JP2010030936A - 抗原虫効果を有するヒトデ抽出物 - Google Patents

抗原虫効果を有するヒトデ抽出物 Download PDF

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Abstract

【課題】
ヒトデ成分の新たな活性を探索し、その実用化のための手段を提供することにより、廃棄されるヒトデの有効利用を図ること。
【解決手段】
ヒトデ抽出物を有効成分とする抗原虫組成物の提供。
【選択図】
なし

Description

本発明は、ヒトデ抽出物を有効成分とする抗原虫組成物に関する。より詳しくは、殺原虫あるいは原虫の宿主細胞への侵入阻害効果を有するヒトデ抽出物を有効成分とする抗原虫組成物に関する。
日本全国の水産業において、ヒトデは貝類などの漁場を荒らす厄介者である。その上、魚介類に混ざって捕獲されたヒトデや駆除されたヒトデは水産廃棄物として処理されており、その処理費用は大きな痛手となっている。そのため、陸揚げされたヒトデを廃棄することなく、有効利用することは重要な課題といえる。
ヒトデには極めて多様な生理活性成分が存在している。まず、サポニンと呼ばれる低分子化合物は、植物界に広く存在するが、動物界においては、ヒトデとナマコに豊富に含まれることが珍しい例として知られている。サポニンは、ステロイドまたはトリテルペンと複数の糖が結合した化合物の総称であり、サポニンおよびその類縁体には、細胞毒性、溶血作用、魚毒作用、忌避活性、抗腫瘍活性、抗菌性、抗真菌性、抗ウィルス性、抗炎症作用などの様々な活性が見られる(非特許文献1および2)。
一方、シアル酸を含むスフィンゴ糖脂質であるガングリオシドは、ラット胎児の大脳皮質由来の細胞を生存させるのに効果的であるし(非特許文献3)、マウスの神経芽細胞腫やラットの好クロム性細胞種の細胞系列において、神経突起の伸長を促進する(非特許文献4および5)。
他にもヒトデ成分について種々の活性が見いだされており、実用化の過程にある。たとえば、ヒトデ成分の植物成長促進効果に着目し、ヒトデ抽出液を農作物活性化剤の成分とする発明(特許文献1)やヒトデを含む有機成分材料を発酵させて肥料とする発明(特許文献2)がある。また、ヒトデ成分の防虫効果から、ヒトデ粉末を昆虫類の忌避剤とする試み(特許文献3)がある。さらに、皮膚の止痒効果および皮膚を掻いた後の熱感を抑制する効果から、アトピー性皮膚炎用外用剤(特許文献4)への応用、創傷治癒効果を有することから損傷皮膚改善用外用剤(特許文献5)への応用も考えられている。しかしながら、ヒトデに含まれる生理活性成分について、トキソプラズマ等の原虫に対する作用はこれまで報告されていない。
特開平5-320018号公報 特開平6-305871号公報 特開2003-183108号公報 特開2004-189675号公報 特開2004-189676号公報 Andersson L, Bohlin L, Iorizzi M, Riccio R, Minale L, Moreno-Lopez W (1989) Biological activity of saponins and saponin-like compounds from starfish and brittle-stars. Toxicon 27: 179-188 Prokof'eva NG, Chaikina EL, Kicha AA, Ivanchina NV (2003) Biological activities of steroid glycosides from starfish. Comp Biochem Physiol B 134: 695-701 Higuchi R, Inagaki K, Natori T, Komori T, Kawajiri S (1991) Biologically active glycosides from asteroidea XXV. Glycosphingolipids from the starfish Asterina pectinifera 2. Structure of three ganglioside molecular species and a homogeneous ganglioside and biological activiey of the ganglioside. Liebigs Ann Chem 1991: 1-10 Higuchi R, Inukai K, Jhou JX, Honda M, Komori T, Tsuji S, Nagai Y (1993) Biologically active glycosides from asteroidean XXXI. Glycosphingolipids from the starfish Asterias amurensis versicolor Sladen 2. Structure and biological activity of ganglioside molecular species. Liebigs Ann Chem 1993: 359-366 Kaneko M, Yamada K, Miyamoto T, Inagaki M, Higuchi R (2007) Neuritogenic activity of gangliosides from echinoderms and their structure-activity relationship. Chem Pharm Bull 55: 462-463
本発明は、廃棄されるヒトデの有効利用を図るべく、ヒトデ成分の新たな活性を探索し、その実用化のための新たな手段を提供することにある。
発明者らは、ネズミの皮下にヒトデ抽出物を注射すると、トキソプラズマの感染力が元弱されること、またその効果は、トキソプラズマ原虫を殺す、または、トキソプラズマ原虫の宿主細胞への侵入を阻害することによることを見出した。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、ヒトデ抽出物を有効成分として含有する抗原虫組成物に関する。
前記ヒトデ抽出物は、比較的極性の高い溶媒による抽出物であることが好ましく、その好適な例としては、エタノール抽出物を挙げることができる。
本発明で用いられるヒトデとしては、特に限定されないが、ヒトデ目やアカヒトデ目に属するヒトデが好ましく、たとえばキヒトデ(Asterias amurensis)および/またはイトマキヒトデ(Asterina pectinifera)が好ましい。
対象となる原虫も特に限定されないが、たとえばトキソプラズマ原虫を一例として挙げることができる。
本発明の抗原虫組成物は、有効成分であるヒトデ抽出物が、原虫の宿主細胞侵入を阻害することによりその効果を発揮するため、原虫感染症の予防剤および治療剤として利用できる。
本発明によれば、ヒトデ由来成分を含む新規な抗原虫組成物が提供される。本発明の抗原虫組成物は、現在原虫感染症の治療に用いられている薬剤(たとえば、スルファジアジンとピリメタミン等)とは異なるメカニズムにより、抗原虫作用を示す可能性がある。したがって、本発明は、原虫感染症の予防および治療のための新たな選択肢となり得る。また本発明は、廃棄ヒトデの有効利用の可能性を広げるという点において、社会的貢献度も高い。
本発明の抗原虫組成物は、ヒトデ抽出物を有効成分とし、原虫を殺す、あるいは原虫の宿主細胞への侵入を阻止することでその感染力を減弱化させて、抗原虫効果をあらわす。以下、本発明の抗原虫組成物について、詳細に説明する。
1.原虫
原虫(げんちゅう)とは真核単細胞微生物であって、運動能力や捕食能力を持つ動物的な単細胞生物である。単細胞の寄生虫と区別するため、寄生性で特に病原性のあるものを原虫と呼ぶことも多いが、本明細書においては、そのような限定はしない。
原虫には、ヒトにしか寄生できない宿主特異性の強い種類(マラリア原虫やイソスポーラなど)と、複数の動物種に寄生し、人畜共通の感染症を起す種類(赤痢アメーバやクリプトスポリジウムなど)がある。病原性は致死感染や重篤な症状を起すものから、無症状の非病原性のものまでさまざまである。消化管に寄生する原虫は、飲料水や食物を介して経口的に人体に侵入する。感染型は原虫の種類により異なるが、被嚢したシストやオーシスト、胞子(spore)などがある。赤痢アメーバやランブル鞭毛虫などはシストを、コクシジウム類はオーシストを、微胞子虫類は胞子を形成する。血液や組織に寄生する原虫の多くは特定の吸血昆虫やマダニの腸管で増殖し、これらを媒介者として人体に感染する。
主たる原虫としては、マラリアを引き起こすマラリア原虫、リーシュマニア症を引き起こすリーシュマニア原虫、クリプトスポリジウム症を引き起こすクリプトスポリジウム原虫、猫ネオスポラ感染症を引き起こすネオスポラ原虫、以下で詳述するトキソプラズマ原虫等を挙げることができる。
トキソプラズマ原虫
トキソプラズマ原虫は世界中に存在し、人やさまざまな動物や鳥に感染する。トキソプラズマはさまざまな動物の組織で成長するが、オーシスト(接合子嚢)はネコの腸内でのみ形成され、糞便とともに排出される。トキソプラズマへの感染は、そのオーシストを含む土や食べ物を介して起きることが多い。
通常感染しても症状が出ることは少なく、胎児と免疫機能が低下している人だけ重い症状が出る。妊婦が感染すると、胎盤を通して胎児にトキソプラズマが入り、その結果、流産や死産になったり、生まれた子が先天性トキソプラズマ症(新生児にみられるある種の感染症を参照)になることがある。
前述のとおり、健康な人が後天的にトキソプラズマ症にかかっても、ほとんど症状は現れない。症状が出ても普通は軽症で、痛みのないリンパ節の腫れ、間欠性の微熱、はっきりしない体調の悪さ等であるが、脈絡網膜炎が単独で起こり、視力障害、眼の痛み、光過敏性を伴うこともある。
免疫機能が低下している人、特にエイズや癌の人や、臓器移植を受けて拒絶反応を抑える薬剤を使用している人は、トキソプラズマ症を発症するリスクが高くなる。感染症は脳に起こることが多く、眼や体全体に広がることもある。これらの人では、トキソプラズマ症は非常に重くなり、治療しなければほぼ100%死亡する。脳のトキソプラズマ症(脳炎)になると、半身の脱力感、言語障害、頭痛、錯乱、けいれん発作などが起こる。急性散在性トキソプラズマ症は、発疹、高熱、悪寒、呼吸困難、疲労を起こす。髄膜脳炎(脳とそれを包む膜の炎症)、肝炎、肺炎、心筋炎を起こす場合もある。
先天性トキソプラズマ症の小児は、重症で生後まもなく死亡することもあれば、何カ月もたってから症状が出たり、一生発病しない場合もある。新生児によくみられる症状は、「脈絡網膜炎」と呼ばれる失明に至る眼の炎症、肝臓や脾臓の腫大、黄疸、青あざができやすくなる、けいれん発作、頭蓋骨(ずがいこつ)形成異常、精神遅滞等である。
トキソプラズマに感染していても、症状がなく免疫機能が正常な成人の場合には、治療の必要はない。症状がある場合は、通常スルファジアジンとピリメタミンの併用で治療し、ピリメタミンの副作用から骨髄を保護するためにロイコボリンを追加投与する。脈絡網膜炎の治療には、クリンダマイシンを併用し、炎症を鎮めるためにプレドニゾロンなどのステロイド薬を使う。
エイズ患者の場合、トキソプラズマ症の再発を予防するため、ニューモシスチス‐カリニ感染症にも有効なトリメトプリム‐スルファメトキサゾール(ST合剤)の予防投与を行うこともある。
妊娠中にトキソプラズマ症にかかった場合は、胎児への感染を防ぐためにスピラマイシンで治療する。
2.抗原虫作用
抗原虫剤の作用メカニズムとしては、原虫の殺虫、発育妨害、宿主細胞への侵入阻害、宿主の感染防御機構の強化等があげられる。
たとえば、抗マラリア薬であるスルファドキシンとピリメタミンは、体内に侵入したマラリア原虫の赤血球内での発育過程を妨害することにより、抗マラリア作用を示す。おなじく抗マラリア薬である塩酸メフロキンは体内に侵入したマラリア原虫の赤血球内での発育を妨害することにより、抗マラリア作用を示す。 トリコモナス症の治療薬であるチニダゾールは、トリコモナス原虫に対して殺虫作用および発育阻害効果を示すことで、トリコモナス症を改善する。
トキソプラズマ感染症の薬物療法は、現在、スルファジアジンとピリメタミンの併用によって行われる。スルファジアジンとピリメタミンは、感染細菌の細胞中で葉酸代謝を阻害することにより、侵入したトキソプラズマ原虫を殺虫、発育を阻害することで、抗トキソプラズマ作用を示す。
本発明の抗原虫組成物は、原虫の宿主細胞への侵入を阻害することにより、その感染力を減弱させ、抗原虫作用を示す。この作用は、上記した公知の抗原虫薬の作用メカニズム(殺虫、発育阻害)とは異なる可能性があり、したがって、これら従来の抗原虫薬と併用することにより、原虫感染症に対し、新たな予防および治療の可能性をもたらす。
3.ヒトデ抽出物
ヒトデは、棘皮動物門のヒトデ綱、クモヒトデ綱、シャリンヒトデ、ムカシヒトデ綱、座ヒトデ綱に属する動物で、前述したとおり、数多くの生理活性成分を含むことが知られている。本発明で用いられるヒトデは特に限定されないが、ヒトデ綱に属するヒトデが好ましく、ヒトデ目(Forcipulatida)およびアカヒトデ目(Valvatida)のヒトデがより好ましく、それぞれの目に含まれるキヒトデ、イトマキヒトデが特に好ましい。キヒトデ
とイトマキヒトデは異なる目に分類され、進化的に大きな隔たりがある。それにも関わらず、これらヒトデの抽出物は同様の抗原虫活性を有することが確認された。すなわち、抽出物中に含まれる抗原虫活性を有する物質は、目の隔たりを越えた共通の物質であると考えられ、それゆえ、より近い同一の目に含まれるヒトデにも、同じ活性物質が共通して存在すると推認される。
本発明の抗原虫組成物に用いられるヒトデ抽出物は、ヒトデのいずれの部分を用いてもよく、その一部であっても全体であってもよいが、肝膵臓と呼ばれる内臓を除いた外皮を用いることが好ましい。ヒトデの内臓から抽出を行うと、抗原虫活性は低く、それゆえ内臓を除いた外皮に活性物質はより多く含まれると考えられるからである。
ヒトデ成分の抽出に用いる溶媒は、特に限定されず、水、有機溶媒等を用いることができ、特に比較的極性が高い溶媒が好ましい。好適な例としては、本明細書の実施例で用いたエタノールを挙げることができる。エタノール等によって抽出した成分は、濾過、濃縮したのち、必要に応じてさらに水/ジエチルエーテルや水/ブタノール等で分配を行う。
ヒトデ抽出物は、その後の製剤工程に応じて、濃縮、乾燥固化、あるいは液体のまま、用いられる。
4.製剤化
本発明の抗原虫組成物は、ヒトデ抽出物を有効成分として用い、常法に従って製剤化することができる(Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton,米国)。
製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、結合剤、滑沢剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を加えて所望の製剤とすることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。結合剤としては、プルラン、アラビアゴム、ゼラチン、デンプン等を用いることができる。滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、ケイ酸マグネシウムを用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、ジエチリン亜硫酸塩、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。
これらの製剤基剤を用いて常法により錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、クリーム剤やローション、軟膏等の外用剤、および座剤等所望の剤型を製造することができる。
本発明の抗原虫組成物を投与する対象は、ヒトおよびイヌ、ネコ、ウシ等の原虫感染症の対象となる哺乳動物のみならず、原虫感染の媒介となりうる昆虫など、あらゆる生物が含まれる。また、生物だけでなく、原虫感染の媒介となる可能性がある土や糞便等に、適用するものであってもよい。
本発明の抗原虫組成物に含まれるヒトデ抽出物の有効投与量は、原虫の種類、投与経路、投与(適用)対象、ヒトデ抽出物の形態に応じて適宜決定される。ヒトを対象とする場合は、通常、一回につき体重1kgあたり0.001mg から1000mgの範囲であることが好ましい。あるいは、患者あたり0.01〜100000mg/bodyの範囲で選ばれることが好ましいが、これらの投与量に制限されるものではない。
本発明の抗原虫組成物を投与する時期は、感染症の症状が生ずる前後を問わず、予防的投与であっても維持的投与であってもよいが、予防的に投与することが望ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
ヒトデ抽出物の調製
2007年の11月に北海道大学厚岸臨海実験所の協力で採集した5匹のキヒトデ(Asterias amurensis)および10匹のイトマキヒトデ(Asterina pectinifera)を、それぞれハサミなどで1cm平方程度の大きさに切り分けた。この断片をそれぞれテフロン製のビンに集め、同体積のエタノール(キヒトデの場合1 L、イトマキヒトデの場合400 mL)を添加し、37度に保たれた振とう器により一晩攪拌・抽出した。
この懸濁液をガーゼおよび濾紙によって濾過し、濾液をロータリーエバポレーターによって60℃に加温しながら、半量程度になるまで濃縮した。これに、2倍量の水を添加した後、全体の半量のジエチルエーテルを添加して、2層分配し、水層を回収した。ジエチルエーテルとの2層分配をもう一度おこない、水層を回収した。回収した水層に、n-ブタノールを半量加え、2層分配をおこない、n-ブタノール層を回収した。一方、残った水層については、もう2回、半量のn-ブタノールとの2層分配をおこない、n-ブタノール層を回収し、ここまでに回収されたすべてのn-ブタノール層を合わせた。これに等量のトルエンを添加し、80℃に加温しながら、ロータリーエバポレーターによって濃縮乾固した。この結果、キヒトデ抽出物は6.2 g、イトマキヒトデ抽出物は1.3 g、ともに薄茶色の粉末が得られた。なお、すべての有機溶媒は和光純薬工業株式会社より購入した。
in vivoにおけるヒトデ抽出物の抗トキソプラズマ原虫感染効果
ヒトデ抽出物を生理食塩水に溶解し、50 μg/mL、500 μg/mL、5 mg/mL、20 mg/mLの溶液をそれぞれ調製した。これらを0.20 μmのAcrodisc(登録商標) syringe filter(Pall Corporation, East Hills, NY)に通して、滅菌した。
ICRマウス(7週齢、メス、日本クレア株式会社)に対して、1匹当たり100 μLの溶液を、各条件2匹ずつ皮下注射した。すなわち、5 μg/mL、50 μg/mL、500 μg/mL、2 mg/mLのヒトデ抽出物をそれぞれ2匹ずつに投与したことになる。また、無処理対照群として、生理食塩水を2匹のマウスにそれぞれ皮下注射した。最初にヒトデ抽出物を皮下注射してから、14日後に再度、皮下注射した。その後14日以上が経過した後、マウス1匹当たり、1000個のトキソプラズマ原虫を腹腔内注射した。トキソプラズマ原虫注射30日後のネズミの生存率を確認したところ、表1に示すように、ヒトデ抽出物によりマウスの生存率が上昇することが示された。
なお、トキソプラズマ原虫は、加熱により失活させたウシ胎児血清8%および50 μg/mLのカナマイシンを添加したMinimum Essential Medium Eagle(Sigma, St. louis, MO)中で、vero細胞を宿主細胞とした培養により維持・増殖させた。宿主細胞であるvero細胞中で増殖したトキソプラズマ原虫は、25ゲージの注射針、27ゲージの注射針、5 μmのMillex(登録商標)-SV filter(Millipore, Billerica, MA)に、この順で通し、宿主細胞から精製した。ここでは、精製したトキソプラズマ原虫をマウスに腹腔内注射した。
in vitroにおけるヒトデ抽出物の抗トキソプラズマ原虫感染効果
イトマキヒトデ抽出物をMinimum Essential Medium Eagleに溶解し、1 μg/mL、10 μg/mL、50 μg/mLに調製した。我々の研究グループで作製された、蛍光タンパク質のGFPを発現するトキソプラズマ原虫(GFP発現トキソプラズマ原虫)をヒトデ抽出物含有Minimum Essential Medium Eagleに懸濁し、37℃で1時間処理した。無処理対照群においては、ヒトデ抽出物を含まないMinimum Essential Medium Eagleで同様に処理した。
一方、宿主細胞として、vero細胞を24穴細胞培養プレート(Nunc, Rochester, NY)中で約80%飽和の状態になるように培養しておいた。このvero細胞の培養上清を除き、代わりに、ヒトデ抽出物で処理したGFP発現トキソプラズマ原虫(2.5×105個)を含むMinimum Essential Medium Eagleを加え、GFP発現トキソプラズマ原虫をvero細胞に感染させた。37℃で30分感染させた後、培養上清を除き、Minimum Essential Medium Eagleの添加および除去を3回おこない、感染せずにvero細胞の外に残っているGFP発現トキソプラズマ原虫を除いた。
最後に、0.25%(w/v)のトリプシン、0.53 mMのEDTAを含む生理食塩水を加え、vero細胞を培養トレーから遊離させ、Fluorescence Activated Cell Sorting(FACS)により、GFP発現トキソプラズマ原虫に感染したvero細胞の割合を解析した。その結果、図1のように、ヒトデ抽出物の濃度依存的にGFP発現トキソプラズマ原虫の宿主細胞への侵入が阻害されることが確認された。
本発明によれば、ヒトデ抽出物を有効成分とする新規な抗原虫組成物が提供される。本発明の抗原虫組成物は、従来用いられているスルファジアジンとピリメタミン等の抗原虫薬とは異なった作用メカニズムを有する可能性が高く、それゆえ原虫感染症の予防および治療に新たな可能性をもたらす。
図1は、ヒトデ抽出物によるトキソプラズマ原虫の宿主細胞侵入阻害を示すグラフである。

Claims (7)

  1. ヒトデ抽出物を有効成分とする抗原虫組成物。
  2. ヒトデ抽出物が極性溶媒抽出物である、請求項1に記載の抗原虫組成物。
  3. ヒトデ抽出物がエタノール抽出物である、請求項1に記載の抗原虫組成物。
  4. ヒトデがキヒトデ目および/またはアカヒトデ目のヒトデである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗原虫組成物。
  5. ヒトデがキヒトデ(Asterias amurensis)および/またはイトマキヒトデ(Asterina pectinifera)である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗原虫組成物。
  6. 原虫がトキソプラズマ原虫である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗原虫組成物。
  7. ヒトデ抽出物が原虫を殺す、または、原虫の宿主細胞侵入を阻害することにより抗原虫作用を示すものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗原虫組成物。
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