JP6712859B2 - シールフィン,シール構造及びシールフィンの固定方法 - Google Patents

シールフィン,シール構造及びシールフィンの固定方法 Download PDF

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Description

本発明は、回転構造体と静止構造体との間で作動流体の漏洩を抑制するシールフィン及びシール構造、並びにシールフィンの固定方法に関する。
従来、蒸気タービンやガスタービンなどのタービンでは、静翼の先端部の内周面とロータの外周面との間に形成される隙間には、この隙間から蒸気などの作動流体が漏洩することを防止して、タービンの内部効率が低下するのを防止するために、シールフィンが設けられている。
シールフィンは、ロータ外周面に全周に亘り削設されたシールフィン固定用溝(以下、「固定用溝」と呼ぶ)内にその基部が挿入され、この基部がロッキングピースによって、固定されることにより、固定用溝内に固設される(例えば特許文献1参照)。
このようなシールフィンの構成の一例について図3を参照して説明する。
図3は、従来のシールフィンの構成を示す模式図であって、シールフィンの横断面を示す図である。
このシールフィン01は、例えば板厚が1mm程度の薄い金属板の一辺側を折り曲げて略L字形状の横断面形状に加工した長尺の部品である。また、シールフィン01は、その先端側のみを摩耗させて、ロータ02や静翼6(図1参照)の損傷を防ぐように、その横断面は、先端部側の板厚が薄くなっている。
シールフィン01は、図3に示すような略L字形状の横断面を一定に有しており、全体としては長手方向にリング形状をしている。つまり、シールフィン01は、基部01aと、この基部01aの一端(図中左端)から略垂直に起立するフィン部01bとを備えて構成されたラジアルシールフィンである。シールフィン01の材質は例えばSUS304のようなステンレス鋼である。また、シールフィン01はロータ02の周面に沿って多数設置され、蒸気タービンなどの内部で、ロータ02と静翼6との間から蒸気などの作動流体の漏出を抑制する。
ロータ02の外周面(以下、「ロータ外表面」とも呼ぶ)02aには、シールフィン01を固定するための固定溝02bが全周に亘って形成されている。この固定溝02bは、底面02c及び内側面02d,02eによって画成されている。図中左側の内側面02dは平坦な形状をしているのに対し、図中右側の内側の片面02eは、その開口側(図中上側)が、固定溝02bの幅方向(図中横方向)中心側に寄せられた形状をしている。すなわち、底面02cから開口側に形成された入口に対して、固定溝02bは、入口の一方側(内側面02e側)は溝中心側に絞られ、入口の他方側(内側面02d側)は溝中心側に絞られずに平坦な形状の片アリ溝となっている。
シールフィン01の固定溝02bへの固定方法について説明すると、シールフィン01を、その基部1aを固定溝02b内に配置した状態で、例えば軟鋼(S10Cなど)により形成されたロッキングピース03を固定溝02b内に叩き込むと、ロッキングピース03は、シールフィン01と固定溝02bとの隙間を略埋めるようになって、シールフィン01を、固定溝02bを画成する壁面に押圧する。つまり、図3に示すように、フィン部01bの外側面(図中左側面)を内側面02dに押圧し且つ基部01aの図中下面を底面02cに押圧した状態で、シールフィン01と固定溝02bとの隙間がロッキングピース03によって略埋められた状態で固定される。
特に、叩き込まれて塑性変形したロッキングピース03が、固定溝02bの内側面02e側のアリ溝部に嵌り込むので、ロッキングピース03が固定溝02bから外れにくくなり、ひいてはシールフィン01がロータ02から外れにくくなる。
特開2009−216047号公報
しかしながら、図3に示す上記の従来のシールフィンでは、ロータに発生する熱応力が過多である場合には、タービンの起動と停止とが繰り返される内にシールフィン01がロータ02から飛散する場合があるという課題がある。
この理由(メカニズム)について図4を参照して説明する。
図4は、シールフィンがロータから飛散する場合の主要なメカニズムの一つを説明するためのシールフィンの模式的な横断面図であり、(a)は冷態時、(b)は起動時、(c),(d)は定常時、(e)は次回起動時をそれぞれ示す図である。なお、図4では断面を示すハッチを省略している。
図4(a)に示すタービン起動前の冷態状態(冷態時)から、図4(b)に示すタービン起動時になると、ロータ02と高温の作動流体とが接触しはじめ、先ずロータ外表面02aが昇温してロータ02の内部と外表面とに大きな温度差が生じる。これによって、ロータ外表面02に矢印で示すように固定溝02bの幅を狭めるように熱膨張が発生して、ロータ外表面02がロッキングピース03を圧縮する(ロッキングピース03に圧縮応力が働く)。この圧縮応力によりロッキングピース03がつぶされて塑性変形を起こす。
次いで、図4(c),(d)に示すタービン運転定常時になると、ロータ02は、次第に内部まで昇温が進み、その内部と外表面との温度差が緩和される。その結果、ロータ02が全体的に熱膨張するようになるので、固定溝02bの幅が起動時に比べて広がり、ロータ外表面02aにおいてロッキングピース03に作用していた圧縮応力が弱まる。この際に、ロータ02とロッキングピース03との間に隙間04が生じる。隙間04が生じると、ロータ02と一体に回転するロッキングピース03に対して、矢印で示すような遠心力の作用に打ち勝つ拘束力が低減する。
これにより、図4(d)に示すように、ロッキングピース03が浮き上がって固定溝02bの縁に挟まるようになる。したがって、ロッキングピース03とシールフィン01との間には隙間が残留した状態(ロッキングピース03が浮き上がったままの状態)になる。
そして、次回の起動時には、図4(e)に示すように、ロッキングピース03は、この浮き上がった状態で、ロータ02の内部と外表面の温度差に起因してロータ外表面02aに再び生じた圧縮応力により、矢印で示すようにつぶされる。
タービンの運用に伴って、この図4(a)〜(e)に示すサイクルが繰り返されると、すなわち、固定溝02bの幅が狭くなってロッキングピース03が潰され、固定溝02bの幅が広がってロッキングピース03が遠心力により浮き上がることが繰り返されると、最終的にはロッキングピース03がロータ02の固定溝02bから抜けてしまう。この結果、ロッキングピース03によりロータ02に固定されていたシールフィン01が、ロッキングピース03と共に、タービン運転中にロータ02から抜けて周囲に飛散し、この飛散したシールフィン01とロッキングピース03とが、ロータ02や、その他のタービン部品を損傷させてしまうおそれがある。
また、ロッキングピース03がロータ02の溝02bから抜けることがある要因として、さらに、図3に示すように、シールフィン01の基部01aと、ロッキングピース03との間に隙間05(図4では省略)が生じる場合があることが挙げられる。これは、ロッキングピース03を、ロータ02の径方向外側から溝02bに叩き込む際に、ロッキングピース03が、シールフィン01と溝02bを画成する壁面02c〜02eとの間の隙間を埋めるように変形するが、シールフィン01の基部01bは横断面角型形状となっているため、ロッキングピース03が、この基部01bの横断面角型形状に十分に追従して変形することができず、壁面02c〜02eとの間の隙間を埋めることが出来ないため、隙間05が生じてしまう。この隙間05が所謂ガタとなって、ロッキングピース03が溝02b内で移動し易くなる(つまりロッキングピース03の拘束力が弱まる)。この結果、図4(a)〜(e)に示すサイクルが繰り返された際には、一層、ロッキングピース03が溝02bから抜けやすい状況になり、ひいてはシールフィン01が飛散することがある。
本発明は、上記のような課題に鑑み創案されたもので、シールフィンが固定用溝から離脱してしまうことを抑制することができるようにした、シールフィン,シール構造及びシールフィンの固定方法を提供することを目的とする。
[1]上記の目的を達成するために、本発明のシールフィンは、回転構造体と静止構造体との間で作動流体の漏洩を抑制し、前記回転構造体と前記静止構造体との何れか一方の構造体に形成された溝幅の両方側にアリ溝部のある形状の固定用溝にロッキングピースを埋め込むことで固定される、シールフィンであって、前記固定用溝の溝幅方向に伸びるように前記固定用溝内に配置される基部と、前記基部の前記溝幅方向の一端側から前記固定用溝の開口へと起立して作動流体の流通を抑制するフィン部とを備えて構成され、前記フィン部の前記基部との付け根には前記一端側に膨出するように湾曲する湾曲部が形成され、前記基部の他端側には、前記固定用溝内に配置した際に前記固定用溝の開口に向くように傾斜した第1傾斜面が設けられ、前記湾曲部が前記固定用溝の前記アリ溝部に係止され、前記第1傾斜面が前記ロッキングピースに係止されるようにしたことを特徴としている。
[2]上記の目的を達成するために、本発明のシール構造は、回転構造体と静止構造体との間で作動流体の漏洩を抑制するシール構造であって、前記回転構造体と前記静止構造体との何れか一方の構造体に形成された溝幅の両方側にアリ溝部のある形状の固定用溝と、前記固定用溝に固定されるシールフィンと、前記シールフィンと前記固定用溝との相互間の隙間に埋め込まれたロッキングピースとを備えて構成され、前記シールフィンは、前記固定用溝の溝幅方向に伸びるように前記固定用溝内に配置される基部と、前記基部の前記溝幅方向の一端側から前記固定用溝の開口へと起立して先端側を、前記回転構造体と前記静止構造体との何れか他方の構造体に向けた姿勢で、作動流体の流通を抑制するフィン部と、前記フィン部の前記基部との付け根に形成され、前記一端側に膨出するように湾曲する湾曲部と、前記基部の他端側に形成されて前記固定用溝の開口に向くように傾斜した第1傾斜面とを有し、前記湾曲部の前記一端側を、前記固定用溝の一方のアリ溝部に係止され、前記ロッキングピースは、前記シールフィンの前記湾曲部の他端側に係止される第1係止部と、前記両アリ溝の内の他方のアリ溝部に係止される第2係止部と、前記シールフィンの前記第1傾斜面と対面し前記第1傾斜面とは逆方向に傾斜した第2傾斜面とを有するロッキングピースとを備えたことを特徴としている。
[3]前記回転構造体がタービンのロータシャフトであると共に前記静止構造体が前記タービンの静翼であることが好ましい。
[4]前記静止構造体が前記静翼を支持する構造体であると共に前記回転構造体が前記タービンの動翼であることが好ましい。
[5]上記の目的を達成するために、本発明のシールフィンの固定方法は、回転構造体と静止構造体との間で作動流体の漏洩を抑制し、前記回転構造体と前記静止構造体との何れか一方の構造体に形成された溝幅の両方側にアリ溝部のある形状の固定用溝に、請求項1記載のシールフィンを取り付ける、シールフィンの固定方法であって、前記フィン部を、前記回転構造体と前記静止構造体との何れか他方の構造体に向けた姿勢で、且つ、前記湾曲部の前記一端側を、前記両アリ溝の内の一方のアリ溝部に係止させ状態で、前記基部を、前記固定用溝の底面に載置する、シールフィン設置ステップと、前記湾曲部を前記固定用溝の前記アリ溝部に係止させた状態の前記シールフィンと、前記固定用溝との間の隙間に、ロッキングピースを埋め込んで、前記第1傾斜面を前記ロッキングピースに係止させて、前記シールフィンを前記固定用溝に固定する、固定ステップとを備えたことを特徴としている。
本発明でいうアリ溝部とは、溝の幅方向が開口に向かって幅方向中心側に寄せられるように絞られている場合において、この絞られている部位を特にいう。そこで、前記の図3に示す固定溝02bは、右側の片側にだけアリ溝部を有する片アリ溝と呼び、後述の図2に示す本発明の一実施形態の固定溝8は、左右両側にアリ溝部を有する両アリ溝と呼ぶ。
本発明のシール構造によれば、本発明のシールフィンを用いて構成しているので、両アリ溝形状の固定用溝に対して、一方のアリ溝部にシールフィンが係止されると共に他方のアリ溝部にロッキングピースが係止され、さらに、ロッキングピースは、シールフィンの湾曲部からも係止されるので、固定用溝,シールフィン及びロッキングピースの相互間に作用する係止力が向上する。
さらに、ロッキングピースは、シールフィンの基部の先端(他端)に設けられた第1傾斜面と対面するようになるので、シールフィンの基部の先端(他端)とロッキングピースとの間に隙間が生じることが抑制され(又は従来よりも当該隙間を低減でき)、ロッキングピースの位置がシールフィンによって拘束されやすくなる。
したがって、ロッキングピースの移動規制を強化することができ、ひいてはシールフィンが固定用溝から離脱してしまうことを抑制することができる。
本発明の一実施形態に係る蒸気タービンの構成を示す模式的な縦断面図である。 本発明の一実施形態としてのシールフィン及びシール構造を示す模式的な横断面図である。 従来のシールフィンの固定構造を示す模式的な横断面図である。 従来のシールフィンがロータから飛散する場合の主要なメカニズムの一つを説明するためのシールフィンの模式的な横断面図であり、(a)は冷態時、(b)は起動時、(c),(d)は定常時、(e)は次回起動時をそれぞれ示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態では、本発明を、蒸気タービンのロータと静翼とのシールに適用した例を説明する。
なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができると共に、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
[1.蒸気タービンの全体構成]
本発明の一実施形態に係る蒸気タービンロータの構成を、図1を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る蒸気タービンロータの構成を示す模式的な縦断面図である。
図1に示すように、蒸気タービンロータ(以下、「タービンロータ」と呼ぶ)1は、外周部に軸方向に複数の翼溝2を形成したロータシャフト(回転構造体,一方の構造体)3と、翼溝2と嵌合する翼脚4をそれぞれ基部に有する複数の動翼5とを備えており、ロータシャフト3の翼溝2に動翼5の翼脚4が嵌合されている。
そして、ロータシャフト3の各動翼5間には、ケーシング(図示せず)に配設された静翼6(静止構造体,他方の構造体)の先端と対向してラジアルシール構造を形成するシールフィン部7が配設されている。これらのシールフィン部7は、隣接する翼溝2の間に軸方向(図1中左右方向)に所定間隔を空けて並設された複数のシールフィン9によって構成されている。なお、図1では、静翼6について先端側のみ示してケーシング側は省略している。
[2.シール構造]
シールフィンの及びシール構造について図2を参照して説明する。
図2は、本発明の一実施形態としてのシールフィン及びシール構造を示す模式的な横断面図である。
なお、以下の説明では、固定用溝の幅方向(図2中左右方向)中央の中心線CLに向く方向を内方又は内側とし、その反対側、中心線から離れる方向を外方又は外側とし、静翼6側を先端側とする。また、図2中で、左側を一端側、右側を他端側として説明する。
シールフィン9を設置するための固定用溝8は、図2に示すように、ロータシャフト3の軸方向(図2中横方向)に平行な底面(以下、「溝底面」とも呼ぶ)8Aと、溝底面8Aの両端から静翼6に向かって延びる内側面(以下、「溝側面」とも呼ぶ)8B,8Cとにより画成されている。
溝側面8Bには、溝底面8A側に形成された凹状の湾曲部8Baと、固定用溝8の開口8D側に形成された入口部8Bbとが形成されている。湾曲部8Baは外方(溝幅方向の中心線CLから離れる方向)に膨出し、その入口側(先端側)は内方(溝幅方向の中心線CLに向く方向)へ向かう絞り形状となっている。入口部8Bbは、湾曲部8Baの入口側に対して僅か傾斜して、ロータシャフト3の径方向(図2中縦方向)に延在している。
同様に、溝側面8Cは、溝底面8A側に形成された凹状の湾曲部8Caと、固定用溝8の開口8D側に形成された入口部8Cbとが形成されている。湾曲部8Caは外方に膨出し、その入口側(先端側)は内方へ向かう絞り形状となっている。入口部8Cbは、湾曲部8Caの入口側から僅かに折れ曲がり、ロータシャフト3の径方向(図2中縦方向)に延在している。
つまり、固定用溝8は、溝側面8Bの湾曲部8Baにより規定されるアリ溝部(一方のアリ溝部)8Eと、溝側面8Cの湾曲部8Caにより規定されるアリ溝部(他方のアリ溝部)8Fとを備えて、底面8Aに向かって溝幅が両外側に拡大する両アリ溝形状となっている。
シールフィン9は、図2に示すような略L字形状の横断面を一定に有しており、全体としては長手方向にリング形状をしている。つまり、シールフィン9は、固定用溝8に配置され固定用溝8の溝幅方向に延在する基部9Aと、基部9Aの溝幅方向一端(図中左端)から略垂直に起立して作動流体(蒸気)の流通を抑制するフィン部9Bとを備えて構成されたラジアルシールフィンである。
また、フィン部9Bは、基部9Aと連続して形成された付け根部9Baと、この付け根部9Baから静翼6方向(開口8D方向)に連続して形成されたフィン本体部9Bbとを有している。付け根部9Baは、外面及び内面が共に外方に(一端側に)膨出する湾曲形状に形成されている(付け根部9Baには、外面に凸状湾曲部が形成され、内面に凹状湾曲部が形成されている)。そこで、以下、付け根部9Baを「湾曲部9Ba」という。この湾曲部9Baの静翼6寄り(開口8D寄り)の部分は、開口8Dに向かって内方(溝幅方向の中心線CLに向く方向)へ傾斜している。フィン本体部9Bbは、静翼6に近づくにしたがって板厚が薄くなるように横断面が先細り形状に形成されている。
また、基部9Aの他端側には、固定用溝8内に配置した際に固定用溝8の開口8Dに向くように傾斜したテーパ面(第1傾斜面)9Aaが形成されている。
なお、シールフィン9は、必ずしも1本のリング状である必要はなく(単一部材により構成されている必要はなく)、ロータシャフト3の周方向に対して複数の部材に分割して、これらの複数の部材を組み付けることでリング状となるようにしてもよい。また、シールフィン9の材質は例えばSUS304のようなステンレス鋼である。
固定用溝8とシールフィン9との間には、ロッキングピース10が叩き込まれ埋め込まれている。ロッキングピース10は、例えば軟鋼(S10Cなど)によって形成されており、固定用溝8とシールフィン9との間に叩き込まれた際に塑性変形して、固定用溝8とシールフィン9との間の隙間を埋めるようになる。ロッキングピース10は、全体としては1つもしくは複数個でリング形状をしている。変形したロッキングピース10により、シールフィン9は、その基部9Aが溝底面8Aに押圧され、そのフィン部9Bが、湾曲部9Baをアリ溝部8Eに係止させた状態で、溝側面8Bに押圧される。また、ロッキングピース10も、シールフィン9の湾曲部9Baの内側面(他端側の面)と密着して(或いは僅かな隙間をあけて)係止される共に、固定用溝8のアリ溝部8Fに密着して(或いは僅かな隙間をあけて)係止されるようになる。
つまり、固定用溝8とシールフィン9との間の隙間に埋め込まれる結果、ロッキングピース10には、シールフィン9の湾曲部9Baの内側面に係止される凸状湾曲形状の係止部(第1係止部)10Aと、固定用溝8のアリ溝部8Fに係止される凸状湾曲形状の係止部10B(第2係止部)と、シールフィン9の基部9Aのテーパ面9Aaに対面してテーパ面9Aaと全長(又は略全長)に亘って密着するテーパ面(第2傾斜面)10Cが形成される。
テーパ面10Cは、テーパ面9Aaとは逆方向に傾斜する(固定用溝8内に配置した際に固定用溝8の底面8Aに向くように傾斜する)。
なお、シールフィン9の湾曲部9Baは、板材を曲げ加工により製作しても良いが、シールフィン9とアリ溝部8Eとの間の隙間を少なくできるよう、原材料を削り出し加工して製作するのが更に好ましい。削り出し加工によれば、シールフィン9を適宜の形状に精度良く加工できるので、シールフィン9とアリ溝部8Eとの間に生じる不要な隙間(ガタ)を抑制することが可能となり、アリ溝部8Eによるシールフィン9の拘束力を向上させることができる。また、シールフィン9のフィン部9Bの先端部側に横断面で板厚が薄くなっている部分は、圧延プレス加工で製作しても良いが、削り出し加工が更に好ましい。
[3.シールフィンの固定方法]
本発明の一実施形態では、以下のようにしてシールフィン9のロータシャフト3への固定が行われる。
シールフィン9を、フィン部9Bの先端側を静翼6に向けた姿勢で、その湾曲部9Baの一方側を、ロータシャフト3に形成された固定用溝8のアリ溝部8Eに係止させつつ、溝底面8Aに載置する(シールフィン設置ステップ)。
次いで、固定用溝8とシールフィン9との間に、ロッキングピース10を叩き込んでシールフィン9を固定用溝8に固定する(固定ステップ)。
[4.作用・効果]
本発明の一実施形態によれば、固定用溝8とシールフィン9との間に、ロッキングピース10を叩き込んで埋め込んだ際、ロッキングピース10は、シールフィン9の基部9Aの先端(他端)のテーパ面9Aaに押圧される結果、テーパ面9Aaに接した状態でテーパ面9Aaにそって変形し、且つ、テーパ面9Aaの案内にもより、ロッキングピース10がアリ溝部8Fに入り込むようになる。
また、ロッキングピース10は、シールフィン9の湾曲部9Baの内側面(他端側の面)に密着するように(或いは僅かな隙間をあけて)入り込んで係止される。
したがって、シールフィン9の基部9Aは溝底面8Aに押圧され、フィン部9Bは湾曲部9Baをアリ溝部8Eに係止させた状態で、溝側面8Bに押圧される。さらに、基部9Aの先端のテーパ面9Aaによってロッキングピース10のテーパ面(第2傾斜面)10Cとの相互間に隙間が生じることが抑制される結果、基部9Aはテーパ面9Aaにおいてロッキングピース10により押圧される。これにより、シールフィン9の基部9Aは、ロッキングピース10と固定用溝8との相互間に隙間が生じることを抑制できる(又は、従来よりも隙間を低減できる)。すなわち、ロッキングピース10に対する位置規制を強化できる。
一方、ロッキングピース10は、一端側(アリ溝部8E側)ではシールフィン9の湾曲部9Baの内側に入り込んでこの湾曲部9Baの内側に押圧され係止され、他端側では、固定用溝8のアリ溝部8Fに押圧され係止される。これにより、ロッキングピース10は、シールフィン9の湾曲部9Baと固定用溝8との相互間に隙間が生じることを抑制できる(又は、従来よりも隙間を低減できる)。
このようにして、シールフィン9及びロッキングピース10の相互間においてシールフィン9及びロッキングピース10の両方に作用する係止力(シールフィン9及びロッキングピース10にロータシャフト3の径方向への外力が作用しても、シールフィン9及びロッキングピース10にロータシャフト3の径方向への移動を押える力)が向上する。
したがって、タービンの起動と停止とが繰り返されること起因してロッキングピース10が塑性変形したとしても、ロッキングピース10は移動が規制されるようになって、ロッキングピース10の固定用溝8やシールフィン9からの離脱、ひいてはタービン運転中のシールフィン9やロッキングピース10の飛散が発生することを抑制することができる。
[5.その他]
(1)上記実施形態では、ロータシャフト3を本発明の一方の構造体とすると共に、静翼6を本発明の他方の構造体として、ロータシャフト3にシールフィン9を設けたが、逆に、静翼6を設置支持する構造体(静止構造体である翼環や内車室)を本発明の一方の構造体とすると共にロータシャフト3に取り付けられた動翼5を本発明の他方の構造体として、シールフィン9を、静翼6を設置支持する構造体(静止構造体である翼環や内車室)に設けても良い。
(2)上記実施形態では、蒸気タービンに本発明を適用した例を説明したが、本発明は、ガスタービンやターボ圧縮機など、蒸気タービン以外のターボ機械のシールにも適用することができ、さらには、相対的に回転する二つの構造体の間のシールであれば、ターボ機械以外のもの(例えばロータリージョイント)のシールにも適用できるものである。
1 蒸気タービンロータ
3 ロータシャフト(回転構造体,一方の構造体)
5 動翼
6 静翼(静止構造体,他方の構造体)
7 シールフィン部
8 固定用溝
8A 固定用溝8の底面
8B,8C 固定用溝8の内側面
8Ba,8Ca 溝側面8Bの湾曲部
8Bb,8Cb 溝側面8Bの入口部
8D 固定用溝8の開口
8E 固定用溝8のアリ溝部(一方のアリ溝部)
8F 固定用溝8のアリ溝部(他方のアリ溝部)
9 シールフィン
9A シールフィン9の基部
9Aa 基部9Aのテーパ面(第1傾斜面)
9Ab 基部9Aの基部の先端
9B シールフィン9のフィン部
9Ba フィン部9Bの湾曲部
10 ロッキングピース
10A ロッキングピース10の係止部(第1係止部)
10B ロッキングピース10の係止部(第2係止部)
10C ロッキングピース10のテーパ面(第2傾斜面)

Claims (5)

  1. 回転構造体と静止構造体との間で作動流体の漏洩を抑制し、前記回転構造体と前記静止構造体との何れか一方の構造体に形成された溝幅の両方側にアリ溝部のある形状の固定用溝にロッキングピースを埋め込むことで固定される、シールフィンであって、
    前記固定用溝の溝幅方向に伸びるように前記固定用溝内に配置される基部と、
    前記基部の前記溝幅方向の一端側から前記固定用溝の開口へと起立して作動流体の流通を抑制するフィン部とを備えて構成され、
    前記フィン部の前記基部との付け根には前記一端側に膨出するように湾曲する湾曲部が形成され、
    前記基部の他端側には、前記固定用溝内に配置した際に前記固定用溝の開口に向くように傾斜した第1傾斜面が設けられ、
    前記湾曲部が前記固定用溝の前記アリ溝部に係止され、前記第1傾斜面が前記ロッキングピースに係止されるようにした
    ことを特徴とする、シールフィン。
  2. 回転構造体と静止構造体との間で作動流体の漏洩を抑制するシール構造であって、
    前記回転構造体と前記静止構造体との何れか一方の構造体に形成された溝幅の両方側にアリ溝部のある形状の固定用溝と、
    前記固定用溝に固定されるシールフィンと、
    前記シールフィンと前記固定用溝との相互間の隙間に埋め込まれたロッキングピースとを備えて構成され、
    前記シールフィンは、前記固定用溝の溝幅方向に伸びるように前記固定用溝内に配置される基部と、前記基部の前記溝幅方向の一端側から前記固定用溝の開口へと起立して先端側を、前記回転構造体と前記静止構造体との何れか他方の構造体に向けた姿勢で、作動流体の流通を抑制するフィン部と、前記フィン部の前記基部との付け根に形成され、前記一端側に膨出するように湾曲する湾曲部と、前記基部の他端側に形成されて前記固定用溝の開口に向くように傾斜した第1傾斜面とを有し、前記湾曲部の前記一端側を、前記固定用溝の一方のアリ溝部に係止され、
    前記ロッキングピースは、前記シールフィンの前記湾曲部の他端側に係止される第1係止部と、前記両アリ溝の内の他方のアリ溝部に係止される第2係止部と、前記シールフィンの前記第1傾斜面と対面し前記第1傾斜面とは逆方向に傾斜した第2傾斜面とを有するロッキングピースとを備えた
    ことを特徴とする、シール構造。
  3. 前記回転構造体がタービンのロータシャフトであると共に前記静止構造体が前記タービンの静翼である
    ことを特徴とする、請求項2記載のシール構造。
  4. 前記静止構造体が前記静翼を支持する構造体であると共に前記回転構造体が前記タービンの動翼である
    ことを特徴とする、請求項2記載のシール構造。
  5. 回転構造体と静止構造体との間で作動流体の漏洩を抑制し、前記回転構造体と前記静止構造体との何れか一方の構造体に形成された溝幅の両方側にアリ溝部のある形状の固定用溝に、請求項1記載のシールフィンを取り付ける、シールフィンの固定方法であって、
    前記フィン部を、前記回転構造体と前記静止構造体との何れか他方の構造体に向けた姿勢で、且つ、前記湾曲部の前記一端側を、前記両アリ溝の内の一方のアリ溝部に係止させ状態で、前記基部を、前記固定用溝の底面に載置する、シールフィン設置ステップと、
    前記湾曲部を前記固定用溝の前記アリ溝部に係止させた状態の前記シールフィンと、前記固定用溝との間の隙間に、ロッキングピースを埋め込んで、前記第1傾斜面を前記ロッキングピースに係止させて、前記シールフィンを前記固定用溝に固定する、固定ステップとを備えた
    ことを特徴とする、シールフィンの固定方法。
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