JP2010070628A - 相溶化剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、ポリ乳酸とABS樹脂とを含む樹脂組成物に配合される優れた相溶化剤を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸と、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体とを含む樹脂組成物の相溶化剤であって、相溶化剤が特定の化合物を重合開始剤として、ビニル系モノマーをリビングラジカル重合することにより得られるブロック共重合体であることを特徴とする相溶化剤。前記ブロック共重合体は、メタクリル系重合体ブロック−アクリル系重合体ブロック、メタクリル系重合体ブロック−スチレン系重合体ブロック、アクリル系重合体ブロック−アクリル系重合体ブロック及びアクリル系重合体ブロック−スチレン系重合体ブロックからなる群より選ばれた少なくとも1種のブロック共重合体であることが好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】ポリ乳酸と、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体とを含む樹脂組成物の相溶化剤であって、相溶化剤が特定の化合物を重合開始剤として、ビニル系モノマーをリビングラジカル重合することにより得られるブロック共重合体であることを特徴とする相溶化剤。前記ブロック共重合体は、メタクリル系重合体ブロック−アクリル系重合体ブロック、メタクリル系重合体ブロック−スチレン系重合体ブロック、アクリル系重合体ブロック−アクリル系重合体ブロック及びアクリル系重合体ブロック−スチレン系重合体ブロックからなる群より選ばれた少なくとも1種のブロック共重合体であることが好ましい。
【選択図】なし
Description
本発明は、熱可塑性樹脂組成物の相溶化剤に関するものである。詳しくは、ポリ乳酸と、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(以下「ABS樹脂」ともいう。)を含む樹脂組成物の相溶化剤に関するものである。
近年、石油に代表される化石資源の大量消費による枯渇と、二酸化炭素濃度の増加による地球温暖化が問題となりつつある。そのため、石油由来の汎用樹脂を植物由来のポリ乳酸等の植物性樹脂で置き換えようとする動きが世界的に盛んになってきている。例えば、優れた物性バランス及び成形加工性を有するABS樹脂は、広範な分野に使用されているが、この樹脂の一部をポリ乳酸に置き換えることが検討されている。しかしながら、ポリ乳酸は、ノッチつきシャルピー衝撃強さ及び引張特性に劣るといった欠点がある。
このため、例えば特許文献1には、ポリ乳酸を含む生分解性樹脂とABS樹脂からなる樹脂組成物において、ABS樹脂を構成するグラフト重合体のジエン系成分として、特定粒子径の小粒子ゴムを凝集させてなる、凝集肥大化ゴムを使用することが記載されている。
また、特許文献2には、ポリ乳酸、変性ABS樹脂及び相溶化剤を含む植物性樹脂含有組成物であって、前記相溶化剤がアルキルメタクリレートをモノマー成分とする特定分子量の高分子材料が記載されている。
特開2006−45485号公報
特開2007−126516号公報
一般にポリ乳酸とABS樹脂とのポリマーアロイは、ポリ乳酸のペレットとABS樹脂のペレットとを高温で溶融して混ぜ合わせる混練工程を経て得られる。この工程において、ポリ乳酸とABS樹脂とがミクロに、かつ、均一に混合されないと、得られたポリマーアロイの特性は向上できない。従来、ポリ乳酸とABS樹脂は相溶性の問題から、ミクロに混合するには障害が多く、理想的なポリマーアロイを形成することが困難であった。特許文献1及び2には、ポリ乳酸とABS樹脂のポリマーアロイのための相溶化が検討されているが、十分にミクロに、かつ、均一に混合される相溶化剤はなく、耐衝撃性と引張特性を両立する樹脂組成物は得られないという問題があった。
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、ポリ乳酸とABS樹脂とを含む樹脂組成物に配合される優れた相溶化剤を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、ポリ乳酸とABS樹脂とを含む樹脂組成物に特定のリビングラジカル重合開始剤を用いて得られるブロック共重合体を相溶化剤として使用した場合に、ポリ乳酸とABS樹脂がミクロに、かつ、均一に混合され、前記樹脂組成物の耐衝撃性や引張特性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る相溶化剤は、ポリ乳酸とABS樹脂とを含む樹脂組成物の相溶化剤であって、相溶化剤が一般式(1)で示される化合物を重合開始剤として、ビニル系モノマーをリビングラジカル重合することにより得られるブロック共重合体であることを特徴とする。
{式中、R1は炭素数1〜2のアルキル基又は水素であり、R2は炭素数1〜2のアルキル基又はニトリル基であり、R3は−(CH2)m−、mは0〜2であり、R4、R5は炭素数1〜4のアルキル基である}
上記ブロック共重合体は、メタクリル系重合体ブロック−アクリル系重合体ブロック、
メタクリル系重合体ブロック−スチレン系重合体ブロック、アクリル系重合体ブロック−アクリル系重合体ブロック及びアクリル系重合体ブロック−スチレン系重合体ブロックからなる群より選ばれた少なくとも1種のブロック共重合体であることが好ましい。
メタクリル系重合体ブロック−スチレン系重合体ブロック、アクリル系重合体ブロック−アクリル系重合体ブロック及びアクリル系重合体ブロック−スチレン系重合体ブロックからなる群より選ばれた少なくとも1種のブロック共重合体であることが好ましい。
上記ブロック共重合体が、メタクリル系重合体ブロック−アクリル系重合体ブロックであることが好ましい。
上記ブロック共重合体が、メタクリル系重合体ブロック及びアクリル系重合体ブロックの少なくとも一方の重合体ブロックに、グリシジル基を有することが好ましい。
上記相溶化剤の含有量が、ポリ乳酸とABS樹脂の合計量100質量部に対して、0.5〜5質量部であることが好ましい。
本発明に係る相溶化剤は、以上のように、ポリ乳酸とABS樹脂とを含む樹脂組成物に配合され、双方の樹脂をミクロに、かつ、均一に混合することができる。そのため、得られた樹脂組成物は耐衝撃性に優れ、高い引張特性が得られる。また、前記樹脂組成物は、優れた耐久性(耐加水分解性)を発現する。
本発明に用いられるリビングラジカル重合法は、特表2003−500378号公報で示されるニトロオキサイドラジカルを用いるリビングラジカル重合方法で各種のビニルモノマーを制御よく重合でき、一般式(1)で示される特定の重合開始剤を用いれば、末端にカルボキシル基を有するビニル系重合体が得られる。本発明に用いるリビングラジカル重合は、バッチプロセス、セミバッチブロセス、管式連続重合プロセス、連続攪拌槽型プロセス(CSTR)等のどのようなプロセスでも重合できる。好ましくはバッチプロセス、セミバッチブロセス、管式連続重合プロセス、さらに好ましくはバッチプロセスがよい。重合形式は溶剤を用いないバルク重合、溶剤系の溶液重合でもよい。
また、重合温度は100〜150℃がよく、好ましくは105℃〜135℃、さらに好ましくは110〜125℃がよい。重合温度が100℃未満であると、重合速度が著しく遅くなる。一方、重合温度が150℃より高いとニトロオキサイドラジカルが生長ラジカルをキャップできなくなり、生長ラジカル同士の再結合反応や不均化反応、高分子主鎖からの水素引抜反応やバックバイティング反応からのβ分解反応が生じ、リビング重合性を失い、ラジカル重合を制御できなくなる。
本発明で使用する重合溶剤は、有機炭化水素系化合物が適当であり、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類等、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が例示され、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの重合溶剤の中では、ビニル系重合体をよく溶解し、精製しやすいように沸点が比較的低い、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトンが好ましい。
溶剤の使用量は、モノマー100質量部に対し、0〜200質量部が好ましく、0〜100質量部とすることがより好ましい。特に好ましくは0〜50質量部である。溶剤が多すぎると、溶剤に起因する連鎖移動反応が発生し、分子量制御、分子量分布制御、末端のリビング性等の重合制御が悪くなる。
本発明の重合に用いるビニル系モノマーとしては、ラジカル重合性があれば特に限定されず、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。なお、上記表現形式で例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸またはメタクリル酸を表す。
本発明に係るブロック共重合体の構造は、メタクリル系重合体ブロック−アクリル系重合体ブロック、メタクリル系重合体ブロック−スチレン系重合体ブロック、アクリル系重合体ブロック−アクリル系重合体ブロック及びアクリル系重合体ブロック−スチレン系重合体ブロックからなる群より選ばれた少なくとも1種の線状ジブロック共重合体である。これらのブロック共重合体のうち、それぞれのブロック鎖のポリ乳酸及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体に対する相溶性の点から、メタクリル系重合体ブロック−アクリル系重合体ブロックを有することが好ましい。
ここで、メタクリル系重合体ブロックとは、メタクリル酸系モノマーを主成分とするブロックのことであり、その成分を50質量%以上、好ましくは75質量%以上含有することをいう。すなわち、メタクリル系重合体ブロックは、メタクリル酸系モノマー50〜100質量%、好ましくは75〜100質量%、及びこれと共重合可能なビニル系モノマー0〜50質量%、好ましくは0〜25質量%とからなる。前記メタクリル酸系モノマーの割合が少なすぎると、樹脂との相溶性が損なわれる。
アクリル系重合体ブロック及びスチレン系重合体ブロックについても前記と同様に、各々アクリル酸系モノマー及びスチレン系モノマーを主成分とするブロックであり、その成分を50質量%以上、好ましくは75質量%以上含有することをいう。
本発明に係るブロック共重合体は、メタクリル系重合体ブロック及びアクリル系重合体ブロックの少なくとも一方の重合体ブロックにグリシジル基が含有されていることが好ましい。グリシジル基を導入すると、ポリ乳酸との相溶性が向上することや、ポリ乳酸の加水分解を抑制できる等の利点がある。グリシジル基の含有量は、ブロック重合体を1molとしたとき、1〜50mol倍が好ましい。さらに好ましくは3〜30mol倍、特に好ましくは5〜20mol倍である。モル比が1molより小さいと、高温高湿下で長時間放置するとポリ乳酸の加水分解に伴う、引張特性が低下する。一方、モル比が50molを超えると、架橋密度が高くなりすぎ、耐衝撃性及び引張特性が低下してしまう。
ポリ乳酸とABS樹脂がミクロに、かつ、均一に混合されるためには、一方の共重合体ブロックがポリ乳酸に、もう一方の共重合体ブロックがABS樹脂に選択的に相溶し、相溶化剤を混合した後、ポリ乳酸とABS樹脂の界面に局在化することが重要である。そのため、グリシジル基を含有する共重合体ブロックはカルボキシル基を末端に有するポリ乳酸と相溶したほうが好ましい。また、ポリ乳酸の末端カルボキシル基がグリシジル基と反応することは、耐加水分解性付与にも大きく寄与する。
本発明のブロック共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」ともいう。)によるポリスチレン換算で数平均分子量(Mn)が10000〜1000000であることが好ましい。より好ましくは20000〜300000であり、特に好ましくは40000〜200000である。Mnが10000以下であると、ポリ乳酸とABS樹脂がミクロに、かつ、均一に混合されず、耐衝撃性及び引張特性が低下する傾向にある。また、Mnが1000000以上となると合成が困難であることに加え、流動性が低下し、加工性が悪くなってしまう。分子量分布(Mw/Mn)には特に制限はないが、1.05〜5.0が好ましい。より好ましくは1.2〜4.0であり、1.5〜3.0が特に好ましい。
ブロック共重合体を構成するアクリル系重合体ブロックとメタクリル系重合体ブロックの組成比は、アクリル系重合体ブロック(A)が10〜95質量%、メタクリル系重合体ブロック(B)が95〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは(A)が20〜80質量%、(B)が80〜20質量%であり、特に好ましくは(A)が30〜60質量%、(B)が60〜30質量%である。(A)の割合もしくは(B)の割合が10質量%より少ないと、ポリ乳酸とABS樹脂がミクロに、かつ、均一に混合されず、耐衝撃性及び引張特性が低下してしまう。
本発明に係る相溶化剤は、ポリ乳酸とABS樹脂とを含む樹脂組成物に配合されるものである。樹脂組成物の一成分であるポリ乳酸は、植物由来の植物性(成分分解性)樹脂であり、このポリ乳酸を含む樹脂を用いて成形体を作製することにより、成形体に使用する石油を減らすことができる。ポリ乳酸は広く市販されており、例えば、三井化学社製の商品名「レイシア」、日本触媒社製の商品名「ルナーレ」、BASF社製の商品名「エコフレックス」等が挙げられる。
樹脂成分のもう一つの成分であるABS樹脂は、ジエン系ゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物をグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体、及びこれとシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体との混合物をいう。このABS樹脂を形成するジエン系ゴム成分としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン及びスチレン−ブタジエン共重合体等のガラス転移温度が−30℃以下のゴムが用いられ、その割合はABS樹脂成分100重量%中に5〜80重量%であるのが好ましく、より好ましくは8〜50重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。ジエン系ゴム成分にグラフトされるシアン化ビニル化合物としては、特にアクリロニトリルが好ましく使用できる。
またジエン系ゴム成分にグラフトされる芳香族ビニル化合物としては、特にスチレン及びα−メチルスチレンが好ましく使用できる。かかるジエン系ゴム成分にグラフトされる成分の割合は、樹脂成分100重量%中に95〜20重量%が好ましく、より好ましくは92〜50重量%、特に好ましくは90〜70重量%である。更にかかるシアン化ビニル化合物、及び芳香族ビニル化合物の合計量100重量%に対して、シアン化ビニル化合物が5〜50重量%、芳香族ビニル化合物が95〜50重量%であることが好ましい。更に上記のジエン系ゴム成分にグラフトされる成分の一部についてメチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、無水マレイン酸、N置換マレイミド等を混合使用することもでき、これらの含有割合はABS樹脂成分中15重量%以下であるものが好ましい。更に反応で使用する開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等は必要に応じて、従来公知の各種のものが使用可能である。
本発明のABS樹脂においては、ゴム粒子径は0.1〜5.0μmが好ましく、より好ましくは0.2〜3.0μm、特に好ましくは0.3〜1.5μmである。かかるゴム粒子径の分布は単一の分布であるもの及び2山以上の複数の山を有するもののいずれもが使用可能であり、更にそのモルフォロジーにおいてもゴム粒子が単一の相を有するものであっても、ゴム粒子の周りにオクルード相を含有することによりサラミ構造を有するものであってもよい。
また、ABS樹脂がジエン系ゴム成分にグラフトされないシアン化ビニル化合物、及び芳香族ビニル化合物を含有することは従来からよく知られているところであり、本発明のABS樹脂においてもかかる重合の際に発生するフリーの重合体成分を含有するものであってもよい。
また、グラフトされたシアン化ビニル化合物、及び芳香族ビニル化合物の割合は、ジエン系ゴム成分に対してグラフト率(重量%)で表して20〜200%が好ましく、より好ましくは20〜70%のものである。
ABS樹脂は塊状重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよいが、特に塊状重合によるものが好ましい。塊状重合によるABS樹脂は、乳化剤等に由来する不純物を基本的に含有しないため、錆発生の要因がより少なくなるからである。共重合の方法は一段で共重合しても、多段で共重合してもよい。
また、かかる製造法により得られたABS樹脂に芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル成分とを別途共重合して得られるビニル化合物重合体をブレンドしたものも好ましく使用できる。
ABS樹脂は、常温及び高低温において、優れた耐衝撃性、耐化学薬品性、耐熱変形性等を有し、成形加工が容易な樹脂である。電気部品、自動車部品及び機械類等に広く用いられている。ABS樹脂も広く市販されており、例えば、日本エイアンドエル社製の商品名「サンタックAT−05」、「サンタックAT−08」、テクノポリマー社製の商品名「テクノABS110」、「テクノABS330」、「テクノABS565」、旭化成社製の商品名「スタイラック−ABS 321」、「スタイラック−ABS 190」等が挙げられる。
上記樹脂組成物において、ポリ乳酸/ABS樹脂=20/80〜40/60(質量%)であることが好ましく、より好ましくは25/75〜35/65(質量%)である。この範囲であれば、ポリ乳酸の特性とABS樹脂の特性とを共に効果的に発揮できるからである。
ポリ乳酸とABS樹脂の合計量100質量部に対して、相溶化剤は0.5〜5質量部であることが好ましい。より好ましくは1〜4質量部であり、さらに好ましくは2〜3.5質量部である。相溶化剤の配合量が0.5質量部より少ないと、ポリ乳酸とABS樹脂がミクロに、かつ、均一に混合されず、樹脂組成物の耐衝撃性及び引張特性が低下してしまう。また、相溶化剤の配合量が5質量部を超えると、樹脂組成物の耐衝撃性及び引張特性が低下するだけでなく、コスト高となるため好ましくない。
本発明の相溶化剤が用いられるポリ乳酸とABS樹脂を含む樹脂組成物には、必要に応じて充填剤、可塑剤及びカルボキシル基反応性化合物が配合されていてもよい。充填剤や可塑剤を配合することにより、機械特性、成形性、耐熱性等に優れた樹脂組成物が得られ、またカルボキシル基反応性化合物を配合することにより、耐久性及び靭性の向上を図ることができる。
充填剤としては、通常、熱可塑性樹脂の充填剤として用いられる繊維状、板状、粒状、粉末状のものを用いることができる。具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ウォラストナイト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維及び硼素繊維等の繊維状無機充填剤、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレイ、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト及び白土等の板状や粒状の無機充填剤、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナッツ繊維、絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤもしくはラクダ等の動物繊維、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、澱粉、籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材等の、繊維状、粉末状もしくはチップ状の有機充填剤が挙げられる。これらの充填剤の中では、繊維状無機充填剤、板状無機充填剤、有機充填剤が好ましく、特に、ガラス繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー、タルク、マイカ、カオリン、麻繊維、竹繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、紙粉、木粉が好ましい。繊維状充填剤のアスペクト比は5以上であることが好ましく、10以上であることがさらに好ましく、20以上であることがさらに好ましい。これらの充填剤は一種又は二種以上で用いることができる。また、充填剤は、エチレン/酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆又は集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシラン等のカップリング剤等で処理されていても良い。
本発明において、充填剤の配合量は、ポリ乳酸とABS樹脂の合計量100質量部に対して、1〜300質量部が好ましく、5〜150質量部がより好ましい。
可塑剤としては、一般によく知られているものを使用することができ、例えば、ポリアルキレングリコール系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイルおよびパラフィン類等を挙げることができ、耐ブリードアウト性の観点から、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロック及び/又はランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体等のポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物、及び末端エーテル変性化合物などの末端封鎖化合物等のポリアルキレングリコール系可塑剤、ビス(ブチルジグリコール)アジペート、メチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、ベンジルメチルジグリコールアジペート、アセチルトリブチルサイトレート、メトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート等の多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート及びグリセリンモノアセトモノモンタネート等のグリセリン系可塑剤が好ましい。これらの可塑剤は一種又は二種以上で用いることができる。
本発明において、可塑剤の配合量は、ポリ乳酸とABS樹脂の合計量100質量部に対して、0.01〜50質量部の範囲が好ましく、0.5〜20質量部の範囲がより好ましい。
カルボキシル基反応性化合物としては、ポリ乳酸のカルボキシル末端基と反応性のある化合物であれば特に限定されるものではないが、ポリ乳酸の熱分解や加水分解等で生成する乳酸やギ酸等の酸性低分子化合物のカルボキシル基とも反応性を有するものであればより好ましく、熱分解により生成する酸性低分子化合物のヒドロキシル基末端基とも反応性を有する化合物であることがさらに好ましい。
このようなカルボキシル基反応性化合物としては、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ基含有化合物、2,2′−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)等のオキサゾリン化合物、オキサジン化合物、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、2,6,2′,6′−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、ポリカルボジイミド等のカルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を使用することが好ましく、なかでもエポキシ基含有化合物及び/又はカルボジイミド化合物が好ましい。上記カルボキシル基反応性化合物は、一種又は二種以上の化合物を任意に選択して使用することができる。
本発明において、カルボキシル基反応性化合物の量は、ポリ乳酸とABS樹脂の合計量100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましい。
次に、本発明における樹脂組成物及び樹脂成形体の製造方法の実施形態について説明する。本発明における樹脂組成物の製造方法の一例は、ポリ乳酸のペレットとABS樹脂のペレットとを、質量混合比2:8〜4:6の割合で混合した混合物に、前述の相溶化剤をさらに混合する工程と、その混合物を混練する工程とを含む。
混合方法としては、ポリ乳酸のペレットと、ABS樹脂のペレットと、相溶化剤とをそれぞれドライブレンドして混合してもよく、また、相溶化剤の一部をポリ乳酸又はABS樹脂のペレットに予めプリブレンドし、残りの相溶化剤と、ポリ乳酸のペレットと、ABS樹脂のペレットとをドライブレンドして混合してもよい。混合機としては、ミルロール、バンバリーミキサー、スーパーミキサー等を使用できる。
混練は押出機を用いて行うことができる。押出機としては、単軸押出機、二軸押出機のいずれも使用できるが、同方向二軸押出機を使用することが好ましい。樹脂ペレットと相溶化剤とのより均一な混合が可能だからである。溶融温度は、210℃〜230℃以下とする。
さらに、相溶化剤は、サイドフィーダー等を用いて単軸押出機又は二軸押出機に供給してもよい。
また、本発明における樹脂成形体の製造方法の一例は、上記樹脂組成物を射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形等により成形する工程を含む。成形条件としては、例えば射出成形の場合では、次のように設定できる。射出成形前の樹脂組成物の乾燥条件は、乾燥温度が70℃〜100℃、乾燥時間が4時間〜6時間である。また、射出成形の際の金型温度は、10℃〜85℃、シリンダ温度は、180℃〜250℃、冷却時間は、10秒〜90秒である。
本発明の相溶化剤を用いて得られた樹脂成形品は、自動車部品(内装・外装部品等)、電気・電子部品(各種ハウジング、歯車、ギア等)、建築部材、土木部材、農業資材及び日用品等の各種用途に利用することができる。
具体的には、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプ等の自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジング、スペアタイヤカバー、ドアトリム等の自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドル等の自動車用外装部品、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクター等の各種自動車用コネクターに代表される自動車部品を挙げることができる。また、ノートパソコンハウジング及び内部部品、CRTディスプレーハウジング及び内部部品、プリンターハウジング及び内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイル等の携帯端末ハウジング及び内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDD等)ドライブのハウジング及び内部部品、コピー機のハウジング及び内部部品、ファクシミリのハウジング及び内部部品、パラボラアンテナ等に代表される電気・電子部品を挙げることができる。さらに、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスク等の音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等に代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。また、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機等のハウジングや内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、モーターケース、スイッチ、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビン等の電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床等の建築部材、釣り糸、漁網、海藻養殖網、釣り餌袋等の水産関連部材、植生ネット、植生マット、防草袋、防草ネット、養生シート、法面保護シート、飛灰押さえシート、ドレーンシート、保水シート、汚泥・ヘドロ脱水袋、コンクリート型枠等の土木関連部材、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、ファン、テグス、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等の機械部品、マルチフィルム、トンネル用フィルム、防鳥シート、植生保護用不織布、育苗用ポット、植生杭、種紐テープ、発芽シート、ハウス内張シート、農業用塩ビフィルムの止め具、緩効性肥料、防根シート、園芸ネット、防虫ネット、幼齢木ネット、プリントラミネート、肥料袋、試料袋、土嚢、獣害防止ネット、誘因紐、防風網などの農業部材、紙おむつ、生理用品包材、綿棒、おしぼり、便座ふきなどの衛生用品、医療用不織布(縫合部補強材、癒着防止膜、人工器官補修材)、創傷被覆材、キズテープ包帯、貼符材基布、手術用縫合糸、骨折補強材、医療用フィルム等の医療用品、カレンダー、文具、衣料、食品等の包装用フィルム、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴ等の容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、ラップ、発泡緩衝剤、紙ラミ、シャンプーボトル、飲料用ボトル、カップ、キャンディ包装、シュリンクラベル、蓋材料、窓付き封筒、果物かご、手切れテープ、イージーピール包装、卵パック、HDD用包装、コンポスト袋、記録メディア包装、ショッピングバック、電気・電子部品等のラッピングフィルム等の容器・包装、天然繊維複合、ポロシャツ、Tシャツ、インナー、ユニホーム、セーター、靴下、ネクタイ等の各種衣料、カーテン、イス貼り地、カーペット、テーブルクロス、布団地、壁紙、ふろしき等のインテリア用品、キャリアーテープ、プリントラミ、感熱孔版印刷用フィルム、離型フィルム、多孔性フィルム、コンテナバッグ、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、ICカード、紙、皮革、不織布等のホットメルトバインダー、磁性体、硫化亜鉛、電極材料等粉体のバインダー、光学素子、導電性エンボステープ、ICトレー、ゴルフティー、ゴミ袋、レジ袋、各種ネット、歯ブラシ、文房具、水切りネット、ボディタオル、ハンドタオル、お茶パック、排水溝フィルター、クリアファイル、コート剤、接着剤、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライター等として有用である。
<ブロック共重合体の合成>
以下に本発明の実施例を合成例、比較例と共に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことは言うまでもない。なお、以下において「部」は特にことわらない限り質量基準である。
以下に本発明の実施例を合成例、比較例と共に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことは言うまでもない。なお、以下において「部」は特にことわらない限り質量基準である。
(ブロック共重合体Aの製造方法) オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器にアクリル酸メチル(以下「MA」ともいう。)475質量部、リビング重合開始剤[式(2)]21.1質量部、メチルエチルケトン(以下「MEK」ともいう。)204質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が112℃保たれるようジャケット温度は調整された。6時間後にMAの重合率は89%であった。重合体の性状はMw11500、Mn9500、Mw/Mn1.21であった。次に、得られた重合体のMEK溶液を296質量部、メタクリル酸メチル(以下「MMA」ともいう。)219質量部、MEK185質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が112℃保たれるようジャケット温度は調整された。2時間後にMMAの重合率は68%であった。冷却後、反応液を抜き出し、反応液の10倍量のメタノールに再沈殿し、上澄みをデカンテーションにより取り除き、沈殿物を真空乾燥機で60℃減圧乾燥することで、残MMA、MEKなどを除去し、約200質量部のブロック共重合体Aを得た。ブロック重合体Aの性状は、Mw23530、Mn15790、Mw/Mn1.49、重量比でPMA:PMMA=53:47であった。
(ブロック共重合体Bの製造方法) オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器にMA489質量部、リビングラジカル重合開始剤[式(2)]1.8質量部、MEK210質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が112℃保たれるようジャケット温度は調整された。4時間後にMAの重合率は71%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約270質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw73560、Mn49040、Mw/Mn1.50であった。次に、得られた重合体を高分子開始剤として96.4質量部、MMA394質量部、MEK210質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が112℃保たれるようジャケット温度は調整された。4時間後にMMAの重合率は30%であった。冷却後、反応液を抜き出し、反応液の10倍量のメタノールに再沈殿し、上澄みをデカンテーションにより取り除き、沈殿物を真空乾燥機で60℃減圧乾燥することで、残MMA、MEKなどを除去し、約161質量部のブロック共重合体Bを得た。ブロック重合体Bの性状は、Mw191700、Mn103550、Mw/Mn1.85で、重量比でPMA:PMMA=46:54であった。
(ブロック共重合体Cの製造方法) オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器にMA489質量部、リビングラジカル重合開始剤[式(2)]1.8質量部、MEK210質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が112℃保たれるようジャケット温度は調整された。4時間後にMAの重合率は71%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約270質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw73560、Mn49040、Mw/Mn1.50であった。次に、得られた重合体を高分子開始剤として92.7質量部、MMA379質量部、グリシジルエチルメタクリレート(以下「GMA」ともいう。)18.5質量部、MEK210質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が112℃保たれるようジャケット温度は調整された。2時間後にMMAの重合率は37%であった。冷却後、反応液を抜き出し、反応液の10倍量のメタノールに再沈殿し、上澄みをデカンテーションにより取り除き、沈殿物を真空乾燥機で60℃減圧乾燥することで、残MMA、MEKなどを除去し、約176質量部のブロック共重合体Cを得た。ブロック重合体Cの性状は、Mw215870、Mn99940、Mw/Mn2.16で、重量比でPMA:PMMA:PGMA=43:54:4でファンクショナリティーは2.7個/共重合体であった。
(ブロック共重合体Dの製造方法) オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器にMA476質量部、GMA12質量部、リビングラジカル重合開始剤[式(2)]1.7質量部、酢酸エチル210質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が112℃保たれるようジャケット温度は調整された。4時間後にMAの重合率は63%、GMAの重合率は92%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約310質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw74940、Mn55100、Mw/Mn1.36であった。次に、得られた重合体を高分子開始剤として106質量部、MMA384質量部、MEK210質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を112℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が112℃保たれるようジャケット温度は調整された。4時間後にMMAの重合率は30%であった。冷却後、反応液を抜き出し、反応液の10倍量のメタノールに再沈殿し、上澄みをデカンテーションにより取り除き、沈殿物を真空乾燥機で60℃減圧乾燥することで、残MMA、MEKなどを除去したブロック共重合体Dを得た。ブロック重合体Dの性状は、Mw220960、Mn139850、Mw/Mn1.58で、重量比でPMA:PGMA:PMMA=43:2:55でファンクショナリティーは1.2個/共重合体であった。
[実施例1〜7、比較例1〜4]
上記、ポリ乳酸、ABS樹脂、ブロック共重合体を表1に示した配合割合で混合し、40mm二軸押出機を用いて220℃で溶融混合し、ペレット化した後、射出成形機にて各種試験片を作成した。評価結果を表1に示す。使用した原料は次の通りである。
ポリ乳酸 : 三井化学社製 商品名「レイシアH−100」
ABS樹脂: 日本エイアンドエル社製 商品名「サンタックAT−08」
GP−301:東亞合成社製 商品名「RESEDA」
なお、それぞれの評価方法を以下に示す。
上記、ポリ乳酸、ABS樹脂、ブロック共重合体を表1に示した配合割合で混合し、40mm二軸押出機を用いて220℃で溶融混合し、ペレット化した後、射出成形機にて各種試験片を作成した。評価結果を表1に示す。使用した原料は次の通りである。
ポリ乳酸 : 三井化学社製 商品名「レイシアH−100」
ABS樹脂: 日本エイアンドエル社製 商品名「サンタックAT−08」
GP−301:東亞合成社製 商品名「RESEDA」
なお、それぞれの評価方法を以下に示す。
(a)分子量
装置: HLC−8120(東ソー社製)
カラム: TSKgel SuperMultiporeHZ−M 4本(東ソー社製)
カラム温度: 40℃
溶離液: テトラヒドロフラン 0.35ml/min
検出器: RI
GPCにより測定した分子量をポリスチレンの分子量を基準にして換算した。
装置: HLC−8120(東ソー社製)
カラム: TSKgel SuperMultiporeHZ−M 4本(東ソー社製)
カラム温度: 40℃
溶離液: テトラヒドロフラン 0.35ml/min
検出器: RI
GPCにより測定した分子量をポリスチレンの分子量を基準にして換算した。
(b)相溶性
2mm成型したフィルムの断面をウルトラミクロトームで超薄切片化し、超薄切片を四酸化オスニウムで染色し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。ポリ乳酸及びABS樹脂のうち、配合量の少ない樹脂のドメインが微細化されているか否かにより、相溶性を評価した。その結果、評価したドメインが小さく、均一な場合を○、いずれかを満たしていない場合を△、いずれも満たしていない場合を×とした。
2mm成型したフィルムの断面をウルトラミクロトームで超薄切片化し、超薄切片を四酸化オスニウムで染色し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。ポリ乳酸及びABS樹脂のうち、配合量の少ない樹脂のドメインが微細化されているか否かにより、相溶性を評価した。その結果、評価したドメインが小さく、均一な場合を○、いずれかを満たしていない場合を△、いずれも満たしていない場合を×とした。
(c)シャルピー衝撃強度
10mm(幅)×100mm(長さ)×3mm(厚み)、ノッチ2mmに成型し、試験片を作製する。23℃、50%RHの環境において試験片を固定台に載せ、振り子を落下させ試験片を破壊し、衝撃エネルギーを記録し衝撃強度を算出した(JIS K7111に準拠)。
10mm(幅)×100mm(長さ)×3mm(厚み)、ノッチ2mmに成型し、試験片を作製する。23℃、50%RHの環境において試験片を固定台に載せ、振り子を落下させ試験片を破壊し、衝撃エネルギーを記録し衝撃強度を算出した(JIS K7111に準拠)。
(d)引張試験
射出成形により引張試験ダンベル(1号ダンベル、厚さ2mm)を作製し、23℃、60%RHにおける引張降伏応力及び引張破断伸度を引張試験機を用いて測定した。測定条件は次の通りである。
チャック間距離35mm、引張速度2mm/min(JISのK7113に準拠)
射出成形により引張試験ダンベル(1号ダンベル、厚さ2mm)を作製し、23℃、60%RHにおける引張降伏応力及び引張破断伸度を引張試験機を用いて測定した。測定条件は次の通りである。
チャック間距離35mm、引張速度2mm/min(JISのK7113に準拠)
(e)引張破断伸度の保持率
上記方法により作製した引張試験ダンベルを60℃、95%RHの環境に1000時間放置し、引張破断伸度の保持率が100%〜80%であれば○、80%〜50%であれば△、50%以下であれば×とした。
上記方法により作製した引張試験ダンベルを60℃、95%RHの環境に1000時間放置し、引張破断伸度の保持率が100%〜80%であれば○、80%〜50%であれば△、50%以下であれば×とした。
以上のように、本発明の相溶化剤、ポリ乳酸及びABS樹脂を含む樹脂組成物は、ノッチつきシャルピー衝撃強さ及び引張特性に優れ、さらに耐加水分解性が良好である。また、環境問題を考慮し、石油原料の使用を抑制できることから、家電、建材、サニタリー、農業及び車両分野等に使用される樹脂に応用することができる。
Claims (5)
- 上記ブロック共重合体が、メタクリル系重合体ブロック−アクリル系重合体ブロック、
メタクリル系重合体ブロック−スチレン系重合体ブロック、アクリル系重合体ブロック−アクリル系重合体ブロック及びアクリル系重合体ブロック−スチレン系重合体ブロックからなる群より選ばれた少なくとも1種のブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の相溶化剤。 - 上記ブロック共重合体が、メタクリル系重合体ブロック−アクリル系重合体ブロックであることを特徴とする請求項1に記載の相溶化剤。
- 上記ブロック共重合体が、メタクリル系重合体ブロック及びアクリル系重合体ブロックの少なくとも一方の重合体ブロックに、グリシジル基を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の相溶化剤。
- 上記相溶化剤の含有量が、ポリ乳酸とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の合計量100質量部に対して、0.5〜5質量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の相溶化剤。
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