以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1(a),(b)に、本発明の一実施形態に係るレーザーダイシング用のダイシング−ダイボンディングテープを部分切欠正面断面図及び部分切欠平面図で示す。
図1(a),(b)に示すように、ダイシング−ダイボンディングテープ1は、長尺状の離型フィルム2を有する。離型フィルム2の上面2aに、ダイボンディングフィルム3、非粘着フィルム4及びダイシングフィルム5がこの順に積層されている。ダイボンディングフィルム3の離型フィルム2が貼付された表面3aは、半導体ウェーハが接合される面である。
ダイボンディングフィルム3、非粘着フィルム4及びダイシングフィルム5の平面形状は、円形である。ダイボンディングフィルム3の径は、非粘着フィルム4の径と異なっていてもよい。非粘着フィルム4の径は、ダイボンディングフィルム3の径よりも大きいことが好ましい。非粘着フィルム4の外周側面は、ダイボンディングフィルム3の外周側面よりも外側に張り出していることが好ましい。これらの場合には、ダイボンディングフィルム3に半導体ウェーハを接合する際に、非粘着フィルム4が設けられている位置に対応する部分に、半導体ウェーハを正確に位置合わせできる。また、半導体ウェーハをダイボンディングフィルム3に確実に接合できる。
ダイシングフィルム5は、基材5aと、基材5aの片面に塗布された粘着剤5bとを有する。ダイシングフィルム5は、非粘着フィルム4のダイボンディングフィルム3が貼付された表面4aとは反対側の表面4bに、粘着剤5b側から貼付されている。ダイシングフィルム5は、非粘着フィルム4を介して、ダイボンディングフィルム3に間接的に貼付されている。
ダイシングフィルム5の径は、ダイボンディングフィルム3及び非粘着フィルム4の径よりも大きい。このため、図1(b)に示すように、ダイシングフィルム5は、ダイボンディングフィルム3及び非粘着フィルム4の外周縁を超えるように延ばされている延長部5cを有する。該延長部5cの一面が、粘着剤5bにより離型フィルム2の上面2aに貼付されている。すなわち、ダイボンディングフィルム3及び非粘着フィルム4の外周縁よりも外側の領域において、ダイシングフィルム5が離型フィルム2の上面2aに貼付されている。
このように、ダイシングフィルム5の径は、ダイボンディングフィルム3及び非粘着フィルム4の径よりも大きいことが好ましい。ダイシングフィルム5の外周側面は、ダイボンディングフィルム3及び非粘着フィルム4の外周側面よりも外側に張り出していることが好ましい。これらの場合には、ダイシングフィルム5にダイシングリングを貼り付けることができる。ダイボンディングフィルム3の表面3aに半導体ウェーハを接合する際に、延長部5cに位置している粘着剤5bにダイシングリングを貼付できる。また、ダイボンディングフィルム3に、半導体ウェーハを正確に位置合わせして貼り付けることができる。また、ダイシングリングと半導体ウェーハとを異なる層に貼り付けることができるので、ダイボンディングフィルム3とダイシングフィルム5とをそれぞれ最適な材料により構成できる。このため、切削性及びピックアップ性と、ダイシング後の接合信頼性とが高くなる。
また、非粘着フィルム4の外周側面は、ダイボンディングフィルム3により覆われていないことが好ましい。
図1(b)に示すように、長尺状の離型フィルム2の上面2aに、ダイボンディングフィルム3、非粘着フィルム4及びダイシングフィルム5からなる複数の積層体が等間隔に配置されている。離型フィルム2の上面2aに保護シート6,7が設けられている。保護シート6,7が設けられている場合には、ダイシング−ダイボンディングテープ1を例えばロール状に巻回した場合に、ダイボンディングフィルム3、非粘着フィルム4及びダイシングフィルム5に加わる圧力が、保護シート6,7により軽減される。なお、保護シート6,7は設けられていなくてもよい。
離型フィルム2の厚みや形状は特に限定されない。例えば正方形の形状の離型フィルムが用いられてもよい。離型フィルムの上面2aにダイボンディングフィルム、非粘着フィルム及びダイシングフィルムからなる1つの積層体のみが配置されていてもよい。また、上記積層体及び離型フィルムは、ロール状に巻回されていなくてもよい。また、ダイボンディングフィルム、非粘着フィルム及びダイシングフィルムの厚みや形状も特に限定されない。
ダイシング−ダイボンディングテープ1では、ダイボンディングフィルム3付き半導体チップを取り出す際に、ダイボンディングフィルム3と非粘着フィルム4との剥離力は、非粘着フィルム4とダイシングフィルム5との剥離力よりも小さいことが好ましい。この場合、ダイボンディングフィルム3を非粘着フィルム4から両者の界面で剥離し易くなる。従って、ダイボンディングフィルム3ごと半導体チップを、非粘着フィルム4からより一層容易に剥離して、取り出すことができる。
ダイボンディングフィルム3ごと半導体チップを、非粘着フィルム4から剥離して、取り出す際には、ダイボンディングフィルム3と非粘着フィルム4との剥離強度は、15N/m以下であることが好ましく、7N/m以下であることがより好ましく、5N/m以下であることがさらに好ましい。剥離強度が大きすぎると、非粘着フィルム4からのダイボンディングフィルム3の剥離が困難となることがある。剥離強度の好ましい下限は、1N/mである。剥離強度が小さすぎると、ダイシングの際に半導体チップが剥離してしまう(チップ飛びという)ことがある。
(非粘着フィルム)
上記非粘着フィルム4は、ダイボンディングフィルム3と非粘着フィルム4との界面で、ダイボンディングフィルム3を非粘着フィルム4から剥離するために設けられている。
非粘着フィルム4は、非粘着性を有する。なお、本明細書において、「非粘着性フィルム」には、表面が粘着性を有しないフィルムだけでなく、表面を指で触ったときにくっつかないフィルムをも含まれることとする。具体的には、「非粘着性フィルム」における「非粘着」とは、非粘着フィルムをステンレス板に貼り付けて、非粘着フィルムを300mm/分の剥離速度で剥離したときに、剥離力が5g/25mm幅以下であることを意味する。
本実施形態の特徴は、非粘着フィルム4が樹脂組成物の架橋体(樹脂架橋体ともいう)を主成分として含み、さらに非粘着フィルム4の25℃における貯蔵弾性率が1〜1000MPaの範囲にあり、かつ60℃における貯蔵弾性率が1MPa以上であることにある。
非粘着フィルム4が樹脂組成物の架橋体を主成分として含むことにより、レーザー光が照射された際に、非粘着フィルム4が溶融し難くなり、かつアブレーションが生じ難くなる。そのため、レーザーダイシングするに際し、非粘着フィルム4に切り込みが形成され難くなる。さらに、非粘着フィルム4が樹脂組成物の架橋体を主成分として含むことにより、レーザーダイシング後のダイボンディングフィルム3の非粘着フィルム4からの剥離性を高めることができる。
また、非粘着フィルム4の25℃及び60℃における貯蔵弾性率が上記特定の範囲にあることによっても、室温及び加熱時の両方において非粘着フィルム4が適度な硬さを有するようになる。このため、レーザーダイシングするに際し、非粘着フィルム4に切り込みが形成され難くなり、かつ、レーザーダイシング後のダイボンディングフィルム3のダイシングフィルムからの剥離性を高めることができる。
非粘着フィルム4の25℃における貯蔵弾性率が1MPa未満であると、レーザー光の照射により非粘着フィルム4が局所的に加熱された場合に、非粘着フィルムが柔らかくなりすぎて溶融し、切り込みが形成され易くなる。上記貯蔵弾性率が1000MPaを超えると、非粘着フィルムが硬すぎて、エキスパンド性が不足し、ピックアップ性に劣ることがある。非粘着フィルム4の25℃における貯蔵弾性率の好ましい上限は600MPa、更に好ましい上限は400MPaであり、好ましい下限は3MPaである。
非粘着フィルム4の60℃における貯蔵弾性率が1MPa未満であると、レーザー光の照射により非粘着フィルム4が局所的に加熱された場合に、非粘着フィルムが柔らかくなりすぎて溶融し、切り込みが形成され易くなったり、切断面においてダイボンディング層と融着して切断面が汚染されたりすることがある。好ましい上限は、500MPaである。500MPaを超えると、材料の選択性に劣り、結果、ピックアップ性に悪影響を及ぼす場合がある。非粘着フィルム4の60℃における貯蔵弾性率の好ましい下限は1.5MPaである。
非粘着フィルム4は、樹脂組成物の架橋体を主成分として含む。すなわち、非粘着フィルムは、樹脂組成物を架橋させた架橋体を主成分として含む。この場合、非粘着フィルム4は、樹脂組成物の架橋体を50重量%以上含む。非粘着フィルム4に主成分として含まれている上記樹脂組成物の架橋体としては、(メタ)アクリル樹脂又はポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物の架橋体等が挙げられる。レーザーダイシング後のエキスパンド性を高めることができるので、(メタ)アクリル樹脂又はポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物の架橋体が好適に用いられる。
上記樹脂組成物の架橋体は、(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂組成物の架橋体であることがより好ましい。(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂組成物の架橋体を用いた場合、非粘着フィルムの表面エネルギーや弾性率を容易に調整できる。さらに、レーザー光の照射により非粘着フィルムに切り込みがより一層形成され難くなり、従って半導体ウェーハ及びダイボンディングフィルムをより一層精度良く切断できる。
また、上記(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂組成物の架橋体を用いた場合には、レーザーダイシング後のダイボンディングフィルム3の非粘着フィルム4からの剥離性をより一層高めることができる。特に、薄型の半導体チップを用いた場合に、ダイボンディングフィルム3の非粘着フィルム4からの剥離性を大きく高めることができる。さらに、上記(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂組成物の架橋体を用いる場合、該架橋体を得るための(メタ)アクリル樹脂を適宜選択することにより、非粘着フィルム4の極性を低めたり、弾性率を低めたり、破断伸度を容易に制御したりすることができる。
さらに、(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂組成物の架橋体を用いた場合には、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物の架橋体を用いた場合に比べて、非粘着フィルム4とダイボンディングフィルム3との界面の融合を防ぐことができる。このため、レーザーダイシング後のダイボンディングフィルム3の非粘着フィルム4からの剥離性をより一層高めることができる。
なお、本明細書において、「架橋体」とは、3次元的に架橋された状態を意味する。架橋体としては、化学的架橋に加えて、紫外線、電子線、又は加熱等により後架橋処理された架橋体が好ましい。高架橋体が得られるためである。
樹脂組成物の架橋体の架橋度としては、以下の方法で測定されるゲル分率が90%以上であることが好ましい。90%未満であると、架橋が不充分となり、上述の弾性率挙動が得られなかったり、ピックアップ性が劣ったりする場合がある。より好ましくは、95%以上である。
上記ゲル分率の測定方法としては、樹脂組成物の架橋体を非粘着フィルムと同じ厚みのフィルム状にし、そこから50mm×100mmの平面長方形状の試験片を切り出す。この試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬する。その後、試験片を含む酢酸エチルを200メッシュのステンレス製金網によりろ過して、試験片の不溶分のみを酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させる。そして、乾燥後の試験片の不溶分の重量を測定し、下記式を用いてゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=100×(W2/W1)
(W1:浸漬前の試験片の重量、W2:浸漬、ろ過、乾燥後の試験片不溶分の重量)
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「メタクリル酸又はアクリル酸」を意味する。
非粘着フィルム4を構成する材料は、光硬化性樹脂であってもよく、あるいは熱硬化性樹脂であってもよい。上記光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を用いた場合、光硬化もしくは熱硬化させることにより、非粘着フィルム4が形成される。形成された非粘着フィルム4では、樹脂の硬化は既に完了していることが望ましい。樹脂の硬化が完了していない場合には、例えばレーザー光が照射された際に、非粘着フィルム4が溶融し、溶融した非粘着フィルム4がダイシングフィルム3に付着するおそれがある。
また、半導体チップの製造に際しては、好ましくは、レーザーダイシング後に非粘着フィルム4に対するダイボンディングフィルム3の剥離力を変化させずにピックアップが行われる。この場合、光の照射等によって非粘着フィルム4が硬化されないことが望ましい。従って、上記光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を用いて形成された非粘着フィルム4では、これらの硬化性樹脂はすでに硬化されていることが望ましい。
非粘着フィルム4を構成する樹脂組成物には、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂またはポリイミド樹脂等の他の合成樹脂を添加してもよい。
上記(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂組成物の架橋体は、(メタ)アクリル樹脂と架橋剤とを含む樹脂組成物を架橋させることにより得られる。また、上記ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物の架橋体は、例えば光ラジカル重合剤を配合した樹脂組成物に、電子線を照射し、半ば強制的に架橋可能な基を架橋させることにより得られる。
上記樹脂組成物は、上記(メタ)アクリル樹脂として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーを含むことが好ましい。この好ましい(メタ)アクリル樹脂を用いた場合には、レーザーダイシング後に、ダイボンディングフィルム3を非粘着フィルム4から剥離するに際し、ダイボンディングフィルム3の欠けがより一層生じ難くなる。さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーを用いた場合、非粘着フィルム4の貯蔵弾性率と破断伸度とを容易に制御できる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーは特に限定されない。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーは、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーであることが好ましい。炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーを用いた場合には、非粘着フィルム4の極性が充分に低くなる。このため、非粘着フィルム4の表面エネルギーを低くすることができ、ダイボンディングフィルム3の非粘着フィルム4からの剥離性をより一層高めることができる。アルキル基の炭素数が18を超えると、溶液重合が困難となり、非粘着フィルム4の製造が困難となることがある。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーのアルキル基の炭素数は、6以上であることが好ましい。炭素数が6以上であると、非粘着フィルム4の極性がより一層低くなる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーは、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを主モノマーとして用いて得られたポリマーであることが好ましい。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーは、上記主モノマーと、官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させて得られた(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーであることが好ましい。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーのアルキル基の炭素数は2以上であることがより好ましく、6以上であることが特に好ましい。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは特に限定されない。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、炭素数1〜18のアルキル基を有する一級又は二級のアルキルアルコールと、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により得られた(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーであることが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシル、アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、アクリル酸イソミリスチル、(メタ)アクリル酸n−ステアリル又は(メタ)アクリル酸オクチル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
なかでも、炭素数6以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーが特に好ましい。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸イソデシル、アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、アクリル酸イソミリスチル又は(メタ)アクリル酸n−ステアリル等が挙げられる。
炭素数6以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーを用いた場合、非粘着フィルム4の表面エネルギーを低くすることができる。さらに、ダイボンディングフィルム3の非粘着フィルム4からの剥離性をより一層高めることができる。
上記官能基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル又は(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマーが挙げられる。
また、上記(メタ)アクリル樹脂は、反応性二重結合を有する硬化型アクリル系ポリマーであることが好ましい。この場合には、該硬化型アクリル系ポリマーを含む樹脂組成物を架橋させた架橋体の架橋密度を高めることができる。上記硬化型アクリル系ポリマーとしては、反応性二重結合を側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有する硬化型アクリル系ポリマー等が挙げられる。アクリル系ポリマーに反応性二重結合を導入する方法は、特に制限されない。分子設計が容易であるため、上記反応性二重結合は、側鎖に導入されていることが好ましい。例えば、アクリル系ポリマーに官能基含有モノマーを共重合させた官能基含有アクリル系ポリマーを用意した後に、この官能基(以下、官能基Aともいう)と反応し得る官能基(以下、官能基Bともいう)、及び反応性二重結合を両方有する化合物(以下、化合物Cともいう)を、反応性二重結合が残存するように、上記官能基含有アクリル系ポリマーを縮合反応又は付加反応することによって導入する方法が挙げられる。
上記官能基Aと官能基Bとの組合せの例としては、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジル基、又は水酸基とイソシアネート基等の組合せが挙げられる。これら官能基の組合せのなかでも、反応を容易に制御できるため、水酸基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせでは、どの官能基を上記官能基含有アクリル系ポリマーが含有してもよく、またどの官能基を上記化合物Cが含有してもよい。水酸基を有する官能基含有アクリル系ポリマーと、イソシアネート基を有する上記化合物の組合せが好ましい。イソシアネート基及び反応性二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、又はm−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、上記水酸基を有する官能基含有アクリル系ポリマーは、アクリル系ポリマーに、上述の水酸基含有モノマー又は水酸基含有エーテル系化合物を共重合させることにより得られたアクリル系ポリマーであることが好ましい。上記水酸基含有エーテル系化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル又はジエチレングルコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
上記非粘着フィルム4は、(メタ)アクリル樹脂を含む樹脂組成物を架橋させた架橋体により形成されていることが好ましい。この場合、レーザーダイシングに際しての切削性や、レーザーダイシング後のダイボンディングフィルム3の非粘着フィルム4からの剥離性を高めることができる。
上記改質用モノマーは特に限定されない。上記改質用モノマーは、カルボキシル基を含有するモノマーではないことが好ましい。カルボキシル基を含有するモノマーを使用すると、非粘着フィルム4の極性が高くなり、ピックアップ性に悪影響を及ぼす場合がある。
上記改質用モノマーとしては、例えば、二重結合を有するブタジエン、スチレン、イソプレン、またはアクリロニトリルなどが挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーの酸価は、2以下であることが望ましい。酸価が2以下であると、非粘着フィルム4の表面エネルギーを小さくすることができ、ダイボンディングフィルム3の非粘着フィルム4からの剥離性をより一層高めることができる。
上記酸価を2以下に調整する方法は特に限定されない。上記酸価を2以下に調整する方法としては、上記改質用モノマーとして、カルボキシル基を含有するモノマーを使用しない方法、または重合反応過程においてエステルの加水分解が生じないように反応を調整する方法が好ましい。
尚、本明細書において酸価とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマー1g中に含まれる遊離酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数である。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーの重量平均分子量は、20万〜200万の範囲が好ましい。20万未満では、塗工成形時に外観欠点を多量に生じることがある。200万を超えると、製造時に増粘しすぎてポリマー溶液を取り出すことが出来なくなることがある。
非粘着フィルム4を形成するための樹脂組成物は、上記(メタ)アクリル樹脂の他に、アクリル基と反応可能な二重結合を有し、重量平均分子量が500〜50000の範囲にあるオリゴマーをさらに含むことが好ましい。このオリゴマーを用いた場合には、非粘着フィルム4からのダイボンディングフィルム3の剥離性がより一層高くなる。また、非粘着フィルム4の破断伸度を5〜100%の範囲に容易に設計できる。上記オリゴマーの重量平均分子量が500未満であると、オリゴマーの配合による効果が充分に得られないことがある。上記オリゴマーの重量平均分子量が50000を超えると、非粘着フィルム4に対するダイボンディングフィルム3の剥離性が低下することがある。
上記オリゴマーは特に限定されない。上記オリゴマーは、柔軟性を有する骨格を有することが好ましい。該柔軟性を有する骨格は、ポリエーテル骨格、ポリエステル骨格、ブタジエン骨格、ポリウレタン骨格、シリケート骨格またはジシクロペンタジエン骨格であることが好ましい。柔軟性を有する骨格とは、上記オリゴマーのTgが25℃以下となる骨格をいうものとする。
また、上記オリゴマーは、ポリエーテル骨格またはポリエステル骨格を有するアクリルオリゴマーであることがより好ましい。上記ポリエーテル骨格またはポリエステル骨格を有するアクリルオリゴマーとしては、ポリプロピレンオキシドジアクリレート、またはポリエーテル系ウレタンアクリルオリゴマー等が挙げられる。その市販品としては、M−225(東亜合成社製)及びUN−7600(根上工業社製)などが挙げられる。
上記オリゴマーのアクリル基と反応可能な二重結合は特に限定されない。該二重結合を含む基として、(メタ)アクリル基、ビニル基またはアリル基等が挙げられる。中でも、アクリル基が好ましい。上記オリゴマーは、アクリル基と反応可能な二重結合を2以上有することが好ましい。
また、上記アクリル基と反応可能な二重結合は、上記オリゴマー1分子中に2個以上含有されていることが好ましい。上記アクリル基と反応可能な二重結合を有するオリゴマーは、加熱や光の照射により、上記(メタ)アクリル樹脂と架橋する。この架橋により、架橋体中に上記オリゴマーに由来する骨格が取り込まれる。このため、貯蔵弾性率や破断伸度を所望の範囲に制御できる。
また、上記アクリル基と反応可能な二重結合は、分子の両末端に2個存在してもよく、分子鎖の途中に存在していてもよい。中でも、分子の両末端のみに上記アクリル基と反応可能な二重結合性基が2個存在することが好ましく、分子の両末端のみにアクリル基が2個存在することがより好ましい。また、分子の両末端及び分子鎖中に上記アクリル基と反応可能な二重結合性基が存在することも好ましい。
上記ポリエーテル骨格としては、例えばポリプロピレンオキシド骨格またはポリエチレンオキシド骨格などが挙げられる。
上記ポリエーテル骨格を有し、かつ分子の両末端のみにアクリル基を有するアクリルオリゴマーとしては、ポリプロピレンオキシドジアクリレートまたはポリエステル系ウレタンアクリルオリゴマーが挙げられる。その市販品としては、UA340P及びUA4200(以上、いずれも中村化学工業社製)、並びにアロニックスM−1600及びアロニックスM−220(以上、いずれも東亜合成社製)などが挙げられる。
また、上記アクリルオリゴマーとして、3〜10官能のウレタンアクリルオリゴマーが好適に用いられる。3〜10官能のウレタンアクリルオリゴマーの骨格は適度な柔軟性を有する。ウレタンアクリルオリゴマーが3官能未満であると、柔軟性が低くなりすぎることがあり、10官能を超えると、柔軟性が高くなりすぎることがある。
上記3〜10官能のウレタンアクリルオリゴマーとしては、ポリプロピレンオキシド主鎖のウレタンアクリルオリゴマー等が挙げられる。上記3〜10官能のウレタンアクリルオリゴマーの市販品としては、U−2PPA、U−4HA、U−6HA、U−15HA、UA−32P、U−324A、U−108A、U−200AX、UA−4400、UA−2235PE、UA−160TM及びUA−6100(以上、いずれも新中村化学工業社製)並びにUN−7600、UN−7700、UN−333及びUN−1255(以上、いずれも根上工業社製)などが挙げられる。
上記オリゴマーの配合量は特に限定されない。オリゴマーを配合した効果を得るには、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマー100重量部に対して、上記オリゴマーは1重量部以上含有されることが望ましい。上記オリゴマーの配合量の好ましい上限は50重量部である。上記オリゴマーの量が多すぎると、原料が溶解せず、非粘着フィルム4の製造が困難になることがある。
両末端にアクリル基を有するオリゴマーを用いる場合には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマー100重量部に対して、オリゴマーは1〜100重量部含有されることが好ましく、1〜50重量部含有されることがより好ましい。多官能のウレタンアクリルオリゴマーを用いる場合には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマー100重量部に対して、オリゴマーは1〜50重量部含有されることが好ましく、1〜30重量部含有されることがより好ましい。
非粘着フィルム4の作製方法は特に限定されない。この方法として、非粘着フィルム4を構成する材料を離型フィルム上に塗布し、光の照射及び加熱の内の少なくとも一方を行い、離型フィルム上に非粘着フィルム4を形成した後、離型フィルムを剥離する方法が挙げられる。
具体的には、先ず、上記(メタ)アクリル樹脂等の樹脂成分と、光重合架橋剤や熱重合架橋剤などの架橋剤と、その他必要に応じて配合される化合物とを含む組成物を、離型フィルム上に塗布し、組成物層を形成する。そして、光の照射及び加熱の内の少なくとも一つの処理を行う。これにより、光硬化もしくは熱硬化により、または光硬化及び熱硬化により、組成物層が硬化(架橋)され、硬化(架橋)した組成物層からなる非粘着フィルムが得られる。中でも、光硬化を用いることが特に好ましい。
熱硬化により非粘着フィルムを作製する場合、硬化時の温度によっては、組成物層に積層されている離型フィルムが熱収縮する。離型フィルムが熱収縮すると、得られる非粘着フィルムの厚み精度が低下することがある。非粘着フィルムの厚み精度が低下すると、非粘着フィルムとダイボンディングフィルムとの密着性が低下することがある。また、非粘着フィルムの厚み精度が低く、かつダイボンディングフィルムと非粘着フィルムとが充分に密着していない場合には、ダイボンディングフィルムの表面の凹凸が大きくなることがある。ダイボンディングフィルムの表面の凹凸が大きいと、ダイボンディングフィルムと半導体ウェーハとの密着性が低下することがある。この場合、ダイシング時にチップ飛びが発生しやすい。
上記樹脂組成物の架橋体を得るのに用いられる架橋剤は特に限定されない。該架橋剤として、光重合架橋剤を用いてもよく、熱重合架橋剤を用いてもよい。なかでも、光重合架橋剤が好ましい。光重合架橋剤を用いた場合、モノマーを含む溶液の塗膜を形成した後、モノマーを室温で重合させることにより、樹脂組成物の架橋体を主成分として含む非粘着フィルムを容易に得ることができる。特に、非粘着フィルム4に、該非粘着フィルム4とは別にダイシングフィルム5を積層する場合には、光重合架橋剤を用いることが好ましい。(メタ)アクリル樹脂100重量部に対して、上記架橋剤は0.01〜20重量部含有されることが好ましく、0.05〜10重量部含有されることがより好ましく、0.1〜5重量部含有されることがさらに好ましい。
上記光重合架橋剤は特に限定されない。上記光重合架橋剤として、例えば、光ラジカル発生剤又は光カチオン発生剤等を用いることができる。
上記光ラジカル発生剤の市販品としては、例えば、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア819、イルガキュア651、イルガキュア369及びイルガキュア379(以上、いずれもチバ・スペシャリティーケミカルズ社製)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、並びにルシリンTPO(BASF Japan社製)等が挙げられる。
上記光カチオン発生剤として、オニウム塩類又は有機金属錯体類を用いることができる。上記オニウム塩類として、例えば芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、又は芳香族スルホニウム塩等が挙げられる。上記有機金属錯体類として、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、又はアリールシラノール−アルミニウム錯体等が挙げられる。
上記熱重合架橋剤としては、例えば、熱ラジカル発生剤等が挙げられる。
上記熱ラジカル発生剤としては、有機過酸化物又はアゾ化合物等が挙げられる。上記有機過酸化物としては、例えばクメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、又はt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。上記アゾ化合物としては、例えば2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、又はジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられる。
非粘着フィルム4は、フィラーをさらに含むことが好ましい。フィラーを含むことにより、ピックアップ性をより一層高めることができる。
上記フィラーの平均粒径は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。平均粒径が大きすぎると、非粘着フィルム4の面内厚みがばらつくことがある。平均粒径が小さすぎると、ピックアップ性を充分に高めることができないことがある。
なお、「平均粒径」とは、動的レーザー散乱法によって測定される体積平均径を示す。
上記フィラーは特に限定されない。上記フィラーとして、シリカまたはアルミナ等が用いられる。フィラーを除く非粘着フィルム4を構成する材料の合計100重量部に対して、フィラーは0.1〜150重量部含有されることが好ましい。フィラーの量が多すぎると、非粘着フィルム4がエキスパンド時に破断してしまうことがある。フィラーの量が少なすぎると、ピックアップ性を充分に高めることができないことがある。
非粘着フィルム4の厚みは特に限定されない。非粘着フィルム4の厚みは、30〜100μmの範囲内にあることが好ましい。厚みが30μm未満であると、充分なエキスパンド性が得られないことがあり、厚みが100μmを超えると、均一な厚みとすることが困難なことがある。厚みにばらつきがあると、半導体チップを製造する際にレーザーダイシングを適切に行えないことがある。
非粘着フィルム4のダイボンディングフィルム3が貼付されている表面4aの表面エネルギーは、40N/m以下であることが好ましい。非粘着フィルム4が非粘着性を有し、かつ表面4aの表面エネルギーが40N/m以下であると、ダイボンディングフィルム3を非粘着フィルム4からより一層容易に剥離できる。さらに、剥離の際に、ダイボンディングフィルムの一部が欠けてフィルム片として分離し、該フィルム片が非粘着フィルム4に付着し難い。よって、ダイボンディングフィルム3の欠けが生じ難いので、ダイボンディングをより一層確実に行うことができる。
非粘着フィルム4の表面4aの表面エネルギーは、30〜35N/mの範囲にあることがより好ましい。表面エネルギーが高すぎると、ピックアップ時に剥離不良が生じることがある。表面エネルギーが低すぎると、ダイシング時の水圧によってチップ飛びが発生することがある。
上記表面エネルギーは、例えば濡れ性試薬を用いて、JIS K6798に準拠して測定できる。
非粘着フィルム4の破断点での伸度、すなわち破断伸度の好ましい下限は5%、より好ましい下限は10%である。破断伸度が5%以上であると、エキスパンド性が高められ、半導体チップのピックアップ性がより一層高められる。非粘着フィルム4の破断伸度の好ましい上限は100%である。破断伸度が100%を超えると、ピックアップ性が劣ることがある。非粘着フィルム4の破断伸度のより好ましい上限は60%である。
(ダイボンディングフィルム)
上記ダイボンディングフィルム3は、レーザーダイシングに際し、半導体ウェーハごと切断される。ダイボンディングフィルム3は、レーザーダイシング後に半導体チップごと取り出され、半導体チップのダイボンディングに用いられる。
上記ダイボンディングフィルム3は、熱硬化性化合物と、熱硬化剤とを含む熱硬化性樹脂組成物を用いて形成される。熱硬化前の上記熱硬化性組成物は十分に柔らかく、従って外力により容易に変形する。もっとも、半導体チップを得た後に、ダイボンディングフィルム3に熱や光のエネルギーを与えて硬化させることで、基板等の被着体に半導体チップを強固に接合させることができる。
上記熱硬化性化合物は特に限定されない。上記熱硬化性化合物としては、例えばエポキシ樹脂、またはポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、ダイボンディングフィルム3は、熱硬化性化合物としてエポキシ樹脂と、エポキシ基と反応する官能基を有する高分子ポリマーと、熱硬化剤とを含むことが好ましい。この場合、ダイボンディングフィルム3を用いて接合された半導体チップと基板との間、あるいは複数の半導体チップ間における接合信頼性をより一層高めることができる。なお、エポキシ樹脂とは、一般的には、1分子中にエポキシ基を2個以上もつ分子量300〜8000程度の比較的低分子のポリマー(プレポリマー)、およびそのエポキシ基の開環反応によって生じた熱硬化性樹脂を示す。
ダイボンディングフィルム3は、エポキシ樹脂100重量部に対して、エポキシ基と反応する官能基を有する高分子ポリマーを10〜100重量部の割合で含むことが好ましい。上記高分子ポリマーの配合量は、さらに好ましくは15〜50重量部である。上記高分子ポリマーの量が多すぎると、流動性が不足して、ダイボンディングフィルム3と半導体ウェーハとの密着性が低下することがある。高分子ポリマーの量が少なすぎると、ダイボンディングフィルム3の成形時に外観不良を引き起こすことがある。
上記エポキシ樹脂は特に限定されない。上記エポキシ樹脂は、多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂であることが好ましい。多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂を用いた場合、硬化物は剛直となり、分子の運動が阻害される。このため、硬化物の機械的強度、耐熱性及び耐湿性が高くなる。
上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエンジオキシド、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、または3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボネート等が挙げられる。なかでも、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂やナフタレン型エポキシ樹脂が好適に用いられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の具体例としては、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシ樹脂等が挙げられる。上記ナフタレン型エポキシ樹脂の具体例としては、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリジジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン又は1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等が挙げられる。
これらの多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。また、上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いられてもよいし、両者が併用されてもよい。
上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂の重量平均分子量の好ましい下限は500であり、好ましい上限は1000である。重量平均分子量が500未満であると、硬化後の硬化物の機械的強度、耐熱性及び耐湿性等が十分に向上しないことがある。重量平均分子量が1000を超えると、硬化物が剛直になりすぎて、脆くなることがある。
上記エポキシ基と反応する官能基を有する高分子ポリマーとしては、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、またはエポキシ基等を有する高分子ポリマーが挙げられる。なかでも、エポキシ基を有する高分子ポリマーが好ましい。エポキシ基を有する高分子ポリマーを用いた場合、硬化物の可撓性が高くなる。
また、多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂と、エポキシ基を有する高分子ポリマーとを用いた場合、上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂により硬化物の機械的強度、耐熱性、及び耐湿性が高くなるとともに、上記エポキシ基を有する高分子ポリマーにより硬化物の可撓性も高くなる。
上記エポキシ基を有する高分子ポリマーの重量平均分子量は10万〜200万の範囲にあることが好ましい。該エポキシ基を有する高分子ポリマーは、末端及び側鎖(ペンダント位)の内の少なくとも一方にエポキシ基を有する高分子ポリマーであればよく、特に限定されない。上記エポキシ基を有する高分子ポリマーは、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、またはエポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、硬化物の機械的強度や耐熱性が高くなるため、エポキシ基含有アクリル樹脂が好適に用いられる。これらのエポキシ基を有する高分子ポリマーは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤としては、例えば、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の加熱硬化型酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤、またはカチオン系触媒型硬化剤等が挙げられる。これらの熱硬化剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
上記熱硬化剤のなかでも、常温で液状の加熱硬化型硬化剤や、多官能であり、当量的に添加量が少量で良いジシアンジアミド等の潜在性硬化剤が好適に用いられる。このような硬化剤を用いることにより、硬化前のダイボンディングフィルムの常温での柔軟性が高められ、かつハンドリング性が高められる。
上記常温で液状の加熱硬化型硬化剤の代表的なものとしては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、またはトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系硬化剤が挙げられる。なかでも、疎水化されていることから、メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸が好適に用いられる。これらの酸無水物系硬化剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
硬化速度や硬化物の物性等を調整するために、上記熱硬化剤とともに、硬化促進剤を用いてもよい。
上記硬化促進剤は特に限定されない。上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール系硬化促進剤又は3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、硬化速度や硬化物の物性等の調整をするための反応系の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。これらの硬化促進剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
上記イミダゾール系硬化促進剤は特に限定されない。上記イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールや、イソシアヌル酸で塩基性を保護した商品名「2MAOK−PW」(四国化成工業社製)等が挙げられる。これらのイミダゾール系硬化促進剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
酸無水物系硬化剤と例えばイミダゾール系硬化促進剤等の硬化促進剤とを併用する場合は、酸無水物系硬化剤の添加量をエポキシ基の当量に対して理論的に必要な当量以下とすることが好ましい。酸無水物系硬化剤の添加量が過剰であると、水分により、熱硬化性樹脂組成物の硬化物から塩素イオンが溶出しやすくなるおそれがある。例えば、熱水を用いて、硬化後の硬化物から溶出成分を抽出した際に、抽出水のpHが4〜5程度まで低くなり、エポキシ樹脂から引き抜かれた塩素イオンが多量に溶出してしまうことがある。
また、アミン系硬化剤と例えばイミダゾール系硬化促進剤等の硬化促進剤とを併用する場合には、アミン系硬化剤の添加量をエポキシ基に対して理論的に必要な当量以下とすることが好ましい。アミン物系硬化剤の添加量が過剰であると、熱硬化性樹脂組成物の硬化物から水分により塩素イオンが溶出しやすくなるおそれがある。例えば、熱水を用いて、硬化後の硬化物から溶出成分を抽出した際に、抽出水のpHが高く、抽出水が塩基性となり、エポキシ樹脂から引き抜かれた塩素イオンが多量に溶出してしまうことがある。
上記熱硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形し、ダイボンディングフィルム3を得る方法は特に限定されない。ダイボンディングフィルム3を得る際には、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、またはグラビアコーター等が用いられる。なかでも、ダイボンディングフィルムの厚み精度が高められ、異物が混入したとしても筋状のむらなどが形成され難いので、グラビアコーターが好ましい。
ダイボンディングフィルム3の硬化前の25℃における貯蔵弾性率は、106〜109Paの範囲が好ましい。ダイボンディングフィルム3の貯蔵弾性率が低すぎると、自己形状保持性能が低下し、ピックアップ時にダイボンディングフィルムの欠けが生じることがある。ダイボンディングフィルム3の貯蔵弾性率が高すぎると、ダイボンディングフィルム3が非粘着フィルム4に充分に密着せず、ダイシング−ダイボンディングテープ1の作製が困難になることがある。
(ダイシングフィルム)
上記ダイシングフィルム5は、ダイシングリングに貼り付けるために用いられている。また、ダイシングフィルム5は、ダイシングが行われた後のエキスパンド性を高めるために、あるいはダイボンディングフィルム3付き半導体チップのピックアップ性を高めるために用いられている。上記ダイシングフィルム5は、基材5aと、該基材5aの片面に粘着剤が塗布されて構成された粘着剤5bとを有する。ダイシング−ダイボンディングテープ1は、ダイシングフィルム5を備える。ただし、ダイシングフィルム5は必ずしも備えられていなくてもよい。
上記基材5aは特に限定されない。上記基材5aとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリビニルアセテートフィルム等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、またはポリイミドフィルムなどのプラスチックフィルム等が挙げられる。なかでも、エキスパンド性に優れ、環境負荷が小さいため、ポリオレフィン系フィルムが好適に用いられる。
上粘着剤5bは特に限定されない。上記粘着剤5bとしては、アクリル系粘着剤、特殊合成ゴム系粘着剤、合成樹脂系粘着剤又はゴム系粘着剤等が挙げられる。なかでも、感圧タイプとしてのアクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤を用いた場合には、非粘着フィルム4に対する貼着力およびダイシングリングからの剥離性を高めることができ、かつコストを低減できる。なお、粘着剤5bは、例えばダイシングリングを貼付し得るように構成されていることが好ましい。
上記基材5aを構成する材料は、ポリオレフィンまたはポリ塩化ビニルであることが特に好ましい。粘着剤5bは、アクリル系粘着剤またはゴム系粘着剤であることが好ましい。これらの好ましい材料を用いることにより、半導体チップのピックアップに際し、適度なエキスパンド性が得られる。
(離型フィルム)
上記離型フィルム2は、半導体ウェーハが貼付されるダイボンディングフィルム3の表面3aを保護するために用いられている。ただし、離型フィルム2は必ずしも用いられなくてもよい。
離型フィルム2は特に限定されない。離型フィルム2としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリビニルアセテートフィルム等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、またはポリイミドフィルムなどのプラスチックフィルム等が挙げられる。なかでも、平滑性、厚み精度などに優れているため、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの合成樹脂フィルムが好ましい。これらのフィルムの片面は、シリコーン離型剤、又は長鎖アルキル基等を有する離型剤を用いて離型処理されていてもよい。
上記離型フィルムは、単層のフィルムであってもよく、上記フィルムが2以上積層された積層フィルムであってもよい。離型フィルムが積層フィルムである場合、上記フィルムのうち異なる2種以上が積層されていてもよい。
図2に、本発明の他の実施形態に係るダイシング−ダイボンディングテープを部分切欠正面断面図で示す。
図2に示すダイシング−ダイボンディングテープ11では、上述した離型フィルム2、ダイボンディングフィルム3及び非粘着フィルム4がこの順で積層されている。すなわち、ダイシング−ダイボンディングテープ11は、ダイシングフィルム5が別途設けられていないこと以外はダイシング−ダイボンディングテープ1と同様に構成されている。このように、ダイシングフィルム5は必ずしも設けられていなくてもよい。ダイシング−ダイボンディングテープ11では、非粘着フィルム4をダイシングフィルムとして用いてもよい。
図3に、本発明の別の実施形態に係るダイシング−ダイボンディングテープを部分切欠正面断面図で示す。
図3に示すダイシング−ダイボンディングテープ15は、非粘着フィルムの構成が異なることを除いては、ダイシング−ダイボンディングテープ1と同様に構成されている。ダイシング−ダイボンディングテープ15では、離型フィルム2、ダイボンディングフィルム3、非粘着フィルム16及びダイシングフィルム5がこの順で積層されている。
非粘着フィルム16は、非粘着性を有する。すなわち、第1の層17及び第2の層18は非粘着性を有する。また、非粘着フィルム16は、樹脂組成物の架橋体を主成分として含み、25℃における貯蔵弾性率が1〜1000MPaの範囲にあり、かつ60℃における貯蔵弾性率が1MPa以上である。
非粘着フィルム16のダイボンディングフィルム3が貼付された表面16a、すなわち第1の層17のダイボンディングフィルムが貼付された表面の表面エネルギーは、40N/m以下であることが好ましい。この場合、ピックアップ時に、ダイボンディングフィルムの一部が欠けてフィルム片が分離し、該フィルム片が非粘着フィルム16に付着し難い。従って、ダイボンディングフィルム3を非粘着フィルム16から容易に剥離できる。また、ダイボンディングフィルム3の欠けが生じない場合には、ダイボンディングを確実に行うことができる。
ダイシング−ダイボンディングテープ15では、非粘着フィルム16が2つの層17,18が積層された2層構造を有するので、第1,第2の層17,18にそれぞれ異なる機能を持たせることができる。例えば、第1の層17にダイボンディングフィルム3の非粘着フィルム16からの剥離性を高める機能を持たせ、かつ第2の層18にエキスパンド機能を持たせることができる。よって、非粘着フィルム16が2層構造を有することで、ダイシング−ダイボンディングテープとして最適な物性を容易に設計できる。
(半導体チップの製造方法)
次に、上述したダイシング−ダイボンディングテープ1を用いた場合の半導体チップの製造方法を図4〜図9を用いて以下説明する。
先ず上述したダイシング−ダイボンディングテープ1と、図4に平面図で示す半導体ウェーハ21とを用意する。
上記半導体ウェーハ21の平面形状は円形である。半導体ウェーハ21の表面21aには、ストリートによってマトリックス状に区画された各領域に、個々の半導体チップを構成するための回路が形成されている。半導体ウェーハ21は、所定の厚みとなるように裏面21bが研磨されている。
半導体ウェーハ21の厚みは、好ましくは30μm以上である。半導体ウェーハ21の厚みが30μmよりも薄いと、研削時やハンドリング時に、クラック等が発生し、破損することがある。
なお、後述するダイシング時に、マトリックス状に区画された各領域ごとに半導体ウェーハ21が分割される。
図5に示すように、用意した半導体ウェーハ21を裏返して、裏返された半導体ウェーハ21をステージ22上に載せる。すなわち、半導体ウェーハ21の表面21a側からステージ22に載せる。ステージ22上には、半導体ウェーハ21の外周側面21cから一定間隔を隔てられた位置に、円環状のダイシングリング23が設けられている。ダイシングリング23の高さは、半導体ウェーハ21と、ダイボンディングフィルム3と、非粘着フィルム4との合計厚みと等しいか、もしくはわずかに低い。
次に、図6に示すように、ダイシング−ダイボンディングテープ1のダイボンディングフィルム3の表面3aに半導体ウェーハ21を接合する。ダイシングフィルム5は、ダイボンディングフィルム3及び非粘着フィルム4の外周縁よりも外側に至るように延ばされている延長部5cを有する。図6に示すように、ダイシング−ダイボンディングテープ1の離型フィルム2を剥離しながら、露出したダイシングフィルム5の延長部5cの粘着剤5bを、ダイシングリング23上に貼付する。さらに、露出したダイボンディングフィルム3を、半導体ウェーハ21の裏面21bに接合する。
図7に、ダイボンディングフィルム3に半導体ウェーハ21を接合した状態を正面断面図で示す。半導体ウェーハ21の裏面21b全体に、ダイボンディングフィルム3が接合されている。半導体ウェーハ21に余計な力が加わらないように、ダイシングフィルム5の延長部5cは、ダイシングリング23に支持されている。
次に、図8に正面断面図で示すように、ステージ22からダイボンディングフィルム3が接合された半導体ウェーハ21を取り出し、裏返す。このとき、ダイシングリング23がダイシングフィルム5に貼付された状態で取り出される。表面21aが上方になるように、取り出された半導体ウェーハ21を別のステージ24上に載せる。
次に、ダイボンディングフィルム3が接合された半導体ウェーハ21をレーザーダイシングし、個々の半導体チップに分割する。図8に矢印Xを付して示す方向すなわち半導体ウェーハ21側から、レーザー光を照射することにより、半導体ウェーハ21及びダイボンディングフィルム3がレーザーダイシングされる。
図9に示すように、レーザーダイシング後には、半導体ウェーハ21及びダイボンディングフィルム3は完全に切断されて、半導体ウェーハ21及びダイボンディングフィルム3に切断面31が形成される。また、レーザー光の照射により、非粘着フィルム4は切断されず、かつ非粘着フィルム4には切り込みが形成されない。
ダイシング−ダイボンディングテープ1では、非粘着フィルム4が樹脂組成物の架橋体を主成分として含み、25℃における貯蔵弾性率及び60℃における貯蔵弾性率が上記特定の範囲にあるため、レーザーダイシングに際し、レーザー光の照射により非粘着フィルムに切り込みが形成され難く、半導体ウェーハとダイボンディングフィルムとを精度良く切断できる。また、ダイシング−ダイボンディングテープ1では、非粘着フィルム4が、光の照射により粘着力が低減されるものではなく、かつ樹脂組成物の架橋体を主成分として含むため、レーザー光が照射されても溶着が生じ難い。
半導体ウェーハ21をダイシングし、個々の半導体チップに分割した後、非粘着フィルム4及びダイシングフィルム5を引き延ばして、分割された個々の半導体チップの間隔を拡張する。ダイシング−ダイボンディングテープ1はダイシングフィルム5を有するため、エキスパンド性に優れ、非粘着フィルム4及びダイシングフィルム5を容易に引き延ばすことができる。
非粘着フィルム4及びダイシングフィルム5を引き伸ばした後に、半導体チップが接合された状態で、ダイボンディングフィルム3を非粘着フィルム4から剥離して取り出すことにより、半導体チップを得ることができる。ダイシング−ダイボンディングテープ1を用いた場合には、ダイボンディングフィルム3を非粘着フィルム4から、容易に剥離できる。そのため、半導体チップをダイボンディングフィルム3ごと取り出す際に、半導体チップが破損するのを抑制できる。また、ダイボンディングフィルム3の一部が欠けてフィルム片として分離し、該フィルム片が非粘着フィルム4に付着するのを抑制できる。よって、得られた半導体チップには、欠けのないダイボンディングフィルムが接合されているので、より一層確実にダイボンディングすることができる。
なお、半導体チップが接合されたダイボンディングフィルム3を非粘着フィルム4から剥離する方法としては、半導体ウェーハ21の裏面21b側から、多数のピンを用いて突き上げる方法や多段ピンを用いて突き上げる方法、半導体ウェーハ21の表面21a側から真空ピールする方法、または超音波振動を利用する方法等が挙げられる。
半導体チップの破損をより一層防止できるので、半導体ウェーハ21とダイボンディングフィルム3との接合面に対して略直交する方向に作用する力を付与することにより、ダイボンディングフィルム3が接合された状態で半導体チップを非粘着フィルム4から剥離することが好ましい。
ダイシング−ダイボンディングテープ1では、ダイボンディングフィルム3と、非粘着フィルム4との剥離性が高められている。従って、光照射等により剥離力を低下させる作業を行わなくても、ダイボンディングフィルムごと半導体チップを容易に取り出すことができる。すなわち、ダイシング−ダイボンディングテープ1では、例えば光の照射等により剥離力が低下するように非粘着フィルムを構成する必要はない。非粘着フィルムは、光照射等により剥離力が低下するものではないことが好ましい。非粘着フィルムが光照射等により剥離力が低下するものでない場合には、光照射等により剥離力を低下させる作業を行わなくてもよく、半導体チップの製造効率が高められる。なお、光の照射とは、自然光下に晒される場合を含まず、紫外線などを意図的に照射することをいう。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
ダイシング−ダイボンディングテープの作製に際し、以下のダイボンディングフィルム、非粘着フィルム及びダイシングフィルムを用意した。
(1)ダイボンディングフィルムの形成
(ダイボンディングフィルムA)
G−2050M(日本油脂社製、エポキシ基含有アクリル系高分子ポリマー、重量平均分子量Mw20万)15重量部と、EXA−7200HH(大日本インキ社製、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)80重量部と、HP−4032D(大日本インキ社製、ナフタレン型エポキシ樹脂)5重量部と、YH−309(ジャパンエポキシレジン社製、酸無水物系硬化剤)35重量部と、2MAOK−PW(四国化成社製、イミダゾール)8重量部と、S320(チッソ社製、アミノシラン)2重量部とを配合し、配合物を得た。この配合物を溶剤としてのメチルエチルケトン(MEK)に固形分60%となるように添加し、攪拌し、塗液を得た。これを離型フィルムに塗布し、110℃で3分間オーブン中で加熱乾燥し、離型フィルム上に厚み40μmのダイボンディングフィルムAを形成した。
(ダイボンディングフィルムB)
日立化成工業社製DF402
(2)非粘着フィルムの形成
先ず、以下の(メタ)アクリル樹脂を合成した。
(ポリマー1)
2−エチルヘキシルアクリレート95重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5重量部、光ラジカル発生剤としてのイルガキュア651(チバガイギ社製、50%酢酸エチル溶液)0.2重量部、及びラウリルメルカプタン0.01重量部を酢酸エチルに溶解させ、溶液を得た。この溶液に紫外線を照射して重合を行い、ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。さらに、この溶液の固形分100重量部に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、カレンズMOI)を3.5重量部反応させて、(メタ)アクリル樹脂であるアクリル共重合体(ポリマー1)を得た。ポリマー1は、重量平均分子量が70万であり、酸価が0.86(mgKOH/g)であった。
(ポリマー2)
2−エチルヘキシルアクリレート94重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5重量部、アクリル酸1重量部、光ラジカル発生剤としてのイルガキュア651(チバガイギ社製、50%酢酸エチル溶液)0.2重量部、及びラウリルメルカプタン0.01重量部を酢酸エチルに溶解させ、溶液を得た。この溶液に紫外線を照射して重合を行い、ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。さらに、この溶液の固形分100重量部に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、カレンズMOI)を3.5重量部反応させて、(メタ)アクリル樹脂であるアクリル共重合体(ポリマー2)を得た。ポリマー2は、重量平均分子量が76万であり、酸価が6.73(mgKOH/g)であった。
(ポリマー3)
2−エチルヘキシルアクリレート99重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1重量部、光ラジカル発生剤としてのイルガキュア651(チバガイギ社製、50%酢酸エチル溶液)0.2重量部、及びラウリルメルカプタン0.01重量部を酢酸エチルに溶解させ、溶液を得た。この溶液に紫外線を照射して重合を行い、ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。さらに、この溶液の固形分100重量部に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、カレンズMOI)を0.9重量部反応させて、(メタ)アクリル樹脂であるアクリル共重合体(ポリマー3)を得た。ポリマー3は、重量平均分子量が73万であり、酸価が0.34(mgKOH/g)であった。
(ポリマー4)
2−エチルヘキシルアクリレート95重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5重量部、光ラジカル発生剤としてのイルガキュア651(チバガイギ社製、50%酢酸エチル溶液)0.2重量部、及びラウリルメルカプタン0.01重量部を酢酸エチルに溶解させ、溶液を得た。この溶液に紫外線を照射して重合を行い、ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。さらに、この溶液の固形分100重量部に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、カレンズMOI)を7重量部反応させて、(メタ)アクリル樹脂であるアクリル共重合体(ポリマー4)を得た。ポリマー4は、重量平均分子量が92万であり、酸価が1.00(mgKOH/g)であった。
(非粘着フィルムL1〜L6)
得られたポリマー1〜4のいずれか1つのポリマーと、U−324A(新中村化学工業社製、ウレタンアクリルオリゴマー)と、光ラジカル発生剤としてのイルガキュア651(チバガイギ社製)と、フィラーとしてのSE4050(アドマテックス社製、シリカフィラー)とを下記表1に示す割合で配合し、酢酸エチルに溶解し、溶液を得た。この溶液を、離型PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの上にアプリケーターを用いて塗工した。さらに110℃のオーブン中で3分間加熱乾燥し、厚み50μmのフィルムを形成した。このフィルムに、高圧水銀灯下で、365nmの紫外線を1000mJで照射した。このようにして架橋された非粘着フィルムL1〜L6を得た。
(3)ダイシングフィルム
(ダイシングフィルムDC1)
PEテープ#6318−B:積水化学社製、ポリエチレン基材の片面にゴム系粘着剤からなる粘着剤層が形成されたPEテープ、基材の厚み60μm、粘着剤層の厚み10μm
(実施例1)
離型フィルム上のダイボンディングフィルムAの表面に、非粘着フィルムL1を60℃でラミネートした。次に、非粘着フィルムL1のダイボンディングフィルムAに貼付された面とは反対側の面に、ダイシングフィルムDC1を粘着剤側から貼り付けた。このようにして、離型フィルム/ダイボンディングフィルム/非粘着フィルム/ダイシングフィルムがこの順で積層されたダイシング−ダイボンディングテープを作製した。
(実施例2〜5、及び比較例1)
非粘着フィルムを、下記の表1に示すフィルムにそれぞれ代えたこと以外は実施例1と同様にして、ダイシング−ダイボンディングテープを作製した。なお、貼り付けに際して、ダイシングフィルムが粘着剤層を有する場合には、ダイシングフィルムは粘着剤側から、非粘着フィルムに貼り付けた。
(実施例6)
ダイボンディングフィルムAを、ダイボンディングフィルムBに代えたこと以外は実施例1と同様にして、ダイシング−ダイボンディングテープを作製した。
(ダイシング−ダイボンディングテープの評価)
(1)ダイボンディングフィルムの硬化前の25℃における貯蔵弾性率
加熱により硬化される前のダイボンディングフィルムを、厚さ0.5mmm、幅5mm及び長さ3cmの大きさに切り出し、評価サンプルを得た。得られた評価サンプルについて、アイティ計測社製DVA−200を用いて、10Hz及び歪み0.1%の条件で25℃における貯蔵弾性率を測定した。
(2)ダイボンディングフィルムと非粘着フィルムとの剥離強度
ダイボンディングフィルムの一方の面に、非粘着フィルムを60℃でラミネートした。次に、ダイボンディングフィルムの非粘着フィルムが貼付された面とは反対側の面にステンレス板を貼り付けて、ダイボンディングフィルムとステンレス板とを接着し、評価サンプルを得た。その後、非粘着フィルムとダイボンディングフィルムとの界面で剥離が生じるように評価サンプルを固定した状態で、300mm/分の剥離速度で、ダイボンディングフィルムと非粘着フィルムとの界面に対して180度方向に、非粘着フィルムをダイボンディングフィルムから剥離した。このとき剥離に要した力を、島津製作所製AGS−100Dを用いて、測定幅25mmで測定し、得られた値の平均値を剥離強度とした。
(3)非粘着フィルムの25℃及び60℃における貯蔵弾性率
非粘着フィルムを厚さ0.5mm、幅5mm及び長さ3cmの大きさに切り出し、評価サンプルを得た。得られた評価サンプルについて、アイティ計測社製DVA−200を用いて、10Hz及び歪み0.1%の条件で、25℃及び60℃における貯蔵弾性率を測定した。
(4)樹脂組成物の架橋体(樹脂架橋体)のゲル分率
得られたポリマー1〜4と、光ラジカル発生剤としてのイルガキュア651(チバガイギ社製)とを下記表1に示す割合で配合し、その他の配合物は配合せず、酢酸エチルに溶解し、溶液を得た。この溶液を、離型PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの上にアプリケーターを用いて塗工した。さらに110℃のオーブン中で3分間加熱乾燥し、厚み50μmのフィルムを形成した。このフィルムに、高圧水銀灯下で、365nmの紫外線を1000mJで照射し、ポリマーを架橋させた。
フィルムを離型PETから剥離し、得られたフィルムを用いて、上述の方法によりゲル分率を求めた。結果を表1に示す。
(5)非粘着フィルムの破断伸度
非粘着フィルム(厚さ0.5mm×幅5mm×長さ7cm)を、引張試験機AG−IS(島津製作所製)を用いて、300mm/分の条件で引っ張り、破断に至った際の伸度を破断伸度とした。
(6)非粘着フィルムの表面エネルギー
濡れ性試薬(ナカライテスク社製)を用いて、非粘着フィルムのダイボンディングフィルムに貼付される面の表面エネルギーを、JIS K6798に準拠して測定した。
(7)レーザーダイシング性評価
ダイシング−ダイボンディングテープの離型フィルムを剥離し、露出したダイボンディングフィルムを、直径8inch、厚み80μmのシリコンウェーハの一方の面に60℃の温度でラミネートし、評価サンプルを作製した。
レーザーダイシング装置(ディスコ社製、品番DFL7160)を用いて、波長355nmのパルスレーザー光をシリコンウェーハの上方から照射し、評価サンプルを10mm×10mmのチップサイズにレーザーダイシングした。
レーザーダイシング後に、ダイボンダーbestem D−02(キャノンマシーナリー社製)を用いて、コレットサイズ8mm角、突き上げ速度5mm/秒、及びエキスパンド4mmの各条件で、分割された半導体チップの連続ピックアップを行った。
上記のようにして、レーザーダイシング性、及びレーザーダイシング後のピックアップの可否を評価した。さらに、ピックアップ後に、ピックアップされた5個の半導体チップについて4辺ずつ、計20辺においてダイボンディングフィルムの一部が欠けているか否かを観察した。辺に沿った長さが50μmより大きい欠けが存在しない辺の数を数えた。
なお、レーザーダイシング性は、下記の評価基準で評価した。
〔レーザーダイシング性の評価基準〕
○:非粘着フィルムに切り込みが形成されておらず、切断面において非粘着フィルムとダイボンディングフィルムとの間の融着が見られず、半導体ウェーハ及びダイボンディングフィルムを精度良く切断できた。
△:非粘着フィルムにごく浅いが切り込みが形成されているか、又は切断面において非粘着フィルムとダイボンディングフィルムの界面に若干融着が見られた。
×:非粘着フィルムに切り込みが形成されおり、かつ、切断面において非粘着フィルムとダイボンディングフィルムの界面に融着が見られ、平面視した際に切断線がきれいな直線ではなかった。
結果を下記表1に示す。