定義
本特許応用のために、次の術語が以下で定義される。
用語の「部分的治療」は、光エネルギーのパターンに起因する一連の治療ゾーンを含む治療を表し、ここでは、治療ゾーンの大部分に対して次の条件が満たされる、即ち、治療ゾーン内の各点に対して、健全な組織の領域までの最小横方向距離は約0.5mm以下であり、治療ゾーンはDE接合部の一部分を含む(即ち、治療より前に隣接していた真皮および表皮組織の部分を含む)。皮膚に対して、そのような横方向距離測定は、DE接合部のおおよその深さにおける2次元平面内で行われるべきである。部分的治療パターンの一実施例は、円形微視的病変の離散的配列であり、ここでは、各病変は約1mm(またはより小さい)の直径を有し、各病変は健全な組織の部分に隣接している。部分的治療パターンの別の実施例は、治療の線の離散的配列であり、ここでは各線の幅は約1mm以下であり、各線の周囲は健全な組織の部分に隣接している。切除的部分的治療では、治療ゾーンは切除された領域を含む。それで、例えば、切除された穴を囲む0.2mmの凝固領域を持つ直径0.2mmの切除された穴は、部分的治療を暗示するであろう。凝固の小さな輪内の直径3mmの切除された穴は、部分的治療を暗示しないであろう。
用語の「レーザー波長」、「レーザーダイオード波長」、「レーザーの波長」、および同様の変形は、関心のある波長ゾーンに対するレーザーのピーク波長を表す。
用語の「半切除的」は、細胞のかなりの数を、治療ゾーンの表皮内のそれらの最初の位置から大きく動かす治療を表す形容詞である。例えば、切除的治療はまた、半切除的でもある。別の例において、かなりの数の表皮細胞を無傷の角質層の下側へ押しやる治療は、半切除的治療であろう。明確にするために、DE接合部の分離は、細胞が大きく動かされないので、半切除的とは考えられない、即ち、真皮層と表皮層との間の付着だけが弱められかつ/または壊された。明確にするために、染色された組織切片内における光学顕微鏡では見えない皮膚内の軽微な変化は、半切除的としての治療の分類には十分ではない。半切除的治療は、標準的な可視光顕微鏡のもとで見られるとき、治療に続く組織の染色された組織切片内で見える。図5A、5C、および5Eで示される病変は、半切除的治療を受けた皮膚の例示的な実施例である。図5B、5D、および5Fで示される治療ゾーンは、半切除的治療を暗示していない。
光の波長に対する用語の「熱的に調節された吸収係数」は、選択された波長に関する30℃の水の吸収係数と80℃の水の吸収係数との平均を意味する。
予め選択されたパルスエネルギーに関して半切除的モードから半切除的でないモードへ切り換え可能な部分的治療レーザーシステムは、1つまたは複数の表皮層における光ビーム開口数またはビーム寸法を調節するために、調節可能なレンズ群および/または個別に交換可能な光学素子を使用して創出されてもよい。そのようなレーザーシステムは、上述したようにレーザービームパラメータの適切な選択によって創出されてもよい。
そのようなデバイスを実証するために、治療ゾーンは、1つまたは複数の形成外科手術中に切除された生体外の人間の皮膚上に、レーザービームを向けることによって創出された。組織試料内への光学スポット寸法および焦点深度は、組織表面に対して集束レーザービームの焦点位置を調節することによって調節された。皮膚は貯蔵のために凍結され、その後治療される前に体温まで温められた。生体内の治療条件に近づけるために、試料が食塩水を使用して湿った状態に保たれながら、生体外の組織の治療は、ほぼ体温で実施された。皮膚は、標準的な組織学的方法を使用して凍結され、切片化された。染色は、組織内の特徴を装飾するためにヘモトキシリン(hemotoxylin)およびエオシン(eosin)(H&E)染料を使用して実施された。その結果は、次いで、顕微鏡に取り付けられた目盛り付きのCCDカメラを使用して測定された。図5A〜図5Fは、選択された例示的条件のもとでのレーザー治療に続いて、皮膚表面にほぼ垂直に薄く切られた組織の切片を示す。対応するレーザー治療パラメータは表1で与えられる。
図5Aおよび5Bは、皮膚の表面における光学スポット寸法を、半切除的治療モードと非半切除的治療モードとの間で切り換わるために、どのように変更してよいかの実施例を示す。両方の治療は、1410nmレーザーで1mJの治療エネルギーにおいてである。治療ゾーンは、皮膚表面における異なる光学スポット寸法から生じ、図5Aは、レーザー治療ビームの1/e2点で50μmの光学スポット寸法を使用して創出され、図5Bは、皮膚表面において1/e2点で120μmの光学スポット寸法を使用して創出された。図5Aは、特性が半切除的である治療ゾーンを示し、一方、図5Bは、特性が半切除的でない治療ゾーンを示す。
図5Cおよび図5Dは、第2の組の例示的治療条件の結果を示し、それに関しては、皮膚表面における光学スポット寸法の差が、病変の切除的特性の変化を創出するために使用されてもよい。両方の治療は、1410nmレーザーで10mJの治療エネルギーにおいてである。治療ゾーンは、皮膚表面における異なる光学スポット寸法から生じ、図5Cは、皮膚表面において1/e2点で130μmの光学スポット寸法を使用して創出され、図5Dは、皮膚表面において1/e2点で230μmの光学スポット寸法を使用して創出された。図5Cは、特性が半切除的である治療ゾーンを示し、一方、図5Dは、特性が半切除的でない治療ゾーンを示す。
温度につれての吸収の増加の利点は、比較できる治療パラメータでの1410nmおよび1480nmにおける生体外の治療で示されるように実証された。図5Eおよび図5Fでの組織の薄く切られた切片は、他の治療パラメータが一定(皮膚表面において1/e2強度点で180μmのスポット寸法を持つ近似的ガウシアン(Gaussian)ビームを使用する治療ゾーン当たり10mJの治療エネルギー)に保持された状態での、これらの2つの波長における生体外の治療の結果を示す。両方の治療は、ラマンシフトファイバーレーザーから単一モードファイバーによって配給される光を使用して実施された。ラマンシフトファイバーレーザーは、IPGフォトニクス社(IPG Photonics,Inc.)(オックスフォード、マサチューセッツ州)から入手できる。
30℃において、水の吸収は、これらの2つの波長に対してほぼ同じであり、1410nmにおいて約24cm-1、および1480nmにおいて約25cm-1である。30℃においてわずかに高い吸収を有するにもかかわらず、1480nm光は、1410nm波長よりも深く侵入した。侵入の差は、部分的にはこれらの波長間の散乱係数のわずかな差に起因したが、散乱に起因する差は、治療ゾーン内での水の動的吸収特性に起因する差と比較して小さい。組織は、特に組織の上層内で、レーザー治療によって30℃より著しく高く局所的に加熱されたので、これらの2つの波長で創出された治療ゾーンの深さの差は、主として30℃より高い温度における吸収の差に起因した。皮膚がレーザーによって加熱されたとき、吸収係数は、温度の変化が原因で変化した。1410nmレーザーでの治療から生じた微視的治療ゾーン(図5E)は半切除的であり、半切除的治療を暗示しなかった1480nmレーザーでの治療から生じた微視的治療ゾーン(図5F)よりも浅い侵入を有する。
1410nm波長に対する水の吸収は、30℃から80℃まで、この範囲にわたっての約22%の全増分に対して単調に増加する。対照的に、1480nm波長吸収は、この同じ温度範囲にわたって約15%だけ単調に低減される。これらの2つの波長における吸収の温度に対する傾向は、水が少なくとも100℃まで加熱される間単調に続く。これらの理由のために、30℃においてほぼ同じ吸収係数を有するにもかかわらず、結果として生じる治療病変は、特性および深さが非常に異なる。
温度とともに増加する水での吸収をもつ波長を有することは普通望ましいが、半切除的治療ゾーンを形成することは必要とされない。半切除的治療ゾーンは、水の温度が上昇するにつれて減少する水での吸収を有する、1480nmなどの波長で創出されてもよい。例えば、約1480nmから約1580nmの範囲内の波長は、小さなスポット寸法、例えば5〜80μmに集光され、適切なフルエンス、例えば10〜40mJの約1msの光パルスで照射されるときに、半切除的治療ゾーンを形成することができる。各波長に対する正確なパラメータは、実験を通じて決定されてもよい。
本発明のいくつかの実施形態において、ハンドピースは、レーザー光を治療されるべき皮膚の領域へ配給するために使用される。図1Aで例示されるハンドピースは、レーザー光源140から光エネルギーを配給する光ファイバー120を含む。光ファイバー120の端部は、光ファイバー120から放出される光ビーム130を平行にするために光コリメータユニット121内に取り付けられる。光ビーム130は、3つのレンズ素子101、102、および103からなる調節可能なレンズ群123の方へ向けられる。個々のレンズ素子は、モータ182を使用して調節されてもよい。光ビーム130は、オプションのミラー104から星形スキャナー輪(starburst scanner wheel)124内へ反射される。星形スキャナー輪124は、光ビーム130を出射レンズ群125へ偏向させ、それは、出射窓126を通じて皮膚199内へ光ビーム130を集光する。スペーサチップ128は、出射レンズ群125と皮膚199の表面との間に所望の距離を保つ補助として、基準ピン129に対して機械的に合わせられる。出射レンズ群は、皮膚199内、皮膚199の表面、または皮膚199の表面より上の、任意の所望の位置において光ビームを集光するように選択されてもよい。スペーサチップ128は、オプションとして透明な接触板127を含んでもよい。
ハンドピース100は、ページ内または外の方向へ一定の速度で皮膚を横切って動かされてもよく、一方、星形スキャナー輪124は、モータ(図示されず)によって一定速度で動かされる。これは、所望のパターンを持つ部分的治療を創出するために使用されてもよい。皮膚に適用されるコントラスト強化薬剤とともに光学マウスチップを用いるそれらなどの、もっと複雑な速度帰還システムは、例えば、同時係属の特許文献1の「Method and Apparatus for Monitoring and Controlling Laser-Induced Tissue Treatment」および特許文献2の「Method And Apparatus For Monitoring And Controlling Thermally Induced Tissue Treatment」で説明されるように使用されてもよく、それらの両方は、追加の柔軟性をもたらすために参照により本明細書に組み込まれる。
レーザー光源140は、1つまたは複数のレンズを含む。レーザー波長は、1350nmから3000nmの範囲内でよい。この範囲において、レーザーは、主としておよび実質的に皮膚内で水によって吸収される。水は、皮膚内で発色団(chromophores)よりも一様に分配されるから、これは、主として水によってより選択性が低く吸収される波長で、治療をする。したがって、そのような波長の使用は典型的には、水によって実質的に吸収されない波長、または皮膚内のメラニンや血液などの発色団の特定の分布に依存する波長が使用される場合よりも、もっと再現可能な治療ゾーンを生成するであろう。
適切なレーザーは、多くの異なる波長で作られてもよく、多くの異なる技術から作られてもよい。ダイオードレーザーは、いくつかの皮膚科的応用に特に適している。例えば、ダイオードレーザーは、それらがファイバーレーザーと比較して安価に製造できるので望ましい。外部空洞固体レーザーと比較して、ダイオードレーザーは、より安価でもあり、不整合を修正するために必要とする整備はより少なくてもよい。ダイオードレーザーは、ガスレーザーが有するよりも広い利用可能な波長範囲を有する。ダイオードレーザーはまた、色素レーザーよりも整備することが容易でもある。全てのこれらの理由により、他の光源は本発明の範囲内にあるけれども、レーザー光源はダイオードレーザーであることが望ましい。ダイオードレーザーはまた、他のレーザー光源と比較して非常に小型でもあり、従って治療ハンドピースにおいてもっと容易に使用されてもよい。
部分的レーザー治療は典型的には、これらの波長が組織の非選択的治療を提供するので、主として組織内で水によって吸収されるレーザー波長を使用する。そのような波長に対して、水での光の吸収スペクトルは、光の組織との相互作用にとって重要である。高出力ダイオード光源は、InGaAsP/InP材料系で作られるそれらのように、約1390nmから約1425nmの範囲内の波長出力で利用できる。約1800nmから約1920nmの波長範囲などのもっと長い波長は、典型的には、レーザーダイオード内へ注入される電子の無放射オージェ(Auger)結合に起因する非効率性が原因で、高出力レーザーダイオードには使用されない。ダイオードレーザー内でのオージェ再結合は、それが約1390nmから約1425nmの範囲である場合よりも、より長い波長に対して著しく悪い。(そのようなより長い波長は現在では、ガス、外部空洞固体レーザー、およびファイバーレーザーなどの他のレーザー手段によって高出力で利用できる。)
ダイオードレーザーは、選択された動作条件に対してよく規定される狭い波長スペクトルピークを有する。しかしながら、レーザーダイオード波長は典型的には、レーザーダイオードの温度がシフトするときに著しくシフトする。典型的なダイオードは、レーザーの温度変化の1℃当たり約0.1nmシフトすることができる。温度に対する正確な波長シフトは温度依存性であり、活性領域材料、デバイス熱経路、およびダイオード導波路設計などのデバイスパラメータに依存する。ダイオードは、能動的同調素子を持つ帰還ループを使用して能動的に温度安定化されてもよい。別法として、複合デバイス設計が、波長を温度安定化するために使用されてもよい。しかしながら、これらの解決策は高価であり、実施することが困難である。(1)デバイスによって生成される熱が出力電流レベルに依存し、(2)典型的には波長にとって最も重要である温度が、容易に測定される外部温度測定点における温度よりもむしろ、デバイスの活性領域の温度であるので、ダイオードの波長を制御することの困難さはさらに増加される。ダイオードレーザーの波長を安定化するために必要とされる困難さおよび費用のために、水での吸収スペクトルが波長の関数として急速に変化しない領域で、操作することは有益である。したがって、30℃の水に対して0.7(cm nm)-1未満の勾配を有するように、または30℃の水に対して約0.3(cm nm)-1から約0.7(cm nm)-1の勾配を有するように、波長の関数としてレーザー波長における吸収曲線の勾配を有することが望ましい。30℃の基準点は、それが照射前の皮膚のおおよその温度であるので、選択される。ダイオードおよび非ダイオードのレーザーに対して、これらのパラメータは、高精度な部品を選択および/または波長によりレーザーをビニング(binning)する、必要性を低減するために有益に使用することができる。
レーザー波長は、約8cm-1から約30cm-1の範囲内、または約12cm-1から約27cm-1の範囲内の熱的に調節された吸収係数を有するように選択されてもよい。約30cm-1より大きい熱的に調節された吸収係数を有するレーザー波長は、より低い吸収係数を持つ波長よりも、半切除的治療と非半切除的治療との間で切り換わることがより困難であり、典型的には治療されるべき組織内へ深く侵入しない。約8cm-1未満の熱的に調節された吸収係数を有するレーザー波長は、半切除的モードへ切り換わるためにはより多くのレーザーエネルギーを必要とし、したがってより望ましくない。
約8cm-1から約30cm-1の範囲内の熱的に調節された吸収係数を有するレーザー波長は、部分的治療応用、特に半切除的治療によって強化されるそれらに対して、有用な治療深さを提供する。これらの吸収範囲の外側の波長を持つレーザーもまた、特に治療ビームの焦点がぴったり合うことを可能にできる調節可能なレンズ群などの本発明の他の態様と結合されるとき、本発明の範囲内である。
部分的レーザー治療システムの熱的に調節された吸収係数は、所望の治療効果に基づいて選択されてもよい。組織内で主として水によって吸収される波長は、しわ、色素性病変、血管病変、その他の治療に有用である。そのような波長に対して、皮膚の水分含有量は重要である。皮膚の真皮層は典型的には、約70%の水分を含む。組織内で主として水によって吸収される波長に対して、光の組織内への侵入は、主として水でのレーザー波長の吸収係数に依存する。そこで、例えば、水で27cm-1の吸収係数を持つ光は、皮膚では約19cm-1の吸収係数を有し、この吸収を持つ治療ビームの配給されるパワーは、散乱が無視できると仮定すると、皮膚表面より下の0.5mmの深さにおいて約63%だけ(即ち、その1/e点まで)低減されるであろう。治療ゾーンの実際の深さは、正確なデバイス構成および皮膚特性に依存するであろう。治療ゾーン深さは、侵入深さよりも深い、または浅いかもしれないが、熱的に調節された吸収係数によって影響されるであろう。小さな開口数を持つ治療ビームに対して、所望の治療深さにおけるエネルギー付与は、皮膚内の熱的に調節された吸収係数を、おおよそ所望の最大治療深さの逆数として選択することによって、最大化されてもよい。最大病変深さが約0.5から2mmである場合の治療に対して、治療レーザーの波長は、熱的に調節された吸収係数が約8cm-1から約30cm-1の範囲内、または約12cm-1から約27cm-1の範囲内であるように選択されてもよい。
図3は、水の温度が約30℃から約80℃まで変えられたときの水に対する吸収スペクトルの測定を波長の関数として示す。これらの測定は、透過光分光学を使用して行われ、ここでは、光は、水の加熱された試料を貫通して通された。水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき、水による光の吸収は、約1340nmから約1430nmの範囲内の波長を持つ光に対して増加した。
上述したように、熱的に調節された吸収係数は、デバイスに対する侵入の最大深さを選択する際に使用されてもよい。治療ゾーンが所望の深さまで創出され得る効率は、皮膚の温度が上がるにつれて動的に増加する吸収を有する波長の選択と併せて、皮膚上への平均フルエンスを調節することによってさらに改善されてもよい。多くの治療に対して、吸収の動的増加は、皮膚の治療反応に重要な利点をもたらすことができる。これらの利点のいくつかは、実施例とともに例示することができ、所与のパルスエネルギー、例えば10mJに対して、パルスエネルギーを小さな直径、例えば30〜70μmを持つビームに集光することは、治療領域に高強度を創出し、それゆえに組織を急速に加熱し、その結果侵入の深さを制限するように組織の吸収係数を急速に調節する。治療パルス内のエネルギーは、小さな深さ内で吸収され、吸収の動的な変化なしで生じるであろうよりも強い表面の局所的治療効果を創出する。そのような治療のエネルギーの多くは、皮膚の表皮層内で吸収されるであろうし、半切除的事象をもたらすことができる。半切除的治療ゾーンは、治療ゾーンの上側部分より下でビーム強度を低減するようにビームを散乱または反射することができ、それはさらに、組織のより深い層への光学治療エネルギーの侵入を制限する。
皮膚表面においてより大きな(および同じエネルギー、パルス幅、その他を有する)光ビームに対しては、皮膚表面における温度の変化率はより遅い。したがって、照射領域が低温であるときには、治療エネルギーのより大きな割合が、照射領域の上側部分を通過することができる。それ故に、特に吸収が皮膚および/または皮膚内の水の温度とともに動的に増加するときは、治療エネルギーは、より小さなビームに対するよりもより大きなビームで組織内へより深く侵入することができる。それ故に、システムは、あたかもそれが、焦点位置、開口数、ビーム直径、およびビーム形状などの光ビームパラメータを変えるだけで調節可能な吸収源を有するように、機能することができる。このことは、ある種のレーザー治療システムにおいて高価な調節可能な光源を用いる必要性を回避することを可能にする。
温度上昇とともに増加する水での吸収を有するレーザー波長は、30℃における同様の吸収の波長に対して可能であろうよりも、低いパルスエネルギーが半切除的治療を創出するために使用されることを可能にする。そのような波長はまた、過剰治療を防止するために真皮内の凝固および損傷の深さを制限するように、適切な光学設計と併せて有益に組み込まれてもよい。
さらに、そのような動的吸収は、半切除的である治療モードと半切除的でない治療モードとの間で切り換わる、もっと信頼できるシステムを創出するために使用されてもよい。水でのレーザー波長の吸収が、水の温度が30℃から80℃まで上げられるときに少なくとも10%だけ増加し、水の温度が30℃から80℃まで上げられるときに約10%から約24%だけ増加し、または水の温度が30℃から80℃まで上げられるときに約16%から約24%だけ増加するように、レーザー波長は選択されてもよい。
水が約30℃から約80℃まで加熱されたときの吸収の変化率が図4で示される。先に述べたように、水による光の吸収は、約1350nmから約1430nmの波長範囲にわたって温度とともに増加する。測定された吸収の比率の増加は、約1365nmから約1425nmの波長範囲において約10%から約24%の範囲内であった。約1380nmから約1420nmの波長範囲においては、水での吸収の変化は、約16%から約24%の範囲内であった。
上述した要因の全てが与えられると、約1380nmから約1420nm、約1390nmから約1425nm、約1400nmから約1420nm、または約1410nmの波長範囲内のレーザーを操作することは、多くの応用で望ましい可能性がある。これらの波長のダイオードレーザーは、JDSユニフェーズ(JDS Uniphase)(ミルピタス、カリフォルニア州)およびエヌライト社(nLight Corp.)(バンクーバー、ワシントン州)などから普通に入手可能である。
レーザー光源140は、1つまたは複数のレーザーを含む。例えば、レーザー光源は、1つまたは複数のファイバーレーザーを含むことができる。ファイバーレーザーは、それらの高ビーム品質、正確に制御された波長、温度依存性の欠如、および整列されるべきミラーの欠如のために望ましい。特に、ツリウム添加グラスファイバーレーザーは、1800〜1930nmの範囲内の波長を生成するために使用されてもよい。イッテルビウム添加グラスファイバーレーザーの出力は、約1380nmから約1420nmの波長を放出するレーザー光源を作るためにラマンシフト(Raman shifted)されてもよい。これらの範囲の外側の他の波長もまた、当業者には明らかであろうように、これらの技術で利用可能である。ツリウムレーザーおよびラマンシフトイッテルビウム添加グラスファイバーレーザーは、IPGフォトニクス社(IPG Photonics,Inc.)(オックスフォード、マサチューセッツ州)から入手可能である。
上述したように、ファイバーレーザーは、波長のより正確な制御を可能とし、ダイオードレーザーよりも温度に対して著しく少ない波長のシフトを有する。これらの品質は、水での吸収スペクトルが波長の関数として急激に変化しない領域で動作することがそれほど重要でないという点で、ファイバーレーザーにダイオードレーザーを超える利点を与える。したがって、ファイバーレーザーに関しては、波長の関数としてのレーザー波長における吸収曲線の勾配は、重要性が著しく小さい。
図7Aおよび7Bは、水の温度が約30℃から約80℃まで変えられたときの、水に対する吸収スペクトルの測定を波長の関数として示す。これらの測定は、透過光分光学を使用して行われ、ここでは、光は、加熱された水の試料を貫通して通された。水の温度が30℃から80℃まで上げられたときに、水による光の吸収は、約1800nmから約1930nmの範囲内の波長を持つ光に対して増加した。
上述したように、熱的に調節された吸収係数は、デバイスに対する侵入の最大深さを選択する際に使用されてもよい。上述した短波長範囲を超える約1800nmから約1930nmまでの波長範囲の1つの利点は、皮膚での散乱係数が、この範囲内の波長に対してより小さいということである。このことは、同様の吸収特性を持つ短い波長でそれらがなるであろうよりも著しく深くなるように、微視的寸法の治療ゾーン、特に300μm未満の直径を持つ治療ゾーンの創出に有用な小さな光ビームを可能にする。
上述したように、吸収が温度とともに増加するレーザー波長を選択することによって、システムは、あたかもそれが、焦点位置、開口数、ビーム直径、およびビーム形状などの光ビームパラメータを変えるだけで調節可能な吸収源を有するように、機能することができる。このことは、ある種の治療システムにおいて、高価な調節可能な光源を用いる必要性を回避することを可能にする。例えば、単一の固定波長ファイバーレーザーは、レーザー光源140で使用されてもよい。
水が約30℃から約80℃まで加熱されたときの吸収の変化率は、図8で示される。約1880nmから約1900nmの波長範囲でのように、水の温度が30℃から80℃まで上げられるときに、水でのレーザー波長の吸収が約23%から約26%だけ増加するように、レーザー波長が選択されてもよい。
上述した要因の全てが与えられると、約1835nmから約1880nm、約1835nmから約1920nm、または約1880nmから約1900nmの波長範囲内のレーザーを操作することは、多くの応用で望ましい可能性がある。
調節可能なレンズ群123は、光ビームパラメータの変化、例えば、皮膚199の表面におけるスポット寸法、皮膚199の表面より下の光ビーム130の焦点深度、それが皮膚199に入るときの光ビーム130の開口数、および/または皮膚199の表面におけるビーム断面形状の変化、から生じる異なる光学治療条件を創出するために、治療中にまたは治療間で調節されてもよい。スポット寸法を調節することによって、光ビーム130内の光学治療エネルギーは、要望通りに組織と皮膚表面との間の相互作用の大きな領域または小さな領域を創出するために、集中または分配されてもよい。小さなスポットは、皮膚199の表面においてより大きな破壊を創出するために有用な場合がある。これらの効果は、約1390nmから約1425nmの範囲内の波長などの、動的に増加する吸収を持つ波長を使用することによって強化されてもよい。そのような波長では、もし光ビーム130が小さなスポット寸法で皮膚に入ると、皮膚の上層の温度は急速に加熱され、それらの吸収は素早くシフトするであろうし、それ故に、吸収を増加させて、治療ビームに起因する局所的損傷の増加を引き起こす。もしも、光ビーム130が大きなスポット寸法で皮膚に入るように、ビームが調節されるならば、皮膚の上層の温度はもっとゆっくりと加熱されるであろうし、それらの吸収は皮膚の基準吸収により近いままであろうし、治療ビームはそれゆえにもっと深く侵入することができるであろう。大きなスポットはまた、光エネルギーのより深い侵入が望まれるときに、より大きなパルスエネルギーに対して光ビーム130の焦点に影響を及ぼすかもしれないガスの泡の創出を低減するのにも有用かもしれない。それ故に、光ビームパラメータを調節することによって、ビーム130は、半切除的であるモードと半切除的でないモードとの間で選択的に切り換わることができる。
半切除的でない治療モードは、皮膚の上層内での動的加熱を低減することによって皮膚199内の所望の位置に治療ゾーンをより効果的に創出するために、治療ビームの侵入深さを増すようにさらに最適化されてもよい。様々な光ビームパラメータは、動的吸収を持つ治療ビームの治療効果を変えるために使用されてもよい。例えば、高開口数の使用は、例えばもしも表皮組織の節約が望まれるならば、皮膚表面の冷却の必要性を低減または排除するために使用されてもよい。
ビーム形状の変化は、皮膚表面より下でビームの集中をなお最大にしながらビームの侵入を可能にするように、皮膚上の可視パターンの影響を最小化するため、および皮膚内での熱的分布を変更するために、有用である可能性がある。例えば、もっと深い侵入が望まれるときには、ビームは、より大きな領域にわたってビーム強度を分配するために、皮膚表面においてより一層の「上部が平たい(flay top)」形状となるように調節されてもよい。もしも、そのようなビームが次いで所望の深さに焦点を合わされるならば、そのときには所望の深さにおける加熱は最大化され得る。例えば、もしもレンズ素子101、102、103の1つまたは複数が、例えば円筒型素子などのように径方向に非対称であるように選択されるならば、ビーム形状は、別法として変更されてもよい。そのような径方向に非対称な素子は、治療パターンを変更するために互いの距離が調節されることに加えて、オプションとして回転されてもよい。本発明の装置を使用して望ましく変更可能な他のパラメータは、当業者には明らかであろう。
調節可能なレンズ群123は、光学ズームレンズに普通用いられる技術を使用して設計されて、組み立てられてもよい。例えば、2つ以上の光学素子間の距離を適切に調節することによって、光ビーム130の特性が調節されてもよい。
一実施形態において、光学スポット寸法は、約90μm未満のスポット寸法のために皮膚表面に焦点が合わされる。より小さなスポット寸法を達成するために、レンズ素子101および103は、各々、光学軸に沿ってレンズ素子102により近く動かされる。このことは、星形スキャナー輪(starburst scanner wheel)124内へ注入される光ビーム130の直径を増加させる。皮膚199の表面においてより大きなスポット寸法を達成するために、レンズ素子103は固定されたままで、レンズ素子101と102との間の距離が要望通りに低減されて、ビームの焦点を皮膚199内へ動かす。ビーム130の焦点を皮膚199内へ動かすことによって、皮膚199の表面におけるビーム130の直径は、皮膚表面においてより大きな領域にわたって光エネルギーを分配するように増加する。それ故に、ビーム寸法および焦点深度は、所望の治療に対して調節され得る。
適切な光学レンズ設計パラメータの範囲の実施例は、表2で与えられる。これらのパラメータのより広い範囲は、当業者によって創出されてもよい。特定の光学設計は、ビームに対する所望のスパン、スキャナー輪によって創出されるスポットの数、使用されるスキャナーの種類、光学波長、およびハンドピースのための設計の機械的制約に依存する。特定の設計は、特定のシステムに対する制約および所望の性能に基づいて当業者によって容易に最適化されてもよい。
例えば、ガルバノメータースキャナー、圧電スキャナー、および音響光学スキャナーなどの、他の適切な種類の走査デバイスが、本発明で使用されてもよい。例えば、他の種類のズームレンズまたは個別に調節可能なレンズ変更システムなどの、他の適切な種類のビーム調節デバイスが使用されてもよい。個別に調節可能なレンズ変更システムの一種は図6で例示され、それは、図1Aの調節可能なレンズ群123と交換するために使用されてもよい。図6は、個別のレンズ205A、B、C、Dを含む回転タレット(turret)201を表す。個別のレンズ205A〜Dは、単一の素子またはレンズ群を含んでもよい。回転タレット205または調節可能なレンズ群123は、手動で調節されてもよく、または、例えばコンピュータもしくは他の種類のコントローラ180によってオプションとして制御されてもよいモータ182を使用して、電子的に調節されてもよい。コントローラ180は、適切な治療パラメータを選択するためにユーザーインターフェース184を介して使用者によって利用されてもよい。ユーザーインターフェース184を介して、使用者は、半切除的である治療モードと半切除的でない治療モードとの間で切り換わるように、部分的光学治療システムを(コントローラを介して)制御することができる。コントローラ180はまた、レーザー光源140から放出される光ビームの波長、パルスエネルギー、パルス形状、パルス繰り返し率、およびパルス幅などの、レーザー光源のパラメータを制御することもできる。
調節機構の組合せは、分解能またはスパンの改善のために組み込まれてもよい。例えば、図2A〜図2Cは、調節可能なレンズ群123および一組のスペーサチップ128A、B、Cの両方を組み込む本発明の装置の一実施形態を例示する。図2Aで使用される光学システムは、図2B(128B)および2C(128C)で使用されるスペーサに比して短い長さのスペーサチップ128Aを有する。焦点深度およびスポット寸法の追加の制御を得るために、焦点深度は、出射レンズ群125と1つまたは複数のビームが入射する皮膚199の表面との間の間隔110を調節することによって調節されてもよい。間隔110は、異なる焦点深度を達成するために交換されてもよい、異なる長さの複数スペーサ−チップを使用することによって、簡単に、安価に、かつ可動部品なしで調節されてもよい。図2A〜図2Cは、異なる長さの一組のスペーサと組み合わせた調節可能なズームレンズの使用を表す図1A〜図1Cの部分的治療システムの例示図である。この組合せは、ハンドピース100の光学設計のためにそうしやすいであろう所与の制限された空間または予算の制約を超えて焦点の深さを増すために、有益に使用されてもよい。
本発明のシステムは、非接触チップを含むことができる。非接触チップは、皮膚と接触するように設計されるが、レーザービームが皮膚に入る点においてレーザー治療ビームのビーム経路内に(直接的にかまたは皮膚に適用されるジェルなどの物質を介して間接的に)皮膚と接触する接触素子を有さないチップである。非接触ではないチップは、例えば、接触板が皮膚に触れる点においてレーザービーム経路内にガラスまたはサファイアの板を有するかもしれない。半切除的部分的治療に使用される高光学フルエンスに対して、皮膚表面近傍に創出される高フルエンスレベルは、接触板に損傷を与えるかもしれない。さらに、皮膚表面から除去された組織もまた、接触板に触れ、接触窓への損傷速度の増大を引き起こす吸収部位をもたらすかもしれない。接触窓への損傷は、ビームを遮るかもしれず、それで典型的には望ましくない。
本発明のシステムは、接触チップを含むことができる。接触チップは、実質的に透明な接触板が治療中皮膚と接触し、レーザー治療ビームが皮膚に入る点において(直接的にかまたは皮膚に適用されるジェルなどの物質を介して間接的に)接触板が皮膚と接触するように構成されるチップである。接触治療チップは、それらが冷却を配給されることを可能にするため、および/または、それらが熱の拡散を可能にするために、半切除的でない治療モードでの治療に有益である可能性がある。それ故に、接触チップは、皮膚の上層の加熱に起因する吸収の増加を低減することができる。
本発明のシステムは、1つまたは複数の接触チップ、および1つまたは複数の非接触チップを含む一組のチップと共に販売されてもよい。上述したように、チップは、動的吸収の効果、および治療モードを切り換えるために使用されてもよい光ビームパラメータ変化、を強化するために使用されてもよい。例えば、本発明のシステムは、半切除的でない治療のための接触チップおよび半切除的である治療のための非接触チップを含む一組のチップと共に販売されてもよい。接触または非接触のどちらのチップが使用されるかは、特定のデバイス構成および所望の治療成果に依存するであろう。
詳細な説明は多くの細目を含むけれども、これらは、本発明の範囲を制限すると解釈されるべきでなく、単に本発明の異なる実施例および態様を例示すると解釈されるべきである。本発明の範囲は、上で詳細に論じられなかった他の実施形態を含むことが理解されるべきである。例えば、反射または回折光学は、本明細書で説明された屈折光学の代わりに使用されてもよい。当業者には明らかであろう様々な他の修正、変更および変形は、添付の特許請求の範囲で規定されるような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される本発明の方法および装置の配置、操作および細部で行われてもよい。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの法的に同等のものによって決定されるべきである。さらに、素子、部品または方法ステップは、その素子、部品または方法ステップが特許請求の範囲で明確に言及されているかどうかにかかわらず、公衆にささげられることを意図されていない。
特許請求の範囲では、素子を単数で参照することは、明確に述べられない限り「唯一の」を意味することを意図されておらず、むしろ「1つまたは複数」を意味することを意図されている。さらに、デバイスまたは方法が、特許請求の範囲によって包含されるために、本発明の異なる実施形態によって解決できるあらゆる問題に対処することは必要ではない。