以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明は、発酵物質、有機肥料、堆肥、厩肥等(以下、堆肥等と称する場合がある)の原材料である有機物質を、真菌、細菌、古細菌等の微生物(以下、微生物と称す)の有気、無気呼吸等(以下、発酵等と称す)によって堆肥等へ変化させる微生物学的、化学的変化過程において、発酵過程に用いられる複数の培養槽内の物質を、自動的もしくは半自動的に移動させる装置に関するものである。
更に本発明は有機物質の種類を基本的に選ばず、また微生物の種類の性状が嫌気性、好気性、偏性嫌気性、偏性好気性である等に関係せず、また微生物の呼吸過程及び微生物叢の変化により有気、無気又は両者の併用、若しくは変化の如何を問わず対応可能である。更に本発明は単に堆肥化等に限らず、いわゆる発酵食品(例えば、ヨーグルト、アルコール製品)等の製造に関しても有益である。
なお、本明細書中の「発酵」とは、解糖系の酸化過程のみならず、古細菌、真正細菌、真核生物である微生物が行う無気呼吸、有気呼吸を含めた有機物、無機物の異化若しくは同化過程を言い、場合により、光合成、化学合成をも含む。
初めに、本発明に係る培養装置の一般的構造について説明する。
[位置エネルギーを利用した培養装置の一般構造]
図1〜3は、本発明に係る培養装置の処理ユニットの例を示す概略斜視図である。培養装置は、図1に示すように、内部に空間が形成された本体2と、蓋部3とを備えた処理ユニット1を、少なくとも2つ有している。各々の処理ユニット1は、収容した収容物を発酵等させるための処理室を内部に備えており、他の処理ユニット1と収容物を互いに移動可能に連結されることが可能である。本発明に係る培養装置の特徴の1つは、位置エネルギーを利用して処理室内の収容物を移動させることである。なお、処理ユニット1は、処理室内で発酵等が行われずに、単なる材料の保管等に用いられる場合もあり、収容する行為も処理に含まれる。
本体2は、上端に開口部4が形成された円柱形状を有し、この開口部に蓋部3が開閉自在に設けられている。本体2の内部には、処理室が設けられる。なお、蓋部3が設けられて開口部4が常に解放されている場合や、本体2と蓋部3が一体的に形成されて開口部4が設けられない場合もありえる。また、本体2の形状は、内部に処理室を形成可能であればよく、円柱形状に限定されない。
本体2および/または蓋部3は、種々の材料で製造できるが、例えば非遮光性のガラス製としたり、遮光性のコンクリートやステンレス製とすることができる。本体2および/または蓋部3を遮光性のガラス製とする際には、補強材として金属等からなる支柱を設けてもよい。
本体2には、材料注入口5および材料排出口6が設けられる。材料注入口5は、本体2の上方に設けられ、他の処理ユニット1の材料排出口6と連通可能となっている。また、材料排出口6は、本体2の下方に設けられ、他の処理ユニット1の材料注入口5と連通可能となっている。なお、材料注入口5および/または材料排出口6は、蓋部3に設けられることもありえる。材料注入口5および材料排出口6には、例えばシャッター構造等の弁が設けられえる。弁は、必要に応じて材料の流通を阻害し、または材料の流通を可能とするために設けられる。
互いに異なる処理ユニット1の材料注入口5と材料排出口6が連結される際には、材料注入口5と材料排出口6の間に、連結管が設けられえる。連結管は、材料注入口5と材料排出口6に取り外し可能に連結されるか、または固定的に連結されてもよい。または、例えば2つの連結管が材料注入口5および材料排出口6の各々に固定的に連結されており、この2つの連結管が、互いに取り外し可能に連結されてもよい。連結する構造としては、例えばゴム等からなるチューブ同士を差し込み式で連結したり、一方の連結管の開口端部に漏斗形状の受け口を設けて、他方の連結管の開口端部から流出する収容物を受け口により受ける構造としてもよい。
本体2または蓋部3には、発酵に必要な脱酸素気体や酸素を含む気体等を必要に応じて注入する気体注入口7や、微生物を投入するための微生物投入口8が、必要に応じて連結されてもよい。気体注入口7および微生物投入口8には、逆流防止弁が設けられてもよい。微生物投入口8からは、発酵に必要な微生物が投与可能であり、微生物の不足等の発酵等の進行を妨げる要因が生じた場合に、繰り返し微生物を投与することができる。
また、本体2または蓋部3には、処理室内で発生した気体(エタノール、メタン等)や、気体注入口7から注入された気体を排出する気体排出口9が連結されてもよく、気体排出口9には、逆流防止弁が設けられてもよい。
また、本体2または蓋部3には、処理室内に、発酵過程で必要な液体(例えば微生物混合液、塩水溶液、アルカリ性溶液、酸性溶液等)を注入する液体注入口10が連結されてもよく、液体注入口10には、逆流防止弁が設けられてもよい。
また、本体2または蓋部3には、処理室内にモータ等により駆動される攪拌翼を備えた撹拌装置12が設けられてもよい。攪拌装置12は、外部から供給される電流によって駆動される。攪拌装置12は、処理室内の収容物を攪拌することができる。
また、本体2には、必要に応じて処理室内の腐敗菌を殺菌(滅菌)するためのアノード電極13Aおよびカソード電極13Bが設けられる。電極13は、処理室内に通電、若しくは放電可能であれば、取り付け位置は限定されない。なお、アノード電極13Aおよびカソード電極13Bを設ける際には、本体2および蓋部3は、安全性の観点より、少なくともその最内層が樹脂やコンクリート等からなる絶縁性材料で構成されていることが好ましい。また、処理ユニット1には、収容室内を加熱するためのマイクロウェーブや炉等が設けられてもよい。
また、本体2の下部には、図2に示すように、処理ユニット1が移動できるように車輪15を設けてもよい。車輪15は、床面を移動可能であったり、または床面に敷設されたレール上を移動可能であってもよい。また、本体2の側面には、牽引するためのフック16が設けられてもよい。
また、本体2の下方には、図3に示すように、分離部20(例えば、半透膜、不透膜、全透膜等)を介して処理室と水を交換して処理室内の浸透圧を調整するための浸透圧調整室17が設けられてもよい。浸透圧調整室17には、浸透圧調整剤としての液体を注入する調整剤注入管18と、浸透圧調整剤を排出する調整剤排出管19が連結されている。浸透圧調整剤は、例えば処理室にて用いられる液体培地の濃度が異なるものが適用できるが、必ずしも液体培地に限定されず、例えば塩等の濃度の異なる物質でもよい。なお、浸透圧調整剤の注入と排出の両機能を備えた調整剤注排出管が連結されてもよい。また、調整剤注入管18および調整剤排出管19が設けられずに、浸透圧調整剤を浸透圧調整室17に入れたままとしてもよい。
分離部20は、交換剤を透過可能な構造体であり、半透膜、親水性コンクリート、親水性セラミック、イオンチャージ物質、活性炭、砂、土、合成高分子物質、天然高分子物質、金属等が適用できる。分離部20は、分離機能を有する有形物(物質、若しくはイオン、塩、コロイド等)及び/又は無形物(電場、磁場等)若しくは両者の複合体より形成された部位である。
なお、半透膜とは、一部の物質は透過するが、一部の物質は透過しない膜を意味し、逆浸透膜、限界濾過膜等を含むものである。分離部20を透過する物質(交換剤)としては、例えば、水、処理室内で発生するエタノールやメタン、活性酸素やオゾン等が想定されるが、これらに限定されない。また、交換剤には、微生物が含まれる場合もある。
分離部20は、少なくとも一部が、強度保持の目的で、他の物質からなる分離機能部支持部で支持される場合がある。
次に、本培養装置の作用について説明する。
図4は、一例として2つの処理ユニットを連結した培養装置を示す概略斜視図である。図4に示すように、培養装置は、2つの処理ユニット1が設けられており、一方の処理ユニット1Aの材料注入口5Aが、他方の処理ユニット1Bの材料排出口6Bと連通するように連結管21Aで連結されており、他方の処理ユニット1Bの材料注入口5Bが、一方の処理ユニット1Aの材料排出口6Aと連通するように連結管21Bで連結されている。2つの処理ユニット1は、略同一の面上に配置されている。
ここで、図5に示すように、一方の処理ユニット1Aを上昇(もしくは他方の処理ユニット1Bを下降)させると、処理ユニット1Aの内部の収容物が、連結管21Bを介して処理ユニット1Bの内部へ移動する。なお、処理ユニット1の昇降は、ジャッキやクレーン等の機力を用いた昇降手段によることが好ましい。また、車輪を設けた処理ユニット1を、床面に設けたスロープを移動させることで、昇降させることもできる。
更に、図6に示すように、他方の処理ユニット1Bを上昇(もしくは一方の処理ユニット1Aを下降)させることで、処理ユニット1Bの内部の収容物を、連結管21Aを介して処理ユニット1Aの内部へ移動させることができる。このように、処理ユニット1を昇降させることで、処理ユニット1内の収容物を、異なる処理ユニット1へ移動させることができる。
図7〜9は、他の例として2つの処理ユニットを連結した培養装置を示す儀略斜視図である。図7に示すように、培養装置は、6面体の2つの処理ユニット22A,22Bが隣接して配置されている。一方の処理ユニット22Aの他の処理ユニット22Bと隣接する面には、シャッター構造等からなる弁機能が備えられた上方開口部23Aおよび下方開口部24Aが設けられている。また、他方の処理ユニット22Bにも、一方の処理ユニット22Aと隣接する面に、シャッター構造等からなる弁機能が備えられた上方開口部23Bおよび下方開口部24Bが設けられている。2つの処理ユニット22A,22Bは、略同一の面上に配置されている。
ここで、図8に示すように、一方の処理ユニット22Aを上昇(もしくは他方の処理ユニット22Bを下降)させ、一方の処理ユニット22Aの下方開口部24Aの弁を開き、他方の処理ユニット22Bの上方開口部23Bの弁を開くと、下方開口部24Aと上方開口部23Bが連通する。すなわち、一方の処理ユニット22Aの下方開口部24Aが材料排出口として機能し、他方の処理ユニット22Bの上方開口部23Bが材料注入口5として機能して、一方の処理ユニット22A内の収容物が、他方側へ移動することとなる。なお、このとき、他方の処理ユニット22Bの下方開口部24Bの弁は閉じた状態である必要があるが、一方の処理ユニット22Aの上方開口部23Aは、閉じていても開いていてもよい。弁の開閉は、電動であることが好ましいが、手動であってもよい。
更に、図9に示すように、他方の処理ユニット22Bを上昇(もしくは一方の処理ユニット22Aを下降)させ、他方の処理ユニット22Bの下方開口部24Bの弁を開き、一方の処理ユニット22Aの上方開口部23Aの弁を開くと、下方開口部24Bと上方開口部23Aが連通する。すなわち、他方の処理ユニット22Bの下方開口部24Bが材料排出口として機能し、一方の処理ユニット22Aの上方開口部23Aが材料注入口として機能して、他方の処理ユニットB内の収容物が、一方側へ移動することとなる。なお、このとき、一方の処理ユニット22Aの下方開口部24Aの弁は閉じた状態である必要があるが、他方の処理ユニット22Bの上方開口部23Bは、閉じていても開いていてもよい。
図10は、更に他の例として3つの処理ユニットを連結した培養装置を示す概略斜視図である。図10に示すように、培養装置は、3つの処理ユニット26A〜26Cが連結管27A〜27Cを介して連結されている。処理ユニット26Aの材料排出口6Aは、処理ユニットBの材料注入口5Bと連通し、処理ユニット26Bの材料排出口6Bは、処理ユニット26Cの材料注入口5Cと連通し、処理ユニット26Cの材料排出口6Cは、処理ユニット26Aの材料注入口5Aと連通している。3つの処理ユニット26A〜26Cは、略同一の面上に配置されている。
ここで、処理ユニット26Aを上昇させると、処理ユニット26Aの内部の収容物を、連結管27Aを介して処理ユニット26Bの内部へ移動させることができる。
また、処理ユニット26Bを上昇させると、処理ユニット26Bの内部の収容物を、連結管27Bを介して処理ユニット26Cの内部へ移動させることができる。
また、処理ユニット26Cを上昇させると、処理ユニット26Cの内部の収容物を、連結管27Cを介して処理ユニット26Aの内部へ移動させることができる。
このように、少なくとも3つの処理ユニット26を連結し、任意の処理ユニット26を昇降させることで、任意の処理ユニット26から他の任意の処理ユニット26へ、選択的に有機物質を移動させることができる。
なお、連結管27A〜27Cの内部、もしくは材料注入口5A〜5Cまたは材料排出口6A〜6Cに開閉可能な弁を設けることで、意図しない処理ユニット27への収容物の流入を抑制でき、望ましい処理ユニット27への収容物の移動を確実に行うことができる。
更に、連結管27A〜27Cの配管経路を組み換えることも可能である。また、分岐した連結管を使用することもできる。また、更に多くの連結管を各処理ユニット間に設けて、連結管の内部、もしくは材料注入口5または材料排出口6に開閉可能な弁を設けることで、収容物の移行、循環を複雑な移動方向に制御することも可能となる。また、処理ユニット27を4つ以上連結することもできる。
なお、移動する収容物は、処理ユニット27の昇降ではなく、処理ユニット27内にシリンダ等を設けて処理室内を加圧することで、他の処理ユニット27へ移動させることもできる。
図11は、更に他の例として2つの処理ユニットを連結した培養装置を示す概略斜視図である。図11Aに示すように、培養装置は、2つの処理ユニット30A,30Bが設けられており、一方の処理ユニット30Aの材料注入口5Aが、他方の処理ユニット30Bの材料排出口6Bと連通するように連結管31Aで連結されており、他方の処理ユニット30Bの材料注入口5Bが、一方の処理ユニット30Aの材料排出口6Aが連通するように連結管31Bで連結されている。また、処理ユニット30A,30Bの各々には、本体2の外部に、気体注入ダクト33A,33Bによって気体(浮力用の材料)を注排出して膨張収縮が可能な浮き袋34A,34B(浮き部、浮力昇降手段)が設けられている。気体注入ダクト33A,33Bには、開閉弁が設けられる。また、処理ユニット30A,30Bの下方には、比重の重い錘35A,35Bが設けられる。
2つの処理ユニット30A,30Bは、水等の液体が入れられた槽36内に収容されており、錘35A,35Bが設けられることで、望ましい姿勢に維持されている。ここで、両方の処理ユニット30A,30Bの浮き袋34A,34Bが収縮した状態で、例えば一方の処理ユニット30Aの浮き袋34Aを膨張させると、浮き袋34Aにより浮力が発生し、処理ユニット30Aが上昇する。これにより、処理ユニット30Aの内部の収容物を、連結管31Aを介して処理ユニット30Bの内部へ移動させることができる。また、両方の処理ユニット30A,30Bの浮き袋34A,34Bが収縮した状態で、例えば他方の処理ユニット30Bの浮き袋34Bを膨張させると、浮き袋34Bにより浮力が発生し、処理ユニット30Bが上昇する。これにより、処理ユニット30Bの内部の収容物を、連結管31Bを介して処理ユニット30Aの内部へ移動させることができる。なお、両方の処理ユニット30A,30Bの浮き袋34A,34Bを膨張させた状態から、一方の浮き袋を収縮させることで高低差を生じさせて、収容物を移動させることも可能である。なお、槽36内の液体の温度を加熱装置等の温度調節装置で調整することで、処理室内の温度を調整することもできる。なお、浮き部として、膨張収縮可能な浮き袋34ではなく、バラストタンクのように、一定の体積内で気体と液体を置換できる構造としてもよい。また、処理ユニット30は、3つ以上設けられてもよい。また、浮き部に投入または排出される材料は、かならずしも気体である必要はなく、液体や固体等であってもよい。また、処理ユニット30を昇降させるために、浮き部に加えて、例えばジャッキやクレーン等の機力を併用してもよい。また、槽36は、上述のように1つの槽36に複数の処理ユニット30を収容する場合と、1つの槽36に対して1つの処理ユニット30のみを収容する場合がありえる。したがって、槽36が複数設けられてもよい。
また、浮力を生じさせる浮き部を処理ユニットに設けた状態で、上方もしくは下方へ押圧もしくは牽引したり、または連結された状態から切り離す浮力調整手段を設けることができる。この際の浮き部は、浮力調整用の材料を投入、排出可能であっても、または投入、排出することなく浮力が一定でもよい。このような浮力調整手段を設ければ、槽36の液体内で上昇しようとする処理ユニットを、下方へ牽引したり、もしくは上方から押圧することで、槽36内で昇降させることができる。なお、この際の牽引や押圧は、チェーンやワイヤ等の屈曲可能な部材を用いても、または屈曲しない棒材等で行ってもよい。また、槽36の液体内で浮力調整手段により処理ユニットを拘束した状態から、切り離すことで浮き部の浮力により処理ユニットを上昇させることもできる。
図12は、更に他の例として2つの処理ユニットを回転体内に設けた培養装置を示す斜視図である。図12に示すように、培養装置は、水平面と交差する回転面で回転可能な筒形状の回転体41の内部に、回転中心を挟んで反対に、回転中心から離れて位置する2つの処理ユニット40A,40Bを有している。2つの処理ユニット40,40Bには、互いに対向する面に開口部42A,42Bが設けられ、この開口部42A,42B同士が、連結管43により連結されている。連結管43には、開閉弁44が設けられることが好ましい。
ここで、一方の処理ユニット40Aが上側に位置し、他方の処理ユニット40Bが下側に位置する状態(図12(A)参照)から回転体41を180度回転させると、処理ユニット40Bが処理ユニット40Aの上方に移動し(図12(B)参照)、処理ユニット40Bから連結管43を介して処理ユニット40Aへ収容物が移動する。すなわち、処理ユニット40Bの開口部42Bが材料排出口として機能し、処理ユニット40Aの開口部42Aが材料注入口として機能する。
更に、この状態から回転体41を180度回転させると、処理ユニット40Aが処理ユニット40Bの上方に移動し(図12(A)参照)、処理ユニット40Aから連結管43を介して処理ユニット40Bへ収容物が移動する。すなわち、処理ユニット40Aの開口部42Aが材料排出口として機能し、処理ユニット40Bの開口部42Bが材料注入口として機能する。
このように、回転体41が水平面と交差する回転面で回転することで、処理ユニット40の上下の位置関係を変化させることができる。したがって、回転体41に2つの処理ユニット40A,40Bを設けることで、回転体41を回転させることにより、処理ユニット40内の収容物を、異なる処理ユニット40へ移動させることができる。
なお、処理ユニット40には、当然に、前述の例で示した気体注入口、微生物投入口、気体排出口、液体注入口、収容室内を加熱するためのマイクロウェーブや炉等が設けられてもよい。
図13は、更に他の例として3つの処理ユニットを回転体内に設けた培養装置を示す概略斜視図である。図13に示すように、培養装置は、回転可能な筒形状の回転体41の内部に、回転中心から離れて周方向に均等に設けられるように120度ずつ位相をずらして配置される3つの処理ユニット45A,45Bを有している。処理ユニット45Aと処理ユニット45Bの間には、開口部を連結する連結管46Aが設けられ、処理ユニット45Bと処理ユニット45Cの間には、開口部を連結する連結管46Bが設けられ、処理ユニット45Cと処理ユニット45Aの間には、開口部を連結する連結管46Cが設けられる。連結管46A,46B,46Cには、開閉弁が設けられることが好ましい。
ここで、回転体41を回転させて、処理ユニット45Aを処理ユニット45Bの上方に移動させると、処理ユニット45Aから連結管46Aを介して処理ユニット45Bへ収容物が移動する。すなわち、処理ユニット45Aの処理ユニット45Bと連結する開口部が材料排出口として機能し、処理ユニット45Bの処理ユニット45Aと連結する開口部が材料注入口として機能する。なお、この際には、回転体41の角度にもよるが、処理ユニット45Aから処理ユニット45Cへの材料の流入を抑制するために、処理ユニット45Aと処理ユニット45Cの間の連結管46Cの開閉弁が閉じられていることが好ましい。
更に、回転体41を回転させて、処理ユニット45Bを処理ユニット45Cの上方に移動させると、処理ユニット45Bから連結管46Bを介して処理ユニット45Cへ収容物が移動する。すなわち、処理ユニット45Bの処理ユニット45Cと連結する開口部が材料排出口として機能し、処理ユニット45Cの処理ユニット45Bと連結する開口部が材料注入口として機能する。なお、この際には、回転体41の角度にもよるが、処理ユニット45Bから処理ユニット45Aへの材料の流入を抑制するために、処理ユニット45Bと処理ユニット45Aの間の連結管46Aの開閉弁が閉じられていることが好ましい。
更に、回転体41を回転させて、処理ユニット45Cを処理ユニット45Aの上方に移動させることで、同様に処理ユニット45Cから処理ユニット45Aへ収容物を移動させることができる。
なお、収容物の移動は、回転体41の回転方向や回転角度を制御することで、上記のような処理ユニット45A→処理ユニット45B→処理ユニット45Cの順番に限定されず任意に設定でき(例えば、処理ユニット45A→処理ユニット45B→処理ユニット45A→処理ユニット45C→処理ユニット45B等)、複雑な発酵サイクルにも対応できる。また、回転体41に設けられる処理ユニット45の数は、4つ以上とすることも可能である。
図14は、更に他の例として2つの処理ユニットを設けた回転体を複数並べた培養装置を示す概略斜視図である。図14に示すように、培養装置は、回転中心を挟んで反対側に2つの処理ユニット48を有する回転可能な筒形状の回転体47を、複数一列に並べて有している。各々の回転体47の外周面には、ギア49が刻まれており、隣接する回転体47同士のギア49が互いに噛み合っている。また、最端部の回転体47は、外周面にギア52が刻まれたギアベルト50と噛み合っておいる。したがって、ギアベルト50をモータ等により駆動することで、複数の回転体47を同時に回転させることができる。回転体47を回転させることで、各々の回転体47において、連結管51を介して処理ユニット48間で収容物を移動させることができる。なお、各々の回転体47における処理ユニットの収容物は、必ずしも同じである必要はない。
なお、回転体47を回転させるには、ギア49を用いて回転させるだけでなく、例えば図15に示すように、回転体47の外周にレール54上を移動可能なリング53(車輪として機能する)を設けて、レール54を傾けたり、または回転体47を押すか引き寄せることによって回転させてもよい。
図16は、更に他の例として2つの処理ユニットを回転体内に設けた培養装置を示す概略斜視図であり、図17は、同回転体内の隔壁を示す概略斜視図である。図16,17に示すように、培養装置は、回転可能な筒形状の回転体55の内部を2分するように、隔壁56により分割された2つの処理ユニット57A,57Bを有している。
隔壁56には、半径外側方向の両端に、開口部が設けられる。一方の開口部には、蝶番59によって一方の処理ユニット57A側へのみ開くことが可能な扉部58Aが設けられ、他方の開口部には、蝶番59によって他方の処理ユニット57B側へのみ開くことが可能な扉部58Bが設けられる。各々の扉部58A,58Bは、バネ60A,60Bによって閉じる方向へ付勢されている。
まず、処理ユニット57Aに有機材料等が収容された状態で回転体55を回転させ、処理ユニット57Aを上方へ移動させる。このとき、隔壁56の扉部58Aが扉部58Bよりも下側に位置する状態(図18(A)参照)から、回転させることで、扉部58Aが扉部58Bよりも高い位置へ移動する(図18(B)参照)ようにする。したがって、まず処理ユニット57Aが上方へ向かう際には、図18(A)のように、上側へのみ開くことが可能な扉部58A側に収容物が位置するため、扉部58Aは開くことなく、収容物は処理ユニット57Aに保持される。この後、回転体55が更に回転すると、図18(B)のように扉部58Bが扉部58Aよりも低い位置へ移動する。これにより、処理室B内の収容物は扉部58B側へ移動し、収容物の重量によって扉部58Bが下側へ開き、収容物が処理ユニット57Bへ移動する(図18(C)参照)。すなわち、扉部58Bで覆われた開口部が、処理ユニット57Aの材料排出口であるとともに、処理ユニット57Bの材料注入口として機能する。
なお、処理ユニット57Bに有機材料等を収容した状態で、処理ユニット57Bが上方へ向かうように回転させる際には、扉部58Aで覆われた開口部が、処理ユニット57Bの材料排出口であるとともに、処理ユニット57Aの材料注入口として機能することとなる。
[外部環境の変更を利用した培養装置の一般構造]
図19は、本発明に係る培養装置の処理ユニットの他の例を示す概略斜視図である。
本発明に係る培養装置は、図19に示すように、内部に収容室が形成された本体2を備えた処理ユニット60を、少なくとも1つ有している。各々の処理ユニット60は、収容した収容物を発酵等させるための処理室61を内部に備えている。本発明に係る培養装置の特徴の1つは、処理ユニットを移動させつつ、処理ユニットの内部環境を変更させることである。処理ユニット60には、前述の「位置エネルギーを利用した培養装置の一般構造」にて説明した構造を同様に付加することが可能であり例えば、気体注入口、気体排出口、液体注入口、微生物投入口、攪拌装置、分離膜、電極等が設けられえる。
処理ユニット60は、回転可能な回転台62(回転体)に回転中心から離れて載置可能であり、回転台62の一部の上方には、処理ユニット60の処理室61を覆うことができる蓋構造部63(環境変更部)が設けられている。したがって、回転台62を回転させることによって処理ユニット60が蓋構造部63の下に配置されると、処理室61は無気呼吸に適した環境となり、処理ユニット60が蓋構造部63の下から離れると、処理室61は有気呼吸に適した環境となる。したがって、例えば無気呼吸と有気呼吸のサイクルを交互に繰り返すこともできる。このように、処理ユニット60を移動させて環境の異なる場所に移動させることで、処理室61の内部環境を変化させることができる。また、回転体を用いることで、回転体上の処理ユニットを容易に移動させつつ各環境変更部を通過させることができ、更に各処理ユニットの処理を連続して行うことができる。
蓋構造部63には、図20に示すように、手動またはシリンダー等の駆動源によって昇降可能な昇降部64を設け、この昇降部64に、蓋構造部63に設けられる孔部65から処理室61内へ挿入される攪拌シャフト66(撹拌装置)を設けてもよい。攪拌シャフト66は、モータ等に連結されて回転可能とすることができる。
また、図21に示すように、回転台62に、回転軸67を通って処理ユニット60まで流路68や導線69を設け、流路68を処理ユニット60に設けられる気体注入口、気体排出口、液体注入口または微生物投入口等に接続し、導線69を攪拌装置等に接続することもできる。
図22は、他の例として3つの処理ユニットを回転台に設けた培養装置を示す概略斜視図である。図22に示すように、3つの処理ユニット70が、回転可能な回転台72(回転体)に設置されている。処理ユニット70の本体は、いずれも非遮光性の例えばガラス製である。
回転台72の一部の上方には、処理ユニット70の処理室71を覆うことができ、非遮光性の例えばガラス製である非遮光性蓋構造部73が設けられている。また、回転台72の他の一部には、処理ユニット70の処理室71を覆うことができ、遮光性の材料製の遮光性蓋構造部74(遮光部)が設けられ、遮光性蓋構造部74に周りには、処理ユニット70の周囲を覆う遮光性のカーテン75(遮光部)が設けられている。したがって、処理ユニット70が遮光性蓋構造部74または非遮光性蓋構造部73の下から離れている際には、処理室71は遮光性環境かつ有気呼吸に適した環境となるが、回転台72を回転させることによって処理ユニット70が非遮光性蓋構造部73の下に配置されると、処理室71は非遮光性環境かつ無気呼吸に適した環境となる。また、処理ユニット70が遮光性蓋構造部74の下に配置されると、処理室71は非遮光性蓋構造部73とカーテン75により、遮光性環境かつ無気呼吸に適した環境となる。
図23は、更に他の例として処理ユニットを環状の回転体に設けた培養装置を示す概略斜視図である。図23に示すように、回転軸77から延びる複数の支柱80により支持された環状の回転体78が、回転可能に設けられている。回転体78の内部には、周方向に並んで複数の処理ユニット79A〜79Gが形成される。回転体78は、少なくとも一部が非遮光性の例えばガラス製である。また、回転台78の一部は、遮光性の材料製の遮光性蓋構造部74(遮光部)で覆われ、遮光性蓋構造部74に周りには、処理ユニット70の周囲を覆う遮光性のカーテン75(遮光部)が設けられている。したがって、回転体74を回転させることによって処理ユニット79A〜79Gが遮光性蓋構造部74の下に配置されると、処理室71は遮光性環境となる。
なお、回転軸77および支柱80に、処理ユニット79A〜79Gまで流路81や導線82を設け、流路81を処理ユニット79A〜79Gに設けられる気体注入口、気体排出口、液体注入口または微生物投入口等に接続し、導線82を攪拌装置等に接続することもできる。
回転体78には、図24に示すように、処理ユニット79A〜79Gの材料注入口、材料排出口、気体注入口、気体排出口、液体注入口または微生物投入口等と連通するダクト83が設けられてもよい。ダクトは、必要に応じて回転可能とし、上下に移動できることが好ましい。
なお、処理ユニット79は、回転体78の内部に直接形成されてもよいが、図25に示すように、回転体78に収納される別構造体であってもよい。回転体78は、開閉可能な扉部84を有し、処理ユニット79A〜79Gは、回転体78の内部に入れ子状態で収納される。
図26に示す例では、回転体78の処理ユニット79A〜79Gには、材料注入口85および気体排出口86が設けられる。材料注入口85および気体排出口86には、開閉弁が設けられることが好ましい。材料注入口85は、回転可能に設けられ、回転体78の周方向所定位置において、原材料供給容器87と連結可能となっている。気体排出口86もまた、回転体78の周方向所定位置において、ガス回収管88と連結可能となっている。また、回転体78の周方向所定位置には、図27に示すようなマイクロウェーブ90Aや炉90B等の加熱装置90(環境変更部)が設けられて、処理ユニット79内の収容物を加熱することができる。また、回転体78の周方向所定位置の下方には、上方が解放された回収容器89が設けられる。
各々の処理ユニット79A〜79Gには、順次、材料注入口85を介して原材料供給容器87から有機材料等が注入され、処理ユニット79A〜79Gが回転しつつ、内部で発酵等が行われる。発酵等が進んで処理ユニット79A〜79Gの気体排出口86がガス回収管88に達すると、気体排出口86がガス回収管88と連結して、マイクロウェーブや炉等の加熱装置90によって処理ユニット79が加熱される。これにより、ガス回収管88からエタノール、メタンまたはアンモニア等の気体を回収できる。この後、更に発酵等が進んで処理ユニット79が回収容器89の上方に達すると、材料注入口85の開閉弁を開いて下方に回転させ、材料注入口85を材料排出口として、収容物を回収容器89に移動させることができる。
<実施形態>
本発明に係る実施形態は、有機物質中の腐敗菌の菌数を減少させる段階を含む、有機物質を前処理する第1の工程;並びに、前記前処理された有機物質から、微生物を用いてエタノール及び/またはメタンを得る第2の工程;を含む有機物質の処理方法に適用される。なお、本実施形態は一例であり、本発明が後述する装置および方法のみに限定されることはない。したがって、以下の第1の工程〜第3の工程に用いられる培養装置、処理方法、微生物、装置の用途等を、種々変更することができる。また、第1の工程〜第3の工程の一つ以上の工程が行われなくてもよい。
本処理方法は、生ゴミ、動物排泄物、廃棄木材や落葉などからなる家庭廃棄物質または(産業)廃棄物質などの「有機物質」を有用な物質に変換するに当たり、有機物質に損傷をほとんど与えることなく、有機物質に存在する有害な腐敗菌の数を効果的に減少させること(腐敗を防止すること)を特徴とする。そして、有機物質に損傷を与えることなく、腐敗菌の数を効果的に減少させた有機物質を原料として、所望により微生物学的処理サイクルに導入することで、有機物質から連続的にエタノールやメタン、並びにこれらの生成過程で発生する副産物より得られる堆肥・肥料等(以下、「肥料等」ともいう)といった有用物質を効率良く簡易に、かつ低コストで生産することができる。このように、本処理方法は、全体として極めて地球環境に負荷のかからない方法であるといえる。なお、必要な場合には、上記のいずれか一以上の工程(または後述する段階)において、1回以上の加熱殺菌、酸もしくはアルカリ投与による菌増殖の阻止、または滅菌処理などを行ってもよい。また、有機物質が容積の大きな固形物を含む場合には、処理速度を大きくするために粉砕または細断するのが通常である。しかし、本発明においては必須の処理工程ではないため、本発明に係る方法の実施に要するエネルギーを有意に節約することができうる。
以下、各工程について、添付した図面、特に図28及び後述の図37を参照しつつ、本処理方法について説明した後、実際に適用される本実施形態に係る培養装置について説明する。図28は、有機物質の処理方法における各工程及び前記工程を構成する各段階を示した概略的なフローチャートである。本発明は主に、上記第1工程及び第2工程に大別される。そして、後述のように、所望により第3の工程をさらに設けてもよい。かかる第3の工程によって、微生物を用いて段階(a)を経た後の残余の高分子有機化合物(以下、「肥料前駆物質」ともいう)から肥料等を生成することが可能となる。なお、本明細書で挙げられる微生物の分類(門、目、属、種など)については、本願の出願時における分類に従って記載している。将来において、かかる微生物の分類が変更になった場合には、変更後の分類もまた、本発明の範囲に含まれる。
[第1工程]
本工程は、有機物質の前処理工程ということができ、有機物質中の腐敗菌の菌数を減少させる段階を含む。なお、有機物質内の腐敗菌を滅菌(減菌)する必要がない場合等には、本工程が省略される場合がある。
出発物質である有機物質については、以下に限定されることはないが、例えば、植物及び動物の排泄物、生ゴミ、鉱物並びに食品(製品を含む)などが挙げられる。前記植物の例として枯葉、木材及び紙などが挙げられる。前記動物排泄物の例として鶏糞や馬糞などが挙げられる。なかでも、腐敗菌の数が特に多く、本処理方法の効果が一層顕著に発揮されうる観点より、好ましくは植物及び動物の排泄物並びに生ゴミ、より好ましくは動物排泄物(特に鶏糞由来のもの)が挙げられる。
本明細書における「腐敗」とは、タンパク質、炭水化物または脂質成分が特定の微生物の作用で分解され、次第に外観、においや味などが変化する現象であって、前記現象の中でも、腐敗菌が、地球環境や人体にとって有害な成分、または意図された成分以外の成分を生成しうることを意味する。前記「意図された成分以外の成分」として、例えば食品分野においては、消費期限後の食品等に繁殖しうる腐敗菌が生成する成分が挙げられる。また、醸造の過程で酢酸生成菌が繁殖し酢酸を生成することがあるが、酒類にとっては好ましいものとはいえず、かかる酢酸もまた一例として挙げられる。このように、「意図された成分以外の成分」とは、有機物質に本来的に存在することが期待されないような、いわば人類にとって目的外の意図していない成分を指す。
また、本明細書における「腐敗菌」とは、腐敗を発生させうる古細菌、真正細菌、真菌、または原生生物(微生物に限定されない)などによる、有機物の分解反応(異化とは限らない)であって、一般に人類に有益とならないものをいう。コンタミネーションが介在して有機物質に存在するような微生物は、「腐敗菌」の典型的な例といえる。ただし、腐敗菌の数によらず、腐敗菌が存在する有機物質であれば本処理方法の効果が発揮されるため、かような有機物質は全て、本発明に好適に用いられることはいうまでもない。かかる腐敗菌について、有害な物質を産生するものであれば特に制限されないが、具体例を挙げるならば、例えば大腸菌、鉄細菌や硫酸還元細菌(後述)などがありうる。一方、有機物質は、タンパク質、炭水化物(多糖類)や脂質を含んでいるため、廃棄されると(場合によっては廃棄されないものでも)、上記の腐敗菌により経時的・相乗的に腐敗が進行し、有害な物質(比較的低分子なものが多い)が大量に産生される。上記のタンパク質、炭水化物(多糖類)や脂質は、腐敗菌の異化作用により、低分子糖(単糖類など)、グリセリン、脂肪酸、アミノ酸などを経て、アルコール類や以下の有害な物質に変換されうる。かかる有害な物質として、例えば、アンモニア(特に排泄物や生ゴミに多く存在)、蟻酸等の有機酸(特に排泄物に多く存在)、メチルメルカプタンメチルメルカプタン(特に排泄物や生ゴミに多く存在)、硫化水素(特に排泄物や生ゴミに多く存在)、インドール(特に排泄物に多く存在)、トリメチルアミン(特に生ゴミに多く存在)、メチルメルカプタン(野菜の腐敗臭)、その他、アルデヒド類(アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド等)やフェノール類等が挙げられる。
上記した有害な物質は、後述する第2の工程における微生物に起因する反応を阻害しうる。これは、第2の工程におけるエタノール発酵やメタン発酵により得られるはずの有用物質(エタノール、メタン及び/または肥料前駆物質)が生成阻害を受けるため、好ましくない。さらに、該有害物質が現に、人体への悪影響のみならず、地球環境の汚染や破壊に繋がっていることは周知の事実である。そのため、第1の工程で腐敗菌数を減少させておくことは非常に有益であるといえる。なお、後述の「有機ガス」とは、上記有害な物質のうち、蟻酸等の有機酸、メチルメルカプタン、インドール、トリメチルアミン、メチルメルカプタン、その他、アルデヒド類(アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド等)やフェノール類等を総称する。
本処理方法では、処理過程で有用資源の濫費を極力避けつつ、腐敗過程にある有機物質を微生物による発酵、有気(好気)呼吸または無気(嫌気)呼吸(以下、「発酵等」または「異化作用」ともいう)、あるいは微生物による光合成または化学合成(以下、「同化作用」ともいう)を主体とし、人類に有用な資源であるエタノール、メタンや肥料等などを抽出・生産する。また、かような抽出・生産過程において、有機物質から有用物質を得る際に省エネルギー、省力化や省時間などの低コスト化も実現できる。さらに、最終産物である肥料等の品質を劣化させ得るような物理的処理、化学的処理や生物学的処理を行うことなく、微生物を利用した抽出過程を(所望により循環させて)実行することによって、抽出物質の抽出量を増加させ、かつ、最終産物である肥料等の品質を維持・向上させることができる。このようにして、セルロース、へミセルロースやリグニン等の副産物を肥料前駆物質として、微生物の作用を用いて肥料等などに変換するとともに、該肥料等の性状、含有成分や肥料化の際の微生物叢などの各種条件を適当に調整することにより、市販されている肥料等と同等以上の品質とすることも可能である。
特に、本処理方法は、家畜排泄物、生ゴミや汚泥などの中でも、細菌、真菌や原生生物などの微生物(以下、「細菌等」ともいう)が高度に感染してなる、腐敗が相当程度進行した有機物質に対して格別の効果を発揮する。具体的には、(産業)廃棄物扱いであった腐敗の進行した有機物質を従来のように廃棄することなく、該有機物質を出発物質として有用な物質が得られる。なお、本処理方法は、腐敗化のそれほど進行していない有機物質や、未だ廃棄されていない有機物質に関しても有効な発明となりうる。
上記のような有機物質に存在する腐敗菌の数の減少は、続く第2の工程で有用物質を微生物に生成させる上で、有機物質に損傷を極力与えないという観点から、高温高圧滅菌、間欠滅菌、煮沸、低温殺菌、(超)高温殺菌、電磁波殺菌、槽内の収容物に電圧を印加することによる殺菌、及び高圧殺菌、並びに酸、アルカリ、塩及び酸化剤による処理からなる群より選択される1種以上により行われることが好ましい。高温高圧滅菌、間欠滅菌、煮沸、低温殺菌、(超)高温殺菌、電磁波殺菌、槽内の収容物に電圧を印加することによる殺菌、及び高圧殺菌は、物理的な殺菌(滅菌)法に分類される。一方、酸、アルカリ、塩及び酸化剤による処理は、化学的な殺菌(滅菌)法に分類される。なお、かかる化学的な殺菌(滅菌)法による場合、有機物質に損傷を与えうるリスクを一層低減させる上で、好適には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、リン酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸、リン酸または二酸化炭素を用いる。上記処理手段のうち、より好ましくは電磁波殺菌、槽内の収容物に電圧を印加することによる殺菌、並びに酸、アルカリ、塩及び酸化剤による処理からなる群より選択される1種以上により行われる。このうち、電磁波殺菌に用いる電磁波として、10−17〜105m程度の範囲の波長(真空波長条件下)が含まれ、より具体的にはγ線、X線、紫外線、可視光線や赤外線などが含まれる。また、上記のうち、高温高圧滅菌、間欠滅菌、煮沸、低温殺菌、(超)高温殺菌や高圧殺菌についての具体的な処理条件(温度、圧力、時間など)は、当業者であれば好適な条件を設定可能であるため、ここでは特に限定しない。さらに好ましくは、槽内の収容物に電圧を印加することによる殺菌により行われる。これらを用いた場合、後述する第3の工程において、得られる肥料の品質を向上させうるため好適といえる。上記した各処理手段のうち、特に好ましい手段を以下で詳細に説明する(下記1〜4)。
1.腐敗菌の数を減少させる段階
腐敗菌の数の減少させるための処理段階は、本処理方法における第1の段階に含まれえる。
(1)槽内の収容物に電圧を印加することによる殺菌
表記の殺菌法を利用することによって、非常に効果的に腐敗菌数を減少させることができる。かかる殺菌法は2つに大別されるため、以下、順を追って説明する。
第1に、電圧の印加に伴い、電流が収容物に流れ、電流を腐敗菌に通電させることにより、腐敗菌が感電を起こして菌数を減少させることが可能となる。また、電流が収容物に流れるに従って、付随的に熱エネルギーが発生し、かかる熱エネルギーを利用して、腐敗菌を熱殺菌することもできる。このような電気エネルギーに起因した電気化学的殺菌(滅菌)及び/またはこれに付随して生じる熱エネルギーに起因した熱殺菌(滅菌)によって、収容物中に存在する腐敗菌が殺菌(滅菌)される。
また、電流の通流に伴って放電現象が発生する。なかでも、気体放電が典型的な例である。気体放電を行うための装置については後述するが、一般には、アノードの電極及びカソードの電極のうち一以上を前記収容物中ではなく空中(収容物外)に存在させることとなりうる。気体放電(電子の発生)の種類としては、従来公知のものであれば特に制限されることはないが、例えば、火花放電、アーク放電、コロナ放電(高電圧直流電流を利用)やグロー放電などが挙げられる。また、高電圧直流電流を利用するコロナ放電の他に、高電圧交流電流を利用した放電もありうる。特に、高度に電離した気体(プラズマ)の発生に伴うプラズマの照射が、腐敗菌の効率的な殺菌(滅菌)の観点より好ましい。前記槽については、電圧を印加できる装置であれば、構成・設備などの点で特に制限されることはない。前記収容物は、有機物質を含む限り、固体状、半固体状、液体状のいずれであってもよい。有機物質に存在する腐敗菌を、電圧の印加によって効率的に減少させる観点からいえば、前記収容物は液体状であることが好ましい。また、放電による殺菌(滅菌)処理(以下、単に「放電処理」ともいう)は、大気中で行われても水中で行われてもよい。このうち、放電処理が水中で行われる場合には、水中に存在するイオン量によって条件が異なってくる。放電処理が大気中、水中のいずれであっても好適に実行される観点からいえば、放電処理の処理条件として、印加電圧は1kV〜100億Vであることが好ましく、100kV〜10億Vであることがより好ましく、1万kV〜10億Vであることがより好ましい。また、処理時間は特に制限されることはないが、好ましくは1回の放電当たり10−4秒程度である。このような放電処理を必要に応じて複数回繰り返してもよい。なお、処理温度は特に制限されることはない。
前記槽内の収容物に電圧を印加することによる電気化学的殺菌は、電圧を印加する際に用いられるアノードの電極及びカソードの電極が共に前記収容物外に存在するか、もしくは前記収容物中に存在するか、または電圧を印加する際に用いられるアノードの電極及びカソードの電極のうち一以上が前記収容物中に存在すればよい。かような場合、所望の殺菌を行うことが可能となる。このうち、アノードの電極及びカソードの電極が共に前記収容物外に存在するか、一以上の電極のみが前記収容物中に存在する場合、通電処理(気体放電処理)は「断続的」に行われうる。なお、「アノードの電極及びカソードの電極のうち一以上」とは、アノードの電極及びカソードの電極が、それぞれ1本ずつ存在している形態、いずれか一方が1本存在し、他方が2本以上存在する形態、あるいは、共に2本以上存在する形態における、1本以上の電極を意味する。そして、アノードの電極及び/またはカソードの電極が2本以上存在する場合には、電極ごと(アノード、カソードの別を問わない)に独立して、収容物中に存在していても空中(収容物外)に存在していてもよい。
気体放電処理に関するいくつかの形態のうち、アノードの電極及びカソードの電極のうち一以上の電極を収容物中に存在させる場合であって、特に前記収容物が液体状の場合には、かかる電極が溶液に直接浸されることとなって電極に物質が付着しうる。そこで、好ましくは、一方の電極のみが前記収容物中に存在することによる殺菌を行うとよい。例えば、カソードの電極のみを収容物中に存在させる形態においては、アノードの電極から流れる電流に起因して発生する熱、若しくは電子自体の運動エネルギーによる収容物の攪拌が期待される。すなわち、収容物を攪拌しつつ電流を収容物に通流させることは、腐敗菌の効率的な殺菌(滅菌)に繋がりうる。さらに、アノードの電極のみを収容物中に存在させる形態においては、電流に起因して発生する熱、若しくは電子自体の運動エネルギーによる収容物の攪拌効果に加えて、空中(収容物外)に存在するカソードから放出された電子が、収容物中に存在するアノードへと移動する際、収容物表面(界面)において非常に大きな衝撃波(後述)の発生が期待できる。かような大きな衝撃波の取扱いに対し、安全上適した装置などを使用することによって、腐敗菌を非常に効果的に殺菌(滅菌)させることが可能となりうる。安全面等を重視するならば、アノードの電極のみが、前記収容物中に存在することによる殺菌を行うことがより好ましい。アノードの電極に付着しうるイオンは、水酸基、硫酸イオンや硝酸イオンなどであるため、これらが電極に付着しても導電性に及ぼす影響は、カソードの電極のみの場合と比較して、一般に小さいためである。電圧を印加する際に用いられるアノードの電極及びカソードの電極のうち、アノードの電極のみが前記収容物中に存在し、カソードの電極は大気中(空中)に存在するような殺菌装置について、以下で説明する(図29)。
図29は、電流を用いて腐敗菌数を減少させるために用いられる滅菌ユニットの概略斜視図である。
腐敗菌数を減少させるための滅菌ユニット101(処理ユニット)は、有機物が集積されている集積ユニット102(処理ユニット)から、有機材料が受け渡される。集積ユニット102には、内部の有機材料を排出する材料排出口103と、有機材料を収容するための材料注入口104とが設けられる。材料排出口103は本体105の下方に設けられ、材料注入口104は本体105の上方に設けられる。材料排出口103には開閉弁が設けられ、材料注入口104には蓋部が開閉可能に設けられる。また、集積ユニット102には、脱気するための気体排出口108が設けられる。
滅菌ユニット101には、集積ユニット102の材料排出口103から材料が供給される材料注入口106と、他の装置(処理ユニット)へ収容物を排出するための材料排出口107とを備えている。材料排出口107は本体109の下方に設けられ、材料注入口106は本体109の上方に設けられる。集積ユニット102から滅菌ユニット101へ材料を供給する際には、滅菌ユニット101の材料注入口106を集積ユニット102の材料排出口103と連結し、滅菌ユニット101を下方へ移動させることで、材料を移動させることができる。また、集積ユニット102には、カソード電極110Aおよびアノード電極110Bが設けられる。
滅菌ユニット101は、複数設けられてもよく、集積ユニット102から順次有機材料を受け取り、複数の滅菌ユニット101による処理(および、以降の第1〜第3工程)を、複数の装置によって並行して行うことができる。
滅菌ユニット101の本体109は、安全性の観点より、少なくともその最内層が樹脂やコンクリート等からなる絶縁性材料で構成されていることが好ましい。蓋部3も上記と同様、安全性の観点より、少なくともその最内層が樹脂やコンクリート等からなる絶縁性材料で構成されていることが好ましい。そして、放電環境を作り出すために、コンデンサー111に充電された電荷は、スイッチ112をオンにすることにより電源が入り、カソード110Bより電子がアノード110Aの方向へ向かって放電される。このようにして作り出された放電環境によって、槽1内に投入された有機物質に存在する腐敗菌は菌数を減少する一方、有機物質自体への損傷を抑制できる。なお、安全のため、本体109にアース113を設置する。なお、放電処理を「持続的」に行う場合には、コンデンサー111は特に必要でないため、なくてもよい。
一方、本体109内の収容物に電圧を印加することによる電気化学的殺菌のうち、前記アノードの電極及び前記カソードの電極が共に前記収容物中に存在する場合には、通電処理は「断続的」のみならず「持続的」に行うことも可能となる。
さらに、有機物質が容積の大きな固形物(一般に、高分子有機化合物を主成分とする塊)を含む場合には、処理速度を大きくするために破砕(粉砕)または細断することが好ましいが、かかる装置により前記固形物を破砕できる。具体的には、前記槽内の収容物に電圧を印加することによる電気化学的殺菌において、印加された電圧により発生する衝撃波が前記有機物質に存在する固形物を破砕するため、該有機物質の処理速度を大きくすることができる。これにより、有機物質の均一化処理を腐敗菌数の減少処理と併せて行うことができる。
このような、有機物質中の固形物の破砕による均一化は、上記した有機物質が容積の大きな固形物を含む場合に行うことが好ましい。一方で、前記固形物が大量に含まれる場合であって、かつ、前記固形物が主に低分子物質からなる場合には、原料の均一化をあえて行わなくても、例えば上記(1)の処理により腐敗菌の作用を効果的に抑制することができる。前記均一化の方法は特に制限されることはないが、例えば、ホモジナイザー等が一般に使用可能である。好ましくは、腐敗菌の数の減少と固形物の破砕による均一化とを同時に達成できるという観点より、上記した放電現象に伴って発生する衝撃波を用いる方法である。
第2に、電圧の印加に伴って放出された電子の運動エネルギーを直接的または間接的に用いた殺菌が挙げられる。「直接的」に用いる場合とは、電子自体がその運動エネルギーにより腐敗菌と衝突し、腐敗菌数が減少する場合を意味する。なお、「電子自体」とは、前記放出された電子そのものと、かかる電子が後述するように収容物中のイオンや分子等と衝突することにより該イオンや分子等から2次的(3次的以降も含む)に放出される電子とを両方含む。一方、「間接的」に用いる場合とは、電子がその運動エネルギーにより、イオン(錯イオンや金属イオン等)及び/または分子(水分子等)に衝突し、衝突されたイオン及び/または分子が腐敗菌と衝突する結果、腐敗菌数が減少する場合を意味する。なかでも、水分子など、水素結合や分子間力などによっていわゆる「重合」形態をとるものに対し、放出された電子が衝突した場合、かかる「重合」形態の崩壊とともに、大きな衝撃波が生じうる。上述したように、かような大きな衝撃波を利用することによって、腐敗菌を非常に効果的に殺菌(滅菌)させることが可能となりうる。なお、本「第2の」殺菌は、上記した「第1の」殺菌とともに生じることもありうる。
(2)酸、アルカリまたは塩による処理
酸、アルカリまたは塩の使用による殺菌・静菌処理によっても、腐敗菌の増殖に不適なpHへのシフトを行い、腐敗菌数を減少させることができる。前記腐敗菌が好気性菌を主とする場合には、嫌気性条件下で、腐敗菌の増殖に不適なpHとなるようにpHをシフトさせることが好ましい。この場合には、上記した化学的な殺菌(滅菌)法のうち、酸、アルカリまたは塩による処理が好ましい。具体的には、酸または酸性塩(以下、これらをまとめて単に「酸」ともいう)を用いるか、あるいはアルカリまたはアルカリ性塩(以下、これらをまとめて単に「アルカリ」ともいう)を用いることによる、pHのシフトが挙げられる。使用可能な酸の例としては、以下に限定されることはないが、炭酸、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸、有機酸、亜硫酸や亜硝酸などが挙げられる。使用可能なアルカリの例としては、以下に限定されることはないが、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが挙げられる。使用可能な塩(酸性塩またはアルカリ性塩)の例としては、酸性及びアルカリ性アミノ酸、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カリウムやリン酸カリウムなどが挙げられる。
図30は、嫌気性条件下で、かかるpHへのシフトやこれに伴う腐敗菌のタンパク変性等により腐敗菌の数を減少させるために用いられる装置を示す概略斜視図である。本滅菌ユニット115は、ジュラルミン等製の本体116、蓋部117及びパッキング118を備えている。そして、装置内部を嫌気性条件下にするため、逆流防止弁付きの内部気体置換用の気体注入口119より、逆流防止弁付きの気体脱気口120、逆流防止弁付きの内部気体置換用の気体排出口121を通って、気体を抜くことができる。さらに、逆流防止弁付きの酸・アルカリ注入口(液体注入口)122より、酸またはアルカリを投入し、攪拌装置123で槽内を攪拌することにより、装置内の液を腐敗菌の増殖に不適なpHへとシフトさせることができる。
また、当該滅菌ユニット115には、集積ユニット102の材料排出口103から材料が供給される材料注入口124と、他の装置(処理ユニット)へ収容物を排出するための材料排出口125とを備えている。材料排出口125は本体116の下方に設けられ、材料注入口124は本体116の上方に設けられる。集積ユニット102から当該滅菌ユニット115へ材料を供給する際には、装置の材料注入口124を集積ユニット102の材料排出口103とチューブ等の連結管126により連結し、滅菌ユニット115を下方へ移動させることで、材料を移動させることができる。
上記とは反対に、前記腐敗菌が嫌気性菌を主とする場合には、好気性条件下で、酸又はアルカリを用いて腐敗菌の増殖に不適なpHとなるようにpHをシフトさせることが好ましい。この場合にも、上記した化学的な殺菌(滅菌)法のうち、酸、アルカリまたは塩による処理が好ましい。
なお、腐敗菌の増殖に不適なpHの範囲については、腐敗菌の種類によってその生育可能なpHが異なるため、特に制限されることはなく、腐敗菌ごとに適宜設定すればよい。例えば、動物の排泄物などに多く存在する腐敗菌である大腸菌の場合について説明すると、大腸菌の生育pHは一般に4〜9程度であるため、約4以下または約9以上が大腸菌の増殖に不適なpHの範囲であるといえる。
(3)酸化剤による処理
酸化剤の使用による殺菌・静菌処理によっても、腐敗菌数を減少させることができる。上記した化学的な殺菌(滅菌)法のうち、酸化剤による処理を行う場合、殺菌消毒後の一連の処理過程で無害化するものが使用可能であり、活性酸素及び/またはオゾンを含むことが好ましい。活性酸素の例として、スーパーオキシドアニオンラジカル、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素及び一重項酸素などが挙げられる。これらを単独で、または併用して、前記有機物質に供給することにより腐敗菌数を減少させることができる。本手段は、特に嫌気性菌に対して有効であるが、供給濃度を挙げることや供給時間を延長すること等によって、好気性菌に対しても殺菌・静菌的に作用しうる。そのため、本処理は、嫌気性菌及び好気性菌のいずれにも適用可能である。
さらに、上記した処理手段については、複数種の処理手段を併用して同一容器中で処理してもよいし、または連続的に有機物質を別容器に移動させて処理してもよい。本処理は、図30に示す滅菌ユニット115に、酸化剤を注入する気体注入口を設けることで実施可能である。なお、嫌気性条件とする場合には、密封する必要がないため、蓋部を外してもよい。ここで、過酸化水素水を使用する場合には、装置の本体の内部が溶解することを防止するため、内部の材質に金(Au)など耐酸化性のものを使用する必要がある。
2.有機物質中の低分子物質含量を増加させる段階
また、本工程は、低分子物質含量を増加させる段階をさらに含んでもよい。腐敗が進むと、腐敗菌の作用に起因して前記有機物質中の糖質などの低分子物質の含量が顕著に減少してしまうため、該含量を増加させることが好ましい。かかる段階を実行するため、光合成独立栄養生物もしくは化学合成独立栄養生物、または酵母などの真菌を用いて有機物質中の低分子有機成分の含有率を増大させることが好ましい。より好ましくは、光合成独立栄養生物、化学合成独立栄養生物または酵母である。光合成独立栄養生物の例として、光合成細菌及び光合成能を有する真核生物が挙げられ、化学合成独立栄養生物の例として、化学合成細菌が挙げられる。なお、光合成独立栄養生物もしくは化学合成独立栄養生物、または真菌については、好気性菌及び嫌気性菌のいずれであってもよく、具体的な菌(種、属など)については後述する。前記化学合成独立栄養生物としては、無機化合物(硫化水素、アンモニアなど)を酸化してエネルギーを得る、公知の真菌または細菌(独立栄養細菌)が挙げられる。なかでも、光合成細菌、化学合成細菌、光合成能を有する真核生物、及び窒素固定細菌のうちのいずれか1種を含むことが好ましい。
図31は、光合成細菌を用いて低分子物質含量を増加させる低分子化ユニットを示す斜視図である。低分子化ユニット130(処理ユニット)は、例えばガラス等の非遮光性材料からなる本体131と、蓋部132を有している。なお、蓋部132は、嫌気性菌を用いる際に密閉するために使用するが、好気性菌を用いるのであれば、蓋部132を開放するか、または設けなくてもよい。低分子化ユニット130には、気体注入口133が設けられて、必要な気体(例えば、空気、酸素、窒素または二酸化炭素等)を吸気可能である。
また、低分子化ユニット130には、前述の滅菌ユニット115(101)の材料排出口125(107)から材料が供給される材料注入口134と、他の装置(処理ユニット)へ収容物を排出するための材料排出口135と、脱気するための気体排出口136を備えている。材料排出口135は本体131の下方に設けられ、材料注入口134は本体131の上方に設けられる。滅菌ユニット115から低分子化ユニット130へ材料を供給する際には、低分子化ユニット130の材料注入口134をチューブ等の連結管137により滅菌ユニット115の材料排出口125と連結し、滅菌ユニット115を上方を移動させるか、または低分子化ユニット130を下方へ移動させることで、材料を移動させることができる。
3.アンモニウムイオンの有機物質中への固定化段階、及び腐敗菌の不活性化段階
また、本工程は、微生物学的方法及び/または化学的方法を用いてアンモニウムイオンを前記高分子有機化合物中に固定させることをさらに含んでもよい。場合によっては、前記アンモニウムイオンを固定しpHを調節した後、麹菌及び/または麹菌由来の酵素を用いて前記高分子有機化合物を分解することをさらに含んでもよい。また、有機物質が腐敗菌の作用によって相当汚染されているような場合であっても、上記微生物学的方法及び/または化学的方法を用いることにより、更なる腐敗を防止した上で、エタノール生成(及びメタン生成)に必要となる水素、酸素及び炭素が大気中へ放出することを防ぐこと、並びに、反応に必要な自由エネルギーを反応系中に保存することができる。なお、上記の「更なる腐敗を防止」とは、アンモニアや有機ガス等の更なる発生を防止することと換言することもできる。このようにして、本工程は、第2の工程に必要な物質(元素やイオン等)の生成、並びに自由エネルギーの確保及び第2工程に必要な環境条件を整えることを達成できる。
一般に、有機物質は微生物の作用によって汚染されていることが多いため、腐敗によりアンモニアガスや有機ガス等が発生し易い環境にある。本段階は、アンモニウムイオンを有機物質中に固定すると共に、腐敗菌を不活性化させることによって腐敗菌による有機ガスの発生を防止することを可能とする。なお、以下の(1)化学的方法及び(2)微生物学的方法は、いずれか一方のみを用いた処理を施してもよいし、両方を用いた処理を施してもよい。
(1)化学的方法
酸性やアルカリ性の溶液などを用いてアンモニウムイオンを上記の高分子有機化合物中に固定できる。ここで、使用に好適な酸性またはアルカリ性の溶液としては、有機物質(特に、後述の第3の工程を経て得られる肥料等)の品質に影響を極力与えないものが挙げられる。前記肥料等への品質の影響の観点からいえば、酸性溶液を用いることがより好ましい。しかし、アルカリ性溶液であっても、アンモニアよりも強アルカリな成分と酸成分とからなる塩の溶液であれば、有機物質中でアンモニアをイオンの形で確保・保持が可能なため、使用に好適となりうる。
前記有機物質中での「アンモニア」は、アンモニア、アンモニウムイオンまたは錯イオン、あるいはこれらの塩または化合物の形態で存在している。これらの「アンモニア」に対して、二酸化炭素、酸もしくは酸性塩、アルカリ性もしくはアルカリ性塩、またはそれらのイオン化合物を前記有機物質に投入することによって、「アンモニア」の気化・蒸発を防止することができる。このような観点より、アンモニウム塩とアンモニウムイオンとの間で化学平衡状態を作り出すことのできる化合物またはそのイオン化合物を使用することが好ましい。具体的には、炭酸、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸、有機酸、亜硫酸、亜硝酸、酸性及びアルカリ性アミノ酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カリウムまたはリン酸カリウムなどが挙げられる。なかでも、上記した、有機物質中でアンモニアをイオンとして確保・維持が可能であるという観点より、炭酸、リン酸、リン酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたは炭酸水素カルシウムが好ましい。さらに、これらの好ましい物質(成分)を用いた場合、本処理方法における出発物質である有機物質に対して炭素やリン酸を補給できる点で、有利となりうる。なかでもより好ましくは、炭酸カルシウムまたは炭酸水素カルシウムを用いることである。これらのより好ましい物質(成分)を用いた場合、現在、有効な廃棄処理の術がなく、廃棄され続けているホタテの貝殻などを出発物質としても、有用物質を得ることができる点で画期的である。
酸性塩化合物またはそのイオンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。炭酸水素カルシウムなどの固体状成分を用いた場合の固定化ユニット(処理ユニット)の例を図32に示し、塩酸などの液体状成分を用いた場合の固定化ユニット(処理ユニット)の例を図33に示す。また、投入後の有機物質(前処理後の有機物質)は複雑な緩衝溶液系に含まれることとなる。前記緩衝溶液系を概説すると、内部に存在する陽イオン及び/または陰イオンが主体となり、さらにそれらがイオン結合した塩もしくは錯イオン、または、錯イオンとイオンもしくは錯イオンとが結合した塩よりなる。
前記陽イオンとして、以下に限定されることはないが、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、水素イオンもしくはカルシウムイオン等が挙げられる。一方、前記陰イオンとして、以下に限定されることはないが、例えば塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオンもしくは炭酸イオン等が挙げられる。
以下、図32に示された一例としての固定化ユニットについて説明する。図32に示された一例としての固定化ユニット140は、上方が解放された本体141、攪拌装置142、材料注入口143、材料排出口144を備える。材料排出口144は本体141の下方に設けられ、材料注入口143は本体141の上方に設けられる。材料注入口143および材料排出口144には、開閉バルブ(シャッター)が設けられうる。材料注入口143は、前工程で用いられた低分子化ユニット130の材料排出口135と、チューブ等の連結管145により連結可能であり、低分子化ユニット130を上昇もしくは固定化ユニット140を下降させることで、低分子化ユニット130から収容物(有機物質等)が固定化ユニット140へ移動する。更に、本体141の上端開口部から炭酸水素カルシウム等の固体状成分及び水などを投入し、有機物質及び固体状成分の混合溶液とする。混合溶液の調製手段としては、特に制限されることはないが、酸溶液の生成過程で発熱しうるため、0℃を超えて14℃程度まで(好ましくは0℃を超えて10℃程度まで)の水などをあらかじめ投入しておき、攪拌装置22で攪拌しながら固体状成分を少しずつ投入することが好ましい。また、温度を確認しながら、固体状成分と水とを同時に投入することも好ましい。固体状成分の配合率(添加割合)は、腐敗を効果的に防止する観点より、混合溶液の全質量に対して、20〜30質量%であることが好ましい。また、水分含有率は、特に限定されることはないが、混合溶液の全質量に対して、50〜80質量%であることが好ましく、55〜65質量%であることがより好ましい。
また、塩酸などの液体状成分を固定化成分として用いる場合には、図33に示されるように、固定化ユニット146は、ジュラルミン等製の本体147、有機物質を投入する材料注入口148、脱気弁(気体排出口)149、酸溶液が通過する液体注入口150、及び材料排出口151を備える。材料排出口151は本体147の下方に設けられ、材料注入口148は本体147の上方に設けられる。材料注入口148および材料排出口147には、開閉バルブ(シャッター)が設けられうる。材料注入口148は、前工程で用いられた低分子化ユニット130の材料排出口135と、チューブ等の連結管152により連結可能であり、低分子化ユニット130を上昇もしくは固定化ユニット146を下降させることで、低分子化ユニット130から収容物(有機物質等)が固定化ユニット146へ移動する。更に、液体注入口150から酸溶液が投入されると、有機物質と酸溶液からなる混合溶液を静置させることにより、アンモニウムイオンが有機物質中に固定される。その際に発生するガス、及び不要な残渣についてはそれぞれ、脱気弁149、及び材料排出口151を通じて排出され、次段階(過程)へ移送される。そのため、アンモニア固定を効率良く行わせることができるとともに、残渣(残余物質)が効果的に排除して、有機物質及び新鮮な酸溶液を逐次的に供給できるという利点がある。前記酸溶液中の液体状成分の配合率は、特に限定されない。
また、二酸化炭素などの気体状成分を固定化成分として用いる場合には、図33の固定化ユニット146に、二酸化炭素などの気体状成分を注入するための逆流防止弁付きの気体注入口153を設ける。気体注入口153から二酸化炭素等が投入されると、投入された有機物質及び二酸化炭素酸溶液からなる混合溶液により、炭酸イオンが有機物質中に固定される。その際、二酸化炭素を逐次的に混合溶液へ供給することにより、1種の攪拌効果が生じうる。また、不要となった残渣(残余物質)については、材料排出口151を通じて排出され、次段階(過程)へ移送される。そのため、炭素固定を効率良く行わせることができるとともに、残渣が効果的に排除して、有機物質及び新鮮な酸溶液を逐次的に供給できるという利点がある。前記気体状成分の配合率は、特に限定されない。
(2)微生物学的方法
微生物等を用いてアンモニウムイオンを前記高分子有機化合物中に固定することができる。前記微生物は、窒素同化作用を有する光合成細菌、光合成真核生物(微生物以外も含む)、または酵母などの真菌であることが好ましい。なかでも、アンモニア及び尿酸を同化可能な菌株であることがより好ましい。このような光合成細菌としては、特に限定されることはないが、例えば、藍色細菌等及びプロテオバクテリア門好気性光合成細菌等の酸素発生型光合成細菌;紅色光合成細菌、紅色硫黄細菌、緑色硫黄細菌、糸状光合成細菌(緑色非硫黄細菌)及びヘリオバクテリア等の非酸素発生型光合成細菌;に大別して挙げられる。また、このような光合成真核生物とは藻類などが挙げられる。その際、有機物質における水分含有率などの条件に応じて、1種単独の上記微生物を用いてもよいし、または2種以上の上記微生物を併用してもよい。上記した菌の培養条件については、藍色細菌など好気性細菌の場合には好気性条件、及びその他の嫌気性細菌の場合には嫌気性条件とする必要がある。具体的な好気性条件または嫌気性条件、すなわち温度やpHなどについては、使用する菌の種類によって様々であると共に、当業者であれば適宜、適切な条件の設定が可能であるため、ここでは特に制限されることはない。以下、上記の大別した微生物群ごとに詳細に説明する。
まず、酸素発生型光合成細菌を用いる場合について説明する。酸素を含む気体を、出発物質たる有機物質を内容物とする非遮光培養槽に還流しつつ、酸素発生型光合成細菌を増殖させる。これにより、他の腐敗菌の増殖を抑制しつつ、アンモニアを酸素発生型光合成細菌が資化に利用しアンモニアの発生を防ぐことができる。ここで、高酸素濃度に耐性のある酸素発生型光合成細菌を使用すれば、より容易に優占種を得ることができる。なお、腸内細菌は、その大部分が偏性嫌気性菌であるため、酸素を含む気体の供給は、特に腐敗菌の繁殖を抑制する上で有効となりうる。
次に、非酸素発生型光合成細菌を用いる場合について説明する。無酸素下の密閉型非遮光培養槽内に投入した出発物質たる有機物質に、非酸素発生型光合成細菌を接種し培養する。アンモニアを非酸素発生型光合成細菌が資化に利用することにより、アンモニアの発生を防ぐことができる。特に、紅色硫黄細菌などは、電子供与体に硫化水素を用いるため、後述する硫化水素の発生を抑制する意味でも非常に効果的である。さらに、生成された硫黄が、硫黄酸化細菌などの作用によって硫酸イオン等に変化し、メタン生成菌によるメタンの生成や、良質な肥料等の製造に寄与しうるため、好ましい。
光合成細菌に光合成を好適に行わせるため、非遮光容器または建造物中に有機物質を収納し、前記光合成細菌を前記有機物質中に投入してもよい。藍色細菌など好気性の光合成細菌を用いる場合には、有機物質中に必要量の酸素(空気を含む酸素含有気体または純酸素)が供給可能となるように非遮光容器または建造物を利用し、必要により攪拌装置を併設してもよい。このような装置の例を図34に示す。
図34は、好気性の光合成細菌を用いてアンモニア固定を行わせる固定化ユニットを示す概略斜視図である。当該固定化ユニット160(処理ユニット)は、好気性の光合成細菌を用いて非遮光下で空気などを供給しつつ、有機物質中に酸素を供給し、アンモニア固定を行わせることができる構成となっている。固定化ユニット160は、ガラス等製で上方が解放された本体161、逆流防止弁付きの気体注入口162、本体161の上方に設けられる材料注入口163および本体161の下方に設けられる材料排出口164を備える。装置の壁面を透明としたのは、好気性の光合成細菌などが効率良く光合成を行うことができるようにするためである。材料排出口164は本体161の下方に設けられ、材料注入口163は本体161の上方に設けられる。材料注入口163および材料排出口164には、開閉バルブ(シャッター)が設けられうる。材料注入口163は、低分子化ユニット130の材料排出口135にチューブ等の連結管165により連結可能であり、低分子化ユニット130から固定化ユニット160へ材料を供給する際には、低分子化ユニット130の材料排出口135と固定化ユニット160の材料注入口163を連結し、低分子化ユニット130を上方を移動させるか、または固定化ユニット160を下方へ移動させることで、材料を移動させることができる。更に、本体161上部の開口部から好気性の光合成細菌、及び必要な栄養培地などを投入することができる。これらが投入されてなる培養液へ、コンプレッサー等により、気体注入口162を通じて空気を供給することができ、好気性条件を所定の範囲内で調整しながらアンモニア固定を行わせることができる。また、このように空気を液中に供給することにより、装置中の培養液が攪拌されるという利点も有する。
一方、藍色細菌以外の光合成細菌を主に用いる場合には、これらの菌は一般に嫌気性であることが多いため、内部に有機物質を収納可能な非遮光容器または建造物を利用し、必要により攪拌装置を併設してもよい。図35は、嫌気性の光合成細菌を用いてアンモニア固定を行わせる固定化ユニットを示す斜視図である。
図35に示された一例としての固定化ユニット(処理ユニット)は、嫌気性の光合成細菌を用いて非遮光下でアンモニウムイオンを有機物質中に固定させることができる構成となっている。当該固定化ユニット166は、ガラス等製の本体167、本体167の開口部を覆う蓋部168、本体167の上方に設けられる材料注入口169および本体167の下方に設けられる材料排出口170、攪拌装置171、微生物注入口172、気体排出口173および液体注入口174を備える。装置の壁面を透明としたのは、光合成細菌などが効率良く光合成を行うことができるようにするためである。材料排出口170は本体167の下方に設けられ、材料注入口169は本体167の上方に設けられる。材料注入口169および材料排出口170には、開閉バルブ(シャッター)が設けられうる。材料注入口169は、低分子化ユニット130の材料排出口135にチューブ等の連結管175により連結可能であり、低分子化ユニット130から固定化ユニット166へ材料を供給する際には、低分子化ユニット130の材料排出口135と固定化ユニット166の材料注入口169を連結し、低分子化ユニット130を上方を移動させるか、または固定化ユニット166を下方へ移動させることで、材料を移動させることができる。更に、微生物注入口172から微生物(嫌気性細菌)、及び液体注入口174から必要な栄養培地などを投入することができる。これらが投入されてなる培養液を攪拌装置171で攪拌しつつ、アンモニア固定を行わせるが、その際に発生するガスは気体、及び微生物に利用(資化)されない残渣(残余物質)についてはそれぞれ、逆流防止弁付きの気体排出口173、及び材料排出口170を通じて排出され、次段階(過程)へ移送される。そのため、アンモニア固定を効率良く行わせることができるとともに、残渣が効果的に排除して、有機物質、微生物(嫌気性細菌)、及び必要な栄養培地を逐次的に供給できるという利点がある。このようにして、好気性条件を所定の範囲内で調整しながらアンモニア固定を行わせることができる。なお、攪拌速度については、装置の容量などによって異なり、当業者であれば適宜調節することができるため、ここでは特に制限されることはない。
さらに、アンモニア固定(アンモニウムイオンの有機物質中への固定)後、腐敗菌の不活性化、及び後述の「2.」を実行する前に、あらかじめ酸溶液または酸性塩溶液を投入しておき、有機物質(前処理後の有機物質)を弱酸性に調整しておくことが好ましい。前記酸溶液または酸性塩溶液に用いられる酸または酸性塩の具体例については、前述の「(1)」で挙げるものと同様である。
次に、真菌である酵母を用いる場合について説明する。上記した光合成細菌の代わりに、例えば、特開2002−335952号公報に開示されている酵母が参照により本願に引用されうる。すなわち、かような酵母を使用することによっても、酵母のアンモニア資化によってアンモニアガスの発生を防止できる。また、一般に、光合成細菌は、酸性環境を好む菌が多いため、酸溶液を投入するか、または水中で酸性塩を投入し、前処理後の有機物質を弱酸性に保った後、光合成細菌を投入することもできる。ただし、例えば、特開2005−168508号公報に開示されているような、アルカリ性下で機能を発揮する光合成細菌を使用することもありうる。かかる場合に、原料として投入する細菌を弱酸性下に晒すことは不利となりうるので、あらかじめアルカリ性溶液またはアルカリ性塩溶液を投入しておき、有機物質(前処理後の有機物質)を弱アルカリ性に調整しておくとよい。
一方、これまで説明してきたアンモニア固定とは反対に、アンモニアを分解する方が好ましい場合もありうる。例えば、大量のアンモニアが有機物質中に存在し、または腐敗菌の作用により発生する場合には、このような有機物質を酸化することによってアンモニア量を減少させてもよい。アンモニアの酸化に関しては、微生物的方法と化学的方法とがある。しかし、本発明に係る有機物質の処理方法においては、最終的な産物の一つ(残余物質)にセルロース等の肥料前駆物質があり、これを肥料等に転化させることもありうる。そのため、かかる場合には特に、微生物学的方法を採用することがより好ましい。具体的には、アンモニア酸化菌(例えば、Nitrosomonas europaea等のNitrosomonas属、Nitorosococcus属、Nitrosospira属、Nitrosolobus属、Nitrosovibrio属)による有機物質中のアンモニアの酸化が挙げられる。また、亜硝酸酸化細菌(例えば、Nitrobacter属、Nitrospira属)を用いて有機物質を硝化させ、該硝化された物質に対して、硝酸還元菌(なかでも特に脱窒菌;例えば、Paracoccus denitrificans、Paracoccus denitrificansもしくはThiobacillus denitrificans)の作用により、最終産物を窒素として、外界に放出することが可能である。また、窒素代謝能(脱窒能など)を有する真菌を、有機物質の酸化還元経路の一部または全部で使用(細菌及び/もしくは古細菌との併用も含む)することも可能である。上記した微生物を使用した場合、アンモニア中の窒素は最終的に窒素ガス(N2)となり、大気中へと放出可能となる。
なお、化学的方法としては、例えば工業上一般に用いられているオストワルト法によるアンモニアからの硝酸化が挙げられ、得られた硝酸は工業上使用可能である。
4.硫化水素、アンモニア及び/または有機ガスを除去する段階
本工程は、前記腐敗菌に起因して発生する有害な硫化水素、アンモニア及び/または有機ガスを除去することをさらに含んでもよい。
まず、表記の段階のうち、硫化水素を除去する方法としては、(1)アルカリの供給による除去、(2)化学合成細菌(特に硫黄酸化細菌)による酸化、及び(3)非酸素発生型光合成細菌による酸化に大別することができる。但し、本発明においてエタノールよりもメタンの生成を主とする場合、後述するように、発生した硫化水素を別途回収することもありうる。以下、上記大別した各方法について詳細に説明する。
(1)アルカリの供給による除去
硫化水素は酸性のため、アルカリを投入して中和することが処理方法として好ましい。使用可能なアルカリとしては特に制限されることはないが、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、リン酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたは炭酸水素カルシウム等が挙げられる。このうち、水酸化カリウム、リン酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたは炭酸水素カルシウムが好ましい。上記物質(成分)は、良質の肥料等を生産する上で、有益な成分となりうるためである。また、アンモニアの発生を防ぐ観点より、リン酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたは炭酸水素カルシウムを使用することがより好ましい。さらに好ましくは炭酸カルシウムまたは炭酸水素カルシウムであり、これらを用いることにより、有効な処理ができずに大量に廃棄され続けているホタテの貝殻等からも、有用物質を工業上獲得することができる。
(2)化学合成細菌(特に硫黄酸化細菌)による酸化
硫黄酸化細菌は、好気性条件下で硫化水素を硫黄や硫酸などの硫化化合物へ酸化するため、原料である有機物質から硫化水素を容易に除去可能である。さらに、一般に硫黄酸化細菌は硫黄を硫酸イオンにまで酸化可能であるため、良質な肥料等の生産に寄与しうる。
(3)非酸素発生型光合成細菌による酸化
紅色光合成細菌、紅色硫黄細菌、緑色硫黄細菌、糸状光合成細菌(緑色非硫黄細菌)またはヘリオバクテリア等の非酸素発生型光合成細菌は、嫌気性条件下で、上述したように硫化水素を酸化させるため、原料である有機物質から硫化水素を容易に除去可能である。
一方、表記の処理方法のうち、有機ガスの更なる発生を防止する方法、さらには有機ガスを除去する方法を用いることが好ましい場合がある。すなわち、腐敗により発生する有機ガスには有毒なものが多く、結果的に、本発明により得られるはずの有用物質(エタノール、メタン及び/または肥料等)の生成が阻害される可能性がある。したがって、原料である有機物質に存在し、腐敗菌に起因して発生する硫化水素、アンモニア及び/または有機ガスを発生防止ないし除去する必要がある。具体的な方法としては、上述したように、腐敗菌の数の減少及び/または化学合成細菌による酸化といった有機ガスの更なる発生を防止する方法、並びに非酸素発生型光合成細菌による有機ガスの酸化といった有機ガスを除去する方法が挙げられる。具体的に使用可能な菌については上述の通りであるため、ここでは説明を省略する。
家畜排泄物や生ゴミ等、大量の細菌等が感染し、腐敗化しつつある(産業)廃棄物である有機物質の腐敗を停止し、後述する有用物質を得るための発酵段階へと有効に移行させるためには、上記した段階の全部または一部が必要となりうる。家畜排泄物や生ゴミ等、様々な有機物質を出発物質(原料)とする場合に、具体的にどの段階が必要となるかについては、主に、原料の形状、原料中の水分含有率及び原料に存在する感染微生物(例えば腐敗菌などの感染細菌)の種類などによって決せられうる。例えば、有機物質からのアンモニアの発生が認められない場合、アンモニア固定は不要な可能性が高い。また、有機物質からの硫化水素の発生が認められない場合、硫化水素の発生を防止するための段階は不要な可能性が高いといえる。
上記した段階の組み合わせとして最も有効かつ好ましい処理方法は、放電現象を用いた有機物質の均一化及び腐敗菌の減少、続いて炭酸水素カルシウムの供給によるアンモニア及び硫化水素の発生の抑制、続いて酸素発生型光合成細菌による有機物質の低分子物質含量の増大及び嫌気性菌数の減少、並びに/または非酸素発生型光合成細菌による有機物質の低分子物質含量の増大及び好気性菌数の減少という各段階を組み合わせた方法である。
5.麹菌及び/または麹菌由来の酵素を用いて、前記高分子有機化合物を分解する段階
本工程は、麹菌及び/または麹菌由来の酵素を用いて前記高分子有機化合物を分解することをさらに含んでもよい。本段階は、前記高分子有機化合物を、第2の工程における微生物が栄養分として資化可能な低分子有機化合物(単糖、二糖など)まで分解しうるため、第1の工程(本工程)の最終段階として実行することが好ましい。
本明細書における「麹菌」とは、アスペルギウス属、モナスカス属(紅麹菌など)、リゾープス属(テンペ等)及びノイロスポア属(オンジョム等)、並びに麦芽(Mucorales)を意味する。上述の処理方法(好ましくは、上記1〜4の段階の全部または一部(ただし、上記1の段階は必須に含まれる))による処理後の有機物質に麹菌を直接加えてもよい。または、麹菌を繁殖させた、主に有機物からなる物質を上述の処理方法(好ましくは、上記1〜4の全部または一部(ただし、上記1の段階は必須に含まれる))による処理後の有機物質に加えてもよい。後者の場合、麹菌は生存していても生存していなくてもよい。さらに、麹菌自体ではなく、麹菌より抽出した麹菌由来の酵素を使用してもよい。
場合によっては、麹菌に必要な環境を整えてもよい。特に、腐敗の進行している有機物質に対して上述の処理(好ましくは、上記1〜4の段階の全部または一部(ただし、上記1の段階は必須に含まれる))を施し、得られた産物を、後述する第2の工程における発酵段階に移行させた(場合によっては、戻した)場合、該有機物質中の水分含有量は一般に多いことが想定される。ここで、細菌(腐敗菌)は一般に、水分の比較的高い環境で繁殖しやすいという性質を有している。ところが、麹菌等の保有する酵素は、菌自体が死滅してもなお、活性を有するため、原料(出発物質)である有機物質の一部にあらかじめ麹菌等を繁殖させておき、これを前記原料系に加えるか、または麹菌等より抽出した酵素を使用することがより好ましい。なかでも最も好ましくは、原料(出発物質)である有機物質の一部にあらかじめ麹菌等を繁殖させておき、これを、前記有機物質を含む原料系に加える。この場合、上記した理由より、麹菌等の一部が死滅していても問題ない。
また、その際に、水分含有量の調節を目的として、上述の処理(好ましくは、上記1〜4の段階の全部または一部(ただし、上記1の段階は必須に含まれる))後の有機物質に水分含有率の低い有機物質、例えばバーク材や落葉などを任意に加えてもよい。このように、麹菌を用いて、セルロース、へミセルロース、リグニン、デンプン及びタンパク質などの高分子有機化合物を低分子の糖類などに分解させた後、後述の第2工程に進むことができる。
このように、麹菌等によりセルロース、へミセルロース、リグニン、デンプンやタンパク質などの高分子成分を低分子糖などに分解させてから、後述する第2の工程に進むことが好ましい。なお、原料系に含まれる有機物質中の高分子成分量が比較的少なく、麹菌等による作用に十分な効果が期待できないと推測される場合には、本段階を省略してもよい。かかる場合、上述の処理(好ましくは、上記1〜4の段階の全部または一部(ただし、上記1の段階は必須に含まれる))より、直接、第2の工程へ移行してもよい。
図36は、麹菌及び/または麹菌由来の酵素を用いた、上記高分子有機化合物の分解を行うための一の例示的な高分子分解ユニットを示す概略斜視図である。高分子分解ユニット180は、ジュラルミン等製の本体181、好気性菌である麹菌のための空気孔(気体注入口)182、攪拌装置183、微生物注入口184及び台185を備える。
また、本体181の上方には材料注入口186が設けられ、本体181の下方には材料排出口187が設けられる。材料注入口186は、固定化ユニット166(140,146,160)の材料排出口164にチューブ等の連結管176により連結可能であり、固定化ユニット166から高分子分解ユニット180へ材料を供給する際には、固定化ユニット166の材料排出口164と高分子分解ユニット180の材料注入口186を連結し、固定化ユニット166を上方を移動させるか、または高分子分解ユニット180を下方へ移動させることで、材料を移動させることができる。更に、微生物注入口184から麹菌及び/または麹菌由来の酵素を投入することができ、本体181は、酒母などの麹菌が培養された物質を含む。前記麹菌が培養された物質は、材料排出口187を通して培養槽本体187へと投入される。そして、培養槽本体187中で原料たる有機物質が麹菌及び/または麹菌由来の酵素によって分解を受ける。なお、空気孔188には必要に応じて除菌フィルターを設けてもよく、培養槽本体187の材質は特に制限されないが、例えばコンクリート等が挙げられ、台185の材質についても特に制限されることはないが、例えば鉄骨等が挙げられる。培養槽本体187の下方には、開閉バルブ付きの材料排出口189が備え付けられている。材料排出口189を通して、麹菌及び/または麹菌由来の酵素による処理を受けた有機物質が排出されて次工程へと移送される。
[第2の工程]
第2の工程は、好気性条件もしくは嫌気性条件下で、アルコール生成能を有する真菌、ザイモモナス菌及びへテロ型乳酸菌からなる群より選択される1種以上を用いてエタノール発酵を行うことにより、有機物質からエタノールを抽出し、肥料前駆物質を得る段階(a)、並びに、嫌気性微生物を用いたメタン発酵を行うことにより、有機物質からメタンを抽出し、肥料前駆物質を得る段階(d)からなる群より選択される1種以上の段階を有することが好ましい。段階(a)及び段階(d)のいずれか一方を有する第2の工程であれば、出発物質としての有機物質から有用物質であるエタノール及び/またはメタンが得られるため好適である。
また、第2の工程において、段階(a)及び段階(d)が1回以上反復して行われることがより好ましい。かかる場合、効率的にエタノール及びメタンを得られるため好適である。段階(a)及び段階(d)の反復系の詳細については後述する。
また、第2の工程において、段階(a)及び段階(d)が同一槽内で同時に行われることも好ましい。段階(a)及び段階(d)で用いられる微生物の最適条件(pHや温度など)がほぼ一致するような微生物をそれぞれ用いることにより、上記2種類の段階を同一槽内で同時に行うことも可能となる。かような場合、省エネルギー、省力化、コスト削減などの観点より非常に好ましいといえる。なお、かかる場合、段階(a)の反応及び段階(d)の反応がそれぞれ単独に繰り返し行われるだけでなく、段階(a)と段階(d)とが反復して行われることもありうる。
上記段階(a)及び/または段階(d)に加えて、さらに、前記第2の工程は、好気性条件もしくは嫌気性条件下で、前記肥料前駆物質を微生物に分解させることにより、有機物質を得るとともに、場合によりエタノール及び/またはメタンを抽出しうる段階(b)、及び、微生物の同化作用によって無機物質から有機物質を得るとともに、場合によりエタノール及び/またはメタン抽出しうる段階(c)からなる群より選択される1種以上の段階を有することがより好ましい。なお、後述のように、「場合により」とは、各段階において、その直前の段階から、エタノール抽出可能な原料(栄養成分及び微生物)、並びに/またはメタン抽出可能な原料(栄養成分及び微生物)がそのまま移行してきた場合を意味する。その際、微生物は、生きた微生物のみならず、死滅した微生物であっても、該微生物由来の酵素活性があれば、結果としてエタノール及び/またはメタンが抽出可能となりうる。
また、第2の工程において、段階(a)、段階(b)、段階(c)及び段階(d)のうち、任意の2種以上の段階が1回以上反復して行われることがより好ましい。かかる場合、効率的にエタノール及び/またはメタンを得られるため好適である。
また、第2の工程において、段階(a)、段階(b)、段階(c)及び段階(d)のうち、任意の2種以上の段階が同一槽内で同時に行われることも好ましい。前記2種以上の段階で用いられる微生物の最適条件(pHや温度など)がほぼ一致するような微生物をそれぞれ用いることにより、上記した複数の段階を同一槽内で同時に行うことも可能となる。かような場合、省エネルギー、省力化、コスト削減などの観点より非常に好ましいといえる。なお、かかる場合、各段階の反応がそれぞれ単独に繰り返し行われるだけでなく、任意の2種以上の段階(2種、3種及び/または4種)が反復して行われることもありうる。
上述のように、一般に、(産業)廃棄物とせざるをえないような排泄物等の有機物質には腐敗菌が大量に存在し、その数は経時的に増殖し続ける。これにより、経時的な腐敗が進行していき、有害な成分が大量に産生される。該有害な成分が、本第2の工程の各段階((a)〜(d))における微生物に起因する反応を阻害しうる。特に、段階(d)で働くメタン生成菌は、一般に腐敗菌のうちの鉄細菌や硫酸還元菌と増殖に関して拮抗するため、特に硫酸の存在がメタン生成菌の増殖の妨げ(段階(d)におけるメタン発酵の阻害)となりうる。そのため、第1の工程で腐敗菌数を減少させておくことは非常に有益であるといえる。
そして、上記第1の工程を通じて、発酵(エタノール発酵及び/またはメタン発酵)用の原料として好適な状態となるように処理された有機物質を、第2の工程を通じて、エタノール、メタン及び/または後述の第3の工程で生成されうる肥料等の前駆物質といった有用物質が生成されうる。本発明の理解の一助として、かつ、特に好ましい代表的な実施態様として、エタノール発酵とメタン発酵とを共に行う第2の工程について、以下説明する。
有機物質の構成成分であるタンパク質、炭水化物(多糖類)及び脂質は、加水分解能を有する菌(腐敗菌)の異化作用によって、それぞれ低分子糖(単糖など)、グリセリン及び脂肪酸、並びにアミノ酸などに変換される。さらに、これらの物質は、酸生成能を有する菌(腐敗菌)の異化作用によって、上述のように、エタノール等のアルコール類、アンモニア、有機酸(蟻酸、酢酸等)、メチルメルカプタンメチルメルカプタン、硫化水素、インドール、トリメチルアミン、メチルメルカプタン、アルデヒド類(アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド等)やフェノール類等に変換される。このうち、有害な物質については、上記した第1の工程により効果的に除去される。エタノールは、エタノール発酵(主に好気性発酵)によって、前記低分子糖を出発物質として、数段階の化学反応を経て二酸化炭素と共に生成される。
一方、メタンは、メタン生成菌によるメタン発酵(嫌気性発酵)によって、上記の有機酸(蟻酸、酢酸等)、アルコール類及びアルデヒド類を経て、二酸化炭素及び水素より生成される。メタン発酵は、嫌気性条件下での有機物分解における最終段階の反応系といえる。したがって、エタノールの抽出・生成から肥料等の生成までを主経路とし、メタンの抽出・生成をその副経路とするような系を構築することにより、エタノール、メタン及び肥料等の有用物質を極めて効率的に生産できる。なお、メタン発酵は、エタノール発酵を行うことなく行うこともできる。
このようなエタノール生成とメタン生成との関係について、より具体的に説明する。上述のような主経路及び副経路を有する有機物質の処理システムを構築する上で、メタン生成がエタノール生成経路の途中より分岐し、エタノール生成の過程上の副産物として得られることは、本発明に係る処理方法の好ましい一実施形態である。一方で、原料である有機物質の組成によっては、エタノール発酵とメタン発酵とが共に反応系の主体となることが好ましい場合もある。かかる場合には、エタノール発酵とメタン発酵とを1つの処理過程(反応系)中に設けることが好ましい。図37は、後者の場合の一例を示している。さらに、メタン生成を主体とし(メタン生成が主経路に含まれる)、エタノール生成を副産物として生成することも可能である。また、エタノールを生成することなく(エタノール発酵を行うことなく)メタンのみを生成し、残余物質(主に高分子有機化合物)を肥料前駆物質として肥料等に変換することも可能である。一方、メタンを生成することなく(メタン発酵を行うことなく)エタノールのみを生成することも可能である。上記したいずれの系を採ることが好適であるかは、主に有機物質の組成、イオンの組成、水素の存在、温度、圧力、pHやコスト等に依存するといえる。
本発明者らは、家畜の排泄物などのような、特に腐敗が進行し、従来、廃棄せざるを得なかったような有機物質から、人体ないし地球環境にとって有害な物質(固体、液体、気体のいずれも含む)をほとんど外界に廃棄・放出することなく、有用物質のみを得るための方法として、上述の第1の工程に、下記で説明する第2の工程(好気性発酵及び嫌気性発酵の併用)を組み合わせた処理方法が極めて有効であることを見出したのである。すなわち、本発明に係る有機物質の処理方法は、出発物質から最終産物を通じて、前記有害な物質が外界にほとんど廃棄・放出されない、「閉鎖型」となりうるのである。
好気性発酵は、酸素のある状態で活動する微生物の働きで有機物を分解し、発酵させるものである。腐敗の進行した有機物質を分解すると共に、悪臭などの有害な成分量を低減し、廃棄物処理(有用物質への変換)を容易にするという観点より、肥料等の生産まで考慮すれば、好気性発酵によることが好ましい。好気性発酵によれば、効率的に肥料等を生成できる。本発明における肥料前駆物質はセルロース等の難分解性物質を多く含みうる。このような観点から、好気性発酵を行い、かつ前記難分解性物質の肥料化が可能な微生物として、枯草菌や納豆菌などが好ましい。一方、嫌気性発酵は、酸素に触れない状態で活動する微生物の働きによるもので、発酵によりメタンガスが発生する反応を特にメタン発酵という。前記難分解性物質を多く含みうる肥料前駆物質を肥料化するには、一般に嫌気性発酵の方が好気性発酵と比較して有利である。そして、エタノールは、工業用、燃料用及び飲用に使用可能な点で、メタンは、燃料用ガスなどに使用可能な点で、共に有用物質といえる。また、本発明に係る処理方法により得られるエタノールやメタンは、それぞれ、バイオエタノール及びバイオガスに相当し、地球上の限られた資源を保護するという観点から近年、非常に注目されているところである。本発明によれば、このように、従来では有用物質の獲得が工業上の観点から現実には不可能といわれてきた、(産業)廃棄物となる有機物質よりバイオエタノールやバイオガス、そして肥料等を効率的に得ることができるのである。
なお、段階(a)、段階(b)、段階(c)及び段階(d)のうち、いずれか1種の段階を含むような「第2の工程」であれば、エタノール、メタンまたは肥料等を得ることができ、本発明の目的を達成可能である。しかし、腐敗がかなり進行した有機物質であって、処理できずに廃棄され続けている結果、地球環境汚染を加速させているような現状を顕著に改善するという観点からいえば、前記有機物質を出発物質として、該有機物質中の成分をほぼ全て有効活用できる処理方法を採用することが極めて好ましいといえる。このような観点から、上述したように、本発明を構成する第2の工程は、段階(a)、段階(b)、段階(c)及び段階(d)よりなる群から選択される2種以上の段階を含むことが好ましいといえる。さらに、エタノール及び/またはメタンといった有用物質を有機物質から得るという観点からいえば、第2の工程が段階(a)及び段階(d)のいずれか一方を含むことがより好ましいことは上述した通りである。
さらにいえば、第2の工程において、段階(a)、段階(b)、段階(c)及び段階(d)のうち、任意の2種以上の段階が1回以上反復して行われることが特に好ましい。このような任意の2種以上(すなわち、2種、3種または4種)の段階を1回以上反復して行う過程を、本明細書において「サイクル」と称することもある。本発明の第2の工程において、このようなサイクルのパターンは非常に多数存在しうるため、以下、特に言及する場合を除き、各段階、及び任意の2種の段階からなるサイクルについてのみ説明する。しかし、任意の3種の段階及び任意の4種の段階からなるサイクルが存在しうることは上述の通りである。そして、段階(a)、段階(b)、段階(c)及び段階(d)から選択される全ての任意の3種の段階及び4種の段階も、本発明の範囲に含まれる。なお、上記第1の工程に続く第2の工程のうち最初の段階は、上記4種類の段階のうちいずれでもよい。また、任意の3種の段階及び任意の4種の段階からなるサイクルの場合、各段階は通常、いずれか一方向に従って進行するが、場合によっては、いわゆる「可逆的に」両方向に進行してもよい。あるサイクルが両方向に進行する場合、「同時に」両方向の反応を進行させてもよいし、または所定の時間ごとに交互に方向を切り替えて反応を進行させてもよい。
図37は、本発明に係る有機物質の処理方法における各工程(特に第2の工程)、及び前記工程を構成する各段階を示した概略的なフローチャートである。図37は主に、第2の工程におけるサイクルと前記サイクルを構成する各段階との関係について示している。なお、図37において、第1の工程に続く第2の工程のうちの最初の段階は、段階(a)となっているが、その他の段階((b)、(c)または(d))から始まってもよいことは前述の通りである。
任意の2種の段階からなるサイクルとしては、計6種類が挙げられる。すなわち、段階(a)及び段階(b)からなるサイクル経路(以下、「第1のサイクル」ともいう)、段階(a)及び段階(c)からなるサイクル経路(以下、「第2のサイクル」ともいう)、段階(b)及び段階(c)からなるサイクル経路(以下、「第3のサイクル」ともいう)、段階(a)及び段階(d)からなるサイクル経路(以下、「第4のサイクル」ともいう)、段階(b)及び段階(d)からなるサイクル経路(以下、「第5のサイクル」ともいう)、並びに段階(c)及び段階(d)からなるサイクル経路(以下、「第6のサイクル」ともいう)である。なお、2種の段階からなるサイクルについてのみ、番号を付しているが、任意の3種ないし4種の段階についても本発明の範囲に含まれることは上述の通りである。図37に示したフローチャートを用いて、前記任意の3種の段階からなるサイクルについて例示すると、段階(a)→段階(b)→段階(c)を1単位とするサイクルが挙げられる。また、前記任意の4種の段階からなるサイクルについて例示すると、段階(a)→段階(b)→段階(d)→段階(c)を1単位とするサイクルが挙げられる。
本明細書では、図37に示された経路のうち一部の経路について以下で説明を行う。しかし、本明細書を見た当業者であれば、かかる説明に基づき、図37に示されたその他の経路についても適当な条件を設定した上で好適に実行可能である。
これらのサイクルは、互いに独立的に機能してもよいし、複数のサイクルが従属的に(同時に)機能してもよい。特に、上記サイクルが2種以上存在するような第2工程の場合には、効率化の観点より、これらのサイクルが従属的に機能することが好ましい。なお、サイクル経路に属さない段階については、1回終了型の「直線状」経路でありうる。
なお、上記の各段階に用いられる微生物は、サイクルの初発にのみ投入されてもよく、サイクルの継続中、すなわち中途の過程でさらに投入されてもよい。以下、上記した6種類のサイクルについて、各サイクルを構成する各段階((a)〜(d))と共により詳細に説明する。
<第1のサイクル>
本サイクルは、好気性条件もしくは嫌気性条件下で、アルコール生成能を有する真菌、ザイモモナス菌及びへテロ型乳酸菌からなる群より選択される1種以上を用いてエタノール発酵を行うことにより、前記有機物質からエタノールを抽出し、肥料前駆物質を得る段階(a)と、好気性条件もしくは嫌気性条件下で、前記肥料前駆物質を微生物に分解させることにより、有機物質を得るとともに、場合によりエタノール及び/またはメタンを抽出しうる段階(b)と、を反復して行う段階である。本サイクルは、本発明に係る生成方法においてエタノール生成を主目的とする場合に、中心的な部分を構成しうる。
概略としては、段階(a)と段階(b)とを交互に第1の工程を経た有機物質を循環させながら、その間にエタノールが抽出される。ただし、該有機物質の細菌などによる循環過程を設けず、段階(a)のみで終了させるか、または段階(a)と段階(b)からなる過程を一回のみで終了させることもありうる。かかる場合、当該過程を経た産物は、後述する段階(c)及び/または段階(d)へと移行する。なお、抽出されるエタノールは、主に段階(a)中で得られ、エタノールの抽出・生成が進むにつれて、微生物による異化反応は、段階(a)から段階(b)側へとシフトすることとなりうる。しかし、段階(b)中でエタノール生成が行われることもありうる。段階(b)中で得られる場合として、例えば、段階(a)で用いたエタノール発酵用の微生物が、段階(b)を行う装置へとそのまま移送されて、段階(b)でエタノール発酵が引き続き行われることが挙げられる。また、第1のサイクルは通常、段階(a)より開始されるが、原料である有機物質中の糖質含量が極めて低い場合などは、段階(b)より開始する方が好ましいといえる。
さらに、エタノール抽出は、段階(b)終了後で段階(a)開始前もありうる。また、本サイクルは通常、段階(a)から開始されるが、場合によっては段階(b)から開始されてもよい。さらに、後述のように、段階(a)及び段階(b)は共に、好気性条件及び嫌気性条件のいずれのパターンも採りうるため、計4パターンが存在しうる。そして、段階(a)及び段階(b)のうち一方が好気性条件、もう一方が嫌気性条件を採用する場合には、段階間の移送中に条件・環境の「切り替え」が必要となりうる。以下、段階(a)及び段階(b)について詳細に説明する。
1.段階(a)
段階(a)を実行するための装置の例を図12A及び図12Bに示す。当該装置中で、アルコール生成能を有する真菌、ザイモモナス菌及びへテロ型乳酸菌からなる群より選択される1種以上を投入し、適宜必要により攪拌を加えながら、エタノール発酵を行わせることにより、有機物質(未処理及び/または前処理後)からエタノールを抽出する。段階(a)において用いられる真菌は、エタノール発酵を行うことのできる菌であれば特に制限されることはないが、酵母及びRhizopus oryzaeよりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。酵母の属としては、エタノール発酵を効率的に行えるという点より、Saccharomyces属、Candida属、Zygosaccharomyces属、Schizosaccharomyces属、Kluyveromyces属、Pastoris属、Saccharomycopsi属、Pastoris属、Pachysolen属などが挙げられる。より具体的には、サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)、Saccharomyces exiguous、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces fragilis、Zygosaccharomyces rouxii、Schizosaccharomyces japonicus、Schizosaccharomyces optosporus、Schizosaccharomyces pombe、Pastoris Pichia、Candida albicansが好ましい。なお、アルコール生成能を有する酵母は、一般には嫌気性菌(通性嫌気性菌、偏性嫌気性菌)である。また、へテロ型乳酸菌としては、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus.reuteri)(好気性菌)、及びラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus.fermentum)(通性嫌気性菌)等が挙げられ、なかでもラクトバチルス・ロイテリが好ましい。また、糸状菌であるRhizopus oryzaeは、好気性菌である。具体的な好気性条件または嫌気性条件については、菌ごとに様々であり、当業者であれば適宜最適条件(温度やpHなど)を設定可能であるため、ここでは説明を省略する。
図38は、嫌気性条件下で使用される一例としてのエタノール発酵ユニットである。特に、嫌気性条件下でのエタノール発酵に適している。エタノール発酵ユニット190(処理ユニット)は、ジュラルミン等製の本体191、逆流防止弁付きの有機物質(未処理及び/または前処理後)の材料注入口192、逆流防止弁付きの気体排出口193、微生物注入口194、残渣(残余物質)が移送される材料排出口195を備える。材料注入口192は本体191の上方に設けられ、材料排出口195は本体の下方に設けられる。材料注入口192は、例えば高分子分解ユニット180や集積ユニットの材料排出口189にチューブ等の連結管196により連結可能である。高分子分解ユニット180からエタノール発酵ユニット190へ材料を供給する際には、高分子分解ユニット180の材料排出口196とエタノール発酵ユニット190の材料排出口192を連結し、高分子分解ユニット180を上方を移動させるか、またはエタノール発酵ユニット190を下方へ移動させることで、材料を移動させることができる。更に、微生物注入口194からアルコール生成能を有する真菌、ザイモモナス菌及びへテロ型乳酸菌からなる群より選択される1種以上を投入して、混合溶液とし、エタノール発酵を行わせる。なお、本体191の内部に、攪拌装置が備えられてもよい。
なお、好気性条件下でのエタノール発酵を行う場合には、上記エタノール発酵ユニット190に別途、酸素などの気体を供給するための気体流入口を設けることが好ましい。
以下、図38に示したエタノール発酵ユニット190を例として説明すると、本段階中で混合溶液に含まれる有機化合物のうち、低分子化合物は、アルコール生成能を有する真菌、ザイモモナス菌及びへテロ型乳酸菌からなる群より選択される1種以上の微生物の栄養要求に起因してエタノールに変換される結果、減少する。かかる低分子化合物として、単糖類、二糖類、ペプチド、アミノ酸などが挙げられる。
その結果、アルコール生成能を有する真菌、ザイモモナス菌及びへテロ型乳酸菌からなる群より選択される1種以上に利用(資化)されずに残る残渣(前記有機物質の一部)については、段階(b)において微生物により分解されることとなる。生成されたエタノールは、段階(a)における蒸発物を回収するか、段階(a)の一回終了後に分留するか、または段階(b)中に蒸発した物を回収する。前記分留については、図38に示すように、気体状のエタノールを気体排出口(ダクト付)193を通じてエタノール分留を行う経路と、嫌気エタノール発酵ユニット190中の残渣(残余物質)を、材料排出口195を通して分留槽に一旦貯蔵し、空気、水蒸気、または窒素もしくはアルゴン等の不活性ガス、あるいは二酸化炭素などの気体を投入した後にエタノール分留を行う経路とがありうる。かかる気体は、エタノールと反応せず、エタノールと親和性がよいため好適であり、さらに二酸化炭素の場合には原料としての菌にとって有利であるため好ましい。
なお、段階(b)に移行する前段階として、必要な場合には、例えば、納豆菌を用いる場合、塩基性化合物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等)または塩基性塩(例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム等)を投与し有機物質(未処理及び/または前処理後)のpHを塩基性としておくことが好ましい。工程上、段階(a)を行った装置から段階(b)を行う装置へ移送する場合に、段階(b)における好ましいpHの範囲内にあらかじめ調節しておくためである。一方、酸性下で活性を有する枯草菌を用いる場合には、上記のような前処理は不要となりうる。pHとしては、用いる菌によって異なるため、特に限定されない。
また、段階(a)により、エタノール以外に、無機物質、及び異化されなかった(異化反応により分解されなかった)有機物質も得られる。前記無機物質は、アンモニア、窒素化合物、炭素化合物(二酸化炭素など)、リン酸、硫化物、硫化水素、無機酸、無機アルカリ及び無機塩(硫酸塩、亜硫酸塩など)よりなる群から選択される1種以上でありうる。上記した無機物質のほとんどは、外界に排出されると地球環境破壊が進行することが一般に知られており、深刻な問題となっている。しかし、本処理方法では、このような無機物質を後述する段階(c)において微生物に同化させることにより、外界に放出することなく、かつ、エタノールや後述の肥料を一層大量に得ることができる。かかる点において、本発明は、生ゴミ、動物排泄物、廃棄木材や落葉などからなる家庭廃棄物質または(産業)廃棄物質などを出発物質として、二酸化炭素や硫化水素などの大気中への排出を防ぎつつ、エタノールを高い収率で生成することができる点で、地球環境の保護などに大いに貢献できるのである。
一方、本処理方法では、従来残渣として廃棄されていたような残余の有機物質を、微生物を用いて肥料にすることもできる。すなわち、上記した異化されなかった(異化反応により分解されなかった)有機物質は、炭水化物(セルロース、ヘミセルロース、リグニン等)、脂質、グリセリン、高級アルコール、脂肪酸、アミノ酸、ペプチド及びタンパク質等が挙げられるが、これらの有機物質は肥料前駆物質となりうる。肥料の生成については、以下の段階(b)において詳述する。
なお、段階(a)と段階(b)とがサイクルとして反復する場合、本段階(a)中に段階(b)で投入された微生物が生きて存在する場合がある。かかる場合には、本段階(a)において、後述の段階(b)で本来行われうる分解反応(異化)が起こりうる。
2.段階(b)
段階(b)を実行するための異化反応ユニットの例を図39に示す。好気性条件もしくは嫌気性条件の装置中で、前記段階(a)で用いられた微生物によって資化されなかった残渣(残余物質)をもとに、段階(a)から段階(b)へと移送されてきた生きた酵母によって、「場合により」エタノールが抽出されうる。一方、段階(a)から移動してきた抽出液中の酵母がほぼ死滅しているような場合には、段階(b)でのエタノール抽出はほとんど行われない。なお、本処理方法における前記残渣は、図28及び図37に示したように、段階(b)によって分解される場合と、肥料前駆物質として前記成分から肥料が生成される場合とがある。ここで、前記残渣とは、前記有機物質(前処理後の有機物質)の構成成分の一部に相当する。前記有機物質としては、使用する菌種や環境条件によっても様々であるが、上述の通り、炭水化物(セルロース、ヘミセルロース、リグニン等)、脂質、グリセリン、高級アルコール、脂肪酸、アミノ酸、ペプチド及びタンパク質等が挙げられ、主にセルロース、へミセルロース及びリグニンが挙げられる。また、段階(b)に使用可能な微生物は、好気性菌の中では、偏性好気性菌もしくはラクトバチルス属が好ましい。より具体的には、好気性菌の中で、特にセルロースを分解する微生物として、枯草菌(Bacillus subtilis)、納豆菌(枯草菌の亜種)、ペニシリウム属、グオクラディウム属または木材腐朽菌(褐色腐朽菌、白色腐朽菌や軟腐菌)が好ましい。また、好気性菌の中で、特にリグニンを分解する微生物として、ケトミウム属が好ましい。さらに好ましくはバチルス属であり、特に好ましくは、枯草菌または納豆菌であり、最も好ましくは納豆菌である。一方、嫌気性菌の中で、特にセルロースを分解する微生物として、Clostridium thermocellum、Clostridium cellulovorans、Clostridium josui、Clostridium cellulolyticum、Acetivibrio cellulolyticus、Bacteroices cellulosolvens、Rumonococcus flavefaciensまたはClostridium acetobutylicum、あるいはセルロース分解能を有するツボカビ門(Chitridiomycota)またはTrichoderma reeseiが好ましい。より好ましくは、Clostridium thermocellum、Clostridium cellulovorans、Clostridium josui、Clostridium
cellulolyticum、Acetivibrio cellulolyticus、Bacteroices cellulosolvensまたはRumonococcus flavefaciens、あるいはセルロース分解能を有するツボカビ門(Chitridiomycota)である。また、嫌気性菌の中でリグニン分解能を有する微生物(細菌、真菌)もまた、好適に使用できうる。
なお、具体的な好気性条件もしくは嫌気性条件については、使用する微生物によって様々であり、当業者であれば適宜最適条件(温度やpHなど)を設定可能であるため、ここでは説明を省略する。
図39に示された一例としての異化反応ユニット200は、特に、好気性条件下での異化反応に適している。異化反応ユニット200は、ジュラルミン等製の本体201、逆流防止弁付きの気体排出口202、逆流防止弁付きの気体注入口203、有機物質(段階(a)で得られた残渣)を含む混合溶液の材料注入口204、逆流防止弁付きの酸素、二酸化炭素及び窒素のいずれか1種以上を含む気体の気体注入口205、微生物注入口206、次段階への移送経路(配管)である材料排出口207を備える。材料注入口204は本体201の上方に設けられ、材料排出口207は本体201の下方に設けられる。異化反応ユニット200の材料注入口204は、第1サイクルでは、段階(a)で用いられるエタノール発酵ユニット190の材料排出口195にチューブ等の連結管208により連結可能であり、異化反応ユニット200の材料排出口207は、エタノール発酵ユニット190の材料注入口192にチューブ等の連結管209により連結可能である。なお、後述する第3サイクルでは、異化反応ユニット200は段階(c)で用いられる装置(処理ユニット)と連結し、第5サイクルでは、段階(d)で用いられる装置(処理ユニット)と連結することとなる(図37参照)。エタノール発酵ユニット190から異化反応ユニット200へ材料を供給する際には、エタノール発酵ユニット190の材料排出口195と異化反応ユニット200の材料注入口204を連結し、エタノール発酵ユニット190を上方を移動させるか、または異化反応ユニット200を下方へ移動させることで、材料を移動させることができる。更に、微生物注入口206から必要な微生物を投入して、混合溶液とし、異化反応を行わせる。
なお、嫌気性条件下で異化反応を行う場合には、気体注入口205は不要であり、はじめからこれらのパーツを設けていなくてもよい。
以下、図39に示した異化反応ユニット200を例として説明すると、酸素、二酸化炭素及び窒素のいずれか1種以上を含む気体を注入しながら混合溶液を攪拌させるか、または別途の攪拌用シャフトなどを取り付けることによって適宜攪拌しながら、必要な場合には、空気を含む酸素含有気体または純酸素を前記残渣(残余物質)に投入してもよい。かような環境下で、上記した段階(b)で投入される微生物が、段階(a)において異化(分解)されなかったセルロース、へミセルロースやリグニン等を栄養分として異化を進める。ここで、前記微生物が異化により無機物質を大量に作り出す前に、段階(b)に使用される装置をあらかじめ嫌気化(無気化)しておくことで、前記微生物の活動を一時的に不活性化にさせること、換言すれば休止状態とすることができる。なお、段階(b)を実行する前に再度活性化することができうる。次いで、異化反応ユニット200の材料排出口207とエタノール発酵ユニット190の材料注入口192を連結し、異化反応ユニット200を上方を移動させるか、またはエタノール発酵ユニット190を下方へ移動させることで、段階(a)用の装置におけるpHを調整しつつ、有機物質(未処理及び/または前処理後)及び段階(b)で得られた低分子有機物を段階(a)に移行させて、段階(a)においてエタノール抽出を再度行う。なお、段階(b)でもエタノール抽出が行われうることは上述した通りである。このように、段階(a)と段階(b)とを反復して行う「サイクル」段階によって、経時的にエタノールを抽出することができる。
一般に、段階(b)に使用される微生物が前記残渣を分解する過程において、前記残渣が高温となるため、段階(b)においてエタノールを分留して回収してもよい。
有機物質(前処理後の有機物質)のうち、微生物が栄養要求する物質が枯渇した時点で本サイクルは停止する。しかし、かかる場合に、栄養要求する物質が異なる微生物を投入することによって、本サイクルを維持継続することができる。また、微生物に栄養要求されている物質を補給することによっても本サイクルの維持継続が可能となる。
また、これまで説明してきた第1のサイクルを効率的に維持継続させる手段として、別途、第2のサイクルを設けることもできる。この第2のサイクルは、第1のサイクルの継続維持が不能となった時点、またはエタノールの抽出量が第1のサイクルを維持させるのに十分な量でなくなった時点で初めて使用してもよい。また、第1のサイクルと第2のサイクルとを同時に機能させてもよい。地球環境の保護の観点などからいえば、第1のサイクルと第2のサイクルとを同時に機能させることが好ましい。以下、第2のサイクルについて詳細に説明する。
<第2のサイクル>
本段階は、前記段階(a)と、無機物質を微生物に同化させることにより前記有機物質を得るとともに、場合によりエタノール及び/またはメタンを抽出しうる段階(c)と、を反復して行う段階である。なお、前記無機物質として、後述するように、例えば、前記段階(a)で得られる無機物質や、自然界に存在する無機物質などが挙げられる。
1.段階(a)
段階(a)については上記第1のサイクルにおいて既に詳説したため、ここでは説明を省略する。すなわち、段階(a)は、第1のサイクルと本第2のサイクルの双方に含まれる。
2.段階(c)
段階(c)では、エタノールの抽出に伴って生成された無機物質、すなわち第1のサイクルのうちの段階(a)で用いられる微生物による異化作用によって生じた無機物質を再度同化させ、有機物質を生成する。これにより、得られた有機物質を段階(a)に供給し、上記第1のサイクルの系内に投入することを特徴とする。本段階が存在することにより、二酸化炭素や硫化水素などの大気中への排出を防ぎつつ、エタノールを高い収率で生成することができる点で、地球環境の保護などに大いに貢献できるのである。段階(c)を実行するための同化反応ユニット(処理ユニット)の例を図40に示す。
前記微生物は、好気性菌及び嫌気性菌のいずれであってもよい。別の観点からいえば、独立栄養生物であっても従属栄養生物であってもよい。前記独立栄養生物は、光合成独立栄養生物及び化学合成独立栄養生物に大別され、前者の例として光合成細菌及び光合成能を有する真核生物が挙げられ、後者の例として化学合成細菌が挙げられる。また、前記従属栄養生物は、光合成従属栄養生物及び化学合成従属栄養生物に大別され、例えば、窒素固定能を有する好気性もしくは嫌気性細菌(以下、「窒素固定細菌」という)、放線菌、藍藻、またはメタン生成菌などの古細菌、あるいは硝酸還元菌もしくは亜硝酸還元菌または酵母が挙げられる。なお、前記化学合成独立栄養生物としては、無機化合物(硫化水素、アンモニアなど)を酸化してエネルギーを得る、公知の真菌または細菌(独立栄養細菌)が挙げられる。なかでも、光合成細菌、化学合成細菌、光合成能を有する真核生物、及び窒素固定細菌のうちのいずれか1種を含むことが好ましい。
上記した微生物のうち、好気性菌としては、特に限定されることはないが、Cyanophita門 Chroococcales目、Pleurocapsales目、scillatoriales目、ostocales目、Stigonematales目、Prochlorales目などが挙げられる。これらの属・種については特に限定されることはないが、例えば、Acetobacteraceae Acidiphilium、Rhodobacteraceae Roseobacter、Sphingomonadaceae Erythrobacterなどが挙げられる。
一方、上記した微生物のうち、嫌気性菌としては、特に限定されることはないが、Rhodospirillum Rhodocista、Acetobacteraceae
Rhodopila、Rhodobacter Rhodovulum、Bradyrhizobiaceae hodopseudomonas、Hyphomicrobiaeceae Rshodomicrobiuum、Blastochloris Rhodoplanes、Rhodobiaceae Rhodobium、Comamonasdaceae Rhodoferax、Rhodocyclaceae Rhodocyclus、Chromatium okenii、Lamprocystis denticulata、Lamprocystis fastigata、Lamprocystis hahajimana、Lamprocystis hornbosteli、Lamprocystis misella、Chlorobaculum tepidum、Chloronema giganteum、Heliothrix oregonensis、Roseiflexus castenholzii、Oscillochloris chrysea、Oscillochloris trichoides、Heliobacterium chlorum、Heliobacterium
gestii、Heliobacterium modesticaldum、Heliobacterium sulfidophilum、Heliobacterium
undosumなどが挙げられる。
前記好気性菌として、窒素固定能を有するという観点より、好ましくはシアノバクテリアであるCyanophita門 Chroococcales目、Pleurocapsales目、scillatoriales目、ostocales目、Stigonematales目、Prochlorales目である。より好ましくは、硫黄粒を生じないという観点より、Rhodospirillaceae Rhodospirillum、Rhodospirillaceae Rhodocistaである。一方、嫌気性菌として、好ましくはHeliobacterium chlorum、Heliobacterium gestii、Heliobacterium modesticaldum、Heliobacterium sulfidophilum、Heliobacterium undosumである。一般に、通性嫌気性菌は、有酸素下で光合成をせずに呼吸してしまい、消費してしまうものが多い。その中で、上記の菌は、酸素下では光合成をせず異化もせず不活性化しているため、光合成の効率が有意に優れているからである。
図40に示された一例としての同化反応ユニット210は、嫌気性条件、好気性条件のいずれの培養にも適した構成となっている。具体的には、ジュラルミン等製の本体211、蓋部212、逆流防止弁付きの微生物投入口213、逆流防止弁付きの材料注入口214、酸素、二酸化炭素及び窒素のいずれか1種以上を含む気体注入口215、次段階への移送経路(配管)である材料排出口216を備える。ここで、蓋部212は、好気性条件下での使用の場合には開放し、嫌気性条件下の場合には閉鎖することを特徴とする。また、好気性条件下で本装置を使用する場合には、気体注入口215を通じて、有機化合物を含む混合溶液へ酸素、二酸化炭素及び窒素のいずれか1種以上を含む気体を送り込むことができる。
材料注入口214は本体212の上方に設けられ、材料排出口216は本体212の下方に設けられる。同化反応ユニット210の材料注入口214は、第2サイクルでは、段階(a)で用いられるエタノール発酵ユニット190の材料排出口195にチューブ等の連結管217により連結可能であり、同化反応ユニット210の材料排出口216は、エタノール発酵ユニット190の材料注入口192にチューブ等の連結管218により連結可能である。なお、後述する第3サイクルでは、同化反応ユニット210は段階(b)で用いられる異化反応ユニット(処理ユニット)と連結し、第6サイクルでは、段階(d)で用いられる装置(処理ユニット)と連結することとなる(図37参照)。エタノール発酵ユニット190から同化反応ユニット210へ材料を供給する際には、エタノール発酵ユニット190の材料排出口195と同化反応ユニット210の材料注入口214を連結し、エタノール発酵ユニット190を上方を移動させるか、または同化反応ユニット210を下方へ移動させることで、材料を移動させることができる。更に、微生物注入口213から必要な微生物を投入して、混合溶液とし、同化反応を行わせる。また、同化反応ユニット210からエタノール発酵ユニット190へ材料を供給する際には、同化反応ユニット210の材料排出口216とエタノール発酵ユニット190の材料注入口192を連結し、同化反応ユニット210を上方を移動させるか、またはエタノール発酵ユニット190を下方へ移動させることで、材料を移動させることができる。
出発物質である有機物質が、第1の工程、及び第2の工程のうち少なくとも第1のサイクルを経ると、前記第1のサイクルによって、主に窒素及び炭素といった無機物並びに有機物が反応系中で欠乏してくる場合がある。この時、窒素固定菌(ジアゾ栄養生物等)が大気中の窒素ガスから窒素を固定し、光合成細菌などが大気中の二酸化炭素等から炭素を固定でき、このような独立栄養生物の同化作用によって、窒素及び炭素並びに有機物を反応系(特に第1のサイクル)中に取り入れることが可能になる。さらに、場合によっては、第1のサイクルで用いられる微生物がその他の微量元素などを欠乏して要求することがあり、かかる場合に、本段階(c)により当該元素などを補うこともできる。嫌気性、好気性条件は使用する菌株に依存する。
かかる同化作用により、再度、糖質(単糖等)の低分子有機物質を得ることが可能になり、段階(a)で用いられる微生物が得られた低分子有機物質等を原料としてエタノール発酵を行う結果、さらにエタノールが抽出される。その際生成される無機物質より、再度、段階(c)において有機物質を生成(同化)することができる。このように、段階(a)と段階(c)とを反復して行う第2の「サイクル」段階によって、連続的・経時的(長期的)に、段階(a)で発生する無機物質の外界への放出を抑制するとともにエタノールを一層大量に抽出することができる。
段階(c)に用いられる微生物が窒素や炭素以外の微量元素を要求する場合には、かかる元素を種々の形態で補給してもよい。なお、段階(c)に用いられる微生物の培養条件については、上述の通り、好気性菌、嫌気性菌のいずれもあり得、また、使用する菌の種類によって様々であるため、特に限定されることはない。さらに、嫌気性条件や好気性条件については、使用する菌の種類によって、当業者であれば適宜最適条件(温度やpHなど)を設定可能であるため、ここでは説明を省略する。
段階(c)の原料である無機物質については、上記した段階(a)で得られる無機物質と、自然界に存在する無機物質とを共に用いてもよいし、いずれか一方のみを用いてもよい。
なお、段階(a)と段階(c)とがサイクルとして反復する場合、例えば、段階(a)中に段階(c)で投入された微生物が生きて存在する場合がある。かかる場合には、段階(a)において、段階(c)で本来行われうる同化が起こりうる。逆の場合、すなわち段階(c)において、段階(a)で本来行われうるエタノール発酵が「場合によっては」起こりうる。
本段階(c)の存在意義としては、主に2つある。まず、第1のサイクルが働いている間に、エタノールの抽出に伴って生成された無機物質、すなわち第1のサイクルのうちの段階(a)で用いられる微生物による異化作用によって生じた無機物質を再度同化させ、有機物質を生成することができる。これにより、第1のサイクルの働きをより活発化することができうる。また、エタノールを抽出し尽くした後に残ったセルロース等の残渣(主に高分子有機化合物)を廃棄することなく、後述の第3の工程に供給することにより、肥料等へと変換させて更なる有用物質を得ることができる。このように、本段階では、化石燃料エネルギーの使用量をできるだけ抑えて、代わりに太陽エネルギーを主に利用するため、地球環境資源の浪費を効果的に抑制できる。
<第3のサイクル>
上記した段階(b)と段階(c)とを反復することを特徴とする。これにより、段階(b)において段階(a)の酵母が残存するか残存させたような場合に、段階(c)において生成されたグルコースなどを原料として、該酵母がエタノール抽出することが可能となる。
好ましくは、第1のサイクルと同時に、より好ましくは第1及び第2のサイクルと同時に機能させることにより、地球環境の保護の観点で非常に優れたエタノールの生産システムを構築することができる。
第3のサイクルを反復するには、段階(a)で用いられるエタノール発酵ユニット190の材料排出口195と段階(c)で用いられる同化反応ユニット210の材料注入口214をチューブ等の連結管で連結し、更にエタノール発酵ユニット190の材料注入口192と同化反応ユニット210の材料排出口216をチューブ等の連結管で連結することで、一方を上昇または下降させて、互いに材料を移動させることができる。
なお、段階(b)と段階(c)とがサイクルとして反復する場合、例えば、段階(b)中に段階(c)で投入された微生物が生きて存在する場合がある。かかる場合には、段階(b)において、段階(c)で本来行われうる同化が起こりうる。逆の場合、すなわち段階(c)において、段階(b)で本来行われうる異化が起こる場合もありうる。
<段階(d)を含むサイクル群>
上記した段階(a)、段階(b)または段階(c)と段階(d)とを反復することを特徴とする。なお、このような反復する経路(サイクル)のうち、段階(d)と段階((a)〜(c))のいずれかとからなるサイクルは、図37において第4〜第6のサイクルとして示している。
段階(d)としてメタン発酵を第2の工程に設ける意義としては、主に2点ある。第1の点として、腐敗菌(加水分解能を有する菌や酸生成を有する菌)が有機物質の構成成分であるタンパク質、炭水化物(多糖類)及び脂質を分解して生成された有機酸(蟻酸、酢酸等)、アルコール類やアルデヒド類などをメタンにまで還元することができる。上述のように、腐敗菌により生成された物質の多くは有害な物質であるため、かような有害物質を有用な物質であるメタンに変換することによって、地球環境を有効に守ることができる。第2の点として、タンパク質、炭水化物(多糖類)及び脂質などの分解過程、すなわち第1の工程及び第2の工程(段階(a)〜(c))で生成される二酸化炭素も、地球環境破壊の要因の1つ(地球温暖化の促進)であることは周知の事実であるが、各段階(反応)で発生した二酸化炭素をメタンに変換することにより、かような問題も解決できうる。
メタン発酵及びメタン生成菌について、さらに詳細に説明する。メタン発酵は、嫌気的に行われる反応であるため、省エネルギー化に寄与するとともに、非燃焼タイプの反応であるため、有害物質が発生しないという利点がある。メタン発酵は、発酵温度の観点より、55℃程度の高温型メタン発酵と37℃程度の中温型メタン発酵に大別される。なかでも好ましくは高温型である。なぜなら、高温型は、中温型よりもメタン生成能力が2倍程度高く、発酵の効率に優れているためであり、さらに、上記の残余物質のうち、セルロースなどの繊維質を分解する能力も非常に高い。そのため、生ゴミや排泄物などの有機物質を原料とする場合の高温型メタン発酵は、本発明の目的に鑑みて、まさに好適であるといえる。メタン生成菌については、従来公知のものであれば特に制限されることはないが、例えば、Methanobacterium属、Methanosarcina属やMethanosaeta属などが挙げられる。
1.段階(a)、段階(b)または段階(c)
表記の段階については既に詳説したため、ここでは説明を省略する。
2.段階(d)
段階(d)、及び段階(d)を含むサイクル(第4〜第6のサイクルを含む)は、メタン発酵を用いて、本発明により得られる有用物質の1つであるメタンを抽出・生成する段階及びサイクルである。段階(d)、及び段階(d)を含むサイクルは、エタノール発酵を主体とする段階(a)、及び段階(a)が含まれる上述の第1〜第2のサイクルと同様、本発明の特徴の一つである。
第1の工程中の上記「5.麹菌及び/または麹菌由来の酵素を用いた、前記高分子有機化合物の分解」終了後(前記「5」が省略される場合には、好ましくは、第1の工程中の上記「1」〜「4」の段階のいずれか終了後)に段階(d)を行う場合がありうる。換言すると、第1の工程に続く第2の工程の最初の段階が段階(d)である場合である。かかる場合、段階(d)で働くメタン生成菌は、一般に腐敗菌のうちの鉄細菌や硫酸還元菌と増殖に関して拮抗するため、特に硫酸の存在がメタン生成菌の増殖の妨げ(段階(d)におけるメタン発酵の阻害)となりうる。かかる場合には、硫酸還元細菌または硫酸還元古細菌によって硫酸イオンをあらかじめ除去しておくことが好ましい。このように、あらかじめ硫酸を除去しようとすると、硫化水素が発生するため、これを安全に回収する。
なお、一般にメタン生成菌の要求する栄養成分は、水素及び二酸化炭素、水素並びに乳酸、酢酸及び蟻酸などの有機酸、あるいは水素及びエタノール等であるため、各菌種に合わせて発酵の環境を設定することが好ましい。以下、かかる栄養成分ごとに詳細に説明する。
(1)メタン生成菌の要求する栄養成分が水素及び二酸化炭素の場合
第2の工程が上述のような、エタノール発酵を含む経路とメタン発酵及びエタノール発酵を含む経路とからなる場合(いずれか一方のみが主経路の場合、及び両方とも主経路の場合のどちらもありうる)、かかる2種類の経路の分岐点は、理論上、特に制限されることはない。ここで、メタン生成菌の要求する栄養成分を考慮するならば、前記分岐点は、第1の工程中の「5」終了後(前記「5」が省略可能な場合には、好ましくは、第1の工程中の上記「1」〜「4」の段階のいずれか終了後)、段階(a)の直後(エタノール抽出を含むサイクル開始前、該サイクル中もしくは該サイクル終了後のいずれであってもよい)、または段階(b)の直後(エタノール抽出を含むサイクル開始前、該サイクル中もしくは該サイクル終了後のいずれであってもよい)、第1のサイクル終了後、または段階(c)の直後が好ましい。より好ましくは、段階(a)の直後(エタノール抽出を含むサイクル開始前、該サイクル中もしくは該サイクル終了後のいずれであってもよい)、または段階(c)の直後である。
第2の工程がかような分岐点を有する場合、メタン生成菌が栄養要求する水素源としては、水素ガスの供給、嫌気性菌による水素生成及びハイドロジェノソームによる水素生成のうちいずれか一以上が好適に挙げられる。水素ガス(気体状の水素分子)を供給することは、安全性に細心の注意を払うことによって、工程上の簡便性という観点より好ましいといえる。一方、水素ガスの酸化や水素ガスによる爆発の危険性を考えると、嫌気性菌による水素生成も好ましい。原料中に嫌気性菌が存在する場合、有機酸を電子供与体とした嫌気呼吸により水素が発生しうる。この水素を用いることにより、別途、原料等を供給することなく、反応系中で水素を自動的に得ることができうる。他方、水素ガスの酸化や水素ガスによる爆発の危険性に加えて、上記のような原料中に存在する嫌気性菌の多くはメタン生成菌と拮抗しうることを考慮すると、ハイドロジェノソームによる水素生成がさらに好ましいといえる。すなわち、ハイドロジェノソームを有する微生物をメタン生成菌に投入するのである。ハイドロジェノソームとは、嫌気的条件下でリンゴ酸またはピルビン酸からカルボキシル基を酸化的に除去し、酢酸、水素及び二酸化炭素を生成するとともにATPを合成する細胞小器官である。換言すれば、ハイドロジェノソームを有する微生物は水素生成能を有する。ハイドロジェノソームを有する微生物の例として、人畜に無害なトリコモナス属の一部、ルーメン真菌(例えばネオカイマティックス等)、無機呼吸性繊毛虫(N.ovalis)等が好ましく挙げられる。より好ましくは、ネオカイマティックス及び/または無機呼吸性繊毛虫とメタン生成菌とは共棲(共生)することから、ネオカイマティックス及び/または無機呼吸性繊毛虫である。
一方、二酸化炭素の補給は、原料(メタン生成菌、並びに第1の工程、及び第2の工程の一部を経た有機物質等)が炭酸の形で二酸化炭素を有している場合には特に必要ない。一方、炭酸の形で二酸化炭素を有していない場合には、ハイドロジェノソームを有する微生物を投入することが好ましい。かかる微生物は二酸化炭素生成能も有するからである。それでもなお二酸化炭素が足りない場合には、気体状の二酸化炭素を原料に供給しうる。なお、かかる場合には、例えば、上記した第1の工程中の「5」、段階(a)または段階(b)における微生物学的反応より生じた二酸化炭素を回収したものを再利用することも可能であり、生成された二酸化炭素をできるだけ大気中に放出しないという観点から見れば、好ましい手段といえる。また、炭酸の形で液体として供給することも可能である。なお、かかる場合も、例えば、第1の工程中の「5」、段階(a)または段階(b)の微生物学的反応より生じた二酸化炭素を回収したものを再利用することが可能である。
(2)メタン生成菌の要求する栄養成分が水素並びに乳酸、酢酸及び蟻酸などの有機酸の場合
第2の工程が上述のような、エタノール発酵を含む経路とメタン発酵及びエタノール発酵を含む経路とからなる場合(いずれか一方のみが主経路の場合、及び両方とも主経路の場合のどちらもありうる)、当該2種類の経路の分岐点は、理論上、特に制限されることはない。このことは、上記(1)と同様である。ここで、メタン生成菌の要求する栄養成分を考慮するならば、前記分岐点は、第1の工程中の「5」終了後(前記「5」が省略可能な場合には、好ましくは、第1の工程中の上記「1」〜「4」の段階のいずれか終了後)、段階(a)の直後(エタノール抽出を含むサイクル開始前、該サイクル中もしくは該サイクル終了後のいずれであってもよい)、または段階(b)の直後(エタノール抽出を含むサイクル開始前、該サイクル中もしくは該サイクル終了後のいずれであってもよい)、第1のサイクル終了後、または段階(c)の直後が好ましい。より好ましくは、段階(a)の直後(エタノール抽出を含むサイクル開始前、該サイクル中もしくは該サイクル終了後のいずれであってもよい)、または段階(c)の直後である。
また、原料(メタン生成菌、並びに第1の工程、及び第2の工程の一部を経た有機物質等)に、酢酸や蟻酸などを生成する菌(例えばヘテロ乳酸菌など)を投入し、かかる菌にとっての至適環境を整えることが好ましい。例えば、ヘテロ乳酸菌であれば、メタン発酵の開始時に、原料に対して酸を加えて中性から酸性にした上で菌を接種し、嫌気状態とすることが好ましい。このように、ヘテロ乳酸菌に酢酸や蟻酸を生成させることにより、メタン生成菌によるメタン生成を促進することができる。なお、ヘテロ乳酸菌は、自らが生成した酢酸や蟻酸に起因して生じるpHの低下によって、働きが鈍る傾向にあるため、ヘテロ乳酸菌による酢酸や蟻酸の生成の前半及び/または後半に、アルカリ側へのpH調整、熱処理によるヘテロ乳酸菌由来の物質の機能維持が好ましく、また、場合により酢酸菌を投入することによる発酵液の中性化を行ってもよい。前記pH調整を行う場合、至適pHは菌種や菌株によって様々であるため以下に限定されることはないが、pH2〜8であることが好ましく、pH4.5〜8であることがより好ましく、pH6.8〜7.6であることがさらに好ましい。また、pH調整はアルカリ剤のみならず、水などで行ってもよい。なお、前記熱処理は、メタン生成菌の菌種によって至適温度が多様であるため、特に限定されることはないが、0〜100℃であることが好ましく、15〜80℃であることがより好ましく、20〜60であることがさらに好ましい。なぜなら、中温度域に生物学的活性を有する菌が多く、一般にヘテロ型乳酸菌は中温度域に生物学的活性を有する場合が多く、ラクトバチルス属は15〜20℃程度を超えると生物学的活動を行える場合が多いためである。
一方、メタン生成菌が栄養要求する水素源としては、水素ガスの供給、嫌気性菌による水素生成及びハイドロジェノソームによる水素生成のうちいずれか一以上が好適に挙げられる。詳細については上記(1)で説明したことと同様であるため、ここでは説明を省略する。
(3)メタン生成菌の要求する栄養成分が水素及びエタノールである場合
本発明における第2の工程の一態様は、上述のように、エタノール生成を含む主経路とメタン生成及びエタノール生成を含む副経路とからなる。前記主経路と前記副経路との分岐点は、理論上、特に制限されることはない。ここで、メタン生成菌の要求する栄養成分を考慮するならば、前記分岐点は、第1の工程中の「5」終了後(前記「5」が省略される場合には、好ましくは、第1の工程中の上記「1」〜「4」の段階のいずれか終了後)、段階(a)の直後(エタノール抽出を含むサイクル開始前、該サイクル中もしくは該サイクル終了後のいずれであってもよい)、または段階(b)の直後(エタノール抽出を含むサイクル開始前、該サイクル中もしくは該サイクル終了後のいずれであってもよい)、第1のサイクル終了後、または段階(c)の直後が好ましい。より好ましくは、段階(a)の直後(エタノール抽出を含むサイクル開始前、該サイクル中もしくは該サイクル終了後のいずれであってもよい)、または段階(c)の直後である。
ここで、一般的に酵母やザイモモナス菌により生成されたエタノールをメタン生成に資するのは、有用物質の1つであるエタノールを消費することとなり必ずしも好ましいものとはいえない。しかし、以下の場合には、生成されたエタノールをメタン生成に資することが却って好ましいものとなりうる。
メタン生成菌の要求する栄養成分を考慮すると、原料(メタン生成菌、並びに第1の工程、及び第2の工程の一部を経た有機物質等)に、乳酸やエタノール等を生成する菌(例えばヘテロ乳酸菌など)を投入し、かかる菌にとっての至適環境を整えることが好ましい。例えば、ヘテロ乳酸菌であれば、メタン発酵の開始時に、原料に対して酸などを加えるか、水を添加する等の処理により、pHを中性から酸性域に調節することが好ましい。至適pHは、メタン生成菌の菌種・菌株によって多様であるため、特に限定されることはないが、一般的には、pH2〜8が好ましく、pH4.5〜8がより好ましく、pH5.8〜7.8がさらに好ましく、pH6.8〜7.6が特に好ましい。発酵温度、発酵時間については、メタン生成菌の菌種・菌株によって多様であるため、特に限定されることはない。このようにして、ヘテロ乳酸菌に乳酸やエタノールを生成させてメタン生成菌によるメタン生成を促進することができる。得られたエタノールの消費が不利益とならずにむしろ、好ましいものとなりうる理由は、一般にヘテロ乳酸菌が生産するエタノール量は、酵母等が生産するエタノール量と比較して有意に少量であるためである。
なお、メタン生成菌が栄養要求する水素源としては、水素ガスの供給、嫌気性菌による水素生成及びハイドロジェノソームによる水素生成のうちいずれか一以上が好適に挙げられる。詳細については、上記(1)で説明したことと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
図41に示された一例としてのメタン発酵ユニット220は、嫌気性条件の培養に適した構成となっている。具体的には、ジュラルミン等製の本体221、蓋部226、逆流防止弁付きの微生物投入口222、逆流防止弁付きの材料注入口223、攪拌装置224、次段階への移送経路(配管)である材料排出口225を備える。材料注入口223は本体221の上方に設けられ、材料排出口225は本体221の下方に設けられる。メタン発酵ユニットの材料注入口223は、第1の工程または第2の工程の段階(a)〜(c)のいずれかに用いられる装置(処理ユニット)の材料排出口227とチューブ等の連結管229により連結可能であり、メタン発酵ユニット220の材料排出口225は、第2の工程の段階(a)〜(c)のいずれかに用いられる装置(処理ユニット)の材料注入口228、もしくは第3工程に用いられる装置の材料注入口にチューブ等の連結管230により連結可能である。したがって、メタン発酵ユニット220または連結される他のユニットの一方を上昇または下降させることで、材料を移動させることができる。
上記した段階(d)(または段階(d)を含む一以上のサイクル)におけるメタン抽出が効率的な面から終了したと判断した後は、段階(b)、段階(c)または第3の工程へと進行することが好ましい。なお、第3の工程については後述する。
段階(b)に移行する場合として、原料中にセルロースやヘミセルロース等の残余の高分子有機化合物(肥料前駆物質)が極めて多い場合が挙げられる。かかる場合、必要に応じてアルカリを加え原料を弱酸性からアルカリ性としてもよい。特に、アルカリ物質として炭酸水素カルシウムを使用すると、上述したホタテの貝殻等より得られる廃棄物を有効利用できるので非常に好適である。段階(b)の終了後は、段階(a)へと進んでエタノール抽出を行うか、または段階(d)へと進んでメタン抽出を行うことが可能である。
段階(c)に移行する場合として、原料中の有機成分が枯渇した場合が挙げられる。段階(c)の終了後は段階(a)へと進んでエタノール抽出を行うか、または段階(d)へと進んでメタン抽出を行うことが可能である。それでもなお、有機成分量が十分に得られないような場合には、段階(c)へと移行することにより、有機成分量を増大させることができる。
第3の工程に移行する場合として、原料がエタノール抽出やメタン抽出を行うにあたって、化学的または経済的に適さない状態に到った場合が挙げられる。すなわち、原料である有機物質(肥料前駆物質)を肥料等とし、有用物質を獲得することができる。
ここで、上記(1)〜(3)のいずれにも該当しうる点として、段階(a)と段階(d)とを有するサイクル、すなわち、第4のサイクル、または段階(a)と段階(d)とその他の段階とからなるサイクルは、第2の工程においてエタノール及びメタンを最も効率良く得ることができうるという点で、理想的でありうる。例えば、段階(a)でヘテロ乳酸菌などによりエタノールを抽出し、段階(d)でメタン生成菌によりメタンを抽出する。その際、段階(a)から段階(d)への直接移行は円滑に行われうる。反対に、段階(d)から段階(a)への直接移行については、段階(a)への移行の際に必要な原料が存在している限り、円滑に行うことができる。一方、必要な原料が十分に存在していない場合には、段階(d)でメタン抽出後、真菌による無機物(二酸化炭素など)の同化段階を経由させて、段階(a)でエタノール抽出を行うことが考えられる。前記同化段階として、例えば、段階(c)を利用することが挙げられ、さらに、段階(a)で用いられる微生物が真菌である場合には、該真菌の同化作用を利用可能である。したがって、段階(a)がかような場合には、段階(a)のみで連続的・長期的なエタノール生成が行いうるため、第2の工程が段階(a)のみからなってもよい。
さらに、段階(a)と段階(d)との間の移行に際し、両段階間のpH(生育pH)が有意に異なる場合があり、中間段階としてpH調整を別途行う必要もありうる。例えば、ヘテロ乳酸菌を用いた段階(a)から段階(d)へと移行する場合には、段階(a)においてpHが顕著に低下する結果、段階(d)において適当なpHとはいえない可能性がある。しかし、本発明者らは、ヘテロ乳酸菌を用いた段階(a)と段階(d)とを同時に(例えば同一の装置内で)行わせることによって、ヘテロ乳酸菌が生成した有機酸をメタン生成菌(例えばメタン古細菌など)が直ちに資化することができ、これにより、pHの低下を生じさせることなくエタノール及びメタンを非常に効率良く生成できることを見出した。これは、段階(a)において用いられる微生物(ヘテロ乳酸菌など)と段階(d)においてにおいて用いられる微生物(メタン古細菌など)との一種の「共棲(共生)」環境を作り出しているともいえる。
なお、上述した段階(a)〜段階(d)に用いられる装置を、図13,図22,図26,図42に示すように連結することもできる。すなわち、4つの処理ユニットを互いに接続することで、図37に示す第1〜第6のサイクルの任意のサイクルを容易に実現することが可能となる。この際、互いに接続される材料排出口と材料注入口の間には開閉弁を設けることで、収容物のより確実な移動が可能となる。
また、各々の処理ユニットに車輪を設けたり、複数の処理ユニットを連結するためのフック等が設けられてもよい。また、各々の処理ユニットは、発酵等の過程において加熱等が必要な場合には、図43に示すように、温水が流れる湯せん槽230内に保持することで、加熱することもできる。また、処理ユニットに巻き付いた流路を設け、内部に温水等を流通させて温度調節を行ってもよい。また、複数の処理ユニットを伝熱性の高い金属等で接続することで、発酵等の過程において生じる熱で他の処理ユニットを加熱することもできる。
[第3工程]
本発明に係る有機物質の処理方法は、微生物を用いて、段階(a)、段階(b)、段階(c)及び段階(d)のうち1種以上の段階で得られる前記肥料前駆物質から肥料を生成する第3工程をさらに含んでもよい。第3工程では、第2工程に用いた処理ユニットと同様の処理ユニットを用いえるが、他の処理ユニットを用いてもよい。本発明は、上述した通り、段階(a)等により、エタノール以外に、異化されなかった(異化反応により分解されなかった)有機物質(未処理及び/または前処理後)も得られる。従来から、かかる有機物質(未処理及び/または前処理後)は大量に廃棄されているが、本発明では、このような有機物質を原料として微生物を用いて肥料を生成する。本工程が存在することによって、生ゴミ、動物排泄物、廃棄木材や落葉などからなる家庭廃棄物質または(産業)廃棄物質などを有効利用するのみならず、これらの物質をほとんど余すところなく利用して、最終的にエタノールに加えて肥料をも効率良く生成することができるのである。
段階(a)等で得られる残渣(肥料前駆物質)中に、窒素分及び/または炭素分が肥料の生成に適さない程しか存在しない場合、本工程において用いられる微生物は、大気中など自然界に存在する窒素ガス等に由来の窒素及び/または二酸化炭素などに由来の炭素を同化することができる。これは、上記段階(c)と同様の同化作用(反応)が使用可能であることを意味する。特に、ジアゾ栄養生物のうち硝化細菌を用いると、硝酸塩を反応系内に取り込ませることができ、肥料の品質上好ましいものとなりうる。得られる肥料の炭素分と窒素分との比率を考慮し、場合によっては光合成細菌及び窒素固定細菌のいずれか一方のみを使用してもよい。なお、肥料を生成することは、他のサイクルなしに、第1のサイクルのみ存在している系でも可能であり、さらにいえば、段階(a)のみからなるエタノール生成系でも可能である。このような場合、簡易なプロセスであることに起因して、肥料を迅速に生産することができる点で有利である。
前記肥料前駆物質中の有機態窒素分及び/または有機態炭素分が、肥料の生成に適する程度に存在する場合には、肥料前駆物質から肥料への生成にそのまま移行することができる。なお、前記肥料前駆物質として、特に限定されることはないが、炭水化物(多糖類)、脂質、グリセリン、高級アルコール、脂肪酸、アミノ酸、ペプチド及びタンパク質よりなる群から選択される1種以上が挙げられる。これらは、有機態窒素分源ないし有機態炭素分源となる。
したがって、本工程は、前記肥料前駆物質中の有機態窒素分及び/または有機態炭素分に応じて、用いる微生物の種類が変化しうる。なお、前記肥料前駆物質の水分含有率が高い場合、本工程の最初に、加熱などによって水分含有率を減少させてもよい。
前記肥料前駆物質中の有機態窒素分及び/または有機態炭素分に応じた好適に用いられる微生物の種類を、有機態窒素分及び/または有機態炭素分の多い順から挙げる。
前記肥料前駆物質中の有機態窒素分及び/または有機態炭素分が余分な場合、枯草菌、乳酸菌、光合成細菌、酵母、放線菌及び腐朽菌よりなる群から選択される1種以上を用いることが好ましく、枯草菌、放線菌を用いることがより好ましい。なお、腐朽菌(木材腐朽菌)としては、セルロース、へミセルロースやリグニン等の多糖類を分解できることを特徴としており、褐色腐朽菌、白色腐朽菌や軟腐菌が挙げられる。腐朽菌は、リグニン等が非常に大量に残存しているような場合に特に好適に用いられうる。次に、前記肥料前駆物質中の有機態窒素分及び/または有機態炭素分が適度な場合、放線菌を必須に用いると共に、光合成細菌及び/または放線菌を併用することが好ましく、放線菌のみを用いることがより好ましい。そして、前記肥料前駆物質中の有機態窒素分及び/または有機態炭素分が欠乏している場合、光合成細菌、酵母及び放線菌を必須に用いると共に、窒素固定細菌を併用することが好ましく、光合成細菌、酵母及び放線菌を用いることがより好ましい。上記の場合、用いられる微生物は主に太陽光線をエネルギーとして使用し、化石燃料からのエネルギーをほとんど必要としないため、地球上の貴重な天然資源の消費を抑えつつ、肥料を生産することが可能となる。
以上の微生物を1種ずつまたは複数種を同時に本工程に投入することにより、所望の肥料等を生成することができる。
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変することができる。例えば3つの処理工程を含む培養装置として、図44Aのような構成としてもよい。3つの処理工程を、一例として、有機物質が集積される集積槽240(処理ユニット)、光合成細菌等によりアンモニアを固定するアンモニア固定槽241(処理ユニット)、メタン発酵を行うメタン発酵槽242(処理ユニット)により行うものとする。集積槽240の周りには、開閉弁が設けられたダクト244により連結された複数のアンモニア固定槽241が設けられ、更にアンモニア固定槽241の周りには、開閉弁が設けられたダクト245により連結されたメタン発酵槽242が設けられる。このように配置することで、効率よく有機材料を受け渡して発酵サイクルを実行することができる。なお、集積槽240には、スロープ243が設けられて、有機物質の搬入が容易となっている。
また、図44Bに示すように、複数の回転体245,246,247を設けてもよい。なお各々の回転体245,246,247は、図23〜27において説明した構成を有しえる。すなわち、まず回転体245を回転させつつ回転体245の収容ユニット内で発酵等の処理を行った後、回転体245の収容ユニットから、複数の回転体246の収容ユニット内へ有機物質を移動させる。この後、回転体246を回転させつつ回転体246の収容ユニット内で発酵等の処理を行った後、各々の回転体246の収容ユニットから、複数の回転体247の収容ユニット内へ有機物質を移動させる。この後、回転体247を回転させつつ回転体247の収容ユニット内で発酵等の処理を行う。なお、回転体同士での有機物質の移動には、位置エネルギーを用いることができる。例えば、各々の回転体245,246,247に図24に示すようなダクト83を設け、有機物質が移動する回転体245,回転体246,回転体247の順番で設置位置を低くする。これにより、受け渡しの際に、上流側(例えば回転体245)のダクト83を下方へ移動させ、下流側(例えば回転体246)のダクト83を上方へ移動させることで、上下に位置する回転体のダクトを介して有機物質を移動させることができる。このように複数の回転体へ有機物質を分割しつつ移動させる構成は、例えば回転体毎に発酵等の条件を異ならせる場合等に有効である。条件の変更の例としては、回転体毎に嫌気性または好気性としたり、発生させる気体をメタンまたはエタノールと異ならせることが挙げられる。また、収容ユニットの体積が小さい方が発酵等が早くなる場合や、発酵等の制御が容易となる場合等には、複数の回転体へ有機物質を分割することが好ましい。また、複数の回転体へ有機物質を分割することで、全ての回転体での発酵過程が同時に失敗することを予防することができる。なお、図44Bの例では、回転体245→回転体246→回転体247と有機物質が移動するにつれて回転体が増加しているが、回転体を任意に増減してもよく、または回転体245、回転体246、回転体247の各々を一つのみとすることも可能である。
また、例えば3つの処理工程を含む大型の培養装置として、図45のような構成としてもよい。3つの処理工程を、一例として、有機物質が集積される集積槽250(処理ユニット)、光合成細菌等によりアンモニアを固定するアンモニア固定槽251(処理ユニット)、メタン発酵を行うメタン発酵槽252(処理ユニット)により行うものとする。集積槽250にはスロープ253が設けられ、トラック等により、上部に設けられる開口部254から有機物質を容易に投入することができる。集積槽250とアンモニア固定槽251の間には、開閉弁を有するダクト257が設けられて、有機物質を集積槽250からアンモニア固定槽251へ容易に投入することができる。アンモニア固定槽251には、外部へ収容物を排出する材料排出口256が設けられ、材料排出口256からメタン発酵槽242へ材料が投入される。メタン発酵槽242は、アンモニア固定槽251の外部に設けられるスロープ255により上下に移動可能であり、これにより材料排出口256から有機材料を容易に受け取ることができる。
また、例えば2つの処理工程を含む大型の培養装置として、図46のような構成としてもよい。2つの処理工程を、一例として、メタン発酵を行うメタン発酵槽260(処理ユニット)、肥料を生成する肥料生成槽261により行うものとする。肥料生成槽261にはスロープ262が設けられ、メタン発酵槽260が、上部に設けられる開口部263から肥料前駆物質を容易に投入することができる。肥料生成槽261には開閉扉264が設けられて、生成された肥料を容易に搬出することができる。
また、例えば3つの処理工程を含む大型の培養装置として、図47のような構成としてもよい。3つの処理工程を、一例として、有機物質が集積される集積槽270(処理ユニット)、光合成細菌等によりアンモニアを固定するアンモニア固定槽271(処理ユニット)、メタン発酵を行うメタン発酵槽272(処理ユニット)により行うものとする。集積槽270にはスロープ273が設けられ、トラック等により、上部に設けられる開口部274から有機物質を容易に投入することができる。集積槽270とアンモニア固定槽271の間には、下方の一部のみが連通するように隔壁275が設けられており、有機物質が集積槽270からアンモニア固定槽271へ少量ずつ連続的に流入される。アンモニア固定槽271には、外部へ収容物を排出する材料排出口276が設けられ、材料排出口276からメタン発酵槽272へ材料が投入される。メタン発酵槽272は、アンモニア固定槽271の外部に設けられるスロープ277により上下に移動可能であり、これにより材料排出口276から有機材料を容易に受け取ることができる。
図48は、例えば更に多くの処理工程を含む大型の培養装置の概略斜視図であり、図49は同培養装置の概略平面図である。本培養装置の処理工程を、一例として、有機物質が集積される集積槽280(処理ユニット)、光合成細菌等によりアンモニアを固定するアンモニア固定槽281(処理ユニット)、メタン発酵を行うメタン発酵槽282(処理ユニット)、主に高分子有機化合物を分解する異化反応槽283(処理ユニット)、エタノール発酵を行うエタノール発酵槽284(処理ユニット)により行うものとする。集積槽280にはスロープ285が設けられ、トラック等により、上部に設けられる開口部286から有機物質を容易に投入することができる。集積槽280とアンモニア固定槽281の間には、下方の一部のみが連通するように隔壁287が設けられており、有機物質が集積槽280からアンモニア固定槽281へ少量ずつ連続的に流入される。アンモニア固定槽281とメタン発酵槽282の間には、上方の一部のみが連通するように隔壁288が設けられており、有機物質がアンモニア固定槽281からメタン発酵槽282Aへ少量ずつ連続的に流入される。メタン発酵槽282Aと異化反応槽283Aの間には、下方の一部のみが連通するように隔壁289が設けられており、有機物質がメタン発酵槽282Aから異化反応槽283Aへ少量ずつ連続的に流入される。この後、更に上方の一部のみが開いた隔壁290、下方の一部のみが開いた隔壁291が設けられて、メタン発酵槽282Bおよび異化反応槽283Bが形成される。また、メタン発酵槽282および異化反応槽283には、図49に示すように、槽の並ぶ方向に沿って延びる隔壁295が、下方の一部のみが開いて形成される。メタン発酵槽282および異化反応槽283には、二酸化炭素等の気体を注入するための気体注入口291、撹拌装置292、脱気するための気体排出口293が設けられている。異化反応槽283Bには、外部へ収容物を排出する材料排出口294が設けられ、材料排出口294からエタノール発酵槽284へ材料が投入される。本培養装置のような構成とすることで、メタン発酵および異化反応を繰り返し実施することができる。
また、例えば内部環境を変更可能な他の培養装置として、図50のような構成としてもよい。本培養装置は、箱体300の内部に、箱体300内に納まって箱体300内を一方向へ移動可能な処理ユニット301を有している。処理ユニット301は、軸体302に連結されており、この軸体302を外部から進退動させることで、処理ユニット301を移動させることが可能である。箱体301には、処理ユニット301の移動方向に沿って、一端側に開閉可能な蓋部303が設けられ、中央部に気体排出口304および炉306が設けられ、他端側に孔部305が設けられる。処理ユニット301には、撹拌装置307と、材料排出口308が設けられる。処理ユニット301が箱体300の一端側に位置する際には、図50(A)のように、蓋部303から有機材料および必要な微生物等を投入することができる。この後、撹拌装置307により有機材料を撹拌しつつ発酵等を進行させる。更に、図50(B)のように、処理ユニット301を中央部へ移動させ、炉306により加熱することで、気体排出口304から気体(メタンやエタノール等)を抽出することができる。この後、図50(C)のように、処理ユニット301を箱体300の他端側へ移動させると、孔部305から材料排出口308が導出され、材料排出口308から残渣を排出することができる。
また、例えば、上述した実施の形態は、記載された培養過程以外にも適用できる。例えば、上述の培養装置(処理ユニット)をメタンやエタノールの生成だけでなく、堆肥・肥料等や、飼料、発酵食品等の生成にも適用できる。