JP2010001777A - シール装置および蒸気タービン - Google Patents

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Abstract

【課題】組立管理面から要求される最小限の間隙を確保しつつ、定常運転時における間隙を小さくし、タービン性能を向上させることができるシール装置および蒸気タービンを提供することを目的とする。
【解決手段】シール装置10は、環状を形成する周方向に複数に分割され、それぞれが静翼外輪22に形成された溝部23に嵌合されたシールリング30と、このシールリング30の動翼12側の周面に形成された快削材層32と、動翼12のシールリング30に対向する側の周面に突出して周設された環状の動翼フィン13とを備える。また、快削材層32と動翼フィン13との間に形成される周方向の少なくとも所定の4個所における間隙CTが、他の部分の間隙CTよりも大きく構成される。
【選択図】図3

Description

本発明は、蒸気タービン等の軸流ターボ機械に使用されるシール装置およびこのシール装置を備える蒸気タービンに関する。
発電プラントに用いられる蒸気タービンにおいて、地球温暖化等の環境問題や省エネルギの観点から、さらなる高効率化が要請されている。
蒸気タービンの性能を向上させるには、通路部の内部効率を向上させることが重要となる。内部効率を向上させる方法として、翼列の損失低減、吸排気部の圧力損失の低減、並びに通路部より蒸気が漏洩し動力を減ずるために発生する漏洩損失の低減等が挙げられる。
例えば、漏洩損失の低減が図られたシール装置が開示されている(例えば、特許文献1−2参照。)。これらの発明は、周方向に複数分割されたシールリング部をバネまたは板バネによりケーシングに押し付ける構造を備えている。また、これらの発明では、回転体と対向するシールリング内周面にアブレダブルシール材を設け、静止部と回転体との接触による構成部材の損傷や変形、静止部と回転体とが接触した際の摩擦熱による回転体の曲がり等を抑制し、回転部端面とシールリング内周面との間隙を小さくし、漏洩流体を低減して、タービン効率の向上を図っている。
図14は、アブレダブルシール材を用いたシール装置を備えた従来の軸流タービンにおけるシール部の断面を示した図である。
図14に示すように、静翼外輪310と静翼内輪311との間に固設された複数枚の静翼312と、タービンロータ320に植設された複数枚の動翼321とにより段落が形成されている。動翼321と対向する静翼外輪310に形成された溝部313にシールリング330が嵌合され、シールリング330の嵌合部331は、板バネ340によりシールリング330の半径方向に力が加えられ、溝部313の半径方向接触面314に押し付けられている。動翼321に対向するシールリング330の内周面には、アブレダブルシール材332が設けられている。また、アブレダブルシール材332と動翼321の先端部に設けられた動翼フィン322との間には間隙CTが設けられている。
一方、タービンロータ320と対向する静翼内輪311に形成された溝部315にシールリング333が嵌合され、シールリング333の嵌合部334は、板バネ341によりシールリング333の半径方向に力が加えられ、溝部315の半径方向接触面316に押し付けられている。タービンロータ320と対向するシールリング333の内周面には、アブレダブルシール材335が設けられている。また、アブレダブルシール材335とタービンロータ320の外周面に設けられたロータフィン323との間には間隙CNが設けられている。
このように、静翼312および動翼321からなる段落をタービンロータ軸方向に単段落または複数段落構成することで蒸気タービンは構成される。
通常、上記したような軸流タービンにおいて、静翼外輪310や静翼内輪311等の静止部と、タービンロータ320や動翼321等の回転体との接触は、タービンの起動時および停止時に発生するのが一般的である。機器の温度が安定している定常運転時(発電状態)とは相違して、起動時および停止時には急激な温度変化、回転昇速、回転降速が生じる。そのため、過渡的なケーシングや動翼321等の熱伸び、熱変形、遠心力による動翼321等の伸び、さらには、危険速度域を通過する際の振動変位の増加に伴う、静止部と回転体との接触が発生しやすい。
軸流タービン内部における静止部と回転体の接触は、回転体と静止部との間隙CT、CNが小さいために発生するものであるが、この間隙CT、CNが大きいと通路部を流れる作動流体の流量が減少するためにタービンおいて発生する動力が小さくなり、タービン性能が低下する。そのために、機器の損傷を発生させることなく運転することができる最小の間隙に設定することが要求される。
一方、軸流タービンの起動時および停止時には、前述したように過渡的な温度変化の発生により、通路部を構成するケーシング、動翼321、タービンロータ320、静翼外輪310、静翼内輪311の熱伸び量、熱変形量がそれぞれ変化する。これらの熱伸び、熱変形の方向は、タービンロータの、半径方向、軸方向、周方向に変化するが、接触の可能性が大きい半径方向の過渡的な伸びを予測することが特に重要となる。
しかしながら、それぞれの部位における過渡的なタービンロータ半径方向の熱伸び差の予測は、機器の運転状態、機器の構成、組立状態により変化するために正確な予測は困難である。そのため、機器の健全性を保持しつつ、より静止部と回転体との間隙を小さく設定できるように、静止部と回転部との間に、快削性を持ったアブレダブルシール材332、335を設けている。これによって、過渡的な熱変形、熱伸び等による接触が発生しても、アブレダブルシール材が磨耗し機器の損傷を防止することができる。さらに、アブレダブルシール材332、335を備えたシールリング330、333は、板バネ340、341により固定されているが、回転体との接触時には半径方向に可動できる構造であり、接触による損傷を最小限にする構造となっている。
特開平2−298604号公報 特開2003−65076号公報
上記した、アブレダブルシール材335を用いたシール装置を備えた従来の軸流タービンにおいて、機器組立時、動翼フィン322とアブレダブルシール材332との間には、周方向に一定の間隙CTを、ロータフィン323とアブレダブルシール材335との間には、周方向に一定の間隙CNを確保している。組立時の設計間隙設定量は、機器の性能面から要求される間隙と組立管理面から要求される間隙(精度良く計測管理できる間隙)との両方面より考慮する必要がある。
機器の性能面からの要求は、定常運転時に最小となる間隙に設定することである。この最小の間隙とは、過渡時に発生する静止部と回転体との変形量で決定される。一方、組立管理面から要求は、タービン組立状態を所定の精度に確保するために必要な間隙に設定することである。この間隙は、タービン組立の際に、位置ずれなどを把握するための計測を的確に行うために必要な最小限の間隙である。
上記した機器の性能面から要求される間隙と組立管理面から要求される間隙との間には相違が生じる。組立管理面から要求される間隙が、機器の性能面からの要求される間隙より小さい場合には、機器の性能上の問題とはならない。一方、組立管理面から要求される間隙が、機器の性能面からの要求される間隙より大きい場合には、機器の性能面からの要求に基づいて、運転時の間隙を最小に確保することができないため、タービン性能が低下するといった問題があった。
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、組立管理面から要求される最小限の間隙を確保しつつ、定常運転時における間隙を小さくし、タービン性能を向上させることができるシール装置および蒸気タービンを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、回転軸を中心に回転する回転構造物と、前記回転構造物の外周に配設された静止構造物との間に備えられた環状のシール装置であって、周方向に複数に分割されたそれぞれが前記静止構造物に保持されるとともに、全体として環状に形成されるシールリング部材と、前記シールリング部材の前記回転構造物側の周面に形成された快削材層と、前記回転構造物の前記シールリング部材に対向する側の周面に突出して周設された環状のシールフィンと、前記シールリング部材と前記シールフィンとの間に形成される間隙が周方向に異なる組立位置調整部とを備えることを特徴とするシール装置が提供される。
また、本発明の一態様によれば、回転軸を中心に回転する回転構造物と、前記回転構造物の外周に配設された静止構造物との間に備えられた環状のシール装置であって、周方向に複数に分割されたそれぞれが前記静止構造物に保持されるとともに、全体として環状に形成されるシールリング部材と、前記シールリング部材の前記回転構造物側の周面に突出して周設された環状のシールフィンと、前記回転構造物の前記シールリング部材に対向する側の周面に形成された快削材層と、前記シールリング部材と前記シールフィンとの間に形成される間隙が周方向に異なる組立位置調整部とを備えることを特徴とするシール装置が提供される。
さらに、本発明の一態様によれば、タービンロータと前記タービンロータに植設された動翼とを含む回転構造物と、静翼と前記静翼の内径端縁に沿って設けられた静翼内輪と前記静翼の外径端縁に沿って設けられた静翼外輪とを含む静止構造物とを備えた蒸気タービンであって、上記したいずれかのシール装置を備えたことを特徴とする蒸気タービンが提供される。
本発明のシール装置および蒸気タービンによれば、組立管理面から要求される最小限の間隙を確保しつつ、定常運転時における間隙を小さくし、タービン性能を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態のシール装置10を備えた蒸気タービンにおけるシール部の断面を示した図であり、後述する図3のA−A断面に相当する図でもある。図2は、本発明の第1の実施の形態のシール装置10を備えた蒸気タービンにおけるシール部の断面を示した図であり、後述する図3のB−B断面に相当する図でもある。図3は、本発明の第1の実施の形態のシール装置10を備えた蒸気タービンをタービンロータ軸方向から見たときの断面を示す図である。
図1に示すように、本発明に係る蒸気タービンは、タービンロータ11とタービンロータ11に植設された動翼12とを含む回転構造物と、静翼20と静翼20の内径端部に沿って設けられた静翼内輪21と静翼20の外径端部に沿って設けられた静翼外輪22とを含む静止構造物とを備える。そして、静翼内輪21と静翼外輪22との間に固設された複数枚の静翼20と、タービンロータ11に植設された複数枚の動翼12とにより段落が形成される。
動翼12と対向する静翼外輪22に形成された溝部23にはシールリング30が嵌合されて保持されている。このシールリング30の嵌合部31は、バネ部材40によりシールリング30の半径方向に力が加えられ、溝部23の半径方向接触面24に押し付けられている。ここで、バネ部材40は、シールリング30を溝部23の半径方向接触面24に押し付けるための押圧力をシールリング30に負荷することができる弾性部材であればよく、例えば、板バネなどが使用される。なお、シールリング30は、バネ部材40により押し付けられているが、半径方向にも可動できる構造となっている。
また、動翼12に対向するシールリング30の内周面には、快削材で形成される快削材層32が形成されている。この快削材層32は、例えばアブレダブルシール材で構成される。また、快削材層32と動翼12の先端部に設けられた動翼フィン13との間には間隙CTが設けられている。
また、図3に示すように、シールリング30は、シールリング30の環状を形成する周方向に複数に分割(例えば、図3では、S1〜S10の10分割)され、それぞれが溝部23に嵌合されて保持され、バネ部材40により溝部23の半径方向接触面24に押し付けられている。
一方、タービンロータ11と対向する静翼内輪21に形成された溝部25にはシールリング33が嵌合されて保持されている。このシールリング33の嵌合部34は、バネ部材41によりシールリング33の半径方向に力が加えられ、溝部25の半径方向接触面26に押し付けられている。なお、バネ部材41は、上記したバネ部材40と同様の構成である。なお、シールリング33は、バネ部材41により押し付けられているが、半径方向にも可動できる構造となっている。
タービンロータ11と対向するシールリング33の内周面には、快削材で形成される快削材層35が形成されている。この快削材層35は、例えばアブレダブルシール材で構成される。また、快削材層35とタービンロータ11の外周面に設けられたロータフィン14との間には間隙CNが設けられている。
また、図3に示したシールリング30と同様に、シールリング33は、シールリング33の環状を形成する周方向に複数に分割され、それぞれが溝部25に嵌合され、バネ部材41により溝部25の半径方向接触面26に押し付けられている。
このように、静翼20および動翼12からなる段落をタービンロータ軸方向に単段落または複数段落構成することで蒸気タービンは構成される。
ここで、図1〜図3に示すように、上半部と下半部との境界に面する下半部側、上半部の最上部および下半部の最下部における4個所の、快削材層32と動翼フィン13との間隙CTを所定の周方角度(例えば、2〜3度程度)に亘って、他の部分の快削材層32と動翼フィン13との間隙CTよりも大きくしている。また、上半部と下半部との境界に面する下半部側、上半部の最上部および下半部の最下部における、快削材層35とロータフィン14との間隙CNを所定の周方角度(例えば、2〜3度程度)に亘って、他の部分の快削材層35とロータフィン14との間隙CNよりも大きくしている。ここで、本実施の形態においては、これらの、他の部分の間隙CT、CNよりも間隙CT、CNを大きく取る部分において、間隙CT、CNが円方向にステップ状となるように設定している。すなわち、静止構造物側であるシールリング30、33の、上半部と下半部との境界に面する下半部側、上半部の最上部および下半部の最下部における4個所に、ステップ状の溝部が設けられている。そして、この溝部における動翼フィン13あるいはロータフィン14までの間隙CTあるいはCNが、他の部分における快削材層32、35と動翼フィン13あるいはロータフィン14の間隙CTあるいはCNよりも大きくなるように構成されている。
また、図3に示すこれらの周方向に4個所設けられた間隙CT、CNをステップ状に大きく構成した部分(溝部)は、タービン組立状態を所定の精度に確保するために必要な間隙、すなわち組立位置調整部である。すなわち、この組立位置調整部における間隙CT、CNの水平方向(図3では左右方向)および垂直方向(図3では上下方向)の寸法に基づいて、回転構造物と静止構造物とが所定の適正な位置に配置されているかを判断する。
具体的には、水平方向(図3では左右方向)の設置位置が適正であるか否かは、例えば、上半部と下半部との境界に面する下半部側における間隙CT、CNに、所定のサイズに構成されたスケールを挿入することで判定する。一方、垂直方向(図3では上下方向)の設置位置が適正であるか否かは、例えば、タービン組立の際において、上半部の最上部および下半部の最下部における間隙CT、CNに、動翼フィン13、ロータフィン14および快削材層32、35を構成する材料よりも軟性の金属材料等からなる、所定のサイズに構成された棒状の柱体を挿入し、動翼フィン13、ロータフィン14によってこの柱体が押圧され変形した量に基づいて判定する。この場合、上記の柱体を組立位置調整部における間隙CT、CNに挿入した状態で実際にタービンロータ11や動翼12を含む回転構造物を静止構造物内に据え付け、次いでこれを取り外すことによって柱体の変形量を計測する。柱体の変形量が予め定めた範囲内に入らない場合には、静翼20、静翼内輪21および静翼外輪22を含む静止構造物の位置を調整し、再び回転構造物の設置位置が適正か否かの判定を行う。
なお、組立位置調整部における間隙CT、CNの寸法の測定方法は、上記した方法に限られるものではなく、組立位置調整部における間隙CT、CNの寸法を精度よく測定できる方法であればよい。また、動翼フィン13、ロータフィン14、静翼内輪21、静翼外輪22、シールリング30、33等の各部位は機械加工にて所定の寸法精度を確保して作製されているため、タービン組立状態を周方向の所定位置に設けられた4個の間隙CT、CNで管理することが可能となる。また、寸法測定用の4つの間隙CT、CNは、蒸気タービンの起動停止時(過渡期)に発生する回転構造物と静止構造物とにおける半径方向の熱伸び差δよりも大きくすることが好ましい。
また、間隙CT、CNを大きく構成している部分以外の部分の間隙CT、CNは、例えば、タービンの回転数上昇の際におけるタービンロータ11の危険速度通過時における振動量や、温度上昇時における回転構造物および静止構造物の熱変形量に基づいて設定される。
図4は、本発明に係るシール装置10における、周方向の間隙CTおよび間隙CNの一例を示す図である。また、図5は、図4に示した周方向の間隙CTおよび間隙CNを備えた場合における作動流体の漏洩流量を示す図である。なお、図4および図5において、横軸は、シールリングの周方向における位置を示す周方向角度(図3に周方向角度0度、90度、180度、270度および360度を併記)である。また、図4には、従来の蒸気タービンにおいて設定されていた、快削材層32と動翼フィン13との間隙CT、快削材層35とロータフィン14との間隙CN、および蒸気タービンの起動停止時(過渡期)に発生する回転構造物と静止構造物とにおける半径方向の熱伸び差δも示している。また、図5には、図4に示した従来の蒸気タービンにおいて設定される間隙CTおよび間隙CNを備えた場合における作動流体の漏洩流量、および蒸気タービンの起動停止時(過渡期)に発生する回転構造物と静止構造物とにおける半径方向の熱伸び差δが生じた際の作動流体の漏洩流量も示している。
図4に示すように、上半部と下半部との境界に面する下半部側(S6の一部およびS10の一部)、上半部の最上部(S3の一部)および下半部の最下部(S8の一部)における、間隙CT、CNを他の部分の間隙CT、CNよりも大きくし、周方向の間隙を一定とせずに、ステップ状に変化させている。また、これらの、間隙が大きく形成される寸法測定用の4つの間隙CT、CNは、蒸気タービンの起動停止時(過渡期)に発生する回転構造物と静止構造物とにおける半径方向の熱伸び差δよりも大きく構成されている。この半径方向の熱伸び差δは、回転構造物および静止構造物が温度上昇時に熱や遠心力等によって変形した際の回転構造物と静止構造物とにおける半径方向の変形量の差である。
一方、上記した4つの間隙CT、CN以外は、上記した半径方向の熱伸び差δよりも小さく構成されている。このため、上記した4つの間隙CT、CN以外の間隙CT、CNは、蒸気タービンの起動停止時(過渡期)において、回転構造物および静止構造物が熱や遠心力で変形したときに、回転構造物の動翼フィン13やロータフィン14が、静止構造物に設けられた快削材層32、35に接触し、快削材層32、35を削り取ることによって、最終的には上記した半径方向の熱伸び差δと同程度の隙間となるように構成されている。したがって、本実施の形態においては、快削材層32、35の厚さは、上記した4つの間隙CT、CN以外の間隙CT、CNと半径方向の熱伸び差δの大きさに基づいて決定することが可能である。
また、従来の蒸気タービンにおいて設定されていた間隙CT、CNは、周方向に亘って、タービン組立状態を所定の精度に確保するために必要な間隙、すなわち上記した、間隙が大きく形成された4つの間隙CT、CNと同じ間隙で一定に設定されている。
このような間隙CT、CNを備えた際の漏洩流量は、図5に示すように、従来の蒸気タービンにおいては、間隙CT、CNが、周方向に亘って、蒸気タービンの起動停止時(過渡期)に発生する回転構造物と静止構造物とにおける半径方向の熱伸び差δよりも大きく形成されているため、間隙CT、CNにおける漏洩流量は、間隙が熱伸び差δで構成されるときの作動流体の漏洩流量より多くなる。そのため、タービン性能が低下する。一方、本発明に係るシール装置10では、タービン組立管理上設けられた4個所の間隙CT、CN以外の間隙CT、CNは、上記した熱伸び差δと同程度の隙間となるように構成されているので、漏洩流量は、間隙が熱伸び差δで構成されるときの漏洩流量とほぼ同流量となる。このように、本発明に係るシール装置10では、蒸気タービンの運転時における漏洩流量を抑制し、タービン性能を向上させることができる。
ここで、上記した第1の実施の形態のシール装置10では、静止構造物に快削材層を形成し、回転構造物にシールフィンを設けたシール装置10の一例を示したが、静止構造物にシールフィンを設け、回転構造物に快削材層を形成してシール装置10を構成してもよい。なお、この場合、回転構造物に快削材層を固定するための周方向溝部を形成し、この周方向溝部に快削材層を配設することが好ましい。これによって、回転構造物が回転した場合においても、遠心力等によって快削材層が飛散することを防止することができる。
上記したように、第1の実施の形態のシール装置10では、タービン組立状態を所定の精度に確保するために必要な間隙を有する個所を、上半部と下半部との境界に面する下半部側(S6の一部およびS10の一部)、上半部の最上部(S3の一部)および下半部の最下部(S8の一部)の4個所の最小限個所とし、それ以外の間隙CT、CNを、蒸気タービンの起動停止時(過渡期)に発生する回転構造物と静止構造物とにおける半径方向の熱伸び差δよりも小さく構成している。これによって、蒸気タービンの運転時における漏洩流量を抑制し、タービン性能を向上させることができる。
(第2の実施の形態)
上記した第1の実施の形態のシール装置10では、タービン組立管理上設けられた4個所の間隙CT、CN以外の間隙CT、CNを、蒸気タービンの起動停止時(過渡期)に発生する回転構造物と静止構造物とにおける半径方向の熱伸び差δより小さな所定の隙間で構成した一例を示したが、この間隙CT、CNを「0」、すなわち動翼フィン13およびロータフィン14が快削材層32、35に接触した構成とすることもできる。
そこで、第2の実施の形態のシール装置50では、タービン組立管理上設けられた4個所の間隙CT、CN以外の間隙CT、CNを「0」、すなわち動翼フィン13およびロータフィン14が快削材層32、35に接触した構成の一例について説明する。
図6は、本発明の第2の実施の形態のシール装置50を備えた蒸気タービンにおけるシール部の断面を示した図であり、後述する図7のC−C断面に相当する図でもある。図7は、本発明の第2の実施の形態のシール装置50を備えた蒸気タービンをタービンロータ軸方向から見たときの断面を示す図である。なお、図7のA−A断面に相当する図は、図1に示した図と同じである。また、第1の実施の形態のシール装置10と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
図6に示すように、動翼12と対向する静翼外輪22に形成された溝部23にはシールリング30が嵌合されて保持されている。このシールリング30の嵌合部31は、バネ部材40によりシールリング30の半径方向に力が加えられ、溝部23の半径方向接触面24に押し付けられている。ここで、バネ部材40は、シールリング30を溝部23の半径方向接触面24に押し付けるための押圧力をシールリング30に負荷することができる弾性部材であればよく、例えば、板バネなどが使用される。なお、シールリング30は、バネ部材40により押し付けられているが、半径方向にも可動できる構造となっている。
また、動翼12に対向するシールリング30の内周面には、快削材で形成される快削材層32が形成されている。この快削材層32は、例えばアブレダブルシール材で構成される。また、快削材層32と動翼12の先端部に設けられた動翼フィン13とは接触するように配設されている。なお、快削材層32と動翼フィン13とが接触しても、快削材層32が変形できるため、動翼フィン13の先端部が快削材層32に食い込むように構成することもできる。また、タービン組立管理上、周方向の所定の4個所には、上記した図1に示す構成と同様に、蒸気タービンの起動停止時(過渡期)に発生する回転構造物と静止構造物とにおける半径方向の熱伸び差δよりも大きな間隙CTが構成されている。
また、図7に示すように、シールリング30は、シールリング30の環状を形成する周方向に複数に分割(例えば、図3では、S1〜S10の10分割)され、それぞれが溝部23に嵌合され、バネ部材40により溝部23の半径方向接触面24に押し付けられている。
一方、タービンロータ11と対向する静翼内輪21に形成された溝部25にはシールリング33が嵌合されて保持されている。このシールリング33の嵌合部34は、バネ部材41によりシールリング33の半径方向に力が加えられ、溝部25の半径方向接触面26に押し付けられている。なお、バネ部材41は、上記したバネ部材40と同様の構成である。なお、シールリング33は、バネ部材41により押し付けられているが、半径方向にも可動できる構造となっている。
タービンロータ11と対向するシールリング33の内周面には、快削材で形成される快削材層35が形成されている。この快削材層35は、例えばアブレダブルシール材で構成される。また、快削材層35とタービンロータ11の外周面に設けられたロータフィン14とは接触するように配設されている。なお、快削材層35とロータフィン14とが接触しても、快削材層32が変形できるため、ロータフィン14の先端部が快削材層32に食い込むように構成することもできる。また、タービン組立管理上、周方向の所定の4個所には、上記した図1に示す構成と同様に、蒸気タービンの起動停止時(過渡期)に発生する回転構造物と静止構造物とにおける半径方向の熱伸び差δよりも大きな間隙CNが構成されている。
また、図7に示したシールリング30と同様に、シールリング33は、シールリング33の環状を形成する周方向に複数に分割され、それぞれが溝部25に嵌合され、バネ部材41により溝部25の半径方向接触面26に押し付けられている。
図8は、第2の実施の形態のシール装置50における、周方向の間隙CTおよび間隙CNの一例を示す図である。なお、図8において、横軸は、シールリングの位置を示す周方向角度(図7に周方向角度0度、90度、180度、270度および360度を併記)である。また、図8には、従来の蒸気タービンにおいて設定されていた、快削材層32と動翼フィン13との間隙CT、快削材層35とロータフィン14との間隙CN、および蒸気タービンの起動停止時(過渡期)に発生する回転構造物と静止構造物とにおける半径方向の熱伸び差δも示している。
図8に示すように、上半部と下半部との境界に面する下半部側(S6の一部およびS10の一部)、上半部の最上部(S3の一部)および下半部の最下部(S8の一部)における、間隙CT、CNは、蒸気タービンの起動停止時(過渡期)に発生する回転構造物と静止構造物とにおける半径方向の熱伸び差δよりも大きく構成されている。一方、これらの4つの間隙CT、CN以外は、上記したように、回転構造物および静止構造物を接触させて配設しているため、間隙CT、CNは「0」である。なお、従来の蒸気タービンにおいて設定されていた間隙CT、CNは、周方向に亘って、タービン組立状態を所定の精度に確保するために必要な間隙、すなわち上記した、間隙が大きく形成された4つの間隙CT、CNと同じ間隙で一定に設定されている。また、快削材層32、35の厚さは、蒸気タービンの起動停止時(過渡期)に発生する回転構造物と静止構造物とにおける半径方向の熱伸び差δの大きさよりも大きくなるように設定されている。
このように構成されたシール装置50では、上記した第1の実施の形態のシール装置10と同様に、タービン組立管理上設けられる4個所の間隙CT、CN以外の間隙CT、CNは、蒸気タービンの起動停止時(過渡期)に、上記した熱伸び差δと同程度の隙間となるように構成されているので、漏洩流量は、間隙が熱伸び差δで構成されるときの漏洩流量とほぼ同流量となる。このように、シール装置50では、蒸気タービンの運転時における漏洩流量を抑制し、タービン性能を向上させることができる。
上記したように、第2の実施の形態のシール装置50では、タービン組立状態を所定の精度に確保するために必要な間隙を有する個所を、上半部と下半部との境界に面する下半部側(S6の一部およびS10の一部)、上半部の最上部(S3の一部)および下半部の最下部(S8の一部)の4個所の最小限個所とし、それ以外の回転構造物と静止構造物との間は接触させて構成している。これによって、蒸気タービンの運転時における漏洩流量を抑制し、タービン性能を向上させることができる。
なお、上記した第2の実施の形態のシール装置50では、図6に示すように、快削材層32、35に、すべての動翼フィン13およびロータフィン14が接触する構成の一例を示したが、この構成に限られるものではない。図9〜図11は、本発明に係る第2の実施の形態の他の構成のシール装置50を備えた蒸気タービンにおけるシール部の断面を示した図であり、図7のC−C断面に相当する図である。
例えば、図9に示すように、動翼フィン13およびロータフィン14のいずれか1つを快削材層32、35に接触させて構成してもよい。また、図10および図11に示すように、動翼フィン13およびロータフィン14のいずれか2つを快削材層32、35に接触させて構成してもよい。すなわち、動翼フィン13およびロータフィン14の少なくともいずれか1つを快削材層32、35に接触させて構成すればよい。なお、快削材層32、35と接触させる動翼フィン13およびロータフィン14は、組立条件や設計条件などによって適宜選択される。
また、シール装置50の構成は、さらに他の構成とすることもできる。図12および図13は、本発明に係る第2の実施の形態の他の構成のシール装置50を備えた蒸気タービンにおけるシール部の断面を示した図であり、図7のC−C断面に相当する図である。
図12および図13に示すように、動翼フィン13と快削材層32、およびロータフィン14と快削材層35のいずれか一方のみを接触させるように構成してもよい。なお、この場合においても、動翼フィン13またはロータフィン14の少なくともいずれか1つが快削材層32、35に接触されていればよい。
ここで、上記した第2の実施の形態のシール装置50では、静止構造物に快削材層を形成し、回転構造物にシールフィンを設けたシール装置50の一例を示したが、静止構造物にシールフィンを設け、回転構造物に快削材層を形成してシール装置50を構成してもよい。なお、この場合、回転構造物に快削材層を固定するための溝部を形成し、この溝部に快削材層を配設することが好ましい。これによって、回転構造物が回転した場合においても、遠心力等によって快削材層が飛散することを防止することができる。
これらの第2の実施の形態の他の構成のシール装置50においても、上記した第2の実施の形態のシール装置50と同様の作用効果を得ることができ、蒸気タービンの運転時における漏洩流量を抑制し、タービン性能を向上させることができる。
以上、本発明を一実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、バネ部材40、41により半径方向に力が加えられて溝部23、25の半径方向接触面24、26に押し付けられるシールリング30、33の内周面に、アブレダブルシール材からなる快削材層32、35を構成する一例を示しているが、この快削材層は、静翼内輪21や静翼外輪22の内周面に直接形成することもできる。すなわち、シール装置10は、上記したようなシールリングの構成を備えない場合においても適用可能である。
本発明の第1の実施の形態のシール装置を備えた蒸気タービンにおけるシール部の断面を示した図。 本発明の第1の実施の形態のシール装置を備えた蒸気タービンにおけるシール部の断面を示した図。 本発明の第1の実施の形態のシール装置を備えた蒸気タービンをタービンロータ軸方向から見たときの断面を示す図。 本発明に係るシール装置における、周方向の間隙CTおよび間隙CNの一例を示す図。 図4に示した周方向の間隙CTおよび間隙CNを備えた場合における作動流体の漏洩流量を示す図。 本発明の第2の実施の形態のシール装置を備えた蒸気タービンにおけるシール部の断面を示した図。 本発明の第2の実施の形態のシール装置を備えた蒸気タービンをタービンロータ軸方向から見たときの断面を示す図。 第2の実施の形態のシール装置における、周方向の間隙CTおよび間隙CNの一例を示す図である。 本発明に係る第2の実施の形態の他の構成のシール装置を備えた蒸気タービンにおけるシール部の断面を示した図。 本発明に係る第2の実施の形態の他の構成のシール装置を備えた蒸気タービンにおけるシール部の断面を示した図。 本発明に係る第2の実施の形態の他の構成のシール装置を備えた蒸気タービンにおけるシール部の断面を示した図。 本発明に係る第2の実施の形態の他の構成のシール装置を備えた蒸気タービンにおけるシール部の断面を示した図。 本発明に係る第2の実施の形態の他の構成のシール装置を備えた蒸気タービンにおけるシール部の断面を示した図。 アブレダブルシール材を用いたシール装置を備えた従来の軸流タービンにおけるシール部の断面を示した図。
符号の説明
10…シール装置、11…タービンロータ、12…動翼、13…動翼フィン、14…ロータフィン、20…静翼、21…静翼内輪、22…静翼外輪、23…溝部、24,26…半径方向接触面、25…溝部、30,33…シールリング、31,34…嵌合部、32,35…快削材層、40,41…バネ部材、CT,CN…間隙。

Claims (8)

  1. 回転軸を中心に回転する回転構造物と、前記回転構造物の外周に配設された静止構造物との間に備えられた環状のシール装置であって、
    周方向に複数に分割されたそれぞれが前記静止構造物に保持されるとともに、全体として環状に形成されるシールリング部材と、
    前記シールリング部材の前記回転構造物側の周面に形成された快削材層と、
    前記回転構造物の前記シールリング部材に対向する側の周面に突出して周設された環状のシールフィンと、
    前記シールリング部材と前記シールフィンとの間に形成される間隙が周方向に異なる組立位置調整部と
    を備えることを特徴とするシール装置。
  2. 回転軸を中心に回転する回転構造物と、前記回転構造物の外周に配設された静止構造物との間に備えられた環状のシール装置であって、
    周方向に複数に分割されたそれぞれが前記静止構造物に保持されるとともに、全体として環状に形成されるシールリング部材と、
    前記シールリング部材の前記回転構造物側の周面に突出して周設された環状のシールフィンと、
    前記回転構造物の前記シールリング部材に対向する側の周面に形成された快削材層と、
    前記シールリング部材と前記シールフィンとの間に形成される間隙が周方向に異なる組立位置調整部と
    を備えることを特徴とするシール装置。
  3. 前記組立位置調整部は、周方向の少なくとも所定の4個所に設けられるとともに、前記組立位置調整部における前記シールリング部材と前記シールフィンとの間隙が、他の部分の間隙よりも大きく構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のシール装置。
  4. 前記組立位置調整部以外の部分では、前記シールリングの前記快削材層と前記シールフィンとが当接していることを特徴とする請求項3記載のシール装置。
  5. 前記回転軸方向に列設された複数のシールフィンのうち、少なくとも1つが、前記組立位置調整部以外の部分で前記快削材層に当接していることを特徴とする請求項3記載のシール装置。
  6. 前記シールリング部材は、前記シールリング部材を前記回転構造物側に押圧するバネ部材を介して前記静止構造物に固定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のシール装置。
  7. 前記回転構造物が、タービンロータと前記タービンロータに植設された動翼とを含み、前記静止構造物が、静翼と前記静翼の内径端縁に沿って設けられた静翼内輪と前記静翼の外径端縁に沿って設けられた静翼外輪とを含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のシール装置。
  8. タービンロータと前記タービンロータに植設された動翼とを含む回転構造物と、静翼と前記静翼の内径端縁に沿って設けられた静翼内輪と前記静翼の外径端縁に沿って設けられた静翼外輪とを含む静止構造物とを備えた蒸気タービンであって、
    請求項1乃至6のいずれか1項記載のシール装置を備えたことを特徴とする蒸気タービン。
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