JP2010013811A - 柱梁接合部コア、及びこれを用いた柱梁接合部構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】角形鋼管柱とH形鋼梁との柱梁接合部に柱の一部として用いられる厚肉角形鋼管であるノンダイアフラム型の柱梁接合部コアであって、角部内Rが柱梁接合部コアの管径の0.08〜0.25倍となる断面形状を有することを特徴とする。角部内Rがこの範囲であれば、最大効率断面に対する面外変形耐力の効率を97%以上確保することができ、効率的な断面形状が得られる。
【選択図】図7
Description
この種の柱梁接合部コアは、梁に作用する曲げモーメント等の応力に対する十分な耐力を持たせるために、短尺角形鋼管に補強としてダイアフラムを溶接固定した構造のものが一般に用いられるが、ダイアフラムを持たない短尺の厚肉角形鋼管からなるいわゆるノンダイアフラム型の柱梁接合部コアを用いる場合もある。
図13(ロ)で角形鋼管柱2の外径(辺寸法)をA0、板厚をt0、柱梁接合部コア1の外径(辺寸法)をA、板厚をt、角部内アール(角部内R)をRで示す。
また、梁に作用する曲げモーメント等の応力に対する充分な耐力を有して柱に応力を伝達できるという条件を満たす必要がある。
このような条件を満たす柱梁接合部コアの断面形状を設定するに際して、前者の単なる外形の条件だけであれば簡単に定めることができるが、後者の耐力の条件を含めて定めるのは必ずしも簡単でない。すなわち、経済性を考慮しなければ、耐力が確実に得られるように十分に余裕を持たせた大サイズの厚肉角形鋼管を用いれば済むが、無用に大サイズとせずに要求耐力を満たす効率的な断面形状を設定することは必ずしも簡単ではない。
経済性は材料重量によるので、効率的な断面形状とは、断面積一定の条件のもとで最大の耐力が得られる断面形状である。
この面外変形耐力の算出方法は、図11(イ)の厚肉角形鋼管のような角部内Rのない断面形状について日本建築学会「鋼構造接合部設計施工指針」により提案されている。
これは、面外変形耐力を大きくするためには図11(ロ)の厚肉角形鋼管のような角部内Rを持つ断面形状が有利であるが、柱梁接合部コアとして使用できるサイズの厚肉角形鋼管が規格品には存在しないため、4枚の厚肉鋼板を四角形に組み溶接接合した厚肉角形鋼管(図11(イ)の断面形状)が柱梁接合部コアとして広く使用されており、その断面形状を想定しているためである。
しかし、前記の通り、角部内Rを持つ断面形状とすることで効率的な断面形状が得られることの利点は大きい。そこで、本発明者らは、解析により角部内Rの影響を評価して、柱梁接合部コア(厚肉角形鋼管)の断面積を一定とした場合の角部内Rと面外変形耐力の関係を、複数の柱梁接合部コアのサイズと複数のH形鋼梁のサイズとの関係において調べた。その結果、断面積一定の条件のもとで最大の面外変形耐力が得られる断面形状となる角部内Rの範囲が得られた。
本発明は上記背景のもとになされたもので、より小さい断面積で要求耐力を満足することが可能な断面形状の柱梁接合部コア、及び、これを用いた柱梁接合部構造を提供することを目的とする。
角部内Rが柱梁接合部コアの管径の0.08〜0.25倍となる断面形状を有することを特徴とする。
角形の一方の対角線方向の2つの角部内Rが柱梁接合部コアの管径の0.08〜0.25倍であり、他方の対角線方向の2つの角部に内Rがないかあるいは充分小さい内Rの断面形状を有することを特徴とする。
角形鋼管柱の外径より0〜4mmの範囲で大きな外径であることを特徴とする。
建築物の上下階の角形鋼管柱が、請求項1〜3のいずれかの柱梁接合部コアを介して溶接接合されるとともに、この柱梁接合部コアにH形鋼梁が溶接接合されたことを特徴とする。
日本建築学会「鋼構造接合部設計施工指針」において、図11(イ)に示すような角部内Rのない断面形状の厚肉角形鋼管について、面外変形耐力を算出する方法が提案されている(第4章 柱梁接合部 4.2.5 ノンダイアフラム形式中空断面柱梁接合部 (1)全塑性曲げ耐力 1)H形断面梁の場合/(C4.34)式、(C4.35)式、図(C4.42)、図(C4.43)など参照)。
面外変形耐力について簡単に説明すると、図14に示すように、H形鋼梁が接合される角形鋼管柱の壁面には上下の梁フランジからモーメントを受けるため、角形鋼管柱の壁面に面外方向に変形が生じる。この面外方向の変形が面外変形(面外方向変形)であり、鋼管壁に生じるこの面外方向変形により梁端接合部の局部回転変形が顕著になるときの梁端モーメントを面外変形耐力jMpとしている
すなわち、図11(イ)の板厚が管径×0.1である角部内Rなし柱梁接合部コア(角部内Rなし厚肉角形鋼管)と径(管径)及び断面積が同一であるが角部内Rを持つ図11(ロ)のような角部内R付き柱梁接合部コア(角部内R付き厚肉角形鋼管)について、角部内Rを種々変化させて時の面外変形耐力を算出した。
算出の対象とした柱梁接合部コアのサイズは、□150、□175、□200、□250、□300、□350、の6サイズである。
ここで、例えばサイズ□200の柱梁接合部コアとは、一辺が200mmの正方形の角形鋼管柱(規格の□200×200角形鋼管)2に用いる柱梁接合部コアという意味であり、したがって、□200で示した柱梁接合部コアの実際の管径(一辺の長さ)は、規格の□200×200角形鋼管を用いた角形鋼管柱の外径より約0〜4mmの範囲で大きい。
また、対象としたH形鋼梁のサイズは、
H100*50 (1)、H125*60 (2)、H150*75 (3)、H175*90 (4)、
H200*100(5)、H250*125(6)、H300*150(7)、H350*175(8)、
H400*200(9)、H450*200(10)、H500*200(11)、
H148*100 (12)、H194*150(13)、H244*175(14)、H294*200(15)、
H340*250(16)、H390*300(17)、
H100*100(18)、H125*125 (19)、H150*150(20)、H175*175(21)、
H200*200(22)、H250*250(23)、H300*300(24)、H350*350(25)、
である。
ここで、例えばH200*100とは、H形鋼の高さ(梁成)が200mm、フランジ幅(梁幅)が100mmであるサイズを示す。
( )内の数字は対象としたH形鋼梁のサイズ種番号である。なお、後述する図9、図10のグラフ中において各点に添えた数字は、このH形鋼梁サイズ番号を示す。
すなわち、管径が150mm(□150)、板厚が管径×0.1(15mm)、角部内Rが0の柱梁接合部コア(図11(イ)の角部内Rなし柱梁接合部コア)を基準として、その角部内Rなし柱梁接合部コアの断面積と同一の断面積で角部内Rを種々変化させた柱梁接合部コア(図11(ロ)の角部内R付き柱梁接合部コア)について、それぞれ面外変形耐力を算出し、かつ、要求耐力に対する面外変形耐力の比率を算出し、そして、角部内Rを横軸とし要求耐力に対する面外変形耐力の比率を縦軸としてグラフにしたものが図1である。
この場合、角部内R付き柱梁接合部コアの板厚は、断面積一定であるから、角部内Rの値に応じて変化する。
ここで、要求耐力は、柱梁接合部まわりの設計を簡便にするため、柱梁接合部コアの面外変形耐力が柱または梁に対して保有耐力接合を満足するための耐力としている。
なお、柱梁接合部における面外変形耐力の特性として、梁幅が大きくなるほど、また、梁成が小さくなるほど要求耐力に対する面外変形耐力は厳しくなる(梁幅が大きくなるほど要求耐力が大きくなり、梁成が小さくなるほど面外変形耐力が小さくなる)。
この場合、基準となる角部内Rなし柱梁接合部コアの板厚は17.5mm(管径×0.1)としている。
この場合、基準となる角部内Rなし柱梁接合部コアの板厚は20mm(管径×0.1)としている。
この場合、基準となる角部内Rなし柱梁接合部コアの板厚は25mm(管径×0.1)としている。
この場合、基準となる角部内Rなし柱梁接合部コアの板厚は30mm(管径×0.1)としている。
この場合、基準となる角部内Rなし柱梁接合部コアの板厚は35mm(管径×0.1)としている。
同図においてそれぞれ、曲線aは□150、曲線bは□175、曲線cは□200、曲線dは□250、曲線eは□300、曲線fは□350についてのものである。
図4の□250の場合を拡大した図8を例にして説明すると、まず、あるH形鋼梁サイズk(kは10種のうちの1つを示す)において要求耐力に対して最大となる面外変形耐力の比率(kSmax)を求める(すなわち、曲線kのなかで最も高い位置の値)。
次いで、横軸の特定の角部内Rj(Rjは連続的な数値であるが、ここでは管径×0.05, 0.1, 0.15, 0.2, 0.25, 0.3のうちの1つと考える。この場合Rj=0.1を例にしている)における前記H形鋼梁サイズkの要求耐力に対する面外変形耐力の比率(kSj)を求める。
前記最大面外変形耐力比率(kSmax)に対する前記特定の角部内Rjにおける面外変形耐力比率(kSj)の割合(kSj/kSmax=kfj)を求める。
同様な計算を各H形鋼梁サイズ(k=1、2、・・・、9、10の10種類))について行い、それらの平均値を算出する。すなわち、(1fj+2fj+・・・+9fj+10fj)÷10=Fjを算出する(平均値をFjとしている)。
横軸の各角部内Rj(管径×0.05, 0.1, 0.15, 0.2, 0.25, 0.3)についてそれぞれ前記平均値Fjに相当する平均値を算出することにより、図7における1つの柱梁接合部コア(上記では□250)についての曲線を得る。
他のコアサイズ(□150、□175、□200、□300、□350)についても、上記の操作をして、図7の6つの曲線からなるグラフが得られる。
すなわち、図9は算出対象としたH形鋼梁のサイズ種類(25種類)を、梁成を横軸、梁幅を縦軸にとって示したものであるが、図示のように概ね大きな梁成に対して梁幅が大きいH形鋼梁を対象としていることが分る。グラフ中の各点に添えた数字は前述のH形鋼梁サイズ番号を示す。
一方、図10は算出対象とした柱梁接合部コアのサイズ(管径)とH形鋼梁の梁幅との関係をグラフ化したものであるが、柱梁接合部コアのサイズが大きくなるほど、梁幅の大きいH形鋼梁を対象としていることが分る。このことは、図9で示したように概ね大きな梁成に対して梁幅が大きいH形鋼梁を対象としていることから、概ね、柱梁接合部コアのサイズが大きくなるほどサイズの大きいH形鋼梁を対象としていること意味する。
実際の建築物において使用される梁サイズは柱サイズに概ね比例して大きくなることから、算出対象とした柱梁接合部コアサイズとH形鋼梁サイズとの関係は、概ね、実使用状態を反映していると言える。
図7において、角部内Rのない断面(角部内R=0)は、最大効率断面に対して面外変形耐力が約10%が低下しており、角部内Rを設けることで断面効率が高くなることが分る。しかし、同図から明らかなように、角部内Rが大き過ぎても、面外変形耐力の効率は低下する。
保有耐力接合の条件である柱、梁の全塑性耐力は塑性断面係数×材料降伏強度により求められるが、柱、梁に用いる角形鋼管、H形鋼のマイナス公差の下限板厚から求めた塑性断面係数は各々の角形鋼管、H形鋼の基準寸法の塑性断面係数に対して平均で97%の値となる。つまり、断面形状(板厚)については基準寸法断面の全塑性耐力の3%減の97%を下限として設定している。
本発明の柱梁接合部コアの断面形状についても最大効率断面(同一断面積において面外変形耐力が最も大きくなる角部内Rをもった断面)の面外変形耐力に対して3%減の97%を下限として角部内Rの寸法を設定することとする。図7のグラフから柱梁接合部コアの各サイズに共通して面外変形耐力が最大効率断面に対して97%よりも大きくなる角部内Rの寸法範囲を読み取ると、角部内Rが管径の0.08〜0.25となる。そこで、本発明では効率的な断面が得られる角部内Rとして、柱梁接合部コアの径の0.08〜0.25倍の範囲に設定した。
角部内Rがこの範囲であれば、より小さい断面積で要求耐力を満足することが可能な効率的な断面形状の柱梁接合部コアが得られる。また、これを用いて経済性に優れた効率的な柱梁接合部構造を得ることができる。
この断面形状は、同図(ロ)に合成状況を示したように、角部内Rがある断面と角部内Rがない断面とを組み合わせた断面であるので、四隅にいずれも角部内Rを持つ上述の柱梁接合部コアにおいて導いた管径の0.08〜0.25倍という角部内側Rを、一方の対角線方向の2つの角部内Rに設定することによって、同様に断面効率の高い断面形状が得られることが分る。
2 角形鋼管柱
3 H形鋼梁
R 角部の内アール(角部内R)
Claims (4)
- 角形鋼管柱とH形鋼梁との柱梁接合部に柱の一部として用いられる厚肉角形鋼管であるノンダイアフラム型の柱梁接合部コアであって、
角部内Rが柱梁接合部コアの管径の0.08〜0.25倍となる断面形状を有することを特徴とする柱梁接合部コア。 - 角形鋼管柱とH形鋼梁との柱梁接合部に柱の一部として用いられる厚肉角形鋼管であるノンダイアフラム型の柱梁接合部コアであって、
角形の一方の対角線方向の2つの角部内Rが柱梁接合部コアの管径の0.08〜0.25倍であり、他方の対角線方向の2つの角部に内Rがないかあるいは充分小さい内Rの断面形状を有することを特徴とする柱梁接合部コア。 - 角形鋼管柱として規格品の建築構造用冷間成形角形鋼管を用いる場合の柱梁接合部コアであって、
角形鋼管柱の外径より0〜4mmの範囲で大きな外径であることを特徴とする請求項1または2記載の柱梁接合部コア。 - 建築物の上下階の角形鋼管柱が、請求項1〜3のいずれかの柱梁接合部コアを介して溶接接合されるとともに、この柱梁接合部コアにH形鋼梁が溶接接合されたことを特徴とする柱梁接合部構造。
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