JP2010053900A - 耐食表面処理チェーン - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な耐食性を有し、表面に潤滑油を塗布した場合においても、耐食性の低下が抑制されている耐食表面処理チェーンを提供する。
【解決手段】耐食表面処理チェーン10は、内プレート11、ブシュ12、外プレート13、連結ピン14、及びローラ15を備える。各構成部品は、鉄母材上に、衝撃亜鉛めっきにより形成された亜鉛−鉄合金下地皮膜と、亜鉛、アルミニウム、硝酸塩、及びメルカプト基含有シランカップリング剤以外のメルカプト基を含む有機化合物を含む第1水系塗料を用いて形成された第1塗膜とを有する。そして、顔料は含有せず、水溶性又は加水分解性のアミノ基含有シランカップリング剤、ヒドロキシアパタイト、及びリチウムシリケートを含有する第2水系塗料を第1塗膜に塗装することにより、該第2水系塗料が第1塗膜に浸透するとともに、第2塗膜が形成されている。
【選択図】図3
【解決手段】耐食表面処理チェーン10は、内プレート11、ブシュ12、外プレート13、連結ピン14、及びローラ15を備える。各構成部品は、鉄母材上に、衝撃亜鉛めっきにより形成された亜鉛−鉄合金下地皮膜と、亜鉛、アルミニウム、硝酸塩、及びメルカプト基含有シランカップリング剤以外のメルカプト基を含む有機化合物を含む第1水系塗料を用いて形成された第1塗膜とを有する。そして、顔料は含有せず、水溶性又は加水分解性のアミノ基含有シランカップリング剤、ヒドロキシアパタイト、及びリチウムシリケートを含有する第2水系塗料を第1塗膜に塗装することにより、該第2水系塗料が第1塗膜に浸透するとともに、第2塗膜が形成されている。
【選択図】図3
Description
本発明は、塩水、酸、アルカリ等の腐食雰囲気下で使用されるブシュチェーン、ローラチェーン等の耐食表面処理チェーンに関する。
従来、塩水、酸、アルカリ等の腐食雰囲気下で使用されるチェーンを防食するために、チェーンの各部品の鉄表面を、亜鉛等の鉄より卑である金属で被覆すること、ニッケル等の鉄より貴である金属で被覆すること等が行われている。前者の亜鉛めっきとして、電気亜鉛めっき及び粉末衝撃亜鉛めっき等が挙げられ、後者のニッケルめっきとして、電気ニッケルめっき及び無電解ニッケルめっき等が挙げられる。
また、特許文献1には、鉄素地上に非水素雰囲気下で亜鉛皮膜を形成し、該亜鉛皮膜上に、アルミニウム粉末及びシリコン樹脂を含有する塗料を焼付け塗装することにより、白錆防止焼付け塗膜を形成した防食性チェーン用部品の発明が開示されている。
特許第3122037号公報
上述のように、チェーン部品の鉄母材の表面に亜鉛めっきを施した場合、腐食雰囲気下でチェーンを使用したときに、亜鉛の腐食が著しく進行する。加速試験を実施した場合、チェーンの耐食寿命が例えば50時間以下に低下することが確認されている。
そして、チェーン部品の鉄母材の表面にニッケルめっきを施した場合、ニッケルめっきは亜鉛めっきに比べて防食性に劣るため、めっき皮膜の欠陥部、及び製造時又は使用時に生じた欠陥部に腐食が生じ、また、腐食が母材内部に向かって孔状に進行する孔食が生じ、部品強度が低下するという問題があった。そして、応力腐食割れによる破断が生じる虞もあった。さらに、ニッケルめっき処理は酸性雰囲気下で行われるため、水素脆性により部品強度が低下する虞があった。
そして、チェーン部品の鉄母材の表面にニッケルめっきを施した場合、ニッケルめっきは亜鉛めっきに比べて防食性に劣るため、めっき皮膜の欠陥部、及び製造時又は使用時に生じた欠陥部に腐食が生じ、また、腐食が母材内部に向かって孔状に進行する孔食が生じ、部品強度が低下するという問題があった。そして、応力腐食割れによる破断が生じる虞もあった。さらに、ニッケルめっき処理は酸性雰囲気下で行われるため、水素脆性により部品強度が低下する虞があった。
ところで、一般に、チェーンの表面には、部品同士の摺動による摩擦を低減させるため、汎用潤滑油(鉱油、パラフィン等に微量の防錆剤及び極圧添加剤を配合したもの)が塗布されている。
チェーンの表面に、特許文献1等に示されたシリコン樹脂を含有する塗料を用いて塗膜を形成した場合において、該塗膜上に前記潤滑油を塗布したときに、塗布前と比較して耐食性が低下するという問題があった。
チェーンの表面に、特許文献1等に示されたシリコン樹脂を含有する塗料を用いて塗膜を形成した場合において、該塗膜上に前記潤滑油を塗布したときに、塗布前と比較して耐食性が低下するという問題があった。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、良好な耐食性を有し、表面に潤滑油を塗布した場合においても、耐食性の低下が抑制されている耐食表面処理チェーンを提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討の結果、チェーンの表面に、顔料は含有せず、水溶性又は加水分解性のアミノ基含有シランカップリング剤、ヒドロキシアパタイト、及びリチウムシリケートを含有する水系塗料を塗装することにより、チェーンが良好な耐食性を有し、潤滑油を塗装した場合においても、耐食性の低下が抑制されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、第1発明の耐食表面処理チェーンは、鉄系の一対の外プレートと一対の内プレートとを交互に連結してなり、表面に亜鉛−鉄合金下地皮膜を形成してある耐食表面処理チェーンにおいて、前記亜鉛−鉄合金下地皮膜上に、亜鉛、アルミニウム、硝酸塩、及びメルカプト基含有シランカップリング剤以外のメルカプト基を含む有機化合物を含有する第1水系塗料を用いて第1塗膜を形成してあり、前記第1塗膜に、顔料は含有せず、水溶性又は加水分解性のアミノ基含有シランカップリング剤、ヒドロキシアパタイト、及びリチウムシリケートを含有する第2水系塗料を塗装して、前記第1塗膜に浸透させ、第2塗膜を形成してあることを特徴とする。
すなわち、第1発明の耐食表面処理チェーンは、鉄系の一対の外プレートと一対の内プレートとを交互に連結してなり、表面に亜鉛−鉄合金下地皮膜を形成してある耐食表面処理チェーンにおいて、前記亜鉛−鉄合金下地皮膜上に、亜鉛、アルミニウム、硝酸塩、及びメルカプト基含有シランカップリング剤以外のメルカプト基を含む有機化合物を含有する第1水系塗料を用いて第1塗膜を形成してあり、前記第1塗膜に、顔料は含有せず、水溶性又は加水分解性のアミノ基含有シランカップリング剤、ヒドロキシアパタイト、及びリチウムシリケートを含有する第2水系塗料を塗装して、前記第1塗膜に浸透させ、第2塗膜を形成してあることを特徴とする。
第2発明の耐食表面処理チェーンは、第1発明において、前記第1水系塗料に含まれるアルミニウムの亜鉛に対する質量比は、0.07以上0.24以下であることを特徴とする。
第3発明の耐食表面処理チェーンは、第1又は第2発明において、前記第2水系塗料に含まれる前記ヒドロキシアパタイトの有効成分の前記アミノ基含有シランカップリング剤の有効成分に対する質量比は、0.05以上0.13以下であり、前記第2水系塗料に含まれる前記リチウムシリケートの有効成分の前記アミノ基含有シランカップリング剤の有効成分に対する質量比は、0.05以上0.36以下であることを特徴とする。
本発明の耐食表面処理チェーンにおいては、表面に亜鉛−鉄合金下地皮膜が形成されているので、亜鉛による防食作用(犠牲防食、保護皮膜の形成)が発現され、該亜鉛−鉄合金下地皮膜の上側に形成する皮膜に欠陥が生じた場合においても、該欠陥の部分からの発錆が抑制される。
また、亜鉛−鉄合金下地皮膜上に第1塗膜が形成されることにより、亜鉛の短時間での腐食進行が抑制され、製造時又は使用時に生じる皮膜の欠陥からの発錆抑制効果がさらに向上する。
そして、第1塗膜に第2水系塗料を塗装してあるが、後述するように、第2水系塗料は第1塗膜表面に堆積される顔料を含有しないので、第2水系塗料の前記アミノ基含有シランカップリング剤等の樹脂成分が第1塗膜の内部に浸透している。従って、第1塗膜が緻密になり、第2水系塗料により第2塗膜(トップコート膜)が形成されていることと相まって、腐食因子の進入が抑制されている。従って、チェーンは良好な耐食性を有し、塗膜の薄膜化を図ることができる。
また、亜鉛−鉄合金下地皮膜上に第1塗膜が形成されることにより、亜鉛の短時間での腐食進行が抑制され、製造時又は使用時に生じる皮膜の欠陥からの発錆抑制効果がさらに向上する。
そして、第1塗膜に第2水系塗料を塗装してあるが、後述するように、第2水系塗料は第1塗膜表面に堆積される顔料を含有しないので、第2水系塗料の前記アミノ基含有シランカップリング剤等の樹脂成分が第1塗膜の内部に浸透している。従って、第1塗膜が緻密になり、第2水系塗料により第2塗膜(トップコート膜)が形成されていることと相まって、腐食因子の進入が抑制されている。従って、チェーンは良好な耐食性を有し、塗膜の薄膜化を図ることができる。
さらに、第2塗膜上に潤滑油を塗布した場合においても、潤滑油が第1塗膜の内部に浸透しないので、亜鉛の犠牲防食が阻害されず、耐食性の低下が抑制されている。
本発明によれば、チェーンの表面上に、亜鉛−鉄合金下地皮膜と、亜鉛、アルミニウム、硝酸塩、並びにメルカプト基含有シランカップリング剤以外のメルカプト基を含む有機化合物を含有する第1水系塗料を用いて形成された第1塗膜とを有し、第1塗膜に、顔料は含有せず、水溶性又は加水分解性のアミノ基含有シランカップリング剤、ヒドロキシアパタイト、及びリチウムシリケートを含有する第2水系塗料を塗装してあるので、第1塗膜に浸透した前記アミノ基含有シランカップリング剤により第1塗膜が緻密化する。そして、表面に第2塗膜が形成されていることと相まって、腐食因子の進入が抑制される。従って、耐食表面処理チェーンは良好な耐食性を有し、第2塗膜上に潤滑油を塗布した場合においても、潤滑油が第1塗膜の内部に浸透せず、耐食性の低下が抑制されている。
そして、塗膜は酸性雰囲気下では形成されないので、水素脆性が生じず、部品強度の低下が抑制されている。
そして、塗膜は酸性雰囲気下では形成されないので、水素脆性が生じず、部品強度の低下が抑制されている。
本発明の耐食表面処理チェーンは、離間配置される一対の内プレートと、該内プレートのブシュ圧入孔に圧入嵌合されるブシュと、前記内プレートの外側に配置されて前後の内プレートに連結される一対の外プレートと、前記ブシュの内周面に遊嵌して外プレートのピン圧入孔に圧入嵌合される連結ピンとで構成されるブシュチェーン、又は、前記連結ピン及びブシュの外周面にローラをさらに遊嵌させるローラチェーンのいずれであってもよい。
本発明の耐食表面処理チェーンを具体的な用途で例示すると、高湿度環境下、定期的な洗浄状態で使用される食品搬送トレーコンベヤの駆動機構に用いられるコンベヤチェーン、水及び洗剤が降りかかる洗車機内のローラコンベヤの駆動機構、並びにブラシ、及びブローの駆動機構に用いられるコンベヤチェーン、高温高湿下で用いられるキノコ培養用スタッカークレーンの吊り下げチェーン、洗浄液がかかるビンケース洗浄搬送ローラコンベヤの駆動機構に用いられるコンベヤチェーン、水中を走行して水中に沈殿した汚泥をかき寄せるためのコンベヤチェーン、海岸付近に設置されて潮風に晒される野外設置コンベヤの駆動機構のためのコンベヤチェーン等の搬送コンベヤチェーン、又はエンジン等で用いられるような動力を伝達するための伝動用チェーンが挙げられる。
本発明の耐食表面処理チェーンに用いられる内プレート及び外プレートの具体的な形状は、小判型プレート、ヒョウタン型プレートのいずれであってもよい。
本発明の耐食表面処理チェーンは、上述の各構成部品の鉄系母材(以下、鉄母材という)上に、例えば衝撃亜鉛めっきにより形成された亜鉛−鉄合金下地皮膜を有する。
本発明の耐食表面処理チェーンは、亜鉛−鉄合金下地皮膜上に、第1水系塗料を用いて形成された第1塗膜を有する。
第1水系塗料は、亜鉛、アルミニウム、硝酸塩、並びにメルカプト基含有シランカップリング剤以外のメルカプト基を含む有機化合物を含有する。この亜鉛、アルミニウム、硝酸塩、及び前記有機化合物等により水系防錆顔料が構成される。
亜鉛及びアルミニウムの形態等については特に制限はなく、球状、フレーク状、棒状等の形態を取り得る。特に、フレーク状のものを用いて塗料を構成した場合、被塗物への被覆効果が高く、優れた防食性を有することになる。
亜鉛及びアルミニウムは、混合して1つの水系防錆顔料として第1水系塗料に配合してもよく、亜鉛及びアルミニウムを各別に配合した2種の水系防錆顔料を第1水系塗料に配合することにしてもよい。
亜鉛とアルミニウムとを併用することにより、亜鉛に起因する白錆の発生が抑制される。
第1水系塗料は、亜鉛、アルミニウム、硝酸塩、並びにメルカプト基含有シランカップリング剤以外のメルカプト基を含む有機化合物を含有する。この亜鉛、アルミニウム、硝酸塩、及び前記有機化合物等により水系防錆顔料が構成される。
亜鉛及びアルミニウムの形態等については特に制限はなく、球状、フレーク状、棒状等の形態を取り得る。特に、フレーク状のものを用いて塗料を構成した場合、被塗物への被覆効果が高く、優れた防食性を有することになる。
亜鉛及びアルミニウムは、混合して1つの水系防錆顔料として第1水系塗料に配合してもよく、亜鉛及びアルミニウムを各別に配合した2種の水系防錆顔料を第1水系塗料に配合することにしてもよい。
亜鉛とアルミニウムとを併用することにより、亜鉛に起因する白錆の発生が抑制される。
亜鉛、及びアルミニウムの第1水系塗料に対する含有量は、それぞれ10質量%以上80質量%以下、0.7質量%以上18.3質量%以下であるのが好ましい。
アルミニウムと亜鉛との質量比は、0.07以上0.24以下であるのが好ましい。前記質量比が前記数値範囲内である場合、白錆の発生が良好に抑制される。
アルミニウムと亜鉛との質量比は、0.07以上0.24以下であるのが好ましい。前記質量比が前記数値範囲内である場合、白錆の発生が良好に抑制される。
以下に、亜鉛を含有する水系防錆顔料を調製する場合について説明する。
亜鉛がフレーク状である場合、ボールミル、アトライタ等により展延処理して得られ、平均アスペクト比(平均長径/平均厚み)が10以上であるものが好ましい。
このようにして得られたフレーク状の亜鉛粉末を、メルカプト基含有シランカップリング剤以外のメルカプト基を含む有機化合物と混練し、さらに硝酸塩を添加して混練することにより、亜鉛が前記有機化合物で被覆された水系防錆顔料を得ることができる。その形態は粉末状であってもよく、スラリー状であってもよい。
硝酸塩は、展延処理の際に前記有機化合物と共に添加してもよく、上述したように、亜鉛粉末と前記有機化合物との混練の際に添加してもよい。
亜鉛がフレーク状である場合、ボールミル、アトライタ等により展延処理して得られ、平均アスペクト比(平均長径/平均厚み)が10以上であるものが好ましい。
このようにして得られたフレーク状の亜鉛粉末を、メルカプト基含有シランカップリング剤以外のメルカプト基を含む有機化合物と混練し、さらに硝酸塩を添加して混練することにより、亜鉛が前記有機化合物で被覆された水系防錆顔料を得ることができる。その形態は粉末状であってもよく、スラリー状であってもよい。
硝酸塩は、展延処理の際に前記有機化合物と共に添加してもよく、上述したように、亜鉛粉末と前記有機化合物との混練の際に添加してもよい。
上述した展延処理をする際には、前記有機化合物を粉砕助剤として用い、金属表面を直接被覆してもよく、一般的な粉砕助剤としてのステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸等の不飽和脂肪酸、及びフッ化水素酸塩等を併用してもよい。
さらに、展延処理及び混練処理に際して、界面活性剤、上述の粉砕助剤を分散助剤として添加してもよい。
さらに、展延処理及び混練処理に際して、界面活性剤、上述の粉砕助剤を分散助剤として添加してもよい。
混練処理は有機溶媒の存在下で行うことができるが、特に水溶性溶媒を用いた場合には、処理後のスラリーを水系防錆顔料としてそのまま第1水系塗料に添加することができるので好ましい。
前記水溶性溶媒としては、プロピレングリコール、エチレングリコール等のグリコール系溶媒、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒等が挙げられる。
メルカプト基を有する有機化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸エチルヘキシル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸トリデシル、ペンタエリスリトールテトラキスプロピオネート、4−メルカプトフェノール、チオグリコール酸、チオグリコール酸モノエタノールアミン、チオグリコール酸エチルヘキシル、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル等が挙げられる。
これらの有機化合物は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
これらの有機化合物は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
亜鉛粉末に対する前記有機化合物の添加量は、亜鉛粉末100質量部に対し1〜13質量部が好ましく、3〜13質量部がより好ましく、3〜10質量部がさらに好ましく、5〜8質量%が特に好ましい。前記添加量が亜鉛粉末100質量部に対し1質量部より少ない場合、亜鉛粉末の表面を処理するのに十分ではなく、水中での安定性(貯蔵安定性)が不十分であり、前記添加量が13質量部を超える場合、前記有機化合物が過剰となり、水中での安定性のさらなる向上が期待できない。
水系防錆顔料に含まれる硝酸塩としては、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸ニッケル、硝酸コバルト等が挙げられる。中でも、硝酸マグネシウム及び硝酸ニッケルが好ましい。
硝酸塩の添加量は、亜鉛粉末100質量部に対し0.1〜10質量部が好ましく、3〜9質量部がより好ましく、3〜7質量部がさらに好ましい。前記添加量が0.1質量部より少ない場合、亜鉛粉末の表面に対する前記有機化合物の被覆効率を高めるのに十分ではなく、水系防錆顔料の水中での安定性が不十分となり、前記添加量が10質量部を超える場合、水中での安定性のさらなる向上が期待できない。
これらの硝酸塩は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
これらの硝酸塩は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
水系防錆顔料は、マグネシウム化合物を含有するのが好ましく、上述の硝酸マグネシウムとして含有するのがさらに好ましい。
水系防錆顔料に含有されるマグネシウムの亜鉛に対する質量割合は、0.05質量%〜10質量%であるのが好ましく、0.2質量%〜2.0質量%であるのがより好ましく、0.4質量%〜1.0質量%であるのがさらに好ましい。前記割合が0.05質量%〜10質量%である場合、前記水系防錆顔料を用いて第1水系塗料を構成し、チェーン部品に塗装した場合、マグネシウムが亜鉛よりも先に溶出するので、亜鉛の溶出量が抑制され、防錆性が長期に亘って持続する。
水系防錆顔料に含有されるマグネシウムの亜鉛に対する質量割合は、0.05質量%〜10質量%であるのが好ましく、0.2質量%〜2.0質量%であるのがより好ましく、0.4質量%〜1.0質量%であるのがさらに好ましい。前記割合が0.05質量%〜10質量%である場合、前記水系防錆顔料を用いて第1水系塗料を構成し、チェーン部品に塗装した場合、マグネシウムが亜鉛よりも先に溶出するので、亜鉛の溶出量が抑制され、防錆性が長期に亘って持続する。
水系防錆顔料は、各成分を各別に添加してもよく、又は、一部若しくは全部の成分を予め混合して添加してもよく、水及び上述の溶媒と混合してスラリー状として添加してもよい。
本発明の第1水系塗料は、上述したように、亜鉛を含有する前記水系防錆顔料と、アルミニウムを含有する水系防錆顔料とを配合することにしてもよく、亜鉛とアルミニウムとを混合して、1つの水系防錆顔料として調製されたものを用いることにしてもよい。
第1水系塗料は、さらにコロイダルシリカを含有してもよい。
第1水系塗料は、さらにコロイダルシリカを含有してもよい。
第1水系塗料は、通常の製造方法に従って、各成分を混合、撹拌することによって得られる。その際、水、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、グリコール系溶剤等の水溶性の溶剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤等の塗料用添加剤を配合し得る。
また、一般的な塗料用添加剤である、ポリカルボン酸系等の分散剤、ノニオン系又はアニオン系等の界面活性剤、ウレタン系等の増粘剤、シリコン系又はアクリル系の消泡剤を配合してもよく、さらに、レベリング剤を配合してもよい。
また、一般的な塗料用添加剤である、ポリカルボン酸系等の分散剤、ノニオン系又はアニオン系等の界面活性剤、ウレタン系等の増粘剤、シリコン系又はアクリル系の消泡剤を配合してもよく、さらに、レベリング剤を配合してもよい。
本発明の耐食表面処理チェーンは、前記第1塗膜に、例えばパール顔料、リン酸亜鉛等の顔料は含有せず、水溶性又は加水分解性のアミノ基含有シランカップリング剤、ヒドロキシアパタイト、及びリチウムシリケートを含有する第2水系塗料を塗装することにより、該第2水系塗料を第1塗膜に浸透させるとともに、第2塗膜を形成してある。
水溶性又は加水分解性のアミノ基含有シランカップリング剤は、180℃以下の焼き付け温度で塗装する際のバインダとして機能し、第1塗膜の剥離を防止するものであればよい。
水溶性又は加水分解性のアミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの1種又は2種以上が用いられ得る。
水溶性又は加水分解性のアミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの1種又は2種以上が用いられ得る。
前記第2水系塗料は、ヒドロキシアパタイトを含有するので、腐食雰囲気下、塩水等の腐食因子の第2塗膜内への浸入が良好に抑制される。
ヒドロキシアパタイトの有効成分の前記アミノ基含有シランカップリング剤の有効成分に対する質量比は0.05以上0.13以下であるのが好ましい。
ヒドロキシアパタイトを前記範囲で含有する場合、腐食因子の進入を良好に防止することができる。
ヒドロキシアパタイトの有効成分の前記アミノ基含有シランカップリング剤の有効成分に対する質量比は0.05以上0.13以下であるのが好ましい。
ヒドロキシアパタイトを前記範囲で含有する場合、腐食因子の進入を良好に防止することができる。
リチウムシリケートは、SiO2 /Li2 O(モル比)が3.2〜3.8であり、リチウムシリケートの有効成分の前記アミノ基含有シランカップリング剤の有効成分に対する質量比は0.05以上0.36以下であるのが好ましい。
第2水系塗料は、通常の製造方法に従って、各成分を混合、撹拌することによって得られる。その際、水、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、グリコール系溶剤等の水溶性の溶剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤等の塗料用添加剤を配合し得る。
また、一般的な塗料用添加剤である、ポリカルボン酸系等の分散剤、ノニオン系又はアニオン系等の界面活性剤、ウレタン系等の増粘剤、シリコン系又はアクリル系の消泡剤を配合してもよく、さらに、レベリング剤を配合してもよい。
また、一般的な塗料用添加剤である、ポリカルボン酸系等の分散剤、ノニオン系又はアニオン系等の界面活性剤、ウレタン系等の増粘剤、シリコン系又はアクリル系の消泡剤を配合してもよく、さらに、レベリング剤を配合してもよい。
本発明の第1水系塗料及び第2水系塗料が、耐食表面処理チェーンの構成部品の表面に例えばディップスピン等の方法により塗布された後、焼き付け乾燥されることで、第1塗膜及び第2塗膜が形成される。第1水系塗料及び第2水系塗料は上述した組成を有するので、それぞれ焼き付け乾燥を、温度180℃以下で行えばよい。
従って、チェーン構成部品に硬さ低下が生じず、チェーン強度及びチェーン寿命が低下するのが抑制される。
従って、チェーン構成部品に硬さ低下が生じず、チェーン強度及びチェーン寿命が低下するのが抑制される。
図1(a)は、チェーンの鉄母材及び亜鉛−鉄合金下地皮膜上に形成された第1塗膜に第2水系塗料を塗装して、第1塗膜に浸透させ、第2塗膜を形成した状態を示す説明図、図1(b)は、第2塗膜上に潤滑油を塗布した状態を示す説明図である。
第2水系塗料が顔料を含有しないため、図1中に黒点で示すアミノ基含有シランカップリング剤等の樹脂成分が、前記顔料により阻害されることなく、図1中に白の長円で示す顔料(亜鉛、Alのフレーク)を含有してポーラスな第1塗膜の内部に拡散及び浸透し、第1塗膜の表面に薄い第2塗膜が形成された状態で、全体的に緻密な塗膜が形成される。そして、第2水系塗料により第2塗膜が形成されていることと相まって、腐食因子の進入が抑制されている。よって、チェーンは良好な耐食性を有する。
第2塗膜に潤滑油を塗布した場合、第1塗膜が緻密であるため、絶縁性を有する潤滑油が第1塗膜に浸透する量が少なく、第1塗膜の亜鉛の犠牲防食が阻害されることがなく、耐食性の低下が抑制される。
第2水系塗料が顔料を含有しないため、図1中に黒点で示すアミノ基含有シランカップリング剤等の樹脂成分が、前記顔料により阻害されることなく、図1中に白の長円で示す顔料(亜鉛、Alのフレーク)を含有してポーラスな第1塗膜の内部に拡散及び浸透し、第1塗膜の表面に薄い第2塗膜が形成された状態で、全体的に緻密な塗膜が形成される。そして、第2水系塗料により第2塗膜が形成されていることと相まって、腐食因子の進入が抑制されている。よって、チェーンは良好な耐食性を有する。
第2塗膜に潤滑油を塗布した場合、第1塗膜が緻密であるため、絶縁性を有する潤滑油が第1塗膜に浸透する量が少なく、第1塗膜の亜鉛の犠牲防食が阻害されることがなく、耐食性の低下が抑制される。
図2(a)は、第1塗膜に、第2水系塗料の成分にパール顔料を混合して得られた塗料を塗装した状態を示す説明図、図2(b)は、前記塗料により形成された塗膜の上に潤滑油を塗布した状態を示す説明図である。
前記パール顔料として、例えばIriodin 103WNT(メルク株式会社製)を用いた場合、該顔料の粒径は10〜60μmである。従って、図2中に黒の長円で示す前記顔料は、前記樹脂成分と比較して粒径が大きく、第1塗膜の表面に堆積するので、前記樹脂成分は拡散して第1塗膜の内部まで浸入することができず、外側の塗膜がポーラスになる。
従って、第1塗膜は緻密化されないので、腐食因子の進入も十分に抑制されず、チェーンの耐食性は本発明の耐食表面処理チェーンより悪くなる。
また、前記塗膜上に潤滑油を塗布した場合、該塗膜及び第1塗膜共に、顔料が多くポーラスであるため、潤滑油が第1塗膜の内部まで拡散及び浸透しやすい。潤滑油は絶縁性を有するため、第1塗膜の亜鉛の犠牲防食が阻害され、耐食性が低下する。
前記パール顔料として、例えばIriodin 103WNT(メルク株式会社製)を用いた場合、該顔料の粒径は10〜60μmである。従って、図2中に黒の長円で示す前記顔料は、前記樹脂成分と比較して粒径が大きく、第1塗膜の表面に堆積するので、前記樹脂成分は拡散して第1塗膜の内部まで浸入することができず、外側の塗膜がポーラスになる。
従って、第1塗膜は緻密化されないので、腐食因子の進入も十分に抑制されず、チェーンの耐食性は本発明の耐食表面処理チェーンより悪くなる。
また、前記塗膜上に潤滑油を塗布した場合、該塗膜及び第1塗膜共に、顔料が多くポーラスであるため、潤滑油が第1塗膜の内部まで拡散及び浸透しやすい。潤滑油は絶縁性を有するため、第1塗膜の亜鉛の犠牲防食が阻害され、耐食性が低下する。
以下、本発明の実施例と比較例とを具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(1)第1水系塗料
[配合例1]
下記の表1の配合(質量部で示す)に従って、フレーク状の亜鉛粉末(平均長径15μm、平均厚み0.5μm)と、チオグリコール酸エチルヘキシルと、分散助剤とをジプロピレングリコールモノメチルエーテル中で混合撹拌し、硝酸マグネシウムをさらに添加・混合して撹拌することによって、亜鉛ペースト(水系亜鉛防錆顔料)を得た。この亜鉛ペーストは、亜鉛粉末の表面がチオグリコール酸エチルヘキシルで被覆されている。
前記亜鉛ペーストに、順次、分散剤(1)、水、分散剤(2)、及びアルミペーストFW610(旭化成ケミカルズ株式会社製、アルミニウムペースト:水系Al防錆顔料)を配合して、配合例1の第1水系塗料を得た。
Al/Zn(質量比)は7/93(0.075)である。
(1)第1水系塗料
[配合例1]
下記の表1の配合(質量部で示す)に従って、フレーク状の亜鉛粉末(平均長径15μm、平均厚み0.5μm)と、チオグリコール酸エチルヘキシルと、分散助剤とをジプロピレングリコールモノメチルエーテル中で混合撹拌し、硝酸マグネシウムをさらに添加・混合して撹拌することによって、亜鉛ペースト(水系亜鉛防錆顔料)を得た。この亜鉛ペーストは、亜鉛粉末の表面がチオグリコール酸エチルヘキシルで被覆されている。
前記亜鉛ペーストに、順次、分散剤(1)、水、分散剤(2)、及びアルミペーストFW610(旭化成ケミカルズ株式会社製、アルミニウムペースト:水系Al防錆顔料)を配合して、配合例1の第1水系塗料を得た。
Al/Zn(質量比)は7/93(0.075)である。
[配合例2]
Al/Zn(質量比)が14/86(0.16)になるようにアルミペーストFW610を配合したこと以外は、配合例1と同様にして配合例2の第1水系塗料を得た。
[配合例3]
Al/Zn(質量比)が18/82(0.22)になるようにアルミペーストFW610を配合したこと以外は、配合例1と同様にして配合例3の第1水系塗料を得た。
Al/Zn(質量比)が14/86(0.16)になるようにアルミペーストFW610を配合したこと以外は、配合例1と同様にして配合例2の第1水系塗料を得た。
[配合例3]
Al/Zn(質量比)が18/82(0.22)になるようにアルミペーストFW610を配合したこと以外は、配合例1と同様にして配合例3の第1水系塗料を得た。
(2)第2水系塗料
[配合例4]
下記の表2の配合に従って、AW−15F(フジケミHEC株式会社製、ヒドロキシエチルセルロース)、水、TCP−10U(太平化学産業株式会社製、ヒドロキシアパタイト)、リチウムシリケート35(日産化学工業株式会社製、SiO2 /Li2 Oのモル比3.2〜3.8)、KBP90(信越化学工業株式会社製、3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、BYK333(Bykchemie株式会社製、シリコーン:表面調整剤)、及び界面活性剤を1時間、混合撹拌することによって、配合例4の第2水系塗料を得た。
[配合例4]
下記の表2の配合に従って、AW−15F(フジケミHEC株式会社製、ヒドロキシエチルセルロース)、水、TCP−10U(太平化学産業株式会社製、ヒドロキシアパタイト)、リチウムシリケート35(日産化学工業株式会社製、SiO2 /Li2 Oのモル比3.2〜3.8)、KBP90(信越化学工業株式会社製、3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、BYK333(Bykchemie株式会社製、シリコーン:表面調整剤)、及び界面活性剤を1時間、混合撹拌することによって、配合例4の第2水系塗料を得た。
[配合例5〜7]
前記表2の配合に従って、配合例4と同様にして、配合例5〜10の第2水系塗料を得た。
前記表2には、TCP−10U/KBP90、リチウムシリケート35/KBP90(質量比、%)も示してある。
アルミペーストFW610、リチウムシリケート35、TCP−10U、KBP90の有効成分(%)はそれぞれ60、23、10、32である。
前記表2の配合に従って、配合例4と同様にして、配合例5〜10の第2水系塗料を得た。
前記表2には、TCP−10U/KBP90、リチウムシリケート35/KBP90(質量比、%)も示してある。
アルミペーストFW610、リチウムシリケート35、TCP−10U、KBP90の有効成分(%)はそれぞれ60、23、10、32である。
(3)耐食表面処理チェーン
[実施例1]
図3は、本発明の実施例1に係る耐食表面処理チェーンの一例としてのローラチェーン10を示す一部断面図であり、図4は、図3のA部分を拡大した断面図である。
ローラチェーン10は、図3及び図4に示すように、離間配置される一対の内プレート11,11と、該内プレート11,11のブシュ圧入孔11a,11aに圧入嵌合されるブシュ12と、内プレート11,11の外側に配置され、前後の内プレート11,11に連結される一対の外プレート13,13と、ブシュ12の内周側に遊嵌され、外プレート13,13のピン圧入孔13a,13aに圧入嵌合される連結ピン14と、ブシュ12の外周側に遊嵌されるローラ15とを備えている。
[実施例1]
図3は、本発明の実施例1に係る耐食表面処理チェーンの一例としてのローラチェーン10を示す一部断面図であり、図4は、図3のA部分を拡大した断面図である。
ローラチェーン10は、図3及び図4に示すように、離間配置される一対の内プレート11,11と、該内プレート11,11のブシュ圧入孔11a,11aに圧入嵌合されるブシュ12と、内プレート11,11の外側に配置され、前後の内プレート11,11に連結される一対の外プレート13,13と、ブシュ12の内周側に遊嵌され、外プレート13,13のピン圧入孔13a,13aに圧入嵌合される連結ピン14と、ブシュ12の外周側に遊嵌されるローラ15とを備えている。
前記内プレート11と、ブシュ12と、外プレート13と、連結ピン14と、ローラ15とは、それぞれ、図4に示すように、鉄母材22上に、衝撃亜鉛めっきにより形成された亜鉛−鉄合金下地皮膜24と、第1水系塗料を用いて形成された第1塗膜26とを有する。そして、第1塗膜26上に第2水系塗料を塗装することにより、該第2水系塗料が第1塗膜26に浸透するとともに、第2塗膜28(トップコート膜)が形成されている。
前記チェーン構成部品(内プレート11、ブシュ12、外プレート13、連結ピン14、及びローラ15)の鉄母材22を、衝撃亜鉛めっきにより形成してなる亜鉛−鉄合金下地皮膜24で被覆した後、該亜鉛−鉄合金下地皮膜24を、前記表1の配合例1の第1水系塗料を用いてディップスピン法により被覆し、180℃で焼き付けて第1塗膜26を形成した。さらに、第1塗膜26を、前記表2の配合例4の第2水系塗料を用いてディップスピン法により被覆し180℃で焼き付けて、第1塗膜26に浸透させるとともに、第2塗膜28を形成した。
[実施例2]
配合例4の第2水系塗料に代えて配合例5の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2のローラチェーンを作製した。
[実施例3]
配合例4の第2水系塗料に代えて配合例6の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3のローラチェーンを作製した。
[実施例4]
配合例4の第2水系塗料に代えて配合例7の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4のローラチェーンを作製した。
配合例4の第2水系塗料に代えて配合例5の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2のローラチェーンを作製した。
[実施例3]
配合例4の第2水系塗料に代えて配合例6の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3のローラチェーンを作製した。
[実施例4]
配合例4の第2水系塗料に代えて配合例7の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4のローラチェーンを作製した。
[実施例5]
配合例1の第1水系塗料に代えて配合例2の第1水系塗料を用いて第1塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして実施例5のローラチェーンを作製した。
[実施例6]
配合例4の第2水系塗料に代えて配合例5の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成したこと以外は、実施例5と同様にして実施例6のローラチェーンを作製した。
[実施例7]
配合例4の第2水系塗料に代えて配合例6の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成したこと以外は、実施例5と同様にして実施例7のローラチェーンを作製した。
[実施例8]
配合例4の第2水系塗料に代えて配合例7の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成したこと以外は、実施例5と同様にして実施例8のローラチェーンを作製した。
配合例1の第1水系塗料に代えて配合例2の第1水系塗料を用いて第1塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして実施例5のローラチェーンを作製した。
[実施例6]
配合例4の第2水系塗料に代えて配合例5の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成したこと以外は、実施例5と同様にして実施例6のローラチェーンを作製した。
[実施例7]
配合例4の第2水系塗料に代えて配合例6の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成したこと以外は、実施例5と同様にして実施例7のローラチェーンを作製した。
[実施例8]
配合例4の第2水系塗料に代えて配合例7の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成したこと以外は、実施例5と同様にして実施例8のローラチェーンを作製した。
[実施例9]
配合例1の第1水系塗料に代えて配合例3の第1水系塗料を用いて第1塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして実施例9のローラチェーンを作製した。
[実施例10]
配合例4の第2水系塗料に代えて配合例5の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成したこと以外は、実施例9と同様にして実施例10のローラチェーンを作製した。
[実施例11]
配合例4の第2水系塗料に代えて配合例6の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成したこと以外は、実施例9と同様にして実施例11のローラチェーンを作製した。
[実施例12]
配合例4の第2水系塗料に代えて配合例7の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成したこと以外は、実施例9と同様にして実施例12のローラチェーンを作製した。
配合例1の第1水系塗料に代えて配合例3の第1水系塗料を用いて第1塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして実施例9のローラチェーンを作製した。
[実施例10]
配合例4の第2水系塗料に代えて配合例5の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成したこと以外は、実施例9と同様にして実施例10のローラチェーンを作製した。
[実施例11]
配合例4の第2水系塗料に代えて配合例6の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成したこと以外は、実施例9と同様にして実施例11のローラチェーンを作製した。
[実施例12]
配合例4の第2水系塗料に代えて配合例7の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成したこと以外は、実施例9と同様にして実施例12のローラチェーンを作製した。
[比較例1]
チェーン構成部品(内プレート、ブシュ、外プレート、連結ピン、及びローラ)の鉄母材を、衝撃亜鉛めっきにより形成してなる亜鉛−鉄合金下地皮膜で被覆した後、第1塗膜及び第2塗膜は形成せずに、構成部品を組み立てて比較例1のローラチェーンを作製した。
[比較例2]
前記チェーン構成部品の鉄母材を、前記亜鉛−鉄合金下地皮膜で被覆するのに代えて、前記鉄母材をショットブラスト処理したこと以外は、比較例1と同様にして、比較例2のローラチェーンを作製した。
[比較例3]
比較例3として、他社のローラチェーン(商品名「Renold Hydro−Servis」、Renold社製)を用いた。
[比較例4]
比較例4として、他社のローラチェーン(商品名「HITACHI PC−PLUS」、株式会社日立製作所製)を用いた。
[比較例5]
比較例5として、当社の旧製品のローラチェーンを用いた。この比較例5のチェーンにおいて、チェーン部品の鉄母材上に本発明の亜鉛−鉄合金下地皮膜及び塗膜は形成されていない。
[比較例6]
チェーン構成部品(内プレート、ブシュ、外プレート、連結ピン、及びローラ)の鉄母材を、衝撃亜鉛めっきにより形成してなる亜鉛−鉄合金下地皮膜で被覆した後、該亜鉛−鉄合金下地皮膜を、前記表1の配合例2の第1水系塗料を用いてディップスピン法により被覆し、180℃で焼き付けて第1塗膜を形成した。そして、第2塗膜は形成せずに、構成部品を組み立てて比較例6のローラチェーンを作製した。
チェーン構成部品(内プレート、ブシュ、外プレート、連結ピン、及びローラ)の鉄母材を、衝撃亜鉛めっきにより形成してなる亜鉛−鉄合金下地皮膜で被覆した後、第1塗膜及び第2塗膜は形成せずに、構成部品を組み立てて比較例1のローラチェーンを作製した。
[比較例2]
前記チェーン構成部品の鉄母材を、前記亜鉛−鉄合金下地皮膜で被覆するのに代えて、前記鉄母材をショットブラスト処理したこと以外は、比較例1と同様にして、比較例2のローラチェーンを作製した。
[比較例3]
比較例3として、他社のローラチェーン(商品名「Renold Hydro−Servis」、Renold社製)を用いた。
[比較例4]
比較例4として、他社のローラチェーン(商品名「HITACHI PC−PLUS」、株式会社日立製作所製)を用いた。
[比較例5]
比較例5として、当社の旧製品のローラチェーンを用いた。この比較例5のチェーンにおいて、チェーン部品の鉄母材上に本発明の亜鉛−鉄合金下地皮膜及び塗膜は形成されていない。
[比較例6]
チェーン構成部品(内プレート、ブシュ、外プレート、連結ピン、及びローラ)の鉄母材を、衝撃亜鉛めっきにより形成してなる亜鉛−鉄合金下地皮膜で被覆した後、該亜鉛−鉄合金下地皮膜を、前記表1の配合例2の第1水系塗料を用いてディップスピン法により被覆し、180℃で焼き付けて第1塗膜を形成した。そして、第2塗膜は形成せずに、構成部品を組み立てて比較例6のローラチェーンを作製した。
[塩水噴霧試験]
前記実施例1〜12、及び比較例1〜6のローラチェーンにつき、塩水噴霧試験を行った。試験は、「JIS−K5600−7−1」に準拠して行い、赤錆が目視により見出されるまでの時間を測定した。なお、各ローラチェーンは、製造時に皮膜に欠陥部分が生じた場合でも補修を行っていない。試験結果を下記表3及び表4に示す。
表中、「塗油あり」とは、チェーンに組み立てた後に、第2塗膜上に潤滑油を塗布したものをいい、「塗油なし」とは第2塗膜上に潤滑油を塗布しなかったものをいう。
表4の比較例1及び2において、「塗油あり」の試験は実施していない。また、比較例3及び4において、「塗油なし」の試験は、潤滑油を溶剤により除去して実施した。
前記実施例1〜12、及び比較例1〜6のローラチェーンにつき、塩水噴霧試験を行った。試験は、「JIS−K5600−7−1」に準拠して行い、赤錆が目視により見出されるまでの時間を測定した。なお、各ローラチェーンは、製造時に皮膜に欠陥部分が生じた場合でも補修を行っていない。試験結果を下記表3及び表4に示す。
表中、「塗油あり」とは、チェーンに組み立てた後に、第2塗膜上に潤滑油を塗布したものをいい、「塗油なし」とは第2塗膜上に潤滑油を塗布しなかったものをいう。
表4の比較例1及び2において、「塗油あり」の試験は実施していない。また、比較例3及び4において、「塗油なし」の試験は、潤滑油を溶剤により除去して実施した。
表3及び表4より、亜鉛−鉄合金下地皮膜上に第1塗膜及び第2塗膜を形成した実施例1〜12のチェーンの場合、第1塗膜及び第2塗膜を形成していない比較例1〜6のチェーンと比較して、耐食性が著しく向上していることが分かる。そして、実施例1〜12のチェーンの場合、第2塗膜上に潤滑油を塗布したときに、耐食性の低下が抑制されている。
実施例5〜8のチェーンと比較例6のチェーンとを比較することにより、第1塗膜に第2水系塗料を塗装することで、耐食性が著しく向上することが分かる。
第1水系塗料が同一で、第2水系塗料が異なる実施例1〜4、実施例5〜8、実施例9〜12のチェーンをそれぞれ比較した場合、リチウムシリケート及びヒドロキシアパタイトの3−アミノプロピルトリエトキシシランに対する質量比が大きい第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成した実施例のチェーンほど、耐食性が高いことが分かる。
第1水系塗料が同一で、第2水系塗料が異なる実施例1〜4、実施例5〜8、実施例9〜12のチェーンをそれぞれ比較した場合、リチウムシリケート及びヒドロキシアパタイトの3−アミノプロピルトリエトキシシランに対する質量比が大きい第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成した実施例のチェーンほど、耐食性が高いことが分かる。
また、配合例7は配合例4〜6と、リチウムシリケート、ヒドロキシアパタイト、及び3−アミノプロピルトリエトキシシランの各膜成分の第2水系塗料全体に対する質量%が大きく異なるが、TCP−10U/KBP90、及びリチウムシリケート35/KBP90の質量比が同程度である配合例5及び7の第2水系塗料を用いて第2塗膜を形成した実施例2と4、実施例6と8、実施例10と12のチェーンは、それぞれ同程度の耐食性を有することが分かる。
第2水系塗料が同一で、第1水系塗料が異なる各実施例のチェーンをそれぞれ比較した場合、配合例2、配合例1、配合例3の第1水系塗料を用いて第1塗膜を形成した実施例のチェーンの順に耐食性が高いことが分かる。
以上より、部品の鉄母材及び亜鉛−鉄合金下地皮膜上に、第1水系塗料を用いて第1塗膜を形成し、該第1塗膜に第2水系塗料を塗装して第1塗膜に浸透させるとともに第2塗膜を形成するように構成された本発明の耐食表面処理チェーンは、耐食性に非常に優れ、チェーンの耐久性が向上することが確認された。
そして、第2塗膜上に潤滑油を塗装した場合においても、上述したように、潤滑油が第1塗膜に浸透しないので、第1塗膜の亜鉛の犠牲防食が阻害されることがなく、耐食性の低下が抑制されることが確認された。
また、前記第2塗膜により第1塗膜の剥離が防止されるので、チェーンの組み付け時における内プレートとブシュとの圧入部分、及び外プレートと連結ピンとの締鋲部分の塗膜補修を省くことができ、チェーン構成部品の連結ピンとブシュ、ブシュとローラとの間に生じた摺動抵抗に起因するチェーンの屈曲不良及びローラ回転不良が抑制される。
そして、第2塗膜上に潤滑油を塗装した場合においても、上述したように、潤滑油が第1塗膜に浸透しないので、第1塗膜の亜鉛の犠牲防食が阻害されることがなく、耐食性の低下が抑制されることが確認された。
また、前記第2塗膜により第1塗膜の剥離が防止されるので、チェーンの組み付け時における内プレートとブシュとの圧入部分、及び外プレートと連結ピンとの締鋲部分の塗膜補修を省くことができ、チェーン構成部品の連結ピンとブシュ、ブシュとローラとの間に生じた摺動抵抗に起因するチェーンの屈曲不良及びローラ回転不良が抑制される。
さらに、本発明の第1水系塗料及び第2水系塗料は上述した組成を有するので、それぞれ焼き付け乾燥を行うときに、温度180℃以下で処理すればよく、チェーンの構成部品に硬さ低下が生じず、チェーン強度及びチェーン寿命が低下するのが抑制されている。
また、本発明の耐食表面処理チェーンは、従来のような電気めっき、酸洗いの処理時に生じる水素脆化が発生せず、部品強度の低下が抑制されるとともに、部品表面にダクロタイズド処理する場合のように環境汚染の問題が生じることもない。
また、本発明の耐食表面処理チェーンは、従来のような電気めっき、酸洗いの処理時に生じる水素脆化が発生せず、部品強度の低下が抑制されるとともに、部品表面にダクロタイズド処理する場合のように環境汚染の問題が生じることもない。
10 ローラチェーン
11 内プレート
11a ブシュ圧入孔
12 ブシュ
13 外プレート
13a ピン圧入孔
14 連結ピン
15 ローラ
22 鉄母材
24 亜鉛−鉄合金下地皮膜
26 第1塗膜
28 第2塗膜
11 内プレート
11a ブシュ圧入孔
12 ブシュ
13 外プレート
13a ピン圧入孔
14 連結ピン
15 ローラ
22 鉄母材
24 亜鉛−鉄合金下地皮膜
26 第1塗膜
28 第2塗膜
Claims (3)
- 鉄系の一対の外プレートと一対の内プレートとを交互に連結してなり、表面に亜鉛−鉄合金下地皮膜を形成してある耐食表面処理チェーンにおいて、
前記亜鉛−鉄合金下地皮膜上に、亜鉛、アルミニウム、硝酸塩、及びメルカプト基含有シランカップリング剤以外のメルカプト基を含む有機化合物を含有する第1水系塗料を用いて第1塗膜を形成してあり、
前記第1塗膜に、顔料は含有せず、水溶性又は加水分解性のアミノ基含有シランカップリング剤、ヒドロキシアパタイト、及びリチウムシリケートを含有する第2水系塗料を塗装して、前記第1塗膜に浸透させ、第2塗膜を形成してあることを特徴とする耐食表面処理チェーン。 - 前記第1水系塗料に含まれるアルミニウムの亜鉛に対する質量比は、0.07以上0.24以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐食表面処理チェーン。
- 前記第2水系塗料に含まれる前記ヒドロキシアパタイトの有効成分の前記アミノ基含有シランカップリング剤の有効成分に対する質量比は、0.05以上0.13以下であり、
前記第2水系塗料に含まれる前記リチウムシリケートの有効成分の前記アミノ基含有シランカップリング剤の有効成分に対する質量比は、0.05以上0.36以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐食表面処理チェーン。
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Cited By (1)
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JP2019023342A (ja) * | 2017-01-11 | 2019-02-14 | 株式会社イーエスティージャパン | 錆抑制用添加物、錆抑制方法及び錆抑制用塗料 |
-
2008
- 2008-08-26 JP JP2008217193A patent/JP2010053900A/ja active Pending
Cited By (1)
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