JP2010029988A - ボーリング用チップおよびボーリング用カッタ - Google Patents
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Abstract
【課題】チップの寿命を長くする。
【解決手段】チップ12は、概して直方体を成したものであり、主平面20を含む第1平面が正方形であり、側平面24を含む第2平面が長方形である。切欠コーナ32はコーナの一部が切りかかれることによって形成される。チップ12は、側平面24がすくい面とされ、側平面24と主平面20との交線が主切刃51とされ、切欠コーナ32の切欠面100が副逃げ面とされる。平面視における副逃げ面100の切削方向に直交する方向に対する角度がラジアル逃げ角である。切欠面が副逃げ面100とされるため、切欠が設けられない場合に比較して、ラジアル逃げ角を小さくすることでき、副逃げ面100とすくい面24との成す角度を大きくすることができる。それによって、先端が摩耗し難くすることができ、チップ12の寿命を長くすることができる。
【選択図】図4
【解決手段】チップ12は、概して直方体を成したものであり、主平面20を含む第1平面が正方形であり、側平面24を含む第2平面が長方形である。切欠コーナ32はコーナの一部が切りかかれることによって形成される。チップ12は、側平面24がすくい面とされ、側平面24と主平面20との交線が主切刃51とされ、切欠コーナ32の切欠面100が副逃げ面とされる。平面視における副逃げ面100の切削方向に直交する方向に対する角度がラジアル逃げ角である。切欠面が副逃げ面100とされるため、切欠が設けられない場合に比較して、ラジアル逃げ角を小さくすることでき、副逃げ面100とすくい面24との成す角度を大きくすることができる。それによって、先端が摩耗し難くすることができ、チップ12の寿命を長くすることができる。
【選択図】図4
Description
本発明は、穴加工に使用されるボーリング用カッタおよびそれに用いられるボーリング用チップに関するものである。
特許文献1には、(i)直方体を成し、コーナの角度が90°または鋭角であるボーリング用チップと、(ii)(a)そのボーリング用チップと、(b)そのボーリング用チップを縦長で保持する(チップの長手方向が送り方向とほぼ平行な姿勢で保持する)チップ保持部と横長で保持する(チップの長手方向が送り方向とほぼ直交する姿勢で保持する)チップ保持部とが形成されたホルダとを含むボーリング用カッタとが記載されている。特許文献2には、コーナの角度が60°以上90°未満であるボーリング用チップが記載されている。
また、図12に示すボーリング用チップ500が知られている。このボーリング用チップ500は、一対の主平面502,504と、4つの側平面506,507,508,509とを含む。主平面502,504の形状は長方形であり、側平面506〜509の形状は台形である。ただし、側平面506〜509のうち、互いに対向する一対の側平面506,508は、主平面502の短辺510,511と主平面504の長辺512,513とを含み、短辺510,511から長辺512,513に向かって互いに接近する方向へ傾斜する。また、一対の側平面507,509は、主平面502の長辺514,515と主平面504の短辺516,517とを含み、長辺514,515から短辺516,517に向かって互いに離間する向きに傾斜する。このように、側平面506〜509は、それぞれ、主平面502,504の一方の長辺と他方の短辺とを含むものであるため、傾斜した台形となるのである。
ボーリング用チップ500は、右回転で使用する場合には、図13(a)、(b)に示すホルダ520に保持され、左回転で使用する場合には、図13(c)に示すホルダ522に保持される。
ホルダ520の前端面には、それぞれ、周方向に隔たって、複数のチップポケット530が設けられ、各チップポケット530の回転方向後方(前端面の中心から見た場合に左方)に隣接して、図13(b)に示すチップ保持部532が設けられる。チップ保持部532は、ホルダ520の前端面に形成されるが、チップ500の形状に合わせた形状とされる。チップ保持部532は、それぞれ、周方向および半径方向に延びた底面534と、底面534に隣接して回転方向後方側に設けられた後方壁面536と、底面354および後方壁面536に隣接して内径側に設けられた内側壁面538とを含む。後方壁面536は、送り方向に対して前方にいくにつれて回転方向後方に向かう向きに傾斜した面であり、内側壁面538は、送り方向に対して後方にいくにつれて半径方向内方に向かう向きに傾斜した面である。チップ保持部532の送り方向の前方、回転方向前方、半径方向外方は開放されている。
ホルダ522については、チップ保持部352が前端面の中心から見た場合にチップポケット350の右方に設けられる点を除いて、ホルダ520における場合と同様に、チップポケット350,チップ保持部352が設けられる。
ホルダ520の前端面には、それぞれ、周方向に隔たって、複数のチップポケット530が設けられ、各チップポケット530の回転方向後方(前端面の中心から見た場合に左方)に隣接して、図13(b)に示すチップ保持部532が設けられる。チップ保持部532は、ホルダ520の前端面に形成されるが、チップ500の形状に合わせた形状とされる。チップ保持部532は、それぞれ、周方向および半径方向に延びた底面534と、底面534に隣接して回転方向後方側に設けられた後方壁面536と、底面354および後方壁面536に隣接して内径側に設けられた内側壁面538とを含む。後方壁面536は、送り方向に対して前方にいくにつれて回転方向後方に向かう向きに傾斜した面であり、内側壁面538は、送り方向に対して後方にいくにつれて半径方向内方に向かう向きに傾斜した面である。チップ保持部532の送り方向の前方、回転方向前方、半径方向外方は開放されている。
ホルダ522については、チップ保持部352が前端面の中心から見た場合にチップポケット350の右方に設けられる点を除いて、ホルダ520における場合と同様に、チップポケット350,チップ保持部352が設けられる。
チップ500は右回転用のホルダ520に、主平面504,側平面508,509が、それぞれ、底面534,後方壁面536、内側壁面358に当接する状態で取り付けられる。そして、側平面506がすくい面とされ、主平面502と側平面506との交線である辺510が主切刃とされる。チップ500が保持されたホルダ520は、右回転させられつつ送り方向にワークと相対移動させられる。それによって、ワークに切削加工が施される。なお、チップ500は図13(a)に示すようにホルダ520に芯上がりで保持される。芯上がりとは、ホルダ520の回転中心Oから半径方向に延びた線xとチップ500の一辺514(515,516,517)とが直交し、その半径方向に延びた線である垂線xに対して主切刃510が回転方向前方に位置する場合において、その垂線xと主切刃510の半径方向の先端PRとの間の距離dxをいう。また、本明細書においてその垂線xと回転中心Oと主切刃510の先端PRとを結ぶ線分Rxとの成す中心角θxを芯上がりに対応する中心角と称するが、この中心角を芯上がりと称することもできる。
切削加工により、主切刃510の先端部PRが摩耗した場合には、チップ500を主平面502の中心の回りに180°回転させる。側面508がすくい面とされ、側面508と主平面502との交線である辺511が主切刃とされる。
切削加工により、主切刃511の先端部PRが摩耗した場合には、チップ500を裏返し、主平面502が底面534に当接し、側平面509,508がそれぞれ後方壁面536,内側壁面538に当接した状態とされる。側平面507がすくい面とされ、側平面507と主平面504との交線である辺516が主切刃とされる。
切削加工により、主切刃516の先端部PRが摩耗した場合には、主平面504の中心の回りに180°回転させる。側平面509がすくい面とされ、すくい面509と主平面504との交線である辺517が主切刃とされる。
このように、右回転用のホルダ520について、チップ500の4つのコーナPRを使用することができる。
切削加工により、主切刃510の先端部PRが摩耗した場合には、チップ500を主平面502の中心の回りに180°回転させる。側面508がすくい面とされ、側面508と主平面502との交線である辺511が主切刃とされる。
切削加工により、主切刃511の先端部PRが摩耗した場合には、チップ500を裏返し、主平面502が底面534に当接し、側平面509,508がそれぞれ後方壁面536,内側壁面538に当接した状態とされる。側平面507がすくい面とされ、側平面507と主平面504との交線である辺516が主切刃とされる。
切削加工により、主切刃516の先端部PRが摩耗した場合には、主平面504の中心の回りに180°回転させる。側平面509がすくい面とされ、すくい面509と主平面504との交線である辺517が主切刃とされる。
このように、右回転用のホルダ520について、チップ500の4つのコーナPRを使用することができる。
チップ500は左回転用のホルダ522に、主平面504,側平面506,509がそれぞれ底面534,後方壁面536,内側壁面509に当接した状態で取り付けられる。側平面508がすくい面とされ、側平面508と主平面502との交線である辺511が主切刃とされる。主切刃511の先端PLが摩耗した場合には、上述の場合と同様に、チップ500を主平面502の中心回りに180°回転させ、次に、チップ500を裏返して、同様に、180°回転させて、それぞれ、使用する。左回転用のホルダ522について、チップ500の4つのコーナPLを使用することができる。
このように、従来のチップ500においては、右回転用ホルダ520について4つのコーナを使用し、左回転用ホルダ522について残りの4つのコーナを使用することができるのであり、合計8つのコーナすべてを使用することが可能となる。
このように、従来のチップ500においては、右回転用ホルダ520について4つのコーナを使用し、左回転用ホルダ522について残りの4つのコーナを使用することができるのであり、合計8つのコーナすべてを使用することが可能となる。
本発明の課題は、切削半径に対してボーリング用チップが比較的大きい場合に、ボーリング用チップおよびボーリング用カッタのコストダウンを図ることである。
本願請求項1に係るボーリング用チップは、内角が90°以下である多角形状を成した一対の第1平面と、それら第1平面をつなぐ複数の第2平面とを有し、それら複数の第2平面のうち互いに隣接する2つずつの第2平面と前記第1平面の各々とで形成される複数のコーナが、それぞれ切欠面により切り欠かれることによって前記第1平面が主平面とされ、前記互いに隣接する2つの第2平面が互いに隣接する2つの側平面とされるとともに、(a)前記主平面に直角な方向から見た平面視における切欠面を画定する線である主切欠線と前記主平面を画定する一辺との成す角度と、(b)前記互いに隣接する2つの側平面のうちのいずれか一方に直角な方向から見た側面視における切欠面を画定する線である側切欠線と前記いずれか一方の側平面を画定する一辺との成す角度との少なくとも一方が、90°以上とされたものである。
本願請求項1に係るボーリング用チップには、側平面をすくい面として使用されるものと、主平面をすくい面として使用されるものとが有り得る。
側平面がすくい面として使用される場合、主平面に直角な方向から見た平面視における切欠面を画定する主切欠線と主平面を画定する一辺(主切刃として使用される辺)との成す角度が90°以上とされ、その90°以上のコーナが主切刃の先端とされる。
主平面がすくい面として使用される場合、側平面に直角な方向から見た側面視における切欠面を画定する側切欠線と側平面を画定する一辺(主切刃として使用される辺)との成す角度が90°以上とされ、その90°以上のコーナが主切刃の先端とされる。
一方、特許文献2に記載のボーリング用チップは、コーナの角度が鋭角とされ、そのコーナが主切刃の先端とされるため、摩耗し易いという問題がある。それに対して、本願請求項1に係るボーリング用チップにおいては、角度が90°以上のコーナが主切刃の先端として使用されるため、そのコーナを摩耗し難くすることができ、ボーリング用チップの寿命を長くすることができる。
また、本願請求項1に係るボーリング用チップにおいて、切欠面が逃げ面として利用することが可能である。従来、ボーリング用カッタによる切削半径に対してチップ寸法が比較的大きい場合には、チップの刃以外の部分が被加工物に干渉しないようにするために、ラジアル逃げ角を大きくせざるを得なかった。例えば、特許文献1に記載のように、切欠が形成されていない直方体のチップを使用する場合には、ラジアル逃げ角を大きくしなければならなかったのである。
それに対して、切欠面を逃げ面として使用すれば、そうでない場合に比較して、切削半径とチップの大きさと、芯上がりが同じである場合に、ラジアル逃げ角を小さくすることができる。その結果、切削用コーナの角度(主切刃として使用される辺と切欠面を画定する線とが成す角度であり、すくい面として使用される面と副逃げ面として使用される面との成す角度である)を大きくすることができ、より一層、摩耗し難くすることができるのである。特許文献1には、ボーリング用チップのコーナに切欠を形成することも、切欠面を逃げ面として使用することも記載されていない。また、従来のチップ500においてもコーナに切欠は形成されていない。
なお、これら主切刃として使用される辺と切欠面を画定する線とが成す角度は、90°としても90°より大きい角度としてもよいが、90°より大きい角度、すなわち、鈍角とすることが望ましい。
また、各コーナに設けられた切欠部(切り欠かれた部分)の形状は、すべて同じであっても、そうでなくてもよい。
さらに、切欠面は平面であっても曲面であってもよい。
また、切欠面を画定する線(主切欠線あるいは側切欠線)と主切刃として使用される辺とが成す角度が90°以上であれば、それ以外の角度は90°より小さくても、90°以上であってもいずれでもよい。
さらに、第2平面、第1平面の形状は内角が90°の四角形とすることが望ましい。
本願請求項1に係るボーリング用チップには、側平面をすくい面として使用されるものと、主平面をすくい面として使用されるものとが有り得る。
側平面がすくい面として使用される場合、主平面に直角な方向から見た平面視における切欠面を画定する主切欠線と主平面を画定する一辺(主切刃として使用される辺)との成す角度が90°以上とされ、その90°以上のコーナが主切刃の先端とされる。
主平面がすくい面として使用される場合、側平面に直角な方向から見た側面視における切欠面を画定する側切欠線と側平面を画定する一辺(主切刃として使用される辺)との成す角度が90°以上とされ、その90°以上のコーナが主切刃の先端とされる。
一方、特許文献2に記載のボーリング用チップは、コーナの角度が鋭角とされ、そのコーナが主切刃の先端とされるため、摩耗し易いという問題がある。それに対して、本願請求項1に係るボーリング用チップにおいては、角度が90°以上のコーナが主切刃の先端として使用されるため、そのコーナを摩耗し難くすることができ、ボーリング用チップの寿命を長くすることができる。
また、本願請求項1に係るボーリング用チップにおいて、切欠面が逃げ面として利用することが可能である。従来、ボーリング用カッタによる切削半径に対してチップ寸法が比較的大きい場合には、チップの刃以外の部分が被加工物に干渉しないようにするために、ラジアル逃げ角を大きくせざるを得なかった。例えば、特許文献1に記載のように、切欠が形成されていない直方体のチップを使用する場合には、ラジアル逃げ角を大きくしなければならなかったのである。
それに対して、切欠面を逃げ面として使用すれば、そうでない場合に比較して、切削半径とチップの大きさと、芯上がりが同じである場合に、ラジアル逃げ角を小さくすることができる。その結果、切削用コーナの角度(主切刃として使用される辺と切欠面を画定する線とが成す角度であり、すくい面として使用される面と副逃げ面として使用される面との成す角度である)を大きくすることができ、より一層、摩耗し難くすることができるのである。特許文献1には、ボーリング用チップのコーナに切欠を形成することも、切欠面を逃げ面として使用することも記載されていない。また、従来のチップ500においてもコーナに切欠は形成されていない。
なお、これら主切刃として使用される辺と切欠面を画定する線とが成す角度は、90°としても90°より大きい角度としてもよいが、90°より大きい角度、すなわち、鈍角とすることが望ましい。
また、各コーナに設けられた切欠部(切り欠かれた部分)の形状は、すべて同じであっても、そうでなくてもよい。
さらに、切欠面は平面であっても曲面であってもよい。
また、切欠面を画定する線(主切欠線あるいは側切欠線)と主切刃として使用される辺とが成す角度が90°以上であれば、それ以外の角度は90°より小さくても、90°以上であってもいずれでもよい。
さらに、第2平面、第1平面の形状は内角が90°の四角形とすることが望ましい。
本願請求項6に係るボーリング用カッタは、複数のボーリング用チップと、それらボーリング用チップを周方向に互いに間隔を隔てて保持するホルダとを含み、前記ボーリング用チップの、副切刃の旋回軌跡に対する接線と副逃げ面との成す角であるラジアル逃げ角が10°以下とされたものである。
ボーリング用チップはホルダに、ラジアル逃げ角が10°以下となる姿勢で保持される。その結果、切削用コーナの角度を大きくすることができ、副切刃の摩耗による切削半径の減少を抑制することができる。
なお、ラジアル逃げ角は、チップの大きさ、芯上がり、切削半径等で決まるが、8°以下、6°以下とすることがさらに望ましい。
ボーリング用チップはホルダに、ラジアル逃げ角が10°以下となる姿勢で保持される。その結果、切削用コーナの角度を大きくすることができ、副切刃の摩耗による切削半径の減少を抑制することができる。
なお、ラジアル逃げ角は、チップの大きさ、芯上がり、切削半径等で決まるが、8°以下、6°以下とすることがさらに望ましい。
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説
明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載,従来技術等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載,従来技術等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
(1)内角が90°以下である多角形状を成した一対の第1平面と、それら第1平面をつなぐ複数の第2平面とを有し、それら複数の第2平面のうち互いに隣接する2つの第2平面ずつと前記第1平面の各々とで形成されるコーナが、それぞれ切欠面により切り欠かれることによって前記第1平面が主平面とされ、前記互いに隣接する2つの第2平面が互いに隣接する2つの側平面とされるとともに、(a)前記主平面に直角な方向から見た平面視における切欠面を画定する線である主切欠線と前記主平面を画定する一辺との成す角度と、(b)前記互いに隣接する2つの側平面のうちのいずれか一方に直角な方向から見た側面視における切欠面を画定する線である側切欠線と前記いずれか一方の側平面を画定する一辺との成す角度との少なくとも一方が、90°以上とされたことを特徴とするボーリング用チップ(請求項1)。
(2)前記切欠面が、チップの内方に向かって突になる部分のない面である(1)項に記載のボーリング用チップ。
切欠コーナの形状は切欠面で決まる。切欠面は、チップの内方に向かって凸になる部分、すなわち、凹部を有するものとすることも可能であるが、凹部を有しない面とすることが望ましい。加工の容易さから、切削面は平面とすることが望ましいが、縁部に丸みを付けあるいは面取りを行うことは差し支えない。
(3)前記コーナのすべてが切り欠かれて切欠コーナとされた(1)項または(2)項に記載のボーリング用チップ。
第1平面の各々と2つずつの第2平面とで形成されるコーナのすべてにおいて切欠が形成され、すべての切欠コーナが切削に使用可能となる。
(4)前記平面視における前記主切欠線と前記主平面を画定する一辺との成す角度と、前記側面視における前記側切欠線と前記側平面を画定する一辺との成す角度とのうちの少なくとも一方が、鈍角とされた(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ。
(5)当該ボーリング用チップが直方体の複数のコーナに切欠部が形成されたものである(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ。
第1平面の形状が正方形あるいは長方形であり、第2平面の形状がすべての内角が90°の直角四角形である。第2平面の形状は正方形でも長方形でもよい。
(6)前記第1平面の形状が正多角形である(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ。
第1平面は、例えば、長方形、正方形、三角形を成したものとすることができるが、正方形、正三角形を成したものとすれば、すべての切欠コーナを切削に使用することが容易となる。
(7)前記コーナの切り欠かれて除去される部分である切欠部の形状が、前記コーナの各々において、互いに同じである(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ。
すべてのコーナの各々に形成された切欠部の形状が互いに同じであれば、切欠コーナの形状が同じとなり、切刃として同じ機能を有し、同じ作用を為し得るものとすることができる。例えば、本項が(6)項に従属する態様では、右回転用あるいは左回転用のいずれか一方のホルダにおいて、すべての切欠コーナを使用することが可能となる。
(8)前記コーナの切り欠かれて除去される部分である切欠部が、前記すべてのコーナの各々において独立である(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ。
1つのコーナの切欠部が他のコーナの切欠部とつながらず、独立とされるため、1つの切欠部が他のコーナの形状に影響を及ぼすことがない。したがって、コーナ毎に要求される形状を、コーナ毎に実現することができる。また、切欠コーナすべてを、同じ機能、同じ作用を奏する形状を成したものとすることも可能となる。例えば、切欠部を三角錘状とすることができる。
なお、切欠部を、他のコーナに影響を与えないが、他の切欠部と重なる状態で形成することもできる。切欠部同士が重なっても、切欠コーナの主要な部分(切削用切刃として使用される部分)に影響を与えなければ、差し支えない場合もある。
(9)当該ボーリング用チップの予め定められた相対位置にある切欠コーナの形状が、同じである(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ。
例えば、ボーリング用チップを回転させたり、裏返したりした場合に、同じ位置に来る切欠コーナの形状が同じになるように、切欠部が形成される。そのようにして形成された切欠コーナは、同じ機能を有し、同じ作用を奏する切刃として使用することができる。
(10)前記平面視において、前記コーナが切り欠かれることにより形成されたコーナである切欠コーナの形状が、前記主平面の中心回りの回転対称となる形状を成し、前記側面視において、4つの前記切欠コーナのうち前記側平面の互いに対角位置にあるもの同士の形状が、その側平面の中心回りの回転対称となる形状を成した(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ(請求項2)。
本項に記載のボーリング用チップにおいて、チップの予め定められた相対位置にある切欠コーナの形状は、チップを主平面の中心回りに回転させても、裏返しても同じである。換言すれば、その相対位置にある切欠コーナは、同じ機能を有し、同じ作用を奏するものとされる。例えば、すべての切欠コーナが、右回転用の切刃の先端部として使用し得るものとなったり、すべての切欠コーナが、左回転用の切刃の先端部として使用し得るものとなったりする。そのため、ボーリング用チップを回転させたり、裏返したりすれば、その同じ相対位置にある切欠コーナを、その同じホルダについて切刃として使用することが可能となり、ボーリング用チップの寿命を長くできる。
従来のチップ500において8つのコーナすべてを使用するためには、右回転用ホルダ520と左回転用ホルダ522との両方が必要であった。それに対して、本項に記載のボーリング用チップについては、右回転用のホルダと左回転用のホルダとのいずれか一方あればよく、両方は必要でない。その結果、ホルダのコストダウンを図ることができ、ボーリング用カッタのコストダウンを図ることができ、ひいては製品のコストダウンを図ることができる。
側平面がすくい面として使用される場合において、ボーリング用チップを、主平面の中心の回りに90°(第1平面が正方形である場合)あるいは120°(第1平面が正三角形である場合)ずつ回転させれば、主平面(側平面と主平面との交線が主切刃とされる場合のその主平面)の4つ、あるいは、3つの切欠コーナを、それぞれ、切刃用コーナとして使用することができる。また、裏返して、上述とは異なる他方の主平面の4つ、あるいは、3つの切欠コーナを、それぞれ、主平面の中心の回りに。90°あるいは120°回転させることにより同様に切刃用コーナとして使用することができる。その結果、8つの切欠コーナ、あるいは、6つの切欠コーナすべてを同じホルダ(同じ回転方向で回転するホルダ)で使用することが可能となる。
主平面がすくい面として使用される場合において、ボーリング用チップを、主平面の中心の回りに90°あるいは120°ずつ回転させて、各側平面において同じ相対位置にある1つの切欠コーナを、順次使用することができる。主平面の他方がすくい面として使用される場合においても、同様に、回転させつつ使用することができる。その結果、8つ、あるいは、6つの切欠コーナをすべてを同じホルダで切削用コーナとして使用することができる。
(11)前記コーナの切り欠かれて除去される部分である切欠部の形状が、前記平面視において、前記主切欠線と、その主切欠線に隣接し、前記主平面を画定する第1辺および第2辺の延長線とで形成される三角形状を成し、前記第1辺の延長線と前記主切欠線とが成す角度と、前記第2辺の延長線と前記主切欠線とが成す角度とのうち小さい方が2°以上12°以下である(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ(請求項3)。
側平面がすくい面として使用され、側平面と主平面との交線(第1辺)が主切刃とされ、切欠面が副逃げ面として使用される場合において、その主切刃の先端を通るホルダの回転中心とする円(切削円)の接線に対する副逃げ面の角度がラジアル逃げ角θrとされる。ラジアル逃げ角は、芯上がりに対応する中心角θo(図1参照)から、第2辺の延長線と主切欠線(副逃げ面の一部)との成す角度(上述の内角の小さい方)θaを引いた大きさとなる。
θr=θo−θa
上式から、芯上がりに対応する中心角θoが同じ場合に、小さい方の内角θaを大きくすれば、ラジアル逃げ角θrを小さくすることができるが、内角θaを大きくすると、干渉し易くなる。
このことを考慮して、内角の小さい方θaを2°以上、4°以上、6°以上、8°以上とすることが望ましく、12°以下、10°以下、8°以下とすることが望ましい。特に、6°〜10°とすることが望ましい。
(12)前記コーナの切り欠かれて除去される部分である切欠部の形状が、前記平面視において、前記主切欠線と、その主切欠線に隣接し、前記主平面を画定する第1辺および第2辺の延長線とで形成される三角形状を成し、前記第1辺の延長線と前記主切欠線とが成す角度と、前記第2辺の延長線と前記主切欠線とが成す角度とのうち小さい方が10°以上23°以下である(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ。
主平面がすくい面として使用される場合に、その主平面と側平面との交線(第1辺)が主切刃として使用され、主切欠線の一部が副切刃として使用される場合に、その主切欠線が送り方向とほぼ平行な姿勢(送り方向に対して横逃げ角だけ傾いた姿勢)で保持される。したがって、横逃げ角が決まっている場合に、主切欠線と第2辺の延長線との成す角度(内角の小さい方θa)が小さい場合は大きい場合よりチップのホルダの軸線に直角な平面に対する傾きが小さくなる(図10,11参照)。
このことを考慮して、内角の小さい方θaを、10°以上、13°以上、15°以上とすることが望ましく、23°以下、20°以下、17°以下とすることが望ましい。特に、15°以上20°以下とすることが望ましい。
(13)前記コーナの切り欠かれて除去される部分である切欠部の形状が、前記側平面に直角な方向から見た側面視において、前記側切欠線と、その側切欠線に隣接し、前記側平面を画定する第3辺および第4辺の延長線とで形成される三角形状を成し、前記第3辺の延長線と前記側切欠線とが成す角度と前記第4辺の延長線と前記側切欠線とが成す角度とのうち小さい方が2°以上12°以下である(1)項ないし(10)項、(12)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ(請求項4)。
主平面がすくい面として使用され、主平面と側平面との交線(第3辺)が主切刃として、切欠面が逃げ面として使用される場合には、ラジアル逃げ角が、芯上がりに対応する中心角から側切欠線と第4辺の延長線との成す角度(上述の内角が小さい方の角度)を引いた値に対応する。したがって、小さい方の角度θbが大きい場合は小さい場合より、ラジアル逃げ角を小さくすることができる(図10)。
このことを考慮して、内角の小さい方θbを、2°以上、4°以上、6°以上、8°以上とすることが望ましく、12°以下、10°以下、8°以下とすることが望ましい。特に、6°〜10°とすることが望ましい。
(14)前記コーナの切り欠かれて除去される部分である切欠部の形状が、前記側平面に直角な方向から見た側面視において、前記側切欠線と、その側切欠線と隣接する前記側平面を画定する第3辺および第4辺の延長線とで形成される三角形状を成し、前記第3辺の延長線と前記側切欠線とが成す角度と前記第4辺の延長線と前記側切欠線とが成す角度とのうち小さい方が10°以上23°以下である(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ。
側平面がすくい面として使用され、その側平面と主平面との交線(第3辺)が主切刃として、側切欠線の一部が副切刃として使用される場合に、その側切欠線が送り方向とほぼ平行な姿勢で保持される。したがって、横逃げ角が同じ場合に、側切欠線と第4辺の延長線との成す角度(上述の内角が小さい方の角度)θbが大きい場合は、小さい場合より、ボーリング用チップのホルダに対する傾きが大きくなる(図1,4参照)。
このことを考慮して、内角の小さい方θbを、10°以上、13°以上、15°以上とすることが望ましく、23°以下、20°以下、17°以下とすることが望ましい。特に、15°以上20°以下とすることが望ましい。
なお、側切欠線は曲線の場合があるが、その場合には、側切欠線の副切刃上の接線と第4辺との成す角度をθbとする。
(15)前記主平面あるいは側平面にチップブレーカが形成された(1)項ないし(14)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ(請求項5)。
主平面と側平面とのうち、すくい面となる面にチップブレーカが形成される。
(16)複数のボーリング用チップと、それらボーリング用チップを周方向に互いに間隔を隔てて保持するホルダとを含むボーリング用カッタであって、
前記ボーリング用チップの、副切刃の旋回軌跡に対する接線と副逃げ面との成す角であるラジアル逃げ角が10°以下とされたことを特徴とするボーリング用カッタ(請求項6)。
(17)前記ボーリング用チップのすくい角がネガティブとされた(16)項に記載のボーリング用カッタ(請求項7)。
(18)前記ボーリング用チップが、(1)項ないし(15)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップである(16)項または(17)項に記載のボーリング用カッタ(請求項8)。
ボーリング用チップには、上述の各技術的特徴を備えたものとすることができる。
(19)前記ボーリング用チップが、(1)項ないし(11)項、(14)項、(15)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップであり、そのボーリング用チップの前記第1平面の一辺が、前記ホルダの一半径に直角であり、かつ、前記ボーリング用チップの主切刃が、前記一半径と前記第1平面の一辺またはその一辺の延長線との交点に対して、前記ホルダの回転方向前方に位置する姿勢で、前記ボーリング用チップが前記ホルダに保持されるとともに、前記ボーリング用チップの前記第1平面の一辺の長さをLとし、前記主切刃の半径方向における先端と前記ホルダの回転中心とを結ぶ線分の長さである切削半径をRとした場合においてR/Lの値が2以上10以下である(16)項または(17)項に記載のボーリング用カッタ(請求項9)。
図1に示すように、側平面がすくい面である場合には、主平面の一辺mがホルダの回転中心Oから半径方向に延びた線Aに直交し、主平面とすくい面との交線である主切刃の半径方向の先端Sが、その垂線Aに対して回転方向前方に隔たった位置となるように保持される。この主切刃の先端Sと垂線Aとの間の距離である芯上がりQは第1平面の一辺mの長さLの1/2より大きい(L/2<Q)。
本項に記載のボーリング用カッタは、ボーリング用チップが芯上がりで保持され、切削半径Rに対して、そのチップが大きい(Lが大きい)場合に適したものであり、特に、チップの切刃以外の部分と被切削物(ワーク)とが干渉し易く、この干渉を回避しようとするためにラジアル逃げ角θrを大きくすることが必要である場合に適している、このような場合に、コーナに切欠部を形成し、その切欠面を副逃げ面として利用すれば、チップの被切削物への干渉を防止しつつ、ラジアル逃げ角を小さくすることでき、切削用切刃の先端Sの角度を大きくすることができる。
ボーリング用カッタの製造の容易性、および使い勝手の良さの観点から比R/Lの値は、2以上、4以上、5以上、6以上とすることが望ましく、10以下、8以下、6以下とすることが望ましい。特に、5近傍の値とすることが望ましい。
(20)前記ボーリング用チップが、(1)項ないし(10)項、(12)項、(13)項、(15)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップであり、そのボーリング用チップの前記第2平面の一辺が、前記ホルダの一半径に直角であり、かつ、前記ボーリング用チップの主切刃が、前記一半径と前記第2平面の一辺またはその一辺の延長線との交点に対して、前記ホルダの回転方向前方に位置する姿勢で、前記ボーリング用チップが前記ホルダに保持されるとともに、前記ボーリング用チップの前記第2平面の一辺の長さをL′とし、前記主切刃の半径方向における先端と前記ホルダの回転中心とを結ぶ線分の長さである切削半径をR′とした場合においてR′/L′の値が5以上16以下である(16)項、(17)項、(19)項のいずれか1つに記載のボーリング用カッタ。
図10に示すように、主平面がすくい面として使用される場合には、側平面の一辺m′がホルダの回転中心から半径方向に延びた線A′に直角であり、側平面とすくい面との交線である主切刃の先端S′が、その垂線A′に対して回転方向前方に隔たった位置となる姿勢で保持される。
切削半径R′を第2平面のL′で割った値である比率R′/L′は、ボーリング用カッタの製造の容易性、および使い勝手の良さの観点から5以上、8以上、10以上、12以上とすることが望ましく、16以下、14以下、12以下とすることが望ましい。特に、13近傍の値とすることが望ましい。
(21)前記ボーリング用チップが、(1)項ないし(11)項、(14)項、(15)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップであり、前記ボーリング用チップの前記主平面の一辺が、前記ホルダの回転中心から半径方向に延びた線に直角であり、かつ、前記ボーリング用チップの主切刃が、前記一辺への前記回転中心からの垂線に対して、前記ホルダの回転方向前方に位置する姿勢で、前記ボーリング用チップが前記ホルダに保持されるとともに、前記垂線と、前記主切刃の半径方向における先端と回転中心とを結ぶ線分との成す角度が、10°以上20°以下である(16)項、(17)項、(19)項のいずれか1つに記載のボーリング用カッタ。
本項に記載のボーリング用カッタにおいては、側平面がすくい面とされる。
主切刃の先端と回転中心とを結ぶ線分と垂線とが成す角度である中心角θo、切削半径Rとした場合に、垂線と主切刃の先端との間の距離dは、式
d=R・sinθo
となる。
中心角θoは、10°以上、12°以上とすることが望ましく、20°以下、17°以下、15°以下とすることが望ましい。
(22)前記ボーリング用チップが、(1)項ないし(10)項、(12)項、(13)項、(15)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップであり、前記ボーリング用チップの前記側平面の一辺が、前記ホルダの回転中心から半径方向に延びた線に直角であり、かつ、前記ボーリング用チップの主切刃が、前記一辺への前記回転中心からの垂線に対して、前記ホルダの回転方向前方に位置する姿勢で、前記ボーリング用チップが前記ホルダに保持されるとともに、前記垂線と前記主切刃の案形方向における先端と回転中止との成す角度が、10°以上20°以下である(16)項、(17)項、(20)項のいずれか1つに記載のボーリング用カッタ。
本項に記載のボーリング用カッタにおいては、主平面がすくい面とされ、第1平面の一辺よりも小さい第2平面の一辺がほぼ周方向に延びることとなるので、芯上がりを大きくする必要性が(21)項に記載のボーリング用カッタに比較して小さい。
(23)前記ボーリング用チップが、(1)項ないし(11)項、(14)項、(15)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップであり、前記ホルダに保持された前記ボーリング用チップの個数が10個以下である(16)項、(17)項、(19)項、(21)項のいずれか1つに記載のボーリング用カッタ(請求項10)。
ホルダの外径は、切削半径よりわずかに小さいのが普通であり、チップは、周方向に、間隔を隔てて取り付けられるのが普通である。また、切削半径、すなわち、ホルダの大きさに対してチップの大きさが比較的大きい場合には、ホルダに保持可能なチップの個数は限られる。
側平面がすくい面として使用される姿勢で、チップがホルダに保持される場合には、チップの個数が10個以下、8個以下、6個以下である場合に本発明を特に享受し得る。
なお、主平面がすくい面として使用される姿勢で保持される場合には、側平面がすくい面として使用される場合より、幾何学的には保持されるチップの個数が多くなるが、実際には、チップポケットをランドとの干渉を回避しつつ加工するのが困難であるため、形成し得る個数は、ほぼ同じとなる。
(2)前記切欠面が、チップの内方に向かって突になる部分のない面である(1)項に記載のボーリング用チップ。
切欠コーナの形状は切欠面で決まる。切欠面は、チップの内方に向かって凸になる部分、すなわち、凹部を有するものとすることも可能であるが、凹部を有しない面とすることが望ましい。加工の容易さから、切削面は平面とすることが望ましいが、縁部に丸みを付けあるいは面取りを行うことは差し支えない。
(3)前記コーナのすべてが切り欠かれて切欠コーナとされた(1)項または(2)項に記載のボーリング用チップ。
第1平面の各々と2つずつの第2平面とで形成されるコーナのすべてにおいて切欠が形成され、すべての切欠コーナが切削に使用可能となる。
(4)前記平面視における前記主切欠線と前記主平面を画定する一辺との成す角度と、前記側面視における前記側切欠線と前記側平面を画定する一辺との成す角度とのうちの少なくとも一方が、鈍角とされた(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ。
(5)当該ボーリング用チップが直方体の複数のコーナに切欠部が形成されたものである(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ。
第1平面の形状が正方形あるいは長方形であり、第2平面の形状がすべての内角が90°の直角四角形である。第2平面の形状は正方形でも長方形でもよい。
(6)前記第1平面の形状が正多角形である(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ。
第1平面は、例えば、長方形、正方形、三角形を成したものとすることができるが、正方形、正三角形を成したものとすれば、すべての切欠コーナを切削に使用することが容易となる。
(7)前記コーナの切り欠かれて除去される部分である切欠部の形状が、前記コーナの各々において、互いに同じである(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ。
すべてのコーナの各々に形成された切欠部の形状が互いに同じであれば、切欠コーナの形状が同じとなり、切刃として同じ機能を有し、同じ作用を為し得るものとすることができる。例えば、本項が(6)項に従属する態様では、右回転用あるいは左回転用のいずれか一方のホルダにおいて、すべての切欠コーナを使用することが可能となる。
(8)前記コーナの切り欠かれて除去される部分である切欠部が、前記すべてのコーナの各々において独立である(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ。
1つのコーナの切欠部が他のコーナの切欠部とつながらず、独立とされるため、1つの切欠部が他のコーナの形状に影響を及ぼすことがない。したがって、コーナ毎に要求される形状を、コーナ毎に実現することができる。また、切欠コーナすべてを、同じ機能、同じ作用を奏する形状を成したものとすることも可能となる。例えば、切欠部を三角錘状とすることができる。
なお、切欠部を、他のコーナに影響を与えないが、他の切欠部と重なる状態で形成することもできる。切欠部同士が重なっても、切欠コーナの主要な部分(切削用切刃として使用される部分)に影響を与えなければ、差し支えない場合もある。
(9)当該ボーリング用チップの予め定められた相対位置にある切欠コーナの形状が、同じである(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ。
例えば、ボーリング用チップを回転させたり、裏返したりした場合に、同じ位置に来る切欠コーナの形状が同じになるように、切欠部が形成される。そのようにして形成された切欠コーナは、同じ機能を有し、同じ作用を奏する切刃として使用することができる。
(10)前記平面視において、前記コーナが切り欠かれることにより形成されたコーナである切欠コーナの形状が、前記主平面の中心回りの回転対称となる形状を成し、前記側面視において、4つの前記切欠コーナのうち前記側平面の互いに対角位置にあるもの同士の形状が、その側平面の中心回りの回転対称となる形状を成した(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ(請求項2)。
本項に記載のボーリング用チップにおいて、チップの予め定められた相対位置にある切欠コーナの形状は、チップを主平面の中心回りに回転させても、裏返しても同じである。換言すれば、その相対位置にある切欠コーナは、同じ機能を有し、同じ作用を奏するものとされる。例えば、すべての切欠コーナが、右回転用の切刃の先端部として使用し得るものとなったり、すべての切欠コーナが、左回転用の切刃の先端部として使用し得るものとなったりする。そのため、ボーリング用チップを回転させたり、裏返したりすれば、その同じ相対位置にある切欠コーナを、その同じホルダについて切刃として使用することが可能となり、ボーリング用チップの寿命を長くできる。
従来のチップ500において8つのコーナすべてを使用するためには、右回転用ホルダ520と左回転用ホルダ522との両方が必要であった。それに対して、本項に記載のボーリング用チップについては、右回転用のホルダと左回転用のホルダとのいずれか一方あればよく、両方は必要でない。その結果、ホルダのコストダウンを図ることができ、ボーリング用カッタのコストダウンを図ることができ、ひいては製品のコストダウンを図ることができる。
側平面がすくい面として使用される場合において、ボーリング用チップを、主平面の中心の回りに90°(第1平面が正方形である場合)あるいは120°(第1平面が正三角形である場合)ずつ回転させれば、主平面(側平面と主平面との交線が主切刃とされる場合のその主平面)の4つ、あるいは、3つの切欠コーナを、それぞれ、切刃用コーナとして使用することができる。また、裏返して、上述とは異なる他方の主平面の4つ、あるいは、3つの切欠コーナを、それぞれ、主平面の中心の回りに。90°あるいは120°回転させることにより同様に切刃用コーナとして使用することができる。その結果、8つの切欠コーナ、あるいは、6つの切欠コーナすべてを同じホルダ(同じ回転方向で回転するホルダ)で使用することが可能となる。
主平面がすくい面として使用される場合において、ボーリング用チップを、主平面の中心の回りに90°あるいは120°ずつ回転させて、各側平面において同じ相対位置にある1つの切欠コーナを、順次使用することができる。主平面の他方がすくい面として使用される場合においても、同様に、回転させつつ使用することができる。その結果、8つ、あるいは、6つの切欠コーナをすべてを同じホルダで切削用コーナとして使用することができる。
(11)前記コーナの切り欠かれて除去される部分である切欠部の形状が、前記平面視において、前記主切欠線と、その主切欠線に隣接し、前記主平面を画定する第1辺および第2辺の延長線とで形成される三角形状を成し、前記第1辺の延長線と前記主切欠線とが成す角度と、前記第2辺の延長線と前記主切欠線とが成す角度とのうち小さい方が2°以上12°以下である(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ(請求項3)。
側平面がすくい面として使用され、側平面と主平面との交線(第1辺)が主切刃とされ、切欠面が副逃げ面として使用される場合において、その主切刃の先端を通るホルダの回転中心とする円(切削円)の接線に対する副逃げ面の角度がラジアル逃げ角θrとされる。ラジアル逃げ角は、芯上がりに対応する中心角θo(図1参照)から、第2辺の延長線と主切欠線(副逃げ面の一部)との成す角度(上述の内角の小さい方)θaを引いた大きさとなる。
θr=θo−θa
上式から、芯上がりに対応する中心角θoが同じ場合に、小さい方の内角θaを大きくすれば、ラジアル逃げ角θrを小さくすることができるが、内角θaを大きくすると、干渉し易くなる。
このことを考慮して、内角の小さい方θaを2°以上、4°以上、6°以上、8°以上とすることが望ましく、12°以下、10°以下、8°以下とすることが望ましい。特に、6°〜10°とすることが望ましい。
(12)前記コーナの切り欠かれて除去される部分である切欠部の形状が、前記平面視において、前記主切欠線と、その主切欠線に隣接し、前記主平面を画定する第1辺および第2辺の延長線とで形成される三角形状を成し、前記第1辺の延長線と前記主切欠線とが成す角度と、前記第2辺の延長線と前記主切欠線とが成す角度とのうち小さい方が10°以上23°以下である(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ。
主平面がすくい面として使用される場合に、その主平面と側平面との交線(第1辺)が主切刃として使用され、主切欠線の一部が副切刃として使用される場合に、その主切欠線が送り方向とほぼ平行な姿勢(送り方向に対して横逃げ角だけ傾いた姿勢)で保持される。したがって、横逃げ角が決まっている場合に、主切欠線と第2辺の延長線との成す角度(内角の小さい方θa)が小さい場合は大きい場合よりチップのホルダの軸線に直角な平面に対する傾きが小さくなる(図10,11参照)。
このことを考慮して、内角の小さい方θaを、10°以上、13°以上、15°以上とすることが望ましく、23°以下、20°以下、17°以下とすることが望ましい。特に、15°以上20°以下とすることが望ましい。
(13)前記コーナの切り欠かれて除去される部分である切欠部の形状が、前記側平面に直角な方向から見た側面視において、前記側切欠線と、その側切欠線に隣接し、前記側平面を画定する第3辺および第4辺の延長線とで形成される三角形状を成し、前記第3辺の延長線と前記側切欠線とが成す角度と前記第4辺の延長線と前記側切欠線とが成す角度とのうち小さい方が2°以上12°以下である(1)項ないし(10)項、(12)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ(請求項4)。
主平面がすくい面として使用され、主平面と側平面との交線(第3辺)が主切刃として、切欠面が逃げ面として使用される場合には、ラジアル逃げ角が、芯上がりに対応する中心角から側切欠線と第4辺の延長線との成す角度(上述の内角が小さい方の角度)を引いた値に対応する。したがって、小さい方の角度θbが大きい場合は小さい場合より、ラジアル逃げ角を小さくすることができる(図10)。
このことを考慮して、内角の小さい方θbを、2°以上、4°以上、6°以上、8°以上とすることが望ましく、12°以下、10°以下、8°以下とすることが望ましい。特に、6°〜10°とすることが望ましい。
(14)前記コーナの切り欠かれて除去される部分である切欠部の形状が、前記側平面に直角な方向から見た側面視において、前記側切欠線と、その側切欠線と隣接する前記側平面を画定する第3辺および第4辺の延長線とで形成される三角形状を成し、前記第3辺の延長線と前記側切欠線とが成す角度と前記第4辺の延長線と前記側切欠線とが成す角度とのうち小さい方が10°以上23°以下である(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ。
側平面がすくい面として使用され、その側平面と主平面との交線(第3辺)が主切刃として、側切欠線の一部が副切刃として使用される場合に、その側切欠線が送り方向とほぼ平行な姿勢で保持される。したがって、横逃げ角が同じ場合に、側切欠線と第4辺の延長線との成す角度(上述の内角が小さい方の角度)θbが大きい場合は、小さい場合より、ボーリング用チップのホルダに対する傾きが大きくなる(図1,4参照)。
このことを考慮して、内角の小さい方θbを、10°以上、13°以上、15°以上とすることが望ましく、23°以下、20°以下、17°以下とすることが望ましい。特に、15°以上20°以下とすることが望ましい。
なお、側切欠線は曲線の場合があるが、その場合には、側切欠線の副切刃上の接線と第4辺との成す角度をθbとする。
(15)前記主平面あるいは側平面にチップブレーカが形成された(1)項ないし(14)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップ(請求項5)。
主平面と側平面とのうち、すくい面となる面にチップブレーカが形成される。
(16)複数のボーリング用チップと、それらボーリング用チップを周方向に互いに間隔を隔てて保持するホルダとを含むボーリング用カッタであって、
前記ボーリング用チップの、副切刃の旋回軌跡に対する接線と副逃げ面との成す角であるラジアル逃げ角が10°以下とされたことを特徴とするボーリング用カッタ(請求項6)。
(17)前記ボーリング用チップのすくい角がネガティブとされた(16)項に記載のボーリング用カッタ(請求項7)。
(18)前記ボーリング用チップが、(1)項ないし(15)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップである(16)項または(17)項に記載のボーリング用カッタ(請求項8)。
ボーリング用チップには、上述の各技術的特徴を備えたものとすることができる。
(19)前記ボーリング用チップが、(1)項ないし(11)項、(14)項、(15)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップであり、そのボーリング用チップの前記第1平面の一辺が、前記ホルダの一半径に直角であり、かつ、前記ボーリング用チップの主切刃が、前記一半径と前記第1平面の一辺またはその一辺の延長線との交点に対して、前記ホルダの回転方向前方に位置する姿勢で、前記ボーリング用チップが前記ホルダに保持されるとともに、前記ボーリング用チップの前記第1平面の一辺の長さをLとし、前記主切刃の半径方向における先端と前記ホルダの回転中心とを結ぶ線分の長さである切削半径をRとした場合においてR/Lの値が2以上10以下である(16)項または(17)項に記載のボーリング用カッタ(請求項9)。
図1に示すように、側平面がすくい面である場合には、主平面の一辺mがホルダの回転中心Oから半径方向に延びた線Aに直交し、主平面とすくい面との交線である主切刃の半径方向の先端Sが、その垂線Aに対して回転方向前方に隔たった位置となるように保持される。この主切刃の先端Sと垂線Aとの間の距離である芯上がりQは第1平面の一辺mの長さLの1/2より大きい(L/2<Q)。
本項に記載のボーリング用カッタは、ボーリング用チップが芯上がりで保持され、切削半径Rに対して、そのチップが大きい(Lが大きい)場合に適したものであり、特に、チップの切刃以外の部分と被切削物(ワーク)とが干渉し易く、この干渉を回避しようとするためにラジアル逃げ角θrを大きくすることが必要である場合に適している、このような場合に、コーナに切欠部を形成し、その切欠面を副逃げ面として利用すれば、チップの被切削物への干渉を防止しつつ、ラジアル逃げ角を小さくすることでき、切削用切刃の先端Sの角度を大きくすることができる。
ボーリング用カッタの製造の容易性、および使い勝手の良さの観点から比R/Lの値は、2以上、4以上、5以上、6以上とすることが望ましく、10以下、8以下、6以下とすることが望ましい。特に、5近傍の値とすることが望ましい。
(20)前記ボーリング用チップが、(1)項ないし(10)項、(12)項、(13)項、(15)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップであり、そのボーリング用チップの前記第2平面の一辺が、前記ホルダの一半径に直角であり、かつ、前記ボーリング用チップの主切刃が、前記一半径と前記第2平面の一辺またはその一辺の延長線との交点に対して、前記ホルダの回転方向前方に位置する姿勢で、前記ボーリング用チップが前記ホルダに保持されるとともに、前記ボーリング用チップの前記第2平面の一辺の長さをL′とし、前記主切刃の半径方向における先端と前記ホルダの回転中心とを結ぶ線分の長さである切削半径をR′とした場合においてR′/L′の値が5以上16以下である(16)項、(17)項、(19)項のいずれか1つに記載のボーリング用カッタ。
図10に示すように、主平面がすくい面として使用される場合には、側平面の一辺m′がホルダの回転中心から半径方向に延びた線A′に直角であり、側平面とすくい面との交線である主切刃の先端S′が、その垂線A′に対して回転方向前方に隔たった位置となる姿勢で保持される。
切削半径R′を第2平面のL′で割った値である比率R′/L′は、ボーリング用カッタの製造の容易性、および使い勝手の良さの観点から5以上、8以上、10以上、12以上とすることが望ましく、16以下、14以下、12以下とすることが望ましい。特に、13近傍の値とすることが望ましい。
(21)前記ボーリング用チップが、(1)項ないし(11)項、(14)項、(15)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップであり、前記ボーリング用チップの前記主平面の一辺が、前記ホルダの回転中心から半径方向に延びた線に直角であり、かつ、前記ボーリング用チップの主切刃が、前記一辺への前記回転中心からの垂線に対して、前記ホルダの回転方向前方に位置する姿勢で、前記ボーリング用チップが前記ホルダに保持されるとともに、前記垂線と、前記主切刃の半径方向における先端と回転中心とを結ぶ線分との成す角度が、10°以上20°以下である(16)項、(17)項、(19)項のいずれか1つに記載のボーリング用カッタ。
本項に記載のボーリング用カッタにおいては、側平面がすくい面とされる。
主切刃の先端と回転中心とを結ぶ線分と垂線とが成す角度である中心角θo、切削半径Rとした場合に、垂線と主切刃の先端との間の距離dは、式
d=R・sinθo
となる。
中心角θoは、10°以上、12°以上とすることが望ましく、20°以下、17°以下、15°以下とすることが望ましい。
(22)前記ボーリング用チップが、(1)項ないし(10)項、(12)項、(13)項、(15)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップであり、前記ボーリング用チップの前記側平面の一辺が、前記ホルダの回転中心から半径方向に延びた線に直角であり、かつ、前記ボーリング用チップの主切刃が、前記一辺への前記回転中心からの垂線に対して、前記ホルダの回転方向前方に位置する姿勢で、前記ボーリング用チップが前記ホルダに保持されるとともに、前記垂線と前記主切刃の案形方向における先端と回転中止との成す角度が、10°以上20°以下である(16)項、(17)項、(20)項のいずれか1つに記載のボーリング用カッタ。
本項に記載のボーリング用カッタにおいては、主平面がすくい面とされ、第1平面の一辺よりも小さい第2平面の一辺がほぼ周方向に延びることとなるので、芯上がりを大きくする必要性が(21)項に記載のボーリング用カッタに比較して小さい。
(23)前記ボーリング用チップが、(1)項ないし(11)項、(14)項、(15)項のいずれか1つに記載のボーリング用チップであり、前記ホルダに保持された前記ボーリング用チップの個数が10個以下である(16)項、(17)項、(19)項、(21)項のいずれか1つに記載のボーリング用カッタ(請求項10)。
ホルダの外径は、切削半径よりわずかに小さいのが普通であり、チップは、周方向に、間隔を隔てて取り付けられるのが普通である。また、切削半径、すなわち、ホルダの大きさに対してチップの大きさが比較的大きい場合には、ホルダに保持可能なチップの個数は限られる。
側平面がすくい面として使用される姿勢で、チップがホルダに保持される場合には、チップの個数が10個以下、8個以下、6個以下である場合に本発明を特に享受し得る。
なお、主平面がすくい面として使用される姿勢で保持される場合には、側平面がすくい面として使用される場合より、幾何学的には保持されるチップの個数が多くなるが、実際には、チップポケットをランドとの干渉を回避しつつ加工するのが困難であるため、形成し得る個数は、ほぼ同じとなる。
以下、本発明の一実施例であるボーリング用チップを用いたボーリング用カッタについて、図面に基づいて詳細に説明する。本実施例におけるボーリング用カッタは、自動車のエンジンのシリンダボアを形成する場合に使用される。
図2において、符号10は、複数のボーリング用チップ(以下、単にチップと略称する)12を保持するホルダを示す。ホルダ10は、図3に示すアダプタ14に保持される。アダプタ14は図示しない回転主軸に保持されて回転させられる。
チップ12は、図4(a)に示すように、直方体に切欠が形成されて形状をなしたものである。切欠が形成される前の直方体は、一対の第1平面(主平面20,21を含み、二点鎖線で画定された平面)と4つの第2平面(側平面24,25,26,27を含み、二点鎖線で画定された平面)とを含む形状をなす。第1平面は正方形をなし、第2平面は長方形(内角がすべて90°である四角形)をなす。そして、一対の第1平面の各々と2つずつの第2平面とによって形成されるそれぞれのコーナに切欠部(二点鎖線で示す部分40〜47であり、除去された部分をいう)が形成されるのであり、切欠部40〜47が形成された後のコーナを切欠コーナ32〜38と称する。チップ12は、主平面20,21を軸方向に貫通して設けられた取付用穴30において図示しない固定具によりホルダ10に取り付けられる。
図2において、符号10は、複数のボーリング用チップ(以下、単にチップと略称する)12を保持するホルダを示す。ホルダ10は、図3に示すアダプタ14に保持される。アダプタ14は図示しない回転主軸に保持されて回転させられる。
チップ12は、図4(a)に示すように、直方体に切欠が形成されて形状をなしたものである。切欠が形成される前の直方体は、一対の第1平面(主平面20,21を含み、二点鎖線で画定された平面)と4つの第2平面(側平面24,25,26,27を含み、二点鎖線で画定された平面)とを含む形状をなす。第1平面は正方形をなし、第2平面は長方形(内角がすべて90°である四角形)をなす。そして、一対の第1平面の各々と2つずつの第2平面とによって形成されるそれぞれのコーナに切欠部(二点鎖線で示す部分40〜47であり、除去された部分をいう)が形成されるのであり、切欠部40〜47が形成された後のコーナを切欠コーナ32〜38と称する。チップ12は、主平面20,21を軸方向に貫通して設けられた取付用穴30において図示しない固定具によりホルダ10に取り付けられる。
チップ12において、上述のように、8つのすべてのコーナが切欠コーナ32〜38とされるのであり、すべてのコーナに切欠部40〜47が形成される。切欠部40〜47は、それぞれ、コーナ毎に独立に設けられ、他のコーナに影響を及ぼさない。また、他の切欠部との重複部を有しないものである。切欠部40〜47は三角錘状を成したものであり、図4(b)、(d)に示すように、平面視(主平面20,21に直角な向きから見た場合)においても側面視(側平面24,25,26,27に直角な向きから見た場合)においても、三角形である。
コーナ32において、切欠部40の形状は、平面視において、主平面20の辺50,51(第1平面の隣接する2辺の一部)を連結する線52と、辺50,51の延長線とによって形成される三角形である。辺50の延長線と連結線52との成す内角と、辺51の延長線と連結線52との成す内角とのうちの小さい方(本実施例においては、辺50の延長線と連結線52との成す内角θa)が8°とされている。また、側面視において、側平面24の辺51(主平面20との交線である),辺55(側平面27との交線)を連結する連結線57と辺51,55の延長線とによって形成される三角形であり、辺51の延長線と連結線57との成す内角と、辺55の延長線と連結線57との成す内角とのうちの小さい方(本実施例においては、辺55の延長線と連結線57との成す内角θb)が17°とされている。
さらに、切欠部40〜47は、それぞれ、形状および大きさが同じものであり、平面視において、切欠コーナ32,33,34,35の形状は、主平面20の中心回りの回転対称であり、切欠コーナ36,37,38,39の形状は、主平面21の中心回りの回転対称である。換言すれば、切欠部40、41,42,43の形状が主平面20の中心回りの回転対称であり、切欠部43,44,45,46の形状が主平面21の中心回りの回転対称なのである。
また、側面視において、切欠コーナ32,33,36,37の形状は、互いに対角位置にあるもの同士(切欠コーナ32,37および切欠コーナ33,36)が、側平面24の中心の回りの回転対称となる。側平面25,26,27の各々についても同様である。
その結果、チップ12の予め定められた相対位置(例えば、図4(b)の左下の位置)にある切欠コーナの形状は、チップ12を回転させても、裏返しても、同じとなる。したがって、例えば、切削用切刃の先端として機能する切欠コーナは、チップ12を回転させても、裏返しても、同じ形状を成す。
コーナ32において、切欠部40の形状は、平面視において、主平面20の辺50,51(第1平面の隣接する2辺の一部)を連結する線52と、辺50,51の延長線とによって形成される三角形である。辺50の延長線と連結線52との成す内角と、辺51の延長線と連結線52との成す内角とのうちの小さい方(本実施例においては、辺50の延長線と連結線52との成す内角θa)が8°とされている。また、側面視において、側平面24の辺51(主平面20との交線である),辺55(側平面27との交線)を連結する連結線57と辺51,55の延長線とによって形成される三角形であり、辺51の延長線と連結線57との成す内角と、辺55の延長線と連結線57との成す内角とのうちの小さい方(本実施例においては、辺55の延長線と連結線57との成す内角θb)が17°とされている。
さらに、切欠部40〜47は、それぞれ、形状および大きさが同じものであり、平面視において、切欠コーナ32,33,34,35の形状は、主平面20の中心回りの回転対称であり、切欠コーナ36,37,38,39の形状は、主平面21の中心回りの回転対称である。換言すれば、切欠部40、41,42,43の形状が主平面20の中心回りの回転対称であり、切欠部43,44,45,46の形状が主平面21の中心回りの回転対称なのである。
また、側面視において、切欠コーナ32,33,36,37の形状は、互いに対角位置にあるもの同士(切欠コーナ32,37および切欠コーナ33,36)が、側平面24の中心の回りの回転対称となる。側平面25,26,27の各々についても同様である。
その結果、チップ12の予め定められた相対位置(例えば、図4(b)の左下の位置)にある切欠コーナの形状は、チップ12を回転させても、裏返しても、同じとなる。したがって、例えば、切削用切刃の先端として機能する切欠コーナは、チップ12を回転させても、裏返しても、同じ形状を成す。
本実施例において、チップ12は、側平面24〜27のうちの1つが、すくい面として使用されるものであり、図2に示す姿勢で、ホルダ10に保持される。チップ12およびホルダ10によりボーリング用カッタが構成される。
ホルダ10は右回転用のものである。ホルダ10は軸方向に延びたものであり、前端面50にチップ12を保持し、後端面52においてアダプタ14に保持される。
前端面50には、周方向に隔たって、複数(本実施例においては6個)のチップポケット80が設けられ、チップポケット80の各々に対応して、チップポケット80の回転方向後方に隣接してチップ保持部82が設けられる。本実施例においては、チップポケット80およびチップ保持部82が等間隔で設けられておらず、不均等に、それぞれ、異なる間隔で設けられる。チップ保持部82は、ホルダ10の前端面50を切り欠いて形成されたものであり、半径方向および周方向に延びた底面84と、底面84の回転方向後方に、その底面84に対してほぼ垂直に設けられた後方壁面86と、その後方壁面86および底面84とほぼ垂直に、底面84の内側(内径側)に設けられた内側壁面88とを有する。チップ保持部82において、ホルダ10の外側(外径側)、回転方向前方側(チップポケット側)、送り方向の前方は開放されている。チップ保持部82は、チップ12を3方から(3面において)支持するものである。
なお、符号90はクーラント通路であり、チップポケット80に接続されている。
ホルダ10は右回転用のものである。ホルダ10は軸方向に延びたものであり、前端面50にチップ12を保持し、後端面52においてアダプタ14に保持される。
前端面50には、周方向に隔たって、複数(本実施例においては6個)のチップポケット80が設けられ、チップポケット80の各々に対応して、チップポケット80の回転方向後方に隣接してチップ保持部82が設けられる。本実施例においては、チップポケット80およびチップ保持部82が等間隔で設けられておらず、不均等に、それぞれ、異なる間隔で設けられる。チップ保持部82は、ホルダ10の前端面50を切り欠いて形成されたものであり、半径方向および周方向に延びた底面84と、底面84の回転方向後方に、その底面84に対してほぼ垂直に設けられた後方壁面86と、その後方壁面86および底面84とほぼ垂直に、底面84の内側(内径側)に設けられた内側壁面88とを有する。チップ保持部82において、ホルダ10の外側(外径側)、回転方向前方側(チップポケット側)、送り方向の前方は開放されている。チップ保持部82は、チップ12を3方から(3面において)支持するものである。
なお、符号90はクーラント通路であり、チップポケット80に接続されている。
底面84は、ホルダ10の前端面50において、半径方向および周方向に傾斜して形成される。すなわち、内径側から外径側にいくにつれて、送り方向の後方に傾く向きに傾斜し、かつ、回転方向前方から後方にいくにつれて送り方向の後方に傾く向きに傾斜して形成される。後方壁面86,内側壁面88は、それぞれ、底面84にほぼ垂直である。
内側壁面88は、ホルダ10の回転中心Oから半径方向に延びた半径方向線Aに、その内側壁面88の中心(チップ12が取り付けられた場合の主平面20の中心)O′(図1参照)より回転方向後方(対応するチップポケット80から離間する方向)において直交する位置および向きで形成される。
内側壁面88は、ホルダ10の回転中心Oから半径方向に延びた半径方向線Aに、その内側壁面88の中心(チップ12が取り付けられた場合の主平面20の中心)O′(図1参照)より回転方向後方(対応するチップポケット80から離間する方向)において直交する位置および向きで形成される。
チップ12は、それぞれ、ホルダ10のチップ保持部82に保持される。例えば、主平面21が底面84に当接し、側平面26,25がそれぞれ後方壁面86,内側壁面88に当接し、かつ、主平面20が送り方向において開放され、側平面24が回転方向前方において開放され、側平面27が外径方向に開放された状態で取り付けられる。上述のように、チップ保持部82が傾斜した状態で設けられるため、それに応じてチップ12も、半径方向および周方向に傾斜した姿勢で取り付けられる。
この状態において、図1,2,4に示すように、側平面24がすくい面とされ、側平面24と主平面20との交線51が主切刃とされ、切欠コーナ32の切欠部40によって形成された切欠面100を規定する線(連結線57)の一部が副切刃とされ、主平面20が主逃面とされ、切欠面100が副逃げ面とされる。本実施例においては、切欠面100(副逃面)とすくい面24との成す角度(以下、切削用コーナの角度と称したり、主切欠の先端の角度と称したりすることがある)が90°より大きくなり、ネガティブとなる。
また、内側壁面88が、半径方向線Aと直交する向きおよび位置に形成されるため、チップ12が取り付けられた場合、主切刃51は、垂線Aより回転方向の前方に位置する。その垂線Aと主切刃51の先端Sとの間の距離が芯上がりQであり、先端Sと回転中心Oとの間の距離が切削半径Rである。芯上がりQは、チップ12の第1平面の一辺の長さ(主平面20,21の穴30の中心O′を通り、辺50,51に直角な線分の長さ)Lの1/2より大きく、長さLより小さい。本実施例においては、芯上がりQ=3/5Lである。
L/2<Q<L
また、切削半径Rをチップ12の長さLで割った値R/Lは、本実施例においては、5.3とされているが、3〜8までの範囲の値とすることが望ましい。
なお、チップ12は、切欠コーナ32の連結線57が送り方向とほぼ平行となるように傾いた姿勢で保持される。
また、切欠部40において、平面視における長さCは、チップ12の第1平面の長さLの1/4程度とされ、側面視における長さEは、チップ12の第2平面の短辺の長さLyの1/6程度とされる。
この状態において、図1,2,4に示すように、側平面24がすくい面とされ、側平面24と主平面20との交線51が主切刃とされ、切欠コーナ32の切欠部40によって形成された切欠面100を規定する線(連結線57)の一部が副切刃とされ、主平面20が主逃面とされ、切欠面100が副逃げ面とされる。本実施例においては、切欠面100(副逃面)とすくい面24との成す角度(以下、切削用コーナの角度と称したり、主切欠の先端の角度と称したりすることがある)が90°より大きくなり、ネガティブとなる。
また、内側壁面88が、半径方向線Aと直交する向きおよび位置に形成されるため、チップ12が取り付けられた場合、主切刃51は、垂線Aより回転方向の前方に位置する。その垂線Aと主切刃51の先端Sとの間の距離が芯上がりQであり、先端Sと回転中心Oとの間の距離が切削半径Rである。芯上がりQは、チップ12の第1平面の一辺の長さ(主平面20,21の穴30の中心O′を通り、辺50,51に直角な線分の長さ)Lの1/2より大きく、長さLより小さい。本実施例においては、芯上がりQ=3/5Lである。
L/2<Q<L
また、切削半径Rをチップ12の長さLで割った値R/Lは、本実施例においては、5.3とされているが、3〜8までの範囲の値とすることが望ましい。
なお、チップ12は、切欠コーナ32の連結線57が送り方向とほぼ平行となるように傾いた姿勢で保持される。
また、切欠部40において、平面視における長さCは、チップ12の第1平面の長さLの1/4程度とされ、側面視における長さEは、チップ12の第2平面の短辺の長さLyの1/6程度とされる。
ホルダ10の後端面52の中央部には、係合凹部130が設けられ、アダプタ14と係合させられる。係合凹部130は軸方向に延びており、軸方向の中間部に、互いに中心角90°隔たった位置に、それぞれ、外周側から内周側に向かって延びる突部136が4つ設けられる。また、後端面52の中心から外れた位置には、トルク伝達溝138が周方向に延びた姿勢で(中心角45°に渡って)設けられる。
アダプタ14は、図3に示すように、花弁型のアダプタであり、軸方向に延びた本体142の前端面143の中央部には、本体142に対して軸方向に相対移動可能な花弁型係合突部144が設けられる。花弁型係合突部144は、軸方向に延びたものであり、先端が本体142から突出し、他端がホルダ引込部146に至るまで延びている。先端には、半径方向に突出した突部148が互いに中心角90°隔たった位置に4つ設けられる。
また、本体142の前端面143の中心から隔たった位置には、トルク伝達凸部150が設けられる。
さらに、本体142の外周部には、一対のホルダ引込部146が互いに対向する位相で設けられる。ホルダ引込部146は、図示は省略するが、例えば、本体142と花弁型係合突部144の後退面との間に設けられた付勢部材(例えば、スプリング)と、花弁型係合突部144の軸方向の中間部に形成されたV字形の溝と、そのV字溝に係合可能なピンとを含むものとすることができる。
本体142の後端面152には、図示しない工具主軸との係合部154が設けられる。
また、本体142の前端面143の中心から隔たった位置には、トルク伝達凸部150が設けられる。
さらに、本体142の外周部には、一対のホルダ引込部146が互いに対向する位相で設けられる。ホルダ引込部146は、図示は省略するが、例えば、本体142と花弁型係合突部144の後退面との間に設けられた付勢部材(例えば、スプリング)と、花弁型係合突部144の軸方向の中間部に形成されたV字形の溝と、そのV字溝に係合可能なピンとを含むものとすることができる。
本体142の後端面152には、図示しない工具主軸との係合部154が設けられる。
ホルダ10はアダプタ14に、トルク伝達溝138にトルク伝達突部150が嵌合し、かつ、花弁型係合突部144の突部148と係合凹部132の突部136とが一致しない相対位相で、軸方向に押し込まれる。そして、その相対位相から、ホルダ10をアダプタ14に対して、ホルダ10の前端面から見て時計方向に45°回転させる。ホルダ10とアダプタ14との相対回転により、トルク伝達突部150がトルク伝達溝138の端面156(回転方向前方の端面)に当接し、アダプタ14の突部148とホルダ10の突部136とが同じ位相とされる。すなわち、ホルダ10の係合凹部132の突部136の軸方向の前方に、アダプタ14の係合突部144の突部148が位置する状態となる。ホルダ引込部146においてピンを差し込むことにより、花弁型係合突部144が付勢手段の付勢力に抗して後方へ移動させられる。それに伴って、ホルダ10が後方へ移動させられ、ホルダ10の後端面52がアダプタ14の前端面143に当接して、ホルダ10がアダプタ14に固定される。
また、アダプタ14が工具主軸に固定されて、工具主軸が回転させられると、アダプタ14が回転させられるが、その回転が、トルク伝達突部150、トルク伝達溝138を介してホルダ10に伝達され、ホルダ10が回転させられる。
また、ワーク160(図1参照:被切削物であり、本実施例においては、エンジンのシリンダブロック)は、図示しない工作機械のワーク保持部に保持され、ワーク160とアダプタ14とが軸方向に相対移動させられる。本実施例においては、簡単のため、ワーク160が固定され、アダプタ14が軸方向に移動させられることにする。
アダプタ14の回転および軸方向の移動に伴ってワーク160に切削加工が行われる。主切刃51および副切刃によってワーク160が切削されるのであり、アダプタ14およびホルダ10の回転方向が切削方向であり、軸方向が送り方向である。
また、ワーク160(図1参照:被切削物であり、本実施例においては、エンジンのシリンダブロック)は、図示しない工作機械のワーク保持部に保持され、ワーク160とアダプタ14とが軸方向に相対移動させられる。本実施例においては、簡単のため、ワーク160が固定され、アダプタ14が軸方向に移動させられることにする。
アダプタ14の回転および軸方向の移動に伴ってワーク160に切削加工が行われる。主切刃51および副切刃によってワーク160が切削されるのであり、アダプタ14およびホルダ10の回転方向が切削方向であり、軸方向が送り方向である。
本実施例においては、副切刃を含み、送り方向と平行な面と副逃げ面100との成す角度である横逃げ角θyが1°とされ、主切刃51を含み、切削軌跡に接する面と主逃げ面20との成す角度である前逃げ角θfが2°とされる。さらに、平面視において、副切刃の旋回軌跡に対する接線と副逃げ面100との成す角度であるラジアル逃げ角θrが5°とされる。
ラジアル逃げ角θrは、切削半径R、芯上がりQ、チップ12の大きさLが同じ場合に、切欠部40〜47が設けられていない場合に、θoとなるのに対して、切欠部40〜47を設け、切欠面100を副逃げ面とすれば、ラジアル逃げ角θrは、θoより、連結線52と辺50の延長線との成す角度θaを引いた値となる。ラジアル逃げ角θrを小さくすれば、切削用コーナの角度を大きくすることができ、摩耗し難くすることができる。
θr=θo−θa
ラジアル逃げ角θrは、切削半径R、芯上がりQ、チップ12の大きさLが同じ場合に、切欠部40〜47が設けられていない場合に、θoとなるのに対して、切欠部40〜47を設け、切欠面100を副逃げ面とすれば、ラジアル逃げ角θrは、θoより、連結線52と辺50の延長線との成す角度θaを引いた値となる。ラジアル逃げ角θrを小さくすれば、切削用コーナの角度を大きくすることができ、摩耗し難くすることができる。
θr=θo−θa
一方、切削時には、チップ12において、主切刃51に、図1,2、図12、13に示す矢印Pの方向の力(切削方向の力)が作用する。
従来のチップ500においては、側平面506〜509が傾斜した形状を成していたため、それに応じて、後方壁面536が送り方向に対して前方にいくにつれて回転方向後方へ向かって傾斜して設けられていた。そのため、図12,13の矢印Pの力は、チップ500が後方壁面536に沿って浮き上がる向きに作用し、チップ500が緩み易く、安定性が損なわれるという問題があった。
それに対して、本実施例において、チップ12が、直方体を成したものであるため、後方壁面86が主切刃51に加えられる力の向きと直交する向きに延びることになる。その結果、切削時に作用する力Pによって、チップ12が浮き上がる向きの力が作用することを良好に回避し、緩み易くなることを良好に回避することができる。
従来のチップ500においては、側平面506〜509が傾斜した形状を成していたため、それに応じて、後方壁面536が送り方向に対して前方にいくにつれて回転方向後方へ向かって傾斜して設けられていた。そのため、図12,13の矢印Pの力は、チップ500が後方壁面536に沿って浮き上がる向きに作用し、チップ500が緩み易く、安定性が損なわれるという問題があった。
それに対して、本実施例において、チップ12が、直方体を成したものであるため、後方壁面86が主切刃51に加えられる力の向きと直交する向きに延びることになる。その結果、切削時に作用する力Pによって、チップ12が浮き上がる向きの力が作用することを良好に回避し、緩み易くなることを良好に回避することができる。
また、主切刃51の半径方向の先端S(切削用コーナの先端)が摩耗した場合には、主平面20の中心の回りにチップ12を90°回転させて、側平面25,24が後方壁面86、内側壁面88にそれぞれ当接し、側平面26,27が外径側および回転方向前方側に開放された姿勢とする。側平面27と主平面20との間の交線50が主切刃とされ、切欠コーナ35の切欠部43の切欠面を画定する線170の一部が副切刃とされる。この姿勢においても、右回転用ホルダ10を使用することができる。
切欠コーナ35の先端が摩耗した場合には、さらにチップ12を90°回転させる等により、順次、切欠コーナ34,33を使用することができる。これら切欠コーナ32〜35は、同じ相対位置にある場合において、同じ形状を成し、それぞれ同じ相対位置にある線が主切刃、副切刃として使用される。
主平面21が底面84に当接した状態で、主平面20のすべての切欠コーナ32〜35が使用された後に、チップ12を裏返し、主平面20を底面84に当接させた状態で、チップ12を取り付ける。そして、それぞれ、主平面21の中心回りに90°ずつ回転させることにより、切欠コーナ36〜39を同様に使用する。このように、ボーリング用チップ12においてすべての切欠コーナ32〜29を利用することが可能となるため、結果的に、寿命を長くし、コストダウンを図ることできる。
また、すべての切欠コーナ36〜39を同じ回転方向で切削するホルダについて使用することができるため、従来は必要であった右回転用のホルダと左回転用ホルダとの両方を製造する必要がなくなり、ボーリング用カッタのコストダウンを図ることができる。
さらに、チップ12の形状が従来のチップ500に比較して、単純な形状とされるため、チップ12の加工が容易になり、それによっても、チップ12のコストダウンを図り得る。
切欠コーナ35の先端が摩耗した場合には、さらにチップ12を90°回転させる等により、順次、切欠コーナ34,33を使用することができる。これら切欠コーナ32〜35は、同じ相対位置にある場合において、同じ形状を成し、それぞれ同じ相対位置にある線が主切刃、副切刃として使用される。
主平面21が底面84に当接した状態で、主平面20のすべての切欠コーナ32〜35が使用された後に、チップ12を裏返し、主平面20を底面84に当接させた状態で、チップ12を取り付ける。そして、それぞれ、主平面21の中心回りに90°ずつ回転させることにより、切欠コーナ36〜39を同様に使用する。このように、ボーリング用チップ12においてすべての切欠コーナ32〜29を利用することが可能となるため、結果的に、寿命を長くし、コストダウンを図ることできる。
また、すべての切欠コーナ36〜39を同じ回転方向で切削するホルダについて使用することができるため、従来は必要であった右回転用のホルダと左回転用ホルダとの両方を製造する必要がなくなり、ボーリング用カッタのコストダウンを図ることができる。
さらに、チップ12の形状が従来のチップ500に比較して、単純な形状とされるため、チップ12の加工が容易になり、それによっても、チップ12のコストダウンを図り得る。
また、先端部Sの摩耗量を図14に示すように、周方向の長さで表した場合、従来のチップ500(ラジアル逃げ角が13°)に比較して、本実施例のチップ12の方が、摩耗量(以下、周方向摩耗量と称する)δの増加に伴う加工径の減少を小さくすることができる。図5に示すように、周方向摩耗長さδが増加すると、切削可能な穴の径が小さくなるが、ラジアル逃げ角θrを小さくするほど周方向摩耗長さδの増加に伴う、半径方向の摩耗長さ(以下、半径方向摩耗長さ)δ ′の変化が小さくなるため、加工径の変化を小さくできるのである。すなわち、周方向摩耗長さδが同じ場合の半径方向長さδ′が、ラジアル逃げ角θrが小さい場合は大きい場合より短くなるため、加工径の変化が小さくなるのである。
ホルダ引込部146において、ピンを緩めれば、花弁側係合突部144は図示しない付勢手段により本体142から突出させられ、ホルダ10の後退面52が、本体142の前端面143から離間させられ、この状態で、ホルダ10を反時計方向に45°回転させれば、突部148が突部136から外れ、ホルダ10をアダプタ14から取り外すことができる。
なお、ボーリング用チップの形状は、上記実施例におけるそれに限らない。
例えば、図6に示すように、チップ190の切欠コーナ191において、形成された切欠部192による切欠面194をR形状とすることができる。それによって、より一層、先端部Sを摩耗し難くすることができる。他の切欠コーナについても同様であるが、説明を省略する。本実施例においては、切欠面194を画定する線は、平面視において直線となるが、側面視において曲線となる。
また、図7(a)に示すように、チップ200において、切欠コーナ202に形成された切欠部204の切欠面206の、主切刃208側(主平面側)の部分210をR形状としたり、図7(b)に示すように、チップ220において、切欠コーナ222に形成された切欠部223の切欠面(主切欠面)224の主切刃226側の部分をさらに切り欠き、切欠面(副切欠面)228を形成することもできる。いずれにしても、切欠コーナ202,222の先端Sを摩耗し難くすることができる。
さらに、図8(a)、(b)に示すように、チップ230,232において、それぞれ、側平面(すくい面となる面)234,236に、チップブレーカ240,242を設けることもできる。それによって、チップを良好に破断させることができる。他の側平面についても同様であるが、図示を省略する。チップブレーカ240,242は、それぞれ、主切刃として使用される辺244,245および辺246,247の近傍の、外周側に位置する部分に設けられる。
チップ230は、上記図6の実施例において記載したチップ200と同様に、すべての切欠コーナ247に形成された切欠部248の切欠面249がR形状とされたものである。
なお、上記図4の実施例において記載したチップ12に、チップブレーカを設けることもできる。
例えば、図6に示すように、チップ190の切欠コーナ191において、形成された切欠部192による切欠面194をR形状とすることができる。それによって、より一層、先端部Sを摩耗し難くすることができる。他の切欠コーナについても同様であるが、説明を省略する。本実施例においては、切欠面194を画定する線は、平面視において直線となるが、側面視において曲線となる。
また、図7(a)に示すように、チップ200において、切欠コーナ202に形成された切欠部204の切欠面206の、主切刃208側(主平面側)の部分210をR形状としたり、図7(b)に示すように、チップ220において、切欠コーナ222に形成された切欠部223の切欠面(主切欠面)224の主切刃226側の部分をさらに切り欠き、切欠面(副切欠面)228を形成することもできる。いずれにしても、切欠コーナ202,222の先端Sを摩耗し難くすることができる。
さらに、図8(a)、(b)に示すように、チップ230,232において、それぞれ、側平面(すくい面となる面)234,236に、チップブレーカ240,242を設けることもできる。それによって、チップを良好に破断させることができる。他の側平面についても同様であるが、図示を省略する。チップブレーカ240,242は、それぞれ、主切刃として使用される辺244,245および辺246,247の近傍の、外周側に位置する部分に設けられる。
チップ230は、上記図6の実施例において記載したチップ200と同様に、すべての切欠コーナ247に形成された切欠部248の切欠面249がR形状とされたものである。
なお、上記図4の実施例において記載したチップ12に、チップブレーカを設けることもできる。
また、図9(a)に示すように、第1平面の形状を正方形でなく、長方形とすることができる。チップ250は、一対の主平面252(1つのみを示した)と4つの側平面254(1つのみを示した)とを含む。また、合計8つの切欠コーナ256〜261(8つの切欠コーナのうちの6つを示した)には、それぞれ、同様の切欠部262が形成される。したがって、各切欠コーナ256〜261すべて同じ機能を有し、同じ作用を奏するものである。しかし、第1平面が長方形であるため、主平面252(第1平面)の長辺264,266を、ホルダ10の半径方向に延びた姿勢で取り付ける場合と、周方向に延びた姿勢で取り付ける場合とで、チップ保持部の形状、大きさを異なるものとする必要がある。
そこで、ホルダ10に、長辺264,266が半径方向に延びた姿勢で支持可能な第1チップ保持部と、周方向に延びた姿勢で支持可能な第2チップ保持部との両方が設けられている場合には、チップ250の8つの切欠コーナ256〜261すべてを1つのホルダにおいて使用することが可能となる。
また、第1チップ保持部を備えた第1ホルダと、第2チップ保持部を備えた第2ホルダとの両方を製造すれば、第1ホルダに保持させたり、第2ホルダに保持させたりすることにより、チップ250の8つの切欠コーナ252〜261すべてを使用することができる。
それに対して、ホルダに第1チップ保持部と第2チップ保持部とのいずれか一方が設けられ、他方が設けられていない場合には、8つの切欠コーナのうちの4つの切欠コーナは使用できないが、残りの4つの切欠コーナは使用することができる。
そこで、ホルダ10に、長辺264,266が半径方向に延びた姿勢で支持可能な第1チップ保持部と、周方向に延びた姿勢で支持可能な第2チップ保持部との両方が設けられている場合には、チップ250の8つの切欠コーナ256〜261すべてを1つのホルダにおいて使用することが可能となる。
また、第1チップ保持部を備えた第1ホルダと、第2チップ保持部を備えた第2ホルダとの両方を製造すれば、第1ホルダに保持させたり、第2ホルダに保持させたりすることにより、チップ250の8つの切欠コーナ252〜261すべてを使用することができる。
それに対して、ホルダに第1チップ保持部と第2チップ保持部とのいずれか一方が設けられ、他方が設けられていない場合には、8つの切欠コーナのうちの4つの切欠コーナは使用できないが、残りの4つの切欠コーナは使用することができる。
さらに、図9(b)に示すように、切欠部を軸方向に延びた形状を成すもの、すなわち、隣接するコーナの一方から他方に至るまで連続した形状を成すものとすることができる。本実施例において、切欠部は、各コーナ毎に独立ではなく、1つのコーナに形成された切欠部が他のコーナにも及ぶことになる。
チップ280は、一対の主平面282(一方のみを示す)と、4つの側平面284(1つのみを示す)とを含み、主平面282を含む第1平面は正方形である。本実施例においては、各切欠コーナ286〜291(8つの切欠コーナのうちの6つを示す)のうちの、側平面284の軸方向において隣接する2つの切欠コーナ(286,290)および(287,291)に共通に二点鎖線で示す切欠部293,294が形成される。切欠部293〜296の形状は三角柱であり、切欠部293〜296の形成によって設けられた切欠面298は、側平面284と平行に延びる面となる。
本実施例においては、側面視において、対角位置にある切欠コーナ(287,290)および(286,291)は回転対称にはならない。そのため、8つの切欠コーナのうちの4つは右回転用の切刃の先端部として機能するものとされ、残りの4つの切欠コーナは左回転用の切刃の先端部として機能するものとされる。
チップ280は、一対の主平面282(一方のみを示す)と、4つの側平面284(1つのみを示す)とを含み、主平面282を含む第1平面は正方形である。本実施例においては、各切欠コーナ286〜291(8つの切欠コーナのうちの6つを示す)のうちの、側平面284の軸方向において隣接する2つの切欠コーナ(286,290)および(287,291)に共通に二点鎖線で示す切欠部293,294が形成される。切欠部293〜296の形状は三角柱であり、切欠部293〜296の形成によって設けられた切欠面298は、側平面284と平行に延びる面となる。
本実施例においては、側面視において、対角位置にある切欠コーナ(287,290)および(286,291)は回転対称にはならない。そのため、8つの切欠コーナのうちの4つは右回転用の切刃の先端部として機能するものとされ、残りの4つの切欠コーナは左回転用の切刃の先端部として機能するものとされる。
また、図10,11に示すように、ボーリング用チップを、主平面をすくい面として使用されるものとすることができる。本実施例においては、図示を省略するが、ホルダのチップ保持部の形状がそれに合わせたものとされる。
図10において、チップ300は、一対の主平面302、303と4つの側平面304,305,306,307とを含む。各切欠コーナ310、311,312,313,314,315、316,317は、それぞれ、切欠部320、321,322,323,324,325、326,327が形成されることによって形成されたものである。切欠部320〜327は、上記図1に示す実施例と同様に、各コーナ毎に独立に設けられたものであり、平面視においても側面視においても三角形状を成したものである。また、側平面304において、各切欠コーナ310〜313のうち互いに対角位置にある切欠コーナ同士(310,312)および(311,313)の形状は、側面視において、側平面304の中心回りの回転対称を成し、主平面302における各切欠コーナ310,311,314,315は、平面視において、主平面302の中心の回りの回転対称を成す。他の側平面305,306,307、主平面303についても同様である。さらに、切欠部320〜327のうち、側平面304〜307の互いに短辺方向に隣接するもの同士は、重なり部を有するが、主切刃、切削用コーナの角度には影響を及ぼさない。
図10において、チップ300は、一対の主平面302、303と4つの側平面304,305,306,307とを含む。各切欠コーナ310、311,312,313,314,315、316,317は、それぞれ、切欠部320、321,322,323,324,325、326,327が形成されることによって形成されたものである。切欠部320〜327は、上記図1に示す実施例と同様に、各コーナ毎に独立に設けられたものであり、平面視においても側面視においても三角形状を成したものである。また、側平面304において、各切欠コーナ310〜313のうち互いに対角位置にある切欠コーナ同士(310,312)および(311,313)の形状は、側面視において、側平面304の中心回りの回転対称を成し、主平面302における各切欠コーナ310,311,314,315は、平面視において、主平面302の中心の回りの回転対称を成す。他の側平面305,306,307、主平面303についても同様である。さらに、切欠部320〜327のうち、側平面304〜307の互いに短辺方向に隣接するもの同士は、重なり部を有するが、主切刃、切削用コーナの角度には影響を及ぼさない。
チップ300が、ホルダのチップ保持部に、主平面303および側平面305,306がホルダに当接し、主平面302,側平面304,307が開放された状態で取り付けられる。主平面302がすくい面とされ、主平面302と側平面304との交線である辺330が主切刃とされる。また、切欠コーナ310に形成された切欠部320の切欠面332を画定する線(平面視)333の一部が副切刃とされる。
本実施例においては、図10(b)に示すように、切欠面332が副逃げ面とされるのであるが、ラジアル逃げ面θrは、芯上がりQに対応する中心角θoから側面視における切欠面332を画定する線334と線335との成す角度θbを引いた値
θr=θo−θb
とされる。また、切削半径Rをチップ300の側平面304の幅方向の長さLyで割った値は約4.5とされる。
さらに、芯上がりQは、幅方向の長さLyより小さく、幅方向の長さLyの1/2より大きい。
Ly/2<Q<Ly
ホルダが矢印の方向に回転させられつつ、送り方向に移動させられることにより、ワークに切削加工が施される。
本実施例においては、図10(b)に示すように、切欠面332が副逃げ面とされるのであるが、ラジアル逃げ面θrは、芯上がりQに対応する中心角θoから側面視における切欠面332を画定する線334と線335との成す角度θbを引いた値
θr=θo−θb
とされる。また、切削半径Rをチップ300の側平面304の幅方向の長さLyで割った値は約4.5とされる。
さらに、芯上がりQは、幅方向の長さLyより小さく、幅方向の長さLyの1/2より大きい。
Ly/2<Q<Ly
ホルダが矢印の方向に回転させられつつ、送り方向に移動させられることにより、ワークに切削加工が施される。
切欠コーナ310が摩耗した場合には、主平面302の中心の回りに90°回転させる。主平面303,側平面305,304がホルダに当接し、側平面307,306が開放される。主平面302はすくい面のままであるが、主平面302と側平面307との間の交線338が主切刃とされ、切欠コーナ314の切欠部324の切欠面を画定する線(平面視)339の一部が副切刃とされる。この姿勢で、切削加工が行われて、切欠コーナ314が摩耗すると、さらに、90°主平面302の中心の回りに回転させて、切欠コーナ315を使用する。このように、主平面302の中心の回りに90°ずつ回転させて、切欠コーナ310,314,315,311を使用した後、裏返し、主平面302がホルダに当接する状態で取り付ける。主平面303がすくい面とされ、同じ相対位置にある切欠コーナ312,316,317,313が順番に使用される。
このように、本実施例においては、1つの側平面において1つの切欠コーナが使用されることにより、主平面302がすくい面とされた状態で4つの切欠コーナを使用することができる。次に、主平面303をすくい面とした状態で、同様に、4つの切欠コーナを使用することができるのであり、合計8つの切欠コーナを同様の態様で使用することができる。
このように、本実施例においては、1つの側平面において1つの切欠コーナが使用されることにより、主平面302がすくい面とされた状態で4つの切欠コーナを使用することができる。次に、主平面303をすくい面とした状態で、同様に、4つの切欠コーナを使用することができるのであり、合計8つの切欠コーナを同様の態様で使用することができる。
図11に示すチップ350についても、図10に示す実施例と同様に主平面がすくい面として使用される。本実施例においては、主平面352,353を含む第1平面の形状が正三角形であるため、チップ350は主平面352,353の中心回りに120°ずつ回転させられることになる。また、切欠コーナ354〜359の数は合計6個となる。
チップ350は、一対の主平面352,353と、3つの側平面360,361,362とを含み、各切欠コーナ354〜359は、切欠部364〜369が形成されて成る。
ホルダにチップ350が保持された状態で、主平面352がすくい面とされ、主平面352と側平面360との交線370が主切刃とされ、切欠コーナ354に設けられた切欠部364の切欠面を画定する線(平面視)372の一部が副切刃とされる。
この状態で回転させつつ送り方向にワークに接近させることによりワークに穴加工が行われる。切欠コーナ354が摩耗すると、主平面352の中心の回りに120°回転させてホルダに取り付ける。主平面352と側平面361との交線372が主切刃とされ、切欠コーナ358に設けられた切欠部368の切欠面を画定する線374の一部が副切刃とされる。次に、切欠コーナ355が使用され、その後に、裏返して、主平面353をすくい面として、切欠コーナ356,357,359を順番に回転させつつ、使用することができる。
チップ350は、一対の主平面352,353と、3つの側平面360,361,362とを含み、各切欠コーナ354〜359は、切欠部364〜369が形成されて成る。
ホルダにチップ350が保持された状態で、主平面352がすくい面とされ、主平面352と側平面360との交線370が主切刃とされ、切欠コーナ354に設けられた切欠部364の切欠面を画定する線(平面視)372の一部が副切刃とされる。
この状態で回転させつつ送り方向にワークに接近させることによりワークに穴加工が行われる。切欠コーナ354が摩耗すると、主平面352の中心の回りに120°回転させてホルダに取り付ける。主平面352と側平面361との交線372が主切刃とされ、切欠コーナ358に設けられた切欠部368の切欠面を画定する線374の一部が副切刃とされる。次に、切欠コーナ355が使用され、その後に、裏返して、主平面353をすくい面として、切欠コーナ356,357,359を順番に回転させつつ、使用することができる。
以上のように、複数の実施例を記載したが、上記実施例をそれぞれ組み合わせた態様で、本発明を実施することができる。
また、本実施例においては、自動車のエンジンのシリンダボアを作成する場合に用いられる場合について説明したが、ワークの種類、用途は問わない。
その他、本発明は、前述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
また、本実施例においては、自動車のエンジンのシリンダボアを作成する場合に用いられる場合について説明したが、ワークの種類、用途は問わない。
その他、本発明は、前述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
ホルダ10、チップ12,200,210,230,230,232,250,280,300,350、アダプタ14、主平面20,21、252,282,302,303,352,353、側平面24〜27、234,236,254,284,304〜307,360〜362、切欠コーナ32〜39、202,212,232,244,256〜259,286〜289,310〜317,354〜359、主切刃51,218,330,334,370,372、副切刃57,234,332,372,374、ワーク160、チップブレーカ240,242
Claims (10)
- 内角が90°以下である多角形状を成した一対の第1平面と、それら第1平面をつなぐ複数の第2平面とを有し、それら複数の第2平面のうち互いに隣接する2つずつの第2平面と前記第1平面の各々とで形成される複数のコーナが、それぞれ切欠面により切り欠かれることによって前記第1平面が主平面とされ、前記互いに隣接する2つの第2平面が互いに隣接する2つの側平面とされるとともに、(a)前記主平面に直角な方向から見た平面視における切欠面を画定する線である主切欠線と前記主平面を画定する一辺との成す角度と、(b)前記互いに隣接する2つの側平面のうちのいずれか一方に直角な方向から見た側面視における切欠面を画定する線である側切欠線と前記いずれか一方の側平面を画定する一辺との成す角度との少なくとも一方が、90°以上とされたことを特徴とするボーリング用チップ。
- 前記平面視において、前記コーナが切り欠かれることにより形成されたコーナである切欠コーナの形状が、前記主平面の中心回りの回転対称となる形状を成し、前記側面視において、4つの前記切欠コーナのうち前記側平面の互いに対角位置にあるもの同士の形状が、その側平面の中心回りの回転対称となる形状を成した請求項1に記載のボーリング用チップ。
- 前記コーナの切り欠かれて除去される部分である切欠部の形状が、前記平面視において、前記主切欠線と、その主切欠線に隣接し、前記主平面を画定する第1辺および第2辺の延長線とで形成される三角形状を成し、前記第1辺の延長線と前記主切欠線とが成す角度と、前記第2辺の延長線と前記主切欠線とが成す角度とのうち小さい方が2°以上12°以下である請求項1または2に記載のボーリング用チップ。
- 前記コーナの切り欠かれて除去される部分である切欠部の形状が、前記側平面に直角な方向から見た側面視において、前記側切欠線と、その側切欠線に隣接し、前記側平面を画定する第3辺および第4辺の延長線とで形成される三角形状を成し、前記第3辺の延長線と前記側切欠線とが成す角度と前記第4辺の延長線と前記側切欠線とが成す角度とのうち小さい方が2°以上12°以下である請求項1または2に記載のボーリング用チップ。
- 前記主平面と前記側平面とのいずれか一方にチップブレーカが形成された請求項1ないし5のいずれか1つに記載のボーリング用チップ。
- 複数のボーリング用チップと、それらボーリング用チップを周方向に互いに間隔を隔てて保持するホルダとを含むボーリング用カッタであって、
前記ボーリング用チップの、副切刃の旋回軌跡に対する接線と副逃げ面との成す角であるラジアル逃げ角が10°以下とされたことを特徴とするボーリング用カッタ。 - 前記ボーリング用チップのすくい角がネガティブとされた請求項6に記載のボーリング用カッタ。
- 前記ボーリング用チップが、前記請求項1ないし5のいずれか1つに記載のボーリング用チップである請求項6または7に記載のボーリング用カッタ。
- 前記ボーリング用チップが前記請求項1ないし3,5のいずれか1つに記載のボーリング用チップであり、そのボーリング用チップの前記第1平面の一辺が、前記ホルダの一半径に直角であり、かつ、前記ボーリング用チップの主切刃が、前記一半径と前記第1平面の一辺またはその一辺の延長線との交点に対して、前記ホルダの回転方向前方に位置する姿勢で、前記ボーリング用チップが前記ホルダに保持されるとともに、前記ボーリング用チップの前記第1平面の一辺の長さをLとし、前記主切刃の半径方向における先端と前記ホルダの回転中心とを結ぶ線分の長さである切削半径をRとした場合においてR/Lの値が2以上10以下である請求項6または7に記載のボーリング用カッタ。
- 前記ホルダに保持されたボーリング用チップの個数が予め定められた10個以下である請求項6ないし9のいずれか1つに記載のボーリング用カッタ。
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JP2008195192A JP2010029988A (ja) | 2008-07-29 | 2008-07-29 | ボーリング用チップおよびボーリング用カッタ |
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JPH04152013A (ja) * | 1990-10-15 | 1992-05-26 | Mitsubishi Materials Corp | スローアウェイ式カッタ及びスローアウェイチップ |
-
2008
- 2008-07-29 JP JP2008195192A patent/JP2010029988A/ja active Pending
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