JP2010024495A - 焼結金属製部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い耐食性を有すると共に、摺動性や耐摩耗性にも優れた焼結金属製部品を提供する。
【解決手段】マルテンサイト系またはフェライト系ステンレス鋼組織と、硫化マンガン組織とを有する焼結金属製部品であって、さらにニッケル組織を有する焼結金属製部品を提供する。この場合、ニッケル組織の全体に占める割合は例えば1wt%以上10wt%以下に調整される。また、硫化マンガン組織の全体に占める割合は例えば1.5wt%以上2.5wt%以下に調整される。
【選択図】図4

Description

本発明は焼結金属製部品に関し、特に高い耐食性を有する焼結金属製部品に関する。
焼結金属製部品は、その高い成形性と低コスト性との利点を有することから、種々の工業用部品に利用されている。ここで滑り軸受を例にとると、自動車エンジンの燃料ポンプ用の滑り軸受など、腐食環境下で使用される滑り軸受には高い耐食性を有するものが要求され、実際に使用されている。特に最近では、以下に述べる理由から、これまで以上に高い耐食性を備えた焼結金属製滑り軸受の出現が期待されている。
すなわち、近年のCO2削減等による環境負荷低減を目的として、従来の石油等の化石
燃料に代えてバイオエタノールをはじめとする自動車用のバイオガソリンが開発され、また、実際に導入が開始されつつあるが、この種のガソリンは従来の化石燃料系ガソリンに比べて硫黄や有機酸等の不純物の割合が高い。そのため、このような不純物を多く含むガソリンをエンジンに圧送するための燃料ポンプ用軸受には、高い耐酸性(酸腐食に対する耐久性)が要求される。
上記腐食環境下に適した軸受として、例えば下記特許文献1に記載の焼結金属製軸受が知られている。すなわち、この焼結金属製軸受は、Ni:21〜35%、Sn:5〜12%、C:3〜7%、P:0.1〜0.8%を含有し、残部:Cuおよび不可避不純物からなる成分組成を有するCu−Ni系焼結合金からなる滑り軸受であって、軸受の表面に開放されて形成されている開気孔の内面、該開気孔の少なくとも開口部周辺および該軸受内部に内在する気孔の内面にSn:50質量%以上を含有するSn高濃度合金層が形成されている組織を有するものである。
特開2006−199977号公報
上記特許文献1に記載の焼結合金製軸受では、開孔部やその周辺にSn高濃度合金層を形成することで耐食性を高めようとしているが、基本的にCuを素地とする焼結合金製軸受の場合、耐酸腐食性、特に硫化腐食に対する耐久性に乏しく、上述のように組成やその配合割合を変えたとしても十分な改善を図ることは難しい。
また、上述のようにガソリン浸漬下で使用される場合、軸受内部に潤滑油を含浸させても軸受外部に流れ出てしまう。そのため、この種の軸受には、耐食性だけでなく、無含油状態においても高い摺動性や耐摩耗性が求められる。
上述の問題は何も焼結金属製の滑り軸受に限ったことではなく、当該軸受に支持される回転軸や転がり軸受、あるいはトルクリミッタなど他の機械要素を焼結金属製とする場合にも同様に起こり得る。すなわち、転がり軸受の間座や保持器など直接的にはガソリン浸漬下で使用される可能性の低い機械要素についても、酸性ガスに曝されるなど間接的に酸腐食環境下におかれる場合もあり得るからである。また、これらの機械要素には、耐食性だけでなく、当然に摺動性や耐摩耗性に優れたものが要求されるためである。
以上の事情に鑑み、高い耐食性を有すると共に、摺動性や耐摩耗性にも優れた焼結金属製部品を提供することを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
本発明は、前記課題の解決を図るためになされたものである。すなわち、この焼結金属製部品は、マルテンサイト系またはフェライト系ステンレス鋼組織と、硫化マンガン組織とを有する焼結金属製部品であって、さらにニッケル組織を有する点をもって特徴づけられる。
上記構成の焼結金属製部品は、以下に述べる理由から従前の焼結金属製部品に比べて耐食性、摺動性、および耐摩耗性の点で優れた性能を発揮し得る。すなわち、ステンレス鋼組織は鉄を素地とするクロムの合金組織であり、その表面に酸化クロムの不動態膜を形成する。そのため、外気や水分に曝される環境下においても高い耐食性を発揮することができる。また、硫化マンガン組織は固体潤滑剤として機能するため、ステンレス鋼を素地としつつも良好な摺動性を得ることができる。さらに、本発明では、マルテンサイト系またはフェライト系ステンレス鋼組織とは別にニッケル組織を設けるようにしたので、酸化クロムによる不動態膜の密着性を向上させて、または不動態膜の形成能力を高めて上記ステンレス鋼組織による耐食性(特に耐酸腐食性)を強化することができる。また、硫化マンガン組織自体は耐酸腐食性に優れたものではないが、上述のようにニッケル組織を設けることで硫化マンガン組織を保護して、部品全体としての耐食性をさらに向上させることができる。上記の作用効果はニッケル組織を単独に設けることによりはじめて得ることができる。さらに、ニッケル組織によれば摺動摩耗に対する抑制効果を得ることができるので、耐摩耗性の向上を図ることもできる。
これら優れた作用を奏するニッケル組織からなるニッケル粉末は、マルテンサイト系またはフェライト系ステンレス鋼粉末の焼結温度で焼結可能であることから、例えばマルテンサイト系またはフェライト系ステンレス鋼粉末に硫化マンガン粉末およびニッケル粉末を配合し、これを圧粉成形した後焼結することで、上記組織を有する焼結金属製部品を得ることができる。
ここで、ニッケル組織の全体に占める割合は1wt%以上10wt%以下に調整されていてもよく、また、1wt%以上5wt%以下に調整されていてもよい。ニッケル組織の全体に占める割合を1wt%以上とすることで、本来ニッケル組織により得るべき耐食性や耐摩耗性を確保することができる。また、ニッケル組織の含有割合が10wt%以下であれば相当割合のステンレス鋼組織を確保できるので、その用途に応じて所要の強度や剛性、硬度を有する焼結金属製部品を得ることができる。
また、硫化マンガン組織の全体に占める割合は0.5wt%以上10wt%以下に調整されていてもよく、1.5wt%以上2.5wt%以下に調整されていてもよく、さらには、1.6wt%以上1.9wt%以下に調整されていてもよい。硫化マンガン組織が少なくとも0.5wt%以上含まれるようにすれば、この硫化マンガン組織による摺動性の改善効果を十分に得ることができる。また、硫化マンガンの含有割合が10wt%を超えなければ、粉末段階での流動性やプレス性が悪化して成形が困難になることもない。また、本発明に係る焼結金属製部品を高負荷あるいは高速回転下で使用される機械要素に適用する場合、硫化マンガン組織の含有割合を1.5wt%以上2.5wt%以下とすることで良好な摺動特性を得ることができる。特に、1.6wt%以上1.9wt%以下の範囲内であれば、動摩擦係数を非常に小さくすることができ、硫化マンガン組織を含有させることによる摩擦低減効果を最大限に享受することができる。
上記硫化マンガン組織の含有割合は、本焼結金属組織中に含まれるニッケル組織の含有割合との関係で定めることができる。すなわち、マルテンサイト系またはフェライト系ステンレス鋼組織を有する場合、硫化マンガン組織を多く含有するほどその摺動性を高めることができるが、一方で硫化マンガン自体の耐食性はそれほど高くないため、硫化マンガ
ン組織の含有割合に応じてニッケル組織の含有割合を定める必要がある。この点、上記の含有バランス、すなわち、ニッケル組織の含有割合を1wt%以上5wt%以下とし、かつ、硫化マンガン組織の含有割合を1.5wt%以上2.5wt%以下とすることで、耐食性と摺動特性とを共に高いレベルで発揮することができる。
以上の説明に係る焼結金属製部品は、耐酸腐食性をはじめ摺動特性や耐摩耗性にも優れていることから、例えば自動車エンジンの燃料ポンプ用軸受など、特に高い耐食性を必要とする環境下において好適に使用することができるが、特に滑り軸受用途に限られない。マルテンサイト系ステンレス鋼であれば、他のステンレス鋼に比べて強度や硬度などの機械的特性に優れているため、また、フェライト系ステンレス鋼であれば、焼入れ等の熱処理により硬度などの機械的特性を容易に向上可能であるため、例えば滑り軸受により支持される軸部材や、転がり軸受の内輪や外輪、転動体、あるいはこれら転動体を保持する間座や保持器などに適用することができる。もちろん、軸受用途に限らず、各種動力伝達要素としての歯車やトルクリミッタの内輪あるいは軸など、摺動性や耐摩耗性および耐食性が要求される全ての機械要素に使用することができる。
以上のように、本発明によれば、高い耐食性を有すると共に、摺動性や耐摩耗性にも優れた焼結金属製部品を提供することができる。
以下、本発明に係る焼結金属製部品の一実施形態を説明する。
本発明に係る焼結金属製部品は、マルテンサイト系ステンレス鋼組織と硫化マンガン組織、および、ニッケル組織とを有する焼結金属組織を有する。または、フェライト系ステンレス鋼組織と硫化マンガン組織、および、ニッケル組織とを有する焼結金属組織を有する。
上記焼結金属組織を構成するマルテンサイト系ステンレス鋼組織は、少なくとも11wt%以上のクロム成分を含有するものであればよく、その組成比率については特に限定されない。同様に、上記焼結金属組織を構成するフェライト系ステンレス鋼組織は、少なくとも11wt%以上のクロム成分を含有するものであればよく、その組成比率については特に限定されない。ここでは、マルテンサイト系ステンレス鋼の例としてSUS403やSUS420J2(何れも13Cr)を、フェライト系ステンレス鋼の例としてSUS430(18Cr)をそれぞれ挙げることができる。
この際、ニッケル組織の全体に占める割合が1wt%以上10wt%以下、好ましくは1wt%以上5wt%以下となるようにニッケル組織の含有割合が調整される。もちろん、用途によって必要となる耐食性の程度も異なるため、必要となる特性の程度に応じて、かつ、上記含有割合の範囲内(1wt%以上10wt%以下)においてニッケル組織の含有割合を調整するのがよい。
また、ステンレス鋼組織と共に焼結金属組織を構成する硫化マンガン組織は、固体潤滑剤として作用させることを目的として配合される。かかる観点から、硫化マンガン組織の全体に占める割合は、0.5wt%以上10wt%以下とするのが好ましく、1.5wt%以上2.5wt%以下とするのがより好ましく、1.6wt%以上1.9wt%以下とするのがさらに好ましい。硫化マンガン組織の含有割合が0.5重量%未満だと、固体潤滑剤としての機能を十分に発揮することが難しいためである。また、10重量%を超えて硫化マンガン組織を含有させた場合、摺動面等における摩擦係数の低減効果はあまり期待できず、あるいは、既述の通り、成形性の低下や、ステンレス鋼組織の減少による部品強
度の低下を招くおそれがあるためである。
なお、以上の組織に加えて、他の金属又は非金属組織が含まれていてもよく、例えば加工性(成形性)を向上させる目的でさらに銅組織が含まれていてもよい。すなわち、上記焼結金属製部品は、マルテンサイト系またはフェライト系ステンレス鋼組織と、硫化マンガン組織、ニッケル組織、および、銅組織とを有する焼結金属組織からなるものであってもよい。
上記構成の組織からなる焼結金属製部品の体積率(気孔率)は、実際の用途に合わせて設定するのがよく、例えば5wt%以上25wt%以下の間で設定される。また、上記自動車エンジンの燃料ポンプ用軸受やトルクリミッタの内輪やその軸、あるいは歯車のように、動力伝達要素として使用する場合には、軸受強度を高めるために、なるべく体積率を小さく(例えば5wt%以上15wt%以下)するのがよい。なお、ここで、「気孔率」とは、焼結金属製部品の単位体積当たりに占める各内部空孔の容積の総和の割合をいい、具体的には以下の式によって算出される。
気孔率[%]=100−密度比[%]=[1−(ρ1/ρ0)]×100
ρ1:焼結金属製部品の密度(測定方法は、JIS Z 2501 乾燥密度の欄を参照)
ρ0:焼結金属製部品と同一組成の物質の真の密度
気孔率は密度比の増加に伴いほぼ線形的に低下することが分かっており、従って、密度比を求めることで気孔率を得ることができる。
表面開孔率に関しても、実際の用途に合わせて設定すればよく、例えば上記自動車エンジンの燃料ポンプ用途の場合であれば、高負荷および高速回転下での使用態様を考慮して、表面開孔率を10%以下、好ましくは5%以下に設定するのがよい。ここで、「表面開孔」とは、多孔質組織である焼結金属製部品中に含まれる細孔が外表面に開口した部分をいう。また、「表面開孔率」とは、外表面の単位面積内に占める表面開孔の面積割合をいい、以下の条件で測定、評価されるものをいう。
[測定器具]
金属顕微鏡:Nikon ECLIPSS ME600
デジタルカメラ:Nikon DXM1200
写真撮影ソフト:Nikon ACT−1 ver.1
画像処理ソフト:イノテック製 QUICK GRAIN
[測定条件]
写真撮影:シャッタースピード0.5秒
2値化しきい値:235
また、上記焼結金属製部品は種々の機械要素として提供することができる。具体例として軸受(滑り軸受)に適用した場合、例えば図1〜図3に示す代表的軸受形状を挙げることができる。図1に示す焼結金属製軸受1はいわゆるスリーブ形と呼ばれるもので、外径、内径共に軸方向にわたって一定の寸法を有する略円筒形状をなすものである。また、図2に示す焼結金属製軸受2はいわゆるスフェリカル形と呼ばれるもので、内周面は軸方向にわたって一定の内径寸法を有する一方、その外周面の一部または全面は部分球面状をなすものである。さらに、図3に示す焼結金属製軸受3はいわゆるフランジ形と呼ばれるもので、図1に示す形状(略円筒形状)の焼結金属製軸受の軸方向一端を外径側に張り出させて、当該箇所にフランジ部3aを設けた形状をなすものである。これらは、その用途、特に組込み先となる各種機器の取付け部品の形状やその取付け態様に応じて適切に選択、使用される。
上記組織形態に係る焼結金属製部品は、例えば以下に示す方法で製造される。すなわち、原料となるマルテンサイト系ステンレス鋼粉末とフェライト系ステンレス鋼粉末の何れ
か一方と硫化マンガン粉末、および、ニッケル粉末との混合粉末を所定の形状に圧縮成形する工程(a)、圧粉成形体を焼結する工程(b)、および、必要に応じて、焼結体に対してサイジングを施す工程(c)の3工程を経て製造される。以下、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末を使用する場合を例にとり説明するが、フェライト系ステンレス鋼粉末を使用する場合も同様の手順を踏むことで製造可能であることはもちろんである。
まず、圧粉成形工程(a)に関し、V型混合器等でマルテンサイト系ステンレス鋼粉末に硫化マンガン粉末およびニッケル粉末を混合した原料粉末を作成する。ここで使用する各粉末の粒径は以下に示す通りである。すなわち、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末:粒径150μm以下、硫化マンガン粉末:粒径180μm以下、ニッケル粉末:粒径100μm以下 のものがそれぞれ使用される。この場合、ニッケル粉末の粒径は、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末の粒径より小さく、また、硫化マンガン粉末の粒径より小さい。マルテンサイト系ステンレス鋼粉末と硫化マンガン粉末との関係では、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末の粒径が硫化マンガン粉末の粒径より小さい。また、上記粉末混合に際し、各粉末の混合比率は、上述した完成品における各成分の含有割合に準じて設定される。例えば、ニッケル粉末の混合粉末全体に占める割合が1wt%以上5wt%以下であって、かつ、硫化マンガン粉末の混合粉末全体に占める割合が1.5wt%以上2.5wt%以下となるように、各粉末を混合する。この際、混合の順序は特に問わず、硫化マンガン粉末にニッケル粉末を混合したものを、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末に混合してもよく、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末に硫化マンガン粉末を混合した後、さらにニッケル粉末を混合するようにしてもよい。もちろん、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末にニッケル粉末を混合した後、硫化マンガン粉末を混合してもよく、あるいは、三種の粉末を同時に混合するようにしてもよい。さらに他種の粉末を混合する場合においてもその混合順序は任意である。
次に、完成品に準じた形状(例えば図1〜3に示す滑り軸受の円筒形状や、後述する図4に示すトルクリミッタの内輪形状、あるいは、同じく後述する図5に示す転がり軸受の間座形状)の粉末充填空間を有する成形用金型を用意し、この金型内の充填空間に上記原料粉末を供給し、所定圧力でプレスすることで、上記金型に対応する形状の圧粉成形体を得る。
次に、上記圧粉成形体を、主成分たる粉末、ここではマルテンサイト系ステンレス鋼粉末の焼結温度(例えば1100℃以上1200℃以下)まで加熱し所定時間保持した後、常温まで自然冷却する。これにより、マルテンサイト系ステンレス鋼粉末と硫化マンガン粉末とが相互に焼結されると共に、ニッケル粉末も焼結され、これにより、マルテンサイト系ステンレス鋼組織と硫化マンガン組織、および、ニッケル組織とを有する焼結金属組織からなる焼結体を得ることができる(焼結工程(b))。
このようにして得られた焼結体の寸法ないし形状を矯正する目的で焼結体に対してサイジングを実施することで(サイジング工程(c))、焼結金属製部品が完成する。このサイジングにより、焼結体が完成品に準じた寸法ないし形状に整形されると共に、摺動面が存在する場合には、当該摺動面(滑り軸受であれば内周面、軸受により支持される回転軸やトルクリミッタの内輪であれば外周面、転がり軸受の間座であれば転動体と対向する平板面など)の表面開孔率が所定の大きさ(例えば10%以下)に調整される。なお、摺動面が内周面である場合には、内周面における表面開孔の個数を少なくし、もしくは個々の開口面積をさらに小さくする目的で、上記サイジングと併せて、あるいは上記サイジングに代えて回転サイジングを施すことも可能である。
また、使用環境や要求特性に応じて、焼結金属製部品に潤滑剤を含浸させることも可能である。この場合、焼結工程後あるいはサイジング工程後の焼結体に例えば真空含浸等の
手法を用いて内部気孔に潤滑剤を含浸させることができる。潤滑剤としては、公知の機械潤滑用の潤滑油やグリースを使用することができる。また、より高温腐食環境下に適した潤滑油あるいは潤滑グリースとして、エステル系合成油を基油として有し、かつ、有機金属化合物を耐摩耗剤として、スルホン酸金属塩を防錆剤としてそれぞれ含有する組成を有するものを採用することもできる。あるいは、焼結工程後に焼結金属製部品の特性改善を図る目的で各種熱処理を施すこともできる。この場合、当該熱処理は、潤滑剤の含浸工程がある場合には、その含浸前に行うようにするのがよい。また、サイジング工程を含む場合には、例えば硬化目的でない限り、上記熱処理をサイジングの前後何れに行っても構わない。
なお、上記製造工程例では、最初に硫化マンガン粉末を用意し、これをマルテンサイト系ステンレス鋼粉末およびニッケル粉末に混合する場合を説明したが、これに代えて、硫黄粉末とマンガン粉末との混合粉末を、ステンレス鋼粉末およびニッケル粉末に混合して原料粉末を作成し、これを焼結することによっても、ステンレス鋼組織と硫化マンガン組織、および、ニッケル組織とを有する焼結体(焼結金属製部品)を得ることができる。ステンレス鋼の焼結温度にまで加熱することで圧粉成形体中の硫黄とマンガンとが反応し、焼結と同時に硫化マンガン組織を生成することができるためである。なお、この場合、結果物としての焼結金属製部品中にマンガン単独の組織が残存していてもよい。
以上の説明に係る焼結金属製部品は、腐食環境下、特に硫酸腐食環境下における耐食性、および、摺動性や耐摩耗性に優れたものであるため、例えば自動車エンジンの燃料ポンプ用の滑り軸受など、腐食流体浸漬下での用途に図1〜図3に例示の形態で好適に使用することができる。もちろん、無含油での使用に限ることはなく、潤滑油や潤滑グリース等の潤滑流体を含浸させた状態で使用することも可能であるが、上述の通り特に滑り軸受用途に限られない。マルテンサイト系ステンレス鋼組織を有する場合であれば、他のステンレス鋼に比べて強度や硬度などの機械的特性に優れているため、例えば軸受により支持される軸部材や、トルクリミッタの内輪やその軸、歯車等の動力伝達要素用途として好適である。また、フェライト系ステンレス鋼であれば、マルテンサイト系ステンレス鋼組織よりも耐食性に優れ、また、加工性も比較的良好であるため、例えば転がり軸受の転動体を保持する間座や保持器としても好適である。
図4は、上記用途の一例を示すもので、本発明に係る焼結金属製内輪4を組み込んだトルクリミッタ10の断面図を示している。このトルクリミッタ10は、例えばプリンタや複写機の給紙装置の紙の重送防止機構として好適に使用されるもので、上記工程を経て製造された焼結金属製の内輪4とその外側に回転自在に配設される外輪11と、外輪11と内輪4との間に組み込まれる締結力付与部材としてのコイルばね12と、外輪11の一端に固定され、外輪11と一体に回転する環状部材15とを主たる構成要素として備える。このうち、コイルばね12は、主に、内側に配置された内輪4の外周面(摺動面)を締め付ける小径部12aと、小径部12aと連続し、かつ小径部12aより大径の大径部12bとからなる。また、この図示例では、小径部12aの端部を折曲してなる一方の折曲部13を、外輪11の内側端面に設けた凹部に嵌合すると共に、大径部12bの端部を折曲してなる他方の折曲部14を、外輪11に固定した環状部材15の内側端面に設けた凹部に嵌合することで、コイルばね12を外輪11に固定している。また、内輪4には適当な潤滑剤(潤滑油など)が予め含浸されており、コイルばね12との摺動面に当該潤滑剤が滲み出るように構成されている。
上記構成のトルクリミッタにおいて、例えば環状部材15の側から見て、内輪4をコイルばね12の巻方向と同方向に回転させると、コイルばね12の小径部13aは内輪4から縮径する向きの力を受け、内輪4を締付ける。このため、内輪4の回転はコイルばね12を介して外輪11に伝達され、外輪11が内輪4と同じ方向に回転する。
外輪11への負荷(回転に抗する負荷)が増し、小径部13aの内輪4への締付け力が内輪4から受ける回転トルクを下回ると、内輪4と小径部13aとの間で滑りが生じ、外輪11への回転トルクの伝達が遮断される。
また、内輪4をコイルばね12の巻方向と逆方向に回転させると、コイルばね12の小径部13aが拡径し、内輪4と小径部13aとの間で滑りが生じることで、外輪11への回転トルクの伝達が遮断される。
なお、上記用途例では、内輪4を焼結金属製部品とした場合を例示したが、もちろん、これに限ることはなく、例えば内輪4が嵌合固定される軸(図4中1点鎖線で示す部材)を焼結金属製部品とすることも可能である。
図5は、上記用途の他の例を示すもので、本発明に係る焼結金属製の間座5を組み込んだ転がり軸受(円筒ころ軸受)20の要部断面斜視図を示している。この転がり軸受は、内輪21と、外輪22と、転動体としての複数の円筒ころ23と、円筒ころ23と同数の間座5とで構成されている。内輪21は片つば付きで、外輪22は両つば付きである。円筒ころ23は内輪21の軌道面と外輪22の軌道面との間で転動自在で、隣り合う円筒ころ23,23間に間座5を介在させた配置関係を有する。間座5は概ね板状で、その両面に円筒ころ23の転動面23aと対向接触する平板状のころ接触面5aを有する。間座5の長手方向の両端には、円筒ころ23の端面と向かい合う面をもった拡張部が形成されており、間座5の軸方向への移動が規制されるようになっている。
なお、上記用途例では、円筒ころ23,23間に間座5を配置した構成を例示したが、間座5に代えて保持器を採用し、かつ、その場合に保持器を焼結金属製部品としても構わない。
本発明に係る焼結金属製部品を滑り軸受に適用した場合の滑り軸受の一例を示す断面図である。 焼結金属製部品としての滑り軸受の他の例を示す断面図である。 焼結金属製部品としての滑り軸受の他の例を示す断面図である。 本発明に係る焼結金属製部品の用途の一例を示した図であって、内輪を当該焼結金属製部品としたトルクリミッタの断面図である。 本発明に係る焼結金属製部品の用途の他の例を示した図であって、間座を当該焼結金属製部品とした円筒ころ軸受の要部断面斜視図である。
符号の説明
1,2,3 焼結金属製軸受
4 焼結金属製内輪
5 焼結金属製間座
10 トルクリミッタ
20 円筒ころ軸受

Claims (10)

  1. マルテンサイト系またはフェライト系ステンレス鋼組織と、硫化マンガン組織とを有する焼結金属製部品であって、さらにニッケル組織を有する焼結金属製部品。
  2. 前記ニッケル組織の全体に占める割合が1wt%以上10wt%以下に調整されている請求項1に記載の焼結金属製部品。
  3. 前記ニッケル組織の全体に占める割合が1wt%以上5wt%以下に調整されている請求項2に記載の焼結金属製部品。
  4. 前記硫化マンガン組織の全体に占める割合が0.5wt%以上10wt%以下に調整されている請求項1〜3の何れかに記載の焼結金属製部品。
  5. 前記硫化マンガン組織の全体に占める割合が1.5wt%以上2.5wt%以下に調整されている請求項4に記載の焼結金属製部品。
  6. 滑り軸受として使用される請求項1〜5の何れかに記載の焼結金属製部品。
  7. トルクリミッタの内輪として使用される請求項1〜5の何れかに記載の焼結金属製部品。
  8. 請求項7に記載の焼結金属製部品を内輪として備えるトルクリミッタ。
  9. 転がり軸受を構成する転動体の間座として使用される請求項1〜5の何れかに記載の焼結金属製部品。
  10. 請求項9に記載の焼結金属部品を転動体の間座として備える転がり軸受。
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