JP2010007852A - 軟質合金層形成装置および軟質合金層形成方法 - Google Patents

軟質合金層形成装置および軟質合金層形成方法

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Abstract

【課題】密着強度および熱疲労強度に優れた、ロータ等の回転子と摺接する軟質合金層を形成することができ、製造コストを削減することができる軟質合金層形成装置および軟質合金層形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】軟質合金層形成装置10は、台金40の内周の中心軸42を回転軸として回転可能に台金40を支持する台金支持部20と、台金40の内周の回転軸の方向に移動可能であり、かつ台金40の内周面41と所定の距離をおいて固定され、台金40との間にアーク31を発生させるアーク発生部30とを備える。台金40を回転させ、アーク発生部30と台金40の内周面41との間を一定に維持しながら、アーク発生部30によって発生したアーク31によって軟質合金部材50を溶融して、台金40の内周面41に軟質合金層15を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、発電機および蒸気タービン等の発電機器において、ロータ等の回転子を支持し、この回転子と摺接する軸受や、ロータと接して潤滑油や蒸気をシールするシール部材に係り、特にロータと摺接する軟質合金層を形成する軟質合金層形成装置および軟質合金層形成方法に関する。
発電機や蒸気タービン等は重量が大きく、かつ高速で回転するため、通常そのロータは高負荷・高回転用のジャーナル軸受により支持されている。図21は、一般的なジャーナル軸受300の断面構造を模式的に示した図である。図21に示すように、ジャーナル軸受300は、周方向に上下2分割された構造用鋼製の台金301、302と、この台金301、302の摺動面側に、軸受メタル(またはホワイトメタル)と呼ばれる一般的にはSn−Cu−Sb系の軸受用合金を遠心鋳造法によりライニングした軸受メタル層303、304とを備えている。これらの台金301、302は、ボルト305により締結されている。軸受メタル層303、304を構成する軸受メタルは、適度に柔らかく耐摩耗性にも優れているため、発電機器に限らず船舶等にも広く使用されている。
また、ボイラ、蒸気タービン、発電機等を組合せて構成される火力発電プラントは、従来ベース電力として運用されていたため長期間に亘り定常状態で運転されていたが、近年では原子力発電プラントがベース電力となり、火力発電プラントは負荷調整用に使用される機会が増えている。その結果、火力発電プラントでは、毎日のように起動・停止が繰返される運用法に変わり、軸受メタル層303、304も起動・停止に伴う熱応力を繰返し受けるようになる。これによって、軸受メタル層303、304が熱疲労により損傷に至る事象も発生している。
一般に軸受メタルをライニングして形成される軸受メタル層は、遠心鋳造法により形成される。図22A〜図22Eは、遠心鋳造法により軸受メタル層を形成する工程を説明するための図である。まず、ジャーナル軸受を構成する中空の円筒状の構造用鋼製の台金310の内周面に、軸受メタル層の密着力を高めるためにNi、Sn等のメッキ層311を設ける(図22A参照)。
この状態で電気炉やガスバーナを備えた加熱装置312によって予熱することによりメッキ層311を台金310側に拡散させて台金310と一体化させる(図22B参照)。
続いて、溶融状態の軸受メタル313を台金310の内部に鋳湯し(図22C参照)、台金310を高速で回転させ、溶融状態の軸受メタル313を台金310の内側面に押付け、ブローホール等の欠陥を押し潰す(図22D参照)。なお、この際、メッキ層311は、溶融状態の軸受メタル313と一体化して消滅する。
溶融状態の軸受メタル313の鋳湯終了後、冷却水314を台金310の外周面に噴霧して台金310を急冷し、溶融状態の軸受メタル313を凝固させ、軸受メタル層を形成する(図22E参照)。
続いて、内外周面を機械加工により仕上げ、その後上下方向に2分割に切断して、図21に示したようなジャーナル軸受が得られる。
上記したジャーナル軸受において、熱膨張係数は、台金310に比べて軸受メタル313の方が著しく大きく、鋳湯後の冷却時における軸受メタル313の凝固収縮と熱膨張差により、軸受メタル313が台金310から部分的に剥離することが多くみられた。このような剥離を生じた部分では、稼動時において、軸受メタル313で発生した熱が台金310を介して熱伝導により外部に放出され難くなるため、温度が上昇して大きな熱応力が発生し、前述した熱疲労破壊の原因となる。さらに、遠心鋳造後に冷却水314を噴霧して台金310を冷却しても、台金310の熱容量が大きいので軸受メタル313の温度を急速に下げることができず(冷却速度は1℃/秒程度)、軸受メタル313の組織を微細化するにも限界があった。
上記した遠心鋳造法では、最終的に得られる軸受メタル層の厚さ(6〜10mm)の2〜3倍の厚さに軸受メタル313を鋳造し、機械加工により最終的に得られる軸受メタル層の厚さまで切削加工する。そのため、冷却速度が速く、微細な組織が形成される軸受メタル層の内周側を機械加工により除去してしまうので、軸受メタル層には、組織が粗大な軸受メタル313が残る。これによって、軸受メタル層における機械的強度は低下するので、前述した熱疲労破壊が起こり易くなる。
従来、軸受メタル層の剥離防止や高強度化を図る方法として、台金の内周面に金属製の網状細線を固定し、その後軸受メタルを遠心鋳造して、軸受メタル層を網状細線と複合化する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、遠心鋳造により製造した軸受メタル層の表面にレーザを照射し、再溶融後に急冷凝固させることにより組織の微細化を図る技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
特開平8−135660号公報 特開平9−10918号公報
しかしながら、上記した従来の、台金の内周面に網状細線を設ける技術では、熱疲労破壊の起点となる軸受メタル層の摺動面近傍には網目状細線の設置が困難なため、軸受メタルの熱疲労破壊を防止する効果は期待できない。さらに、網目状細線を配置し固定する工程が必要であるため製造コストが上昇するといった問題も生じる。
また、上記した従来の、軸受メタル層の表面にレーザを照射し、再溶融後に急冷凝固させる技術では、台金と軸受メタル層との密着強度の改善は期待できない。さらに、この技術においては、レーザ照射工程と照射後の機械加工工程を備えねばならず、製造コストが上昇するといった問題も生じる。
また、遠心鋳造法により製造される軸受メタルの特性は、鋳造条件や鋳造後の冷却条件に大きく左右されるので引張強度、熱疲労強度、密着強度等のバラツキが大きく、ジャーナル軸受の信頼性に欠けるという問題がある。
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、密着強度および熱疲労強度に優れた、ロータ等の回転子と摺接する軟質合金層を形成することができ、製造コストを削減することができる軟質合金層形成装置および軟質合金層形成方法を提供することを目的とする。
本発明では、溶接肉盛法を採用して軸受メタル等の軟質合金層を形成する。まず、この溶接肉盛法を採用するに到った経緯を説明する。
溶接肉盛法は、例えば、平面構造を有するスラスト軸受の軸受メタルの製造方法として適用されている。図23A〜図23Dは、平面構造を有するスラスト軸受の軸受メタルの製造方法として適用されている従来の溶接肉盛法の工程を説明するための、溶接部の断面を示す図である。
溶接肉盛法は、図23Aに示すように台金320と溶接トーチ321との間にアーク322を発生させ、そのアーク322中に軸受メタルワイヤ323を挿入し、この軸受メタルワイヤ323を溶融させながら台金320の表面に軸受メタル層324を肉盛する。また、この溶接肉盛法では、溶接トーチ321または台金320を水平方向に移動させながら溶接肉盛を繰返すことにより台金320の表面を軸受メタル層324でライニングする。また、一層で肉盛ができる軸受メタル層324の厚さは2〜3mm程度であるので、図23Bに示すように、上記したライニング工程を繰返し、軸受メタル層324を積層してライニングすることで所定の厚さの軸受メタル層を製造することができる(図23C参照)。そして、図23Dに示すように、表面を機械加工により仕上げてスラスト軸受が完成する。この従来の溶接肉盛法では、遠心鋳造法に比べて軸受メタルの凝固速度を大きくでき、引張強度、熱疲労強度に優れた軸受メタル層324を製造することができる。また、適切な溶接肉盛条件を選定することで、台金320と軸受メタル層324の界面には界面反応層が形成され高い密着強度を得ることもできる。したがって、従来の遠心鋳造法のようなメッキ処理も不要になり低コスト化を図ることも可能となる。さらに、溶接トーチ321または台金320を水平方向に一定速度で移動させることにより自動的に台金320の表面に所定厚さの軸受メタル層324を形成することができるので、従来の遠心鋳造法に比べて製造時間を1/10以下に削減することも可能である。
そこで発明者らは、従来の溶接肉盛法、すなわち、溶接トーチまたは台金を水平方向に移動させながら、ジャーナル軸受の台金の曲面に軸受メタル層をライニングする実験を行った。その結果、遠心鋳造法に比べて高い引張強度、密着強度を示したが、同様な溶接肉盛法で製造したスラスト軸受に比べて軸受メタル層の密着強度のバラツキが大きいことが判明した。
さらに発明者らは、溶接肉盛条件を変えて、溶接トーチまたは台金を水平方向に移動させながら、ジャーナル軸受の台金の曲面に軸受メタル層をライニングして試作を行うとともに、密着強度の評価や台金と軸受メタルとの界面組織を詳細に調べた。図24A〜図24Cは、台金330と軸受メタル層331との界面組織を調べた結果に基づいて、台金330と軸受メタル層331との界面部の断面を模式的に示した図である。
台金330と軸受メタル層331との界面組織を調べた結果、溶接肉盛時の溶接電流が低過ぎる場合、台金330と軸受メタル層331との界面には界面反応層が観察されず密着強度は小さかった(図24A参照)。一方、溶接電流が高過ぎる場合、台金330と軸受メタル層331との界面に厚い界面反応層332が形成され、この場合も、密着強度は小さかった(図24B参照)。また、適正な溶接電流で溶着した場合、部分的に薄い界面反応層332が一様に形成され、高い密度強度を示した(図24C参照)。また、スラスト軸受のような平面では上述した界面反応層の厚さは薄くかつ均一であり、ジャーナル軸受のような円弧面では溶接トーチと台金との距離が微妙に変化するため、台金330と軸受メタル層331との界面における界面反応層332の厚さが不均一になることがわかった。また、この界面反応層332の不均一さと密着強度の間にはよい相関があることもわかった。
図25は、台金330と軸受メタル層331との界面組織を走査型電子顕微鏡により観察した結果に基づいて、台金330と軸受メタル層331との界面の断面を模式的に示した図である。台金330と軸受メタル層331との界面組織を走査型電子顕微鏡により観察および分析した結果、界面反応層332は、主としてFe、Sn、Sbからなる金属間化合物相であることが判明した。さらに、この界面反応層332の軸受メタル層331の側には薄いCuを主成分とする偏析層333が観察された。すなわち、台金330と軸受メタル層331の界面には台金330の成分の鉄と軸受メタル層331の成分のSn、Sbが界面反応層332を形成し、この反応により軸受メタル層331は、高い密着強度を示すことが明らかとなった。一方、軸受メタル層331の合金成分であるCuは、Feと合金や金属間化合物相を形成しないため、界面反応層332と軸受メタル層331との間に偏析し、軸受メタル層331の密着強度を低下させることも明らかとなった。
したがって、軸受メタル層が高い密着強度を安定して得るためには、前述の界面反応層を適正な厚さに制御することが重要であるが、ジャーナル軸受のような円弧面への溶接肉盛ではスラスト軸受のような平面と異なり、溶接距離(溶接トーチと台金との距離)を一定に保つことが困難である。発明者らは、そのため、台金と軸受メタル層との界面に形成される界面反応層の厚さが不均一になると考えた。そこで、発明者らは、ジャーナル軸受のような円弧面への溶接肉盛においては、台金と軸受メタル層との界面に形成される界面反応層の厚さを適正な範囲にコントロールすることにより高い密着強度を安定して得ることができるものと考え、本発明を創作するに至った。
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、円弧面からなる台金の内周面に、ロータと摺接する軟質合金からなる軟質合金層を溶接肉盛法により形成する軟質合金層形成装置であって、前記台金の内周の中心軸を回転軸として回転可能に前記台金を支持する台金支持部と、前記回転軸の軸方向に移動可能であり、かつ前記台金の内周面と所定の距離をおいて固定され、前記台金との間にアークを発生させるアーク発生部とを具備し、前記台金支持部により前記台金を回転させ、前記アーク発生部と前記台金の内周面との間の所定の距離を一定に維持しながら、前記アーク発生部によって発生したアークによって軟質合金からなる軟質合金部材を溶融して、前記台金の内周面に軟質合金層を形成することを特徴とする軟質合金層形成装置が提供される。
また、本発明の一態様によれば、円弧面からなる台金の内周面に、ロータと摺接する軟質合金からなる軟質合金層を溶接肉盛法により形成する軟質合金層形成方法であって、前記台金の内周の中心軸を回転軸として回転可能に前記台金を支持する台金支持工程と、前記台金を回転させ、前記回転軸の軸方向に移動可能なアーク発生部と前記台金の内周面との間の所定の距離を一定に維持しながら、前記アーク発生部と前記台金との間に発生したアークによって軟質合金からなる軟質合金部材を溶融して、前記台金の内周面に軟質合金層を形成する軟質合金層形成工程とを具備することを特徴とする軟質合金層形成方法が提供される。
本発明の軟質合金層形成装置および軟質合金層形成方法によれば、密着強度および熱疲労強度に優れた、ロータ等の回転子と摺接する軟質合金層を形成することができ、製造コストを削減することができる。
本発明の第1の実施の形態の軟質合金層形成装置を模式的に示した図である。 本発明の第1の実施の形態の、他の構成の台金支持部を備える軟質合金層形成装置を模式的に示した図である。 本発明の第1の実施の形態の、他の構成の台金支持部を備える軟質合金層形成装置を模式的に示した図である。 本発明の第1の実施の形態の軟質合金層形成装置を用いて軟質合金層が形成されている台金の断面を示す図である。 台金と軟質合金層との界面の断面を模式的に示す図である。 本発明の第2の実施の形態の軟質合金層形成装置を模式的に示した図である。 引張試験に用いられた試験片の断面を示す図である。 密着強度試験に用いられた試験片の断面を示す図である。 引張試験の結果を示す図である。 密着強度試験の結果を示す図である。 アーク発生部を移動させながら軟質合金層を形成する従来の溶接肉盛法を説明するための、軟質合金層が形成されている台金の断面を示す図である。 実施例2における軟質合金層と台金との界面における断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際の写真である。 比較例1における軟質合金層と台金との界面における断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際の写真である。 引張試験および密着強度試験の結果を示す図である。 軟質合金層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際の写真である。 軟質合金層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際の写真である。 軟質合金層の温度変化の平均値の時間的変化を示す図である。 軟質合金層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際の写真である。 冷却ガス噴出手段や台金冷却手段の冷却手段を備えない実施例2における軟質合金層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際の写真である。 実施例2における軟質合金層の温度変化の平均値の時間的変化を示す図である。 引張試験および密着強度試験の結果を示す図である。 一般的なジャーナル軸受の断面構造を模式的に示した図である。 遠心鋳造法により軸受メタル層を形成する工程を説明するための図である。 遠心鋳造法により軸受メタル層を形成する工程を説明するための図である。 遠心鋳造法により軸受メタル層を形成する工程を説明するための図である。 遠心鋳造法により軸受メタル層を形成する工程を説明するための図である。 遠心鋳造法により軸受メタル層を形成する工程を説明するための図である。 平面構造を有するスラスト軸受の軸受メタルの製造方法として適用されている従来の溶接肉盛法の工程を説明するための、溶接部の断面を示す図である。 平面構造を有するスラスト軸受の軸受メタルの製造方法として適用されている従来の溶接肉盛法の工程を説明するための、溶接部の断面を示す図である。 平面構造を有するスラスト軸受の軸受メタルの製造方法として適用されている従来の溶接肉盛法の工程を説明するための、溶接部の断面を示す図である。 平面構造を有するスラスト軸受の軸受メタルの製造方法として適用されている従来の溶接肉盛法の工程を説明するための、溶接部の断面を示す図である。 台金と軸受メタル層との界面組織を調べた結果に基づいて、台金と軸受メタル層との界面部の断面を模式的に示した図である。 台金と軸受メタル層との界面組織を調べた結果に基づいて、台金と軸受メタル層との界面部の断面を模式的に示した図である。 台金と軸受メタル層との界面組織を調べた結果に基づいて、台金と軸受メタル層との界面部の断面を模式的に示した図である。 台金と軸受メタル層との界面組織を走査型電子顕微鏡により観察した結果に基づいて、台金と軸受メタル層との界面の断面を模式的に示した図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態の軟質合金層形成装置10を模式的に示した図である。図2Aおよび図2Bは、他の構成の台金支持部20を備える軟質合金層形成装置10を模式的に示した図である。図3は、本発明の第1の実施の形態の軟質合金層形成装置10を用いて軟質合金層15が形成されている台金の断面を示す図である。図4は、台金40と軟質合金層15との界面の断面を模式的に示す図である。
軟質合金層形成装置10は、円弧面からなる台金40の内周面41に、例えば、タービンロータなどの回転子と摺接する軟質合金からなる軟質合金層15を溶接肉盛法により形成する装置である。図1に示すように、軟質合金層形成装置10は、台金支持部20およびアーク発生部30を備えている。
台金支持部20は、台金40の内周の中心軸42を回転軸として回転可能に台金40を支持するものである。なお、図1では、回転ローラ21で下方から台金40を支持した一例を示している。この場合には、台金40が中空の円柱で構成され、台金40の外周における中心軸と台金40の内周における中心軸とが一致するように構成されている。これによって、回転ローラ21を所定方向に回転させることで、台金40を、台金40の内周の中心軸42を回転軸として回転させることができる。
なお、台金支持部20の構成はこの構成に限られるものではなく、例えば、図2Aに示すように、4つの支持アーム22で台金40の外周面を挟持し、支持アーム22を台金40の内周の中心軸42を回転軸として回転させる構成としてもよい。すなわち、台金支持部20の構成は、特に限定されるものではなく、台金40の内周の中心軸42を回転軸として台金40を回転できる構成であればよい。
また、台金40は、円筒を2分割、さらには3分割以上に分割した形状を有していてもよい。これらの場合であっても、台金40は、台金支持部20によって、台金40の内周の中心軸42を回転軸として回転される。例えば、図2Bに示すように、台金40の内周の中心軸42を回転軸として回転可能な回転円板23に、円筒を2分割した形状の台金40を、例えばフランジ部40cを介してボルト24などで固定してもよい。この場合、軟質合金層15の形成は、円筒を2分割した形状の台金40の一方の側端部40aから開始し他方の側端部40bまで行う。また、形成された軟質合金層15において、回転軸方向の幅がさらに必要な場合には、アーク発生部30を回転軸方向に、形成された軟質合金層15の幅に相当する距離移動して、再び、軟質合金層15を台金40の一方の側端部40aから他方の側端部40bまで形成する。ここで、再度、軟質合金層15を形成する際、台金40の一方の側端縁40aから開始するのは、台金40の一方の側端部40aの温度が低下しているからである。
アーク発生部30は、台金40との間にアーク31を発生させ、このアーク31によって台金40とアーク発生部30との間に挿入された、軟質合金からなる軟質合金部材50を溶融して、台金40の内周面41に軟質合金層15を形成する。アーク発生部30は、例えば、溶接トーチなどで構成される。アーク発生部30は、台金40の内周の中心軸方向、すなわち回転軸方向に移動可能に設けられ、かつ図3に示すように台金40の内周面41と所定の離間距離Lを有して固定されている。すなわち、アーク発生部30と台金40の内周面41との離間距離Lは、アーク発生部30が回転軸方向に移動しても、台金支持部20によって台金40が回転されても、常に一定の離間距離Lに維持される。
なお、図3に示すように、アーク発生部30の先端部は、台金40の内周面41の最下面と上記した離間距離Lを有して、鉛直下方に向けて設置されることが好ましい。すなわち、溶融した軟質合金の流下を防止し、均一な厚さの軟質合金層15を形成するために、台金40の内周面41うち、最下面(重力方向に最下面)となる部分において溶接が行われることが好ましい。なお、離間距離Lは、溶接電流や台金40の構成材料等によって適宜最適な距離に設定することができる。
ここで、台金40の内周面41に第1層の軟質合金層15を形成する際における溶接電流よりも、この第1層に積層して形成する第2層以降の軟質合金層15を形成する際における溶接電流を小さく設定することが好ましい。軟質合金層15は、台金40を台金支持部20によって回転させ、アーク発生部30を台金40の内周の中心軸42である回転軸方向に、所定の振幅および周波数でウィービングさせながら第1層を形成し、さらに同様にして、第1層上に第2層、さらには第3層を積層して形成することで所定の厚さに形成される。すなわち、軟質合金層15は、複数層の溶接肉盛層で構成される。
ここで、上記したように、第1層を形成する際の溶接電流を第2層以降を形成する際の溶接電流よりも大きくすることで、第1層と台金40との密着強度を高めることができる。一方、第2層以降は第1層に比べて小さな溶接電流でも肉盛が可能であり、また第2層以降の溶接電流を小さくすることで台金40と軟質合金層15との界面の温度上昇を抑えることができる。これによって、図4に示すような、台金40と軟質合金層15との界面に形成される界面反応層16の成長を抑制するとともに、軟質合金層15の組織の粗大化を防止することができる。
軟質合金部材50は、ホワイトメタルと呼ばれる軸受用合金で構成され、一般的には、CuおよびSbを含有するSnを主成分とするSn−Cu−Sb系の合金で構成される。軟質合金部材50として、具体的には上記したSn−Cu−Sb系の合金で構成される溶接ワイヤなどが挙げられる。また、前述したように、発明者らの実験において、軟質合金部材50を構成する合金成分であるCuは、台金40との密着強度の向上にはほとんど影響せず、界面反応層16と軟質合金層15との界面に偏析し密着強度を低下させることがわかっている。
そのため、台金40の内周面41に軟質合金層15を形成する際におけるSn−Cu−Sb系の合金のCuの含有率を、この内周面41に形成された第1層の軟質合金層15に積層して形成する第2層以降の軟質合金層15を形成する際におけるSn−Cu−Sb系の合金のCuの含有率よりも小さくすることが好ましい。具体的には、台金40の内周面に軟質合金層15を形成する際におけるSn−Cu−Sb系の合金のCuの含有率は、1〜5重量%であることが好ましく、3〜5重量%であることがさらに好ましい。ここで、台金40の内周面に軟質合金層15を形成する際におけるSn−Cu−Sb系の合金のCuの含有率を上記範囲にすることが好ましいのは、Cuの含有率が1重量%よりも小さい場合には、軟質合金層15の機械的強度等が低下し、5重量%を超える場合には、界面反応層16と軟質合金層15との界面におけるCuの偏析が顕著になり密着強度を低下させるからである。また、台金40の内周面に軟質合金層15を形成する際におけるSn−Cu−Sb系の合金のCuの含有率を上記範囲にすることで、台金40と軟質合金層15との界面に、図4に示すような、部分的に薄い界面反応層16が一様に形成され、密着強度、引張強度および熱疲労強度に優れた軟質合金層15を形成することができる。
一方、第2層以降の軟質合金層15を形成する際におけるSn−Cu−Sb系の合金としては、例えば、Sbを8〜10重量%、Cuを5〜6%を含有するSnを主成分とする合金を使用することが好ましい。第2層以降の軟質合金層15を形成する際におけるSn−Cu−Sb系の合金として、具体的には、ホワイトメタル2種(WJ2)等が用いられる。
次に、本発明の第1の実施の形態の軟質合金層形成装置10における軟質合金層15の形成方法について、図1および図3を参照して説明する。
台金支持部20に台金40を設置し、所定の回転速度で台金40を回転させる。続いて、アーク発生部30を台金40の内周の中心軸42である回転軸方向に、所定の振幅(例えば5〜10mm)および周波数(1〜5Hz)でウィービングさせ、アーク発生部30と台金40との間に所定の電圧を印加し、アーク31を発生させる。なお、アーク発生部30の振幅、周波数等は、台金40の回転速度、溶接速度等の溶接条件に基づいて適宜設定される。また、アーク発生部30と台金40の内周面41との間の離間距離Lは常に一定に維持されている。
続いて、アーク31中に軟質合金部材50の先端を所定の速度で挿入して軟質合金部材50を溶融し、台金40の内周面に軟質合金層15を形成する。この際、台金40が1回転することで台金40の内周面41に、アーク発生部30の振幅に対応する回転軸方向の幅を有する軟質合金層15が形成される。軟質合金層15において、回転軸方向の幅がさらに必要な場合には、アーク発生部30を回転軸方向にアーク発生部30の振幅に相当する距離移動して、同様の方法で、さらに軟質合金層15を形成する。
続いて、台金40の内周面に形成された軟質合金層15の第1層上に、同様の方法で、第2層、さらには第3層と軟質合金層15を複数回層積し、所定の厚さの軟質合金層15を形成する。なお、前述したように、第2層以降の軟質合金層15を形成する際には、第1層を形成する際における溶接電流よりも小さな溶接電流にしてもよい。また、第2層以降の軟質合金層15を形成する際には、第1層を形成する際における軟質合金部材50のCuの含有率よりも高いCuの含有率を有する軟質合金部材50を用いてもよい。上記した方法で、所定の厚さの軟質合金層15を形成した後、機械加工によって軟質合金層15の表面を仕上げて最終的な厚さにする。
上記したようにして、台金40の内周面41に軟質合金層15が形成される。ここで、上記した方法によって軟質合金層15が形成された台金40において、図4に示すように、台金40と軟質合金層15との界面には、部分的に薄い界面反応層16が一様に形成される。この界面反応層16の厚さtは、平均で5〜20μmであることが好ましい。この範囲の厚さtが好ましいのは、この範囲よりも厚くても薄くても密着強度が低下するからである。また、界面反応層16の厚さtを平均で5μm以上にすることで、界面反応層16が全く形成されない領域が発生するのを防止することができるので、台金40と軟質合金層15との界面に一様に界面反応層16を形成することができる。また、界面反応層16の厚さtを平均で20μm以下にすることで、軟質合金層15と界面反応層16との界面におけるCuの連続した偏析を抑制することができる。これによって、台金40の内周面41に界面反応層16を高い密着強度で形成することができる。
なお、上記したように形成された軟質合金層15において、例えば、軟質合金層15の一部が劣化等した場合には、その劣化等した部分を機械加工により切削して除去し、その除去した部分に上記した方法で軟質合金層15を新たに形成することができる。すなわち、軟質合金層15を部分的に補修することができる。
ここで、本発明の第1実施の形態の軟質合金層形成装置10によって形成れた軟質合金層15を備える台金40は、例えば、潤滑油を介してタービンロータを支持するジャーナル軸受や、水素冷却発電機等のシールリング機構等として利用することができる。なお、本発明の第1実施の形態の軟質合金層形成装置10は、これらの部位に軟質合金層を形成する用途のみならず、タービンロータなどの回転子と摺接する部位に軟質合金層を形成する際に広く利用可能である。また、例えば、パッド型軸受のように、台金の下半分の内周面に分割された摺動面を形成する場合においても、本発明の第1実施の形態の軟質合金層形成装置10を利用することができる。
上記したように、本発明の第1の実施の形態の軟質合金層形成装置10によれば、台金支持部20により、台金40の内周の中心軸42を回転軸として台金40を回転させ、アーク発生部30と台金40の内周面41との間の離間距離Lを常に一定に維持して軟質合金層15を形成することができる。これによって、溶接距離などの溶接条件が同じ状態で軟質合金層15を形成することができるので、例えば、台金40と軟質合金層15との界面に形成される界面反応層16の厚さを均一にかつ適正範囲にすることができる。そのため、台金40の内周面に亘って高い密着強度を有する軟質合金層15を形成することができる。
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態の軟質合金層形成装置10を模式的に示した図である。本発明の第2の実施の形態の軟質合金層形成装置10は、本発明の第1の実施の形態の軟質合金層形成装置10に、軟質合金層15に冷却ガスを噴出する冷却ガス噴出手段60および台金40の外周面を冷却する台金冷却手段70を備えた構成である。なお、第1の実施の形態の軟質合金層形成装置10と同一の構成部分には同一の符号を付して重複する説明を省略または簡略する。
図5に示すように、軟質合金層形成装置10は、台金支持部20、アーク発生部30、冷却ガス噴出手段60および台金冷却手段70を備えている。
冷却ガス噴出手段60は、軟質合金層15に冷却ガス61をノズルなどの噴出口から噴出するもので、噴出口が台金40の外周面から所定の距離をおいて設けられている。この冷却ガス噴出手段60も、アーク発生部30と同様に、台金40が回転された場合においても、台金40の内周面との間の離間距離が常に一定となるように設置されることが好ましい。これによって、形成された軟質合金層15を均一に冷却することができる。冷却ガス噴出手段60から噴出される冷却ガス61は、NeやArなどの不活性ガスや空気などが使用される。この中でも、軟質合金層15の酸化等を防止するために、冷却ガス61として、例えばNeやArなどの不活性ガスを用いることがより好ましい。
台金冷却手段70は、台金40の外周面を冷却するものであり、例えば、図5に示すように、台金40の外周面の下半分と接触するように設置された水冷ジャケット71などで構成される。なお、台金冷却手段70の構成はこれに限られるものではなく、例えば、台金40の外周面のすべてと接触するように水冷ジャケットを設けてもよい。なお、水冷ジャケットには、冷却水を供給する供給口71aおよび冷却水を排出する排出口71bが設けられている。また、台金冷却手段70は、例えば、台金40の外周面に水などの冷却水を噴出するノズルなどで構成してもよい。すなわち、台金冷却手段70の構成は、特に限定されるものではなく、台金40の外周面を冷却する構成ならばよい。なお、溶接された直後の軟質合金層15を効率よく冷却するために、台金冷却手段70は、台金40を介してアーク発生部30と対向する位置に、台金40の外周面と所定の離間距離をおいて設置されることが好ましい。
次に、本発明の第2の実施の形態の軟質合金層形成装置10における軟質合金層15の形成方法について、図5を参照して説明する。
台金支持部20に台金40を設置し、所定の回転速度で台金40を回転させる。続いて、冷却ガス噴出手段60から軟質合金層15が形成される台金40の内周面41に向けて冷却ガス61を噴出する。また、台金冷却手段70に冷却水を供給し、台金40の外周面を冷却する。
続いて、アーク発生部30を台金40の内周の中心軸42である回転軸方向に、所定の振幅(例えば5〜10mm)および周波数(1〜5Hz)でウィービングさせ、アーク発生部30と台金40との間に所定の電圧を印加し、アーク31を発生させる。なお、アーク発生部30の振幅、周波数等は、台金40の回転速度、溶接速度等の溶接条件に基づいて適宜設定される。また、アーク発生部30と台金40の内周面41との間の離間距離Lは常に一定に維持されている。
続いて、アーク31中に軟質合金部材50の先端を所定の速度で挿入して軟質合金部材50を溶融し、台金40の内周面に軟質合金層15を形成する。この際、台金40が1回転することで台金40の内周面41に、アーク発生部30の振幅に対応する回転軸方向の幅を有する軟質合金層15が形成される。軟質合金層15において、回転軸方向の幅がさらに必要な場合には、アーク発生部30を回転軸方向にアーク発生部30の振幅に相当する距離移動して、同様の方法で、さらに軟質合金層15を形成する。
続いて、台金40の内周面に形成された軟質合金層15の第1層上に、同様の方法で、第2層、さらには第3層と軟質合金層15を複数回層積し、所定の厚さの軟質合金層15を形成する。なお、前述したように、第2層以降の軟質合金層15を形成する際には、第1層を形成する際における溶接電流よりも小さな溶接電流にしてもよい。また、第2層以降の軟質合金層15を形成する際には、第1層を形成する際における軟質合金部材50のCuの含有率よりも高いCuの含有率を有する軟質合金部材50を用いてもよい。上記した方法で、所定の厚さの軟質合金層15を形成した後、機械加工によって軟質合金層15の表面を仕上げて最終的な厚さにする。
上記したように、冷却ガス噴出手段60および台金冷却手段70によって、形成された軟質合金層15を急冷することで、軟質合金層15を構成する組織を微細化することができる。これによって、引張強度、熱疲労強度を向上できるとともに、界面反応層16の成長や軟質合金層15の組織の成長も抑制することができる。また、台金40の内周面41に軟質合金層15を高い密着強度を有して形成することができる。さらに、軟質合金層15は、急速に冷却され固まるので、例えば台金40の回転速度を速めた場合においても、形成された軟質合金層15が下方に流れ落ちることがない。
ここで、軟質合金層15の冷却平均速度は、10〜50℃/秒程度であることが好ましく、この範囲内でも冷却平均速度は速い方が好ましい。この冷却平均速度の範囲が好ましいのは、この範囲よりも冷却平均速度が遅い場合には、軟質合金層15を構成する組織を最適に微細化することが困難となり、また、界面反応層16の成長を招くからである。この範囲よりも冷却平均速度を速くすることは、軟質合金層15が十分広がらず下地層とのなじみが悪い状態で凝固するためブローホール等の欠陥が発生しやすくなるからである。なお、この冷却平均速度とは、軟質合金層15の最高温度(アークで溶融する温度、例えば、ホワイトメタル2種(WJ2)の場合には450℃)から軟質合金層15を構成する材料の凝固開始温度以下で、軟質合金層15の組織成長が顕著でなくなる温度(例えば、ホワイトメタル2種(WJ2)の場合には300℃)に低下するまでの速度を意味する。
なお、上記した第2の実施の形態の軟質合金層形成装置10では、冷却ガス噴出手段60および台金冷却手段70を設けた一例を示したが、上記した冷却平均速度で軟質合金層15を冷却できる場合には、少なくともどちらか一方の手段を備えていればよい。
上記したように、本発明の第2の実施の形態の軟質合金層形成装置10によれば、台金支持部20により、台金40の内周の中心軸42を回転軸として台金40を回転させ、アーク発生部30と台金40の内周面41との間の離間距離Lを常に一定に維持して軟質合金層15を形成することができる。これによって、溶接距離などの溶接条件が同じ状態で軟質合金層15を形成することができるので、例えば、台金40と軟質合金層15との界面に形成される界面反応層16の厚さを均一にかつ適正範囲にすることができる。そのため、台金40の内周面41に亘って高い密着強度を有する軟質合金層15を形成することができる。
さらに、本発明の第2の実施の形態の軟質合金層形成装置10によれば、冷却ガス噴出手段60および台金冷却手段70を備え、形成された軟質合金層15を急冷することで、軟質合金層15を構成する組織を微細化することができる。これによって、引張強度、熱疲労強度を向上することができるとともに、界面反応層16の成長や軟質合金層15の組織の成長も抑制することができる。これによっても、台金40の内周面41に亘って高い密着強度を有する軟質合金層15を形成することができる。
次に、本発明に係る軟質合金層形成装置10によって形成された軟質合金層15が密着強度や引張強度に優れていることを実施例および比較例に基づいて説明する。
(実施例1)
実施例1では、ジャーナル軸受を部分的に模擬した、構造用鋼製の内径381mm、外径481mm、中心角85°の台金40を準備した。なお、軟質合金層の形成方法は、第1の実施の形態で示した方法と同じであるので、図1を参照して説明する。
この台金40を台金支持部20に設置し、回転軸方向に一端から他端まで肉盛が終了した時点で台金を回転させた。続いて、アーク発生部30を台金40の内周の中心軸42である回転軸方向に、振幅7mmおよび周波数3Hzでウィービングさせ、アーク発生部30と台金40との間に所定の電圧を印加し、アーク31を発生させた。なお、この際の溶接電流は、190Aであった。また、アーク発生部30と台金40の内周面との間の離間距離Lを7mmに一定に維持した。
続いて、アーク31中に軟質合金部材50を40〜50cm/minの速度で挿入して軟質合金部材を溶融し、台金40の内周面41に、アーク発生部30の振幅に対応する回転軸方向の幅を有する軟質合金層15を形成した。ここで、軟質合金部材50として、ホワイトメタル2種(WJ2)を使用した。
続いて、アーク発生部30を回転軸方向にアーク発生部30の振幅に相当する距離移動して、同様の方法で、さらに軟質合金層15を形成した。
続いて、台金40の内周面41に形成された第1層の軟質合金層15上に、同様の方法で、第2層、第3層、第4層と軟質合金層15を複数回層積し、12mmの厚さの軟質合金層15を形成した。
上記したように軟質合金層15が作製された台金40から試験片を採取し、引張試験および密着強度試験を行った。図6は、引張試験に用いられた試験片100の断面を示す図である。図7は、密着強度試験に用いられた試験片110の断面を示す図である。
図6に示す引張試験に用いられた試験片100は、形成された軟質合金層15から回転軸方向に円柱状の部材を採取し、加工したものである。試験片100において、平行部111の直径を6mm、長さMを30mmとした。この試験片100を7個作製し、これらの試験片100を用いて、JIS Z2241に準じて常温にて引張試験を行った。各試験片100における測定結果から平均値と標準偏差を算出した。
図7に示す密着強度試験に用いられた試験片110は、軟質合金層15および台金40の双方を含む円柱状の部材を採取し、加工したものである。試験片110は、軟質合金層15からなる部分の外径Daを38mm、内径Dbを24mm、台金40からなる部分の外径Dcを28.82mm、内径Ddを12.1mmとする段付きのリング状の試験片とした。この試験片110を7個作製し、これらの試験片110を用いて、ISO 4386/2−1982に準じて常温にて密着強度試験を行った。各試験片110における測定結果から平均値と標準偏差を算出した。また、軟質合金層15と台金40との界面における断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して界面反応層16の厚さを測定し、その平均値を求めた。
引張試験および密着強度試験の結果を図8、図9に示す。また、界面反応層16の厚さは、平均で12μmであった。
(実施例2)
実施例2では、実施例1における第2層以降の軟質合金層15を形成する際の溶接電流を実施例1で軟質合金層15を形成する際の溶接電流よりも5%低い値(溶接電流180A)とした以外は、実施例1における軟質合金層15の形成方法と同じである。また、実施例1における軟質合金層15と同様に、台金40の内周面41に形成された軟質合金層15は、4層からなり、12mmの厚さを有していた。
上記したように軟質合金層15が作製された台金40から試験片を採取し、引張試験および密着強度試験を行った。なお、試験片の形状等は、実施例1におけるものと同じとした。また、引張試験および密着強度試験における測定方法および測定条件等は、実施例1におけるものと同じとした。また、軟質合金層15と台金40との界面における断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して界面反応層16の厚さを測定し、その平均値を求めた。
引張試験および密着強度試験の結果を図8、図9に示す。また、界面反応層16の厚さは、平均で8μmであった。
(比較例1)
比較例1では、スラスト軸受の表面に軟質合金層を形成する従来の溶接肉盛法と同様に、台金を回転させずに、アーク発生部をウィービングさせるとともに、所定の方向に移動させて軟質合金層を形成した。図10は、アーク発生部30を移動させながら軟質合金層15を形成する従来の溶接肉盛法を説明するための、軟質合金層15が形成されている台金40の断面を示す図である。
比較例1では、実施例1と同様に、ジャーナル軸受を部分的に模擬した、構造用鋼製の内径381mm、外径481mm、中心角85°の台金40を準備した。
アーク発生部30を台金40の一方の側端部40a上に位置させ、アーク発生部30と台金40との間に所定の電圧を印加し、アーク31を発生させた。
続いて、アーク発生部30を台金40の内周の中心軸方向に、振幅7mmおよび周波数3Hzでウィービングさせ、アーク31中に軟質合金部材50を40〜50cm/minの速度で挿入しながら、台金40の一方の側端部40aから台金40の他方の側端部40bに向かって水平に移動した。そして、軟質合金部材を溶融し、台金40の内周面に、アーク発生部30の振幅に対応する回転軸方向の幅を有する軟質合金層15を形成した。ここで、軟質合金部材50として、ホワイトメタル2種(WJ2)を使用した。
続いて、アーク発生部30を台金40の内周の中心軸方向にアーク発生部30の振幅に相当する距離移動して、同様の方法で、さらに軟質合金層15を形成した。
続いて、台金40の内周面に形成された第1層の軟質合金層15上に、同様の方法で、第2層、第3層、第4層と軟質合金層15を複数回層積し、12mmの厚さの軟質合金層15を形成した。
上記したように軟質合金層15が作製された台金40から試験片を採取し、引張試験および密着強度試験を行った。なお、試験片の形状等は、実施例1におけるものと同じとした。また、引張試験および密着強度試験における測定方法および測定条件等は、実施例1におけるものと同じとした。また、軟質合金層15と台金40との界面における断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して界面反応層16の厚さを測定し、その平均値を求めた。
引張試験および密着強度試験の結果を図8、図9に示す。また、界面反応層16の厚さは、平均で75μmであった。
(比較例2)
比較例2では、遠心鋳造法により軟質合金層を形成した。ここでは、図22A〜図22Eを参照して説明する。
比較例2では、ジャーナル軸受を模擬した、構造用鋼製の内径381mm、外径481mmの台金310を準備した。
まず、図22Aに示すように、台金310の内周面に、Niからなるメッキ層311を形成した。
図22Bに示すように、この状態で電気炉を用いた加熱装置312を用いて予熱することによりメッキ層311を台金310側に拡散させて台金310と一体化させた。
続いて、溶融状態のホワイトメタル2種(WJ2)からなる軟質合金である軸受メタル313を台金310の内部に鋳湯し(図22C参照)、台金310を回転速度200rpmで回転させた(図22D参照)。なお、この際、メッキ層311は、溶融状態の軟質合金と一体化して消滅した。
溶融状態の軟質合金の鋳湯終了後、冷却水314を台金310の外周面に噴霧して台金310を急冷し、溶融状態の軸受メタル313を凝固させ、軟質合金層を形成した(図22E参照)。
上記したように軟質合金層が作製された台金310から試験片を採取し、引張試験および密着強度試験を行った。なお、試験片の形状等は、実施例1におけるものと同じとした。また、引張試験および密着強度試験における測定方法および測定条件等は、実施例1におけるものと同じとした。また、軟質合金層(軸受メタル313)と台金310との界面における断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して界面反応層の厚さを測定し、その平均値を求めた。
引張試験および密着強度試験の結果を図8、図9に示す。また、界面反応層は観察されなかった。
(実施例1〜実施例2および比較例1〜比較例2のまとめ)
図8および図9に示すように、実施例1〜実施例2および比較例1における溶接肉盛法で形成された軟質合金層は、比較例2における遠心鋳造法で形成された軟質合金層に比べて、引張強度および密着強度がともに高く、さらに標準偏差は小さかった。これらのことから、溶接肉盛法を採用した場合の方が、遠心鋳造法を採用した場合に比べて、引張強度および密着強度に優れ、これらの強度のバラツキも少ない軟質合金層が得られることがわかった。また、溶接肉盛法を採用した中でも、実施例1および実施例2のように、台金を回転させることで溶接距離を一定に維持して形成された軟質合金層は、比較例1のように、溶接距離が一定に維持されずに形成された軟質合金層に比べて、引張強度および密着強度がともに高く、さらに標準偏差は小さかった。その傾向は、特に、密着強度およびその標準偏差において顕著であった。
ここで、図11は、実施例2における軟質合金層15と台金40との界面における断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際の写真である。図12は、比較例1における軟質合金層15と台金40との界面における断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際の写真である。実施例2における軟質合金層15と台金40との界面に形成された界面反応層16の厚さ(平均8μm)は、比較例1における軟質合金層15と台金40との界面に形成された界面反応層16の厚さ(平均75μm)に比べて十分に薄いことがわかった。
以上のことから、溶接距離を一定に維持することでアークを安定させ、台金と軟質合金層の界面に生成する界面反応層の厚さを適切に制御することにより、引張強度と密着強度が向上され、さらに強度のバラツキを抑えることができることが明らかとなった。
(実施例3)
実施例3では、実施例2で使用した軟質合金層形成装置10に、図5に示すように、冷却ガス噴出手段60および台金冷却手段70を設けた軟質合金層形成装置10を用いて軟質合金層15を形成した。他の条件は、実施例2における軟質合金層15の形成方法と同じである。
ここで、冷却ガス噴出手段60の冷却ガス61として、ArガスボンベからArガスを10L/minの流量で噴出させた。また、台金冷却手段70として、台金40を介してアーク発生部30に対向する位置に設けられたノズルを用い、このノズルから台金40の外周面に10℃の水を噴霧した。なお、この際の軟質合金層15の冷却平均速度は、44.1℃/秒程度であった。また、実施例1における軟質合金層15と同様に、台金40の内周面41に形成された軟質合金層15は、4層からなり、12mmの厚さを有していた。
上記したように軟質合金層15が作製された台金40から試験片を採取し、引張試験および密着強度試験を行った。なお、試験片の形状等は、実施例1におけるものと同じとした。また、引張試験および密着強度試験における測定方法および測定条件等は、実施例1におけるものと同じとした。また、軟質合金層15と台金40との界面における断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して界面反応層16の厚さを測定し、その平均値を求めた。また、軟質合金層15の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
引張試験および密着強度試験の結果を図13に示す。また、界面反応層16の厚さは、平均で5μmであった。図14は、軟質合金層15の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際の写真である。
(実施例4)
実施例4では、実施例3で使用した軟質合金層形成装置10のうち台金冷却手段70を除去し、冷却ガス噴出手段60のみを備えた軟質合金層形成装置10を用いて軟質合金層15を形成した。他の条件は、実施例3における軟質合金層15の形成方法と同じである。
ここで、冷却ガス噴出手段60の冷却ガス61として、ArガスボンベからArガスを10L/minの流量で噴出させた。なお、この際の軟質合金層15の冷却平均速度は、39.4℃/秒程度であった。また、実施例1における軟質合金層15と同様に、台金40の内周面41に形成された軟質合金層15は、4層からなり、12mmの厚さを有していた。
上記したように軟質合金層15が作製された台金40から試験片を採取し、引張試験および密着強度試験を行った。なお、試験片の形状等は、実施例1におけるものと同じとした。また、引張試験および密着強度試験における測定方法および測定条件等は、実施例1におけるものと同じとした。また、軟質合金層15と台金40との界面における断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して界面反応層16の厚さを測定し、その平均値を求めた。また、軟質合金層15の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
引張試験および密着強度試験の結果を図13に示す。また、界面反応層16の厚さは、平均で6μmであった。図15は、軟質合金層15の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際の写真である。
(実施例5)
実施例5では、実施例3で使用した軟質合金層形成装置10のうち冷却ガス噴出手段60を除去し、台金冷却手段70のみを備えた軟質合金層形成装置10を用いて軟質合金層15を形成した。他の条件は、実施例3における軟質合金層15の形成方法と同じである。
ここで、台金冷却手段70として、図5に示すような、台金40の外周面の下半分と接触するように設置された水冷ジャケット71を用いた。水冷ジャケットには、10℃の冷却水を供給した。ここで、図16には、軟質合金層15の温度変化の平均値の時間的変化を示している。この際の軟質合金層15の冷却平均速度は、31.7℃/秒程度であった。この冷却平均速度は、軟質合金層15の最高温度(450℃)から軟質合金層15を構成する材料の凝固開始温度(300℃)以下に低下するまでの速度である。また、実施例1における軟質合金層15と同様に、台金40の内周面41に形成された軟質合金層15は、4層からなり、12mmの厚さを有していた。
上記したように軟質合金層15が作製された台金40から試験片を採取し、引張試験および密着強度試験を行った。なお、試験片の形状等は、実施例1におけるものと同じとした。また、引張試験および密着強度試験における測定方法および測定条件等は、実施例1におけるものと同じとした。また、軟質合金層15と台金40との界面における断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して界面反応層16の厚さを測定し、その平均値を求めた。また、軟質合金層15の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
引張試験および密着強度試験の結果を図13に示す。また、界面反応層16の厚さは、平均で8μmであった。図17は、軟質合金層15の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際の写真である。
(実施例2〜実施例5のまとめ)
図13には、実施例3〜実施例5における引張試験および密着強度試験の結果に加えて、冷却ガス噴出手段60や台金冷却手段70の冷却手段を備えない実施例2における引張試験および密着強度試験の結果も示した。
図13に示すように、同じ溶接肉盛条件であっても、台金40や軟質合金層15を強制的に冷却した実施例3〜実施例5における軟質合金層15は、台金40や軟質合金層15を強制的に冷却しなかった実施例2における軟質合金層15に比べて、引張強度および密着強度ともに向上することがわかった。また、その効果は、実施例3、実施例4、実施例5の順に高く、強制冷却の度合い、すなわち軟質合金層15の冷却平均速度が速いほど高かった。なお、実施例3、実施例4、実施例5の中で冷却平均速度が一番遅い実施例5における冷却平均速度は、31.7℃/秒程度であった。
これは外部から軟質合金層15を強制的に冷却することにより、溶融状態の軟質合金層15が急速に凝固して結晶粒や析出層が微細化され、さらに台金40と軟質合金層15との界面に形成される界面反応層16およびCu偏析層の成長が抑制されたためと考えられる。ここで、図14、図15および図17に示した軟質合金層15の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際の写真を比較しても、強制冷却の度合い、すなわち軟質合金層15の冷却平均速度が速い実施例3、実施例4、実施例5の順に、結晶粒や析出層が微細化されていることが明らかである。また、図18は、冷却ガス噴出手段60や台金冷却手段70の冷却手段を備えない実施例2における軟質合金層15の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際の写真である。図18に示すように、冷却ガス噴出手段60や台金冷却手段70の冷却手段を備えない実施例2における軟質合金層15では、冷却ガス噴出手段60や台金冷却手段70の冷却手段を備えた実施例3〜実施例5における軟質合金層15よりも、結晶粒や析出層が大きいことが明らかである。ここで、図19には、実施例2における軟質合金層15の温度変化の平均値の時間的変化を示している。この際の軟質合金層15の冷却平均速度は、11.4℃/秒程度であった。この冷却平均速度は、軟質合金層15の最高温度(450℃)から軟質合金層15を構成する材料の凝固開始温度(300℃)に低下するまでの速度である。
(界面反応層16)
台金40と軟質合金層15との界面に形成されるFe、Sn、Sbを主成分とする界面反応層16は、薄すぎると密着強度が低下し、一方、厚過ぎると界面反応層16と軟質合金層15との界面にCu偏析層が形成され密着強度は低下する。したがって、界面反応層16は、所定の厚さで、台金40と軟質合金層15との界面に一様に形成されることが好ましい。
上記した実施例1〜実施例5における界面反応層16の測定結果から、界面反応層16の平均厚さが5μm以上の場合には、界面反応層16が台金40と軟質合金層15との界面にほぼ一様に形成されていることがわかった。一方、上記したCu偏析層は、界面反応層16の平均厚さが20μmを超えると顕著になる傾向がある。したがって、界面反応層16の平均厚さが5〜20μmになるように溶接肉盛条件を選定することにより、密着強度に優れた軟質合金層15を形成することが可能となる。
(界面反応層16におけるCu含有量)
ここでは、軟質合金部材50におけるCuの含有率を変えて、実施例2における界面反応層16の形成方法と同じ方法で界面反応層16を形成し、引張強度および密着強度を測定した。ここで、軟質合金部材50として、ホワイトメタル2種(WJ2)をベース材料として使用し、Cuの含有率を変化させた。
Cuの含有率が異なる各軟質合金層15が作製された台金40から試験片を採取し、引張試験および密着強度試験を行った。なお、試験片の形状等は、実施例1におけるものと同じとした。また、引張試験および密着強度試験における測定方法および測定条件等は、実施例1におけるものと同じとした。引張試験および密着強度試験の結果を図20に示す。
図20に示すように、本試験の範囲内において、軟質合金層15の引張強度は、Cu含有率の減少に伴い徐々に低下する傾向を示し、一方、密着強度は上昇する傾向を示すことがわかった。これはCu含有率の減少により軟質合金層15中のCuを主成分とする析出相の体積率が減少するため引張強度は低下し、台金40と軟質合金層15との界面に形成される界面反応層16の生成に伴うCu偏析層の生成が抑制されるため密着強度は向上すると考えられる。
図20に示すように、Cu含有率が1〜5重量%の場合には、軟質合金層15として十分な引張強度および密着強度を有している。また、この結果から、密着強度に直接影響を及ぼす第1層の軟質合金層15におけるCuの含有率は1〜5重量%とすることが好ましい。また、引張強度の向上を図るため、第2層以降は、第1層よりもCuの含有率を高くすることが好ましい。ここで、第2層を溶接肉盛した際に第1層の一部が再溶融し、第2層のCu量が低下する可能性があるため、第1層のCuの含有率を3〜5重量%とすることがさらに好ましい。
以上、本発明を一実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
10…軟質合金層形成装置、15…軟質合金層、16…界面反応層、20…台金支持部、30…アーク発生部、31…アーク、40…台金、41…内周面、42…中心軸、50…軟質合金部材、L…離間距離。

Claims (10)

  1. 円弧面からなる台金の内周面に、ロータと摺接する軟質合金からなる軟質合金層を溶接肉盛法により形成する軟質合金層形成装置であって、
    前記台金の内周の中心軸を回転軸として回転可能に前記台金を支持する台金支持部と、
    前記回転軸の軸方向に移動可能であり、かつ前記台金の内周面と所定の距離をおいて固定され、前記台金との間にアークを発生させるアーク発生部と
    を具備し、
    前記台金支持部により前記台金を回転させ、前記アーク発生部と前記台金の内周面との間の所定の距離を一定に維持しながら、前記アーク発生部によって発生したアークによって軟質合金からなる軟質合金部材を溶融して、前記台金の内周面に軟質合金層を形成することを特徴とする軟質合金層形成装置。
  2. 前記軟質合金層に冷却ガスを噴出する冷却ガス噴出手段をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の軟質合金層形成装置。
  3. 前記台金の外周面を冷却する台金冷却手段をさらに具備することを特徴とする請求項1または2記載の軟質合金層形成装置。
  4. 円弧面からなる台金の内周面に、ロータと摺接する軟質合金からなる軟質合金層を溶接肉盛法により形成する軟質合金層形成方法であって、
    前記台金の内周の中心軸を回転軸として回転可能に前記台金を支持する台金支持工程と、
    前記台金を回転させ、前記回転軸の軸方向に移動可能なアーク発生部と前記台金の内周面との間の所定の距離を一定に維持しながら、前記アーク発生部と前記台金との間に発生したアークによって軟質合金からなる軟質合金部材を溶融して、前記台金の内周面に軟質合金層を形成する軟質合金層形成工程と
    を具備することを特徴とする軟質合金層形成方法。
  5. 前記軟質合金層形成工程において、前記台金の内周面に第1の軟質合金層を形成する際の溶接電流よりも、前記第1の軟質合金層上に形成される第2の軟質合金層以降の軟質合金層を形成する際の溶接電流が小さいことを特徴とする請求項4記載の軟質合金層形成方法。
  6. 前記軟質合金部材が、CuおよびSbを含有するSnを主成分とする合金で構成され、前記台金の内周面に第1の軟質合金層を形成する際におけるCuの含有率が、前記第1の軟質合金層上に形成される第2の軟質合金層以降の軟質合金層を形成する際におけるCuの含有率よりも小さいことを特徴とする請求項4または5記載の軟質合金層形成方法。
  7. 前記第1の軟質合金層を形成する際におけるCuの含有率が1〜5重量%であることを特徴とする請求項6記載の軟質合金層形成方法。
  8. 軟質合金層形成工程において、前記軟質合金層に冷却気体を噴出することを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項記載の軟質合金層形成方法。
  9. 軟質合金層形成工程において、前記台金の外周面を冷却することを特徴とする請求項4乃至8のいずれか1項記載の軟質合金層形成方法。
  10. 前記台金と前記軟質合金層との界面に形成される界面反応層の平均厚さが5〜20μmであることを特徴とする請求項4乃至9のいずれか1項記載の軟質合金層形成方法。
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