JP6712859B2 - シールフィン,シール構造及びシールフィンの固定方法 - Google Patents
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Description
シールフィンは、ロータ外周面に全周に亘り削設されたシールフィン固定用溝(以下、「固定用溝」と呼ぶ)内にその基部が挿入され、この基部がロッキングピースによって、固定されることにより、固定用溝内に固設される(例えば特許文献1参照)。
図3は、従来のシールフィンの構成を示す模式図であって、シールフィンの横断面を示す図である。
このシールフィン01は、例えば板厚が1mm程度の薄い金属板の一辺側を折り曲げて略L字形状の横断面形状に加工した長尺の部品である。また、シールフィン01は、その先端側のみを摩耗させて、ロータ02や静翼6(図1参照)の損傷を防ぐように、その横断面は、先端部側の板厚が薄くなっている。
シールフィン01は、図3に示すような略L字形状の横断面を一定に有しており、全体としては長手方向にリング形状をしている。つまり、シールフィン01は、基部01aと、この基部01aの一端(図中左端)から略垂直に起立するフィン部01bとを備えて構成されたラジアルシールフィンである。シールフィン01の材質は例えばSUS304のようなステンレス鋼である。また、シールフィン01はロータ02の周面に沿って多数設置され、蒸気タービンなどの内部で、ロータ02と静翼6との間から蒸気などの作動流体の漏出を抑制する。
特に、叩き込まれて塑性変形したロッキングピース03が、固定溝02bの内側面02e側のアリ溝部に嵌り込むので、ロッキングピース03が固定溝02bから外れにくくなり、ひいてはシールフィン01がロータ02から外れにくくなる。
図4は、シールフィンがロータから飛散する場合の主要なメカニズムの一つを説明するためのシールフィンの模式的な横断面図であり、(a)は冷態時、(b)は起動時、(c),(d)は定常時、(e)は次回起動時をそれぞれ示す図である。なお、図4では断面を示すハッチを省略している。
そして、次回の起動時には、図4(e)に示すように、ロッキングピース03は、この浮き上がった状態で、ロータ02の内部と外表面の温度差に起因してロータ外表面02aに再び生じた圧縮応力により、矢印で示すようにつぶされる。
さらに、ロッキングピースは、シールフィンの基部の先端(他端)に設けられた第1傾斜面と対面するようになるので、シールフィンの基部の先端(他端)とロッキングピースとの間に隙間が生じることが抑制され(又は従来よりも当該隙間を低減でき)、ロッキングピースの位置がシールフィンによって拘束されやすくなる。
したがって、ロッキングピースの移動規制を強化することができ、ひいてはシールフィンが固定用溝から離脱してしまうことを抑制することができる。
本実施形態では、本発明を、蒸気タービンのロータと静翼とのシールに適用した例を説明する。
なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができると共に、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
本発明の一実施形態に係る蒸気タービンロータの構成を、図1を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る蒸気タービンロータの構成を示す模式的な縦断面図である。
そして、ロータシャフト3の各動翼5間には、ケーシング(図示せず)に配設された静翼6(静止構造体,他方の構造体)の先端と対向してラジアルシール構造を形成するシールフィン部7が配設されている。これらのシールフィン部7は、隣接する翼溝2の間に軸方向(図1中左右方向)に所定間隔を空けて並設された複数のシールフィン9によって構成されている。なお、図1では、静翼6について先端側のみ示してケーシング側は省略している。
シールフィンの及びシール構造について図2を参照して説明する。
図2は、本発明の一実施形態としてのシールフィン及びシール構造を示す模式的な横断面図である。
なお、以下の説明では、固定用溝の幅方向(図2中左右方向)中央の中心線CLに向く方向を内方又は内側とし、その反対側、中心線から離れる方向を外方又は外側とし、静翼6側を先端側とする。また、図2中で、左側を一端側、右側を他端側として説明する。
溝側面8Bには、溝底面8A側に形成された凹状の湾曲部8Baと、固定用溝8の開口8D側に形成された入口部8Bbとが形成されている。湾曲部8Baは外方(溝幅方向の中心線CLから離れる方向)に膨出し、その入口側(先端側)は内方(溝幅方向の中心線CLに向く方向)へ向かう絞り形状となっている。入口部8Bbは、湾曲部8Baの入口側に対して僅か傾斜して、ロータシャフト3の径方向(図2中縦方向)に延在している。
つまり、固定用溝8は、溝側面8Bの湾曲部8Baにより規定されるアリ溝部(一方のアリ溝部)8Eと、溝側面8Cの湾曲部8Caにより規定されるアリ溝部(他方のアリ溝部)8Fとを備えて、底面8Aに向かって溝幅が両外側に拡大する両アリ溝形状となっている。
また、フィン部9Bは、基部9Aと連続して形成された付け根部9Baと、この付け根部9Baから静翼6方向(開口8D方向)に連続して形成されたフィン本体部9Bbとを有している。付け根部9Baは、外面及び内面が共に外方に(一端側に)膨出する湾曲形状に形成されている(付け根部9Baには、外面に凸状湾曲部が形成され、内面に凹状湾曲部が形成されている)。そこで、以下、付け根部9Baを「湾曲部9Ba」という。この湾曲部9Baの静翼6寄り(開口8D寄り)の部分は、開口8Dに向かって内方(溝幅方向の中心線CLに向く方向)へ傾斜している。フィン本体部9Bbは、静翼6に近づくにしたがって板厚が薄くなるように横断面が先細り形状に形成されている。
また、基部9Aの他端側には、固定用溝8内に配置した際に固定用溝8の開口8Dに向くように傾斜したテーパ面(第1傾斜面)9Aaが形成されている。
テーパ面10Cは、テーパ面9Aaとは逆方向に傾斜する(固定用溝8内に配置した際に固定用溝8の底面8Aに向くように傾斜する)。
本発明の一実施形態では、以下のようにしてシールフィン9のロータシャフト3への固定が行われる。
シールフィン9を、フィン部9Bの先端側を静翼6に向けた姿勢で、その湾曲部9Baの一方側を、ロータシャフト3に形成された固定用溝8のアリ溝部8Eに係止させつつ、溝底面8Aに載置する(シールフィン設置ステップ)。
次いで、固定用溝8とシールフィン9との間に、ロッキングピース10を叩き込んでシールフィン9を固定用溝8に固定する(固定ステップ)。
本発明の一実施形態によれば、固定用溝8とシールフィン9との間に、ロッキングピース10を叩き込んで埋め込んだ際、ロッキングピース10は、シールフィン9の基部9Aの先端(他端)のテーパ面9Aaに押圧される結果、テーパ面9Aaに接した状態でテーパ面9Aaにそって変形し、且つ、テーパ面9Aaの案内にもより、ロッキングピース10がアリ溝部8Fに入り込むようになる。
また、ロッキングピース10は、シールフィン9の湾曲部9Baの内側面(他端側の面)に密着するように(或いは僅かな隙間をあけて)入り込んで係止される。
したがって、シールフィン9の基部9Aは溝底面8Aに押圧され、フィン部9Bは湾曲部9Baをアリ溝部8Eに係止させた状態で、溝側面8Bに押圧される。さらに、基部9Aの先端のテーパ面9Aaによってロッキングピース10のテーパ面(第2傾斜面)10Cとの相互間に隙間が生じることが抑制される結果、基部9Aはテーパ面9Aaにおいてロッキングピース10により押圧される。これにより、シールフィン9の基部9Aは、ロッキングピース10と固定用溝8との相互間に隙間が生じることを抑制できる(又は、従来よりも隙間を低減できる)。すなわち、ロッキングピース10に対する位置規制を強化できる。
このようにして、シールフィン9及びロッキングピース10の相互間においてシールフィン9及びロッキングピース10の両方に作用する係止力(シールフィン9及びロッキングピース10にロータシャフト3の径方向への外力が作用しても、シールフィン9及びロッキングピース10にロータシャフト3の径方向への移動を押える力)が向上する。
したがって、タービンの起動と停止とが繰り返されること起因してロッキングピース10が塑性変形したとしても、ロッキングピース10は移動が規制されるようになって、ロッキングピース10の固定用溝8やシールフィン9からの離脱、ひいてはタービン運転中のシールフィン9やロッキングピース10の飛散が発生することを抑制することができる。
(1)上記実施形態では、ロータシャフト3を本発明の一方の構造体とすると共に、静翼6を本発明の他方の構造体として、ロータシャフト3にシールフィン9を設けたが、逆に、静翼6を設置支持する構造体(静止構造体である翼環や内車室)を本発明の一方の構造体とすると共にロータシャフト3に取り付けられた動翼5を本発明の他方の構造体として、シールフィン9を、静翼6を設置支持する構造体(静止構造体である翼環や内車室)に設けても良い。
3 ロータシャフト(回転構造体,一方の構造体)
5 動翼
6 静翼(静止構造体,他方の構造体)
7 シールフィン部
8 固定用溝
8A 固定用溝8の底面
8B,8C 固定用溝8の内側面
8Ba,8Ca 溝側面8Bの湾曲部
8Bb,8Cb 溝側面8Bの入口部
8D 固定用溝8の開口
8E 固定用溝8のアリ溝部(一方のアリ溝部)
8F 固定用溝8のアリ溝部(他方のアリ溝部)
9 シールフィン
9A シールフィン9の基部
9Aa 基部9Aのテーパ面(第1傾斜面)
9Ab 基部9Aの基部の先端
9B シールフィン9のフィン部
9Ba フィン部9Bの湾曲部
10 ロッキングピース
10A ロッキングピース10の係止部(第1係止部)
10B ロッキングピース10の係止部(第2係止部)
10C ロッキングピース10のテーパ面(第2傾斜面)
Claims (5)
- 回転構造体と静止構造体との間で作動流体の漏洩を抑制し、前記回転構造体と前記静止構造体との何れか一方の構造体に形成された溝幅の両方側にアリ溝部のある形状の固定用溝にロッキングピースを埋め込むことで固定される、シールフィンであって、
前記固定用溝の溝幅方向に伸びるように前記固定用溝内に配置される基部と、
前記基部の前記溝幅方向の一端側から前記固定用溝の開口へと起立して作動流体の流通を抑制するフィン部とを備えて構成され、
前記フィン部の前記基部との付け根には前記一端側に膨出するように湾曲する湾曲部が形成され、
前記基部の他端側には、前記固定用溝内に配置した際に前記固定用溝の開口に向くように傾斜した第1傾斜面が設けられ、
前記湾曲部が前記固定用溝の前記アリ溝部に係止され、前記第1傾斜面が前記ロッキングピースに係止されるようにした
ことを特徴とする、シールフィン。 - 回転構造体と静止構造体との間で作動流体の漏洩を抑制するシール構造であって、
前記回転構造体と前記静止構造体との何れか一方の構造体に形成された溝幅の両方側にアリ溝部のある形状の固定用溝と、
前記固定用溝に固定されるシールフィンと、
前記シールフィンと前記固定用溝との相互間の隙間に埋め込まれたロッキングピースとを備えて構成され、
前記シールフィンは、前記固定用溝の溝幅方向に伸びるように前記固定用溝内に配置される基部と、前記基部の前記溝幅方向の一端側から前記固定用溝の開口へと起立して先端側を、前記回転構造体と前記静止構造体との何れか他方の構造体に向けた姿勢で、作動流体の流通を抑制するフィン部と、前記フィン部の前記基部との付け根に形成され、前記一端側に膨出するように湾曲する湾曲部と、前記基部の他端側に形成されて前記固定用溝の開口に向くように傾斜した第1傾斜面とを有し、前記湾曲部の前記一端側を、前記固定用溝の一方のアリ溝部に係止され、
前記ロッキングピースは、前記シールフィンの前記湾曲部の他端側に係止される第1係止部と、前記両アリ溝の内の他方のアリ溝部に係止される第2係止部と、前記シールフィンの前記第1傾斜面と対面し前記第1傾斜面とは逆方向に傾斜した第2傾斜面とを有するロッキングピースとを備えた
ことを特徴とする、シール構造。 - 前記回転構造体がタービンのロータシャフトであると共に前記静止構造体が前記タービンの静翼である
ことを特徴とする、請求項2記載のシール構造。 - 前記静止構造体が前記静翼を支持する構造体であると共に前記回転構造体が前記タービンの動翼である
ことを特徴とする、請求項2記載のシール構造。 - 回転構造体と静止構造体との間で作動流体の漏洩を抑制し、前記回転構造体と前記静止構造体との何れか一方の構造体に形成された溝幅の両方側にアリ溝部のある形状の固定用溝に、請求項1記載のシールフィンを取り付ける、シールフィンの固定方法であって、
前記フィン部を、前記回転構造体と前記静止構造体との何れか他方の構造体に向けた姿勢で、且つ、前記湾曲部の前記一端側を、前記両アリ溝の内の一方のアリ溝部に係止させ状態で、前記基部を、前記固定用溝の底面に載置する、シールフィン設置ステップと、
前記湾曲部を前記固定用溝の前記アリ溝部に係止させた状態の前記シールフィンと、前記固定用溝との間の隙間に、ロッキングピースを埋め込んで、前記第1傾斜面を前記ロッキングピースに係止させて、前記シールフィンを前記固定用溝に固定する、固定ステップとを備えた
ことを特徴とする、シールフィンの固定方法。
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