本発明のイオン発生装置は、一方向に延在したイオン発生電極と、前記一方向に延在し、前記イオン発生電極と同様の長さを有する誘導電極と、を誘電体を介して配置させたイオン発生素子を備えたイオン発生装置であって、前記イオン発生素子は、前記一方向の一側において前記イオン発生電極の端部に第1配線を介して電気的に接続された第1給電端子と、前記一方向の他側において前記誘導電極の端部に第2配線を介して電気的に接続された第2給電端子と、を有し、前記第1給電端子及び前記第2給電端子は、前記一方向に沿って片側、且つ、前記一方向に関して前記イオン発生電極の端部及び前記誘導電極の端部より内側に配置されている。
本発明のイオン発生装置によると、上位の駆動回路への配線の引き回しが容易で、且つ、イオン発生装置の有効イオン発生領域を広くとることができる。また、第1給電端子及び第2給電端子が一方向に直交する直交方向に関して同じ側に設けられていることで、イオン発生素子の直交方向に関する長さを均等に小さくすることができる。
また、前記イオン発生素子を前記一方向に沿って複数配置していることが好ましい。これによると、第1給電端子及び第2給電端子がイオン発生電極の両端よりも一方向に関して内側に配置されていることで、イオン発生素子を一方向に沿って複数配置したイオン発生装置において、イオン発生電極及び誘導電極が一方向に沿って大きな隙間をとることなく延在することとなり、容易に一方向に長いイオン発生装置を提供することができる。
さらに、複数の前記イオン発生素子は、前記一方向に直交する方向に沿って搬送される被除電対象物に対してイオンを発生することが好ましい。これによると、一方向に長い被除電対象物を容易に除電することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る除電装置は、搬送面上を一方向に搬送される被除電対象物に対して正イオン及び負イオンを交互に発生させて、被除電対象物を除電するものである。図1は、除電装置の縦断面図である。図2は、除電装置の模式平面図である。図3は、イオン発生素子の取り付けられた素子ユニットの斜視図である。
図1に示すように、除電装置1は、図示しない支持部材によって支持されており、その下方において所定の間隔を空けて図示しない搬送装置の搬送面30a上をY方向(図1の左方から右方に向かう搬送方向)に搬送される被除電対象物30と対向している。
また、除電装置1は、空間を2つに仕切る仕切り板7が形成された筐体2を有している。図2に示すように、筐体2はX方向(搬送面30a内においてY方向と直交する方向)に長尺であり、この筐体2の上部空間にはX方向一端部から順に制御基板4及び3つの電源基板5が配置され、下部空間には3つの素子ユニット3及び3つのガスタンク6が配置されている。この3つの素子ユニット3及び3つのガスタンク6はX方向に沿ってそれぞれ配置されている。
図1に戻って、検出センサ25は、除電装置1よりも搬送方向上流側に配置されており、搬送面30a上を搬送される被除電対象物30と対向したときに、被除電対象物30が搬送されていることを検出し、検出信号を制御基板4に出力する。除電装置1と検出センサ25の搬送方向に関する距離は、検出センサ25から制御基板4に検出信号が入力されて所望の時間A経過後に被除電対象物30が除電装置1と対向するように設定されている。所望の時間A前に、検出センサ25により所望の時間Aより短い一定時間Bの間隔内で被除電対象物30を検出しているときは、除電装置1は、除電装置1の下に継続して被除電対象物が搬送されてきているものとして通常動作モードで動作する。所望の時間A前に、検出センサ25が所望の時間A内であるが、一定時間B以上被除電対象物30が搬送されていないことを検出したときは、除電装置1は放電電流検出モードで動作する。所望の時間A前に、検出センサ25が少なくとも所望の時間Aよりも長い時間C以上被除電対象物30が搬送されていないことを検出したときは、除電装置1はイオン発生素子のイオン発生のための駆動を停止する。詳しくは後述する。
図1〜図3に示すように、素子ユニット3は、樹脂成型体などからなる支持体3aを有し、X方向に長尺な形状となっており、Y方向から見たときに底面の一部を形成する逆ハの字状の斜面3c、3dを有している。斜面3c、3dには、後述する安定化電極26a、26bを挟んでX方向に長尺なイオン発生素子11、12がそれぞれ配置されている。なお、図2においては、除電装置1をY方向から見ており、イオン発生素子11のみが表れている。
イオン発生素子11、12は、長手方向をX方向と平行にして、Y方向に沿って近接配置されており、支持体3aの斜面3c、3dと対向している面と反対側のイオン発生面11a、12a(図6参照)から正イオン及び負イオンのいずれか一方の互いに異なるイオンを発生する。本実施形態においては、搬送方向下流側に位置するイオン発生素子11のイオン発生面11aから負イオンを発生し、搬送方向上流側に位置するイオン発生素子12のイオン発生面12aから正イオンを発生する。
支持体3aの斜面3cは、被除電対象物30の搬送される搬送面30aとの間で搬送方向下流側に45度開いた鋭角を形成している。したがって、斜面3cに配置されたイオン発生素子11のイオン発生面11aは、搬送面30aとの間で搬送方向下流側に45度開いた鋭角を形成している。また、支持体3aの斜面3dは、搬送面30aとの間で搬送方向上流側に45度開いた鋭角を形成している。したがって、斜面3dに配置されたイオン発生素子12のイオン発生面12aは、搬送面30aとの間で搬送方向上流側に45度開いた鋭角を形成している。つまり、イオン発生面11a、12aは、搬送面30aとの間において開いた方向は搬送方向に関して反対方向であるが同じ角度を形成している。
また、素子ユニット3は支持体3aの外面を覆うカバー9を有している。このカバー9により、イオン発生素子11、12の周縁部をカバーして支持体3aに固定する。また、カバー9は、イオン発生素子11、12のイオン発生部を露出させるよう開口部が形成されているとともに、後述するガス送出孔6aと対応する位置には複数の孔9aが形成されている。また、イオン発生素子11、12を搬送方向に関して挟んだ位置におけるカバー9の上部外面には、電流検出電極27a、27bがそれぞれ配置されている。2つの電流検出電極27a、27bは、イオン発生素子11、12の放電電流をそれぞれ検出するためのものであり、イオン発生素子11、12から発生するイオン分布に影響が少ない箇所に配置されている。すなわち、搬送面30aと直交する方向でイオン発生素子11、12よりも上方に配置されている。電流検出電極27a、27bには、カバー9の孔9aに対応した位置に孔が形成されている。なお、イオン発生素子から発生したイオンを所定電極より受けて、この電極に流れる電流量をもってイオン発生量とみなすことができ、従来から知られている技術である。
本実施態様においては、このような素子ユニット3がひとつの筐体2に対し3ユニット、X方向に沿って配置される。
次に、イオン発生素子11、12について説明する。図4は、イオン発生素子の平面図である。図5は、図4の一点鎖線領域の拡大図である。図6は、図1の概略部分拡大図である。なお、イオン発生素子11、12は、印加されるパルス電圧が異なることで、互いに極性の異なるイオンを発生するだけで、構成は同様であるため、イオン発生素子11についてのみ説明し、イオン発生素子12についての説明は省略する。図4に示すように、素子ユニット3がX方向に沿って複数連結される(図2、図3参照)ことにより、実質的に複数のイオン発生素子11がX方向に配置されることになる。
イオン発生素子11は、図4〜6に示すように、誘電体15の表面15a及び裏面15bにイオン発生電極16及び誘導電極17a、17bをそれぞれ配置したものである。誘電体15の表面15aとは支持体3aの斜面3cと反対側の面であり、裏面15bとは斜面3cと対向する面である。
誘電体15は、マイカを接着剤により多数積層させた長尺な矩形状の板である。誘電体15は、本実施形態においては70μm厚となっている。なお、誘電体15は、マイカの積層体に限らず、セラミックス、ガラス、ポリマーなどであってもよい。また、誘電体15の表面15aには、電源基板5と電気的に接続されて、電源基板5から印加される電圧が給電される給電端子62、64がそれぞれ形成されている。給電端子62、64は、X方向に沿って重なり、且つ、イオン発生電極16の両端よりもX方向に関して内側に配置されている。
イオン発生電極16は、誘電体15の表面15aにステンレスで形成されており、線状電極16aと線状電極16aから長手方向と直交する短手方向に突出した複数の微細な三角形状の突起電極16bとを有している。複数の突起電極16bは、X方向に沿って等間隔に線状電極16aの短手方向両側に2列の千鳥状に配置されている。本実施形態において、線状電極16aの幅X、突起電極16bの底辺の長さY及び突起電極16bの高さZは0.1mmとなっている。また、突起電極16bを形成する2つの辺から形成される角度αは、53.13度となっており、隣接する2つの突起電極16bの頂点16c間の距離Lは、0.3mmとなっている。
また、イオン発生電極16の一方端部(図4の下端部)は、イオン発生電極16の両端よりもX方向に関して内側に折れ曲がった配線61(第1配線)を介して給電端子62(第1給電端子)に電気的に接続されている。
誘導電極17a、17bは、誘電体15の裏面15bにイオン発生電極16と同様にステンレスで形成されており、イオン発生電極16に平行となっている。また、2本の線状電極17a、17bは、イオン発生電極16から誘導電極17a、17bを見たときに、イオン発生電極16の短手方向両側に配置されている。本実施形態において、突起電極16bから誘導電極17bまでの短手方向に関する距離Kは、0.05mmとなっている。なお、イオン発生電極16及び誘導電極17a、17bの材料は、ステンレスに限らず、カーボン、タングステン、アルミニウム、銅、金、タンタル、タングステンまたはニッケル等の単独金属、もしくは、これらの合金、さらには導電性セラミックスなどであってもよい。
また、誘導電極17a、17bの一方端部(図4の上端部)は、誘導電極17a、17bの両端よりもX方向に関して内側に折れ曲がった配線63(第2配線)及び図示しないスルーホールを介して給電端子64(第2給電端子)に電気的に接続されている。
また、誘電体15の表面15a全体には、誘電体15の表面15a及びイオン発生電極16を被覆する表面保護層18が形成されている。表面保護層18は、誘電体15の剥離防止や耐湿性向上を目的として形成されており、例えば、シリカ系コート材やアクリル系コート材から成る。
また、誘電体15の裏面15b全体には、誘電体15の裏面15b及び誘導電極17a、17bを被覆する裏面保護層19が形成されている。裏面保護層19は、例えば、シリコン系コート材やエポキシ系コート材から成る。
図5に示すように、イオン発生素子11の裏面保護層19と支持体3aの斜面3cとの間には、安定化電極26aが配置されている。この安定化電極26aにはイオン発生電極16から発生するイオンと同極性のバイアス電圧が印加されている。つまり、イオン発生素子11のイオン発生電極16からは負イオンが発生するため、イオン発生素子11に対応する安定化電極26aにはマイナスのバイアス電圧が印加されている。また、イオン発生素子12のイオン発生電極16からは正イオンが発生するため、イオン発生素子12に対応する安定化電極26bにはプラスのバイアス電圧が印加されている。本実施形態ではそれぞれマイナス12V、プラス12Vのバイアス電圧を印加している。
イオン発生素子11は、イオン発生電極16と誘導電極17a、17bとの間に、誘導電極17a、17bを基準電位としてマイナスのパルス電圧を印加することで、イオン発生電極16から負イオンを発生する。また、イオン発生素子12は、イオン発生電極16と誘導電極17a、17bとの間に、誘導電極17a、17bを基準電位としてプラスのパルス電圧を印加することで、イオン発生電極16から正イオンを発生する。
ここで、イオン発生素子11のイオン発生電極16から負イオンの発生を継続すると、イオン発生電極16から発生するイオン量が減少する。これは、安定化電極26aが配置されていなければ、裏面保護層19がイオン発生電極16から発生するイオンと逆極性に帯電するためと考えられる。支持体3aが特に樹脂製の場合はこの裏面保護層19に加えて支持体3aも帯電する。マイナスイオンを発生するイオン発生素子11に対して、本実施形態のように、マイナスのバイアス電圧を印加した安定化電極26aを設けることにより、裏面保護層19またはこれに追加して支持体3aが帯電することを防止する。これにより、イオン発生電極16から発生するイオン量は減少せず安定する。
図1及び図2に戻って、3つのガスタンク6は中空であり、図示しない連結部材を介して連通している。ガスタンク6には、2つのイオン発生素子11、12のY方向両側において下方に開口した2つのガス送出孔6aがX方向に沿って複数形成されている。ガスタンク6は、図示しないガス供給源に接続されている。ガスとしては、エアガスまたは窒素などの不活性ガスが適当である。ガス供給源から供給された圧縮ガスは、ガスタンク6のガス送出孔6aから搬送面30aと直交する方向に向かってカバー9の孔9a及び電流検出電極27a、27bの孔を介して送出される。つまり、ガスタンク6の複数のガス送出孔6aから送出されたガスは、搬送方向に関して2つのイオン発生素子11、12を挟んで、搬送面30aと直交する方向に向かった状態でX方向に延在したガスカーテンを形成することとなる。
ここで、2つのイオン発生素子11、12はイオンを発生するため、極性に関係なく静電気によりゴミが付着しやすくなっている。そこで、ガスカーテンを形成することで、イオン発生素子11、12のイオン発生面11a、12aから搬送面30aへ向かって発生するイオンの分布領域をガスカーテンによって外部から遮断するため、周囲のゴミがイオン発生面11a、12aに付着しづらくなる。また、イオン発生面11a、12aから発生したイオンがより効率よく搬送面30aに流れ、一層効果的に被除電対象物30の除電を行うことができる。さらに、2つのイオン発生面11a、12aから発生したイオンが分散するのを防止することができる。また、ガスカーテンは、搬送面30aと直交する方向に向かって形成されているため、2つのイオン発生面11a、12aから発生した正イオン及び負イオンが混在しにくくなり、中和しにくくなる。
次に、除電装置1の電気的構成について図面を参照しつつ説明する。図7は、除電装置の電気的構成を示すブロック図である。図8は、除電装置の各種信号の送受信を示す図である。図9は、電源基板の内部回路図である。図10は、電源基板から2つのイオン発生素子にそれぞれ印加される電圧波形を示す図である。図11は、イオン発生素子による被除電対象物の除電工程を説明する概略平面図であり、(a)は除電中であり、(b)は放電電流検出中である。
図7及び図8に示すように、3つの電源基板5は、対応する素子ユニット3内の各電気要素と接続される。すなわち、電源基板5は、給電端子62、64を介してそれぞれ対応するイオン発生素子11、12に電気的に接続されている。また、電源基板5は、それぞれ対応する安定化電極26a、26bに電気的に接続されている。イオン発生素子11、12に対しては、後述するイオン発生電圧制御部31(制御基板4)の制御により、種々の電圧が供給される。また、電源基板5は、電流検出電極27a、27bと電気的に接続されている。電流検出電極27a、27bに対しては、後述する電流検出電圧制御部32の制御により、種々の電圧が供給される。また、各電源基板5は、電流検出電極27a、27bより放電電流を検出して、制御基板4にフィードバックしている。
図9に示すように、各電源基板5は、電源51と、駆動回路52と、トランス53と、2次回路54とを有している。駆動回路52、トランス53、2次回路54は、イオン発生素子11、12にそれぞれ対応して設けられる。電源51から出力された電圧は、それぞれ駆動回路52、トランス53、2次回路54を介してそれぞれイオン発生素子11、12に印加される。このとき、イオン発生素子11にはマイナスのパルス電圧が印加されるため、負イオンを発生し、イオン発生素子12にはプラスのパルス電圧が印加されるため、正イオンを発生する。
制御基板4には、各種動作を制御するプログラムやデータなどが格納されたROM(Read Only Memory)、各種動作を制御する信号を生成するために各種演算を実行するCPU(Central Processing Unit)、CPUでの演算結果などのデータを一時保管するRAM(Random Access Memory)などが含まれている。あるいは、制御基板4は、ロジックIC、ASICまたはFPGAなどで構成してもよい。また、制御基板4は、図7に示すように、イオン発生電圧制御部31及び電流検出電圧制御部32として機能する。
イオン発生電圧制御部31は、通常動作モード及び放電電流検出モード時、すなわち除電装置1の下に継続して被除電対象物30が搬送されてくる間(通常動作モード時)、及び、除電装置1の下に所望の時間A内であるが一定時間B以上被除電対象物30が搬送されない間(放電電流検出モード時)は、電圧の印加タイミングをずらしながら、イオン発生素子11に対してマイナスのパルス電圧を印加するとともに、イオン発生素子12に対してプラスのパルス電圧を印加するように電源基板5を制御する。また、イオン発生電圧制御部31は、所望の時間A前に、検出センサ25が少なくとも所望の時間Aより長い時間C上被除電対象物30が搬送されていないことを検出したとき、すなわち、除電装置1の下に継続して被除電対象物30が搬送されず、次の被除電対象物30の除電のために待機している間は、イオン発生素子11、12に対して電圧印加を停止するように電源基板5を制御する。
具体的には、図10に示すように、イオン発生電圧制御部31は、電源基板5からイオン発生素子12に対して1周期(例えば、10〜500Hz)の間に2度連続してプラスのパルス電圧を印加させた後に、プラスのバイアス電圧を印加させる電圧印加サイクルV1を繰り返す。また、イオン発生電圧制御部31は、電源基板5からイオン発生素子11に対して1周期の間に2度連続してマイナスのパルス電圧を印加させた後に、マイナスのバイアス電圧を印加させる電圧印加サイクルV2を繰り返す。本実施形態において、パルス幅Bは5μs、パルス間隔Cは300μs、出力電圧Vは2.4kVpkとなっている。なお、この1周期におけるパルス電圧の数やパルス電圧のピーク値は発生させたいイオン発生量によって種々に変化させることができる。
このとき、イオン発生電圧制御部31は、電源基板5からイオン発生素子12に対してプラスのバイアス電圧を印加させている間に、イオン発生素子11に対してマイナスのパルス電圧を印加させるとともに、イオン発生素子11に対してマイナスのバイアス電圧を印加させている間に、イオン発生素子12に対してプラスのパルス電圧を印加させる。つまり、イオン発生電圧制御部31は、電源基板5からイオン発生素子11、12に対して交互にパルス電圧を印加させている。したがって、除電装置1はイオン発生素子11、12から正イオン及び負イオンを交互に発生して、被除電対象物30を除電している。
また、イオン発生電圧制御部31は、電流検出電極27a、27bにより検出した放電電流が目標電流と一致するように、つまりイオン発生素子11、12から目標とするイオン量を発生させるように電源基板5からイオン発生素子11、12に印加するパルス電圧のピーク値を変化させるフィードバック制御を行う。
電流検出電圧制御部32は、図11(a)に示すように、除電装置1の下に被除電対象物30が継続して搬送されてくることを検出している通常動作モードでは、正イオンを発生するイオン発生素子12側に配置した電流検出電極27bに電源基板5からプラスのバイアス電圧を印加させる。また、電流検出電圧制御部32は、負イオンを発生するイオン発生素子11側に配置した電流検出電極27aに電源基板5からマイナスのバイアス電圧を印加させる。電流検出電極27a、27bは、搬送面30aと直交する方向にあってイオン発生素子11、12よりも上方で、イオン発生素子11、12から発生するイオン分布に影響が少ない位置に配置したものである。しかしながら、このような電極を設けることによって使用中不用意に好ましくない電圧が電極に印加される場合があり、イオン発生素子11、12より発生したイオンを電極検出電極27a、27bに引き込んだり反発させたりして悪影響を及ぼす。前記のように、電流検出電極27a、27bに近傍のイオン発生素子11、12から発生するイオンと同極性のバイアス電圧を印加することで、発生したイオン分布に影響がないようにできる。本実施形態ではバイアス電圧はそれぞれプラス12V、マイナス12Vである。
また、電流検出電圧制御部32は、図11(b)に示すように、所望の時間A前に、検出センサ25が所望の時間A内であるが、一定時間B以上被除電対象物30が搬送されていないことを検出した、いわゆる放電電流検出モード時では、電流検出電極27bに電源基板5からマイナスのバイアス電圧を印加させるとともに、電流検出電極27aに電源基板5からプラスのバイアス電圧を印加させる。このように、電流検出電極27a、27bに近傍のイオン発生素子11、12から発生するイオンと逆極性のバイアス電圧を印加することで、発生したイオンを電流検出電極27a、27bに強制的に引き寄せることにより放電電流を正確に検出する。本実施形態では、それぞれマイナス12V、プラス12Vのバイアス電圧を印加した。
なお、ガスタンク6のガス送出孔6aからガスを送出させる期間はガス、前記通常動作モード時及び放電電流検出モード時のみであってもよいが、イオン発生素子11、12へのゴミの付着防止の観点からイオン発生のための駆動を停止している待機中も含め常時であることが好ましい。
次に、除電装置1による被除電対象物30の除電工程について説明する。図11(a)に示すように、イオン発生素子11、12のY方向に沿った縦断面においては、イオン発生中心部であるイオン発生電極16部分からイオンが発生している。搬送面30aと直交する方向に関する、イオン発生素子11、12から搬送面30aまでの距離Mは、この2つのイオン発生素子11、12の2つのイオン発生電極16間の距離N以上となっている。本実施形態においては、距離Nは10mmとなっており、距離Mは10〜500mmが好ましい。この距離関係において、除電装置1は効果的に被除電対象物30の除電を行うことができる。距離Mが距離N以下では、各イオン発生素子11、12から発生するイオン分布が搬送面30a上で独立した分布となり、被除電対象物30に過帯電をもたらす恐れがある。距離Mを距離N以上とすることにより、搬送面30a上に各イオン発生素子11、12から発生するイオン分布の共存部分を形成し、被除電対象物30の過帯電を防止することができる。また、距離Mがあまり大きすぎると、各イオン発生素子11、12から発生するイオンが搬送面30aまで運ばれてくるまでに外方向に拡散し、またイオンに過度な中和を生じさせる。距離Mは所定距離内に設定することが望ましい。
通常動作モード時において、被除電対象物30が搬送面30aに沿って搬送方向に搬送され、除電装置1と被除電対象物30とが対向するとき、この発生した正イオン及び負イオンのうち、被除電対象物30の帯電極性と逆極性のイオンは被除電対象物30に引き寄せられることとなり、被除電対象物30は除電される。このとき、前記のように各イオン発生素子11、12から発生する負イオン及び正イオンの分布に共存領域が存在することによって、被除電対象物30の過帯電が防止される。
このとき、X方向に関して各イオン発生素子11、12の給電端子62、64がイオン発生電極16を基準として同じ側に設けられていることで、給電端子62、64から電源基板5への配線の引き回しが容易となる。また、イオン発生素子11、12がそれぞれX方向に沿って複数配置されたものにあっては、給電端子62、64がイオン発生電極16の両端よりもX方向に関して内側に配置されていることで、イオン発生電極16及び誘導電極17a、17bがX方向に沿って隙間を大きくとることなく延在することとなり、容易に一方向に長いイオン発生素子を形成することができる。これにより、X方向に長い被除電対象物30を容易に除電することができる。さらに、例えば図1、図3及び図4などにより理解できるように、イオン発生装置としてX方向の端部において、給電端子62、64がイオン発生電極16の両端よりもX方向に関して内側に配置されていることで、イオン発生分布の有効領域を広げることができる。
なお、搬送方向下流側に位置するイオン発生素子11のイオン発生面11aは、搬送面30aと平行ではなく、搬送方向下流側に45度傾いている。すると、イオン発生素子11から発生する負イオンはイオン発生面11aに沿って分布しているため、イオン発生素子11から発生する負イオンの量は、搬送方向上流側から下流側に向かうに連れて少なくなっている。したがって、除電が完了して搬送方向下流側に搬送される被除電対象物30に負イオンが運ばれることは少なく、余分な帯電を生じさせることを防止できる。
また、搬送方向下流側に45度傾いていることによって、イオン発生面11aは被除電対象物30に対して所定面積対向し、被除電対象物30にイオンを効率よく運ぶことができる。さらに、本実施形態において、搬送側上流側に位置するイオン発生素子12のイオン発生面12aも、搬送面30aとの間で搬送方向上流側に45度傾けている。つまり、2つのイオン発生素子11,12のイオン発生面11a、12aは、搬送面30aとの間において開いた方向は搬送方向に関して反対方向であるが同じ角度を形成している。これによると、2つのイオン発生素子11,12において、それぞれイオン発生面11a、12aに被除電対象物30に対して所定面積対向する部分が存在し、両方のイオンを被除電対象物30に効率よく運ぶことができる。また、特に傾きが同じ角度であることによって、2つのイオン発生素子11、12から被除電対象物30に対して、負イオン及び正イオンを均等に運び、且つイオン分布も共存領域を含めより均等に形成することができる。負イオン及び正イオンが交互に発生する場合は、被除電対象物30上にイオンを運ぶ途中、過度に、あるいは急激にイオンが中和されることを回避可能であり、効率よくイオンを運び、且つ、有用なイオンの共存領域を形成できる点で好ましい。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、本実施形態においては、イオン発生面11a、12aと搬送面30aとの間で形成される角度は45度であったが、鋭角であればいかなる角度であってもよい。ただし、45度が最も除電効率を高く保ちつつ、被除電対象物30に余分な帯電が生じにくくできる。
また、イオン発生面11aと搬送面30aとの間で形成される角度と、イオン発生面12aと搬送面30aとの間で形成される角度は同じ角度でなくてもよい。
さらに、安定化電極26a、26bは、接地されていてもよい。安定化電極26a、26bを接地させることで、裏面保護層19や支持体3aへの帯電が防止できるため、イオン発生電極16からのイオンの発生は安定する。
加えて、イオン発生電極16の突起電極16bの形状は、三角形状に限らず、波状、円状、格子状などいかなる形状であってもよい。
また、本実施形態においては、イオン発生素子11、12から正イオン及び負イオンを交互に発生させていたが、同時に発生させてもよい。
さらに、除電装置1の周囲にゴミが浮遊しておらず、イオン発生素子11、12から発生したイオンがガスの気流を用いずとも被除電対象物30に到達可能であれば、ガスタンク6を備えていなくてもよい。
加えて、本実施形態においては、イオン発生素子11、12、電源基板5及びエアタンク6はX方向に沿って3つ配置していたが、1つでもよいし、複数配置するものであってもよい。設計されたイオン発生素子11、12の長さと希望の除電装置1のX方向の長さにしたがって任意の個数が選択可能である。
また、本実施形態においては、イオン発生素子11から負イオンを発生し、イオン発生素子12から正イオンを発生していたが、イオン発生素子11から正イオンを発生し、イオン発生素子12から負イオンを発生する構成であってもよい。また、イオン発生素子11で時間的に負イオン及び正イオンを交互に繰り返し、イオン発生素子12で正イオン及び負イオンを交互に繰り返すような構成であってもよい。
さらに、イオン発生素子11、12に対する印加電圧は、図10の例では常時バイアス電圧を印加する方法を利用しているが、イオン発生のため、アース電圧(0ボルト)より所定のピークのパルス電圧を印加するような駆動方法でもよく、公知、周知の駆動方法が利用できる。