JP2010065313A - 高周波加熱コイル - Google Patents

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健晃 石代
Shintaro Suzuki
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Abstract

【課題】高周波加熱コイルの出力を下げることなく、先リング部のワーク段付きコーナ側と対向する角の稜線に沿う部分での局部的に大きい発熱を抑制することである。
【解決手段】多角形パイプで形成された先リング部5の、ワークとしてのハブ輪31の段付き部分31cの段付きコーナ側と対向する角の稜線に沿ってR面取り5aを設けることにより、この稜線に沿う部分での電流を分散させ、高周波加熱コイル1の出力を下げることなく、先リング部5のワーク段付きコーナ側と対向する角の稜線に沿う部分での局部的に大きい発熱を抑制できるようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、径の異なる段付き部を有するワークを誘導加熱するヘアピン型の高周波加熱コイルに関する。
ヘアピン型の高周波加熱コイルは、高周波電源に接続される二股のリード部に連なる一対の円弧状の元リング部と、各元リング部の終端から軸方向へ平行に延びる平行部と、各平行部の先端から元リング部と平行な面内で円弧状に連なる先リング部とから成り、内部に冷却水を通すように、矩形、台形等の任意の多角形断面とされた多角形パイプを接続して形成されている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1、2に記載されたものは、いずれも元リング部と先リング部を平行部に対して同じ側に設けたセミループ型のものとされ、加熱コイルを形成するパイプは矩形断面の多角形パイプとされている。元リング部と先リング部を平行部に対して反対側に設けたものもある。
このようなヘアピン型の高周波加熱コイルを用いて、ハブ輪や等速ジョイント外輪等の径の異なる段付き部を有するワークを誘導加熱して、焼入れ等の熱処理をする際は、先リング部をワークの段付き部分に対向させて誘導加熱している。
実開昭58−164196号公報 特許第2614167号公報
上述したヘアピン型の高周波加熱コイルの先リング部をワークの段付き部分に対向させて誘導加熱する際は、後の図4(c)に示すように、多角形パイプで形成された先リング部のワーク段付き部分の段付きコーナ側と対向する角の稜線に沿う部分に電流が集中し、発熱量が局部的に大きくなる。このため、この局部的に大きい発熱と冷却による繰り返しの熱応力によって、先リング部に亀裂が発生し、破損に至ることがある。
このような局部的に大きい発熱を抑制するためには、高周波加熱コイルの出力を下げて、加熱時間を延長することが考えられるが、ワークの熱処理時間が長くなって生産性が低下する問題がある。
そこで、本発明の課題は、高周波加熱コイルの出力を下げることなく、先リング部のワーク段付きコーナ側と対向する角の稜線に沿う部分での局部的に大きい発熱を抑制することである。
上記の課題を解決するために、本発明は、多角形パイプを接続して形成され、高周波電源に接続される二股のリード部に連なる一対の円弧状の元リング部と、各元リング部の終端から軸方向へ平行に延びる一対の平行部と、一対の平行部の先端から前記元リング部と平行な面内で円弧状に連なる先リング部とから成り、径の異なる段付き部を有するワークの段付き部分に前記先リング部を対向させて誘導加熱するヘアピン型の高周波加熱コイルにおいて、前記多角形パイプで形成された先リング部の、前記ワークの段付き部分の段付きコーナ側と対向する角の稜線に沿って面取りを設けた構成を採用した。
すなわち、多角形パイプで形成された先リング部の、ワークの段付き部分の段付きコーナ側と対向する角の稜線に沿って面取りを設けることにより、この稜線に沿う部分での電流を分散させ、高周波加熱コイルの出力を下げることなく、先リング部のワーク段付きコーナ側と対向する角の稜線に沿う部分での局部的に大きい発熱を抑制できるようにした。
前記面取りはR面取りまたはC面取りとすることができる。
前記面取りの前記稜線に沿う幅は1〜3mmとするのが望ましい。この幅が1mm未満では、稜線に沿う部分での電流を十分に分散させることができず、幅が3mmを越えると、ワーク段付きコーナ部での誘導加熱が不十分となる恐れがあるからである。
前記先リング部の断面形状を、内径側の断面高さ寸法が外径側よりも小さいものとすることにより、ワークの使用時に応力集中が発生しやすい段付きコーナ部を効率よく、誘導加熱することができる。
前記径の異なる段付き部を有するワークは、ハブ輪、等速ジョイント外輪、スタブシャフトまたはアクスルシャフトのいずれかとすることができる。
本発明の高周波加熱コイルは、多角形パイプで形成された先リング部の、ワークの段付き部分の段付きコーナ側と対向する角の稜線に沿って面取りを設けたので、この稜線に沿う部分での電流を分散させ、高周波加熱コイルの出力を下げることなく、先リング部のワーク段付きコーナ側と対向する角の稜線に沿う部分での局部的に大きい発熱を抑制することができる。
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1乃至図3に示すように、この高周波加熱コイル1は、径の異なる車軸管部31aと車輪取り付けフランジ31bとの段付き部を有するハブ輪31をワークとして誘導加熱するヘアピン型のものであり、導電部2aを介して高周波電源(図示省略)に接続される二股のリード部2と、リード部2に連なる一対の1/4円弧状の元リング部3と、各元リング部3の終端から軸方向下方へ平行に延びる一対の平行部4と、一対の平行部4の先端から元リング部3と平行な面内で元リング部3と反対側へ1/2円弧状に連なる先リング部5とから成り、内部に冷却水を通すように銅製の多角形パイプを接続して形成されている。
前記先リング部5の中間部には、少し立ち上がって外径側に延び、2つの給水口6aを有する給水部6が設けられ、各リード部2には、それぞれ冷却水が供給される排水口7aを有する排水部7が立ち上がるように設けられており、高周波加熱コイル1は、リード部2に沿う中心線で分割される半分ずつが別々の冷却水経路で冷却されるようになっている。
図1に示すように、前記ハブ輪31は車軸管部31aを上に向けて、先リング部5の下方から高周波加熱コイル1の内側に挿入され、先リング部5が、車輪取り付けフランジ31bが立ち上がる段付き部分31cと対向し、この段付き部分31cを誘導加熱するようになっている。段付き部分31cの上方の車軸管部31aは、元リング部3と平行部4で誘導加熱される。
前記先リング部5は元リング部3よりも少し大径とされ、その多角形パイプの断面形状は、内径側の断面高さ寸法が外径側よりも小さい横向きの台形状とされ、段付き部分31cの段付きコーナ側と対向する角の稜線に沿ってR面取り5aが設けられている。このR面取り5aの稜線に沿う幅は1〜3mmとされている。先リング部5の多角形パイプの断面形状は台形状のものに限定されることはなく、矩形状や他の多角形状のものとすることもできる。また、角の稜線に沿う面取りはC面取りとすることもできる。なお、元リング部3と平行部4の多角形パイプは矩形断面とされている。
実施例として、前記先リング部の角の稜線に沿ってR面取りを設け、このR面取りの稜線に沿う幅を1mmおよび3mmとした2つの高周波加熱コイルを用意した。比較例として、先リング部の角の稜線に沿う面取りを設けない高周波加熱コイルも用意した。
上述した実施例と比較例の高周波加熱コイルを用いて、図1に示したようにハブ輪を誘導加熱する場合の電流密度分布を、有限要素法による汎用解析シミュレータを用いて数値解析した。図4(a)、(b)は、実施例の高周波加熱コイルの電流密度分布を示す解析シミュレータのカラー画像、図4(c)は、比較例の高周波加熱コイルの電流密度分布を示す解析シミュレータのカラー画像である。これらのカラー画像から分かるように、面取りを設けない比較例を示す図4(c)では、先リング部の稜線近傍の電流密度が赤色の10000Aと非常に高くなっているのに対して、1mmと3mmのR面取りを設けた各実施例を示す図4(a)、(b)では、先リング部の稜線近傍が緑色の5000A程度の低い電流密度となっている。なお、1mmのR面取りを設けた図4(a)では、電流密度がやや高い黄緑色の6500A程度の部分が少し現れている。これらのシミュレーション結果より、先リング部の角の稜線に沿った面取りを設けることにより、この稜線部分での電流を分散させて、局部的に大きい発熱を抑制できることが確認された。
上述した実施形態では、元リング部を上側、先リング部を下側として、これらを縦向きの平行部の反対側に設けたものとしたが、元リング部と先リング部を平行部の同じ側に設けたセミループ型のものとすることもできる。また、元リング部を下側、先リング部を上側とすることもでき、平行部を横向きとして、ワークを横方向から挿入するものとすることもできる。
また、上述した実施形態では、ワークとしてハブ輪を誘導加熱するものとしたが、ワークは径の異なる段付き部を有するものであればよく、等速ジョイント外輪、スタブシャフト、アクスルシャフト等を誘導加熱するものとすることもできる。
実施形態の高周波加熱コイルでハブ輪を誘導加熱する状態を示す正面断面図 図1の高周波加熱コイルの側面図 図1の高周波加熱コイルの給水部と排水部を除く平面図 a、bは、それぞれ実施例の高周波加熱コイルで図1のハブ輪を誘導加熱する場合の電流密度分布を示す解析シミュレータのカラー画像、cは比較例の高周波加熱コイルで図1のハブ輪を誘導加熱する場合の電流密度分布を示す解析シミュレータのカラー画像
符号の説明
1 高周波加熱コイル
2 リード部
2a 導電部
3 元リング部
4 平行部
5 先リング部
5a R面取り
6 給水部
6a 給水口
7 排水部
7a 排水口
31 ハブ輪
31a 車軸管部
31b 車輪取り付けフランジ
31c 段付き部分

Claims (5)

  1. 多角形パイプを接続して形成され、高周波電源に接続される二股のリード部に連なる一対の円弧状の元リング部と、各元リング部の終端から軸方向へ平行に延びる一対の平行部と、一対の平行部の先端から前記元リング部と平行な面内で円弧状に連なる先リング部とから成り、径の異なる段付き部を有するワークの段付き部分に前記先リング部を対向させて誘導加熱するヘアピン型の高周波加熱コイルにおいて、前記多角形パイプで形成された先リング部の、前記ワークの段付き部分の段付きコーナ側と対向する角の稜線に沿って面取りを設けたことを特徴とする高周波加熱コイル。
  2. 前記面取りをR面取りまたはC面取りとした請求項1に記載の高周波加熱コイル。
  3. 前記面取りの前記稜線に沿う幅を1〜3mmとした請求項1または2に記載の高周波加熱コイル。
  4. 前記先リング部の断面形状を、内径側の断面高さ寸法が外径側よりも小さいものとした請求項1乃至3のいずれかに記載の高周波加熱コイル。
  5. 前記径の異なる段付き部を有するワークが、ハブ輪、等速ジョイント外輪、スタブシャフトまたはアクスルシャフトのいずれかである請求項1乃至4のいずれかに記載の高周波加熱コイル。
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