JP2010038826A - 信号処理装置、及びレーダ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数の目標物体から得られたレベルの異なるビート信号の周波数が近接する場合であっても、それぞれの目標物体を検出する。
【解決手段】周波数変調された送信信号の目標物体による反射信号を受信して前記送信信号と受信信号の周波数差を有するビート信号を生成するレーダ送受信機の信号処理装置のピーク信号検出手段は、前記周波数スペクトルのレベルの周波数方向における変化率に基づき、前記極大値を形成する第1のピーク信号から所定周波数範囲内で極大値を形成しない第2のピーク信号をさらに検出するので、第1のピーク信号とそのサイドローブに埋もれて極大値を形成しない第2のピーク信号のそれぞれに対応する目標物体を検出することができる。
【選択図】 図8
【解決手段】周波数変調された送信信号の目標物体による反射信号を受信して前記送信信号と受信信号の周波数差を有するビート信号を生成するレーダ送受信機の信号処理装置のピーク信号検出手段は、前記周波数スペクトルのレベルの周波数方向における変化率に基づき、前記極大値を形成する第1のピーク信号から所定周波数範囲内で極大値を形成しない第2のピーク信号をさらに検出するので、第1のピーク信号とそのサイドローブに埋もれて極大値を形成しない第2のピーク信号のそれぞれに対応する目標物体を検出することができる。
【選択図】 図8
Description
本発明は、周波数変調された送信信号の目標物体による反射信号を受信して送信信号と受信信号の周波数差を有するビート信号を生成するレーダ送受信機の信号処理装置等に関し、特に、ビート信号の周波数スペクトルにおけるピーク信号に基づき目標物体を検出する信号処理装置等に関する。
車両の自動制御を支援する手段として、車両周囲の目標物体を検出する車載用のFM−CW(Frequency Modulated-Continuous Wave)式レーダ装置が知られており、特許文献1にはその例が記載されている。
車載用のFM−CW式レーダ装置は、ミリ波長の連続波を周波数変調して車両周囲の探索領域に送信し、目標物体による反射信号を受信する。このとき、反射信号の周波数は目標物体の相対距離と相対速度に応じて偏移するので、送受信信号には周波数差が生じる。レーダ装置は、この周波数差を検出するために、送受信信号をミキシングして両者の周波数差を有するビート信号を生成する。
ここで、探索領域に複数の目標物体が存在する場合、目標物体ごとにその相対距離と相対速度に応じた周波数のビート信号が得られる。そして、目標物体から得られるビート信号のレベルは、路面その他の反射物から得られるビート信号のレベルより相対的に大きい。
このことを利用し、レーダ装置は、マイクロコンピュータなどの信号処理装置によりビート信号をFFT(高速フーリエ変換)処理して周波数スペクトルを検出する。すると、ビート信号の周波数スペクトルでは、目標物体ごとに異なる周波数で極大値が形成される(以下では、極大値を形成するビート信号をピーク信号といい、その周波数をピーク周波数という)。レーダ装置は、このようなピーク信号を検出することで、その位相やピーク周波数に基づき、目標物体ごとの方位角、相対距離、及び相対速度を検出する。そして、検出結果を車両の挙動を制御する車両制御装置に出力する。
特開2003−177179号公報
しかしながら、複数の目標物体の相対距離または相対速度が近接すると、それぞれの目標物体から得られるビート信号の周波数が近接する場合がある。このとき、ビート信号のレベルが目標物体の反射断面積や相対距離により異なると、周波数スペクトルにおいてレベルの大きいビート信号は極大値を形成するが、レベルの小さいビート信号はレベルの大きいビート信号のサイドローブに埋もれて極大値を形成できない。すると、レベルの大きいビート信号はピーク信号として検出されるのでこれに対応する目標物体が検出されるが、レベルが小さいビート信号はピーク信号として検出されないのでこれに対応する目標物体が検出されないという状況が生じる。すると、車両制御上の安全性が低下するおそれがある。
そこで、かかる問題に鑑みてなされた本発明の目的は、複数の目標物体から得られたレベルの異なるビート信号の周波数が近接する場合であっても、それぞれの目標物体を検出できる信号処理装置等を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面によれば、周波数変調された送信信号の目標物体による反射信号を受信して前記送信信号と受信信号の周波数差を有するビート信号を生成するレーダ送受信機の信号処理装置であって、前記ビート信号の周波数スペクトルにおけるピーク信号を検出するピーク信号検出手段と、前記ピーク信号に基づき前記目標物体を検出する目標物体検出手段とを有し、前記ピーク信号検出手段は、前記周波数スペクトルにおける極大値を形成する第1のピーク信号を検出し、前記周波数スペクトルの傾きの周波数方向における変化率に基づき、前記第1のピーク信号から所定周波数範囲内で極大値を形成しない第2のピーク信号をさらに検出することを特徴とする信号処理装置が提供される。
上記側面によれば、前記ピーク信号検出手段は、前記周波数スペクトルにおける極大値を形成する第1のピーク信号を検出し、前記周波数スペクトルの傾きの周波数方向における変化率に基づき、前記第1のピーク信号から所定周波数範囲内で極大値を形成しない第2のピーク信号をさらに検出するので、第1のピーク信号のサイドローブに埋もれて極大値を形成しない第2のピーク信号を検出できる。よって、第1のピーク信号に対応する目標物体だけでなく、第2のピーク信号に対応する目標物体を検出することができる。
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
図1は、本発明が適用されるレーダ装置の使用状況を説明する図である。FM−CW式のレーダ装置10は、一例として、車両1の前部フロントグリル内、あるいはバンパー内に搭載され、フロントグリルやバンパー前面に形成されるレドームを透過して車両1前方の探索領域にレーダ信号(電磁波)を送信し、目標物体による反射信号を受信する。そして、レーダ装置10は、送受信信号からビート信号を生成して、これをマイクロコンピュータなどの信号処理装置により処理することで、目標物体の方位角、相対距離、及び相対速度を検出する。目標物体は、例えば車両1の先行車両、対向車両、あるいは歩行者などである。
検出結果は車両1の各種アクチュエータを駆動する車両制御装置100に出力され、車両制御装置100は検出結果に基づき、追従走行制御や衝突回避・対応制御などの制御目的に応じて車両1の挙動を制御する。
なお、本実施形態では、ここで示した例以外にも、レーダ装置10を車両1の前側部、側面部、後側部、または後部に搭載し、それぞれ車両1の前側方、側方、後側方、または後方を走査するような構成としてもよい。
図2は、本実施形態におけるレーダ装置の構成を説明する図である。図2(A)は、レーダ装置全体の構成を示す。FM−CW式のレーダ装置10は、周波数変調を施したミリ波長の連続波(電磁波)を送信信号として送信してその反射信号を受信し、送受信信号の周波数差に対応する周波数のビート信号を生成するレーダ送受信機30と、レーダ送受信機30が生成するビート信号を処理する信号処理装置14とを有する。
ここで、送信信号と受信信号の周波数変化を図3(A)に示すと、送信信号の周波数は、実線で示すように、周波数fm(例えば400Hz)の三角波の周波数変調信号に従って、中心周波数f0(例えば76.5GHz)、周波数変調幅ΔF(例えば200MHz)で周波数が直線的に上昇及び下降する。これに対し、受信信号の周波数は、破線で示すように、これを反射した目標物体の相対距離による時間的遅延ΔTと、相対速度に応じたドップラ周波数γ分の偏移を受ける。その結果、送受信信号には、送信信号の周波数上昇期間(アップ期間)で周波数差α、周波数下降期間(ダウン期間)で周波数差βが生じる。よって、両者の周波数差に対応する周波数のビート信号の周波数(ビート周波数)は、図3(B)に示すように、アップ期間でビート周波数α、ダウン期間でビート周波数βとなる。そして、この周波数α、βと目標物体の相対距離R、相対速度Vには次の式(1)、(2)で示す関係が成立する。ただし、ここでCは光速である。
R=C・(α+β)/(8・ΔF・fm) …式(1)
V=C・(β−α)/(4・f0)…式(2)
図2(A)に戻り、上記のようなビート信号はA/D変換されてデジタルデータとして信号処理装置14に取り込まれる。信号処理装置14は、デジタルデータ化されたビート信号に対しFFT(高速フーリエ変換)処理を施してその周波数スペクトルを検出するDSP(Digital Signal Processor)などの演算処理装置と、ビート信号を処理して目標物体を検出するマイクロコンピュータを有する。このマイクロコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行する各種処理プログラムや制御プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、CPUが各種データを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)とを有する。
V=C・(β−α)/(4・f0)…式(2)
図2(A)に戻り、上記のようなビート信号はA/D変換されてデジタルデータとして信号処理装置14に取り込まれる。信号処理装置14は、デジタルデータ化されたビート信号に対しFFT(高速フーリエ変換)処理を施してその周波数スペクトルを検出するDSP(Digital Signal Processor)などの演算処理装置と、ビート信号を処理して目標物体を検出するマイクロコンピュータを有する。このマイクロコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行する各種処理プログラムや制御プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、CPUが各種データを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)とを有する。
かかる信号処理装置14では、ピーク信号検出手段14aは、ビート信号をFFT処理して周波数スペクトルを検出する演算処理装置と、周波数スペクトルからピーク信号を検出するCPUとその動作手順を記述したプログラムにより構成される。また、目標物体検出手段14bは、ピーク信号に基づいて目標物体を検出する処理を実行するCPUとその動作手順を記述したプログラムにより構成される。
図2(B)、(C)は、走査方式ごとにレーダ送受信機30の構成を説明する図である。図2(B)は機械走査方式、図2(C)は電子走査方式の場合のレーダ送受信機30の構成を示し、両図において重複する構成には同じ符号が付してある。
まず、図2(A)に示すように、機械走査式のレーダ送受信機30では、周波数変調指示部16が三角波状の周波数変調信号を生成すると、電圧制御発振器(VCO)18が周波数変調信号に従って図3(A)に示したように三角波の上昇区間で周波数が直線的に上昇し、三角波の下降区間で周波数が直線的に下降する送信信号を出力する。この送信信号は分配器20により電力分配され、その一部が送信アンテナ11から送出される。そして、反射信号が受信用アンテナ12により受信され、受信信号がミキサ22に入力される。ミキサ22は、電力分配された送信信号の一部と受信信号とを混合し、両者の周波数差に対応する周波数のビート信号を生成する。そして、ビート信号は、AD変換器24によりデジタルデータ化され、信号処理装置14に入力される。
また、レーダ送受信機30は、送信アンテナ11と受信アンテナ12を備えたアンテナ部11aを往復回動させる機構と、アンテナ部11aの回動角度を検出するエンコーダとを備えた回動部26を有する。回動部26のエンコーダからはアンテナ部11aの回動角度を示す角度信号が信号処理装置14に出力される。信号処理装置14では、目標物体検出手段14bが、角度信号に基づき受信信号を受信したときのアンテナ部11aの角度を検出し、目標物体の方位角を検出する。また、この場合、目標物体検出手段14bは、アンテナ部11aが探索領域に対応する角度範囲を片側に1回動することで探索領域を1回走査する期間を1検出サイクルとして目標物体の検出を行う。
次に、図2(C)に示すように、電子走査式のレーダ送受信機30は、反射信号を受信する複数の受信用アンテナ12_1、12_2、…を所定間隔離間して備え、受信用アンテナ12_1、12_2、…による受信信号を、信号処理装置14からの切替指示信号に従って時分割でミキサ22に入力するスイッチ回路28とを有する。ミキサ22は受信用アンテナ12_1、12_2、…それぞれを送信信号と混合して、ビート信号を生成する。
この場合、信号処理装置14では、目標物体検出手段14bが受信信号の利得が最大となるときのアンテナ全体として指向性を求めることにより、その指向性に対応する目標物体の方位角を検出する。具体的には、受信用アンテナ12_1、12_2、…間でのビート信号の位相差を制御してビート信号の合成振幅が最大となるときの位相差を求め、その位相差に対応する方位角を検出する。
あるいは、電子走査式の一形態である位相モノパルス式では、目標物体検出手段14bは、アンテナ間の受信位相差、つまりアンテナ間でのビート信号の位相差から受信信号の到来方向である目標物体の方位角を直接的に検出する。こうした電子走査式では、目標物体検出手段14bは、送信信号のアップ期間とダウン期間を1検出サイクルとして目標物体の検出処理を行う。
図4は、信号処理装置14のメインの動作手順を説明するフローチャート図である。図4に示す手順は、機械走査方式、電子走査方式いずれの場合も1検出サイクルごとに実行される。
まず、ピーク信号検出手段14aは、送信信号のアップ期間、ダウン期間ごとにビート信号をFFT処理してその周波数スペクトルを検出し、周波数スペクトルで極大値を形成するピーク信号を検出する(S2)。このとき、ノイズの影響を排除するために、所定レベルの閾値を上回るピーク信号を検出する。また、特に電子走査式の場合には、受信用アンテナ12_1、12_2、…ごとにピーク信号を検出してもよいし、全アンテナのビート信号を平均して平均におけるピーク信号を各アンテナのピーク信号として検出してもよい。ここで、ビート信号を平均する方法では、ノイズを平滑化するとともにビート信号の位相差に基づく合成振幅の増減を平滑化できる。
そして、目標物体検出手段14bは、アップ期間とダウン期間とで検出したピーク信号それぞれについて方位角を検出し、アップ期間とダウン期間のピーク信号間でレベルや方位角が一致するペアの対応付け、つまりペアリングを行う(S4)。そして、ペアリングしたアップ期間とダウン期間それぞれのピーク信号のピーク周波数を用い、上述した式(1)、(2)により目標物体の相対距離、相対速度を検出する。
そして、目標物体検出手段14bは、検出結果が過去複数の検出サイクルで連続性を有するかを確認し(S8)、一定以上の履歴が接続した検出結果を車両制御装置100に出力する(S10)。
図5は、本実施形態におけるピーク信号検出方法について説明する図である。図5(A)は、1つの目標物体から得られたビート信号の周波数スペクトルの例を示す。ビート信号の周波数スペクトルは、FFT処理により所定の周波数ビンごとの離散値として得られる。ここでは、各周波数スペクトルを周波数が低い方から、S_n(n=1、2、3、…)と表す。
ピーク信号検出手段14aは、低周波側から順次3つずつの周波数スペクトルのレベルを比較する。そして、3つの周波数スペクトルのうち中央の周波数スペクトルのレベルが最大となる組み合わせを検索する。ここでは、例えば14周波数ビンの範囲内で3つの周波数スペクトルS_n-1、S_n、S_n+1のうち中央のスペクトルS_nのレベルが最大となるときに、これを極大値とみなす。そして、かかる最大レベルの周波数スペクトルS_nをピーク信号P1として検出する。
なお、ここに示した方法は一例であって、他の方法として例えば、3つ以上の周波数スペクトルを曲線近似してその曲線の接線の傾きがゼロとなる極大値を算出し、かかる極大値に対応するピーク信号を計算上求めてもよい。また、検出処理を実行する方向も、高周波側から低周波側であってもよい。
図5(B)は、2つの目標物体から得られたビート信号の周波数スペクトルの例を示す。ここでは、2つのビート信号の周波数がある程度、例えば14周波数ビンに対応する周波数幅以上異なり、したがってそれぞれが独自に極大値を形成する場合を示す。よって、ピーク信号検出手段14aは、14周波数ビンの範囲内で3つの周波数スペクトルの中央のスペクトルのレベルが最大となるときにピーク信号を検出する。そうすることで、14周波数ビン以上周波数が異なるピーク信号P1、P2が検出される。
ここで、2つのピーク信号P1、P2の周波数が14周波数ビン以上離れていない場合、つまり2つの目標物体から得られたビート信号のビート周波数が近接する場合について説明する。
図6は、2つのピーク信号P1、P2の周波数が14周波数ビン以上離れていない場合の周波数スペクトルを示す。まず図6(A)に、便宜上、ピーク信号P1、P2とそれぞれのサイドローブR1、R2(破線で図示)を示し、さらに全体としての周波数スペクトルの形状R3(実線で図示)を示す。
ここでは、ピーク信号P1のサイドローブR1の低周波数側にピーク信号P2のサイドローブR2が重複しており、重複部分では振幅合成されて周波数スペクトルのレベルが大きくなることにより、ピーク信号P2はピーク信号P1のサイドローブR1に埋もれた状態となる。よって、ピーク信号P2においては極大値が形成されない。そこで、本実施形態ではこの場合、次のようにしてピーク信号P2を検出する。
図6(B)は、図6(A)の場合における周波数スペクトルを示す。ここで、極大値を形成するピーク信号(以下、便宜上、主ピーク信号という)P1のサイドローブR1における周波数スペクトルの形状に着目すると、主ピーク信号P1のサイドローブに他のピーク信号が含まれなければ、周波数スペクトルの傾き(つまり、周波数スペクトルの形状の接線の傾き)の変化率は、主ピーク信号P1から離れるにつれて単調増加する(矢印B)。一方、ピーク信号P2が含まれる場合は、主ピーク信号P1による極大値からピーク信号P2により周波数スペクトルが突出した箇所(矢印A)に近づくにつれ傾きが単調増加から一旦減少に転じ、ピーク信号P2を通過するときに再度単調増加に転ずる。このことから、ピーク信号検出手段14aは、検出された主ピーク信号P1を起点として、周波数スペクトルの傾きの変化率を検出する。かかる処理は、まず低周波方向に向かって実行される。
ここで、点線Eで囲まれた範囲を拡大して図6(C)に示す。ここでは、周波数スペクトルの離散値は横軸方向には等間隔でプロットされており、隣接する2つの周波数スペクトルのレベル差ΔD_nが示される。ここにおいて、周波数スペクトルの傾きは、隣接する周波数スペクトルのレベル差ΔD_nとして検出できる。すなわち、周波数スペクトルの傾きの変化率は、隣接する周波数スペクトルのレベル差の変化率として検出できる。
よって、ピーク信号検出手段14aは、このレベル差ΔD_nの変化率が増加から一旦減少に転じ、それから再度増加に転ずるときに(図の例ではレベル差はΔD_n−2からΔD_nまで減少し、ΔD_nからΔD_n+2まで増加するので、ΔD_nのときに)、ピーク信号P2を検出する。なお、ここで検出されたピーク信号P2を、以下では、主ピーク信号と区別して副ピーク信号という。このような方法によれば、主ピーク信号P1のサイドローブに埋もれて極大値を形成しない副ピーク信号P2を検出できる。
ピーク信号検出手段14aは、主ピーク信号P1を起点として高周波方向に同じ処理を行う。そうすることで、高周波側に他の副ピーク信号が埋もれている場合にはこれを検出する。ここで、低周波側における処理を先に実行するのは、目標物体の相対距離が小さいほどビート周波数は低くなることから、車両制御上重要度の高い近距離の目標物体を優先的に検出するという理由による。しかし、高周波側における処理を先に実行する場合も、本実施形態の範囲に含まれる。
なお、上記の副ピーク信号検出処理は、主ピーク信号を起点として所定の周波数ビンの範囲内、例えば14周波数ビンの範囲内を対象に実行する。これは、14周波数ビン以内であれば副ピーク信号が主ピーク信号のサイドローブに埋もれて極大値を形成しない蓋然性が大きく、従って副ピーク信号として検出する必要があるが、一方14周波数ビン以上離れた周波数に副ピーク信号がある場合には、副ピーク信号自体で極大値を形成でき、従って図5(B)で示した方法により主ピーク信号として検出されるからである。なお、複数の主ピーク信号が図5(B)に示した方法により14周波数ビン以上離れて検出されたときには、そのそれぞれについて上記の副ピーク信号検出処理を実行することで、それぞれの主ピーク信号付近にある副ピーク信号を検出できる。
また、副ピーク信号は主ピーク信号から周波数方向に離れるほどそれ自体が個別に極大値を形成する可能性が大きくなるので、副ピーク信号が存在するときには、主ピーク信号により近い周波数帯に存在する蓋然性が大きい。よって、周波数スペクトルのレベルの変化率を検出する際に、上記のように主ピーク信号を起点とすることで、早期に副ピーク信号を検出できる。しかしながら、反対の方向、つまり主ピーク信号P1の低周波数側において、主ピーク信P1から14周波数ビン離れた周波数から主ピーク信号P1に向かって処理を実行してもよい。その場合において、周波数スペクトルのレベルの変化率が増加から減少に転じ、再度増加に転じる場合において、最初に増加から減少に転じたときに副ピーク信号P2を検出することができる。
また、上記の副ピーク信号検出処理において、2つの周波数スペクトルのレベル差の算出方法は、種々の公知の計算方法により可能である。たとえば、周波数スペクトルのレベルの大きさYが周波数Xの対数関数として算出される場合には、Y=α・log X(ここでαは任意の定数)となる。この場合、周波数X_n−1、X_nにおける周波数スペクトルのレベル差は、Y_n-1 - Y_n=α・logX_n-1 −α・logX_nとして計算できる。そして、本実施形態では周波数X_n−1、X_nにおける周波数スペクトルの傾きであるレベル差と、周波数X_n、X_n+1における周波数スペクトルの傾きであるレベル差の増減を監視することに着目する。すると、
Y_n-1 - Y_n=α・logX_n-1 −α・logX_n=α・log (X_n-1/X_n)、
Y_n - Y_n+1=α・logX_n −α・logX_n+1=α・log (X_n/X_n+1)
であって、対数関数におけるYはX(>0)に対し単調増加することから、周波数スペクトルのレベルの変化率は、周波数の除算結果X_n-1/X_n、X_n/X_n+1の変化率に対応する。このような方法によれば、周波数スペクトルのレベルYを算出することなく、周波数同士の除算を用いて周波数スペクトルのレベルの変化率を検出することができる。
Y_n-1 - Y_n=α・logX_n-1 −α・logX_n=α・log (X_n-1/X_n)、
Y_n - Y_n+1=α・logX_n −α・logX_n+1=α・log (X_n/X_n+1)
であって、対数関数におけるYはX(>0)に対し単調増加することから、周波数スペクトルのレベルの変化率は、周波数の除算結果X_n-1/X_n、X_n/X_n+1の変化率に対応する。このような方法によれば、周波数スペクトルのレベルYを算出することなく、周波数同士の除算を用いて周波数スペクトルのレベルの変化率を検出することができる。
さらに、上記のほかの方法として、周波数スペクトルの離散値を曲線近似して周波数スペクトルの形状を算出し、離散値ごとの微分値、つまり接線の傾きを周波数スペクトルの傾きとして計算上求め、その変化率に基づき副ピーク信号を検出する場合も本実施形態に含まれる。
図7は、本実施形態におけるピーク信号検出処理の詳細な手順を示すフローチャート図である。図7に示す手順は、図4に示した手順S2のサブルーチンに対応し、アップ期間とダウン期間ごとに実行される。ピーク信号検出手段14aは、ビート信号に対しFFT処理を実行してその周波数スペクトルを検出する(S22)。そして、低周波側から高周波側へ極大値を検索して、主ピーク信号を検出する(S24)。そして、主ピーク信号が検出されたときには(S26のYES)、各主ピーク信号付近で副ピーク信号の検出処理を実行する(S28)。一方、主ピーク信号が検出されなかったときには(S26のNO)、処理を終了する。
なお、アップ期間とダウン期間の一方で副ピーク信号が主ピーク信号のサイドローブに埋もれて検出できず、ペアリングすることによりそのことが判明する場合がある。よって、副ピーク信号検出処理(S28)は、図4に示したペアリング処理(手順S4)の後に、アップ期間とダウン期間とで検出された主ピーク信号の数が一致しないときに実行する手順としてもよい。
図8は、副ピーク信号の検出処理手順(図7の手順S28)をさらに詳述するフローチャート図である。ピーク信号検出手段14aは、処理の起点となる主ピーク信号を例えば周波数が低い順に選択し(S32)、その低周波側に他の主ピーク信号を検索する(S34)。ここで、例えば他の主ピーク信号が14周波数ビン以上離れていない場合には(S36のNO)、その主ピーク信号と選択された起点となる主ピーク信号との間には副ピーク信号が存在する蓋然性は低いと判断する。これは、起点となる主ピーク信号と他の主ピーク信号のそれぞれで周波数スペクトルが極大値を形成するときには両者の間では極小値が形成されており、副ピーク信号の存在を示す周波数スペクトルの形状が形成されないからである。この場合、低周波側における副ピーク信号の検出処理(S38〜S50)を省略して高周波側における副ピーク信号の検出処理(S52以降)に進む。
一方、他の主ピーク信号が14周波数ビン以上離れている場合には(S36のYES)、選択した起点となる主ピーク信号の付近に副ピーク信号が存在する可能性があるので、これの検出処理を実行する。すなわち、ピーク信号検出手段14aは、主ピーク信号の周波数から低周波側に14周波数ビンの範囲における周波数スペクトルについて1周波数ビンごとに、周波数スペクトルのレベルが一定の閾値以上であるかを確認する(S38、S40、S48)。ここで、閾値は、ノイズを除去するためのレベルが用いられる。そして、一定の閾値以上のときには(S40のYES)、その周波数スペクトルについて、1つ前の周波数スペクトルからのレベル差を周波数スペクトルの傾きとして検出する(S42)。そして、傾きの変化率が一旦減少してから増加に転じたときに(S44)、副ピーク信号を検出する(S46)。ここで、1つの主ピーク信号のサイドローブに複数の副ピーク信号が含まれる場合には、その都度傾きの変化率が上記同様に変化するので、副ピーク信号を検出する。そして、14周波数ビン以内の周波数スペクトルの処理を終えた後、検出したすべての副ピーク信号をRAMに格納する(S50)。
そして、次に、ピーク信号検出手段14aは、高周波側における副ピーク信号の検出処理(S52〜S68)を実行する。ここでは、低周波側の処理と同じ処理が実行されるので、説明を省略する。
そして、起点として選択すべき未処理の主ピーク信号がある間は(S70のYES)、上述の処理(S32〜S68)を実行し、未処理の主ピーク信号がなくなったときに(S70のNO)、処理を終了する。
このような手順によれば、主ピーク信号の付近で副ピーク信号を検出でき、複数の目標物体から得られたビート信号のビート周波数が近接する場合であっても、それぞれの目標物体を確実に検出できる。そして、図4の手順S8で示したように検出結果の連続性を確認する際に、高い確度で連続性が確認できるので、早期に車両制御に必要な出力をすることができる。
なお、上述の説明において用いた周波数ビンの数は一例であり、信号処理装置14の構成に応じて任意に設定可能である。
以上説明したとおり、本実施の形態によれば、ビート信号の周波数スペクトルにおける極大値を形成する主ピーク信号を検出し、周波数スペクトルの傾きの周波数方向における変化率に基づき、主ピーク信号から所定周波数範囲内で極大値を形成しない副ピーク信号をさらに検出するので、主ピーク信号のサイドローブに埋もれて極大値を形成しない副ピーク信号を検出できる。よって、主ピーク信号に対応する目標物体だけでなく、副ピーク信号に対応する目標物体を検出することができる。
1:車両、10:レーダ装置、14:信号処理装置、14a:ピーク信号検出手段、14b:目標物体検出手段、30:レーダ送受信機、100:車両制御装置
Claims (4)
- 周波数変調された送信信号の目標物体による反射信号を受信して前記送信信号と受信信号の周波数差を有するビート信号を生成するレーダ送受信機の信号処理装置であって、
前記ビート信号の周波数スペクトルにおけるピーク信号を検出するピーク信号検出手段と、
前記ピーク信号に基づき前記目標物体を検出する目標物体検出手段とを有し、
前記ピーク信号検出手段は、前記周波数スペクトルにおける極大値を形成する第1のピーク信号を検出し、前記周波数スペクトルの傾きの周波数方向における変化率に基づき、前記第1のピーク信号から所定周波数範囲内で極大値を形成しない第2のピーク信号をさらに検出することを特徴とする信号処理装置。 - 請求項1において、
前記ピーク信号検出手段は、前記第1のピーク信号を起点とするときの前記周波数スペクトルの傾きの周波数方向における変化率が、増加から減少に変化した後、再度増加に変化するときに前記第2のピーク信号を検出することを特徴とする信号処理装置。 - 請求項1または2において、
前記目標物体検出手段は、前記送信信号の周波数上昇および下降期間のそれぞれで検出された前記第1、第2のピーク信号同士の組み合わせに基づいて前記目標物体の相対速度または相対距離を検出することを特徴とする信号処理装置。 - 請求項1乃至3のいずれかに記載されたレーダ送受信機と信号処理装置とを有するレーダ装置。
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2008
- 2008-08-07 JP JP2008204412A patent/JP2010038826A/ja not_active Withdrawn
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