JP2010042353A - 脱臭装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】気体中のVOC濃度に応じて最適な脱臭条件で脱臭処理することができ、高いVOC濃度の気体を脱臭処理してもVOCの除去率が高く、かつ過剰な残留塩素ガスの発生を防止することができる脱臭装置を提供すること。
【解決手段】食塩水溶液供給部、電解水生成部、脱臭部、前記脱臭部での脱臭処理前後の気体中の揮発性有機化合物濃度及び脱臭処理後の気体中の塩素ガス濃度を検出するガス濃度センサー、ならびに前記電解水生成部における電気分解電流量を調整する演算制御部を備え、前記ガス濃度センサーと前記演算制御部が接続され、かつ前記演算制御部と前記電解水生成部が接続されており、前記演算制御部が前記ガス濃度センサーの信号に基づいて気体中の揮発性有機化合物の除去率を演算し、該除去率と残留塩素ガス濃度とから脱臭処理に適切な電気分解電流量を演算し、前記電解水生成部の電流量が前記演算された電気分解電流量に調整される脱臭装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、有臭成分である揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds:VOC)を分解・除去する脱臭装置に関するもので、さらに詳しくは電解水を使用する湿式脱臭装置に関する。
VOCは、常温常圧で大気中に容易に揮発する有機化学物質であり、トルエン、ベンゼン、フロン類、ジクロロメタン等の有臭成分が挙げられる。これらのVOCは、洗浄剤、溶剤、燃料の原料として産業界で広範囲に使用されているが、大気等の環境中に放出されると、公害や健康被害を引き起こす原因となることから問題視されている。日本では、VOCが光化学オキシダントと浮遊粒子状物質の主な原因であるとして、2004年から大気汚染防止法により規制が行われており、VOCを取り扱う産業施設では、施設から空気中に拡散するVOCの除去率を高めることがますます求められている。
従来から、隔膜電解法による強酸性及び強アルカリ性の電解水が、低濃度のVOCの脱臭法等に使用されている。この方式の脱臭装置では、電解水のpHを測定しながら消臭処理が行われている(例えば、特許文献1)。しかしながら、このような脱臭装置で高濃度のVOCを含む気体の脱臭処理を行うと性能上様々な問題が発生する。例えば、電解水のpHを測定するだけでは最適な脱臭条件を調整することは難しいため、適当量以上の電流量で電解条件を行うことが必要となり、処理ガス中に塩素ガスが電解水中に残留しやすくなり、環境上の問題が生じやすい。また、このように残留塩素ガス濃度が高い状態が続くと、脱臭装置の寿命が短くなりやすいという問題もある。
特開2006−212532号公報
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、気体中のVOC濃度に応じて最適な脱臭条件で脱臭処理することができ、高いVOC濃度の気体を脱臭処理してもVOCの除去率が高く、かつ過剰な残留塩素ガスの発生を防止することができる脱臭装置を提供することを目的とする。
本発明は、前述の課題解決のために、食塩水溶液供給部、
食塩水溶液を電気分解して電解水を生成する電解水生成部、
外部から吸引された揮発性有機化合物を含む気体と前記電解水を接触させて気体を脱臭処理する脱臭部、
前記脱臭部での脱臭処理前後の気体中の揮発性有機化合物濃度及び脱臭処理後の気体中の塩素ガス濃度を検出するガス濃度センサー、ならびに
前記電解水生成部における電気分解電流量を調整する演算制御部
を備えた脱臭装置であり、
前記ガス濃度センサーと前記演算制御部が接続され、かつ前記演算制御部と前記電解水生成部が接続されており、
前記演算制御部が、前記ガス濃度センサーの信号に基づいて気体中の揮発性有機化合物の除去率を演算し、該除去率と残留塩素ガス濃度とから脱臭処理に適切な電気分解電流量を演算し、前記電解水生成部の電流量が前記演算された電気分解電流量に調整される脱臭装置を提供する。
本発明の処理対象であるVOCは、揮発量が多くなると悪臭と感じられるような有臭成分であればよく、例えば、トルエン、酢酸エチル、アセトアルデヒド、ベンゼン、エタノール、スチレン、酢酸、キシレン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。また、本発明では、アンモニア等もVOCに含まれる。
脱臭処理前の気体中におけるVOC濃度としては、VOCの種類により一概に限定できないが、例えば、酢酸エチルの場合であれば、悪臭と感じられるような濃度、例えば600〜800ppm程度の気体でもよい。
食塩水溶液は、電解水の原料である。前記食塩水溶液に使用する電解質としては、食塩、塩化ナトリウムが挙げられるが、コスト、安全性、スケール生成防止の観点から、食塩が好ましい。
食塩水溶液中の電解質濃度は、所望の電解水におけるpH強度を得られるものであれば特に限定はないが、例えば、食塩水の場合、食塩1〜3重量%の水溶液であることが好ましい。
また、前記食塩水の代わりに、VOCの分解消臭が可能な塩素系電解質(例えば、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム)を単独で又は2種以上を併用してもよい。臭化ナトリウム又は臭化カリウムを併用した場合には後述の電気分解により臭素が発生する。
食塩水溶液供給部は、電解水生成部に食塩水溶液を供給するための装置である。前記食塩水溶液供給部は、食塩水溶液を溜めておく容器、電解水生成部に接続した配管及びポンプから構成される。
電解水生成部では、食塩水溶液が電気分解されて電解水が生成される。前記電解水生成部は、直流電源、陽極、陰極及び電解槽によって構成される。前記直流電源は、陽極と陰極の電極に接続されており、陽極と陰極とは電解槽中に充填された食塩水溶液に接触されるように配置される。
前記電解水生成部の電解槽の陽極と陰極との間は、隔膜によって分離されていることが好ましい。隔膜によって陽極がある部分と陰極がある部分に分離された電解槽では、陽極のある部分で酸性電解水が生成し、陰極がある部分でアルカリ性電解水が生成する。このように2種類の電解水を使用することでVOCを効率よく除去することができる。
脱臭部では、VOCを含む気体と電解水を接触させてVOCの分解消臭が行われる。VOCを含む気体は、外部から吸引され、配管を経て前記脱臭部に導入される。
前記脱臭部は、気液接触分解と液液接触分解を同時に行える多塔式スクラバーであることが好ましい。
また、酸性電解水が導入される脱臭部及びアルカリ性電解水が導入される脱臭部が気体の流れ方向に直列に配置されていることが好ましい。
前記脱臭部からは、脱臭処理された気体、VOCの分解物を含む電解水が排出される。
ガス濃度センサーは、前記脱臭部での脱臭処理前後の気体中のVOC濃度及び脱臭処理後の気体中の塩素ガス濃度を検出する。また、前記ガス濃度センサーは検出したVOC濃度又は塩素ガス濃度の情報を信号として演算制御部に送信する。
前記ガス濃度センサーは、例えば、前記脱臭部にVOCを含む気体を導入する配管、前記脱臭部から脱臭処理した気体を排出する配管に設置される。本発明では、VOC濃度検出用のガス濃度センサーと塩素ガス濃度検出用のガス濃度センサーとを分けてもよいし、一つにまとめてもよい。例えば、前記脱臭部から脱臭処理した気体を排出する配管にVOC検出用のガス濃度センサーと塩素ガス検出用のガス濃度センサーとを設置してもよい。
本発明の脱臭装置では、前記ガス濃度センサーと演算制御部とが配線等で接続されており、前記演算制御部が、前記ガス濃度センサーの信号に基づいて気体中のVOCの除去率を演算し、該除去率と残留塩素ガス濃度とから脱臭処理に適切な電気分解電流量を演算し、前記電解水生成部の電流量が前記演算された電気分解電流量に調整される。
気体中のVOCの除去率は、下記式1で演算される。具体的には、除去率は、脱臭処理した気体中のVOC濃度から脱臭処理前の気体中のVOC濃度を引いた値の脱臭前のVOC濃度に対する比率として演算される。

(式1) 除去率=(脱臭前のVOC濃度−脱臭後のVOC濃度)/(脱臭前のVOC濃度)×100
また、前記脱臭処理に適切な電気分解電流量とは、気体中のVOCの除去率を高くし、かつ、残留塩素ガス濃度を低くできる電解水を生成できる電流量をいう。前記電流量は大きくなるほど電気分解が促進されて脱臭処理能力の高い電解水が得られる。一方、前記電流量は大きすぎると脱臭装置で除去しなければならない塩素ガス、臭素ガス等の発生量が増大する。
また、本発明の脱臭装置では、前記VOCの除去率を演算し、基準とする値よりも低い場合には電流量を増大し、一方、出口付近の塩素、臭素濃度が基準とする値よりも増大する場合には電流量を減少することによって、脱臭処理に適切な電流量に調整する。これにより、VOC処理能力向上、もしくは廃棄塩素濃度の低減化を濃度センサーの数値から判断し制御することができる。
したがって、前記電気分解電流量は、VOCの種類、空気中のVOC濃度、電解水中の電解質濃度等により一概に限定できないが、100〜250アンペア(A)の範囲で調整することが好ましく、150〜200Aの範囲内で調整することがより好ましい。
また、本発明の脱臭装置において演算される電気分解電流量は、脱臭装置を稼動して、VOC除去率と有効塩素ガス濃度とを測定しながら好適な範囲に調整してもよいが、あらかじめ、処理対象のVOCを含む気体に電解水を接触させるように脱臭装置をセッティングしておき、VOC除去率が50%以上となる電流量の範囲及び脱臭装置出口付近の塩素ガス濃度または臭素ガス濃度が1.2ppmを超える範囲を確認しておくことで、適切な電気分解電流量を演算しやすくすることができる。
前記のような適切な電気分解電流量の演算は、前記ガス濃度センサーの信号に基づいて前記演算制御部でプログラムすることができる。該プログラム中ではガス濃度センサーの条件にあわせた適当な電流量が複数設定されており、プログラム稼動時には、ガス濃度センサーの信号に基づいてプログラムに内臓されている電流量を電気分解電流量として調整する。
本発明において、基準とするVOCの除去率及び残留塩素ガス濃度としては、VOCの種類及び消臭装置の規模により一概に限定できないが、VOCの除去率は50%以上が好ましく、また、残留塩素ガス濃度は1.2ppm以下が好ましい。
前記演算制御部は、前記電解水生成部と配線等で接続されており、電解水生成部における電流量が前記演算制御部で演算された電気分解電流量に調整される。この調整は、手動でもよいが、VOC濃度の経時的な変動が大きな気体を処理する場合には、自動的に行えるように設定しておく方がよい。
前記のように演算制御部により電解水生成部の電流量が適当に調整されることで、VOCを効率よく除去しながら、本発明の脱臭装置からの塩素ガスまたは臭素ガスの排出を抑えることができる。
本発明の脱臭装置は、気体中のVOC濃度と塩素ガス濃度を測定し、VOC除去率と残留塩素ガス濃度とから換算して、最適な電解電流を算出して、電解条件を調整するため、VOC濃度の変化が大きな気体でも、環境や装置への負荷を抑えながら適当な脱臭処理を行うことができる。
また、従来の脱臭装置では、電解水のpHの変動を制御しているため、VOC濃度の高い気体を処理すると気体中に残留する塩素ガス濃度を低く抑えることが困難であったが、本発明の脱臭装置では、前記除去率が最大となり残留塩素ガス濃度が最小となる電気分解電流量を算出するように演算制御部の条件を調整することで、VOC除去率を高く維持しながら、気体中の残留塩素ガス濃度を所望の基準まで抑えることが可能になる。
また、前記演算制御部で算出された電流量に基づいて前記電解水生成部の電気分解が調整されることで、従来の脱臭装置のように電解水のpHの変動を制御する場合に比べて、より効率的に調整を行うことができる、ガスの溶解によるpH変動の影響がなく、高い除去率を維持できる等という利点がある。
また、前記電解水生成部の電解槽内の陽極と陰極との間に隔膜が配設されていることで、生成された2種類の電解水(酸性電解水とアルカリ性電解水)を用いた脱臭処理が可能になる。
中でも、酸性電解水が導入される脱臭部及びアルカリ性電解水が導入される脱臭部が気体の流れ方向に直列に配置されていることで、気体中のVOCをより効率よく除去(脱臭)することができる。
また、前記脱臭部が気液接触分解と液液接触分解を同時に行える多塔式スクラバーであることで、幅広い臭気に対応すると共に、後方アルカリスクラバー導入により塩素ガスまたは臭素ガスを除去するという利点がある。
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の脱臭装置1の概略説明図である。
脱臭装置1は、食塩水溶液供給部2、食塩水溶液を電気分解して電解水を生成する電解水生成部3、外部から吸引された揮発性有機化合物を含む気体と前記電解水を接触させる脱臭部4、前記脱臭部4での脱臭処理前後の気体中の揮発性有機化合物濃度及び脱臭処理後の気体中の塩素ガス濃度を検出し得るガス濃度センサー5a、5b、5cならびに演算制御部6を備える。
食塩水溶液供給部2は、食塩水溶液を溜めておく容器7と食塩水溶液を電解水生成部3に送るための配管8a及びポンプ9aとから構成される。前記容器7の容積、形状についてはVOCの種類、VOCを処理するのに必要な電解水の容量等に基づいて適宜決定すればよい。
ポンプ9aは、前記容器7から配管8aを介して電解水生成部3の電解槽10内に食塩水溶液を送ることに使用される。ポンプ9aにより流量を調整してもよいが、必要に応じて配管に弁(図示せず)を設けてもよい。
前記食塩水溶液供給部2と配管8aで接続した電解水生成部3では、電気分解により食塩水溶液から電解水が生成する。図2に電解水生成部3の拡大図を示す。前記電解水生成部3は、電解槽10、直流電源11、陰極12、陽極13及び配管(8b、8c、8b’、8c’)によって構成される。前記直流電源11は、陰極12と陽極13の電極に配線で接続されている。前記陰極12及び陽極13は、電解槽10中に充填された食塩水溶液と接触するように配置される。前記電解槽10は流路を形成すると共に絶縁を確保する樹脂製ケーシングであればよい。前記直流電源11、陰極12、陽極13の種類、材質、大きさ等は、VOCの種類、VOCを処理するのに必要な電解水の容量等に基づいて適宜決定すればよい。
前記電解水生成部3では、電解槽10の陰極12と陽極13との間が隔膜14によって分離されていることが好ましい。隔膜14は、電気分解で使用される隔膜であればよく、例えば、ナトリウムイオンが陰極に、塩素イオンが陽極に移動可能な膜、中性膜、イオン交換膜等が挙げられるが、特に限定はない。隔膜14によって陰極12がある部分と陽極13がある部分に分離された電解槽10では、陰極12のある部分でアルカリ性電解水が生成し、陽極13がある部分で酸性電解水が生成する。
前記電解槽10は、配管(8b、8c、8b’、8c’)を介して、脱臭部4を構成するスクラバー(15a、15b)に接続されている。各配管(8b、8c、8b’、8c’)には電解水の流量を調整するためのポンプ(9b、9c、9b’、9c’)が設けられているが、必要に応じて弁(図示せず)を設けてもよい。
前記脱臭部4は、スクラバー(15a、15b)から構成され、このスクラバー(15a、15b)内で電解水とVOCを含む気体とが接触される。例えば、外部から吸引されたVOCを含む気体が配管8dを経て前記脱臭部4を構成するスクラバー15aの下部から内部に導入され、同時に配管8eを介してスクラバー15aの上部に導入された電解水がノズル16aから噴霧されて接触処理が行われる。
なお、前記スクラバーの数としては、1個でもよい。この場合、前記電解水生成部3で生成された酸性電解水又は塩基性電解水のいずれか一方を用いるか、あるいは図1に示す電解水生成部3で隔膜14を設けずに得られる電解水を用いればよい。
本発明では、処理するVOCの種類及び処理施設の規模に応じて、複数のスクラバーを用いてもよい。例えば、電解水として酸性電解水とアルカリ性電解水を併用する場合、図1に示すように、少なくとも2種類のスクラバー15a、15bを気体の流れ方向に対して直列に配置することが好ましい。前記スクラバー15aの上部から排出された気体は、配管8fを介してスクラバー15bの下部に導入され、同時に配管8gを介してスクラバー15bの上部に導入されたアルカリ性電解水がノズル16bから噴霧されて接触処理が行われる。
前記のような2種類のスクラバーを採用した脱臭部4では、気体の脱臭処理を効率よく行うことができると同時に、酸性電解水、アルカリ性電解水が互いに混ざらないため、電解水を効率よく取り扱うことができる。なお、酸性電解水とアルカリ性電解水の処理の順番は、特に限定はなく、気体の流れ方向に対してアルカリ性電解水で処理し、次いで酸性電解水で処理してもよい。
前記脱臭部4を構成するスクラバーは、気液接触分解と液液接触分解を同時に行える多塔式スクラバーであることが好ましい。気液接触分解とは、VOCを含む気体と電解水とが接触してVOCが分解されることをいい、液液接触分解とは、油層成分であるVOCと水層成分である電解水とが混合接触してVOCが分解されることをいう。例えば、図1に示すスクラバー15aでは、最下部のチャンバー17内に酸性電解水が導入され、ついで、ポンプ9dにより配管8eを介してスクラバー上部に設けられたノズル16aから酸性電解水を噴霧することで、スクラバー下部から導入されるVOCを含む気体と気液接触されてVOCの分解が行われる。また、噴霧された電解水はスクラバー15aの最下部に設けられたチャンバー17内に流下し、前記電解水生成部3から導入される電解水と混合するが、チャンバー17内でも一部液化したVOCと電解水とが液液接触されてVOCの分解が行われる。スクラバー15bでも同様にしてアルカリ性電解液を用いた気液接触分解と液液接触分解が行われる。
なお、前記スクラバー15a、15bで、脱臭処理を連続して行うと、電解水中のVOC分解物の混合量が増大するため、電解水のVOC除去能力が低下していく傾向にある。この場合には電解水生成部3から脱臭部4への電解水の供給量を増大させればよいが、チャンバー17a、17bの許容量を超える場合にはチャンバー17a、17bに接続した配管8h、8h’からそれぞれVOC分解物を混合した電解水を排出した後、新しい電解水を供給すればよい。
本発明の脱臭装置1には、図1に示すように、前記脱臭部4での脱臭処理前の気体中のVOC濃度を検出するガス濃度センサー5a、脱臭処理後の気体中のVOC濃度を検出するガス濃度センサー5b及び脱臭処理後の気体中の塩素ガス濃度を検出し得る前記ガス濃度センサー5cを備える。
前記ガス濃度センサー5a、5b又は5cは、検出したVOC濃度又は塩素ガス濃度を信号として演算制御部6に送信可能なものであればよく、種類等については特に限定はない。なお、前記信号は、電気信号、光信号等の情報伝達手段が挙げられる。
図1において、前記ガス濃度センサー5aは前記脱臭部4にVOCを含む気体を導入する配管8dに、前記ガス濃度センサー5b、5cは前記脱臭部4から脱臭処理した気体を排出する配管8iにそれぞれ設置されるが、具体的には所望のガス濃度を測定し易い位置に配置すればよい。また、ガス濃度センサーが気体中のVOC濃度と塩素ガス濃度とを同時に検出できるものであれば、前記ガス濃度センサー5b、5cを一つにまとめてもよい。
また、前記配管8iには、吸着材18を設けてもよい。その場合、前記ガス濃度センサー5b、5cよりも気体の流れ方向に対して上流側の配管8iに配設されてもよいが、両者の間に吸着材18を設ければ、万一過度な塩素ガス等が発生しても吸着させて大気開放できるという利点がある。
前記吸着材18は、気体中の塩素ガス、臭素ガス、VOCガスを吸着するために使用される。吸着材18の材質としては、例えば、活性炭、ゼオライト系化合物、酸化還元剤等が挙げられる。
前記ガス濃度センサー5a、5b、5cは演算制御部6に各種ガス濃度の信号が送信可能なように配線等で接続されている。前記演算制御部6は、前記ガス濃度センサー5a、5b、5cの信号に基づいて気体中のVOCの除去率と残留塩素ガス濃度とを演算し、適当な電気分解電流量を算出する。例えば、前記演算制御部6は、前記VOCの除去率と残留塩素ガス濃度とを演算する装置と、これらの情報から適当な電気分解電流量を算出する装置とを組み合わせたものでも、両方の機能を備えた1つの装置であってもよい。
前記演算制御部6では、前記VOCの除去率が高くなり、かつ残留塩素ガス濃度が少なくなるような電気分解電流量が算出される。
例えば、
(1)VOC除去率を50%以上および残留塩素ガス濃度1.2ppm以下にそれぞれ基準値を設定する。
(2)事前の脱臭装置の稼動結果及びデータベースに基づき、仮電流値の制御信号を演算部に送る。
(3)演算部から電解装置に制御信号を送り電気分解を開始する。
(4)センサー(入口、出口ガス濃度、塩素ガス濃度)による検出信号を演算部に送る
(5)VOC除去率を演算する。VOC除去率の演算値が50%未満であれば50%以上となるのに適切な電気分解電流量を演算する。その際、塩素ガス濃度が1.2ppmを超えない電気分解電流量となるように調整する。
また、上記以外でも、例えば、VOCの種類に応じてその除去率の下限値と、残留塩素ガス濃度の上限値をあらかじめ前記演算制御部6に入力しておき、入力された除去率の下限値よりも低くなると電流量を上げ、入力された残留塩素ガス濃度の上限値を超えると電流量を下げるような信号を出すことで、前記演算制御部6を電気分解電流量を好適な範囲に調整することができる。
また、あらかじめ前記ガス濃度の演算値に応じた電気分解電流量をプログラムしておくことで、前記ガス濃度センサーの信号に基づいてプログラムに内臓されている電流に自動的に調整してもよい。
前記演算制御部6で算出された電流量は、信号として前記電解水生成部3の直流電源11に伝達され、その電流量に基づいて電気分解が調整される。電流量の調整は、手動で行っても自動的に行ってもよい。
なお、本発明の消臭装置1を構成する部材の材質としては、VOCや食塩水による影響を受けにくい材質で構成されていればよい。
本発明の消臭装置1で脱臭処理された気体は、配管8iを通じて外部環境に放出されるが、更に別の処理(例えば、紫外線処理や吸着材の増設)を施してもよい。
(実施例1)
図1に示すように
食塩水溶液供給部2(容器の容量300L、食塩水の供給量1L/分)、
電解水生成部3(電流100〜200A、隔膜:GSユアサ製フィルター)、
脱臭部4(多塔式スクラバー、容量5L)2塔、
VOC用ガス濃度センサー5a(富士電機システムズ製、商品名:GSX)、
VOC用ガス濃度センサー5b(富士電機システムズ製、商品名:GSX)、
塩素ガス用ガス濃度センサー5c((株)ジコー製、商品名「センサースティック」)、
演算制御部6(キーエンス製、商品名:PLC KV−P)を備えた脱臭装置を作製した。
上記脱臭装置における演算制御のアルゴリズムは以下のように行った。
(1)VOC除去率と塩素ガス濃度の基準値を設定する。
(2)事前調査結果及びデータベースに基づき仮電流値の制御信号を演算部に送る。
(3)演算部から電解装置に制御信号を送り電解を開始する。
(4)センサー(入口、出口ガス濃度、塩素ガス濃度)による検出信号を演算部に送る。
(5)VOC除去率(入口ガス濃度−出口ガス濃度)/入口ガス濃度×100)を計算し、塩素ガス濃度を比較し、適正電流値を演算する。
(6)電流制御信号を電解装置に送り、適正電流値に補正する。
なお電解電流値とVOC除去率との関係は、電流あたりの除去率を測定することで得られる(図3を参照)。また、電解電流値と塩素ガス濃度の関係は、電流あたりの塩素ガス濃度を測定することで得られる(図4を参照)。
(試験例1)
実施例1で得られた脱臭装置において、2重量%食塩水溶液を用い、VOCとして、トルエン(600ppm)、キシレン(260ppm)、スチレン(40ppm)、酢酸エチル(600ppm)、アセトアルデヒド(300ppm)、ベンゼン(220ppm、エタノール(1000ppm)、MIBK(1000ppm)、酢酸100ppm、アンモニア800ppmをそれぞれ含む空気を用意して、電解電流を200A付近に調整して脱臭操作を行った。
空気中の各VOC除去率は以下のようになった。
トルエン(78.6%)、キシレン(88.5%)、スチレン(90%)、酢酸エチル(80%)、アセトアルデヒド(臭気せず)、ベンゼン(99.1%)、エタノール(96.3%)、MIBK(50%)、酢酸(臭気せず)、アンモニア(99.0%)。
したがって、上記VOCの除去効率に優れた脱臭装置であることがわかる。
例えば、酢酸エチルにおいて電流値を100A〜200Aに調整した場合の除去率を表1に示す。
Figure 2010042353
表1の結果より、酢酸エチルでは、電解電流を150〜200Aに調整することでVOC除去率を70%以上にすることができることがわかる(図3も同様)。
また、図4に示すように電解電流を150〜200Aに調整する場合に、出口有効塩素ガス濃度は1.2ppm以下に抑えることができることがわかる。
したがって、例えば、初期の電解電流を150〜200Aに調整しておけば、VOC除去率が70%以上、出口有効塩素ガス濃度1.2ppm以下にできることが想定できる。この初期条件で実際にVOCを含む気体の脱臭処理を続けると、VOC除去率が低下してくる場合がある。この場合には50%未満になった段階で、電解電流を200A付近まで上げることでVOC除去率を上げることができる。一方、200A付近に設定して脱臭処理を続けると、出口有効塩素濃度が上昇してくる場合がある。この場合には、電解電流を150A付近まで下げることで有効塩素濃度を下げることができる。
また、例えば、VOCの除去率の基準値を50%、55%、60%のように多段に設定し、その数値毎に調整すべき電解電流を設定しておけば、装置に負担の少ないより効率的な脱臭処理を行うことができる。このような基準値については出口付近の有効塩素濃度の基準値でも同様である。
本発明の脱臭装置の実施態様を示す概略説明図。 図1の脱臭装置の電解水生成部の拡大図。 図3は、電解電流値とVOC除去率との関係を示すグラフである。測定には、実施例1の脱臭装置及び2重量%食塩水を使用した。 図4は、電解電流値と塩素ガス濃度の関係を示すグラフである。測定には、実施例1の脱臭装置及び2重量%食塩水を使用した。
符号の説明
1 脱臭装置
2 食塩水溶液供給部
3 電解水生成部
4 脱臭部
5 ガス濃度センサー
6 演算制御部
7 容器
8 配管
9 ポンプ
10 電解槽
11 直流電源
12 陰極
13 陽極
14 隔膜
15 スクラバー
16 ノズル
17 チャンバー
18 吸着材

Claims (6)

  1. 食塩水溶液供給部、
    食塩水溶液を電気分解して電解水を生成する電解水生成部、
    外部から吸引された揮発性有機化合物を含む気体と前記電解水を接触させて気体を脱臭処理する脱臭部、
    前記脱臭部での脱臭処理前後の気体中の揮発性有機化合物濃度及び脱臭処理後の気体中の塩素ガス濃度を検出するガス濃度センサー、ならびに
    前記電解水生成部における電気分解電流量を調整する演算制御部
    を備えた脱臭装置であり、
    前記ガス濃度センサーと前記演算制御部が接続され、かつ前記演算制御部と前記電解水生成部が接続されており、
    前記演算制御部が、前記ガス濃度センサーの信号に基づいて気体中の揮発性有機化合物の除去率を演算し、該除去率と残留塩素ガス濃度とから脱臭処理に適切な電気分解電流量を演算し、前記電解水生成部の電流量が前記演算された電気分解電流量に調整されることを特徴とする脱臭装置。
  2. 前記演算制御部における脱臭処理に適切な電気分解電流量の制御が、揮発性有機化合物処理能力向上、もしくは廃棄塩素濃度の低減化を濃度センサーの数値から判断し制御することで行われる請求項1記載の脱臭装置。
  3. 前記電気分解電流量の調整が、前記ガス濃度センサーの信号に基づいて、プログラムに内臓されている電流に調整することにより行われる請求項1又は2記載の脱臭装置。
  4. 前記電解水生成部の電解槽内の陽極と陰極との間に隔膜が配設されている請求項1〜3いずれか記載の脱臭装置。
  5. 酸性電解水が導入される脱臭部及びアルカリ性電解水が導入される脱臭部が気体の流れ方向に直列に配置されている請求項4記載の脱臭装置。
  6. 前記脱臭部が気液接触分解と液液接触分解を同時に行える多塔式スクラバーである請求項1〜5いずれか記載の脱臭装置。
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