置とは1対1に対応するのであり、位相差の組(本実施例においては、2つの位相差から取得した角度θを表す信号が合成信号に該当する)に基づけば、およその絶対位置と検出することができる。
そのことを表したのが、図23のグラフである。
本実施例においては、図21に示す、センサG,Hの出力信号の位相差と、センサI,Jの出力信号の位相差との組と、絶対位置との関係が予め記憶部136に記憶されており、実際に取得された位相差の組と、記憶された関係とから、「およその絶対位置」が取得されるのである。
なお、シミュレーションは、上記実施例における場合と同様に有限要素法を用いて行った。
このように、円筒型のリニアモータについても、コストアップを回避しつつ、絶対位置を検出することが可能となる。
本実施例においては、固定子に設けられた磁石110と、センサG,H,I,J,G′,H′,I′,J′と、モータ制御部132の絶対位置を検出する部分とにより位置検出装置が構成される。
また、磁石を、外周側がN極あるいはS極とされ、内周側がS極あるいはN極とされたものとし、それが交互に配設されるようにすることもできる。
さらに、支持部材を設けることなく、複数の磁石を連結して長手部材を構成することもできる。
また、可動子104を保持するためのガイドレール122,123、係合部124,125は不可欠ではない。可動子104が、コイル120から外れた位置において、直接、シャフト102にベアリング等を介して保持されるようにすることができる。
図25,26において、電子回路部品装着機は、電子回路部品を供給する部品供給装置300と、回路基板301を保持する基板保持装置302と、部品供給装置300から電子回路部品を受け取って回路基板301に装着する装着ヘッド306と、部品供給装置300と基板保持装置302と装着ヘッド306とを相対移動させる相対移動装置308と、少なくとも基板保持装置302,装着ヘッド306および相対移動装置308を制御する制御装置310(モータ制御部132を含む)とを含む。部品供給装置300等は、位置を固定して設けられたベッド312上に設けられている。ベッド312は電子回路部品装着機の本体を構成する。本電子回路部品装着機は、他に、回路基板304に設けられた基準マークを撮像するマーク撮像装置および装着ヘッド306に保持された電子回路部品を撮像する部品撮像装置を含む。
X軸移動装置322に含まれる一対のリニアモータ100、Y軸移動装置324に含まれるリニアモータ100の各可動子104のコイル120(図14参照)への供給電流は、制御装置310において検出されたX方向、Y方向の絶対位置に基づいて制御される。なお、X軸移動装置322に含まれる一対のリニアモータ100の可動子104のコイル120への供給電流は、同期して制御される。また、一対のリニアモータ100の両方に絶対位置検出装置を設ける必要は必ずしもなく、いずれか一方に設ければよい。
また、上記各実施例におけるリニアモータは、装着ヘッドの昇降に使用される駆動源とした使用したり、他に、電子回路部品装着機において、基板の搬送、トレーの引き出し、マガジンの昇降に使用される駆動源として使用したり、一般に物品を搬送する搬送機の駆動弁に使用したりすることもできる。
Claims (11)
- (i)複数の磁石を有し、軸方向に延びる長手部材と、(ii)1つ以上の磁界検出部を有し、前記長手部材と前記軸方向に相対移動可能な検出部材とを備え、前記1つ以上の磁界検出部の出力信号に基づいて、前記検出部材の前記長手部材に対する前記軸方向の相対位置を検出する位置検出装置であって、
前記複数の磁石の各々が、前記軸方向の長さが互いに同じものであり、前記軸方向に沿って等間隔で、かつ、前記長手部材と前記検出部材とを前記相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴って前記1つ以上の磁界検出部の出力信号の合成信号が、前記相対位置と1対1に対応して変化する状態で配設されたことを特徴とする位置検出装置。 - 前記複数の磁石が、前記長手部材と前記検出部材とを前記相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴って、前記1つ以上の磁界検出部との間の、前記軸方向と平行な方向と前記軸方向と直交する方向との少なくとも一方における相対位置関係が変化する状態で配設された請求項1に記載の位置検出装置。
- 互いに前記軸方向と直交する方向に離間するとともに、前記軸方向と平行な第1直線および第2直線を前記長手部材に対して規定し、その長手部材と前記磁界検出部とを、それら第1直線、第2直線に沿って相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴う磁界検出部の出力信号の振幅と波長との少なくとも一方の変化が、前記第1直線に沿って相対移動させた場合と前記第2直線に沿って相対移動させた場合とで互いに異なる状態で、前記複数の磁石が配設された請求項1または2に記載の位置検出装置。
- 前記複数の磁石が、前記長手部材と前記検出部材とを前記相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴って、前記軸方向と直交する方向における前記磁界検出部との間の距離が変化する状態で配設された請求項1ないし3のいずれか1つに記載の位置検出装置。
- 前記複数の磁石が、前記長手部材と前記検出部材とを前記軸方向に沿った一方向に相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴って、前記磁界検出部との間の距離が単調に増加または減少する状態で配設された請求項4に記載の位置検出装置。
- 前記長手部材が、互いに平行に一対設けられ、前記磁界検出部が、それら一対の長手部材の各々に対向する位置に、少なくとも1つずつ設けられ、前記長手部材の各々において、前記複数の磁石が、それぞれ、前記長手部材と前記検出部材とを前記相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴って、各磁界検出部との間の前記軸方向と直交する方向の距離が、位相は互いに異なるが、互いに同じ波長で変化する状態で配設された請求項1ないし5のいずれか1つに記載の位置検出装置。
- 前記複数の磁石の各々が、長手方向に延びた棒状磁石で、かつ、その長手方向と直交する寸法が互いに同じものであり、それら複数の磁石が、それぞれ、前記長手方向が前記軸方向と直交する姿勢で、かつ、前記長手部材と前記検出部材とを前記相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴って前記長手方向の一端と前記磁界検出部との間の距離が変化する状態で配設された請求項1ないし6のいずれか1つに記載の位置検出装置。
- 前記複数の磁石の各々が、外周面が円筒面で、両端面が互いに平行でかつ軸方向に対して傾斜し、形状および寸法が互いに同じものであり、それら複数の磁石が、それぞれ、前記軸方向と平行な姿勢で、かつ、相対回転位相が、軸方向において等角度ずつ変化する状態で、直列に配設された請求項1ないし3のいずれか1つに記載の位置検出装置。
- 前記磁界検出部が、前記検出部材に、前記軸方向と交差する方向に隔てて複数設けられ、前記複数の磁石が、前記長手部材と前記検出部材とを前記相対移動させたと仮定した場合に、その相対移動に伴って、前記複数の磁界検出部の各々との間の前記軸方向と平行な方向における相対位置関係がそれぞれ変化する状態で配設され、当該位置検出装置が、前記複数の磁界検出部による出力信号の合成信号に基づいて前記長手部材と前記検出部材との前記相対位置を計算する計算部を含む請求項1ないし3、8のいずれか1つに記載の位置検出装置。
- 前記検出部材が、前記軸方向と平行な方向に隔たった複数の磁界検出部を有する請求項1ないし9のいずれか1つに記載の位置検出装置。
- 前記検出部材が、コイルを備えた電機子であり、前記長手部材に前記軸方向と直交する方向において隙間を隔てて対向し、その長手部材と前記軸方向に相対移動可能に配設されるとともに、それら電機子と前記長手部材とによってリニアモータが構成され、当該位置検出装置が、前記リニアモータにおける前記長手部材と前記電機子との前記軸方向における相対位置を検出するものである請求項1ないし10のいずれか1つに記載の位置検出装置。
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