JP2010058999A - 薄片状金属酸化物の製法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、大きさが揃った薄片状物質を提供しやすい製法を提供することを課題とする。
【解決手段】薄片状金属酸化物の製法において、塗布液を微滴化する工程、微滴化された塗布液を基材に吹き付けて基材上に塗布液を塗着させる工程、塗着された塗布液を乾燥させて薄片状物質の前駆体を形成する工程、及び該前駆体を基材から剥離させる工程を有するものとし、微滴化される塗布液は、塗布液中に8〜40重量%の固形分と残部の溶媒とを有し、該溶媒は沸点が130℃以上の有機溶媒と酸性水溶液とを含有し、前記固形分は金属酸化物オリゴマーを有し、該金属酸化物オリゴマーはポリスチレン換算の重量平均分子量で500〜50000とすること。
【選択図】図1
【解決手段】薄片状金属酸化物の製法において、塗布液を微滴化する工程、微滴化された塗布液を基材に吹き付けて基材上に塗布液を塗着させる工程、塗着された塗布液を乾燥させて薄片状物質の前駆体を形成する工程、及び該前駆体を基材から剥離させる工程を有するものとし、微滴化される塗布液は、塗布液中に8〜40重量%の固形分と残部の溶媒とを有し、該溶媒は沸点が130℃以上の有機溶媒と酸性水溶液とを含有し、前記固形分は金属酸化物オリゴマーを有し、該金属酸化物オリゴマーはポリスチレン換算の重量平均分子量で500〜50000とすること。
【選択図】図1
Description
本発明は塗料、インキ、化粧料、プラスチック、フィルム等に粒子として含有される薄片状物質、電池の正極や負極の活物質として使用される薄片状物質及びその製法に関する。
金属化合物ゾルを基材に塗布し、乾燥させて薄膜化し、その後、それを基材から剥離、焼成して、薄片状物質を得る方法が知られている。例えば、特許文献1乃至4では、酸性コロイド溶液、又はアルカリ性コロイド溶液から薄片状物質が得られており、コロイド溶液の具体例としてpH9.8のシリカゾル、pH2〜4のシリカゾル、pH2.5〜4.5のアルミナゾル等が開示されている。
適切な大きさに制御された薄片状物質は、塗料、インキ、化粧料、プラスチック、フィルム等に粒子として含有される。当該薄片状物質は、表面が平坦性を有することから、当該表面を反射する光により、薄片状物質からなる粒子を分散してなる物品に、独特のキラキラ感(光輝感)を付与せしめる。
また、これとは技術分野は異なるが、リチウムイオン電池等の正極に使用される活物質が鱗状の形状を有していると、活物質の初期放電量を大きいものとできるとされている(例えば、特許文献5)。
特開昭62−213833号公報
特開昭62−237936公報
特開昭62−247834号公報
特開2004−26614号公報
特開2004−220898号公報
薄片状物質は、種々の用途への活用が期待できるものであり、効率的な生産方法の提供が望まれている。また、背景技術で述べたような応用展開を考慮すると、薄片状物質の大きさが揃っていることが好ましい。本発明は、大きさが揃った薄片状物質を提供しやすい製法を提供することを課題とする。
本発明は薄片状金属酸化物の製法であり、該製法は、塗布液を微滴化する工程、微滴化された塗布液を基材に吹き付けて基材上に塗布液を塗着させる工程、塗着された塗布液を乾燥させて薄片状物質の前駆体を形成する工程、及び該前駆体を基材から剥離させる工程を有し、微滴化される塗布液は、塗布液中に8〜40重量%の固形分と残部の溶媒とを有し、該溶媒は沸点が130℃以上の有機溶媒と酸性水溶液とを含有し、前記固形分は金属酸化物オリゴマーを有し、該金属酸化物オリゴマーはポリスチレン換算の重量平均分子量で500〜50000であることを特徴とする。
塗布液を微滴化する工程、微滴化された塗布液を基材に吹き付けて基材上に塗布液を塗着させる工程を有する塗布液の基材への塗着法は、所謂インクジェット方式による塗布液の塗着法であり、微滴化された塗布液の量や、塗布液の塗着領域を任意に制御しやすい。本発明では、薄片状物質の製法において、塗布液の基材への塗着法にインクジェット方式による塗布液の塗着法を採用することにより課題の解決を図った。
そして、塗布液の固形分を、ポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜50000、好ましくは1000〜20000の金属酸化物オリゴマーを有するものとすることで、金属酸化物種を任意に選択することで、種々用途に応じた薄片状物質を提供でき、しかも、当該分子量のオリゴマーを有するものとすることで、塗布液の吐出時の目詰まりが少なくなる。かくして、インクジェット方式で塗布液の塗着が効率化し、サイズの揃った薄片状物質を容易に提供できるようになる。
金属酸化物オリゴマーの重量平均分子量が500未満の場合は、塗布液が基材に塗着してから乾燥するまでの時間が長くなる。この場合、得られる薄片状物質前駆体の外周部の厚さが大きくなる現象が発生しやすいので好ましくない。他方、重量平均分子量が50000超の場合、塗布液が短時間で固化するようになり、目詰まりが発生しやすくなる。尚、ここでいう重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析において、ポリスチレン換算で計算される重量平均分子量を示す。
また、本発明の薄片状金属酸化物の製法では、微滴化された塗布液を基材に吹き付けて基材上に塗布液を塗着させる工程時に吹き付け位置を調整することによって、微滴化された塗布液を点状に基材に塗着させることで、薄片状物質の前駆体の形状を円盤状とすることが好ましい。前駆体を当該形状とすることにより、R形状の外縁を有する薄片状物質が得られやすくなり好ましい。
本発明の薄片状物質の製法は、サイズの揃った薄片状物質を得やすいので、薄片状物質の粉砕や分級工程を省略、あるいは、簡略化することに奏功する。
本発明の薄片状物質の製法は、塗布液を微滴化する工程、微滴化された塗布液を基材に吹き付けて基材上に塗布液を塗着させる工程、塗着された塗布液を乾燥させて薄片状物質の前駆体を形成する工程、及び該前駆体を基材から剥離させる工程を有する。
微滴化される塗布液は、塗布液中に8〜40重量%の固形分と残部の溶媒とを有し、該溶媒は沸点が130℃以上の有機溶媒と酸性水溶液とを含有し、前記固形分は金属酸化物オリゴマーを有し、該金属酸化物オリゴマーはポリスチレン換算の重量平均分子量で500〜50000であるものが使用される。
薄片状物質の厚みは、薄片の機械的強度の点から0.3μm以上が好ましく、さらに好ましくは0.3μm〜10μmであり、0.5μm〜5μmがより好ましい。そのためには、薄片状物質の前駆体を厚くさせることが求められる。塗布液中の固形分量は、1回の塗布の塗着で所望の厚さを得るために必要とされる分量であり、8重量%未満では0.3μm以上の厚みを得ることが難しい。さらに、塗布液が基材に塗着してから乾燥するまでの時間が長くなり、さらには得られる薄片状物質の前駆体の外周部の厚さが大きくなる現象が発生しやすくなる。
他方、40重量%超では、塗布液の吐出口での目詰まりが生じやすくなり好ましくない。薄片状物質の厚膜化と塗布効率を考慮すると、固形分濃度は、好ましくは8重量%〜35重量%、より好ましくは10重量%〜30重量%とされる。当該濃度は20重量%超〜28重量%としてもよい。
金属酸化物オリゴマーの例としは、酸化ケイ素オリゴマー、酸化チタンオリゴマー、酸化ジルコニウムオリゴマー、又は、それらのメタロキサン結合の一部が有機基に置き換えられたもの等が挙げられる。
これらオリゴマーは、オリゴマーの前駆物質である金属アルコキシド、金属塩を溶媒中で加水分解及び重縮合することによって得られる。
金属酸化物オリゴマーとして、酸化ケイ素オリゴマーを使用することが好ましい。この場合、酸性水溶液を有する溶媒中で、アルコキシシランを加水分解及び重縮合すること得ることが好ましい。また、酸化ケイ素オリゴマーの前駆物質に、トリアルコキシシランとテトラアルコキシシランとを使用すること好ましい。
両アルコキシシランを使用することで、緻密かつ柔軟なシリカネットワークが形成されるため、薄片状物質の前駆体を形成するときの乾燥過程に生じる収縮を緩和することができるようになり、結果、該前駆体にクラックが生じ難くなり、さらに機械的強度も兼ね備えたものとなる。
前記トリアルコキシシランには、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン等を使用できる。
なお、前記トリアルコキシシランとしては、アルコキシ基以外の有機基がシリカネットワークと相互作用するものであれば、ネットワークが強化されて薄片状物質の機械的強度が高くなるので好ましく、下式で示すトリアルコキシシランが使用できる。
R’−Si(OR)3 [1]
ここで、Rは1価のアルキル基、R’は水素結合性、または、反応性の官能基を有する1価の有機基を示す。このようなトリアルコキシシランとしては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、5、6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、5、6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−オキセタニルプロピルトリエトキシシランなどがある。
ここで、Rは1価のアルキル基、R’は水素結合性、または、反応性の官能基を有する1価の有機基を示す。このようなトリアルコキシシランとしては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、5、6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、5、6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−オキセタニルプロピルトリエトキシシランなどがある。
前記テトラアルコキシシランには、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランなどを使用することが可能である。そして、前記トリアルコキシシラン及び前記テトラアルコキシシランは、それぞれ単独種の化合物を使用してもよいし、複種の化合物を使用してもよい。
アルコキシシランのアルコキシ基は、加水分解および重縮合反応によって強固なシロキサン結合を形成する。テトラアルコキシシランは、ケイ素原子に結合する4つの官能基が全てアルコキシ基であるため、シロキサン結合が緻密に形成すされ、薄片状物質の機械的強度を向上させることに奏功する。このため、アルコキシ基は、反応性が高いメトキシ基やエトキシ基が好ましい。
本発明の薄片状物質の製法は、塗布液を微滴化する工程を含む。塗布液を微滴化する方法としては、インクジェット方式では、インクジェットヘッドのノズルにおいて、塗布液に圧力を加えることによって、塗布液を微滴化して吐出する。このとき、塗布液の粘度を2mPa・s〜20mPa・s、また、表面張力を20mN/m〜40mN/mとすると、微滴化された塗布液(以降、「液滴」と記載する場合あり)のサイズを均一にでき、さらに液滴が分裂せず、1つの液滴として吐出できるので好ましい。
また、基材に吹き付けられる微滴化された塗布液の量を4pl〜200pl、好ましくは10pl〜100plとすることが好ましい。4pl未満では、平坦性の良い0.3μm以上の厚みの薄片状物質を得にくく、200pl超では、所望の形態で薄片状物質を形成しにくくなる。塗布液を当該量に調整しやすくするために、塗布液の吐出口の大きさ、すなわち口径は、10μm〜100μm、好ましくは20μm〜80μmとしてもよい。
本発明の薄片状物質の製法で用いる塗布液は、沸点が130℃以上の有機溶媒を有している。これによって、塗布液の乾燥によって塗布液の吐出口での目詰まりが生じにくくなる。このため、沸点が130℃以上の有機溶媒は、全溶媒に対して20重量%以上であることが好ましい。
前記沸点が130℃以上の有機溶媒としては、多価アルコール、多価アルコールの誘導体、アミド系溶媒、または、スルホキシド系溶媒の沸点が130℃以上のものが使用できる。その例としては、多価アルコールとしてエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、ヘキシレングリコールなど、多価アルコールの誘導体としてエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなど、アミド系溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなど、スルホキシド系溶媒としてジメチルスルホキシドなどがある。
また、沸点が150℃以上の有機溶媒を用いると、塗布液の乾燥をさらに遅くできるので特に好ましい。ただし、有機溶媒の沸点が高くなると、塗布液が基材に塗着してから乾燥するまでの時間が長くなる。この場合、得られる薄片状物質の中央部の厚さが外周部よりも小さくなる現象が発生しやすい。また、沸点が高い溶媒を用いると、得られる薄片状物質の機械的強度が大幅に低下する。このため、有機溶媒の沸点の上限は300℃が好ましく、特に250℃が好ましい。
また、塗布液に含まれる酸性水溶液との相溶性を考慮すると、前記有機溶媒は、水との相溶性が高い方が好ましく、水への溶解性が無限大の溶媒が特に好ましい。
さらに、本発明で用いる有機溶媒は沸点が高いものを用いるため、薄片状物質の機械的強度が低くなりやすい。エチレングリコールモノアルキルエーテルは、薄片状物質の機械的強度をあまり低下させないため、前記有機溶媒に用いることが好ましく、特に、沸点が150℃超であり、水との相溶性も高いエチレングリコールモノブチルエーテルが特に好ましい。
本発明での溶媒は、酸性水溶液と有機溶媒を含有することが好ましい。酸性水溶液は、用いられるアルコキシシランのアルコキシ基の加水分解速度に応じて、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、酢酸、フタル酸、コハク酸などの有機酸等の酸触媒を有する水溶液が選択できる。
そして、金属アルコキシド等の金属酸化物オリゴマーの前駆物質の加水分解及び重縮合時の溶液、すなわち、金属酸化物オリゴマーを有する溶液(金属酸化物オリゴマーを有する溶液を「ゾル溶液」と表記する場合有り)中のpH値、水の量を適宜選択することによって、金属酸化物オリゴマーの重量平均分子量を500〜50000に制御できる。
例えば、ケイ素アルコキシドの場合、オリゴマーを有する溶液中でのpH値が0乃至4となるように酸触媒が添加されると、金属酸化物オリゴマーの重量平均分子量を500〜50000に制御しやすいので好ましい。また、pH値が2程度であるとゾル溶液や塗布液のポットライフが長くなるため、pH値が1.5〜2.5となるようにすることが特に好ましい。
また、酢酸やフタル酸等の酸解離定数が低い弱酸は、塩酸、硫酸、硝酸などの強酸に比較して、塗布液中の水分量が変わった場合も、pH値の変化が小さく、該pH値に設定しやすいので好ましい。
さらにまた、水の量を酸化ケイ素オリゴマーの前駆物質に対して、3モル倍〜20モル倍とすると酸化ケイ素オリゴマーの重量平均分子量を500〜50000に制御しやすいので好ましい。3モル倍未満では、加水分解反応が十分に進みにくく、酸化ケイ素オリゴマーの分子量が小さくなりやすい。一方、20モル倍超では、分子量が大きくなりやすい。また、水の量が多くなることは、沸点が130℃以上の有機溶媒の濃度を相対的に低くなることにもつながる。水の量は、オリゴマーの前駆物質に対して4モル倍〜12モル倍とするのが特に好ましい。
次にゾル溶液の作製方法の一例を説明する。アルコキシシランと溶媒を所定量混合、攪拌(例えば、約30分程度)し溶液Aを得る。一方、酸性水溶液と前記溶媒を混合、攪拌して溶液Bを得る。次いで、溶液Aと溶液Bを混合し、次いで攪拌して金属酸化物オリゴマーの前駆物質の加水分解および重縮合反応を進めることで得られる。加水分解および重縮合反応があまり進んでいないと薄片状物質の中央部が外周部よりも小さくなる現象が発生し、逆に進みすぎても薄片状物質の機械的強度が低下するので好ましくない。なお、10℃〜45℃で攪拌すると、1時間から1日程度で加水分解および重縮合反応を適度なレベルにまで進行させることができるので好ましい。ただし、本発明では、加水分解および重縮合反応を適度なレベルにまで進行させれば良いわけであるので、攪拌条件はこれに限定されるわけではない。
また、本発明では1種以上の金属酸化物オリゴマーの前駆物質を用いる場合、これら前駆物質の加水分解および重縮合は、個々に行っても一緒に行っても良い。ゾル溶液の調製方法としては、上記の方法に限定されるものではないが、上記のような金属酸化物オリゴマーの前駆物質を溶媒で希釈したものと、溶媒で希釈した酸性水溶液を徐々に混合する方法は、急激な反応を避けることができ、より均質な反応が得られるので好ましい。
また、本発明の薄片状金属酸化物の製法では、塗布液に硬化触媒を添加してもよい。該硬化触媒を添加すると、得られる薄片状物質の機械的強度が向上するので好ましい。該硬化触媒は、塗布液中の金属酸化物オリゴマー量に重量比で0.05倍量まで加えてもよい。0.05倍量超では、添加量に対する触媒効果が薄くなる傾向があるので、大量の触媒を添加する必要はない。他方、触媒効果を発揮させるためには、硬化触媒は金属酸化物オリゴマー量に重量比で、0.0001倍量以上添加することが好ましい。
硬化触媒は、特に、スズ、アルミニウム、チタン、ジルコニウムなどの金属錯体がより好適に用いられる。ここで、金属錯体は塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、アセチルアセトナート塩などが好ましい。
また、本発明で用いる塗布液には、薄片状金属酸化物に機能を付与する目的で機能性材料が含まれていてもよい。その一つに、着色材料のような特定の波長を吸収する材料がある。
着色材料としては、前記塗布液に分散可能であって、かつ塗布液を硬化させるときの熱処理で実質的に分解しないものであれば任意のものを用いることができる。このような顔料としては、アゾ系、アントラキノン系、ナフトキノン系、イソインドリノン系、スレン系、ペリレン系、インジゴ系、フルオレノン系、ジオキサジン系、チオインジゴ系、フェナジン系、フェノチアジン系、ポリメチン系、ポリエン系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、キナクリドン系、アクリジン系、フタロシアニン系、キノフタロン系などの有機顔料、あるいは、酸化チタン、酸化亜鉛、ベンガラ、黄鉛、酸化コバルト、酸化クロム、酸化鉄、酸化銅などの単一酸化物や(Cu・Cr)酸化物、(Ti・Co)酸化物、(T・Ni)酸化物、(Al・Co)酸化物、(Co・P)酸化物、(Cr・Al)酸化物、(Cr・Sn)酸化物、(Fe・Zr)酸化物、(Fe・Zn)酸化物、(Fe・Cr・Zn)酸化物、(Fe・Co・Cr)酸化物、(Co・Cr・Al)酸化物、(Ti・Fe・Zn)酸化物、(Cr・Cu・Mn)酸化物、(Ti・Ni・Co)酸化物、(Fe・Cr・Al・Zn)酸化物、(Ti・Ni・Co・Al)酸化物などの複合酸化物などの無機顔料、あるいは、カーボンブラックやカーボンナノチューブなどのカーボンが好ましい。また、必要に応じて複数の種類の顔料を組み合わせて用いてもよい。
これらの顔料は微粒子の状態で使用されることが好ましい。微粒子のサイズが小さくなると着色力が低下し、さらに耐久性も低下しやすい。一方、サイズが大きくなると薄片状物質の機械的強度が低下し、さらに塗布液の吐出口での目詰まりが生じやすくなるので好ましくない。このため、平均粒子径は、10nm〜2000nmが好ましく、特に30nm〜1000nmが好ましい。また、平均粒子径は、薄片状物質の透明性に関係するため、目的とする透明性によって平均粒子径を適宜選択できる。透明性を確保したい場合は、微粒子の平均粒径は可視光線の最短波長である400nmの半分である200nm以下、より好ましくは100nm以下が良い。一方、不透明にしたい場合は、平均粒径を200nm以上、より好ましくは400nm以上が良い。
これらの顔料を用いる場合、顔料の分散安定性を向上させるために分散剤を併用することが好ましい。この場合、分散機などを用いて塗布液に分散させるが、その手順としては、あらかじめ顔料および分散剤を溶媒に溶解または分散させて分散液としたものをゾル溶液に混合しても良いし、溶媒、顔料、分散剤および前記シリカゾル溶液を同時に混合して塗布液としても良い。なお、分散機には、任意のものを用いることができるが、例えば、ポットミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、超音波分散機、ホモジナイザー、およびその他が挙げられる。
分散剤の種類は、分散液や塗布液を調製したときに顔料の分散性が著しく低下しないものであれば任意のものを使用してもよい。ただし、バインダーとして酸触媒から調製されるゾル溶液が使用される場合、塩基性タイプの分散剤よりも、酸性タイプの分散剤が好適に用いられ、例えば、リン酸系やカルボン酸系の分散剤が好ましい例として挙げられる。
前記微粒子には、ITO、ATOなどの導電性微粒子も使用できる。これらは1000nm以上の波長の近赤外線を効率的に遮蔽することが知られており、これらを有する薄片状物質は赤外線カット材として使用してもよい。
また、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、ベンゾフェノン系分子、あるいは、ベンゾトリアゾール系分子は380nm以下の波長の紫外線を効率的に遮蔽することが知られており、これらの1種または複数種を有する薄片状物質は紫外線カット材として使用してもよい。
金属酸化物オリゴマーと機能性材料は、重量比で99:1〜20:80であることが好ましい。機能性材料が1重量%未満であれば、十分な機能が得られないことがあり、さらに80重量%超であれば、薄片状物質の機械的強度が不十分になることがある。
さらにまた、本発明では、前述のように機能性材料として、有機材料、カーボンあるいは無機材料が使用されてもよい。有機顔料やカーボンは、薄片状物質の機械的強度を下げやすいので、酸化ケイ素オリゴマーと有機顔料やカーボンとの重量比は99:1〜70:30とすることが好ましい。一方、無機顔料の場合、機械的強度の低下は小さいので、酸化ケイ素オリゴマーと無機顔料との重量比は70:30〜20:80とすることが好ましい。
また、塗布液のレベリング性を向上させる目的で塗布液にレベリング剤を微量添加しても良く、そのレベリング剤としては、水溶性のシリコーン系レベリング剤が好ましい。
本発明で使用される基材は、基材表面が平坦なものであればよく、また、剛直な基材でもフレキシブルなフィルム状の基材でもよい。具体的には自動車用ならびに建築用、産業用ガラス等に通常用いられている板ガラス、ステンレス鋼ならびにアルミニウム板、ニッケル板等の金属基板、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂、塩化ビニル等の樹脂基板ならびに樹脂フィルム等を用いることができる。
また、基材の表面エネルギーが小さいと、基材に塗着した塗布液が塗れ広がりにくい。その結果、薄片状物質の厚みを大きくできる。また、薄片状物質が基材に強く付着しにくくなり、基材から剥離させやすくなる。なお、基材の表面エネルギーは、水の接触角で評価でき、水(2mg)の接触角で60°以上が好ましく、80°以上がさらに好ましい。
薄片状物質の前駆体を形成する工程は、約20℃の室温で放置又は800℃までの加熱で基材に前駆体を形成する。薄片状物質を得るために基材からの剥離を促す方法として、ブラシや布、スクレーパーで剥ぎ取ったり、基材に振動を与えたり、吸引して収集してもよい。さらに基材から剥離した薄片状物質を再加熱して、物質内のメタロキサン結合を強固にすることが望ましく、300℃〜1200℃で5分〜3時間加熱することが好ましい。
また、薄片状物質を基材として、その薄片表面に金属を被覆することができる。被覆する金属としては、銀、金、銅、白金、ニッケル、コバルト、クロム等を用いることができる。中でも、銀は、金属の中で一番反射率が高く好適である。被覆の方法としては、一般的に知られている方法であればどのような方法を用いてもよく、スパッタリング法、ゾルゲル法、CVD法または無電解メッキ法のようなに析出させる金属を含む溶液に薄片状物質をその液に浸漬させた後に還元剤を混合させて薄片表面に金属を析出させる方法など、公知の方法を利用することができる。
参考までに、本発明の薄片状金属酸化物の製法において、塗布液が基材に塗布されるときの様子も概略的に示しものを図1に示す。塗布液の格納部1内の塗布液2は、塗布液2を吐出口3から吐出させるための機構(インクジェット方式の塗布では、汎用的に使用されているもの;図示せず)により、吐出口3から吐出され微滴化される。吐出された塗布液4(微滴化され基材に吹き付けられる塗布液)は、基材5に到達し、基材に吹き付けられた塗布液6となり、乾燥等を経て薄片状物質が形成される。
以下に本発明の実施例について説明する。
〔塗布液および薄片状物質の評価〕
(1)塗布液の金属酸化物オリゴマーの重量平均分子量の測定
東ソー製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定し、ポリスチレンで換算された重量平均分子量(Mw)を算出した。
(2)薄片状物質の厚み
基材に付着した薄片状物質の前駆体の一部をカッターナイフで削り取り、表面粗さ計(小阪研究所製:ET4000A)を用いて、段差を測定した。
〔塗布液および薄片状物質の評価〕
(1)塗布液の金属酸化物オリゴマーの重量平均分子量の測定
東ソー製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定し、ポリスチレンで換算された重量平均分子量(Mw)を算出した。
(2)薄片状物質の厚み
基材に付着した薄片状物質の前駆体の一部をカッターナイフで削り取り、表面粗さ計(小阪研究所製:ET4000A)を用いて、段差を測定した。
実施例1
(塗布液の調製)
メチルトリメトキシシラン(MTMS)4.95g、テトラメトキシシラン(TMOS)14.41g、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PE、沸点:132℃)11.76g、1.0mol/l酢酸(pH:2.0)18.89gを混合し、30℃で16時間攪拌して、塗布液としてのシリカゾル溶液を得た。塗布液中の固形分濃度は16.25%、塗布液中の酸化ケイ素オリゴマーの重量平均分子量は3000であった。
(塗布液の調製)
メチルトリメトキシシラン(MTMS)4.95g、テトラメトキシシラン(TMOS)14.41g、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PE、沸点:132℃)11.76g、1.0mol/l酢酸(pH:2.0)18.89gを混合し、30℃で16時間攪拌して、塗布液としてのシリカゾル溶液を得た。塗布液中の固形分濃度は16.25%、塗布液中の酸化ケイ素オリゴマーの重量平均分子量は3000であった。
(基材の準備)
300mm×300mm×3.45mm(厚)のガラス基材の表面を研磨液で研磨し、水洗及び乾燥した。
300mm×300mm×3.45mm(厚)のガラス基材の表面を研磨液で研磨し、水洗及び乾燥した。
(塗布)
図1の図示したような機構を有するインクジェット方式による塗布装置を使って、上記「塗布液の調製」で得た塗布液を微滴化し、微滴化された塗布液を「基材の準備」で得たガラス基材に点状に塗着させた。ここでは、吐出口の口径を40μmとし、基材に吹き付けられる微滴化された塗布液の量を40plに調整した。次に、40℃で10分間乾燥させた後、250℃で10分間焼成して薄片状物質の前駆体を得た。
図1の図示したような機構を有するインクジェット方式による塗布装置を使って、上記「塗布液の調製」で得た塗布液を微滴化し、微滴化された塗布液を「基材の準備」で得たガラス基材に点状に塗着させた。ここでは、吐出口の口径を40μmとし、基材に吹き付けられる微滴化された塗布液の量を40plに調整した。次に、40℃で10分間乾燥させた後、250℃で10分間焼成して薄片状物質の前駆体を得た。
(薄片状物質の作製)
冷却後、この前駆体をブラシで剥ぎ取り、600℃で30分間熱処理することにより、薄片状物質を得た。
冷却後、この前駆体をブラシで剥ぎ取り、600℃で30分間熱処理することにより、薄片状物質を得た。
その結果、厚みが0.8μmの薄片状物質が得られた。
比較例1
塗布液の調製において、1.0mol/l酢酸(pH:2)の替わりに0.01mol/l硝酸(pH:2.4)を用い、30℃で2h攪拌した以外は実施例1と同様の手順で塗布液を得た。
塗布液の調製において、1.0mol/l酢酸(pH:2)の替わりに0.01mol/l硝酸(pH:2.4)を用い、30℃で2h攪拌した以外は実施例1と同様の手順で塗布液を得た。
結果、塗布液中の酸化ケイ素オリゴマーの重量平均分子量は350と小さかった。また、得られた薄片状物質の前駆体は、中央部の厚さが0.2μmと小さかった。このため、剥離するときに薄片状物質が崩壊した。
比較例2
塗布液の調製において、30℃で60時間攪拌して塗布液を得た以外は実施例1と同様の手順で塗布液を得た。
塗布液の調製において、30℃で60時間攪拌して塗布液を得た以外は実施例1と同様の手順で塗布液を得た。
結果、塗布液中の酸化ケイ素オリゴマーの重量平均分子量は74000と大きかった。また、吐出口から塗料が吐出されず、塗着する薄片状物質の数が少なく効率が悪かった。
1 塗布液の格納部
2 塗布液の格納部にある塗布液
3 塗布液の吐出口
4 吐出された塗布液(基材に吹き付けられる塗布液)
5 基材
6 基材に吹き付けられた塗布液
2 塗布液の格納部にある塗布液
3 塗布液の吐出口
4 吐出された塗布液(基材に吹き付けられる塗布液)
5 基材
6 基材に吹き付けられた塗布液
Claims (6)
- 薄片状金属酸化物の製法であり、該製法は、塗布液を微滴化する工程、微滴化された塗布液を基材に吹き付けて基材上に塗布液を塗着させる工程、塗着された塗布液を乾燥させて薄片状物質の前駆体を形成する工程、及び該前駆体を基材から剥離させる工程を有し、微滴化される塗布液は、塗布液中に8〜40重量%の固形分と残部の溶媒とを有し、該溶媒は沸点が130℃以上の有機溶媒と酸性水溶液とを含有し、前記固形分は金属酸化物オリゴマーを有し、該金属酸化物オリゴマーはポリスチレン換算の重量平均分子量で500〜50000であることを特徴とする薄片状金属酸化物の製法。
- 微滴化される塗布液の粘度が2mPa・s〜20mPa・s、表面張力が20mN/m〜40mN/mであることを特徴とする請求項1に記載の薄片状金属酸化物の製法。
- 基材に吹き付けられる微滴化された塗布液の量が4pl〜200plであることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄片状金属酸化物の製法。
- 前記沸点が130℃以上の有機溶媒は、全溶媒に対して20重量%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薄片状金属酸化物の製法。
- 前記固形分が、平均粒径が10〜2000nmの微粒子を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の薄片状金属酸化物の製法。
- 微滴化された塗布液を基材に吹き付けて基材上に塗布液を塗着させる工程時に吹き付け位置を調整することによって、微滴された塗布液を点状に基材に塗着させることで、薄片状物質の前駆体の形状を円盤状とすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の薄片状金属酸化物の製法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008224336A JP2010058999A (ja) | 2008-09-02 | 2008-09-02 | 薄片状金属酸化物の製法 |
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2008
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