JP2010010572A - 発光素子およびその製造方法 - Google Patents

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重男 大平
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Abstract

【課題】 高効率な紫外線発生源として用いられ得るとともに、導電性基板を採用することにより、プロセスコストも顕著に低減可能である発光素子およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 酸化ガリウム単結晶基板の結晶方位(010)または(001)面を窒化処理し、該酸化ガリウム単結晶基板表面に窒化ガリウム結晶を形成してなることを特徴とする発光素子。酸化ガリウム単結晶基板の結晶方位(010)または(001)面を、温度850〜1000℃、アンモニア(NH3)流量80〜120sccm、時間50分〜100分の条件で窒化処理し、該酸化ガリウム単結晶基板表面に窒化ガリウム結晶を形成することを特徴とする発光素子の製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、発光素子およびその製造方法に関するものであり、詳しくは紫外線発生源として用いられ得る発光素子およびその製造方法に関するものである。本発明の発光素子は、LSIプロセス用光源、紫外線加工用光源、紫外線硬化材料用光源、光触媒用光源、メディカルまたはバイオ応用光源、光ディスク用光源などに幅広いニーズがある半導体製小型ランプとして利用可能である。
紫外線には、LSIプロセス用光源、紫外線加工用光源、紫外線硬化材料用光源、光触媒用光源、メディカルまたはバイオ応用光源、光ディスク用光源など、幅広いニーズがある。しかしながら、従来の紫外線ランプは水銀、重水素などが用いられ、大型・低効率・短寿命・危険という欠点などがあり、このため固体半導体発光素子を用いた紫外線光源の開発が重要な課題となっている。
上記半導体発光素子を用いた紫外線光源としては、従来から窒化ガリウム(GaN)系半導体薄膜を用いたデバイスが検討されている。窒化ガリウム系半導体薄膜を成長させる基板としては、サファイアやSiC基板が用いられているが、異種基板であるため、膜中に欠陥や転位が多く含まれ、そのため充分な発光効率が得られていないのが現状である。これに対し、成長させる半導体薄膜を柱状にすると、結晶の転位密度が劇的に減少し、そのため非常に高効率の発光が期待できる。さらに、薄膜では光取り出し損失が大きいのに対し、柱状構造にすると多重反射により基板に対して垂直方向への光放出が大きくなり、結果として高効率発光の実現が期待できる。実際、柱状の窒化ガリウム結晶からは電子線励起により薄膜に比べ高強度の発光が観察され、紫外線光源としての応用が示唆されている(例えば特許文献1および非特許文献1参照)。
特開2005−260093号公報 Y.Inoue et al、 Appl. Phys. Lett., 85(2004)2340.
しかしながら、上記の特許文献1および非特許文献1に開示された技術で製造された窒化ガリウム系半導体発光素子は、Si基板を用いているため、光を透過しないほか、抵抗も高く、デバイス構造の作製が困難となり、発光効率の低下も予想される。一方、透明なサファイアや石英基板を用いて窒化ガリウム系半導体発光素子を作製することも可能であるが、この場合、基板は絶縁体であり、透明電極が必要になり、プロセスコストがかかるといった問題点があった。
本発明は、上記従来の課題を解決し、高効率な紫外線発生源として用いられ得るとともに、導電性基板を採用することにより、プロセスコストも顕著に低減可能である発光素子およびその製造方法を提供することにある。
本発明は、以下のとおりである。
1.酸化ガリウム単結晶基板の結晶方位(010)または(001)面を窒化処理し、該酸化ガリウム単結晶基板表面に窒化ガリウム結晶を形成してなることを特徴とする発光素子。
2.前記窒化ガリウム結晶の径が、0.5〜1μmであることを特徴とする前記1に記載の発光素子。
3.光励起により波長360〜370nmの紫外線を発光することを特徴とする前記1または2に記載の発光素子。
4.酸化ガリウム単結晶基板の結晶方位(010)または(001)面を、温度850〜1000℃、アンモニア(NH3)流量80〜120sccm、時間50分〜100分の条件で窒化処理し、該酸化ガリウム単結晶基板表面に窒化ガリウム結晶を形成することを特徴とする発光素子の製造方法。
酸化ガリウム単結晶基板は導電性を有するために、発光デバイスを作製する際に透明電極等を必要とせず、プロセスコストがかかるという従来の課題を解決することができる。また酸化ガリウム単結晶基板は透明であるために、窒化ガリウム結晶から発生した光を基板背面から高効率で取り出すことができる。そこで本出願人は、酸化ガリウム単結晶基板上に、窒化ガリウム柱状結晶を形成してなる発光素子を提案している(特願2007−227572号)。しかしながら、窒化ガリウム結晶を作製する場合に使用するアンモニア(NH3)は基板温度が900℃と高温になると、NH3から分解した水素が酸化ガリウム単結晶基板表面を還元、分解することがあり、そのため窒化ガリウム結晶が基板から剥離することがある。そこで、その対策の1つとして酸化ガリウム単結晶基板表面が水素にさらされないように、例えば酸化ガリウム単結晶基板表面に窒化アルミニウム(AlN)層をブロック層としてコーティングすることで、窒化ガリウム結晶の剥離を抑制することが望ましい。しかしながら、本方法では、基板の側面へのコーティングが不十分なため、側面から水素にアタックされる問題があること、またプロセス工程が増加するため、それらを解決する技術が必要となっていた。
そこで本発明では、酸化ガリウム単結晶基板を直接窒化処理に施し、該基板表面上に窒化ガリウム結晶を形成してなるものである。窒化ガリウム結晶は、基板を構成する酸化ガリウム単結晶をガリウム源とし、基板中に直接作製されたものなので、剥離することがない。また、上記の水素による酸化ガリウム単結晶基板表面の分解の問題点は、該基板の窒化処理する面を結晶方位(010)または(001)面とすることにより解決することができ、窒化アルミニウム層等のブロック層を設ける必要がなく、プロセスコストを低減することができる。
したがって本発明によれば、高効率な紫外線発生源として用いられ得るとともに、導電性基板を採用することにより、プロセスコストも顕著に低減可能である発光素子およびその製造方法を提供することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(酸化ガリウム単結晶基板)
本発明における基板は、酸化ガリウム(β-Ga23)単結晶基板である。
酸化ガリウム単結晶は、フローティングゾーン(FZ法)や引上げ(CZ法)などで作製されるが、るつぼを用いないFZ法で作製する方法が高品質の単結晶が得られるので好ましい。
FZ法で得られた単結晶を切断、研磨して表面を鏡面にし、例えば厚さ0.4mmほどのウエハとする。このときの結晶方位は(010)または(001)面とする。酸化ガリウム単結晶は、(100)面を使用したほうが、研磨が容易で製造しやすいのであるが、本発明者らの検討によれば、(100)面よりも(010)または(001)面のほうが、水素による酸化ガリウム単結晶基板表面の分解を抑制できることを見出した。FZ法で作製した本発明の酸化ガリウム単結晶基板は、無色透明であり、光学的透過率はおよそ80%ほどであり、光吸収端はおよそ260nmである。
なお酸化ガリウム単結晶には、導電性を向上させるための元素を適宜添加してもよい。
(本発明の発光素子の製造)
本発明の発光素子は、酸化ガリウム単結晶基板の結晶方位(010)または(001)面を、温度850〜1000℃、アンモニア(NH3)流量80〜120sccm、時間50分〜100分の条件で窒化処理し、酸化ガリウム単結晶基板表面に窒化ガリウム結晶を形成する工程を経て製造することができる。
温度が850℃未満であると窒化が不十分となり、逆に1000℃を超えると酸化ガリウム単結晶基板の水素による分解が激しくなるので、この温度範囲であることが好ましい。
アンモニア(NH3)流量が80sccm未満であると、窒化が不十分であり、逆に120sccmを超えると、アンモニア分解による水素の発生が多くなる。
時間は50分に満たないと十分な窒化が行われず、逆に100分を超えて窒化処理を行っても効果が飽和するため、上記処理時間の範囲が好ましい。
さらに好ましい窒化処理条件は、温度880〜920℃、時間60分〜90分、アンモニア(NH3)流量90〜100sccmである。
このようにして、酸化ガリウム単結晶基板を直接窒化処理に施し、該基板表面上に窒化ガリウム結晶を形成することができる。窒化ガリウム結晶は、基板を構成する酸化ガリウム単結晶をガリウム源とし、基板中に直接作製されたものなので、剥離することもなく、かつ窒化ガリウムのバンド端に対応した発光を示す。また、本発明における酸化ガリウム単結晶基板は、水素によるダメージが軽減されているため、窒化アルミニウム層等のブロック層を設ける必要もなく、プロセスコストを低減することができる。
また本発明において、窒化ガリウム結晶の径が、0.5〜1μmであることが好ましい。この範囲において、光の取り出し効率が向上するという効果を奏する。なお窒化ガリウム結晶の径とは、窒化ガリウム結晶の成長方向に直交する断面の最大寸法をいう。また、窒化ガリウム結晶の径の制御は、例えば窒化時間の制御等により行なうことができる。なお、径が上記範囲以外の窒化ガリウム結晶も当然生じる。本発明においては径が0.5〜1μmの範囲の窒化ガリウム結晶が、形成される窒化ガリウム結晶のうち、90%以上であることが望ましい。
本発明の発光素子は、光励起により波長360〜370nmの紫外線を発光することが可能であり、LSIプロセス用光源、紫外線加工用光源、紫外線硬化材料用光源、光触媒用光源、メディカルまたはバイオ応用光源、光ディスク用光源などに幅広いニーズがある半導体製小型ランプとして利用可能である。
以下、本発明を実施例によってさらに説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
実施例1
以下のようにして酸化ガリウム(β-Ga23)単結晶を育成しウエハ状に加工し、本実施例に用いる基板とした。
酸化ガリウム粉末(純度4N)を原料とし、静水圧プレスで成形した成形体を大気中1600℃、10時間で焼結し、この焼結体を原料棒としてFZ装置を用いて単結晶育成を行った。成長速度は7.5mm/hとし、雰囲気ガスにはドライエアを用いた。装置としては、市販の光FZ装置(キャノンマシナリー社製商品名iAce)を用いた。作製した結晶を切断、CMP(化学機械)研磨により厚さ0.4mmのウエハ状に加工した。この場合の研磨面の結晶方位は(010)面とした。得られた基板の透過率はおよそ80%、抵抗率は1.43×10-1Ωcmである。
前記で得られた基板の(010)面に対し、温度900℃、アンモニア(NH3)流量100sccm、60分の窒化処理を行い、本発明の発光素子を得た。図1は、基板上に形成された窒化ガリウム結晶のSEM写真である。径が0.5〜1μmの範囲の窒化ガリウム結晶が、窒化ガリウム全体に対し、およそ95%の割合で形成されていることが分かる。形状は不均一だが、六角形や四角形の結晶が形成されている。
このように、酸化ガリウム単結晶基板の結晶方位(010)面を直接窒化処理に施し、該基板表面上に窒化ガリウム結晶を形成できることが証明された。
実施例2
実施例1で作製した発光素子に対して、光励起したフォトルミネッセンス(PL)測定を行った。その結果を図2に示す。
波長365nm付近から窒化ガリウムのバンド端発光に起因するシャープなスペクトルを確認した。
このことから、実施例1で作製した発光素子は、365nmの波長の発光源として有効であることが分かった。
また、実施例1において、研磨面の結晶方位を(001)面とし、この研磨面を直接窒化処理に施したこと以外は、実施例1を繰り返し、発光素子を得た。この発光素子について、上記と同様に光励起したフォトルミネッセンス(PL)測定を行った。その結果を併せて図2に示す。
実施例3
酸化ガリウム単結晶基板の結晶方位と、水素耐性との関係を調べるため、示差熱−熱重量分析(TG−DTA)を用いた評価を実施した。
実施例1と同様の方法において、発光素子を作製した。ただし、基板の結晶方位(001)または(100)面に窒化処理を施した場合についても評価した。
図3のTG曲線から、(010)面および(001)面の窒化処理の場合、(100)面に比べ、減量率が著しく小さくなっていることがわかる。なお、測定雰囲気はH2:Ar(10:90)である。また、測定時間と測定温度の関係をグラフ中に併せて示した。このことから、酸化ガリウム単結晶基板の結晶方位(010)または(001)面を窒化処理することにより、水素耐性に対し効果があるといえる。
本発明の発光素子は、LSIプロセス用光源、紫外線加工用光源、紫外線硬化材料用光源、光触媒用光源、メディカルまたはバイオ応用光源、光ディスク用光源などに幅広いニーズがある半導体製小型ランプとして利用可能である。
実施例1において、基板上に形成された窒化ガリウム結晶のSEM写真である。 実施例1で作製した発光素子に対して光励起したフォトルミネッセンス(PL)測定を行った結果を示す図である。 酸化ガリウム単結晶基板の結晶方位と、水素耐性との関係を調べるための、示差熱−熱重量分析(TG−DTA)によるTG曲線である。

Claims (4)

  1. 酸化ガリウム単結晶基板の結晶方位(010)または(001)面を窒化処理し、該酸化ガリウム単結晶基板表面に窒化ガリウム結晶を形成してなることを特徴とする発光素子。
  2. 前記窒化ガリウム結晶の径が、0.5〜1μmであることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
  3. 光励起により波長360〜370nmの紫外線を発光することを特徴とする請求項1または2に記載の発光素子。
  4. 酸化ガリウム単結晶基板の結晶方位(010)または(001)面を、温度850〜1000℃、アンモニア(NH3)流量80〜120sccm、時間50分〜100分の条件で窒化処理し、該酸化ガリウム単結晶基板表面に窒化ガリウム結晶を形成することを特徴とする発光素子の製造方法。
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